(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】バッター用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240215BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240215BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20240215BHJP
A23L 17/40 20160101ALI20240215BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/50
A23L17/40 A
(21)【出願番号】P 2020559111
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046520
(87)【国際公開番号】W WO2020116299
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018227443
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤牧 温子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)以下の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
を含
むバッター用組成物であって、
前記低分子化澱粉が酸処理ハイアミロースコーンスターチを含み、
前記成分(B)が、前記成分(A)における前記低分子化澱粉とは異なる成分であって、前記成分(B)の原料澱粉の由来が、キャッサバおよびとうもろこしからなる群から選ばれる1種であり、
当該バッター用組成物中の前記成分(A)の含有量が、当該バッター用組成物全体に対して3.0質量%以上55質量%以下であり、
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)の含有量が、質量比で、0.4以上8以下であり、
水に分散させて用いられる、バッター用組成物。
【請求項2】
前記成分(A)において、アミロース含量5質量%以上である前記澱粉が、アミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである、請求項
1に記載のバッター用組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、前記低分子化澱粉以外の澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1
または2に記載のバッター用組成物。
【請求項4】
成分(C)としてリン酸架橋タピオカ澱粉をさらに含む、請求項1乃至
3いずれか1項に記載のバッター用組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下である、請求項
4に記載のバッター用組成物。
【請求項6】
前記バッターが、唐揚げ、天ぷらおよびフリッターからなる群から選択される食品のバッターである、請求項1乃至
5いずれか1項に記載のバッター用組成物。
【請求項7】
バッターの中の粉体原料として、
請求項1乃至6いずれか一項に記載のバッター用組成物を含み
、
当該バッターが以下の成分(C)をさらに含むとき、前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下であり、
前記成分(A)および前記成分(B)の合計量、または、当該バッターが前記成分(C)をさらに含むとき前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)の合計量が、前記粉体原料全体に対して20質量%以上100質量%以下である、バッター
。
(C)リン酸架橋タピオカ澱粉
【請求項8】
前記粉体原料が小麦粉を前記粉体原料全体に対して5質量%以上59質量%以下含む、請求項
7に記載のバッター。
【請求項9】
当該バッター中の前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の含有量の合計が、当該バッター全体に対して8質量%以上50質量%以下である、請求項
7または
8に記載のバッター。
【請求項10】
請求項
7乃至
9いずれか1項に記載のバッターを種物の外側に付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記種物を加熱調理して食品を得る工程と、
を含む、食品の製造方法。
【請求項11】
食品を得る前記工程の後、前記食品を冷凍保存する工程をさらに含む、請求項
10に記載の食品の製造方法。
【請求項12】
冷凍保存する前記工程の後、前記食品を加熱解凍する工程をさらに含む、請求項
11に記載の食品の製造方法。
【請求項13】
請求項
7乃至
9いずれか1項に記載のバッターを用いる、食品の外観の劣化を抑制する方法。
【請求項14】
請求項
7乃至
9いずれか1項に記載のバッターを用いる、食品の食感の劣化を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッター用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存後経時劣化を抑制しようとする技術として、特許文献1(特開2015-223119号公報)に記載のものがある。同文献には、小麦粉、酸化澱粉、リン酸架橋澱粉および重曹をそれぞれ特定量含む、水溶きタイプのから揚げミックスについて記載されており、かかるから揚げミックスを用いることにより、具材への付着性がよく、かつ外観と食感が良好で、油ちょうから時間が経過しても品質の低下が少ないから揚げを製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術を用いた場合、加熱調理して得られた食品の外観および食感の経時劣化を抑制し、保存後再加熱した際にも、外観および衣の食感について好ましいできたて感のある食品を得るという点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下のバッター用組成物、バッター、食品の製造方法、食品の外観を向上する方法、および、食品の食感を向上させる方法が提供される。
[1] 以下の成分(A)および(B):
(A)以下の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
を含み、水に分散させて用いられる、バッター用組成物。
[2] 当該バッター用組成物中の前記成分(A)の含有量が、当該バッター用組成物全体に対して3.0質量%以上55質量%以下であり、
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)の含有量が、質量比で、0.4以上8以下である、[1]に記載のバッター用組成物。
[3] 前記成分(B)の原料澱粉の由来が、キャッサバおよびとうもろこしからなる群から選ばれる1種である、[1]または[2]に記載のバッター用組成物。
[4] 前記成分(A)において、アミロース含量5質量%以上である前記澱粉が、アミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである、[1]乃至[3]いずれか1項に記載のバッター用組成物。
[5] 前記成分(A)において、前記低分子化澱粉が、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、[1]乃至[4]いずれか1項に記載のバッター用組成物。
[6] 前記成分(A)が、前記低分子化澱粉以外の澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、[1]乃至[5]いずれか1項に記載のバッター用組成物。
[7] 成分(C)としてリン酸架橋タピオカ澱粉をさらに含む、[1]乃至[6]いずれか1項に記載のバッター用組成物。
[8] 前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下である、[7]に記載のバッター用組成物。
[9] 前記バッターが、唐揚げ、天ぷらおよびフリッターからなる群から選択される食品のバッターである、[1]乃至[8]いずれか1項に記載のバッター用組成物。
[10] バッターの中の粉体原料として、以下の成分(A)および成分(B)を含み、
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)の含有量が、質量比で、0.4以上8以下であり、
当該バッターが以下の成分(C)をさらに含むとき、前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下であり、
前記成分(A)および前記成分(B)の合計量、または、当該バッターが前記成分(C)をさらに含むとき前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)の合計量が、前記粉体原料全体に対して20質量%以上100質量%以下である、バッター。
(A)以下の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
(C)リン酸架橋タピオカ澱粉
[11] 前記原料が小麦粉を前記粉体原料全体に対して5質量%以上59質量%以下含む、[10]に記載のバッター。
[12] 当該バッター中の前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の含有量の合計が、当該バッター全体に対して8質量%以上50質量%以下である、[10]または[11]に記載のバッター。
[13] [10]乃至[12]いずれか1項に記載のバッターを種物の外側に付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記種物を加熱調理して食品を得る工程と、
を含む、食品の製造方法。
[14] 食品を得る前記工程の後、前記食品を冷凍保存する工程をさらに含む、[13]に記載の食品の製造方法。
[15] 冷凍保存する前記工程の後、前記食品を加熱解凍する工程をさらに含む、[14]に記載の食品の製造方法。
[16] [10]乃至[12]いずれか1項に記載のバッターを用いる、食品の外観の劣化を抑制する方法。
[17] [10]乃至[12]いずれか1項に記載のバッターを用いる、食品の食感の劣化を抑制する方法。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように本発明によれば、加熱調理して得られた食品の外観および食感の経時劣化を抑制し、保存後再加熱した際にも、外観および衣の食感について好ましいできたて感のある食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、以下の実施形態でいうできたて感とは、保存中の劣化が少なく、保存前の調理直後に近い外観および食感を有するということである。
【0008】
(バッター用組成物)
本実施形態においてバッター用組成物は、水に分散させて用いられ、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)後述の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
バッター用組成物は、具体的には、揚げ物等の食品の衣材として用いられるバッター用の組成物である。
【0009】
ここで、バッター用組成物をバッターに用いる際には、バッター用組成物のみを水に分散させて液状のバッターを作製してもよいし、他の成分も加えて液状のバッターを作製してもよい。
以下、成分(A)および(B)についてさらに具体的に説明する。
【0010】
(成分(A))
成分(A)は、具体的には、澱粉を主成分としてなる粉状物である。成分(A)は、以下の条件(1)~(5)を満たす。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.75mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
【0011】
条件(1)に関し、成分(A)は、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。
また、成分(A)中の澱粉含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、バッターが適用される食品の性状等に応じて99.5質量%以下、99質量%以下等としてもよい。
【0012】
条件(2)に関し、成分(A)は、上記澱粉として、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を特定の割合で含み、低分子化澱粉として特定の大きさのものが用いられる。すなわち、成分(A)中の澱粉が、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を成分(A)中に3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下である。
【0013】
低分子化澱粉のピーク分子量は、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、3×103以上であり、好ましくは8×103以上である。また、同様の観点から、低分子化澱粉のピーク分子量は、5×104以下であり、好ましくは3×104以下であり、さらに好ましくは1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0014】
低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0015】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0016】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0017】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0018】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。
また、同様の観点から、成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0019】
また、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは22質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは45質量%以上、さらにまた好ましくは55質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0020】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、アミロース含量5質量%以上の澱粉は、好ましくはハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量は、40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0021】
また、成分(A)は、冷水膨潤度について特定の条件(3)を満たすとともに、粒度が特定の条件(4)および(5)を満たす構成となっている。
まず、条件(3)に関し、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、成分(A)の冷水膨潤度は5以上であり、好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。
また、同様の観点から、成分(A)の冷水膨潤度は20以下であり、好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
ここで、成分(A)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0022】
次に、成分(A)の粒度を説明する。
条件(4)に関し、目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の粒子の含有量は、バッターが適用される食品の、保存後の外観および食感の劣化を抑制する観点から、成分(A)全体に対して20質量%以上であり、好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上である。
また、目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の粒子の含有量は、成分(A)全体に対して95質量%以下であり、同様の観点から、好ましくは91質量%以下であり、より好ましくは88質量%以下である。
【0023】
また、条件(5)に関し、目開き0.5mmの篩の篩上の粒子の含有量は、バッターが適用される食品の、油ちょう直後の衣のヒキを抑制する観点から、成分(A)全体に対して30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
また、目開き0.5mmの篩の篩上の粒子の含有量に下限はなく、成分(A)全体に対して0質量%以上であるが、バッターが適用される食品の、保存後の表面の様子や色調を好ましいものとする観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上である。
【0024】
また、成分(A)の粒度について、目開き0.075mmの篩の篩上の粒子の含有量は、バッターが適用される食品の、保存後の表面の様子や色調を好ましいものとする観点から、成分(A)全体に対して好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上、よりいっそう好ましくは50質量%以上、さらにまた好ましくは70質量%以上である。
また、目開き0.075mmの篩の篩上の粒子の含有量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下である。
【0025】
本実施形態において、成分(A)は、上記低分子化澱粉以外の澱粉を含む。成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉成分としては、様々な澱粉を使用することができる。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。成分(A)は、好ましくは、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上の澱粉を含有するのがよい。
【0026】
また、成分(A)は、澱粉以外の成分を含んでもよい。澱粉以外の成分の具体例としては、色素や炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩が挙げられる。
成分(A)は、不溶性塩を配合することが好ましく、不溶性塩の配合量は、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
次に、成分(A)の製造方法を説明する。成分(A)の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む。
(低分子化澱粉の調製工程)アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程。
(造粒工程)原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料を加熱糊化して造粒する工程。
【0028】
低分子化澱粉の調製工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、好ましくは酸処理である。
【0029】
また、造粒工程には、澱粉の造粒に使用されている一般的な方法を用いることができるが、所定の冷水膨潤度とする点で、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることが好ましい。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(A)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダーがより好ましい。エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10~60質量%程度に調整した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。
【0030】
本実施形態において、たとえば上記特定の原料を加熱糊化する工程、および、前記工程により加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整することにより、条件(3)~(5)を満たす成分(A)を得るとよい。
【0031】
以上により得られる成分(A)は、低分子化澱粉を含む澱粉粉状物であって、条件(1)~(5)を満たす構成となっているため、後述の成分(B)とともにバッター用組成物に配合されて、バッターが適用される食品の外観および食感の経時劣化を抑制することができるとともに、保存後再加熱した際にも、外観および食感の好ましいできたて感を食品に与えることができる。ここで、食感として、衣のクリスピー感、衣のヒキの抑制、および、食品の粉っぽさの抑制からなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくは衣のクリスピー感が挙げられる。
【0032】
バッター用組成物中の成分(A)の含有量は、バッターが適用される食品の表面の様子を好ましいものとし、クリスピー感を向上する観点から、バッター用組成物全体に対して好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上である。
また、バッターが適用される食品の衣のヒキを抑制する観点から、バッター用組成物中の成分(A)の含有量は、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下である。
【0033】
(成分(B))
成分(B)は、酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種の澱粉である。また、成分(A)における低分子化澱粉と同じであってもよく、異なっていてもよいが、好ましくは異なった澱粉である。
【0034】
成分(B)が酸化澱粉の場合、原料澱粉は未加工澱粉、またはアセチル化酸化澱粉等、酸化以外の加工処理がなされたものであってもよい。酸化澱粉が、酸化以外の加工処理がなされたものであるとき、酸化処理および他の加工処理の順番に制限はない。
成分(B)が酸処理澱粉の場合、原料澱粉は未加工澱粉、または酸処理以外の加工処理がなされたものであってもよい。酸処理澱粉が、酸処理以外の加工処理がなされたものであるとき、酸処理および他の加工処理の順番に制限はない。
【0035】
成分(B)が酸化澱粉の場合、原料澱粉の由来として、とうもろこし、高アミロースとうもろこし、もちとうもろこし(ワキシーコーン)、米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、もち馬鈴薯、キャッサバ、サゴヤシ等が挙げられる。
バッターが適用される食品の表面の様子を好ましいものとし、クリスピー感を向上する観点から、成分(B)の酸化澱粉の原料澱粉の由来は、好ましくはキャッサバである。
【0036】
成分(B)が酸処理澱粉の場合、原料澱粉の由来として、とうもろこし、高アミロースとうもろこし、もちとうもろこし(ワキシーコーン)、米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、もち馬鈴薯、キャッサバ、サゴヤシ等が挙げられる。
加熱調理して得られた食品の表面の様子を好ましいものとし、食感の経時劣化を抑制する観点から、成分(B)の酸処理澱粉の原料澱粉の由来は、好ましくはとうもろこしでありより好ましくはもちとうもろこし(ワキシーコーン)である。
【0037】
また、バッターが適用される食品の表面の様子を好ましいものとする観点および入手容易性に優れる観点から、成分(B)の原料澱粉の由来が、キャッサバおよびとうもろこしからなる群から選ばれる1種である。
【0038】
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量すなわち((B)/(A))は、加熱調理して得られた食品の表面の様子を好ましいものとし、食感の経時劣化を抑制する観点から、質量比で、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.6以上である。
また、バッターが適用される食品の衣のヒキを抑制する観点から、上記質量比((B)/(A))は、好ましくは8以下であり、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、さらにより好ましくは3以下である。
【0039】
また、加熱調理して得られた食品の外観および食感の経時劣化を抑制する観点から、バッター用組成物において、好ましくは、成分(A)の含有量が、バッター用組成物全体に対して3.0質量%以上55質量%以下であり、かつ、質量比((B)/(A))が0.4以上8以下である。
【0040】
バッター用組成物中の成分(B)の含有量は、具体的には、バッター用組成物中の成分(A)の含有量に応じて、質量比((B)/(A))が上述の範囲になるように設定することができる。
【0041】
本実施形態におけるバッター用組成物は、成分(A)および(B)を含むため、バッターが適用される食品の外観および食感の経時劣化を抑制することができるとともに、保存後再加熱した際にも、外観および食感の好ましいできたて感を食品に与えることができる。
ここで、食感として、衣のクリスピー感、および、衣のヒキの抑制からなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくは衣のクリスピー感が挙げられる。
【0042】
バッター用組成物は、成分(A)および(B)のみから構成されてもよいし、他の成分をさらに含んでもよい。
【0043】
たとえば、バッター用組成物は、加熱調理して得られた食品の衣のクリスピー感を向上させる観点から、好ましくは成分(C)として、リン酸架橋タピオカ澱粉をさらに含む。なお、成分(C)は、前述の成分(A)および(B)以外の澱粉である。
【0044】
バッター用組成物が成分(C)をさらに含むとき、成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量すなわち((C)/(A))は、質量比で、食品の色調を好ましいものとする観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.8以上である。
また、加熱調理して得られた食品の衣のクリスピー感を向上させる観点から、上記質量比((C)/(A))は、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは6.0以下、さらにより好ましくは3.0以下である。
【0045】
バッター用組成物中の成分(C)の含有量は、具体的には、バッター用組成物中の成分(A)の含有量に応じて、質量比((C)/(A))が上述の範囲になるように設定することができる。
【0046】
また、バッター用組成物は、成分(A)~(C)以外の粉体原料をさらに含んでもよく、他の成分として、バッターに配合される粉体原料として後述するものが挙げられる。
【0047】
(バッター)
本実施形態において、バッターは、上述した成分(A)、成分(B)を必須成分とする粉体原料と、水と、を含み、これらの成分の配合順序に制限はない。たとえば、バッターは、上述した本実施形態におけるバッター用組成物を予め調製し、水および適宜他の成分と混合して得られるものであってもよい。また、バッターは、成分(A)、成分(B)および水ならびに適宜他の成分を所定の順序で混合して得られるものであってもよい。
バッターは、具体的には液状である。
【0048】
さらに具体的には、バッターは、バッターの原料中の粉体原料として、成分(A)および成分(B)を含み(粉体原料1)、質量比((B)/(A))が好ましくは0.4以上8以下であり、バッターが、バッターの原料中の粉体原料として、成分(C)をさらに含む(粉体原料2)とき、質量比((C)/(A))が好ましくは0.5以上10以下である。
また、成分(A)および成分(B)の合計量(または、バッターが成分(C)をさらに含む場合は成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量)が、粉体原料全体に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは41質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下である。
【0049】
粉体原料中の成分(A)および成分(B)の合計量、または、粉体原料が成分(C)をさらに含む場合は成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量は、食品の色調および衣のクリスピー感の向上の観点から、粉体原料全体に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは41質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上、よりいっそう好ましくは70質量%以上、さらにまた好ましくは75質量%以上である。
また、表面の様子の好ましさおよび衣のヒキを抑制する観点から、上記合計量は、粉体原料全体に対して好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは92質量%以下である。
【0050】
また、バッター中の上記合計量((A)+(B)+(C))は、食品の色調および衣のクリスピー感の向上の観点から、バッター全体に対して好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは22質量%以上、よりいっそう好ましくは32質量%以上である。
また、表面の様子の好ましさおよび衣のヒキを抑制する観点から、バッター中の上記合計量((A)+(B)+(C))は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは42質量%以下である。
バッターにおける質量比((B)/(A))および質量比((C)/(A))については、それぞれ、好ましくはバッター用組成物について前述した範囲とすることができる。
【0051】
バッターの原料のうち、粉体原料は、粉体原料1:前述の成分(A)および成分(B)、または、粉体原料2:成分(A)、成分(B)および成分(C)から構成されてもよい。また、粉体原料1および2のいずれの場合にも、粉体原料が成分(A)~(C)以外の成分をさらに含んでもよい。粉体原料のうち、成分(A)~(C)以外の成分として、未加工澱粉(生澱粉)、加工澱粉等の成分(A)~(C)以外の澱粉;薄力粉等の小麦粉、米粉等の穀粉;全卵粉等の乾燥卵;ベーキングパウダー等の膨張剤;粉末状の調味料;着色料;乳化剤が挙げられる。
【0052】
粉体原料は、加熱調理して得られた食品の衣のヒキを抑制する観点から、好ましくは穀粉をさらに含み、より好ましくは薄力粉をさらに含む。
粉体原料が薄力粉をさらに含むとき、その含有量は、衣のクリスピー感を向上し、ヒキを抑制する観点から、粉体原料全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上である。
また、食品の表面の様子を好ましいものとする観点から、薄力粉の含有量は、粉体原料全体に対して好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは59質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、よりいっそう好ましくは20質量%以下である。
【0053】
また、バッターは水を含む。バッター中の水の含有量は、バッターに含まれる水以外の成分の含有量を除いた残部とすることができる。
【0054】
本実施形態において、バッターは、具体的には、食品の衣に用いられるバッターであり、好ましくは唐揚げ、天ぷらおよびフリッターからなる群から選択される食品のバッターである。
【0055】
本実施形態のバッターを用いることにより、たとえば、食品の外観の劣化を抑制することができる。外観とは、好ましくは表面のごつごつ感と加熱解凍後の色調である。
また、本実施形態のバッターを用いることにより、たとえば、食品の食感の劣化を抑制することができる。食感とは、好ましくはクリスピー感である。
【0056】
(食品)
本実施形態において、食品は、前述のバッター用組成物またはバッターを用いて得られる。食品は、具体的には、種物と種物の外側に設けられた衣とを有し、衣は、前述のバッター用組成物またはバッターを用いて得られるものである。
また、食品の製造方法は、たとえば、前述のバッターを種物の外側に付着させる工程と、バッターが付着した種物を加熱調理して食品を得る工程と、を含む。
【0057】
種物として、たとえば鶏肉等の肉類;魚、貝、エビ等の魚介類;イモ類等の野菜類;ドーナツ、カステラ、饅頭等の菓子類;かまぼこ等の水練り製品などが挙げられる。
【0058】
バッターを種物の外側に付着させる工程において、バッターは、種物の一部を被覆してもよいし、種物全体を被覆してもよい。また、バッターは、種物の一部に付着してもよいし、種物全体に付着してもよい。
【0059】
加熱調理して食品を得る工程における調理形態の具体例としては、100~200℃程度の食用油中での油ちょう;薄く油をひいたフライパン、鉄板上での加熱;オーブン等での乾熱;マイクロ波加熱調理;スチームコンベクションオーブン等での加熱調理が挙げられ、衣の食感を向上する観点から、好ましくは油ちょうである。また、食品は、具体的にはこれらの加熱調理を経て得られるものであり、さらに具体的には揚げ物である。
【0060】
また、食品の製造方法は、食品を得る工程の後、食品を冷凍保存する工程をさらに含んでもよい。冷凍保存における温度は、たとえば-10~-50℃程度とすることができる。
【0061】
また、食品の製造方法は、冷凍保存する工程の後、食品を加熱解凍する工程をさらに含んでもよい。加熱解凍する工程においては、食感を好ましいものとする観点から、好ましくは電子レンジまたはスチームコンベクションオーブンを用いて加熱解凍する。
【0062】
本実施形態における食品は、前述のバッターを用いて得られるため、外観および食感の経時劣化が抑制され、保存後再加熱した際にも、外観および衣の食感について好ましいできたて感が得られる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 以下の成分(A)および(B):
(A)以下の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
を含み、水に分散させて用いられる、バッター用組成物。
2. 当該バッター用組成物中の前記成分(A)の含有量が、当該バッター用組成物全体に対して3.0質量%以上55質量%以下であり、
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)の含有量が、質量比で、0.4以上8以下である、1.に記載のバッター用組成物。
3. 前記成分(B)の原料澱粉の由来が、キャッサバおよびとうもろこしからなる群から選ばれる1種である、1.または2.に記載のバッター用組成物。
4. 前記成分(A)において、アミロース含量5質量%以上である前記澱粉が、アミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである、1.乃至3.いずれか1つに記載のバッター用組成物。
5. 前記成分(A)において、前記低分子化澱粉が、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、1.乃至4.いずれか1つに記載のバッター用組成物。
6. 前記成分(A)が、前記低分子化澱粉以外の澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、1.乃至5.いずれか1つに記載のバッター用組成物。
7. 成分(C)としてリン酸架橋タピオカ澱粉をさらに含む、1.乃至6.いずれか1つに記載のバッター用組成物。
8. 前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下である、7.に記載のバッター用組成物。
9. 前記バッターが、唐揚げ、天ぷらおよびフリッターからなる群から選択される食品のバッターである、1.乃至8.いずれか1つに記載のバッター用組成物。
10. バッターの中の粉体原料として、以下の成分(A)および成分(B)を含み、
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B)の含有量が、質量比で、0.4以上8以下であり、
当該バッターが以下の成分(C)をさらに含むとき、前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で、0.5以上10以下であり、
前記成分(A)および前記成分(B)の合計量、または、当該バッターが前記成分(C)をさらに含むとき前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)の合計量が、前記粉体原料全体に対して20質量%以上100質量%以下である、バッター。
(A)以下の条件(1)~(5)を満たす澱粉粉状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ0.075mmの篩の篩上の含有量が20質量%以上95質量%以下
(5)目開き0.5mmの篩の篩上の含有量が30質量%以下
(B)酸化澱粉および酸処理澱粉からなる群から選択される1種または2種
(C)リン酸架橋タピオカ澱粉
11. 前記粉体原料が小麦粉を前記粉体原料全体に対して5質量%以上59質量%以下含む、10.に記載のバッター。
12. 当該バッター中の前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の含有量の合計が、当該バッター全体に対して8質量%以上50質量%以下である、10.または11.に記載のバッター。
13. 10.乃至12.いずれか1つに記載のバッターを種物の外側に付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記種物を加熱調理して食品を得る工程と、
を含む、食品の製造方法。
14. 食品を得る前記工程の後、前記食品を冷凍保存する工程をさらに含む、13.に記載の食品の製造方法。
15. 冷凍保存する前記工程の後、前記食品を加熱解凍する工程をさらに含む、14.に記載の食品の製造方法。
16. 10.乃至12.いずれか1つに記載のバッターを用いる、食品の外観の劣化を抑制する方法。
17. 10.乃至12.いずれか1つに記載のバッターを用いる、食品の食感の劣化を抑制する方法。
【実施例】
【0063】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
以下の例において、断りのない場合、「%」とは、「質量%」である。また、断りのない場合、「部」とは、「質量部」である。
【0064】
(原材料)
原材料として、主に以下のものを使用した。
薄力粉:「フラワー」、日清製粉株式会社製
低分子化澱粉:後述する製造例1で製造した酸処理ハイアミロースコーンスターチ
澱粉粉状物1および2:製造例2で得られた澱粉粉状物
酸化澱粉:製造例3で得られた酸化澱粉
酸処理澱粉:製造例4で得られた酸処理澱粉
リン酸架橋タピオカ澱粉:「アクトボディー TP-4W」、株式会社J-オイルミルズ製
コーンスターチ(β澱粉):「J-オイルミルズ コーンスターチY」、株式会社J-オイルミルズ製
ハイアミロースコーンスターチ:「J-オイルミルズ HS-7」株式会社J-オイルミルズ製、アミロース含量70質量%
パプリカパウダー:エスビー食品株式会社製
キサンタンガム:「キサンタンガムFJ」、丸善薬品産業株式会社製
【0065】
(製造例1)低分子化澱粉の製造
本例では、澱粉組成物1および2の原料となる低分子化澱粉として酸処理ハイアミロースコーンスターチを製造した。
【0066】
(酸処理ハイアミロースコーンスターチの製造方法)
ハイアミロースコーンスターチを水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0067】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過をおこない、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM NaNO3含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0068】
(製造例2)澱粉粉状物1および2の製造
β澱粉79質量%、上述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。
【0069】
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、以下の配合割合で混合し、以下の澱粉粉状物1および2を調製した。澱粉粉状物中の各画分の質量比を表1に示す。また、得られた澱粉粉状物の冷水膨潤度を、後述の方法で測定した値を合わせて示す。
【0070】
【0071】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0072】
(製造例3)
本例では、未加工のタピオカ澱粉を原料澱粉として、以下の手順で酸化澱粉を得た。
500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。
得られたスラリーの温度を38℃にした後、300rpmで撹拌しながら次亜塩素酸ナトリウム水溶液を澱粉乾物換算質量濃度で3.0%となるように投入し、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pH8.25にした。
その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、酸化澱粉を得た。反応終了は、スラリーを少量サンプリングして飽和ヨウ化カリウム水溶液に滴下し、紫色を呈しなくなった時点とした。
反応終了を確認後、スラリーに3質量%塩酸を添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、酸化澱粉を得た。
【0073】
(製造例4)
本例では、未加工のワキシーコーンスターチを原料澱粉として、以下の手順で酸処理澱粉を得た。
40質量%のワキシーコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製)の水分散液320質量部に6質量%塩酸を80質量部添加し、40℃で24時間攪拌することで酸処理を行った。酸処理後、pHが5になるように消石灰を用いて中和した後、洗浄、乾燥をおこない、酸処理澱粉を得た。
【0074】
(実験例1~6)
本例では、唐揚げの作製および評価をおこなった。
(唐揚げの製造方法)
1.鶏モモ肉をカットし、約25g/個とした。
2.1.の鶏肉をラミジップ(スタンドタイプLZ―22、株式会社生産日本社製)に入れ、後述する組成のピックル液を加えて真空包装機(MZC-300-C、株式会社ハギオス社製)にて、以下の条件で真空にした後、4℃、90分タンブリングした。
(真空条件)
空気の排出:15秒
密閉シール:中温2秒
3.タンブリング後の鶏肉に、打ち粉(「HB-5000」、株式会社J-オイルミルズ製)を鶏肉に対して4質量%添加し、まぶした。
4.打ち粉をまぶした鶏肉を、表1~表6に記載の各例のバッター液を鶏肉に対し20質量%添加し、バッタリングした。なお、比較例1-3については、バッター液として薄力粉11.4質量部、増粘多糖類0.09質量部、パプリカパウダー0.06質量部、水18.45質量部を混合したものを使用し、表1の組成でブレッダーを作製し、前述のバッターをつけた鶏肉にまぶした。
5.バッタリング後の鶏肉を、キャノーラ油中で190℃、4分半油ちょうした。
6.油ちょう後の鶏肉をバットにならべ、バットごと-20℃にて冷凍し、その後、鶏肉をチャック袋に移して-20℃にて3日間冷凍保存した。
7.冷凍3日後の唐揚げ4個を紙皿に並べ、電子レンジ強(1400W)で45秒加熱解凍した。
8.以上の手順により得られた唐揚げの外観および食感を評価した。評価項目および採点基準を以下に示す。
【0075】
(ピックル液の組成)
原材料 配合率(%)
「ハイトラストTC-500」(株式会社J-オイルミルズ製) 10
上白糖 4
食塩 4
グルタミン酸Na 1.4
白コショウ 0.16
醤油 20
氷水 60.44
合計 100
【0076】
(外観評価)
専門パネラーが目視にて唐揚げの表面の様子および色調を以下の採点基準で評価し、2点超のものを合格とした。
(唐揚げ表面の様子)
5:ゴツゴツ(チリチリが多く凹凸がはっきりしている状態)
4:ややゴツゴツ(チリチリがあり凹凸がややはっきりしている状態)
3:やや滑らか(チリチリはないが凹凸がわずかに見られる状態)
2:滑らか(チリチリがなく凹凸がない状態)
1:衣が薄く肉がところどころ露出した素揚げ状
(唐揚げ色調)
5:唐揚げらしい非常に良好なきつね色
4:わずかに薄いまたはわずかに濃いが、唐揚げらしい良好なきつね色
3:やや薄いきつね色またはやや濃いきつね色
2:やや加熱不足を思わせる薄いきつね色またはやや加熱過剰を思わせる濃いきつね色
1:加熱不足を思わせる白色または加熱過剰を思わせる焦げ色
【0077】
(食感評価)
専門パネラーが唐揚げ衣のクリスピー感、衣にヒキがあるかどうか(以下、単に「衣にヒキ」ともいう。)、および、食感の粉っぽさを以下の採点基準で官能評価し、2点超のものを合格とした。ここで、衣にヒキがあるとは、衣の歯切れが悪く、噛みきりにくい状態を指す。
(衣のクリスピー感)
6:大変クリスピーである
5:かなりクリスピーである
4:クリスピーである
3:ややクリスピーである
2:あまりクリスピーではない
1:全くクリスピーではない
(衣にヒキ)
6:全くヒキがない食感
5:ほとんどヒキがない食感
4:あまりヒキがない食感
3:わずかにヒキがある食感
2:ややヒキがある食感
1:とてもヒキがある食感
【0078】
(実験例1:対照例、実施例1-1~1-3、比較例1-1~1-3)
比較例1-3以外の例については、表2に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。得られたバッターを用いて前述の方法で唐揚げを作製し、評価した。
比較例1-3については、表2に記載の原材料のうち、粉体原料を混合して組成物を得た。そして、得られた上記組成物を、冷水に分散させずにそのまま、前述のバッターを付けた後ブレッダーとして用いて前述の方法に準じて唐揚げを作製し、評価した。
外観の評価では、評価者2名の合議により採点した。食感の評価では、評価者2名の合議により採点した。評価結果を表2にあわせて示す。
【0079】
【0080】
表2より、各実施例のバッター組成物およびバッターを用いることにより、冷凍後再加熱した際にも、外観および食感について、好ましいできたて感のある唐揚げが得られた。
具体的には、成分(A)と成分(B)を所定量含むバッターを用いて作製した唐揚げはいずれも、唐揚げの表面や色調に優れ、衣の食感にも優れていた。また、実施例1-2のように成分(C)をさらに含む場合、衣のクリスピー感が向上した。また小麦粉を含む実施例1-2と小麦粉を含まない実施例1-3を比較した場合、小麦粉を含む実施例1-2の方がクリスピー感や衣のヒキの点で優れていた。比較例1-3では、実施例1-2と同じ組成の物をブレッダーとして用いたが、この場合、唐揚げの色調がやや暗く変色し、かつクリスピー感がやや劣り粉っぽさも感じられ、あまり好ましいものではなかった。
【0081】
(実験例2:実施例2-1~2-4)
表3に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。得られたバッターを用いて前述の方法で唐揚げを作製し、評価した。外観の評価では、評価者2名の合議により採点した。食感の評価では、評価者2名が各自採点し、その平均点を評点とした。評価結果を表3にあわせて示す。
【0082】
【0083】
表3より、各実施例のバッター組成物およびバッターを用いることにより、冷凍後再加熱した際にも、外観および食感について、好ましいできたて感のある唐揚げが得られた。
具体的には、成分(A)を粉体原料中4.9質量%から27.0質量%の範囲で含み、成分(B)を含むバッターを用いて作製した唐揚げは、いずれも唐揚げの表面や色調に優れ、衣の食感にも優れていた。
唐揚げの表面の様子および衣のヒキに関しては、成分(A)を粉体原料中4.9質量%以上27.0質量%以下含む場合良好であり、19.8質量%以上27.0質量%以下含む場合により良好であった。唐揚げの色調に関しては成分(A)を粉体原料中4.9質量%以上27.0質量%以下含む場合良好であり、4.9質量%以上19.8質量%以下含む場合、より良好であった。クリスピー感に関しては、成分(A)を粉体原料中4.9質量%以上27.0質量%以下含む場合良好であり、9.9質量%以上27.0質量%以下含む場合により良好であり、19.8質量%以上27.0質量%以下含む場合さらにより良好であった。
【0084】
(実験例3:実施例3-1~3-4、比較例3-1)
表4に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。得られたバッターを用いて前述の方法で唐揚げを作製し、評価した。外観の評価では、評価者3名が各自採点し、その平均点を評点とした。食感の評価では、評価者3名の合議により採点した。評価結果を表4にあわせて示す。
【0085】
【0086】
表4より、各実施例のバッター組成物およびバッターを用いることにより、冷凍後再加熱した際にも、外観および食感について、好ましいできたて感のある唐揚げが得られた。
唐揚げの表面の様子に関しては、成分(A)に対する成分(B)の質量比((B)/(A))が1.0以上2.0以下の場合、良好であり、1.5以上2.0以下の場合、より良好であった。唐揚げの色調および衣のヒキに関しては、質量比((B)/(A))が1.0以上2.0以下の場合、良好であり、1.5の場合、より良好であった。クリスピー感に関しては、質量比((B)/(A))が1.0以上2.0以下の場合、良好であり、1.5以上2.0以下の場合、より良好であった。
【0087】
(実験例4:実施例4-1、4-2、比較例4-1)
表5に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。得られたバッターを用いて前述の方法で唐揚げを作製し、評価した。外観の評価では、評価者3名が各自採点し、その平均点を評点とした。食感の評価では、評価者3名の合議により採点した。評価結果を表5にあわせて示す。
【0088】
【0089】
表5より、各実施例のバッター組成物およびバッターを用いることにより、冷凍後再加熱した際にも、外観および食感について、好ましいできたて感のある唐揚げが得られた。
一方、比較例4-1のバッター組成物およびバッターは、成分(B)を含まないため、冷凍後再加熱した際に、唐揚げの色調および衣のヒキについて、好ましいできたて感が得られなかった。
また、表2~表5より、成分(A)、(B)および(C)の合計量が粉体原料中49.5質量%から90.0質量%の範囲であるバッターを用いて作製した唐揚げは、いずれも唐揚げの表面や色調に優れ、衣の食感にも優れていた。
唐揚げの表面の様子に関しては、成分(A)、(B)および(C)の合計量が粉体原料中、49.5質量%以上90.0質量%以下の場合良好であった。クリスピー感に関しては、成分(A)、(B)および(C)の合計量が粉体原料中、49.5質量%以上90.0質量%以下の場合良好であり、74.2質量%以上90.0質量%以下の場合により良好であった。衣のヒキに関しては、成分(A)、(B)および(C)の合計量が粉体原料中、49.5質量%以上90.0質量%以下の場合良好であった。
【0090】
(実験例5:対照例、実施例5-1~5-3)
表6に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。得られたバッターを用いて前述の方法で唐揚げを作製し、前述の方法で評価した。ただし、本実験では、前述の評価方法に加え、油ちょう直後、油ちょう後室温で4時間静置しそのまま喫食した場合の評価も併せておこなった。
外観の評価では、評価者3名が各自採点し、その平均点を評点とした。食感の評価では、評価者2名が各自採点し、その平均点を評点とした。評価結果を表6にあわせて示す。
【0091】
【0092】
表6より、各実施例のバッター組成物およびバッターを用いることにより、油ちょう直後、油ちょう4時間後および冷凍後再加熱した際にも、外観および食感について、好ましいできたて感のある唐揚げが得られた。
成分(A)として、澱粉粉状物1を使用した場合と澱粉粉状物2を使用した場合では、油ちょう直後の唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調、クリスピー感はいずれも好ましく、衣のヒキに関しては澱粉粉状物1がより優れていた。油ちょう4時間後では、唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調、クリスピー感は澱粉粉状物2がより優れていた。冷凍後再加熱した際には、唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調において、澱粉粉状物1がわずかに優れていた。
また、成分(B)として、酸化澱粉を使用した場合と酸処理澱粉を使用した場合では、油ちょう直後の唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調、衣のヒキ、クリスピー感はいずれも非常に好ましかった。油ちょう4時間後では、唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調、クリスピー感は酸処理澱粉がやや優れており、衣のヒキに関しては酸化澱粉がやや優れていた。冷凍後再加熱した際には、唐揚げ表面の様子、唐揚げ色調、衣のヒキにおいて、酸化澱粉がより好ましく、クリスピー感に関しては酸処理澱粉の方が好ましかった。
本実施例で得られた唐揚げは、油ちょう直後と比較して、油ちょう4時間後および冷凍後再加熱した際の経時劣化が少なく、好ましいできたて感のあるものであった。
【0093】
(実験例6)
前述の実験例5における実施例5-1~5-3について、油ちょう直後、油ちょう後室温で4時間静置、および冷凍保存後再加熱した各唐揚げについて、外観および食感のできたて感を油ちょう直後のものと比較し、評価した。以下の評価基準で評価者2名が各自採点し、その平均点を評点とし、2点超のものを合格とした。評価結果を表7に示す。
(できたて感)
6:できたてものと全く同等である
5:できたてものとほぼ同等である
4:できたてものとおおむね同等である
3:できたてものに比べ少し劣る
2:できたてものに比べ劣る
1:できたてものに比べ大きく劣る
【0094】
【0095】
表7より、本実施形態で得られた唐揚げは、油ちょう直後と比較して、油ちょう4時間後および冷凍後再加熱した際の継時劣化が少なく、好ましいできたて感のあるものであった。澱粉粉状物2(実施例5-2)を使用した場合、澱粉粉状物1(実施例5-1)と比べて4時間後、および冷凍保存後再加熱の際のできたて感がより優れていた。
また、成分(B)として、酸化澱粉を使用した場合(実施例5-1)と酸処理澱粉(実施例5-3)では、酸化澱粉の方が冷凍保存後再加熱の際のできたて感がより優れていた。
【0096】
(実験例7:対照例、実施例6-1~6-4)
本例では、エビの天ぷらの製造および評価をおこなった。
【0097】
(原材料)
原材料として、以下のものを使用した。
天ぷら粉:「黄金」、昭和産業株式会社製
その他の原材料は前述のものを用いた。
【0098】
(エビの天ぷらの製造方法)
表8に記載の原材料のうち、粉体原料を混合してバッター用組成物を得た。そして、得られたバッター用組成物と冷水とを混合し、各例のバッターを得た。
解凍した尾付きのばしエビ(約10cm/1尾)に、打ち粉をまぶしたのち、各例のバッターをまぶした。
キャノーラ油で170℃、3分間揚げてエビの天ぷらを得た。
4時間室温で静置した後、喫食し、パネラー2名で評価した。
【0099】
【0100】
各実施例のバッター用組成物を用いて作製されたエビの天ぷらは、対照例と比較して、調理直後および調理から4時間後でも、喫食した際の衣のクリスピー感が優れていた。さらに具体的には、((A)+(B)+(C)))を、粉体原料中25質量%以上50質量%以下含む場合(実施例6-1~6-4)クリスピー感が優れており、42.8質量%以上50質量%以下含む場合(実施例6-1、6-2および6-4)、より優れていた。
【0101】
この出願は、2018年12月4日に出願された日本出願特願2018-227443号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。