(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】非対称真空絶縁グレージングユニット
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20240215BHJP
C03C 3/076 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20240215BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20240215BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C03C27/06 101D
C03C27/06 101K
C03C3/076
C03C3/078
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
E06B3/677
(21)【出願番号】P 2020563521
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019062182
(87)【国際公開番号】W WO2019219592
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ベン トラド, アブデッラゼク
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフィル, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, ピエール
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1999/059931(WO,A1)
【文献】米国特許第06309733(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
E06B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸X及び垂直軸Zによって画定された平面Pに沿って延在し、前記長手方向軸Xに沿って測定された幅W及び前記垂直軸Zに沿って測定された長さLを有する真空絶縁グレージングユニット(10)であって、
a.厚さZ1を有する第1のガラス板(1)及び厚さZ2を有する第2のガラス板(2)であって、前記厚さは、前記平面Pに垂直な方向に測定され、Z1は、Z2より大きく(Z1>Z2)、前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、フロート焼鈍ガラス板であるもの、
b.前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間に位置付けられ、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の距離を維持し、且つピッチλを有する配列を形成する非接触型スペーサ(3)の組、
c.密閉接着シール(4)であって、その周囲の上で前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の前記距離を密封する密閉接着シール(4)、
d.前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板並びに前記非接触型スペーサの組によって画定され、且つ前記密閉接着シールによって閉鎖された内部容積Vであって、0.1ミリバール未満の絶対圧力の真空が存在する、内部容積V
を含む真空絶縁グレージングユニット(10)において、
前記真空絶縁グレージングユニットの前記長さLは、800mm以上であり(L≧800mm)、及び前記真空絶縁グレージングユニットの前記幅Wは、500mm以上であること(W≧500mm)、
前記第2のガラス板の前記厚さZ2に対する前記第1のガラス板の前記厚さZ1の厚さ比Z1/Z2は、1.10以上であること(Z1/Z2≧1.10)、
前記ピッチλは、10mm~40mmであること(10mm≦λ≦40mm)、及び
前記第2のガラス板の前記厚さZ2は、4mm以上であり(Z2≧4mm)、且つ(λ-15mm)/5以上であること(Z2≧(λ-15mm)/5)
を特徴とする真空絶縁グレージングユニット(10)。
【請求項2】
前記厚さ比Z1/Z2は、1.20以上であり(Z1/Z2≧1.20)、好ましくは1.30以上であり(Z1/Z2≧1.30)、より好ましくは1.55以上であり(Z1/Z2≧1.55)、更により好ましくは1.60~6.00であり(1.60≦Z1/Z2≦6.00)、理想的には2.00~4.00である(2.00≦Z1/Z2≦4.00)、請求項1に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項3】
前記ピッチλは、15mm~35mmであり(15mm≦λ≦35mm)であり、好ましくは20mm~30mmである(20mm≦λ≦30mm)、請求項1又は2に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項4】
前記真空絶縁グレージングユニットの前記長さLは、1000mm以上であり(L≧1000mm)、好ましくは1200mm以上である(L≧1200mm)、請求項1~3のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項5】
前記真空絶縁グレージングユニットの前記幅Wは、600mm以上であり(W≧600mm)、好ましくは800mm以上であり(W≧800mm)、より好ましくは1000mm以上であり(W≧1000mm)、更により好ましくは1200mm以上である(W≧1200mm)、請求項1~4のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項6】
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板の少なくとも1つ、好ましくは前記第2のガラス板は、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、又はホウケイ酸塩ガラスから作られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項7】
前記第2のガラス板の組成は、ガラスの総重量に対して表される重量パーセントにおいて、以下のものを含む、請求項6に記載の真空絶縁グレージングユニット:
SiO
2 60~78重量%、
Al
2O
3 0~8重量%、
B
2O
3 0~4重量%、
Na
2O 5~20重量%、好ましくは10~20重量%、
CaO 0~15重量%、
MgO 0~12重量%、
K
2O 0~10重量%、
BaO 0~5重量%。
【請求項8】
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、それぞれ外板面(13及び23)を有し、前記外板面(13、23)は、前記真空絶縁グレージングユニットの外側に面しており、前記外板面(13及び23)の少なくとも1つは、積層アセンブリを形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって少なくとも1つのガラスシートに積層される、請求項1~7のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項9】
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、それぞれ内板面(12、22)及びそれぞれ外板面(13、23)を有し、前記内板面は、前記内部容積Vに面しており、前記内面(12、22)及び/又は外面(13、23)の少なくとも1つは、少なくとも熱線反射フィルム又は低放射フィルム(5)を与えられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項10】
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板の前記外板面(13及び/又は23)の少なくとも1つは、周囲スペーサバーを介して前記真空絶縁グレージングユニットの周囲に沿って第3のガラス板に結合され、周縁シールによって密封された絶縁空洞を生成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項11】
前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板は、それぞれ第1の周縁部及び第2の周縁部を含み、前記第1の周縁部は、前記第2の周縁部から窪まされるか、又は前記第2の周縁部は、前記第1の周縁部から窪まされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニット。
【請求項12】
第1の温度Temp1を有する第1の空間を、第2の温度Temp2を有する第2の空間から分離する仕切りであって、Temp1は、Temp2より低く、前記仕切りは、請求項1~11のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニットによって閉鎖される開口を含み、前記第1のガラス板は、前記第1の空間に面している、仕切り。
【請求項13】
第1の温度Temp1を有する第1の空間及び第2の温度Temp2を有する第2の空間を画定する仕切りの開口を閉鎖するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の真空絶縁グレージングユニットの使用であって、Temp1は、Temp2より低く、前記第1のガラス板は、前記第1の空間に面している、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板(複数)が異なる厚さである真空絶縁グレージングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
真空絶縁グレージングユニットは、それらの高性能の断熱のために推奨される。真空絶縁グレージングユニットは、典型的にはその中に真空が発生した内部空間によって分離された少なくとも2つのガラス板から構成される。概して、高性能の断熱(熱貫流率Uは、U<1.2W/m2Kである)を達成するために、グレージングユニットの内側の絶対圧力は、典型的には0.1ミリバール以下であり、概して、2つのガラス板の少なくとも1つは、低放射率層で覆われる。このような圧力をグレージングユニットの内側に得るために、密閉接着シールは、2つのガラス板の周囲上に置かれ、真空は、ポンプによってグレージングユニットの内側に発生する。グレージングユニットが(グレージングユニットの内部と外部との圧力差に起因して)大気圧下で潰れることを防ぐために、非接触型スペーサが、2つのガラス板間に置かれる。
【0003】
真空絶縁グレージングユニットは、異なる外部応力に抵抗するために慎重に寸法決定する必要がある。特に、真空絶縁グレージングユニットを寸法決定する際に考慮する主な外部応力は、外部環境と内部環境との温度差によって誘発される熱応力及び大気圧誘発応力である。
【0004】
内部環境に面するガラス板は、内部環境の温度に近い温度を取り込み、外部環境に面するガラス板は、外部環境の温度に近い温度を取り込む。最も厳しい天候条件において、内部環境と外部環境との差は、40℃以上に達する可能性がある。内部環境と外部環境との温度差は、ガラス板の内側に誘発される熱応力を引き起こすことがある。一部の過酷な場合、例えば温度差が40℃以上であるとき、誘発された熱応力は、真空絶縁グレージングユニットを砕くことがある。この誘発された熱応力に抵抗するために、両方のガラス板の厚さを増加させるなどの様々な解決策が当技術分野で提供されてきた。ガラス板に強い日光が当たる場合でも変形又は湾曲が生じないように、真空絶縁グレージングユニットを改善する方法に対処する別の解決策が日本特許第2001316137号明細書で提案されている。日本特許第2001316137号明細書は、室内側面に配置された内部ガラス板が外部ガラス板より厚いグレージングの設計を教示している。反対に、日本特許第2001316138号明細書は、衝撃耐性及び音響を改善するために屋外側面に配置された外部ガラス板が内部ガラス板より厚い、反対のVIG構造を教示している。
【0005】
しかし、当技術分野のいずれのものも、ガラス板が外部環境と内部環境との温度差に曝される真空絶縁グレージングユニット内で誘発される熱応力への耐性を改善する技術問題に対処していない。更に、当技術分野のいずれのものも、ピラーの場所における大気圧誘発応力の技術問題に対処しておらず、高性能の断熱を維持しながら、この組み合わせた外部応力に対する改善した耐性を実証する真空絶縁グレージングユニットを設計する方法は、更に少ない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、長手方向軸X及び垂直軸Zによって画定された平面Pに沿って延在し、長手方向軸Xに沿って測定された幅W及び垂直軸Zに沿って測定された長さLを有する真空絶縁グレージングユニットに関する。真空絶縁グレージングユニットの長さLは、800mm以上であり(L≧800mm)、及び真空絶縁グレージングユニットの幅Wは、500mm以上である(W≧500mm)。真空絶縁グレージングユニットは、
a)厚さZ1を有する第1のガラス板及び厚さZ2を有する第2のガラス板であって、Z1は、Z2より大きく(Z1>Z2)、第2のガラス板の厚さZ2に対する第1のガラス板の厚さZ1の厚さ比Z1/Z2は、1.10以上であり(Z1/Z2≧1.10)、厚さは、平面Pに垂直な方向に測定され、第1のガラス板及び第2のガラス板は、フロート焼鈍ガラス板であるもの、
b)第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を維持し、且つピッチλを有する配列を形成する、非接触型スペーサの組であって、ピッチλは、10mm~40mmである(10mm≦λ≦40mm)、非接触型スペーサの組、
c)密閉接着シール(4)であって、その周囲の上で第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を密封する密閉接着シール(4)、
d)第1のガラス板及び第2のガラス板並びに非接触型スペーサの組によって画定され、且つ密閉接着シールによって閉鎖された内部容積Vであって、0.1ミリバール未満の絶対圧力の真空が存在する、内部容積V
を含む。
【0007】
本発明の真空絶縁グレージングユニット内において、第2のガラス板の厚さZ2は、4mm以上であり(Z2≧4mm)、且つ(λ-15mm)/5以上である(Z2≧(λ-15mm)/5)。
【0008】
本発明は、第1の温度Temp1を有する第1の空間を、第2の温度Temp2を有する第2の空間から分離する仕切りであって、Temp1は、Temp2より低い、仕切りに更に関する。前記仕切りは、本発明による真空絶縁グレージングユニットによって閉鎖される開口を含み、好ましくは、第1のガラス板は、第1の空間に面している。本発明は、このような仕切りの開口を閉鎖するための、本発明による真空絶縁グレージングユニットの使用に更に関する。
【0009】
実施形態の他の態様及び利点は、例として記載された実施形態の原理を例示する添付図面と共に以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による真空絶縁されたグレージングの断面図を示す。
【
図2】Z1/Z2の厚さ比の関数として、ΔT=40℃でガラス板について計算された最大熱応力(σΔTMax)の相互関係の有限要素モデル化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
内部環境と外部環境との温度差及び誘発される大気圧によって誘発される応力の組合せに対する高性能の断熱及び改善された耐性を実証する真空絶縁グレージングユニット(以下ではVIGと呼ぶ)を提供することが本発明の目的である。
【0012】
驚くべきことに、本発明の真空絶縁グレージングユニットは、非対称であるとき、すなわち第1のガラス板が第2のガラス板より厚く(Z1>Z2)、従って特定の比Z1/Z2によって特徴付けられ、最小長(L)及び最小幅(W)を含む特定の大きさ、スペーサ間の特定の間隔(λ)並びに第2のガラス板の特定の厚さ(Z2)によって慎重に寸法決定され、第2のガラス板の厚さが第2の板の最小厚さとピッチとの間の特定の関係を満たすように慎重に寸法決定されるとき、同じ総厚さの対応する対称真空絶縁グレージングより、良好な組合せ応力抵抗を与えることが発見された。
【0013】
本発明の真空絶縁グレージングユニットは、以下で「非対称VIG」と呼ばれる。
【0014】
本発明は、典型的に第1のガラス板及び第2のガラス板を含むVIGに関し、第1のガラス板及び第2のガラス板は、前記板を、典型的には50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~150μmの範囲の特定の距離だけ離して保持する非接触型スペーサの組によって一緒に関連付けられ、内部空間は、少なくとも1つの第1の空洞を含み、その空洞には0.1ミリバール未満の絶対圧力の真空が存在し、前記空間は、前記内部空間を中心にガラス板の周囲上に置かれた周囲密閉接着シールで閉鎖される。
【0015】
本発明は、長手方向軸X及び垂直軸Zによって画定された平面Pに沿って延在し、長手方向軸Xに沿って測定された幅W及び垂直軸Zに沿って測定された長さLを有するVIGに関する。本発明の非対称VIGの長さLは、800mm以上である(L≧800mm)。好ましい実施形態では、非対称VIGの長さLは、1000mm以上であり(L≧1000mm)、好ましくは1200mm以上である(L≧1200mm)。本発明の非対称VIGの幅Wは、500mm以上であり(W≧500mm)、好ましくは600mm以上であり(W≧600mm)、より好ましくは800mm以上であり(W≧800mm)、更により好ましくは1000mm以上であり(W≧1000mm)、理想的には1200mm以上である(W≧1200mm)。
【0016】
図1に例示されるように、本発明の非対称VIG(10)は、
a)厚さZ1を有する第1のガラス板(1)及び厚さZ2を有する第2のガラス板(2)であって、厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される、第1のガラス板(1)及び第2のガラス板(2)、
b)第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を維持し、且つピッチλを有する配列を形成する非接触型スペーサ(3)の組、
c)密閉接着シール(4)であって、その周囲の上で第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を密封する密閉接着シール(4)、
d)第1のガラス板及び第2のガラス板並びに非接触型スペーサの組によって画定され、且つ密閉接着シールによって閉鎖された内部容積Vであって、絶対圧力の真空は、0.1ミリバール未満である、内部容積V
を含む。
【0017】
本発明において、Z1は、第2のガラス板の厚さZ2に対する第1のガラス板の厚さZ1の厚さ比Z1/Z2が1.10以上であるように(Z1/Z2≧1.10)、Z2より大きい(Z1>Z2)。好ましい実施形態では、厚さ比Z1/Z2は、1.30以上であり(Z1/Z2≧1.30)、式Z1/Z2>Z1/(Z1-2.10)を満たす。更に好ましい実施形態では、厚さ比Z1/Z2は、1.55以上であり(Z1/Z2≧1.55)、好ましくは1.60~6.00(1.60≦Z1/Z2≦6.00)、好ましくは2.00~4.00である(2.00≦Z1/Z2≦4.00)。
【0018】
本発明において、非対称VIGの第2のガラス板の厚さZ2は、4mm以上である(Z2≧4mm)。典型的には、第2のガラス板の厚さZ2は、5mm以上であり得(Z2≧5mm)、更に6mm以上であり得(Z2≧6mm)、10mm以下、好ましくは8mm以下になる。しかし、誘発される熱に対する耐性を改善するために第2の板の厚さZ2を最小に保つことが好ましい。
【0019】
本発明において、第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、且つ第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を維持する、ピッチλとも呼ばれる非接触型スペーサ間の間隔は、10mm~40mmであり(10mm≦λ≦40mm)、好ましくは、ピッチは、15mm~35mm(15mm≦λ≦35mm)、より好ましくは20mm~30mmである(20mm≦λ≦30mm)。
【0020】
驚くべきことに、非対称VIGを設計するとき、第2のガラス板の最小厚さとピッチとの間に重大な関係があることが分かった。事実、第2の板の厚さZ2は、熱誘発応力と大気誘発応力との組合せに対する優れた耐性を与えるために、式Z2≧(λ-15mm)/5を満たすべきであることが分かった。そのため、本発明は、熱誘発応力と大気誘発応力との組合せに対する最適な耐性が、慎重に寸法決定された非対称VIG構成を介して達成され得るという驚くべき発見に基づく。
【0021】
非対称VIGを設計するという本発明の目的のために、ガラス板の外板面上の引張応力のみが考慮されている。事実、当業者に公知であるように、ガラス板を破壊する破断点までもたらすことがあるのは、引張応力である。更に、外板面上の引張応力のみが考慮される。外板面は、VIGの外部に面しているガラス板の面である。VIGの内部容積Vは、真空下にあり、従って基本的に水分がない。内板面、すなわちVIGの内部容積Vに面している内板面は、水蒸気の不在下で実質的により機械的な耐性があることが当業者に周知である。
【0022】
熱誘発応力
熱誘発応力は、第1のガラス板(1、T1)と第2のガラス板(2、T2)との間に温度差があるときに直ちに生じ、T1とT2との差が増加するにつれて増加する。温度差(ΔT)は、第1のガラス板(1)に対して計算された平均温度T1と、第2のガラス板(2)に対して計算された平均温度T2との絶対差である。ガラス板の平均温度は、当業者に公知の数値シミュレーションから計算される。熱誘発応力は、ガラス板間のこのような絶対温度差が30℃に達したとき、更に絶対温度差が過酷な条件で40℃より高いときにより問題になり、VIGを破壊するまでに至る。内部環境の温度は、典型的には20℃~25℃である一方、外部環境の温度は、冬季の-20℃から夏季の+35℃まで広がる可能性がある。従って、内部環境と外部環境との温度差は、過酷な条件では40℃超に達する可能性がある。従って、第1のガラス板(1)に対して計算された平均温度T1と、第2のガラス板(2)に対して計算された平均温度T2との温度差(ΔT)も同様に40℃超に達する可能性がある。
【0023】
熱誘発応力は、過酷な条件を代表するΔT=40℃で計算されており、第1の板の平均温度T1は、第2の板の平均温度T2より低い(T1<T2)。
【0024】
本発明は、熱誘発応力の低減が、より薄いガラス板Z2に対するより厚いガラス板Z1の比Z1/Z2は、1.1以上であるべきであり、好ましくは1.30以上であるべきである(Z1/Z2≧1.30)慎重に寸法決定された非対称VIG構成を介して達成され得るという驚くべき発見に基づく。Z1/Z2の厚さ比の関数として、ΔT=40℃及びT1<T2でガラス板について計算された最大熱応力(σΔTMax)の相互関係の有限要素モデリングの結果を示す
図2に例示されるように、厚さ比が高いほど熱誘発応力の低減が大きいことが更に分かった。
【0025】
図2では、最大に誘発された熱応力値は、第1のガラス板及び第2のガラス板で得られた最高値である。熱応力は、以下の条件で計算される。
- 温度ΔT=40℃。ΔTは、第1のガラス板の平均温度T1と第2のガラス板の平均温度T2との温度差として計算され、第1の板の平均温度は、第2の板の平均温度より低い(T1<T2)。
- ガラス板は、熱膨張係数CTEがCTE=8.5×10
-6/℃、ヤング率EがE=70GPa及びポアソン比μがμ=0.21である、ソーダ石灰シリカガラスから作られたフロート焼鈍ガラス板である。
- ピラーは、正方形配列上に置かれる。
- 実験用VIGは、非拘束縁部、すなわち追加の窓枠内に位置付けられないで試験された。
【0026】
熱誘発応力(σΔT)は、VIGのガラス板が異なる温度条件に曝されたときに前記ガラス板上で誘発される応力である。VIGの各ガラス板上の熱応力を計算するために数値シミュレーションが使用される。市販のソフトウェアAbacus2017(以前にはABAQUSと呼ばれた)による有限要素解析(FEA)モデルは、異なる温度条件に曝されたときのVIGの挙動をシミュレーションするために構築された。計算は、ガラス板が、ガラス厚さ上に5つの積分点を備えたC3D8R要素を使用して網目状にされた状態で達成された。使用された網のグローバルサイズは、1cmであった。本発明のΔTを達成するために、最初の均一な温度が両方のガラス板上に付与され、次いで均一の温度変化がガラス板の1つに付与される一方、他方のガラス板が最初の温度に維持される。機械的結合は、2つの接触するガラス表面を等しく変位させるために2つのガラス板間に付与された。他の限界条件は、アセンブリの堅固な本体の動きを防ぐために設定された。温度差によって誘発される熱応力が各ガラス板に対して計算され、2つの最高値が最大として取られ、MPaで表されている。
【0027】
大気圧誘発応力
熱誘発応力に加えて、高性能の断熱を有するVIGを寸法決定するために大気圧誘発応力も考慮しなければならない。VIGの2つの板間に維持された真空のため、大気圧は、各ピラーの場所でVIGのガラス板の外部表面に永久に引張応力をもたらす。小さいピラーに対して、ガラス板の外部表面でピラーによって誘発される引張応力は、その外周の大きさに無関係であることが当業者に公知である。小さいピラーとは、5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下の、その外周によって画定されたガラス板に接触表面を有するピラーを概して意味する。
【0028】
そのような場合及び正三角形、正方形又は六角形スキーム(この大気圧誘発応力も引張応力と呼ばれる)に基づく規則的配列に対して、以下の式:
σp≦0.11xλ2/t2 [MPa]
で計算することができ、式中、λ[m]及びt[m]は、それぞれスペーサ間のピッチ及びガラス板の厚さである。「ピッチ」とは、所与のスペーサをあらゆるその隣接から分離する最短距離を意味すると理解されたい。具体的には、規則的な配列に基づく正方形に対して、引張応力は、最高であり、従って以下の式:σp=0.11xλ2/t2 [MPa]に従う。
【0029】
VIG内に非対称性を導くことは、熱誘発応力を低減させることが分かった。非対称性が大きいほど、断熱性能が良好である。しかし、非対称性は、ピラーの場所で大気圧によって誘発される応力に対する耐性に関して、非対称VIGの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。この悪化は、非対称VIGの第2のガラス板が、同じ総厚さを有する対応する対称VIG内のガラス板より薄いという事実により主に引き起こされる。
【0030】
組合せ応力
非対称と対称との対比(比)
第2のガラス板の厚さZ2に対する第1のガラス板の厚さZ1の比Z1/Z2が1.1以上であるべきである(Z1/Z2≧1.1)非対称VIGを構成することは、熱誘発応力を著しく低減するのに優れており、より高い厚さ比について更に優れている(
図2)が、第2の板の表面で著しく増加する大気圧誘発応力に害を及ぼす可能性がある。しかし、驚くべきことに、本発明の通り、特定の大きさの非対称VIGにおけるピッチの値に関連した最小の第2の板の厚さを画定することによって非対称VIGを慎重に寸法決定することにより、有利な妥協案が熱誘発応力に対する耐性と大気圧誘発応力に対する耐性の間に見出され得ることが分かった。慎重に設計した妥協案は、第2の板の最小厚さZ2、厚さ比Z1/Z2及びピラー間の距離、すなわちピッチλ間に見出され得ることが分かった。このような妥協案は、以下の式:Z2≧(λ-15mm)/5によって定義され得ることが分かった。
【0031】
従って、VIGを寸法決定するときに考慮する必要がある熱誘発応力と大気圧誘発応力との組合せが組合せ応力である。用語「組合せ応力」又は「応力の組合せ」は、熱誘発応力と大気圧誘発応力との合計を意味すると理解されたい。本発明の通りに設計された非対称VIGは、対応する対称VIGに対して組合せ応力の低減を実証することが分かった。従って、より大きい寸法及び/又はより大きい温度差に抵抗するVIGが、優れた断熱を維持しながら設計され得る。
【0032】
事実、内部空間、特に建物の十分な自然照明は、人々に快適で健康な環境をもたらすための重要なパラメータの1つである。昼光は、このような照明の最も関心対象となる源であり、この光を建物の内部に届けるために建物エンベロープ内に一部の透明部品を有することが重要である。従って、市場では、窓及び透明ドアの大きさを増加させる傾向がある一方、高性能の絶縁が求められている。その結果、真空絶縁グレージングの大きさを増加させる需要がある。大きい寸法を維持するために、第1の板の最小厚さを増加させることが好ましく、同様に重量負荷を維持するために、第1のガラス板と第2のガラス板との間の厚さ比を増加させる際により柔軟性を与え、それによって熱応力に対する耐性を改善させることが好ましい。
【0033】
本発明による第1のガラス板Z1は、典型的には4mm~25mm、好ましくは5mm~19mm、より好ましくは6mm~10mmだけ変化する厚さを有することができる。更に、本発明の好ましい実施形態では、非対称VIGの第1の板の厚さZ1は、4mm以上であり(Z1≧4mm)、好ましくは5mm以上であり(Z1≧5mm)、より好ましくは6mm以上である(Z1≧6mm)。
【0034】
以下の表1A、1B及び1Cに例示されるように、同じピッチでガラス板間に位置付けられた同じ非接触型スペーサを含み、同じ総厚さである、同じ大きさの真空絶縁グレージングユニットの組合せ応力は、ΔT=40℃に対して上記のように計算され、第1の板の平均温度T1は、第2の板の平均温度T2より低く(T1<T2)、2つの異なる実施形態について、一方の構成は、対称VIGであり、第1のガラス板及び第2のガラス板は、同じ厚さであり、第2の構成は、非対称VIGであり、第1のガラス板の厚さZ1は、第2のガラス板の厚さZ2より厚い。
【0035】
【0036】
上の表1Aに示されたように、本発明の非対称VIGで得られた最大組合せ応力は、12.81MPaに低減した一方、対応する対称VIGは、試験した条件で13.66MPaのより高い最大組合せ応力を実証している。
【0037】
【0038】
表1Bに示されたように、本発明の非対称VIGで得られた最大組合せ応力は、11.19MPaに低減した一方、対応する対称VIGは、試験した条件で12.08MPaのより高い最大組合せ応力を実証している。
【0039】
【0040】
表1Cに示されたように、本発明の非対称VIGで得られた最大組合せ応力は、12.82MPaに低減した一方、対応する対称VIGは、試験した条件で13.36MPaのより高い最大組合せ応力を実証している。
【0041】
第2のガラス板の厚さとピッチとの間の関係の重要性
以下の例(表2)は、第2のガラス板の厚さとピッチとの間の関係の重要性を例示する。驚くべきことに、第2のガラス板の最小厚さZ2は、4mm以上の第2のガラス板の厚さZ2(Z2≧4mm)及び10mm~40mmのピッチλが、対応する対称VIGに対して本発明のVIGの非対称構成の低減した組合せ応力の利点を得るために、式Z2≧(λ-15mm)/5を満たさなければならないことが分かった。
【0042】
組合せ応力は、本発明で特許請求される値以外の厚さを有する対称及び非対称VIGについて計算された。熱誘発応力及び大気誘発応力は、同じ条件で上記のように計算された。
【0043】
【0044】
表2に示されたように、非対称VIGで得られた最大組合せ応力は、14.07MPaに達する一方、対応する対称VIGは、13.36MPaの最大組合せ応力を実証している。従って、この例は、第2の板の厚さZ2とピッチλとの間の関係:Z2≧(λ-15mm)/5が、同じ総厚さの対応する対称VIGより良好に行うために非対称VIGにとって重要であることを例示する。
【0045】
VIGの大きさの重要性
以下の例(表3)は、大きさ、すなわちVIGの長さL及び幅Wの重要性を例示する。驚くべきことに、800mm以上であるVIGの長さL(L≧800mm)及び500mm以上であるVIGの幅W(W≧500mm)は、対応する対称VIGに対して本発明のVIGの非対称構成の低減した組合せ応力の利点を得るために重要であることが分かった。
【0046】
組合せ応力は、VIGの長さ及び幅が、本発明で特許請求される範囲外である対称及び非対称VIGについて計算された。熱誘発応力及び大気誘発応力は、同じ条件で上記のように計算された。
【0047】
【0048】
表3に示されたように、本発明の範囲外の非対称VIGで得られた最大組合せ応力は、14.25MPaに達する一方、対応する対称VIGは、13.59MPaの最大組合せ応力を実証している。従って、この例は、VIGの最小サイズが、同じ総厚さの対応する対称VIGより良好に行うために非対称VIGにとって重要であることを例示する。
【0049】
仕切り
本発明の非対称VIGは、典型的には汎用グレージングユニット、構築壁、自動車のグレージングユニット又は建築のグレージングユニット、器具、その他などの仕切り内の開口を閉鎖するために使用される。典型的には、仕切りは、外部空間を建物の内部空間から分離する。好ましくは、本発明の非対称VIGは、外部空間を内部空間から分離する仕切りの開口を閉鎖し、それにより、非対称VIGの第1のガラス板は、外部空間に面している。この仕切りは、第1の温度Temp1によって特徴付けられた第1の空間を、第2の温度Temp2によって画定された第2の空間から分離し、Temp1は、Temp2より低い。内部空間の温度は、典型的には20~25℃である一方、外部空間の温度は、冬季の-20℃から夏季の+35℃まで広がる可能性がある。従って、内部環境と外部環境との温度差は、典型的には過酷な条件において40℃まで達する可能性がある。本発明の非対称VIGの各ガラス板の温度(T1、T2)は、対応する空間の温度(Temp1、Temp2)を反映する。本発明の非対称VIGが、その第1のガラス板が第1の空間に面しているように位置付けられる場合、前記第1のガラス板の温度(T1)は、第1の空間の温度(Temp1)を反映し、第2のガラス板の温度(T2)は、第2の空間の温度(Temp2)を反映し、逆も同様である。
【0050】
熱誘発応力は、第1のガラス板(1及びT1)と第2のガラス板(2及びT2)との間に温度差があるときに直ちに生じ、T1とT2との差が増加するにつれて増加する。温度差(ΔT)は、第1のガラス板(1)について計算された平均温度T1と、第2のガラス板(2)について計算された平均温度T2との絶対差である。ガラス板の平均温度は、当業者に公知の数値シミュレーションから計算される。熱誘発応力は、ガラス板間のこのような絶対温度差が20℃に達したときにより問題になり、VIGを破壊するまでに至り、このような絶対温度差が過酷な条件において30℃より高く、40℃に達するときに重大になる。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の非対称VIGは、第1の温度Temp1を有する第1の空間を、第2の温度Temp2を有する第2の空間から分離する仕切りの開口を閉鎖し、Temp1は、Temp2より低い。非対称VIGの第1のガラス板は、第2の板(2)の厚さZ2より大きい厚さZ1を有する第1の板(1)が、第2の空間の温度(Temp2)より低い温度(Temp1)を有する第1の空間に面しているように第1の空間に面している。事実、本発明の非対称VIGの教示の利点を最大にするために、第2のガラス板の厚さZ2より大きい厚さZ1を有する第1のガラス板(1)を「低温側」、すなわち最低温度(Temp1)を有する空間に曝すことが好ましいことが分かった。
【0052】
本発明は、第1の温度Temp1を有する第1の空間を、第2の温度Temp2を有する第2の空間から分離する仕切りの開口を閉鎖するための、上に定義されたような非対称真空絶縁グレージングユニットの使用にも関し、Temp1は、Temp2より低く、第1のガラス板は、第1の空間に面しており、好ましくは、第1のガラス板は、外部空間に面している。
【0053】
ガラス板
本発明による真空絶縁グレージングユニット(VIG)の第1の板及び第2の板は、フロート焼鈍ガラス板(1、2)である。用語「ガラス」は、本明細書では、ミネラルガラス若しくは有機ガラスなどのあらゆる型のガラス又は均等な透明材料を意味すると理解されたい。使用されるミネラルガラスは、それぞれソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩、結晶体及び多結晶性ガラスなどの1つ又は複数の公知の型のガラスであり得る。使用される有機ガラスは、例えば、透明合成ポリカーボネート、ポリエステル若しくはポリビニル樹脂などのポリマー又は硬質熱可塑性若しくは熱硬化性透明ポリマー若しくはコポリマーであり得る。用語「フロートガラス板」は、当技術分野で周知のフロート法によって形成されたガラス板を意味すると理解されたい。フロートガラス板は、より低い生産コストを表す。
【0054】
本発明の実施形態では、第1のガラス板は、熱膨張係数CTE1を有し得、第2のガラス板は、熱膨張係数CTE2を有し、それにより、CTE1とCTE2との絶対差は、最大で0.40×10-6/℃であり得(|CTE1-CTE2|≦0.40×10-6/℃)、好ましくは最大で0.30×10-6/℃であり(|CTE1-CTE2|≦0.30×10-6/℃)、より好ましくは最大で0.20×10-6/℃である(|CTE1-CTE2|≦0.20×10-6/℃)。理想的には、第1のガラス板及び第2のガラス板は、同じ熱膨張係数を有する。用語「熱膨張係数」(CTE)は、温度の変化につれて対象の大きさが変化する程度の単位である。特に、熱膨張係数は、一定圧力で温度が1度変化するごとのガラス板の体積における分数変化を測定する。
【0055】
当業者に公知のように、ガラスは、概して、そのヤング率E及びポアソン比μによって特徴付けられる弾性材料である。ヤング率は、剛性の尺度であり、それにより、より大きい値は、加えられた応力で変形し難いガラスを示す。ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩ガラス組成物についてのヤング率の典型的な値は、60~120GPaである(60GPa≦E≦120GPa)。具体的には、ソーダ石灰ガラスの組成物は、概ね69~72GPaの範囲のヤング率値を表す(60GPa≦E≦72GPa)。ポアソン比は、それによってガラスが圧縮方向に垂直な方向に拡張する傾向にある現象であるポアソン効果を測定する。ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩ガラス組成物についてのポアソン比の典型的な値は、0.18~0.30である(0.18≦μ≦0.30)。具体的には、ソーダ石灰ガラスの組成物は、概ね0.18~0.23の範囲のポアソン比値を表す(0.18≦μ≦0.23)。
【0056】
用語「焼鈍ガラス板」は、製造中に導かれた残りの内部応力を緩和するために、高温ガラス板が形成された後にゆっくりと冷却することによって生成されたガラス板を意味すると理解されたい。
【0057】
フロートガラス板は、任意選択で縁部を研磨され得る。縁部の研磨は、鋭い縁部を滑らかな縁部にし、これは、真空絶縁グレージング、具体的にはグレージングの縁部と接触することがある人々にとってはるかに安全である。
【0058】
好ましくは、本発明の非対称VIGの第1のフロートガラス板及び第2のフロートガラス板の組成(Comp.A)は、ガラスの総重量に対して表される重量パーセントにおいて以下の成分を含む。より好ましくは、ガラス組成(Comp.B)は、ガラスの総重量に対して表される重量パーセントにおいて以下の成分を含む組成の基礎ガラスマトリクスを有するソーダ石灰シリカ型ガラスである。
【0059】
【0060】
本発明の非対称VIGの第1のフロートガラス板及び第2のフロートガラス板に対する他の好ましいガラス組成は、ガラスの総重量に対して表される重量パーセントにおいて以下の成分を含む。
【0061】
【0062】
具体的には、本発明による組成についての基礎ガラスマトリクスの例は、公開されたPCT特許出願国際公開第2015/150207A1号パンフレット、国際公開第2015/150403A1号パンフレット、国際公開第2016/091672A1号パンフレット、国際公開第2016/169823A1号パンフレット及び国際公開第2018/001965A1号パンフレットに記載されている。
【0063】
本発明の非対称VIGの第1のフロートガラス板及び第2のフロートガラス板に対する別の好ましいガラス組成は、ガラスの総重量に対して表される重量パーセントにおいて、以下のものを含む:
SiO2 60~78重量%、
Al2O3 0~8重量%、
B2O3 0~4重量%、
Na2O 5~20重量%、好ましくは10~20重量%、
CaO 0~15重量%、
MgO 0~12重量%、
K2O 0~10重量%、
BaO 0~5重量%。
【0064】
ガラス板は、同じ寸法又は異なる寸法であり得、それによって階段状VIGを形成することができる。本発明の好ましい実施形態では、第1のフロートガラス板及び第2のフロートガラス板は、それぞれ第1の周縁部及び第2の周縁部を含み、第1の周縁部は、第2の周縁部から窪まされるか、又は第2の周縁部は、第1の周縁部から窪まされる。この構成は、密閉接着シールの強度を強化することができる。
【0065】
VIG内において、第1のガラス板は、内板面(12)及び外板面(13)を有する。第2のガラス板は、内板面(22)及び外板面(23)を有する。第1の内板面及び第2の内板面は、非対称VIGの内部容積Vに面している。第1の外板面及び第2の外板面は、VIGの外部に面している。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、低放射フィルム、日射調整フィルム(熱線反射フィルム)、反射防止フィルム、防曇フィルムなどのフィルム、好ましくは熱線反射フィルム又は低放射フィルムは、真空絶縁グレージングユニット(10)の第1及び/又は第2のフロートガラス板(1、2)の内板面(12、22)及び/又は外板面(13、23)の少なくとも1つに与えられることができる。
図1に示したような本発明の好ましい実施形態では、非対称VIGの第2のフロートガラス板(2)の内板面(22)は、熱線反射フィルム又は低Eフィルム(5)を与えられることができる。
【0067】
積層アセンブリ
本発明の一実施形態では、第1のガラス板(13)及び/又は第2のガラス板(23)の外板面は、安全且つ安心のために積層アセンブリを形成する少なくとも1つのポリマー中間層によって少なくとも1つのガラスシートに更に積層され得る。積層ガラスは、粉砕したときに一緒に保持する安全ガラスの型である。壊れた場合、積層ガラスは、その複数の層のガラス間の熱可塑性中間層によって適所に保持される。中間層は、壊れたときでもガラスの層に接着したままであり、その高い強度によりガラスが大きく鋭い片に分裂することを防ぐ。積層アセンブリ内において、少なくとも1つのガラスシートは、好ましくは、0.5mm以上の厚さZsを有する(Zs≧0.5mm)。厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。少なくとも1つのポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、コポリエステル、ポリアセタール、環状オレフィンポリマー(COP)、アイオノマ及び/又は紫外線活性接着剤並びにガラス積層体を製造する技術分野で他の公知の材料からなる群から選択される材料を含む透明又は半透明ポリマー中間層である。これらの材料のあらゆる互換性のある組合せを使用して混合した材料も適することが可能である。音響積層ガラスで強化した防音材も本発明に使用され得る。このような場合、ポリマー中間層は、2つのポリビニルブチラールフィルム間に挿入した少なくとも1つの追加の音響材料を含む。エレクトロクロミック、熱変色性、調光性又は太陽電池素子を備えたガラス板も本発明と互換性がある。
【0068】
複層絶縁グレージング
本発明の別の実施形態では、本発明は、絶縁又は非絶縁内部空間(複層グレージングユニットとも呼ばれる)を拘束するガラス板(2枚、3枚又はそれを超える)を含むあらゆる型のグレージングユニットにも適用する。但し、部分真空がこれらの内部空間の少なくとも1つ内に発生することを条件とする。従って、一実施形態では、本発明の非対称VIGの機械的性能を改善するために、第3の追加のガラス板は、スペーサ窓用輪郭としても公知の周縁スペーサバーを介してVIGの周囲に沿って第1のガラス板及び第2のガラス板の外板面(13及び/又は23)の少なくとも1つに結合され得、周縁シールによって密封された絶縁空洞を生成する。前記周囲スペーサバーは、第3のガラス板と、第1のガラス板及び第2のガラス板の外板面の少なくとも1つとの間に特定の距離を維持する。典型的には、前記スペーサバーは、乾燥剤を含み、典型的には6mm~20mm、好ましくは9~15mmの厚さを有する。概して、前記第2の内部容積は、空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素又はそれらの組合せからなる群から選択される所定の気体で充填される。前記所定の気体は、熱伝達を防ぐために効果的であり、且つ/又は音響透過を低減するために使用され得る。
【0069】
スペーサ
図1に描かれたように、本発明の真空絶縁グレージングは、内部容積Vを維持するように、第1のフロートガラス板(1)と第2のフロートガラス板(2)との間に挟まれた、「ピラー」とも呼ばれる複数の非接触型スペーサ(3)を含む。本発明の通り、非接触型スペーサは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に位置付けられ、第1のガラス板と第2のガラス板との間の距離を維持し、且つ10mm~40mmのピッチλを有する(10mm≦λ≦40mm)配列を形成する。本発明内の配列は、典型的には正三角形、正方形又は六角形スキーム、好ましくは正方形スキームに基づく規則的配列である。
【0070】
非接触型スペーサは、円筒、球、糸状、砂時計形状、C字型、十字型、プリズム形状などの様々な形状を有することができる。5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下の、その外周によって画定された小さいピラー、すなわちガラス板に概ね接触した表面を有するピラーを使用することが好ましい。上に示されたように、これらの寸法は、良好な機械抵抗を供給し得る一方、見た目が目立たない。
【0071】
非接触型スペーサは、典型的にはガラス板の表面から加えた圧力に対して耐久性がある強度を有し、焼付及び焼成などの高温工程に耐えることができ、ガラス板が製造された後に気体を排出し難い材料から作成される。このような材料は、好ましくは、硬質金属材料、石英ガラス又はセラミック材料、具体的には鉄、タングステン、ニッケル、クロム、チタニウム、モリブデン、炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム鋼、マンガン鋼、クロム-マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼、ケイ素鋼、ニクロム、ジュラルミンなどのような金属材料又はコランダム、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などのようなセラミック材料である。
【0072】
密閉接着シール
図1に示されたように、本発明の真空絶縁グレージングユニット(10)のガラス板(1、2)間の内部容積Vは、前記内部空間の周りのガラス板の周囲上に置かれた密閉接着シール(4)で閉鎖される。前記密閉接着シールは、不透過性で硬質である。ここで使用されるように且つ別段の指示がない限り、用語「不透過性」は、空気又は大気中に存在するあらゆる他の気体に不透過性であることを意味すると理解されたい。
【0073】
内部空間と外部空間との間の温度勾配は、実際に本発明の第1のガラス板及び第2のガラス板の異なる熱変形を引き起こす。各ガラス板に対する制約は、ガラス板の周囲上に置かれたシールが硬いときに更に重要である。逆に、このような制約は、VIG内でより低くなり、周囲シールにより若干変形することができる。
【0074】
様々な密閉接着シール技術が存在する。第1の型のシール(最も広がる)は、それに対して融点がグレージングユニットのガラス板のガラスの融点より低い、半田ガラスに基づくシールである。この型のシールの使用は、低E層の選択を、半田ガラスの実施に必要な熱サイクルによって低下されない低E層、すなわち場合により250℃までの高さの温度に耐えることができる低E層に限定する。加えて、この型の半田ガラス系シールは、非常にわずかにのみ変形できるため、前記板が、吸収される大きい温度差を受けるとき、グレージングユニットの内側ガラス板と、グレージングユニットの外側ガラス板との膨張差の効果を許容しない。従って、非常に大きい応力がグレージングユニットの周囲で発生し、グレージングユニットのガラス板の破損を引き起こすことがある。
【0075】
第2の型のシールは、金属シール、例えば柔らかいスズ合金の半田などの半田付け可能な材料の層で少なくとも一部が覆われたタイ下層を介してグレージングユニットの周囲に半田付けされた薄い厚さ(<500μm)の金属ストリップを含む。第1の型のシールに関して、この第2の型のシールの1つの実質的な利点は、2つのガラス板間に生成した膨張差の一部を吸収するために部分的に変形し得ることである。ガラス板の上に様々な型のタイ下層が存在する。
【0076】
特許出願国際公開第2011/061208A1号パンフレットは、真空絶縁グレージングユニットのための第2の型の周囲の不透過性シールの一例示的実施形態を記載している。この実施形態では、シールは、例えば、ガラス板の周囲の上に提供された接着帯に半田付け可能な材料を用いて半田付けされる銅から作成された金属ストリップである。
【0077】
内部容積
0.1ミリバール未満、好ましくは0.01ミリバール未満の絶対圧力の真空は、第1のガラス板及び第2のガラス板並びに非接触型スペーサの組によって画定され、且つ本発明の非対称VIG内の密閉接着シールによって閉鎖された内部容積V内に生成される。
【0078】
本発明の非対称VIGの内部容積は、気体、例えば、これに限定されないが、空気、乾燥空気、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、六フッ化硫黄(SF6)又は更にそれらの組合せを含むことができる。この従来の構造を有する絶縁ユニットを通るエネルギーの伝達は、単一のガラス板に対して内部容積内に気体が存在するために低減される。
【0079】
内部容積は、あらゆる気体をポンプ供給され得、従って真空グレージングユニットを生成する。真空絶縁グレージングユニットを通るエネルギー伝達は、真空によって大幅に低減される。グレージングユニットの内部空間に真空を発生させるために内部空間を外部と連通させる中空ガラス管は、概して、ガラス板の1つの主面上に与えられる。こうして、部分真空は、ガラス管の外側端部に連結されたポンプにより、内部空間内に存在する気体をポンプで吸い出すことによって内部空間に発生される。
【0080】
真空絶縁グレージングユニット内に所与の真空レベルの存続を維持するために、ゲッタがグレージングユニット内に使用され得る。特に、グレージングユニットを作成するガラス板の内部表面は、ガラス内に予め吸収した気体を経時的に開放することがあり、それによって真空絶縁グレージングユニット内の内圧を増加させ、こうして真空性能を低減する。概して、このようなゲッタは、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、アルミニウム、その他の合金からなり、薄層の形(数ミクロンの厚さ)又は見えないように(例えば、外部のエナメル若しくは周囲不透過性シールの一部により隠れている)グレージングユニットのガラス板間に置かれたブロックの形態で堆積される。ゲッタは、その表面に室温で保護層を形成し、従って保護層を消失させ、こうしてその合金のゲッタリング特性を活性化するために加熱される必要がある。ゲッタは、「加熱活性化」されると言われる。
【符号の説明】
【0081】
参照番号 特徴
10 真空絶縁グレージング
1 第1のガラス板
12 第1のガラス板の内板面
13 第1のガラス板の外板面
2 第2のガラス板
22 第2のガラス板の内板面
23 第2のガラス板の外板面
3 非接触型スペーサ
4 密閉接着シール
5 熱線反射フィルム又は低放射フィルム
V 内部容積