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特許7437380ポリマー可塑剤及び低含有量のジイソシアネートモノマーを有するポリウレタン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポリマー可塑剤及び低含有量のジイソシアネートモノマーを有するポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20240215BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240215BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240215BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/48
C09K3/10 D
C09D175/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021504824
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019071049
(87)【国際公開番号】W WO2020030606
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】18187903.2
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュルンプ
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-053635(JP,A)
【文献】特開2010-090269(JP,A)
【文献】国際公開第99/052960(WO,A1)
【文献】特開平07-324161(JP,A)
【文献】特開2008-208319(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102690626(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102005035000(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09K 3/10
C09D 175/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、0.1重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する湿分硬化ポリウレタン組成物:
- 少なくとも3/1のNCO/OH比で、少なくとも一つのジイソシアネートモノマーと、少なくとも一つのポリエーテルポリオールとを反応させ、続いて適切な分離方法によって、大部分の前記ジイソシアネートモノマーを除去することから得られる、イソシアネート基を含有し、かつ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する少なくとも一つのポリエーテルウレタンポリマー、及び
- 可塑剤としての、イソシアネート基を含まない、ブロックされたヒドロキシル基を有する少なくとも一つのポリエーテルであって、前記ブロックされたヒドロキシル基がアセテート基である少なくとも一つのポリエーテル。
【請求項2】
前記ポリエーテルウレタンポリマーが、0.5重量%~6.0重量%の範囲のNCO含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルウレタンポリマーが、ポリエーテルセグメント中に80重量%~100重量%の1,2-プロピレンオキシ基及び0重量%~20重量%の1,2-エチレンオキシ基を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記反応のために使用する前記ジイソシアネートモノマーが、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート若しくはトリレン2,4-ジイソシアネートとトリレン2,6-ジイソシアネートとの混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、又はヘキサン1,6-ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルウレタンポリマーの前記NCO含有量が、前記ポリエーテルポリオールのOH基1モルあたりジイソシアネートモノマー1モルの添加から算出した理論的NCO含有量の少なくとも80%、特に少なくとも85%であることを特徴とする、請求項~4のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、1~3の範囲の平均OH官能性を有するヒドロキシ官能性ポリエーテルから誘導されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項7】
ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出器、及び200g/モルからの評価を用いて、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、600~15,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項8】
5重量%~40重量%のブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルを含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項9】
イソシアネートオリゴマー、触媒、及びフィラーから選択される少なくとも一つのさらなる成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項10】
以下を含有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物:
- 20重量%~60重量%のポリエーテルウレタンポリマーであって、イソシアネート基を含有し、かつ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有するポリエーテルウレタンポリマー、
- 5重量%~35重量%のポリエーテルであって、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル、
- 20重量%~60重量%のフィラー、
及び任意選択的なさらなる成分。
【請求項11】
以下の工程を含む、結合又はシーリング方法:
(i)請求項1~10のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物を
- 第1の基材に適用し、かつ前記組成物のオープンタイム内に前記組成物を第2の基材と接触させること、又は
- 第1及び第2の基材に適用し、かつ前記組成物の前記オープンタイム内に前記2つの基材を接合すること、又は
- 2つの基材の間に適用すること、
(ii)湿分との接触によって前記組成物を硬化すること。
【請求項12】
以下の工程を含む、コーティング又はシーリング方法:
(i)請求項1~10のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物を基材に適用すること、
(ii)湿分と接触させることによって前記組成物を硬化すること。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法から得られる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分硬化ポリウレタン組成物、並びに弾性接着剤、シーラント及びコーティングとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基と湿分又は水分との反応によって架橋し、そして硬化してエラストマーを与えるポリウレタン組成物は、特に建設及び製造工業において、例えば、アセンブリの構成要素を結合するため、ジョイントを充填するため、フロアコーティングとして、又はルーフシールとしての弾性接着剤、シーラント又はコーティングとして使用されている。それらの良好な接着力及び弾性のため、それらは、例えば振動又は温度変化によって引き起こされる基材上で作用する力を穏やかに弱め、且つ緩衝することができる。
【0003】
そのようなポリウレタン組成物は、バインダーとして、ポリオールをジイソシアネートモノマーと反応させることによって調製されるイソシアネート基を含有している従来のポリマーを含む。そのようにして得られるポリマーは、連鎖延長反応のため、典型的に1重量%~3重量%の範囲の残留ジイソシアネートモノマー含有物を含有する。ジイソシアネートモノマーは、健康に有害である可能性がある。特に0.1重量%より高い濃度でジイソシアネートモノマーを含有する配合物には、ラベル及びデータシートにハザードシンボル及び警告メッセージを付けなければならない。いくつかの国では、販売及び使用に関する規定を受ける場合がある。
【0004】
低いジイソシアネートモノマー含有量を有するイソシアネート基を含有するポリマーに対する様々なアプローチがある。製品特性に関して、最も魅力的なルートは、ポリマーの調製において過剰量のジイソシアネートモノマーを使用し、次いで適切な分離方法によって、特に蒸留によって、未変換のジイソシアネートモノマーの大部分を除去するというものである。このプロセスからのポリマーは、比較的低粘度及び低残留ジイソシアネートモノマー含有量を有する。そのようなポリマーを含むポリウレタン組成物は、非常に良好な加工性を有するが、遅い硬化、強度減少及び基材への接着力の発達の弱さを示す。
【0005】
欧州特許第1,746,117号明細書には、イソシアネート基を含有するプレポリマーの調製プロセスが記載されている。実施例1及び3において、低いモノマー濃度を有するNCOプレポリマーは、過剰量のジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートの蒸留除去を用いる、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート及びジオール又はトリオールの反応から調製される。これらは、4,4’異性体よりもジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートのほうがより良好に適合性である、モノマーイソシアネートの蒸留除去が用いられずに調製されたNCOプレポリマーと比較される。記載されるプレポリマーは、湿分硬化シーラント又は接着剤の製造のために使用可能である。そのようなシーラント又は接着剤がどのように有利に配合されるかについてのさらなる詳細はない。
【0006】
ポリウレタン組成物中での可塑剤として、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオールを使用することは、例えばJP S59-109553号明細書から既知である。記載される組成物は、従来通りに調製されたポリウレタンポリマーを含み、且つ高いジイソシアネートモノマー含有量を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の不都合を克服する、低いジイソシアネートモノマー含有量を有する湿分硬化ポリウレタン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、請求項1において特許請求される湿分硬化ポリウレタン組成物によって達成される。それは、イソシアネート基を含有し、且つ低いジイソシアネートモノマー含有量を有する少なくとも1つのポリエーテルウレタンポリマーと、可塑剤としてのブロックされたヒドロキシル基を有する少なくとも1つのオリゴマーモノ-又はポリオールとを含む。本発明の組成物は、0.1%未満のジイソシアネートモノマー含有量を有し、したがって、特別な安全性予防措置を講じることなく安全に取り扱いが可能であり、そして多くの国でハザードラベルを付けずに販売することができる。本発明の組成物は、驚くべきことに、長いオープンタイム(スキン時間)と組み合わせて急速な硬化速度を有し、且つ硬化後に高い引張強さ及び弾性を有し、多くの用途に関して非常に有利である。予想外であることに、本発明のポリウレタン組成物は、従来の可塑剤を含む対応する組成物と比較して、及び一貫して高い伸張性及びショア硬度を有する高いジイソシアネートモノマー含有量を有する対応する組成物と比較して、同一オープンタイムでより急速な硬化及びより高い引張強さを示す。これらの有利な特性は、従来技術から期待することはできない。
【0009】
本発明の湿分硬化ポリウレタン組成物は、湿分の排除による優れた貯蔵安定性及び良好な加工性を有し、且つ急速硬化と組み合わせて長いオープンタイムを有する。これによって、高い伸張性、高い低温柔軟性、良好な結合特性並びに熱及び湿分に対する高い安定性と組み合わせて高い引張強さを有する弾性材料が得られる。
【0010】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、弾性接着剤、弾性シーラント又は弾性コーティングとしての使用に特に適切である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の対象である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、0.1重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する湿分硬化ポリウレタン組成物であって、以下を含む、ポリウレタン組成物を提供する:
- 少なくとも3/1のNCO/OH比で、少なくとも一つのジイソシアネートモノマーと、少なくとも一つのポリエーテルポリオールとを反応させ、続いて適切な分離方法によって、大部分のジイソシアネートモノマーを除去することから得られる、イソシアネート基を含有し、かつ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する少なくとも一つのポリエーテルウレタンポリマー、及び
- 可塑剤としての、イソシアネート基を含まない、ブロックされたヒドロキシル基を有する少なくとも一つのポリエーテル。
【0013】
「ジイソシアネートモノマー」は、4~15個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基によって分離される2つのイソシアネート基を有する有機化合物を指す。
【0014】
「ポリエーテルウレタンポリマー」は、繰り返し単位としてエーテル基を有し、さらにウレタン基を含有するポリマーを指す。
【0015】
ポリオールなどの「ポリ」によって始まる物質名は、形式的な意味で、それらの名称にある官能基を1分子あたり2つ以上含有する物質を指す。
【0016】
「ブロックされたヒドロキシル基」は、イソシアネート基に対して非反応性である基へと化学反応によって変換されたヒドロキシル基を指す。
【0017】
「可塑剤」は、室温で液体であり、且つその硬化後に組成物で不変のまま残り、且つ硬化された組成物を可塑化する物質を指す。
【0018】
「NCO含有量」は、重量%でのイソシアネート基の含有量を指す。
【0019】
「分子量」は、分子又は分子残基の(g/モルでの)モル質量を指す。「平均分子量」は、オリゴマー又はポリマー分子又は分子残基の多分散性混合物の数平均分子量(M)を指す。それは、特に移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出及び200g/モルからの評価を用いて、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0020】
物質又は組成物は、貯蔵の結果として、その使用に関する関連度まで、その応用又は使用特性におけるいずれの変化も生じることなく、長期間、典型的に少なくとも3か月から最高6か月以上の間、適切な容器中、室温で貯蔵可能である場合、「貯蔵安定性である」又は「貯蔵可能である」として記載される。
【0021】
「室温」は、23℃の温度を指す。
【0022】
本明細書に記載される全ての工業標準及び基準は、最初の出願日に有効であったものに関する。
【0023】
wt%と略される重量パーセント(重量%)は、特に明記しない限り、全組成物又は全分子に基づく組成物又は分子の構成要素(成分)の質量による割合を指す。「質量」及び「重量」という用語は、本明細書中、同義的に使用される。
【0024】
請求項1によるイソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーは、ポリウレタンプレポリマーとも記載されてよい。
【0025】
イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーは、好ましくは0.3重量%以下、特に0.2重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する。
【0026】
好ましくは、イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーは、1,500~20,000g/モル、好ましくは2,500~15,000g/モル、特に3,500~10,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有する。
【0027】
イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーは、好ましくは0.5重量%~6重量%、特に好ましくは0.6重量%~4重量%、より好ましくは1重量%~3重量%、特に1.2重量%~2.5重量%の範囲のNCO含有量を有する。
【0028】
イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマー中に存在する繰り返し単位は、好ましくは1,2-エチレンオキシ、1,2-プロピレンオキシ、1,3-プロピレンオキシ、1,2-ブチレンオキシ又は1,4-ブチレンオキシ基である。1,2-エチレンオキシ及び1,2-プロピレンオキシ基が好ましい。
【0029】
より好ましくは、その中に存在する繰り返し単位は、主に、又は排他的に、1,2-プロピレンオキシ基である。
【0030】
イソシアネート基を含有する特に好ましいポリエーテルウレタンポリマーは、80重量%~100重量%のポリエーテルセグメント中の1,2-プロピレンオキシ基及び0重量%~20重量%の1,2-エチレンオキシ基を有する。
【0031】
1,2-エチレンオキシ基も存在する場合、1,2-プロピレンオキシ基及び1,2-エチレンオキシ基は、均一なブロックをそれぞれ特に形成し、そしてポリ(1,2-エチレンオキシ)ブロックは鎖末端に存在する。そのようなポリマーは、特に急速硬化及び特に良好な熱安定性を有する湿分硬化ポリウレタン組成物を可能にする。
【0032】
イソシアネート基を含有する好ましいポリエーテルウレタンポリマーは、高い強度、伸張性及び弾性を有する高品質であり、効率的に加工可能な湿分硬化ポリウレタン組成物を可能にする。
【0033】
適切なジイソシアネートモノマーは、市販の芳香族又は脂肪族ジイソシアネートであり、例えば、特に任意選択的にジフェニルメタン2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(MDI)のフラクションを有するジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート又はトリレン2,6-ジイソシアネート(TDI)、フェニレン1,4-ジイソシアネート(PDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(HDI)、2,2(4),4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、シクロヘキサン1,3-若しくは1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、パーヒドロジフェニルメタン2,4’-若しくは4,4’-ジイソシアネート(HMDI)、1,3-若しくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-若しくはp-キシリレンジイソシアネート(XDI)とのそれらの混合物、或いはそれらの混合物である。
【0034】
反応のために使用されるジイソシアネートモノマーは、好ましくはジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)、トリレン2,4-ジイソシアネート若しくはトリレン2,4-ジイソシアネートとトリレン2,6-ジイソシアネートとの混合物(TDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、又はヘキサン1,6-ジイソシアネート(HDI)である。これらのジイソシアネートモノマーの2つ以上の組合せが好ましい。
【0035】
4,4’-MDIが特に好ましい。この4,4’-MDIは、ジフェニルメタン2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネートのわずかなフラクションのみを含有する品質のものであり、そして室温で固体である。それによって、高い伸張性及び弾性と組み合わせて特に急速硬化及び特に高い強度を有する湿分硬化ポリウレタン組成物が可能となる。
【0036】
4,4’-MDIは、好ましくは蒸留され、且つ少なくとも95%、特に少なくとも97.5%の純度を有する。
【0037】
この品質の商業的に入手可能なジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートは、例えば、Desmodur(登録商標) 44 MC(Covestro製)又はLupranat(登録商標) MRSS若しくはME(BASF製)又はSuprasec(登録商標) 1400(Huntsman製)である。
【0038】
1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)も特に好ましい。IPDIベースの湿分硬化ポリウレタン組成物は、高い伸張性及び弾性と組み合わせて高い強度を有し、且つ特に高い風化安定性を有する製品を可能にする。
【0039】
ポリエーテルポリオールは、好ましくは1,000~15,000g/モル、より好ましくは1,500~12,000g/モル、特に2,000~8,000g/モルの範囲の平均分子量Mを有する。
【0040】
ポリエーテルポリオールは、好ましくは8~112mg KOH/gの範囲、より好ましくは10~75mg KOH/gの範囲、特に12~56mg KOH/gの範囲のOH価を有する。
【0041】
ポリエーテルポリオールは、好ましくは1.7~3の範囲の平均OH官能性を有する。
【0042】
適切なポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンジオール及び/又はポリオキシアルキレントリオール、特にエチレンオキシド又は1,2-プロピレンオキシド又は1,2-若しくは2,3-ブチレンオキシド又はオキセタン又はテトラヒドロフラン又はそれらの混合物の重合生成物である。これらは、2又は3個の活性水素原子を有する出発分子、特に水、アンモニア又は複数のOH若しくはNH基を有する化合物、例えば、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-若しくは-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、へプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、シクロヘキサン-1,3-若しくは-1,4-ジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール若しくはアニリン、又は上記化合物の混合物などの出発分子の補助によって重合されてもよい。
【0043】
ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール又はエチレンオキシド末端ポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオールが特に好ましい。これらは、最終的にそれらが第1級ヒドロキシル基を有する結果を伴って、特にポリプロピル化反応の終了時にエチレンオキシドによってポリオキシプロピレンジオール又はトリオールをさらにアルコキシル化することによって得られるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0044】
好ましいポリエーテルポリオールは、0.02meq/g未満、特に0.01meq/g未満の不飽和度を有する。
【0045】
一実施形態において、20~42mg KOH/g、特に22~35mg KOH/gの範囲のOH価、及び2.2~3.0、好ましくは2.2~2.8、特に2.2~2.6の範囲の平均OH官能性を有するトリメチロールプロパン-又は特にグリセロール出発、任意選択的にエチレンオキシド末端ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
【0046】
さらなる実施形態において、8~112mg KOH/gの範囲、好ましくは10~75mg KOH/gの範囲、特に12~56mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオールが好ましい。
【0047】
ジイソシアネートモノマーとポリエーテルポリオールとの間の反応のNCO/OH比は、好ましくは3/1~10/1の範囲、より好ましくは3/1~8/1の範囲、特に4/1~7/1の範囲である。
【0048】
反応は、好ましくは、任意選択的に適切な触媒の存在下で、20~160℃、特に40~140℃の範囲の温度で湿分を排除することによって実行される。
【0049】
反応後、反応混合に残るジイソシアネートモノマーは、適切な分離方法によって、記載される残留含有量まで除去される。
【0050】
好ましい分離方法は、好ましくは減圧を適用した蒸留方法、特に薄膜蒸留又はショートパス蒸留である。
【0051】
120~200℃の範囲のジャケット温度及び0.001~0.5mbarの圧力を用いてショートパス蒸発器でジイソシアネートモノマーが除去される多段階方法が特に好ましい。
【0052】
ジイソシアネートモノマーとして好ましい4,4’-MDIの場合、蒸留除去は特に要求が多い。例えば、凝縮物が固化せず、システムをブロックしないことを確実にしなければならない。0.001~0.5mbarにおいて160~200℃の範囲のジャケット温度を用いて蒸留し、除去されるモノマーを40~60℃の範囲の温度で凝縮することが好ましい。
【0053】
ジイソシアネートモノマーとして好ましいIPDIの場合、ジャケット温度は、好ましくは140~180℃の範囲である。
【0054】
ジイソシアネートモノマーをポリエーテルポリオールと反応させて、その後、溶媒又は同伴剤を使用せずに反応混合中に残っているジイソシアネートモノマーの大部分を除去することが好ましい。
【0055】
反応後に除去されたジイソシアネートモノマーをその後再利用すること、すなわち、イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーの調製のためにそれを再び使用することが好ましい。
【0056】
この反応において、ポリエーテルポリオールのOH基は、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基と反応する。これによって、ポリオール及びジイソシアネートモノマーの間の反応生成物のOH基及び/又はイソシアネート基の反応が生じる、連鎖延長反応と呼ばれるものも生じる。高いNCO/OH比が選択されるほど、生じる連鎖延長反応のレベルは低くなり、そして得られるポリマーの多分散性、したがって、粘度が低くなる。連鎖延長反応の基準は、ポリマーの平均分子量又はGPC分析におけるピークの幅及び分布である。さらなる基準は、全てのOH基とジイソシアネートモノマーとの反応から算出される理論的NCO含有量に対するモノマーから供給されるポリマーの有効NCO含有量である。
【0057】
ポリエーテルウレタンポリマー中のNCO含有量は、好ましくは、ポリエーテルポリオールのOH基1モルあたりジイソシアネートモノマー1モルの添加から算出される理論的NCO含有量の少なくとも80%、特に少なくとも85%である。そのようなポリエーテルウレタンポリマーは、特に低い粘度を有し、そして特に良好な応用特性を有する湿分硬化ポリウレタン組成物を可能にする。
【0058】
特に好ましいポリエーテルウレタンポリマーは、1重量%~2.5重量%、特に1.1重量%~2.1重量%の範囲のNCO含有量、及び0.3重量%以下、特に0.2重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有し、且つ4,4’-MDI又はIPDIと、2.2~3、好ましくは2.2~2.8、特に2.2~2.6の範囲の平均OH官能性及び20~42mg KOH/gの範囲、特に22~35mg KOH/gの範囲のOH価を有する、任意選択的にエチレンオキシド末端を有するポリオキシプロピレントリオールとの反応から得られる。そのようなポリマーは、急速硬化及び高い伸張性及び弾性及び高い強度と組み合わせて、低い粘度、長いオープンタイムの特に魅力的な組合せを可能にする。
【0059】
さらなる特に好ましいポリエーテルウレタンポリマーは、0.8重量%~2.4重量%、特に1.2重量%~2.1重量%の範囲のNCO含有量、及び0.3重量%以下、特に0.2重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有し、且つ4,4’-MDIと、13~38mg KOH/g、特に22~32mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオールとの反応から得られる。そのようなポリマーは、特に低粘度であり、特にイソシアネート基を含有し、且つ少なくとも2.2のNCO官能性を有する化合物、特にオリゴマーイソシアネート又はイソシアネート基を含有する対応するポリマーとの組合せに関して適切である。それによって、特に高い伸張性及び弾性が可能となる。
【0060】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは15重量%~80重量%、特に20重量%~60重量%の、イソシアネート基を含有し、且つ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有するポリエーテルウレタンポリマーを含有する。
【0061】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、可塑剤としてのイソシアネート基を含まないブロックされたヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリエーテルをさらに含む。
【0062】
ポリエーテルのヒドロキシル基は、それがポリウレタン組成物の硬化の前及び間にいずれの化学反応も開始しない、すなわち、硬化された組成物中に変化せずに残るような様式で特にブロックされる。
【0063】
湿分硬化ポリウレタン組成物が、特にオキサゾリジン又はアルジミンなどのブロックされたアミンを含む場合、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくはアセトエステル基を含まない。
【0064】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは室温で液体である。
【0065】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、20℃において、好ましくは30~5,000mPa・s、好ましくは40~2,000mPa・s、特に好ましくは50~1,000mPa・s、特に50~500mPa・sの範囲の粘度を有する。本明細書中、粘度は、10秒-1の剪断速度で、コーン直径25mm、コーン角度1°、コーン先端-プレート距離0.05mmを有するコーン-プレート粘度計を用いて測定される。
【0066】
ブロックされたヒドロキシル基は、好ましくはエステル、アセトエステル、カーボネート、アセタール及びウレタン基から選択される。エステル、アセトエステル、カーボネート又はウレタン基が好ましい。ヒドロキシル基はこれらの基に特に容易に転換可能であり、それらは特に安定であり、且つポリエーテルウレタンポリマーとの適合性を有する。
【0067】
エステル、カーボネート又はウレタン基、特にエステル又はウレタン基が特に好ましい。これらの基は、オキサゾリジン又はアルジミンなどの加水分解によって放出可能なブロックされたアミンを含有する組成物中でも安定であり、組成物の硬化の間にそこから放出されるアミンと反応しない。
【0068】
エステル基、特にアセテート基が最も好ましい。これらは特に低い粘度を可能にし、且つ容易に入手可能である。
【0069】
エステル基、特に1~8個の炭素原子を有するエステル基、特にアセテート基又はベンゾエート基が特に好ましい。これらは特に単純な様式で調製可能である。
【0070】
アセテート基が最も好ましい。アセテート基の形態のブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、特に粘度が低く、非常に特に単純な様式で調製可能であり、且つ特に安価である。
【0071】
ウレタン基、特にフェニルウレタン基又はp-トルエンスルホニルウレタン基も好ましい。そのようなブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、管理可能な粘度を有し、且つ特に単純な様式で調製可能である。
【0072】
好ましいアセトエステル基はアセトアセテート基であるが、組成物が、加水分解によって放出可能なブロックされたアミンを含まない場合のみである。
【0073】
好ましいカーボネート基は、メチルカーボネート基である。
【0074】
好ましいアセタール基は、1,4-ジメチル-2-オキサペントキシ基、2-オキサシクロペンチルオキシ基又は2-オキサシクロヘキシルオキシ基、特に1,4-ジメチル-2-オキサペントキシ基である。
【0075】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル中に存在する繰り返し単位は、好ましくは1,2-エチレンオキシ、1,2-プロピレンオキシ、1,3-プロピレンオキシ、1,2-ブチレンオキシ又は1,4-ブチレンオキシ基、特に1,2-プロピレンオキシ基である。
【0076】
好ましくは、繰り返し単位の少なくとも70%、特に少なくとも80%は、1,2-プロピレンオキシ基からなり、且つ任意選択的に繰り返し単位の最高30%、特に最高20%は、1,2-エチレンオキシ基からなる。
【0077】
より好ましくは、繰り返し単位は完全に1,2-プロピレンオキシ基からなる。これによって、特に良好な加水分解安定性を有するポリウレタン組成物が可能となる。
【0078】
より好ましくは、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、1~3、特に1~2の範囲の平均OH官能性を有するヒドロキシ官能性ポリエーテルから誘導される。
【0079】
1のOH官能性を有する適切なヒドロキシ官能性ポリエーテルは、特にポリオキシプロピレンモノオールと呼ばれるものである。
【0080】
ポリオキシプロピレンモノオールの好ましい出発物質は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール又はフェノール、特にメタノール、エタノール又はブタノール、最も好ましくはブタノールである。
【0081】
1より大きいOH官能性を有する適切なヒドロキシ官能性ポリエーテルは、特にポリオキシプロピレンポリオールと呼ばれるものである。
【0082】
ポリオキシプロピレンポリオールの好ましい出発物質は、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ブタン-1,2,3,4-テトラオール(トレイトール若しくはエリトリトール)、ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール(キシリトール)又はヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(マンニトール若しくはソルビトール)、より好ましくはエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、トリメチロールプロパン又はグリセロール、特にプロパン-1,2-ジオール若しくはグリセロール、最も好ましくはプロパン-1,2-ジオールである。
【0083】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは、移動相としてテトラヒドロフラン、屈折率検出器及び200g/モルからの評価を用いて、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、600~15,000g/モル、特に好ましくは700~10,000g/モル、より好ましくは900~5,000g/モル、特に900~2,500g/モルの範囲の平均分子量Mを有する。
【0084】
これによって、特に高い伸張性及び弾性を有する湿分硬化ポリウレタン組成物が得られる。そのような組成物は、急速硬化及び高い低温柔軟性と組み合わせて特に長い加工時間(オープンタイム)を有する。
【0085】
好ましい実施形態において、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、25~90mg KOH/gの範囲、好ましくは50~80mg KOH/gの範囲のOH価を有するブタノール出発ポリオキシプロピレンモノオールから誘導される。これによって、特に良好な加工性及び特に高い低温柔軟性を有する湿分硬化ポリウレタン組成物が得られる。本明細書中、ブロックされたヒドロキシル基は、好ましくはアセテート基である。
【0086】
さらなる好ましい実施形態において、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、12~125mg KOH/gの範囲、好ましくは22~125mg KOH/gの範囲、特に45~125mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオールから誘導される。これによって、非常に良好な加工性及び良好な低温柔軟性を有する湿分硬化ポリウレタン組成物が得られる。本明細書中、ブロックされたヒドロキシル基は、好ましくはアセテート基である。
【0087】
さらに好ましい実施形態において、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、2.2~3の範囲の平均OH官能性及び22~56mg KOH/gの範囲のOH価を有するトリメチロールプロパン-又は特にグリセロール出発、任意選択的にエチレンオキシド末端ポリオキシプロピレントリオールから誘導される。
【0088】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、特に、少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリエーテルを、ヒドロキシル基のために適切な少なくとも1つのブロッキング剤と反応させることによって得られる。
【0089】
この反応に関して、ブロッキング剤は、ヒドロキシル基に関して少なくとも化学量論的に使用される。ブロッキングに関して、任意選択的にさらに触媒又は溶媒を使用して、それぞれの反応性基に関して慣習的な方法が使用される。ブロッキング反応が排除生成物を形成する場合、これらは適切な方法によって、特に蒸留によって反応混合物から除去される。
【0090】
適切なブロッキング剤は、ヒドロキシル基による付加又は置換反応を開始する求核化合物である。
【0091】
カルボン酸、カルボニルクロリド、カルボン酸エステル若しくはカルボン酸無水物、ジケテン、2,2,5-トリメチル-4H-1,3-ジオキシン-2-オン、tert-ブチルアセトアセテート、ジアルキルカーボネート、モノイソシアネート、(メタ)アクリルアミド、メチレンマロネート又はシアノアクリレートが特に適切である。
【0092】
エステル基の形態のブロックされたヒドロキシル基の形成により、カルボン酸、カルボニルクロリド、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物が好ましい。これらの中では、カルボン酸無水物又はカルボン酸エステル、特に無水酢酸が好ましい。
【0093】
ブロッキング剤として無水酢酸を使用する場合、酢酸は反応間に蒸留され、アセテート基の形態のブロックされたヒドロキシル基が形成される。
【0094】
ブロッキング剤として酢酸イソプロペニルを使用する場合、アセトンは反応間に蒸留され、同様にアセテート基の形態のブロックされたヒドロキシル基が形成される。
【0095】
アセトエステル基の形態のブロックされたヒドロキシル基の形成により、ジケテン、2,2,5-トリメチル-4H-1,3-ジオキシン-4-オン又は立体障害型の小アセトエステル、例えば、特に、tert-ブチルアセトアセテートがさらに好ましい。
【0096】
カーボネート基の形態のブロックされたヒドロキシル基の形成により、ジアルキルカーボネートがさらに好ましい。
【0097】
ウレタン基の形態のブロックされたヒドロキシル基の形成により、モノイソシアネートがさらに好ましい。フェニルイソシアネート又はp-トルエンスルホニルイソシアネートが好ましい。
【0098】
適切なヒドロキシ官能性ポリエーテルは、特に1~3の範囲のOH官能性及び600~15,000g/モル、特に好ましくは700~10,000g/モル、より好ましくは900~5,000g/モル、特に900~2,500g/モルの範囲の平均分子量Mを有するものである。
【0099】
25~90mg KOH/gの範囲、好ましくは50~80mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンモノオール、特にアルコール出発ポリオキシプロピレンモノオール、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール又はフェノールから出発したものが好ましい。これらの中では、アルキルアルコール出発ポリオキシプロピレンモノオール、特にメタノール、エタノール又はブタノールから出発したものが好ましい。650~2,000g/モル、特に700~1,500g/モルの範囲の平均分子量Mを有するブタノール出発ポリオキシプロピレンモノオールが特に好ましい。ブタノール出発ポリオキシプロピレンモノオールは、例えばSynalox(登録商標)100-20B、Synalox(登録商標)100-40B又はSynalox(登録商標)100-85B(全てDow製)として商業的に入手可能である。
【0100】
12~125mg KOH/gの範囲、好ましくは22~125mg KOH/gの範囲、特に45~125mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオールがさらに好ましい。
【0101】
22~56mg KOH/gの範囲のOH価を有し、且つ任意選択的に1,2-エチレンオキシ基の割合を含有するトリメチロールプロパン-又は特にグリセロール出発ポリオキシプロピレントリオールがさらに好ましい。
【0102】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは5重量%~40重量%、特に5重量%~35重量%の、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルを含有する。そのような組成物は、高い強度と組み合わせて良好な加工性及び高い伸張性を有する。
【0103】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、イソシアネート基を含有するさらなるポリマー、特に、少ない割合の従来通りに調製された、イソシアネート基を含有し、且つより高いジイソシアネートモノマー含有量を有するポリマーをさらに含んでいてもよい。
【0104】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくはオリゴマーイソシアネート、触媒及びフィラーから選択される少なくとも1つのさらなる構成要素(成分)をさらに含む。
【0105】
適切なオリゴマーイソシアネートは、特にHDIビウレット、例えば、Desmodur(登録商標)N 100若しくはN 3200(Covestro製)、Tolonate(登録商標)HDB若しくはHDB-LV(Vencorex製)又はDuranate(登録商標)24A-100(Asahi Kasei製);HDIイソシアヌレート、例えば、Desmodur(登録商標)N 3300、N 3600若しくはN 3790 BA(全てCovestro製)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT-LV若しくはHDT-LV2(Vencorex製)、Duranate(登録商標)TPA-100若しくはTHA-100(Asahi Kasei製)又はCoronate(登録商標)HX(Nippon Polyurethane製);HDIウレトジオン、例えば、Desmodur(登録商標)N 3400(Covestro製);HDIイミノオキサジアジンジオン、例えば、Desmodur(登録商標)XP 2410(Covestro製);HDIアロファネート、例えば、Desmodur(登録商標)VP LS 2102(Covestro製);IPDIイソシアヌレート、例えば、溶液でDesmodur(登録商標)Z 4470(Covestro製)又は固体形態でVestanat(登録商標)T1890/100(Evonik製);TDIオリゴマー、例えば、Desmodur(登録商標)IL(Covestro製);或いはTDI/HDIをベースとする混合イソシアヌレート、例えば、Desmodur(登録商標)HL(Covestro製)である。
【0106】
適切な触媒は、イソシアネート基の反応の促進のための触媒、特に有機スズ(IV)化合物、例えば、特に、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジメチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート又はジオクチルスズジアセチルアセトネート、ビスマス(III)又はジルコニウム(IV)の錯体、特にアルコキシド、カルボキシレート、1,3-ジケトネート、オキシネート、1,3-ケトエステレート及び1,3-ケトアミデートから選択されるリガンドを有するもの、或いは第三アミノ基を含有する化合物、例えば特に2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)である。
【0107】
適切なフィラーは、特に重質若しくは沈殿炭酸カルシウムであって、任意選択的に脂肪酸、特にステアレートでコーティングされたもの、バライト、石英粉、石英砂、ドロマイト、ウォラストナイト、焼成カオリン、シートシリケート、例えばマイカ若しくはタルク、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解プロセスから微細分割されたシリカを含むシリカ、セメント、石膏、フライアッシュ、工業的に製造されたカーボンブラック、黒鉛、金属粉末、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀又は鋼の金属粉末、PVC粉末又は中空ビーズである。
【0108】
脂肪酸、特にステアレートで任意選択的にコーティングされた炭酸カルシウム、焼成カオリン又は工業的に製造されたカーボンブラックが好ましい。
【0109】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、さらなる添加、特に以下を含有し得る。
-無機又は有機顔料、特に二酸化チタン、酸化クロム又は酸化鉄;
-繊維、特にガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維、ポリマー繊維、例えばポリアミド繊維又はポリエチレン繊維、又は天然繊維、例えばウール、セルロース、麻又はサイザル;
-ナノフィラー、例えばグラフェン又はカーボンナノチューブ;
-染料;
-乾燥剤、特にモレキュラーシーブ粉末、酸化カルシウム、高度反応性イソシアネート、例えば、p-トシルイソシアネート、モノオキサゾリジン、例えば、Incozol(登録商標)2(Incorez製)又はオルトギ酸エステル;
-接着力促進剤、特にオルガノアルコキシシラン、特にエポキシシラン、例えば、特に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン又はイミノシラン、又はこれらのシランのオリゴマー型、或いはチタネート;
-ブロックされたアミン、特にオキサゾリジン又はアルジミン、特にジ-又はトリアルジミン;
-さらなる可塑剤、特にカルボン酸エステル、例えばフタル酸エステル、特にフタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)又はフタル酸ジ(2-プロピルヘプチル)(DPHP)、水素化されたフタル酸エステル、特に水素化されたフタル酸ジイソノニル又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)、テレフタル酸エステル、特にテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)又はテレフタル酸ジイソノニル、水素化されたテレフタル酸エステル、特に水素化されたテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)又はテレフタル酸ジイソノニル、又はシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、特にアジピン酸ジオクチル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、安息香酸エステル、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機リン又はスルホン酸エステル、ポリブテン、ポリイソブテン、又は天然脂肪又は油、特にエポキシド化された大豆又は亜麻仁油から誘導される可塑剤;
-イソシアネート基の反応を促進するさらなる触媒、特にスズ、亜鉛、ビスマス、鉄、アルミニウム、モリブデン、ジオキソモリブデン、チタン、ジルコニウム又はカリウムの塩、石鹸又は錯体、特に2-エチルヘキサン酸スズ(II)、ネオデカン酸スズ(II)、酢酸亜鉛(II)、2-エチルヘキサン酸亜鉛(II)、ラウリン酸亜鉛(II)、亜鉛(II)アセチルアセトネート、乳酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)又は酢酸カリウム;第三アミノ基を含有する化合物、特にN-エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルアルキレンジアミン、ペンタメチルアルキレントリアミン及びそれらの高級相同物、ビス(N,N-ジエチルアミノエチル)アジペート、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、N-アルキルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン;芳香族窒素化合物、例えば、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾール又は1,2-ジメチルイミダゾール;有機アンモニウム化合物、例えばベンジルトリメチルアンモニウムヒドリド又はアルコキシル化三級アミン;既知の金属又はアミン触媒の変性である「遅延作動」触媒と呼ばれるもの;
-レオロジー変性剤、特に増粘剤、特にシートシリケート、例えばベントナイト、ヒマシ油の誘導体、水素化ヒマシ油、ポリアミド、ポリアミドワックス、ポリウレタン、尿素化合物、ヒュームドシリカ、セルロースエーテル又は疎水性変性ポリオキシエチレン;
-溶媒、特にアセトン、酢酸メチル、酢酸tert-ブチル、酢酸1-メトキシ2-プロピル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、アセタール、例えば、プロピラール、ブチラール、2-エチルヘキシラール、ジオキソラン、グリセロールホルマール又は2,5,7,10-テトラオキサウンデカン(TOU)、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、ナフサ、ホワイトスピリット、石油エーテル又はガソリン、特にSolvesso(商標)グレード(Exxon製)、及び炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、p-クロロベンゾトリフルオリド又はベンゾトリフルオリド;
-天然樹脂、脂肪又は油、例えばロージン、セラック、亜麻仁油、ヒマシ油又は大豆油;
-非反応性ポリマー、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル又はアルキル(メタ)アクリレートを含む群からの不飽和モノマーのホモ-又はコポリマー、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)又はアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO);
-難燃性物質、特にすでに記載された水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムフィラー、及び特に有機リン酸エステル、例えば特にリン酸トリエチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルクレシル、リン酸イソデシルジフェニル、リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリス(クロロイソプロピル)、リン酸トリス(クロロプロピル)、イソプロピル化されたリン酸トリフェニル、種々のイソプロピル化度のリン酸モノ-、ビス-又はトリ(イソプロピルフェニル)、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)又はポリリン酸アンモニウム;
-添加剤、特に湿潤剤、レベリング剤、消泡剤、脱気剤、酸化、熱、光若しくはUV放射線に対する安定剤又は殺生物剤;
或いは湿分硬化ポリウレタン組成物中に慣習的に使用されるさらなる物質。
【0110】
組成物中にそれらを混合する前に、特定の物質を化学的又は物理的に乾燥することは有利となり得る。
【0111】
本発明のポリウレタン組成物の製造において、ジイソシアネートモノマー含有量は、任意選択的に、イソシアネート基を含有するポリエーテルウレタンポリマーを、組成物のさらなる構成要素(成分)、特にフィラーと混合する際に存在する湿分との反応によってさらに減少される。
【0112】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは以下を含有する。
- 20重量%~60重量%の、イソシアネート基を含有し、且つ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有するポリエーテルウレタンポリマー、
- 5重量%~35重量%の、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル、
- 20%~60重量%のフィラー、
及び任意選択的なさらなる構成要素(成分)、特にイソシアネートオリゴマー、触媒、市販の可塑剤、ブロックされたアミン又はイソシアネート基を含有するさらなるポリマー。
【0113】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、特に湿分を排除することによって製造され、そして湿分不浸透性容器中で周囲温度において貯蔵される。適切な湿分不浸透性容器は、特に任意選択的にコーティングされた金属及び/又はプラスチックからなり、且つ特にドラム、輸送ボックス、ホブボック(hobbock)、バケツ、キャニスター、缶、バッグ、チューブ状バッグ、カートリッジ又はチューブである。
【0114】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、1成分組成物の形態、又は多成分、特に2成分組成物の形態であってよい。
【0115】
「1成分」組成物として記載される組成物は、組成物の全ての構成要素が同一容器内にあり、且つそれ自体が貯蔵安定性であるものである。
【0116】
「2成分」組成物として記載される組成物は、組成物の構成要素が、別々の容器中に貯蔵されている2つの異なる成分中にあり、且つ組成物の適用の直前又は間まで互いに混合されないものである。
【0117】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは1成分組成物である。適切なパッケージ及び貯蔵があれば、それは、典型的に数ヵ月以上、最高1年まで貯蔵安定性である。
【0118】
湿分硬化ポリウレタン組成物の適用時に硬化プロセスは開始する。これによって、硬化組成物が得られる。
【0119】
1成分組成物の場合、それはそのまま適用されて、次いで、湿分又は水分の影響下で硬化し始める。硬化の促進のため、水及び/又は触媒を含有するか、又は放出する促進剤成分及び/又は硬化剤を適用時に組成物中に混合することができるか、或いは組成物を、それらの適用後、そのような促進剤成分と接触させることができる。
【0120】
硬化の間、イソシアネート基は、湿分の影響下で互いに反応する。湿分硬化ポリウレタン組成物がブロックされたアミンを含有する場合、イソシアネート基は、それらが加水分解された時に、ブロックされたアミノで基とさらに反応する。組成物の硬化を導くイソシアネート基のこれらの反応全体は、架橋とも記載される。
【0121】
湿分硬化ポリウレタン組成物を硬化するために必要とされる湿気は、好ましくは、空気(大気湿分)からの拡散を通して組成物中に入る。このプロセスにおいて、硬化される組成物の固体層(「スキン」)は、空気と接触する組成物の表面上で形成される。外側から内側へ拡散する方向で硬化が続き、スキンはますます厚くなり、最終的に適用される全組成物を包含する。湿分は、組成物が適用された1つ又はそれ以上の基材からさらに又は完全に組成物中に入ることも可能であり、且つ/或いは適用時に組成物中に混合されるか、又は例えば塗布若しくは噴霧によって適用後にそれと接触する促進剤成分に由来することが可能である。
【0122】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは周囲温度で、特に-10~50℃の範囲、好ましくは-5~45℃、特に0~40℃の範囲の温度で適用される。
【0123】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは同様に周囲温度で硬化される。
【0124】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、長い加工時間(オープンタイム)及び急速硬化を有する。
【0125】
「オープンタイム」は、組成物が、機能するその能力のいずれかの喪失を生じることなく、適用後に加工可能であるか、又は再加工可能である期間を指す。接着剤として組成物が使用される場合、オープンタイムは、特に十分な接着力を生じるために、その適用後に結合が生じる範囲内の期間も指す。1成分組成物の場合、オープンタイムは、遅くともスキンが形成した時間を越えた。
【0126】
「硬化速度」は、例えば形成されるスキンの厚さを測定することによる、適用後の所与の期間内での組成物中のポリマー形成度を指す。
【0127】
硬化後の湿分硬化ポリウレタン組成物は、好ましくは、特に実施例に記載される通り、200mm/分の引張速度で、DIN EN 53504に従って決定される、少なくとも1MPa、特に少なくとも2MPaの引張強さを有する。
【0128】
硬化後の湿分硬化ポリウレタン組成物も、好ましくは、特に実施例に記載される通り、200mm/分の引張速度で、DIN EN 53504に従って決定される、少なくとも300%、特に少なくとも500%の破断時の伸び率を有する。
【0129】
弾性接着剤又は弾性シーラント又は弾性コーティングとして湿分硬化ポリウレタン組成物を使用することは好ましい。
【0130】
接着剤及び/又はシーラントとしての湿分硬化ポリウレタン組成物は、特に建設及び製造工業、又は自動車製造における結合及びシーリング用途に、特に寄せ木結合、アセンブリ、設置可能な構成要素の結合、モジュール結合、窓ガラス結合、ジョインシーリング、車体シーリング、シームシーリング又はキャビティシーリングのために適切である。
【0131】
自動車製造における弾性結合は、例えば、特に自動車、トラック、バス、鉄道車両若しくは船である自動車両の塗装体へのプラスチックカバー、トリムストリップ、フランジ、フェンダー、乗務員室若しくは他の設置可能な構成要素などの部品の結合付属、又は車両体への窓ガラスの結合である。
【0132】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、構造中の全種類のジョイン、シーム又はキャビティ、特にジョイン、例えば構造構成要素間の伸縮ジョイン又は連結ジョイン、或いは土木工事におけるフロアジョインの弾性シーリング用のシーラントとして特に適切である。柔軟性及び高い低温柔軟性を有するシーラントは、特に建設構造中の伸縮ジョインをシーリング(封着)するために特に適切である。
【0133】
コーティングとして、湿分硬化ポリウレタン組成物は、特にバルコニー、テラス、ルーフ、特に平坦なルーフ又はわずかに傾斜したルーフ領域又はルーフガーデンに関して、又はウエットルーム又はキッチンにおけるタイル若しくはセラミックプレート下の建築物内部中、又はコレクションパン、導管、シャフト、サイロ、タンク若しくは廃水処理システム中の建設構造又はその部品を保護及び/又はシーリング(封着)するために特に適切である。
【0134】
それは、例えばその目的にもはや適合しない漏洩しているルーフ膜又は床材のシール又はコーティングとして、或いは高度反応性の噴霧シールのための修復コンパウンドとして、修理目的のために使用されることもできる。
【0135】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、それが構造粘着性を有するペースト粘稠度を有するように配合することができる。この種類の組成物は、市販のカートリッジ又は樽又はホブボックから、例えば、本質的に丸形又は三角形の断面積を有し得るビーズの形態で、適切なデバイスによって適用される。
【0136】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、それが流体であり、且つ「セルフレベリング性」であるか、又はわずかのみチキソトロピー性であり、且つ適用のために注ぐことができるように配合することもできる。コーティングとして、それは、例えばローラー、スライドバー、のこぎり歯状アプリケーター又はこてによって、その後、所望の層厚までの平坦に分配されることが可能である。1回の操作で、典型的に、0.5~3mm、特に1.0~2.5mmの範囲の層の厚さが適用される。
【0137】
湿分硬化ポリウレタン組成物を用いて結合、シール(封着)又はコーティングすることができる適切な基材は、特に以下のものである。
-ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、セメントスクリード、繊維セメント、特に繊維セメントボード、レンガ、タイル、石膏、特に石膏ボード若しくは無水物スクリード、又は花こう岩若しくは大理石などの天然石;
-PCC(ポリマー変性セメントモルタル)又はECC(エポキシ樹脂変性セメントモルタル)をベースとする修復又はレベリングコンパウンド;
-亜鉛メッキ若しくはクロムメッキされた金属などの表面仕上げされた金属又は合金を含む、アルミニウム、銅、鉄、鋼、非鉄金属などの金属又は合金;
-アスファルト又はビチューメン;
-フェノール、メラミン若しくはエポキシ樹脂などの樹脂、樹脂/織物複合物又はポリマー複合物と呼ばれるさらなる材料で結合される革、織物、紙、木材、木材材料;
-それぞれの場合において、未処理であるか、又は例えばプラズマ、コロナ若しくは火炎によって表面処理された硬質及び軟質PVC、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、PMMA、ABS、SAN、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PUR、POM、TPO、PE、PP、EPM又はEPDMなどのプラスチック;
-カーボン繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)及びシート成形コンパウンド(SMC)などの繊維強化プラスチック;
-特にEPS、XPS、PUR、PIR、ロックウール、ガラスウール又はフォームガラスから製造される断熱フォーム;
-コーティング又は塗装された基材、特に塗装されたタイル、コーティングされたコンクリート、粉末コーティングされた金属若しくは合金、塗装された金属シート;
-塗料又はニス、特に自動車トップコート。
【0138】
必要とされる場合、基材は、特に物理的及び/又は化学的クリーニング法、或いは活性剤又はプライマーの適用によって、適用の前に前処理することができる。
【0139】
2つの同一の、又は2つの異なる基材を結合及び/又はシール(封着)することは可能である。
【0140】
本発明は、
(i)湿分硬化ポリウレタン組成物を
- 第1の基材に適用し、そして組成物のオープンタイム内に組成物を第2の基材と接触させること、又は
- 第1及び第2の基材に適用し、そして組成物のオープンタイム内に2つの基材を接合すること、又は
- 2つの基材の間に適用すること、
(ii)湿分との接触によって組成物を硬化すること
を含む結合又はシーリング(封着)方法をさらに提供する。
【0141】
本発明は、
(i)湿分硬化ポリウレタン組成物を基材に適用することと、
(ii)湿分と接触させることによって組成物を硬化することと
を含むコーティング又はシーリング(封着)方法をさらに提供する。
【0142】
湿分硬化ポリウレタン組成物の適用及び硬化、又は結合若しくはシーリング(封着)方法、又はコーティング若しくはシーリング(封着)方法によって、組成物によって結合又は封着又はコーティングされた物品が得られる。この物品は、建設構造又はその一部、特に、地上若しくは地下土木工事、橋、ルーフ、階段又は正面の建設構造であり得るか、或いは工業製品又は消費者製品、特に窓、パイプ、風力タービンのローターブレード、家電製品又は輸送形態、特に自動車、バス、トラック、鉄道車両、船、航空機若しくはヘリコプター、又はその設置可能な構成要素であり得る。
【0143】
したがって、本発明は、上記結合若しくは封着方法、又は上記コーティング又は封着方法から得られる物品をさらに提供する。
【0144】
湿分硬化ポリウレタン組成物は、有利な特性を有する。その低いジイソシアネートモノマー含有量のため、特別な安全予防措置を取らなくてもそれを安全に取り扱うことができ、そしてジイソシアネートモノマーに関していずれかのハザードラベルを必要とせず、湿分を排除することによって非常に貯蔵安定性であり、非常に良好な適用性を有し、且つ驚くほどの急速硬化と組み合わせて長い加工時間(オープンタイム)を有する。高い伸張性、高い低温柔軟性、良好な結合特性並びに熱及び湿分に対する高い安定性と組み合わせて、驚くほど高い引張強さを有する弾性材料が得られる。
【実施例
【0145】
以下、記載された本発明を説明することが意図される作用例を挙げる。本発明は、もちろん、これらの記載された作用例に限定されない。
【0146】
「標準気象条件」(「SCC」)は、23±1℃の温度及び50±5%の相対空気湿度を指す。
【0147】
特に明記されない限り、使用される化学物質は、Sigma-Aldrich製であった。
【0148】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルの調製:
粘度は、温度制御されたRheotec RC30コーン-プレート粘度計(コーン直径25mm、コーン角度1°、コーン先端-プレート距離0.05mm、剪断速度10秒-1)を用いて測定された。
【0149】
赤外線スペクトル(FT-IR)は、ダイヤモンド結晶による水平ATR測定ユニットを備えた、Thermo ScientificからのNicolet iS5 FT-IR器機上で非希釈フィルムとして測定された。吸収バンドは、波数(cm-1)で報告される。
【0150】
H NMRスペクトルは、400.14MHzにおいてBruker Ascend 400型の分光計上で測定した。化学シフトδは、テトラメチルシラン(TMS)に対するppmで報告される。真のカップリング及び偽カップリングパターンの間の識別はされなかった。
【0151】
化合物V-1:約790g/モルの平均分子量Mを有するブタノール出発アセチル化PPGモノオール
最初に、120.00gのブタノール出発ポリオキシプロピレンモノオール(Synalox(登録商標)100-20B、平均分子量M約750g/モル;Dow製)及び18.74gの無水酢酸を、窒素雰囲気下、蒸留アタッチメントを備えた丸底フラスコに装填した。次いで、蒸留液としての酢酸を回収しながら、130℃において穏やかな窒素流下で反応混合物を撹拌した。その後、80℃及び10mbarの減圧下で反応混合物から揮発性成分を除去した。20℃において74mPa・sの粘度を有する無色透明の液体が得られた。
FT-IR:2970,2931,2867,1738,1454,1372,1345,1296,1241,1098,1014,959,925,866,827.
H NMR(CDCl):5.02(hept.,1H,CH(CH)CH-OAc),3.75-3.34(2xm,ca.39H,OCHCH(CH)O),3.33-3.28(m,2H,CHCHCHCHO),2.04(s,3H,O(CO)CH),1.55(quint.,2H,CHCHCHCHO),1.36(sext.,2H,CHCHCHCHO),1.22(d,3H,CH(CH)CH-OAc),1.17-1.10(m,ca.36H,OCHCH(CH)O),0.91(t,3H,CHCHCHCHO).
【0152】
化合物V-2:約1,080g/モルの平均分子量Mを有するジアセチル化PPGジオール
80.00gのポリオキシプロピレンジオール(Voranol(登録商標)P 1010、OH価110mg KOH/g;Dow製)及び18.74gの無水酢酸を、化合物V-1に関して記載された通りに変換させた。20℃において145mPa・sの粘度を有する無色透明の液体が得られた。
【0153】
化合物V-3:約4,080g/モルの平均分子量Mを有するジアセチル化PPGジオール
600.0gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200、OH価28mg KOH/g;Covestro製)及び33.7gの無水酢酸を、化合物V-1に関して記載された通りに変換させた。20℃において1,174mPa・sの粘度を有する無色透明の液体が得られた。
【0154】
イソシアネート基を含有するポリマーの調製:
粘度は、温度制御されたRheotec RC30コーン-プレート粘度計(コーン直径50mm、コーン角度1°、コーン先端-プレート距離0.05mm、剪断速度10秒-1)を用いて測定された。
【0155】
ジイソシアネートモノマー含有量は、N-プロピル-4-ニトロベンジルアミンによる事前誘導の後、HPLC(フォトダイオード配列による検出;移動相として0.04M酢酸ナトリウム/アセトニトリル)によって決定された。
【0156】
ポリマーP1:
725.0gのDesmophen(登録商標)5031 BT(グリセロール出発エチレンオキシド末端ポリオキシプロピレントリオール、OH価28.0mg KOH/g、OH官能性約2.3;Covestro製)及び275gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44MC L(Covestro製))を、80℃において既知の方法によって、7.6重量%のNCO含有量、20℃において6.5Pa・sの粘度及び約20重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有するポリエーテルウレタンポリマーへと変換した。
【0157】
その後、揮発性成分、特に大部分のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートをショートパス蒸発器(ジャケット温度180℃、圧力0.1~0.005mbar、凝縮温度47℃)での蒸留によって除去した。そのようにして得られるポリエーテルウレタンポリマーは、1.7重量%のNCO含有量、20℃において19Pa・sの粘度及び0.04重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有した。
【0158】
ポリマーP2:
727.0gのAcclaim(登録商標)4200(ポリオキシプロピレンジオール、OH価28.0mg KOH/g;Covestro製)及び273.0gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44 MC L、Covestro製)を、80℃において既知の方法によって、7.6重量%のNCO含有量、20℃において5.2Pa・sの粘度及び約18重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有するポリエーテルウレタンポリマーへと変換した。
【0159】
その後、揮発性成分、特に大部分のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートをショートパス蒸発器(ジャケット温度180℃、圧力0.1~0.005mbar、凝縮温度47℃)での蒸留によって除去した。そのようにして得られたポリエーテルウレタンポリマーは、1.8重量%のNCO含有量、20℃において15.2Pa・sの粘度及び0.08重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有した。
【0160】
ポリマーP3:
300.0gのDesmophen(登録商標)5031 BT(グリセロール出発エチレンオキシド末端ポリオキシプロピレントリオール、OH価28.0mg KOH/g、Covestro製)、300.0gのAcclaim(登録商標)4200(ポリオキシプロピレンジオール、OH価28.0mg KOH/g、Covestro製)、75.5gの化合物V-1及び78.8gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44 MC L、Covestro製)を80℃において既知の方法によって変換した。そのようにして得られたポリエーテルウレタンポリマーは、1.65重量%のNCO含有量、20℃において67.1Pa・sの粘度及び2.1重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有した。
【0161】
ポリマーP4:
ポリマーP4は、化合物V-1ではなく、同量の化合物V-2を使用したことを除き、ポリマーP3に関して記載された通りに調製された。そのようにして得られたポリエーテルウレタンポリマーは、1.68重量%のNCO含有量、20℃において56.8Pa・sの粘度及び2.0重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有した。
【0162】
ポリマーP5:
ポリマーP5は、化合物V-1ではなく、同量の化合物V-3を使用したことを除き、ポリマーP3に関して記載された通りに調製された。そのようにして得られたポリエーテルウレタンポリマーは、1.68重量%のNCO含有量、20℃において67.8Pa・sの粘度及び2.0重量%のモノマージフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート含有量を有した。
【0163】
湿分硬化ポリウレタン組成物:
組成物Z1~Z7:
各組成物に関して、湿分を排除しながら、3000rpmにおいて1分間、遠心混合機(SpeedMixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.)によって、表1に明記される成分を(重量部で)明記される量で混合し、湿分を排除しながら貯蔵した。以下の通りに各組成物を試験した:
【0164】
貯蔵安定性に関して決定される基準は、貯蔵後の組成物の粘度であった。それぞれの場合において、1つの閉鎖カートリッジを室温において1日間、又は60℃において空気循環オーブン中で7日間貯蔵し、そして温度制御されたRheotec RC30コーン-プレート粘度計(コーン直径25mm、コーン角度1°、コーン先端-プレート距離0.05mm、剪断速度10秒-1)を用いて粘度を測定した。「1d RT」又は「7d 60℃」として結果を示す。
【0165】
加工時間(オープンタイム)に関して決定される基準は、スキン時間(「ST」)であった。この目的のために、数グラムの組成物を約2mmの層厚でボール紙に適用し、そして、標準気象条件下で、その時間後は組成物の表面を穏やかに軽くたたくために使用されたLDPEピペット上にもはや残渣が残らない第1の期間を決定した。
【0166】
硬化速度に関して決定される基準は、標準気象条件下で24時間後の硬化であった。この目的のために、組成物を直径3cmの独立円錐体として適用し、標準気象条件下で立たせて、そして24時間後に横方向に開口部を切断し、そして形成された硬化ポリマーの環の層厚を測定した。
【0167】
機械的特性、並びに熱及び加水分解に対する安定性の基準として、各組成物を、2mmの膜厚が得られるように2枚のワックスコーティングされた転写紙の間で押圧し、7日間標準気象条件下で貯蔵した。ワックス紙の除去後、75mmの長さ及び30mmのバーの長さ及び4mmのバーの幅を有するいくつかのダンベル形を膜から打ちぬいた。これらを使用して、引張強さ、破断時の伸び率、及び0.5~5%の伸び率又は0.5~50%の伸び率における弾性係数をDIN EN 53504に従って、200mm/分の剪断速度で決定した。これらの結果を「7d SCC」として示す。加えて、さらなる打ちぬかれたダンベル形を空気循環オーブン中、100℃で7日間、又は70℃/100%相対湿度で7日間貯蔵し、標準気象条件下で冷却し、そしてすでに記載された様式で、引張強さ、破断時の伸び率、並びに5%及び50%弾性係数に関して試験した。これらの結果を「7d 100℃」又は「7d 70/100」として示す。
【0168】
接着結合の強度を決定するために、ラップ剪断強さ(「LSS」)をガラス上で決定した。この目的のために、重なり合った接着結合が12×25mmの寸法及び4mmの厚さを有し、且つガラスプレートが上部端部で突き出るような様式で、イソプロパノールで脱脂され、且つSika(登録商標)Primer 207(Sika Schweiz製)で前処理された2枚のガラスプレートを結合することによって複合試験片を製造した。複合試験片を7日間、標準気象条件下で貯蔵した後、20mm/分の歪み速度でDIN EN 1465に従ってラップ剪断強さを試験した。
【0169】
ショアA硬度は、7日間、標準気象条件下で硬化された試験片上で、DIN 53505に従って決定された。
【0170】
複素弾性係数Mは、7日間、標準気象条件で貯蔵/硬化された細片試料(高さ2~3mm、幅2~3mm、長さ8.5mm)上で、Mettler DMA/SDTA 861e器機を用いて、DMTA測定によって決定された。測定条件は以下の通りであった:引張モードでの測定、励磁周波数10Hz及び加熱速度5K/分。試料を-70℃まで冷却し、100℃まで加熱して、Mを測定した。表1に、-20℃、-10℃、0℃、10℃及び20℃におけるMを報告する。低い値のM(-20℃)/M(20℃)比は、弾性係数の良好な温度独立性、及び高い低温柔軟性の基準である。
【0171】
結果を表2に報告する。
【0172】
組成物Z2、Z3及びZ4は、本発明の実施例である。組成物Z1及びZ5~Z7は比較例であり、「(比較)」が付け加えられる。比較例Z1は、従来技術の可塑剤を含有し、そして比較例Z5~Z7は、それぞれイソシアネート基を含有し、且つ高いジイソシアネートモノマー含有量を有する従来通りに調製されたポリマーを含有する。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
表2から、本発明の組成物Z2、Z3及びZ4は、従来技術からの典型的な可塑剤を含み、且つ低いジイソシアネートモノマー含有量を有する参照組成物Z1と比べて、そして高いジイソシアネートモノマー含有量を有する参照組成物Z5、Z6及びZ7と比べて、同一オープンタイム(スキン時間)で、より急速に硬化すること(24時間後により厚い硬化皮膜)が明らかである。
【0176】
本発明の組成物Z2、Z3及びZ4が、ショア硬度、接着力並びに乾燥及び湿分の熱に対する抵抗に関して、均一に高い、又はわずかに高い破断時の伸び及び同等の特性とともに、それぞれの参照組成物よりも明確に高い引張強さを有することも明らかである。
【0177】
最後に、本発明の組成物Z2及びZ3は、参照組成物Z1と比較して、低温柔軟性の明確な改善を示すが、ブロックされたヒドロキシル基を有する非常に高分子量のポリエーテルを含む本発明の組成物Z4は、同程度の低温柔軟性を示す。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]以下を含む、0.1重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する湿分硬化ポリウレタン組成物:
- 少なくとも3/1のNCO/OH比で、少なくとも一つのジイソシアネートモノマーと、少なくとも一つのポリエーテルポリオールとを反応させ、続いて適切な分離方法によって、大部分の前記ジイソシアネートモノマーを除去することから得られる、イソシアネート基を含有し、かつ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有する少なくとも一つのポリエーテルウレタンポリマー、及び
- 可塑剤としての、イソシアネート基を含まない、ブロックされたヒドロキシル基を有する少なくとも一つのポリエーテル。
[2]前記ポリエーテルウレタンポリマーが、0.5重量%~6.0重量%の範囲のNCO含有量を有することを特徴とする、上記[1]に記載のポリウレタン組成物。
[3]前記ポリエーテルウレタンポリマーが、ポリエーテルセグメント中に80重量%~100重量%の1,2-プロピレンオキシ基及び0重量%~20重量%の1,2-エチレンオキシ基を有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のポリウレタン組成物。
[4]前記反応のために使用する前記ジイソシアネートモノマーが、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート若しくはトリレン2,4-ジイソシアネートとトリレン2,6-ジイソシアネートとの混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、又はヘキサン1,6-ジイソシアネートであることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[5]前記ポリエーテルウレタンポリマーの前記NCO含有量が、前記ポリエーテルポリオールのOH基1モルあたりジイソシアネートモノマー1モルの添加から算出した理論的NCO含有量の少なくとも80%、特に少なくとも85%であることを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[6]前記ブロックされたヒドロキシル基が、エステル、アセトエステル、カーボネート、アセタール及びウレタン基から選択されることを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[7]前記ブロックされたヒドロキシル基がアセテート基であることを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[8]ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、1~3の範囲の平均OH官能性を有するヒドロキシ官能性ポリエーテルから誘導されることを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[9]ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出器、及び200g/モルからの評価を用いて、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、600~15,000g/モルの範囲の平均分子量M を有することを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[10]5重量%~40重量%のブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルを含有することを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[11]イソシアネートオリゴマー、触媒、及びフィラーから選択される少なくとも一つのさらなる成分をさらに含むことを特徴とする、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[12]以下を含有することを特徴とする、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物:
- 20重量%~60重量%の、イソシアネート基を含有しかつ0.5重量%以下のジイソシアネートモノマー含有量を有するポリエーテルウレタンポリマー、
- 5重量%~35重量%の、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル、
- 20重量%~60重量%のフィラー、
及び任意選択的なさらなる成分。
[13]以下の工程を含む、結合又はシーリング方法:
(i)上記[1]~[12]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物を
- 第1の基材に適用し、かつ前記組成物のオープンタイム内に前記組成物を第2の基材と接触させること、又は
- 第1及び第2の基材に適用し、かつ前記組成物の前記オープンタイム内に前記2つの基材を接合すること、又は
- 2つの基材の間に適用すること、
(ii)湿分との接触によって前記組成物を硬化すること。
[14]以下の工程を含む、コーティング又はシーリング方法:
(i)上記[1]~[12]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物を基材に適用すること、
(ii)湿分と接触させることによって前記組成物を硬化すること。
[15]上記[13]又は[14]に記載の方法から得られる物品。