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  • 特許-リソグラフィ用組成物及びそれの使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】リソグラフィ用組成物及びそれの使用法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240215BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20240215BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01L21/30 577
H01L21/30 573
C08L81/06
G03F7/09
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116140
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2019550834の分割
【原出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2022163066
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】62/472,208
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・フェイロン
(72)【発明者】
【氏名】ウルファー・エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ポリッシュチャック・オレスト
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン・エム・ダリル
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー・ダグラス
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-045171(JP,A)
【文献】特開2008-015223(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050064(WO,A1)
【文献】特開2000-176949(JP,A)
【文献】特開2013-032327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/30、21/304、21/46
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 65/00-67/04、75/00-75/32
G03C 3/00
G03F 7/004-7/04、7/06、7/075-7/115、
7/16-7/18
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィプロセスにおいてハードマスク組成物から基材の縁を保護するために基材の縁上にマスキングフィルムを形成するためのマスキング用組成物であって、
a.構造(I)を有する単位を含む第一のポリマー:
【化1】
[式中、
Xは、-SO-、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは、直接結合であるか、またはAは、構造(II)からなる群から選択され:
【化2】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、及び(C1~3)アルキルカルボニルからなる群から選択され;
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、4である]
但し、前記第一のポリマーは、30000超の重量平均分子量(Mw)を有する;
b.構造(I)を有する単位を含む第二のポリマー:
【化3】
[式中、
Xは、-SO-、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは、直接結合であるか、またはAは、構造(II)からなる群から選択され:
【化4】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、及び(C1~3)アルキルカルボニルからなる群から選択され;
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、4である]
但し、前記第二のポリマーは、30000未満の重量平均分子量(Mw)を有する;
c.有機溶剤、
を含み、前記第一のポリマーと前記第二のポリマーの合計した量は、該マスキング用組成物の0.1重量%と20重量%との間である、
前記マスキング用組成物。
【請求項2】
前記第一のポリマーと前記第二のポリマーとが同じ構造を有する、請求項1に記載のマスキング用組成物。
【請求項3】
前記第二のポリマーが、950015000との間の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項に記載のマスキング用組成物。
【請求項4】
前記第一のポリマーが、前記第二のポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも3.5倍~5倍大きい重量平均分子量(Mw)を有する、請求項に記載のマスキング用組成物。
【請求項5】
前記第一のポリマーと前記第二のポリマーと異なる構造を有する、請求項1に記載のマスキング用組成物。
【請求項6】
前記第二のポリマーが15000未満の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項に記載のマスキング用組成物。
【請求項7】
前記第二のポリマーが、20000未満の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項に記載のマスキング用組成物。
【請求項8】
Xが-SO-である、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項9】
各々のR 、各々のR 、各々のR 及び各々のR が、独立して、H、F及び(C1~3)アルキルからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項10】
各々のRが、独立して、H、F、(C1~3)アルキル及び(C1~3)フッ素化アルキルからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項11】
前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーのうちの一方または両方が構造(III)を有する、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【化5】
【請求項12】
前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーのうちの一方または両方が構造(IV)を有する、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【化6】
【請求項13】
前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーのうちの一方または両方が構造(V)を有する、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【化7】
【請求項14】
前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーのうちの一方または両方が構造(VI)を有する、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【化8】
【請求項15】
前記有機溶剤が、アニソール、シクロヘキサノン、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン、ジ-(C1~6)アルキルケトン、(C1~6)アルキルアセテート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項16】
前記第一のポリマーと前記第二のポリマーとの合計した量が、該マスキング用組成物の3重量%と20重量%との間である、請求項1~のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項17】
前記第一のポリマーと前記第二のポリマーとの合計した量が、該マスキング用組成物の10重量%と15重量%との間である、請求項1~7のいずれか一つに記載のマスキング用組成物。
【請求項18】
電子デバイスを製造する方法であって、
a.請求項1~7のいずれか一つに記載のマスキング用組成物を基材の縁に施与するステップ、及
b.上記マスキング用組成物を150℃と350℃との間の温度で、60秒間~120秒間の時間加熱して、マスキングフィルムを形成するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項19】
.ハードマスク用組成物を、前記基材及びマスキングフィルム上に施与するステップ;d.前記ハードマスク用組成物をエッジビードリムーバを用いてすすいで、少なくとも、マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物を除去するステップ;
e.上記ハードマスク用組成物を加熱してハードマスクを形成するステップ;及び
f.上記マスキングフィルムを除去するステップ、
更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リソグラフィプロセスにおいてハードマスク組成物から基材の縁を保護するために基材の縁上にマスキングフィルムを形成するためのマスキング用組成物であって、
a.30000超で、50000以下の重量平均分子量(Mw)を有する、次式(IV)を有する単位を含む第一のポリマー、
【化9】
b.9500と15000との間の重量平均分子量(Mw)を有する、次式(IV)を有する単位を含む第二のポリマー、
【化10】
c.アニソールを含む有機溶剤を含み、
前記第一のポリマーと前記第二のポリマーとの合計した量が、該マスキング用組成物の0.1重量%と20重量%との間である、
前記マスキング用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材または半導体デバイスの製造または処理に有用な組成物及び方法、詳しくは、リソグラフィ用基材または半導体デバイス上に層またはマスクを形成するのに有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の反射防止層及びハードマスクは、発展したリソグラフィパターン化プロセスに使用される。例えば、フォトレジストが十分な耐ドライエッチング性を供しない場合には、ハードマスクとして働き及び基材エッチングの際に高耐エッチング性である、フォトレジスト用の下層及び/または反射防止コーティングが好ましい。一つの方策として、有機フォトレジスト層の下の層にケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムまたは他の金属材料が組み入れられてきた。追加的に、他の高炭素含有率の反射防止またはマスク層を、高炭素フィルム/ハードマスク/フォトレジストの三層を形成するために、金属含有反射防止層の下に配置することができる。このような層は、画像形成プロセスのリソグラフィ性能を向上するために使用できる。しかし、リソグラフィ用及びエッチング用工具における金属汚染、並びに製造の間のウェハ間の相互汚染は避けるべきである。
【0003】
集積回路部品の製造の間の金属汚染を減少させるための一つの方法及び装置は、US8,791,030(Iwao et al)(特許文献1)に記載されている。この文献はその全体が本明細書中に掲載されたものとする。Iwaoらによれば、マスキング用組成物は、基材の縁に供されそしてベークされて、基材の縁のところにマスキングフィルムを形成する。次いで、ハードマスク用組成物は、この基材及びマスキングフィルム上にコーティングされる。前記マスキングフィルムを覆う部分のハードマスク用組成物は、エッジビードリムーバを用いて除去され、そしてハードマスク用組成物はベークされてハードマスクを形成する。次いで、このマスキングフィルムは、マスキングフィルム除去液を用いて除去される。その結果は、基材の縁からは離れたハードマスクであり、それによって汚染を減少させる。
【0004】
それ故、基材の縁に供することができそして処理してマスキングフィルムを形成できるマスキング用組成物への要望がある。特に、(例えばスピンオン技術を用いて)基材の縁にキャストすることを可能とする性質を有するマスキング用組成物を提供することが有利であろう。加えて、これらのマスキング用組成物は、ハードマスク用組成物中に使用される溶剤中にそれほど溶解しないマスキングフィルムを生成するべきである。更に、該マスキングフィルムは、エッジビードリムーバ中にあまり溶解するべきではない。更には、これらのマスキングフィルムは、ハードマスクに有害な作用を及ぼすことなく除去できるべきである。特に、マスキングフィルムが、ハードマスクに有害な作用を及ぼさない溶剤を用いたウェットエッチングによって除去できるものであるのが有用であろう。加えて、マスキングフィルムが、商業的に許容可能なプロセス時間を可能とする速度で除去できることが有用であろう。本開示は、これらの要望に取り組むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US8,791,030
【文献】US9,315,636
【文献】US8,568,958
【文献】US9,201,305
【文献】US9,296,922
【文献】US9,409,793
【文献】US9,499,698
【文献】US62/437,449
【文献】US14/978,232
【発明の概要】
【0006】
この観点の一つでは、本発明はマスキング用組成物であって:
a.構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【0007】
【化1】
[式中、
Xは、-SO-、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは直接結合であるか、またはAは次の構造(II)を有し:
【0008】
【化2】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、及び(C1~3)アルキルカルボニルからなる群から選択され;
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
b.有機溶剤
を含み、前記ポリマーが50000未満の平均分子量を有する、前記マスキング用組成物に関する。
【0009】
この観点の他の一つでは、本発明は、電子デバイスを製造するための方法であって:
a.マスキング用組成物を基材の縁に施与し、ここで前記マスキング用組成物は:
構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【0010】
【化3】
[式中、
Xは、-SO-、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは直接結合であるか、またはAは次の構造(II)を有し:
【0011】
【化4】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、及び(C1~3)アルキルカルボニルからなる群から選択され;
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
有機溶剤、
を含み、
b.上記マスキング用組成物を150℃~350℃の温度で、60秒間と120秒間との間の時間加熱して、マスキングフィルムを形成する、
ことを含む、方法に関する。
【0012】
この観点の更に他の一つでは、本発明は、電子デバイスを製造するための方法であって:
a.マスキング用組成物を基材の縁に施与し、ここで前記マスキング用組成物は:
構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【0013】
【化5】
[式中、
Xは、-SO-、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは直接結合であるか、またはAは次の構造(II)を有し:
【0014】
【化6】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、及び(C1~3)アルキルカルボニルからなる群から選択され; 及び
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
有機溶剤、
を含み、
b.上記マスキング用組成物を加熱してマスキングフィルムを形成し;
c.ハードマスク用組成物を、前記基材及びマスキングフフィルム上に施与し;
d.前記ハードマスク用組成物をエッジビードリムーバを用いてすすいで、少なくとも、マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物を除去し;
e.上記ハードマスク用組成物を加熱してハードマスクを形成し; 及び
f.上記マスキングフィルムを除去する、
ことを含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1a~fは、本発明のマスキング用組成物を使用するための方法の一つの態様の概略図を示す。図1aでは、マスキング用組成物を基材の縁上に施与する。図1bでは、上記マスキング用組成物を加熱してマスキングフィルムを形成する。図1cでは、ハードマスク用組成物を、前記基材及びマスキングフィルム上に施与する。図1dでは、前記ハードマスク用組成物をエッジビードリムーバを用いてすすいで、少なくとも、マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物を除去する。図1eでは、上記ハードマスク用組成物を加熱してハードマスクを形成する。図1fでは、上記マスキングフィルムを除去している。
【0016】
定義
他に記載が無ければ、本明細書及び特許請求の範囲に使用される以下の用語は、本願の目的に関して次の意味を有する。
【0017】
本願において、単数形の使用は複数も包含し、他に具体的に記載がなければ、単数形は「少なくとも一つ」を意味する。更に、「含む」という記載、並びに「含まれる」などの他の動詞形の使用は限定的ではない。また、「要素」または「成分」などの用語は、他に具体的に記載がなければ、一つの構成単位を含む要素または成分、並びに1つ超の構成単位を含む要素または成分の両方を包含する。ここで使用する「及び」という接続詞は包括的であることを意図しており、「または」という接続詞は、他に指示が無ければ排他的であることを意図していない。例えば、「またはその代わりに」というフレーズは、排他的であることを意図している。ここで使用する「及び/または」という記載は、単一要素の使用も含む、前述される要素の任意の組み合わせを指す。
【0018】
「約」または「おおよそ」という記載は、測定可能な変数に関連して使用される場合は、変数の表示値、並びに表示値の実験誤差内の(例えば、平均の95%信頼限界内の)または表示値の±10パーセント内のいずれか大きい方の変数の全ての値のことを言う。
【0019】
ここで使用する場合、「Cx-y」は、鎖中の炭素原子数を示す。例えば、C1-6アルキルは、1個と6個の間の炭素原子の鎖を持つアルキル鎖を指す(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル)。他に具体的に記載が無ければ、上記鎖は線状または分岐状であることができる。
【0020】
他に記載がなければ、アルキルとは、線状、分岐状(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル及び類似物)、環状(例えばシクロヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル及び類似物)または多環式(例えばノルボルニル、アダマンチル及び類似物)であることができる炭化水素基を指す。これらのアルキル部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0021】
フッ素化アルキル(別称はフルオロアルキル)は、水素のうちの一つ以上がフッ素に置き換えられた先に定義したような線状、環状または分岐状飽和アルキル基を指す(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロシクロヘキシル及び類似物)。これらのフルオロアルキル部分は、パーフルオロ化されていない場合には、置換されていなくともよいし、または更に置換されていてもよい。
【0022】
アルコキシ(別称はアルキルオキシ)は、オキシ(-O-)部分を介して結合した先に定義したようなアルキル基を指す(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、1,2-イソプロポキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ及び類似物)。これらのアルコキシ部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0023】
アルキルカルボニルは、カルボニル基(-C(=O)-))部分を介して結合した先に定義したようなアルキル基を指す(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル及び類似物)。これらのアルキルカルボニル部分は、置換されていても、置換されていなくともよい。
【0024】
ハロまたはハライドはハロゲンを指す(例えばF、Cl、Br、及びI)。
【0025】
ヒドロキシ(別称はヒドロキシル)は-OH基を指す。
【0026】
他に記載がなければ、「置換された」という記載は、アルキル、アルコキシ、フッ素化アルキル及び類似物に言及するときは、置換されていないアルキル、置換されたアルキル、置換されていないアリール、置換されたアリール、アルキルオキシ、アルキルアリール、ハロアルキル、ハライド、ヒドロキシ、アミノ及びアミノアルキルからなる群から選択される一つ以上の置換基も含むこれらの部分のうちの一つを指す。同様に、「置換されていない」という記載は、水素以外の置換基が存在しない同部分を指す。
【0027】
ここで使用する各章の表題は、文書構成を目的としたものであって、記載の主題を限定するものと解釈するべきではない。限定はされないが特許、特許出願、論文、書籍及び専門書を始めとした本願で引用する全ての文献または文献の一部は、全ての目的に関してそれらの内容の全てが本明細書中に掲載されたものとする。ここに掲載されたものとする文献及び類似の資料の一つ以上における或る用語の定義が、本願明細書におけるものと矛盾する場合は、本願の定義が優先する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明の双方とも例示及び説明のためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を減縮するものではないと理解するべきである。
【0029】
本発明のマスキング用組成物は、ポリマー及び有機溶剤によって形成され、ここで該ポリマーは、次の構造(I)を有する単位を持つ:
【0030】
【化7】
一つの態様では、Xは-SO-である。更に別の態様の一つでは、Xは-C(=O)-である。他の態様の一つでは、Xは-O-である。
【0031】
構造(I)では、各Rは、独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、または(C1~3)アルキルカルボニルである。特定の変形態様では、各Rは、独立して、H、F、または(C1~3)アルキルである。
【0032】
一つの変形態様では、qは0である。更に別の変形態様の一つでは、qは1である。他の変形態様では、qは2である。更に別の他の変形態様の一つでは、qは3である。更にもう一つの他の変形態様では、qは4である。
【0033】
構造(I)では、各Rは、独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、または(C1~3)アルキルカルボニルである。特定の変形態様では、各Rは、独立して、H、F、または(C1~3)アルキルである。
【0034】
一つの変形態様では、rは0である。更に別の変形態様の一つでは、rは1である。他の変形態様の一つでは、rは2である。更に別の他の変形態様の一つでは、rは3である。更にもう一つの他の変形態様では、rは4である。
【0035】
構造(I)においては、Aは直接結合であることができる。代替的に、Aは構造(II)を有することができる:
【0036】
【化8】
構造(II)では、各Rは、独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、または(C1~3)アルキルカルボニルである。特定の変形態様では、各Rは、独立して、H、F、(C1~3)アルキル、または(C1~3)フッ素化アルキルである。
【0037】
構造(II)では、各Rは、独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、または(C1~3)アルキルカルボニルである。特定の変形態様では、各Rは、独立して、H、F、または(C1~3)アルキルである。
【0038】
一つの変形態様では、sは0である。更に別の変形態様の一つでは、sは1である。他の変形態様の一つでは、sは2である。更に別の他の変形態様の一つでは、sは3である。更にもう一つの他の変形態様では、sは4である。
【0039】
構造(II)では、各Rは、独立して、H、ハロ、(C1~3)アルキル、(C1~3)フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C1~3)アルコキシ、または(C1~3)アルキルカルボニルである。特定の変形態様では、各Rは、独立して、H、F、または(C1~3)アルキルである。
【0040】
一つの変形態様では、tは0である。更に別の変形態様の一つでは、tは1である。他の変形態様の一つでは、tは2である。更に別の他の変形態様の一つでは、tは3である。更にもう一つの他の変形態様では、tは4である。
【0041】
一つの特定の態様では、該ポリマーは構造(III)を有する:
【0042】
【化9】
他の特定の態様の一つでは、該ポリマーは構造(IV)を有する:
【0043】
【化10】
他の特定の態様の一つでは、該ポリマーは構造(V)を有する:
【0044】
【化11】
他の態様の一つでは、該ポリマーは構造(VI)を有する:
【0045】
【化12】
該ポリマーの分子量は、所望のエッチング速度を与えるために選択することができる。その目的で、低分子量のポリマーの導入はエッチング速度を高める。このようにして、高分子量のポリマーしか含まないマスキングフィルムを加工するために必要な典型的には長いエッチング時間を有利に短縮することができる。それ故、一つの態様では、前記ポリマーは50000以下の平均分子量を有する。他の態様の一つでは、前記ポリマーは40000以下の平均分子量を有する。更に別の態様の一つでは、前記ポリマーは35000以下の平均分子量を有する。他の態様の一つでは、前記ポリマーは30000以下の平均分子量を有する。
【0046】
しかし、非常に小さい分子量のポリマーの使用は、マスキングフィルムとして使用するためには除去が簡単すぎるフィルムを生成し得る。それ故、一つの態様では、前記ポリマーは少なくとも10000の平均分子量を有する。他の態様の一つでは、前記ポリマーは少なくとも20000の平均分子量を有する。更に別の態様の一つでは、前記ポリマーは少なくとも28000の平均分子量を有する。
【0047】
該組成物は単一のポリマーを含むことができる。代替的に、該組成物は複数種のポリマーの混合物を含むことができる。該組成物が複数種のポリマーの混合物を含む場合には、該複数種のポリマーの混合物は、40000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、40000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含むことができる。代替的に、該複数種のポリマーの混合物は、30000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、30000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含むことができる。更に、該複数種のポリマーの混合物は、20000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、20000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含むことができる。上記の第一のポリマーは、Aldrich社から得ることができ、そして前記の第二のポリマーは合成することができる。
【0048】
加えて、該組成物が、第一のポリマーと第二のポリマーとの混合物を含む場合には、これらのポリマーのうちの一つまたは両者は構造(I)の単位を有することができる。それ故、一つの変形態様では、前記第一のポリマーは構造(I)の単位を有する。更に別の変形態様の一つでは、前記第二のポリマーは構造(I)の単位を有する。他の変形態様の一つでは、前記第一のポリマーと前記第二のポリマーの両方が、構造(I)の単位を有する。
【0049】
任意の様々な有機溶剤を該組成物中に使用することができる。特に、該有機溶剤は、アニソール、シクロヘキサノン、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン、ジ-(C1~6)アルキルケトン、(C1~6)アルキルアセテートまたはこれらの混合物であることができる。具体的なジ-(C1~6)アルキルケトンには、限定はされないが、ブタノン、シクロペンタノン、エチルイソプロピルケトン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン及びこれらの混合物が包含される。具体的な(C1~6)アルキルアセテートには、限定はされないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、及びこれらの混合物が包含される。
【0050】
該組成物の固形物含有率は、所望のフィルム厚に基づいて調節できることは当業者には理解されることである。或る変形態様では、該ポリマーは、少なくとも0.1重量%の量で該組成物中に存在する。他の変形態様では、該ポリマーは、少なくとも3重量%の量で存在する。或る変形態様では、該ポリマーは、20重量%以下の量で存在する。他の変形態様では、該ポリマーは、15重量%以下の量で存在する。
【0051】
本発明のマスキング用組成物は、様々なリソグラフィ用途においてマスキングフィルムを形成するために使用できることは当業者には理解することである。特に、本発明のマスキング用組成物は、エッジ保護層を形成するために使用することができる。この目的のためには、該マスキング用組成物は、基材の縁上に施与し、次いで処理してマスキングフィルムを形成することができる。例えば、該マスキング用組成物は、150℃と350℃の間の温度で及び60秒間と120秒間の間の時間、硬化することができる。該マスキング用組成物は、当技術分野で既知の任意の様々な技術を用いて基材に施与することができる。特に、該マスキング用組成物は、スピンオンコーティング法によって基材上に施与することができる。
【0052】
より具体的には、図面1a~fを参照して、本発明のマスキング用組成物は、電子デバイスの製造方法に使用することができる。マスキング用組成物を基材の縁に施与し(図1a)、そして(例えば熱をかけて)処理して、マスキングフィルムを形成する(図1b)。該マスキング用組成物は、任意選択的に、施与の前に不純物を減少させるために処理することができる。例えば、該マスキング用組成物は、イオン交換によって痕跡金属を減少するために処理することができる。次いで、ハードマスク用組成物を、この基材及びマスキングフィルム上に施与する(図1c)。該マスキングフィルム及びハードマスク組成物はエッジビードリムーバですすいで、少なくとも、マスキングフィルムと接触している部分の該ハードマスク用組成物を除去する(図1d)。該マスキングフィルムと接触している一つまたは複数の部分の該ハードマスク用組成物は、このすすぎ後でさえ残留し得るが、残留する部分は、該マスキング層の効果を大きく低下させないことが条件である。例えば、該マスキングフィルムと接触するハードマスク用組成物の約5%までがすすぎ後に残留し得る。次いで、該ハードマスク組成物を(例えば熱をかけて)処理してハードマスクを形成する(図1e)。次いで、該マスキングフィルムを除去することができ、そうして、基材の縁から離れたハードマスクを残す(図1f)。
【0053】
該マスキング用組成物は、該マスキング用組成物を基材の縁上に施与できる任意の様々な技術を用いて基材上に施与することができる。スピンオンコーティング法を用いた該マスキング用組成物を施与する一つの技術は、US8,791,030(Iwao et al.)(特許文献1)に記載されている。この文献は、その全体が本明細書中に掲載されたものとする。或る態様では、該マスキング用組成物は、少なくとも約10nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約200nm、または少なくとも約300nmの厚さで施与される。加えて、該マスキング用組成物は、約1000nmまで、約900nmまで、または約800nmまでの厚さで施与される。更に、該マスキング用組成物は、少なくとも約0.5mmまたは少なくとも約0.75mm以下の幅で施与される。更に、該マスキング用組成物は、基材の縁を覆いそして基材の側面及び/または裏面まで延在するように配置される。
【0054】
該マスキング用組成物は、任意の様々な技術を用いてマスキングフィルムを形成するために処理できることは当業者は容易に理解するであろう。例えば、該マスキングフィルムは、150℃と350℃との間の温度で及び60秒間と120秒間との間の時間、加熱することができる。
【0055】
任意の様々な既知のハードマスク用組成物を使用できる。一つの態様では、該ハードマスク用組成物は、金属ハードマスク用組成物である。代替的に、該ハードマスク用組成物は、金属酸化物フォトレジスト組成物であることができる。適当な金属ハードマスク及び金属酸化物フォトレジスト組成物には、限定はされないが、US9,315,636(特許文献2)、US8,568,958(特許文献3)、US9,201,305(特許文献4)、US9,296,922(特許文献5)、US9,409,793(特許文献6)、及びUS9,499,698(特許文献7)、及びUS62/437,449(出願日2016年12月21日)(特許文献8)及びUS14/978,232(出願日2015年12月22日)(特許文献9)に記載のものが挙げられる。これらの文献は、それらの内容の全てが本明細書中に掲載されたものとする。
【0056】
ハードマスク用組成物を基材上に施与するためには任意の様々な技術を使用することができる。適当な技術には、限定はされないが、スピンオンコーティング、化学蒸着(CVD)及び原子層堆積(ALD)などが挙げられる。スピンコート法を使用する場合は、使用する溶剤は、マスキングフィルムに有害に作用するべきではない。それ故、ハードマスク用組成物のために適したキャスティング溶剤には、限定はされないが、PGMEA、PGME、乳酸エチル、メトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物を除去するためには、任意の様々な技術を使用できる。マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物の除去は、マスキングフィルムと接触していない部分のハードマスク用組成物に有害に作用するべきではないことは当業者は理解するであろう。適当な技術には、限定はされないが、化学機械研磨(CMP)、プラズマエッチング、及びウェットエッチングが挙げられる。ウェットエッチングが使用される場合は、任意の様々な溶剤(例えばエッジビードリムーバ)を使用できるが、溶剤が、マスキングフィルムまたはハードマスク用組成物に有害に作用しないことが条件である。適当なエッジビードリムーバには、限定はされないが、PGMEA、PGME、乳酸エチル、メトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
該ハードマスク用組成物は、ハードマスクを形成するための様々な技術によって処理できる。例えば、該ハードマスク用組成物は、150℃と450℃との間の温度で及び60秒間と120秒間との間の時間、加熱することによって処理することができる。
【0059】
マスキングフィルムを除去するためには任意の様々な技術を使用できる。適当な技術には、限定はされないが、プラズマエッチング、及びウェットエッチングが挙げられる。ウェットエッチングが使用される場合は、任意の様々な溶剤を使用できるが、溶剤が、ハードマスクに有害に作用しないことが条件である。適当な溶剤には、限定はされないが、アニソール、シクロヘキサノン、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン、ジ-(C1~6)アルキルケトン、(C1~6)アルキルアセテート、芳香族炭化水素またはこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物及び方法を用いて製造できる典型的な電子デバイスには、限定はされないが、コンピュータチップ、集積回路及び半導体デバイスが挙げられる。
【実施例
【0061】
以下、本開示のより具体的な態様と、このような態様をサポートする実験結果について説明する。しかし、以下の開示は、例示のみを目的としたものであり、それ故、請求項に記載の発明の範囲を如何様にも限定することを意図したものではない点を指摘しておく。
【0062】
合成例1
ビスフェノールA(45.60g、0.20mol)、ビス(p-クロロフェニル)スルホン(57.4g、0.20mol)、乾燥炭酸カリウム(55.3g、0.40mol)、400mLのDMA(ジメチルアセトアミド)、及び50mLのトルエンを、凝縮器、窒素スイープ(nitrogen sweep)、ディーン・スタークトラップ(トルエン充填)及びオーバーヘッド機械的スターラを備えた2L容積の四つ首丸底フラスコ中に仕込んだ。この混合物を室温で10分間混合した。
【0063】
この反応混合物を、加熱マントル上で150℃で9.5時間加熱した。次いで、この反応混合物を50℃未満に冷却し、そして濾過紙に通して濾過した。この濾過された溶液(pH9~10)を、10%HClを用いてpH7~6に中和し、次いで5Lフラスコ中でDI水(3200mL)中に注いだ。析出物が生じた。この混合物を30分間混合し、そして一晩、沈降させた。水をデカントし(3400mL)、そして粘着性の固形物に1リットルのTHFを加えた。混合後、これをビーカーに移し、そしてホットプレートで加熱して体積を1リットルに減少させた。この溶液を12リットルのヘキサン中に投入し、1時間混合し、次いで固形物を沈降させることによってポリマーを析出させた。
【0064】
この溶液を濾過紙に通して濾過し、そしてヘキサンで洗浄した。ポリマーを減圧炉中、80℃で二日間乾燥させた。85gが得られ、GPC Mは9769であり、Pdは2.23であった。
【0065】
FT IRスペクトルは、アリールエーテル基のC-O-Cストレッチの特徴である1245cm-1のピーク、及びO=S=O基に対応する1280~1320cm-1のピークを示す。
【0066】
プロトンNMRスペクトルは、ビスフェノールAのイソプロピリデン基の脂肪族基に起因する1.7ppmでのピーク、及び芳香族プロトンに相当する6~7.8ppmでのピークを示す。
【0067】
合成例2
ビスフェノールA(22.8g、0.10mol)、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(21.8g、0.10mol)、炭酸カリウム(27.6g、0.20mol)、157mlのジメチルアセトアミド、及び21.4mlのトルエンを、スターラ-、凝縮器、サーモウォッチ、トルエンを満たしたディーン・スタークトラップ及び窒素パージを備えた500mL容積の四つ首丸底フラスコ中に仕込んだ。この溶液を室温で10分間混合し、次いで、温度を150℃に設定した。還流が147℃で始まるため、この溶液を90分間、還流下に維持した。この溶液を次いで<70℃に冷却した。この反応溶液を濾過して塩を除去し、次いで濾液を少量の10%HClを用いて中和した。この溶液を1600mLのDI水中に投入し、1時間混合し、次いで固形物を沈降させることによってポリマーを析出させた。
【0068】
水層を注ぎ出し、次いで500mLのテトラヒドロフランを加えた。この溶液を30分間混合し、ビーカーに移し、そしてホットプレート上で体積を600mLまで減らした。3リットルのヘキサン中に投入して析出させ、濾過し、洗浄し、乾燥し、そしてポリマーを減圧炉中に一晩置いた。27gが得られ、GPC Mwは54,982、Pdは1.78であった。
【0069】
合成例3
ビスフェノールA(22.8g、0.10mol)、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(21.8g、0.10mol)、炭酸カリウム(27.6g、0.20mol)、200mLのジメチルアセトアミド、及び27.5mLのトルエンを、スターラー、凝縮器、サーモウォッチ、トルエンを満たしたディーン・スタークトラップ及び窒素パージを備えた500mL容積の四つ首丸底フラスコ中に仕込んだ。この溶液を室温で10分間混合し、次いで、温度を150℃に設定した。還流が147℃で始まるため、この溶液を90分間、還流下に維持した。次いで、この溶液を<70℃に冷却し、濾過して塩を除去し、次いで濾液を少量の10%HClを用いて中和した。1600mLのDI水中に投入して析出させ、1時間混合し、次いで固形物を沈降させた。
【0070】
水層を注ぎ出し、次いで500mLのテトラヒドロフランを加えた。この溶液を30分間混合し、ビーカーに移し、そしてホットプレート上で体積を600mLまで減らした。3リットルのヘキサン中に投入してポリマーを析出させ、濾過し、洗浄し、乾燥し、そしてポリマーを減圧炉中に一晩置いた。37gが得られ、GPC Mwは15,125、Pdは2.10であった。
【0071】
プロセス例1及び2
本発明のマスキング用組成物の例を調製及び試験した。1%のポリスルホン(PSU)をアニソール中に溶解することによってプロセス例1を調製した。1%のポリエーテルスルホン(PES)をガンマブチロラクトン(GBL)中に溶解することによってプロセス例2を調製した。これらのマスキング用組成物を、US8,791,030(Iwao et al)(特許文献1)に記載の技術に従って、ウェハの縁上にスピンコートし、そして250℃または350℃のいずれかで60秒間ベークして均一なフィルムを形成した。
【0072】
【表1】
【0073】
様々な溶剤中への、(250℃/60秒ベーク後に)プロセス例1及び2から形成されたマスキングフィルムの溶解性を、コーティングされたウェハを溶剤中に60秒間浸漬した後の膜減りを測定することによって検証した。表1中の結果は、これらのマスキングフィルムが、ArFシンナー溶剤(PGMEA:PGME 70:30)に対して良好な耐性を有することを示す。それ故、プロセス中、これらのマスキングフィルムとハードマスクとの間には相互混合は起こらないであろう。更に、例1から形成したマスキングフィルムは、アニソールによって除去でき、そして例2から形成したマスキングフィルムはGBLによって除去できる。
【0074】
【表2】
【0075】
(250℃/60秒ベーク後に)例1から形成されたマスキングフィルムのウェットエッチング速度を、様々なウェットエッチング剤中で検証した。これらのマスキングフィルムの膜厚を、Nanospec 9200を用いて測定し、そしてコーティングされたウェハの浸漬時間の関数としてプロットした。エッチング速度を、線形回帰のスロープとして計算した。表2中の結果は、ポリスルホンフィルムは、250℃でのベーク温度では、製造に適した(Fab friendly)溶剤を用いて迅速に除去できることを示す。アニソール、GBL、GBL/nBA70:30、及びNMPは、ポリスルホンフィルムでは、シクロヘキサノンよりも高速なウェットエッチング速度を示す。
【0076】
【表3】
【0077】
(350℃/60秒ベーク後に)例1から形成されたマスキングフィルムのウェットエッチング速度を、様々なウェットエッチング剤中で検証した。膜厚及びエッチング速度を上述のように決定した。表3中の結果は、ポリスルホンフィルムは、350℃もの高いベーク温度では、製造に適した溶剤によって迅速に除去できることを示す。
【0078】
【表4】
【0079】
(250℃/60秒の後に)例1から形成されたマスキングフィルムのウェットエッチング速度を、ポリスルホンの平均分子量の関数として検証した。膜厚及びエッチング速度を上述のように決定した。表4中のデータは、ポリスルホンの分子量を変えることによってウェットエッチング速度を制御できることを実証している。具体的には、分子量の小さいポリスルホンほど、シクロヘキサノン中でより高速なウェットエッチング速度を示し、他方で、ArFシンナー溶剤中では低いエッチング速度を維持し、これは、ポリスルホンフィルム除去プロセスの処理量にとって有益である。
【0080】
【表5】
【0081】
マスキングフィルムが金属汚染を減少できることを実証するために、裏面及び斜面上の全金属汚染(Ti原子/cm)を、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって分析した。第一のウェハは、マスキング層無しで使用した。第二のウェハの縁は、マスキングフィルムでコーティングした。このマスキングフィルムは、アニソール中8.5%の47412の平均分子量を有するポリスルホンであり、250℃/60秒間ベークした。次いで、両方のウェハを:(1)Ti含有金属ハードマスク調合物でコーティングし(この調合物は、PGMEA/PGME=70:30中9.1%の、US9,315,636(特許文献2)(Yao et al.; その内容は、その全てが本明細書中に掲載されたものとする)の合成例7のように合成したTi含有ポリマーである)、(2)ウェハの縁上のこの金属ハードマスクフィルムを、エッジビードリムーバ(PGMEA/PGME=30/70)ですすぎ、(3)この金属ハードマスクフィルムを250℃/60秒間ベークし、そして(4)ウェハの縁上のマスキングフィルムを、アニソールを用いて取り除いた。表5中のデータは、ハードマスクフィルム中の金属汚染が、マスキングフィルムで処理されていないウェハと比べて、マスキングフィルムで処理したウェハでは減少することを示している。
【0082】
【表6】
【0083】
プロセス例3
プロセス例3は、567.26gのポリスルホン(Aldrich社から入手、CAS25135-51-7)及び402.74gの合成例1からの低Mwポリスルホンを8730gのアニソール中に溶解して調製した。
【0084】
プロセス例3からのマスキング用組成物を、シリコンウェハ上にスピンコートし、そして250℃でベークした。次いで、これをArFシンナーまたはシクロヘキサノン中のいずれかに浸漬した。膜厚を、浸漬の前と後とで測定した。結果を表6に示す。
【0085】
【表7】
【0086】
表6中のデータは、ArFシンナー及びシクロヘキサノン中でのウェットエッチング速度の著しい違いを実証している。
【0087】
プロセス例4
プロセス例4は、21.170gの合成例2からのポリマー及び28.830gの合成例3からのポリマーを、450.00gのアニソール中に溶解して調製した。
【0088】
プロセス例4からのマスキング用組成物を、シリコンウェハ上にスピンコートし、そして250℃でベークした。次いで、これをArFシンナーまたはシクロヘキサノン中のいずれかに浸漬した。膜厚を、浸漬の前と後とで測定した。結果を表7に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
表7中のデータは、ArFシンナー及びシクロヘキサノン中でのウェットエッチング速度の著しい違いを実証している。
【0091】
プロセス例5
プロセス例3をポリスルホン(Aldrich社から入手、CAS25135-51-7)のみを使用して繰り返し、そしてマスキング用組成物を、ケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして250℃でベークした。次いで、これをArFシンナーまたはシクロヘキサノン中のいずれかに浸漬した。膜厚(FT)を、浸漬の前と後とで測定した。結果を表8に示す。
【0092】
【表9】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. マスキングフィルムを形成するためのマスキング用組成物であって、
a.構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【化13】
[式中、
Xは、-SO -、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは、直接結合であるか、またはAは、構造(II)からなる群から選択され:
【化14】
、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、H、ハロ、(C 1~3 )アルキル、(C 1~3 )フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C 1~3 )アルコキシ、及び(C 1~3 )アルキルカルボニルからなる群から選択され; 及び
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
b.有機溶剤
を含み、前記ポリマーが50000未満の平均分子量を有する、前記マスキング用組成物。
2. 前記ポリマーが、10000と50000との間の平均分子量を有する、前記1.に記載の組成物。
3. 前記ポリマーが、20000と40000との間の平均分子量を有する、前記2.に記載の組成物。
4. 前記ポリマーが、28000と35000との間の平均分子量を有する、前記3.に記載の組成物。
5. 前記ポリマーが、複数種のポリマーの混合物を含む、前記1.~4.のいずれか一つに記載の組成物。
6. 該複数種のポリマーの混合物が、40000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、40000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含む、前記5.に記載の組成物。
7. 該複数種のポリマーの混合物が、30000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、30000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含む、前記5.に記載の組成物。
8. 該複数種のポリマーの混合物が、20000超の平均分子量を有する第一のポリマーと、20000未満の平均分子量を有する第二のポリマーを含む、前記5.に記載の組成物。
9. 前記第二のポリマーが、構造(I)を有する単位を含む、前記6.~8.のいずれか一つに記載の組成物。
10. 前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーが、構造(I)を有する単位を含む、前記6.~8.のいずれか一つに記載の組成物。
11. Xが-SO -である、前記1.~10.のいずれか一つに記載の組成物。
12. 各々のR が、独立して、H、F及び(C 1~3 )アルキルからなる群から選択される、前記1.~11.のいずれか一つに記載の組成物。
13. 各々のR が、独立して、H、F及び(C 1~3 )アルキルからなる群から選択される、前記1.~12.のいずれか一つに記載の組成物。
14. 各々のR が、独立して、H、F、(C 1~3 )アルキル及び(C 1~3 )フッ素化アルキルからなる群から選択される、前記1.~13.のいずれか一つに記載の組成物。
15. 各々のR が、独立して、H、F及び(C 1~3 )アルキルからなる群から選択される、前記1.~14.のいずれか一つに記載の組成物。
16. 各々のR が、独立して、H、F及び(C 1~3 )アルキルからなる群から選択される、前記1.~15.のいずれか一つに記載の組成物。
17. 前記ポリマーが構造(III)を有する、前記1.~16.のいずれか一つに記載の組成物。
【化15】
18. 前記ポリマーが構造(IV)を有する、前記1.~16.のいずれか一つに記載の組成物。
【化16】
19. 前記ポリマーが構造(V)を有する、前記1.~10.のいずれか一つに記載の組成物。
【化17】
20. 前記ポリマーが構造(VI)を有する、前記1.~10.のいずれか一つに記載の組成物。
【化18】
21. 前記有機溶剤が、アニソール、シクロヘキサノン、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン、ジ-(C 1~6 )アルキルケトン、(C 1~6 )アルキルアセテート及びこれらの混合物からなる群から選択される、前記1.~20.のいずれか一つに記載の組成物。
22. 前記ポリマーが、0.1重量%と20重量%との間の量で該組成物中に存在する、前記1.~21.のいずれか一つに記載の組成物。
23. 前記ポリマーが、3重量%と15重量%との間の量で該組成物中に存在する、前記22.に記載の組成物。
24. 電子デバイスを製造する方法であって、
a.マスキング用組成物を基材の縁に施与するステップ、ここで前記マスキング用組成物は:
構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【化19】
[式中、
Xは、-SO -、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは直接結合であるか、またはAは次の構造(II)を有し:
【化20】
、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、H、ハロ、(C 1~3 )アルキル、(C 1~3 )フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C 1~3 )アルコキシ、及び(C 1~3 )アルキルカルボニルからなる群から選択され; 及び
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
有機溶剤、
を含み、及び
b.上記マスキング用組成物を150℃と350℃との間の温度で、60秒間~120秒間の時間加熱して、マスキングフィルムを形成するステップ、
を含む、前記方法。
25. 前記組成物が、スピンオンコーティングプロセスによって基材上に施与される、前記24.に記載の方法。
26. 電子デバイスを製造する方法であって、
a.マスキング用組成物を基材の縁に施与するステップ、ここで前記マスキング用組成物は:
構造(I)を有する単位を含むポリマー:
【化21】
[式中、
Xは、-SO -、-C(=O)-及び-O-からなる群から選択され;
Aは直接結合であるか、またはAは次の構造(II)を有し:
【化22】
、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、H、ハロ、(C 1~3 )アルキル、(C 1~3 )フッ素化アルキル、ヒドロキシ、(C 1~3 )アルコキシ、及び(C 1~3 )アルキルカルボニルからなる群から選択され; 及び
q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1、2、3及び4からなる群から選択される]、及び
有機溶剤、
を含み、
b.上記マスキング用組成物を加熱してマスキングフィルムを形成するステップ;
c.ハードマスク用組成物を、前記基材及びマスキングフフィルム上に施与するステップ;
d.前記ハードマスク用組成物をエッジビードリムーバを用いてすすいで、少なくとも、マスキングフィルムと接触している部分のハードマスク用組成物を除去するステップ;
e.上記ハードマスク用組成物を加熱してハードマスクを形成するステップ; 及び
f.上記マスキングフィルムを除去するステップ、
を含む、前記方法。
27. 前記マスキング用組成物が、スピンオンコーティングプロセスによって基材上に施与される、前記26.に記載の方法。
28. マスキングフィルムを加熱する前記ステップが、マスキングフィルムを150℃と350℃の間の温度で、60秒間と120秒間の間の時間、加熱することを含む、前記26.及び27.のいずれか一つに記載の方法。
29. 前記ハードマスク用組成物が、金属ハードマスク用組成物を含む、前記26.~28.のいずれか一つに記載の方法。
30. 前記ハードマスク用組成物が、金属酸化物フォトレジスト組成物を含む、前記26.~29.のいずれか一つに記載の方法。
31. 基材上にハードマスク用組成物を施与する前記ステップが、前記ハードマスク用組成物を基材上にスピンコートすることを含む、前記26.~30.のいずれか一つに記載の方法。
32. 基材上へのハードマスク用組成物の前記スピンコートが、PGMEA、PGME、乳酸エチル、メトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択されるキャスティング溶剤を用いて行われる、前記31.に記載の方法。
33. 前記エッジビードリムーバが、PGMEA、PGME、乳酸エチル、メトキシエタノール、エトキシプロパノール、エトキシエタノール、1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される溶剤を含む、前記26.~32.のいずれか一つに記載の方法。
34. ハードマスクを加熱する前記ステップが、ハードマスクを150℃と450℃との間の温度で、60秒間と180秒間との間の時間、加熱することを含む、前記26.~33.のいずれか一つに記載の方法。
35. マスキングフィルムを除去する前記ステップが、ウェットエッチングによってマスキングフィルムを除去することを含む、前記26.~34.のいずれか一つに記載の方法。
36. ウェットエッチングが、アニソール、シクロヘキサノン、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチル-2-ピロリドン、ジ-(C 1~6 )アルキルケトン、(C 1~6 )アルキルアセテート、芳香族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される溶剤を用いて行われる、前記35.に記載の方法。
図1