(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を含有する錠剤
(51)【国際特許分類】
   A23L  33/105       20160101AFI20240215BHJP        
   A61K  31/19        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K   9/20        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K  47/38        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K  47/04        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K  47/12        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K  36/63        20060101ALI20240215BHJP        
   A61K  35/60        20060101ALI20240215BHJP        
   A61P  19/02        20060101ALI20240215BHJP        
   A61P   3/06        20060101ALI20240215BHJP        
   A61P  43/00        20060101ALI20240215BHJP        
【FI】
A23L33/105 
A61K31/19 
A61K9/20 
A61K47/38 
A61K47/04 
A61K47/12 
A61K36/63 
A61K35/60 
A61P19/02 
A61P3/06 
A61P43/00 121 
(21)【出願番号】P 2023110499
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022172034
 
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】金田  圭
(72)【発明者】
【氏名】関  忍
(72)【発明者】
【氏名】植田  文教
【審査官】吉森  晃
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-511448(JP,A)      
【文献】特表平10-510276(JP,A)      
【文献】米国特許出願公開第2022/31734(US,A1)    
【文献】Wansi LI et al.,Application of NMP and Neusilin US2-integrated liquisolid technique in mini-tablets for improving the physical performances and oral bioavailability of liposoluble supercritical fluid extracts,Journal of Drug Delivery Science and Technology,2023年03月,Vol. 81,p.104205,DOI: 10.1016/j.jddst.2023.104205
【文献】Dina MOSTAFA et al.,Boswellia carterii Liquisolid Systems with Promoted Anti-inflammatory Activity,Current Drug Delivery,2015年07月29日,Vol. 12,No. 4,p.454-463,DOI: 10.2174/1567201812666150421111627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L    33/105
A61K    31/19
A61K      9/20
A61K    47/38
A61K    47/04
A61K    47/12
A61K    36/63
A61K    35/60
A61P    19/02
A61P      3/06
A61P    43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸と、結晶セルロースとを含有し、錠剤全質量に対する前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸の含有量が5.1~12質量%であり、錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が25.9質量%以上である、錠剤。
【請求項2】
錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が50~65質量%である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
微粒二酸化ケイ素およびステアリン酸カルシウムをさらに含む、請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
崩壊剤をさらに含む、請求項3に記載の錠剤。
【請求項5】
オリーブ葉抽出物、および、サケ鼻軟骨抽出物をさらに含む、請求項1または2に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
  3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(以下、AKBAとも表記する)は、主にカンラン科の落葉高木であるボスウェリア属であるボスウェリアセラータに含有される。ボスウェリア属であるボスウェリアセラータは、インドの伝統医学アーユルヴェーダにおいて、樹脂から抽出した精油をリウマチ、関節炎および高脂血症の治療のために用いられてきた。ボスウェリア樹脂は、β-ボスウェリン酸、アセチル-β-ボスウェリン酸、11-ケト-β-ボスウェリン酸および3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)などの誘導体を含有し、これらはボスウェリア酸として知られている。
【0003】
  近年、健康意識の高まりにより、アミノ酸およびビタミンなどを含有する様々な植物由来エキスを含有するサプリメントの需要が高まっている。AKBAを含有する錠剤、ソフトカプセルおよびハードカプセルなども発売されている。剤形としては、安定性および携帯性に優れ、簡便に摂取可能である錠剤が好まれている。さらに、1日に摂取する粒数が少ないほど、より簡便に摂取が可能となり望ましい。
【0004】
  特許文献1には、AKBA濃度が10~100%であるダイエタリーサプリメントが記載されているが、AKBAを含むボスウェリアセラータ樹脂抽出物粉末は流動性が悪いため、AKBAを多量に含有した錠剤を製造する場合に、成分含量が不均一になることや、錠剤の形成において障害が生じることがある。また、特許文献1には、担体または希釈剤または賦形剤の好ましい例として微晶質セルロースが記載されている。
【0005】
  AKBAを含むボスウェリアセラータ樹脂抽出物粉末は手で触れるとべとつきがあり、口に入れると口腔内でもべとつきが発生し、さらに特有の色、味を持つ。そのため、AKBAを高い含有率で含む錠剤を製造すると錠剤の口腔内でのべとつきの発生によって、嚥下のしづらさ、原料特有の色味由来の斑点が出ることによる見た目の悪化、味の悪化などが生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  賦形剤を増量すると1日当たりの摂取量は多くなり、摂取粒数が増加するが、摂取者の負担が増加する恐れがあるため、賦形剤の配合量はできる限り少なくすることが望ましい。本発明は、ある側面において、AKBAを配合しながら、安定的に製造できる錠剤を提供することを解決すべき課題とする。
【0008】
  上記の錠剤の形成における障害(いわゆる打錠障害)、形成後の障害、錠剤の嚥下性、特有の色、味の改善を解決するには、賦形剤を増量して、AKBAの影響を小さくすればよい。しかし、この解決手段では1日当たりの摂取量は多くなり、摂取粒数が増加し、摂取者の負担の増加、製造コストの増加が予期される。本発明は、別の側面において、安定的に製造でき、かつ、服用しやすく、色味も良好なる錠剤となるAKBAおよび結晶セルロース濃度を含有する錠剤を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
  本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)と、結晶セルロースとを配合した錠剤において、AKBAを配合しながら、打錠障害を抑制しつつ、服用しやすく、色、味も良好な処方を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
  即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1>  3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸と、結晶セルロースとを含有し、錠剤全質量に対する上記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸の含有量が5.1~12質量%であり、錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が25.9質量%以上である、錠剤。
<2>  錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が50~65質量%である、<1>に記載の錠剤。
<3>  微粒二酸化ケイ素およびステアリン酸カルシウムをさらに含む、<1>または<2>に記載の錠剤。
<4>  崩壊剤をさらに含む、<3>に記載の錠剤。
<5>  オリーブ葉抽出物、および、サケ鼻軟骨抽出物をさらに含む、<1>から<4>のいずれか一に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0011】
  本発明によれば、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)を含有する錠剤において、打錠障害の抑制あるいは形成後の障害を抑制し安定的な錠剤を製造することが可能である。
【0012】
  また、本発明によれば、別の側面では、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)を含有する錠剤において、打錠障害の抑制あるいは形成後の障害を抑制し安定的な錠剤が製造でき、さらに容易な嚥下が可能で、色、味が良好な錠剤とすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
  以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0014】
<錠剤の構成>
  本発明の錠剤は、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸と、結晶セルロースとを含有し、錠剤全質量に対する上記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸の含有量が5.1~12質量%であり、錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が25.9質量%以上である。
【0015】
  3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)は、主に、ボスウェリアセラータ樹脂抽出物から抽出することができる。本発明においてAKBAは化学的に合成されたものを用いてもよいが、品質および生産性の観点からボスウェリアセラータ樹脂抽出物のものを用いることが好適である。なお、AKBAを高濃度で含有するボスウェリアセラータ樹脂抽出物製品は、商業的に入手することができる。例えば、株式会社サビンサジャパンコーポレーション、株式会社ティーエストレーディングから入手が可能である。
【0016】
  錠剤全質量に対するAKBAの含有量を5.1質量%以上とすることにより1回の摂取粒数が4粒以下の少量にすることができる。錠剤全質量に対するAKBAの含有量を12質量%以下とすることにより、他の原料との混和、打錠が容易になる。また、別の側面では、錠剤の嚥下が容易となり、原料由来の色、味も改善される。
  錠剤全質量に対するAKBAの含有量は、好ましくは5.5~10質量%であり、より好ましくは6.0~8.0質量%であり、さらに好ましくは6.0~7.0質量%である。
【0017】
  本発明の錠剤は、AKBA以外の任意の有効成分として、オリーブ葉抽出物、または鮭鼻軟骨抽出物を含有していてもよく、オリーブ葉抽出物、および鮭鼻軟骨抽出物を含有していてもよい。
【0018】
  オリーブ葉抽出物は、商業的に入手することができる。例えば、三菱ケミカル株式会社から入手することができる。オリーブ葉抽出物には、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが含まれている。
  オリーブ葉抽出物を使用する場合、錠剤全質量に対するオリーブ由来ヒドロキシチロソールの含有量は、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは0.6~8質量%であり、さらに好ましくは0.7~5質量%である。上記含有量にすることよって、結晶セルロースと同等に成形性がより良好となる。
【0019】
  鮭鼻軟骨抽出物は、商業的に入手することができる。例えば、日本薬品株式会社から入手することができる。鮭鼻軟骨抽出物には、機能性成分としてサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンおよびサケ鼻軟骨由来非変性II型コラーゲンが含まれている。
  鮭鼻軟骨抽出物を使用する場合、錠剤全質量に対するサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの含有量は、好ましくは0.5~3質量%であり、より好ましくは0.6~2質量%であり、さらに好ましくは0.7~1質量%である。
  鮭鼻軟骨抽出物を使用する場合、錠剤全質量に対するサケ鼻軟骨由来非変性II型コラーゲンの含有量は、好ましくは0.5~3質量%であり、より好ましくは0.6~2質量%であり、さらに好ましくは0.7~1質量%である。
  上記含有量にすることよって、結晶セルロースと同等に成形性がより良好となる。
【0020】
  結晶セルロースは、例えば、樹木および樹幹よりから生産される。結晶セルロースとしては、例えばセオラスFD-101、FD-301、FD-F20、ST-02(旭化成株式会社製)、コンプレッセル101、102、200(株式会社伏見製薬所)等が挙げられ、結晶セルロースFD-101が好適に用いられる。
【0021】
  内容物の分散性の低下の抑制、外観性の良好化、製造安定性の観点から、錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量は25.9質量%以上であり、好ましくは26.7質量%以上である。錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量の上限は特に限定されないが、一般的には80質量%以下である。錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量は、好ましくは50~65質量%である。結晶セルロースの量が25%以下となると、AKBAを含むボスウェリアセラータ樹脂抽出物由来の色が強く見られる。
【0022】
  本発明の錠剤は、還元麦芽糖を含んでいても、含んでいなくてもよい。
  還元麦芽糖は、主に糖アルコールであるマルチトールである。還元麦芽糖としては、例えば、レシス、アマルティ(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)、Maltidexマルチトール(CARGILL製)等が挙げられる。
  還元麦芽糖を使用する場合、内容物の分散性の低下の抑制、AKBAの安定性の保持の観点から、錠剤全質量に対する還元麦芽糖の含有量は、好ましくは10.0質量%以上であり、より好ましくは20.0質量%以上である。錠剤全質量に対する還元麦芽糖の含有量の上限は特に限定されないが、一般的には60質量%以下である。
【0023】
  本発明の錠剤は、以下に記載の任意成分を含んでいてもよい。
  任意成分としては、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤など、特に限定されない。
【0024】
  賦形剤としては、例えば、乳糖、乳糖造粒物、デンプン、グラニュー糖、マンニトール、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、精製白糖、ブドウ糖、含水ブドウ糖、二酸化ケイ素(別名:無水ケイ酸、微粒二酸化ケイ素)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、L-システイン、メチルエチルセルロース等が挙げられ、好ましくは微粒二酸化ケイ素である。デンプンに関しては、AKBAを含むボスウェリアセラータ樹脂抽出物粉末由来の色味の観点から、錠剤全質量に対して59%質量以下が好ましく、37%質量以下がより好ましい。
【0025】
  賦形剤を含む場合、その含有量(2種類以上の賦形剤を使用する場合には合計量)は、錠剤全質量に対し、通常、0.5質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%である。これにより、打錠障害をより軽減できる。賦形剤の含有量の上限は特に限定されないが、一般的には10質量%以下であり、5質量%以下でもよい。
【0026】
  滑沢剤を含有することにより、摩擦を低減できる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸カルシウムおよびショ糖脂肪酸エステルである。
【0027】
  滑沢剤を含む場合その含有量(2種類以上の滑沢剤を使用する場合には合計量)は、錠剤全質量に対し、通常、1質量%以上である。好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%である。これにより、原料の流動性が向上し、打錠障害をより軽減できる。しかし、形成性が悪くなるために打錠する際の圧力が上がり、崩壊時間が長くなるため、崩壊剤を使用してもよい。滑沢剤の含有量の上限は特に限定されないが、一般的には20質量%以下であり、10質量%以下でもよい。
【0028】
  崩壊剤としては、例えば、崩壊剤用寒天、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム、CMC-Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(別名:カルメロースカルシウム、CMC-Ca)、クロスカルメロースナトリウム、クロスリンクドインソルブルポリビニルピロリドン、クロスポビドン、α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。崩壊性がより向上する観点から、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムが好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウム、α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムがより好ましい。
【0029】
  崩壊剤を含む場合その含有量(2種類以上の崩壊剤を使用する場合には合計量)は、錠剤全質量に対し、通常、1質量%以上であり、好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは6質量%である。これにより、打錠障害をより軽減できる。崩壊剤の含有量の上限は特に限定されないが、一般的には20質量%以下であり、15質量%以下でもよい。
【0030】
  本発明の錠剤の具体例としては以下の錠剤が挙げられる。
(1)ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、結晶セルロース、還元麦芽糖、α化デンプン、微粒二酸化ケイ素、およびステアリン酸カルシウムを含む錠剤。
(2)ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルを含む錠剤。
(3)ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、α化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルを含む錠剤。
【0031】
<錠剤の製造方法>
  本発明の錠剤の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
  錠剤の製造方法としては、例えば、必須成分および任意成分を混合(以下、「混合工程」という。)したのち、造粒工程を経て打錠することにより錠剤を得ることができる。
【0032】
  混合工程は、特に制限されるものではなく、結晶セルロース、AKBA、および任意成分の原料を混合する。混合方法は、特に制限されるものでなく、これらの混合方法で用いられる混合機としては、例えば、タンブラー混合機、V型混合機、ダブルコーン混合機、撹拌式混合機、高速流動式混合機、ドラム式混合機、流動層式混合機、無限ミキサーなどが挙げられる。
【0033】
  造粒工程は、特に制限されるものではなく、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法、加熱造粒法、噴霧造粒法などが挙げられる。好ましくは、造粒工程を行わず、混合工程からそのまま打錠する直接打錠法が好ましい。
【0034】
  打錠工程は、一般的に使用される方法で、特に制限されるものではない。
【0035】
  錠剤の形状は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飼料などの技術分野において使用されているものであれば、特に制限されるものではない。錠剤の形状としては、例えば、円形錠、楕円形錠、花形錠などが挙げられる。
【0036】
  錠剤の崩壊性に関しては、第十八改正日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じる方法で、崩壊試験液はイオン交換水を使用し、水浴温度は37℃として評価することができる。この評価条件における崩壊時間は、60分未満が好ましく、さらに30分未満が好ましい。
【0037】
<錠剤の用途および用法>
  本発明の錠剤の用途は特に限定されず、食品組成物または医薬組成物(医薬品または医
薬部外品など)として使用することができるが、好ましくは食品組成物として使用することができる。
  本発明の錠剤の投与形態としては、経口投与であることが好ましいが、非経口投与、例
えば、経直腸投与、舌下投与を適用してもよい。
【0038】
  以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、以下「%」は、特に説明が無ければ「質量%」を意味し、AKBAの含有量は、ボスウェリアセラータ樹脂抽出物に由来する量である。
【実施例】
【0039】
  以下の比較例および実施例においては、以下の材料を使用した。
【0040】
ボスウェリアセラータ樹脂抽出物:NEOフランキンセンス(株式会社サビンサジャパンコーポレーション)、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)の含有量は30%以上である。
【0041】
オリーブ葉抽出物:オラリス(登録商標)(三菱ケミカル株式会社)、オリーブ由来ヒドロキシチロソールの含有量は20%以上である。
【0042】
鮭鼻軟骨抽出物:プロテオグリカンHG-100(日本薬品株式会社)、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの含有量は40%以上であり、サケ鼻軟骨由来非変性II型コラーゲンの
含有量は40%以上である。
【0043】
結晶セルロース:セオラス(登録商標)FD-101(旭化成株式会社)
デンプン:パーフィラー(登録商標)102(フロイント産業株式会社)
還元麦芽糖:アマルティ(登録商標)MR-50(三菱商事ライフサイエンス株式会社)α化デンプン:PCS(登録商標)FC-50(旭化成株式会社)
デンプングリコール酸ナトリウム:EXPLOTAB(登録商標)PCF(JRS  PHARMA)
カルボキシメチルセルロースナトリウム:E.C.G-FA(五徳薬品株式会社)
崩壊用寒天:ファイバーサット(伊那食品工業株式会社)
微粒二酸化ケイ素:サイロページ(登録商標)720(富士シリシア化学株式会社)
ステアリン酸カルシウム:ステアリン酸カルシウム(太平化学産業株式会社)
ショ糖脂肪酸エステル:リョートーシュガーエステルS-1670(三菱ケミカル株式会社)
【0044】
<錠剤の成形>
(比較例1)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、デンプン、崩壊用寒天、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルの8成分を表1に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0045】
(比較例2)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、デンプン、崩壊用寒天、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルの9成分を表1に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0046】
(比較例3)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、結晶セルロース、還元麦芽糖、微粒二酸化ケイ素、およびステアリン酸カルシウムの6成分を表1に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0047】
(比較例4)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、結晶セルロース、還元麦芽糖、α化デンプン、微粒二酸化ケイ素、およびステアリン酸カルシウムの7成分を表1に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0048】
(比較例5)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルの8成分を表2に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0049】
(実施例1)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、結晶セルロース、還元麦芽糖、α化デンプン、微粒二酸化ケイ素、およびステアリン酸カルシウムの7成分を表2に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0050】
(実施例2)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルの8成分を表2に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0051】
(実施例3)
  ボスウェリアセラータ樹脂抽出物、オリーブ葉抽出物、鮭鼻軟骨抽出物、結晶セルロース、α化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、およびショ糖脂肪酸エステルの9成分を表2に示す量で混合し、打錠装置で打錠することで錠剤を得た。
【0052】
<製造性の評価>
  製造性は、打錠工程(10000個形成の間)において、下記4つの障害が全く生じなかったものを評価Aとし、製造時に下記4つの障害のうちの一つ以上が生じた場合は評価Bとした。
バインディング:錠剤の側面に縦に沿って傷ができる現象を意味する。
スティッキング:杵面に錠剤の一部が付着して剥がれる現象を意味する。
ピッキング:錠剤表面に小班点状の凹凸がつく現象を意味する。
ラミネーション:錠剤の中央部より水平に上下に剥離する現象を意味する。
【0053】
<錠剤の嚥下性>
  1日摂取量について、摂取者が感じる飲み込みやすさについて、「摂取時に負担に感じない」ものから「摂取時に負担に感じる」もの順にA、B、Cで表した。
【0054】
<錠剤の色味>
  原料由来の錠剤表面の色について「摂取したいと思える」から「摂取したいと思えない」に感じるもの順にA、B、Cで表した。
【0055】
<錠剤の風味>
  原料由来の錠剤表面の味について「良い」から「悪い」に感じるもの順にA、B、Cで表した。
【0056】
  評価の結果を下記表1および表2に示す。
【0057】
  比較例1では、バインディング、スティッキングおよびピッキングが見られなかった(評価A)が、嚥下性は摂取時に負担が感じられ(評価C)、色、味ともに悪い評価(評価C)であった。
  比較例2では、バインディング、スティッキングおよびピッキングが見られなかった(評価A)。さらに、嚥下性は摂取時に負担に感じず(評価A)、味もよい評価(評価A)であったが、色味は悪い評価(評価C)であった。
  比較例3では、ラミネーションが見られ(評価B)、さらに嚥下性は摂取時に負担に感じ(評価C)、色、味ともに悪い評価(評価C)であった。
  比較例4では、バインディング、スティッキングおよびピッキングが見られた(評価B)が、嚥下性は摂取時に負担が感じず(評価A)、色、味とともに良い評価(評価A)であった。
  比較例5では、バインディング、スティッキングおよびピッキングが見られた(評価B)が、さらに、嚥下性は摂取時に負担が感じられ(評価C)、色、味とともに悪い評価(評価C)であった。
【0058】
  比較例1から、AKBAが12.5%以上では、製造前後にて障害が起きなかった。しかし、摂取時に負担が感じられ、色、味も悪い評価であった。
  比較例2からAKBAが6.3%で、結晶セルロースが5%になると、製造障害が起きず、摂取時に負担が感じられず(評価A)、味もよい評価(評価A)であったものの、色が悪化(評価C)していた。
  比較例3からAKBAが13.8%、結晶セルロース20%だと製造障害が起きていた。さらに摂取時に負担が感じられ、色、味も悪い評価であった。
  比較例4からAKBA6.7%、結晶セルロース25.81%とすると、比較例3より嚥下性、色、味が改善されたが、製造障害が起きた。
  比較例5は、AKBAが13.8%、結晶セルロース37%だと製造障害が起き、さらに摂取時に負担が感じられ、色、味も悪い評価であった。
【0059】
  これらの結果は、AKBAと結晶セルロースの配合量を最適化することにより、AKBAを多量に含みつつ製造障害が起きず、嚥下性や色、味に関して改善された処方を得たことを示している。本発明の錠剤は、AKBAを補給するために用いられるサプリメントに好適に利用可能である。
【0060】
【0061】
【要約】
【課題】本発明の課題は、3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を高濃度に配合しながら、安定的に製造できる錠剤を提供することである。
【解決手段】3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸と、結晶セルロースとを含有し、錠剤全質量に対する上記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸の含有量が5.1~12質量%であり、錠剤全質量に対する結晶セルロースの含有量が25.9質量%以上である、錠剤。
【選択図】なし