(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】運行システム及び運行システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240216BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G08G1/00 X
B61B13/00 D
B61B13/00 W
(21)【出願番号】P 2020135444
(22)【出願日】2020-08-08
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-259987(JP,A)
【文献】特開2000-264196(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187879(WO,A1)
【文献】特開平4-114211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B61B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両向けの専用レーンに沿って車両を自動走行させるための運行システムであって、
前記専用レーンに配置された複数の
永久磁石である磁気マーカと、
該磁気マーカの磁極性に依らない非磁性情報であって、いずれか一の磁気マーカを他の磁気マーカとは区別して一意に特定するための特定情報を記憶するための記憶領域を含むマーカデータベースと、
前記複数の永久磁石である磁気マーカのうちのいずれかの1または2以上の磁気マーカの特定情報を選択的に記憶するための記憶領域を含む記憶部と、
前記専用レーンから他のレーンへの分岐及び他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくとも一方が可能な接続箇所を設定あるいは解除する設定部と、を有し、
当該設定部は、設定しようとする接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報を
、前記記憶部の記憶領域に接続箇所特定情報として記憶させることにより、当該接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する接続箇所において前記分岐及び前記合流のうちの少なくとも一方を可能とする一方、
前記記憶部により記憶されている接続箇所特定情報のうちの少なくともいずれかの接続箇所特定情報を前記記憶部の記憶領域から消去することで、当該いずれかの接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する接続箇所における前記分岐及び前記合流を規制する、運行システム。
【請求項2】
請求項1において、前記専用レーンと前記他のレーンとの接続を制御する制御部を有し、
当該制御部は、前記記憶部の記憶領域を参照して前記接続箇所特定情報を読み出し、当該接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する接続箇所において前記分岐及び前記合流のうちのいずれか一方が可能となるように前記専用レーンを制御する一方、
前記マーカデータベースの記憶領域に記憶された特定情報のうち、前記記憶部の記憶領域に前記接続箇所特定情報として記憶されていない特定情報に係る磁気マーカに対応する箇所において前記分岐及び前記合流を規制するように前記専用レーンを制御する、運行システム。
【請求項3】
請求項1において、前記専用レーンを区画するための開閉可能な可動式の柵と、
当該可動式の柵の開閉動作を制御する制御部と、を有し、
該制御部は、前記記憶部によって記憶された前記接続箇所特定情報に係る前記磁気マーカに対応する柵を開放すると共に、いずれかの前記磁気マーカの特定情報に係る前記接続箇所特定情報が消去されたとき、当該特定情報に係る前記磁気マーカに対応する柵を閉鎖するように構成されている運行システム。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項において、前記車両は、利用者が乗降するための停留所が定められたバスであって、
前記他のレーンには、少なくとも、前記専用レーンと前記停留所とを結ぶレーンが含まれる運行システム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、前記他のレーンには、少なくとも一般道が含まれる運行システム。
【請求項6】
車両向けの専用レーンに沿って車両を自動走行させるための運行システムの制御方法であって、
前記運行システムは、
前記専用レーンに配置された複数の
永久磁石である磁気マーカと、
該磁気マーカの磁極性に依らない非磁性情報であって、いずれか一の磁気マーカを他の磁気マーカとは区別して一意に特定するための特定情報を記憶するための記憶領域を含むマーカデータベースと、
前記複数の永久磁石である磁気マーカのうちのいずれかの1または2以上の磁気マーカの特定情報を選択的に記憶するための記憶領域を含む記憶部と、
前記専用レーンから他のレーンへの分岐及び他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくとも一方が可能な接続箇所を設定あるいは解除する設定部と、を有し
当該設定部は、設定しようとする接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報を、前記記憶部の記憶領域に接続箇所特定情報として記憶させることにより、当該接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する接続箇所において前記分岐及び前記合流のうちの少なくとも一方を可能とし、
前記分岐及び前記合流のうちの少なくとも一方が可能な接続箇所の運用を停止するとき、前記記憶部により記憶されている接続箇所特定情報のうちの運用を停止しようとする接続箇所に対応する接続箇所特定情報を、当該記憶部の記憶領域から消去することで当該接続箇所における前記分岐及び前記合流を規制する、運行システムの制御方法。
【請求項7】
請求項6において、前記運行システムは、前記専用レーンと前記他のレーンとの接続を制御する制御部を有し、
当該制御部は、前記記憶部の記憶領域を参照して前記接続箇所特定情報を読み出し、当該接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する接続箇所において前記分岐及び前記合流のうちのいずれか一方が可能となるように前記専用レーンと前記他のレーンとの接続を制御する一方、
前記マーカデータベースの記憶領域に記憶された特定情報のうち、前記記憶部の記憶領域に前記接続箇所特定情報として記憶されていない特定情報に係る磁気マーカに対応する箇所において前記分岐及び前記合流を規制するように前記専用レーンと前記他のレーンとの接続を制御する、運行システムの制御方法。
【請求項8】
請求項
6において、前記運行システムは、前記専用レーンを区画するための開閉可能な可動式の柵と、
当該可動式の柵の開閉動作を制御する制御部と、を有し、
該制御部は、前記記憶部によって記憶された前記接続箇所特定情報に係る前記磁気マーカに対応する柵を開放すると共に、いずれかの前記磁気マーカの特定情報に係る前記接続箇所特定情報が消去されたとき、当該特定情報に係る前記磁気マーカに対応する柵を閉鎖するように構成されている運行システムの制御方法。
【請求項9】
請求項
6~8のいずれか1項において、前記車両は、利用者が乗降するための停留所が定められた乗合バスであって、
前記他のレーンには、少なくとも、前記専用レーンと前記停留所とを結ぶレーンが含まれる運行システムの制御方法。
【請求項10】
請求項
6~9のいずれか1項において、前記他のレーンには、少なくとも一般道が含まれる運行システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められたルートに沿って車両を運行させる運行システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め定められたルートに沿ってバスを運行させる車両運行システムが知られている(例えば特許文献1参照。)。車両運行システムは、鉄道と比べて、インフラコストが安価であること、ルート設定の自由度が高いこと、等の利点がある。特に、車両が自律的に走行する車両運行システムは、高齢化が進行した過疎地域における高齢者の移動手段としての活用が期待されている。
【0003】
車両が自律的に走行する車両運行システムとしては、ルートに沿って配列された磁気マーカを伝うように車両を自動走行させるシステムの提案がある。磁気マーカを利用するシステムは、車線を画像認識するシステムとの比較において、雨や雪や直射日光などの環境的な外乱に対するロバストネスの確保が比較的容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両運行システムでは、分岐箇所や合流箇所の設定や解除など、ルート変更が容易ではないという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、予め定められたルートに沿って車両を運行させる車両運行システムについて、ルートの変更自由度が向上されたシステムを提供するための発明である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車両向けの専用レーンに沿って車両を自動走行させるための運行システムであって、
前記専用レーンに配置された複数の磁気マーカと、
前記専用レーンから他のレーンへの分岐および他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくともいずれかである接続箇所に対応する磁気マーカの特定情報を、接続箇所特定情報として記憶する記憶部と、
前記接続箇所を設定あるいは解除する設定部と、を有し、
前記記憶部は、前記設定部により前記接続箇所が設定されたとき、当該接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報を前記接続箇所特定情報として記憶する一方、前記設定部により前記接続箇所が解除されたとき、当該接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報に係る前記接続箇所特定情報を消去するように構成され、
該記憶部により記憶された前記接続箇所特定情報に係る前記磁気マーカに対応する箇所で、前記専用レーンから他のレーンへの分岐および他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくとも一方が可能となるように構成された運行システムにある。
【0008】
本発明の一態様は、車両向けの専用レーンに沿って車両を自動走行させるための運行システムの制御方法であって、
前記運行システムは、
前記専用レーンに配置された複数の磁気マーカと、
前記専用レーンから他のレーンへの分岐および他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくともいずれかである接続箇所に対応する磁気マーカの特定情報を、接続箇所特定情報として記憶する記憶部と、
前記接続箇所を設定あるいは解除する設定部と、を有し、
前記記憶部は、前記設定部により前記接続箇所が設定されたとき、当該接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報を前記接続箇所特定情報として記憶する一方、前記設定部により前記接続箇所が解除されたとき、当該接続箇所に対応する前記磁気マーカの特定情報に係る前記接続箇所特定情報を消去するように構成され、
該記憶部により記憶された前記接続箇所特定情報に係る前記磁気マーカに対応する箇所で、前記専用レーンから他のレーンへの分岐および他のレーンから前記専用レーンへの合流のうちの少なくとも一方を可能にする運行システムの制御方法にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る運行システムは、複数の磁気マーカが配置された専用レーンに沿って車両を自動走行させるためのシステムである。この運行システムは、専用レーンと他のレーンとの接続箇所に対応する磁気マーカの特定情報を、前記接続箇所特定情報として記憶している。そして、この運行システムでは、記憶している前記接続箇所特定情報に係る磁気マーカに対応する箇所で、専用レーンから他のレーンへの分岐および他のレーンから専用レーンへの合流のうちの少なくとも一方が可能になる。
【0010】
本発明に係る運行システムでは、前記接続箇所特定情報を記憶したり消去したりすることで、専用レーンと他のレーンとの接続箇所を設定したり解除でき、ルートの変更が比較的容易である。本発明の運行システム及び制御方法によれば、ルートの変更自由度が向上された優れた特性の運用システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】運行システムの構成を示すシステム図その1。
【
図2】運行システムの構成を示すシステム図その2。
【
図4】接続箇所が設定された専用レーンを示す説明図。
【
図10】磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
【
図11】車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
【
図12】バスが専用レーンを分岐して停留所に到着するまでのシステム動作の流れを示すフロー図。
【
図13】バスが停留所を出発して専用レーンに合流するまでのシステム動作の流れを示すフロー図。
【
図14】接続箇所の設定処理の流れを示すフロー図。
【
図15】接続箇所の解除処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、バス(車両の一例)5の運行システム1に関する例である。この運行システム1は、磁気マーカ10が敷設された走行レーン11をバス5が自動走行するシステムである。この内容について、
図1~
図17を参照して説明する。
【0013】
走行レーン11(
図1)には、バス5の専用レーン111のほか、利用者を乗降させるための停留所115に至る一般レーン112がある。専用レーン111には、他のレーンの一例をなす一般レーン112との接続箇所13を設定可能である。バス5は、接続箇所13を利用して専用レーン111から一般レーン112に分岐したり、一般レーン112から専用レーン111に合流したりできる。
【0014】
運行システム1(
図1)は、バス5の走行を遠隔制御する制御サーバ装置18、及び制御サーバ装置18と通信可能なバス5、を含めて構成されている。バス5は、走行中に磁気マーカ10を検出し、磁気マーカ10に対する車体の横ずれ量を計測する。制御サーバ装置18は、磁気マーカ10に対する車体の横ずれ量を利用し、磁気マーカ10を伝って走行するようバス5を遠隔制御する。以下、(1)走行レーン、(2)磁気マーカ、(3)バス、(4)制御サーバ装置について説明し、続いて(5)システム運用、について説明する。
【0015】
(1)走行レーン
上記のごとく、走行レーン11(
図1)は、バス5の専用レーン111と、停留所115が設けられる一般レーン112と、により構成されている。専用レーン111は、一方通行の環状の周回路である。専用レーン111は、両側の柵110(
図3)によって区画され、人や一般車両が進入できないように構成されている。一般レーン112は、専用レーン111から分岐あるいは専用レーン111に合流するレーンである。バス5は、専用レーン111から分岐した後、一般レーン112を走行して停留所115に到着できる。停留所115を出発したバス5は、一般レーン112を走行して専用レーン111に合流できる。
【0016】
専用レーン111と一般レーン112との大きな違いは、バス5以外の一般の車両が走行するか否かという点にある。この相違点のため、専用レーン111と一般レーン112とでは、バス5を自動走行させる際の制御速度等が異なっている。専用レーン111では、制御速度が時速40~50km程度である一方、一般レーン112での制御速度は、時速0~20km程度に低く抑えられている。
【0017】
専用レーン111を区画する柵110(
図3及び
図4)は、可動式の可動柵110Aと、固定式の固定柵110Bと、により構成されている。運行システム1では、可動柵110Aの動作により、一般レーン112に対する専用レーン111の接続箇所13を設定可能である。可動柵110Aは、専用レーン111から一般レーン112への分岐箇所や、一般レーン112から専用レーン111への合流箇所等、専用レーン111に対する一般レーン112の接続箇所13として設定可能な特定箇所に対応して設けられている。
【0018】
可動柵110Aは、電車の駅のホームに設置されるホームドアに似通った構成を有している。可動柵110Aには、モータ制御ユニット16により制御される駆動モータ160が付設されている。モータ制御ユニット16は、インターネットを介して制御サーバ装置18と通信可能である。モータ制御ユニット16は、制御サーバ装置18による制御信号に応じて駆動モータ160を回転駆動する。
【0019】
可動柵110Aは、駆動モータ160の駆動力によってレーン方向に沿って移動し、隣接する固定柵110Bと重なる位置に変位する(
図4参照。)。このように可動柵110Aが固定柵110Bと重なる位置が、専用レーン111が一般レーン112に対して開放される開放位置である。一方、可動柵110Aが両隣りの固定柵110Bの間隙に所在する位置が、専用レーン111が一般レーン112に対して閉鎖される閉鎖位置である(
図3参照。)。可動柵110Aが開放位置にある場合、一般レーン112に対する専用レーン111の接続箇所13が設けられ、これにより、専用レーン111と一般レーン112との間の相互乗り入れが可能になる。一方、可動柵110Aが閉鎖位置にある場合、一般レーン112から専用レーン111への乗り入れや、専用レーン111から一般レーン112への分岐が不可能になる。
【0020】
本例の運行システム1では、各可動柵110Aに個別に対応する磁気マーカ10が予め規定されている。運行システム1では、可動柵110Aに対応して位置する磁気マーカ10(特定マーカ10S)の特定情報を、接続箇所特定情報としてシステム側で記憶するか否かにより、可動柵110Aの開閉状態を切替できる。そして、可動柵110Aの開閉により、一般レーン112に対する専用レーン111の接続箇所13の設定変更が可能である。
【0021】
なお、専用レーン111から停留所115に向かう往路の一般レーン112と、停留所115から専用レーン111に向かう復路の一般レーン112とは、共通であっても良く異なるレーンであっても良い。往路の一般レーン112と、復路の一般レーン112と、が異なる場合、専用レーン111に対する接続箇所13が異なっていても良い。また、接続箇所13は、分岐および合流に共用される箇所であっても良く、分岐あるいは合流のみに利用される箇所であっても良い。
【0022】
(2)磁気マーカ
磁気マーカ10(
図2及び
図5)は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなす磁石に対して、RFIDタグ15(Radio Frequency IDentification Tag、無線タグ)を一体化させたマーカである。磁気マーカ10は、路面100S(
図2)に設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットである。この磁石の最大エネルギー積(BHmax)は、6.4kJ/立方mである。磁気マーカ10は、磁気センサアレイ21A・B(
図2参照。)の取付け高さである250mm高さにおいて、8μT(マイクロテスラ)を超える磁束密度の磁気を作用する。
【0023】
磁気マーカ10では、
図5のごとく、柱状の磁石の端面に、無線によりタグ情報を出力するRFIDタグ15が、配設されている。なお、磁石の端面にRFIDタグ15を配置した後、樹脂材料によるコーティング層を表面に設けることも良い。コーティング層としては、繊維に樹脂材料を含浸させた複合材料よりなる層であっても良い。あるいは、コーティング層が形成された磁石の端面に、RFIDタグ15を配設しても良い。磁石の外表面のうち、RFIDタグ15が配置された端面以外の表面の全部あるいは一部に、コーティング層を設けることも良い。
【0024】
RFIDタグ15(
図6)は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150の表面にICチップ157を実装した電子部品である。タグシート150の表面には、アンテナ153の印刷パターンが設けられている。アンテナ153は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する給電用のアンテナ機能と、位置データ等の情報を無線送信する通信用のアンテナ機能と、を併せ持っている。RFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、識別情報であるタグIDなどのタグ情報を外部出力する。RFIDタグ15が外部出力するタグIDは、磁気マーカ10の特定情報の一例である。
【0025】
(3)バス(車両)
バス5(
図2及び
図7)は、遠隔制御による自動運転が可能な車両である。バス5は、自動運転を実現するためのセンサ類として、磁気マーカ10を検出等する磁気センサアレイ21A・B、RFIDタグ15と通信するタグリーダユニット34、ミリ波レーダ37、及び前方カメラ39等を備えている。バス5は、走行制御を実行する構成として、図示しないステアリング操舵ユニットやエンジンスロットルやブレーキアクチュエータなどを制御する車載ECU(Electronic Control Unit)61を備えている。
【0026】
ミリ波レーダ37は、他の車両や人やガードレールなどの構造物や縁石など、3次元的な対象物を検出するためのセンサである。ミリ波レーダ37は、バス5の周囲を監視できるよう、車体の前後左右の隅部に配置されている。各ミリ波レーダ37の検出結果は、制御ユニット32に入力される。
【0027】
前方カメラ39は、前方の環境を撮影するためのカメラである。前方カメラ39は、画像処理を実行する処理回路(図示略)等を含めて構成されている。前方カメラ39は、撮影画像に画像処理を施すことで、道路標識、信号、人、自転車、先行車両、対向車両などを検出可能である。前方カメラ39の検出結果は、制御ユニット32に入力される。
【0028】
車載ECU61は、制御サーバ装置18が出力した制御情報(制御値)に基づいてバス5を自動走行させる制御を実行可能である。制御サーバ装置18が送信する制御情報は、制御ユニット32により受信され、車載ECU61に転送される。
【0029】
(3.1)磁気センサアレイ
バス5では、
図7及び
図8のごとく、バス5の前後方向において4m離隔する2箇所に磁気センサアレイ21A・Bが配設されている。磁気検出部の一例である磁気センサアレイ21A・Bは、車幅方向に長い棒状のユニットであり、路面100Sと対面する状態でバス5の底面に取り付けられる。前側の磁気センサアレイ21Aと、後ろ側の磁気センサアレイ21Bと、の組合せによれば、経路に沿って2m間隔で配置された磁気マーカ2のうち、1つおきの4m離間する2つの磁気マーカ10を同時に検出可能である。
【0030】
磁気センサアレイ21A・B(
図8)は、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。磁気センサアレイ21A・Bでは、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。
【0031】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、直交する2軸方向に沿って感磁体が配置され、これにより直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能となっている。なお、本例では、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnが磁気センサアレイ21A・Bに組み込まれている。
【0032】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。ここで、磁気マーカ10は、上記のように、磁気センサCnの取付け高さである250mmにおいて8μTを超える磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μTを超える磁気を作用する磁気マーカ10であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0033】
磁気センサアレイ21A・Bの検出処理回路212(
図8)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、図示しない各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0034】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行する。そして、マーカ検出処理の検出結果を制御ユニット32に入力する。詳しくは後述するが、このマーカ検出処理では、磁気マーカ10の検出に加えて、磁気マーカ10に対する横ずれ量(幅方向の相対位置の一例。)の計測が行われる。磁気マーカ10に対する横ずれ量は、例えば、磁気マーカ10に対する磁気センサアレイ21の中央の位置(センター位置)の車幅方向のずれ量である。磁気センサアレイ21のセンター位置は、バス5の車幅方向のほぼ中心に位置している。それ故、磁気マーカ10に対する磁気センサアレイ21のセンター位置のずれ量は、磁気マーカ10に対するバス5の横ずれ量として取扱い可能である。
【0035】
前側の磁気センサアレイ21Aが検出した磁気マーカ10に対する横ずれ量と、後ろ側の磁気センサアレイ21Bが検出した磁気マーカ10に対する横ずれ量と、によれば、レーン方向に対するバス5の姿勢を特定可能である。なお、このようなバス5の姿勢の特定は、後述する通り、前後の磁気センサアレイ21A・Bによる2つの横ずれ量を含む車両ステータス情報を取得する制御サーバ装置18によって実行される。
【0036】
(3.2)タグリーダユニット
タグリーダユニット34(
図7)は、磁気マーカ10(
図5)に保持されたRFIDタグ15と無線で通信する通信ユニットである。タグリーダユニット34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電してRFIDタグ15を動作させ、RFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)を読み取る。なお、
図7では、磁気センサアレイ21A及びタグリーダユニット34を別体で図示しているが、これらが一体化されたユニットを採用することも良い。
【0037】
(3.3)制御ユニット
制御ユニット32(
図7)は、磁気センサアレイ21A・Bやタグリーダユニット34やミリ波レーダ37や前方カメラ39などを制御すると共に、制御サーバ装置18(
図1参照。)との間で各種の情報やデータを送受信するユニットである。
【0038】
制御ユニット32は、車両ステータス情報を十分に速い周波数で制御サーバ装置18に送信する。この車両ステータス情報には、制御サーバ装置18側で送信元のバス5を特定可能なように車両IDが紐付けされている。制御ユニット32は、車両ステータス情報の送信と引き換えに、自動走行のための制御情報を制御サーバ装置18から取得する。制御ユニット32が取得した制御情報(制御値)は車載ECU61に入力されてバス5の走行制御に適用され、これにより制御サーバ装置18によるバス5の遠隔制御が実現される。
【0039】
車両ステータス情報には、車外から取得した情報と、バス5の走行状態を表す情報と、がある。車外から取得した情報には、磁気マーカ10に保持されたRFIDタグ15から取得したタグID(タグ情報)、磁気マーカ10に対する横ずれ量、ミリ波レーダ37による検出結果、前方カメラ39による検出結果、等がある。バス5の走行状態を表す情報としては、車速や操舵角やヨーレイトなどがある。なお、磁気マーカ10に対する横ずれ量及びタグIDは、磁気マーカ10が検出されたときのみ、上記の車両ステータス情報に含められる。
【0040】
(4)制御サーバ装置
制御サーバ装置18(
図9)は、CPU(Central Processing Unit)181やROM(Read Only Memory)182やRAM(Random Access Memory)183などの電子部品が実装された電子基板180を中心にして構成されたコンピュータ装置である。電子基板180には、I/O(Input/Output)184を介して、ハードディスクドライブ等の記憶装置(記憶媒体)185や無線通信ユニット189等が接続されている。
【0041】
制御サーバ装置18では、記憶装置185の記憶領域を利用して、各磁気マーカ10に関するマーカ情報を記憶するマーカデータベース(マーカDB)185M、走行レーン11の3次元的な構造を表す地図データを記憶する地図データベース(地
図DB)185T、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10の特定情報を、接続箇所特定情報として記憶する接続箇所データベース(接続箇所DB)185C、が設けられている。また、制御サーバ装置18では、各可動柵110Aの位置が管理されている。例えば、記憶装置185の記憶領域では、各可動柵110Aについて、開放位置にあるか閉鎖位置にあるかを表すフラグデータが記憶されている。制御サーバ装置18は、フラグデータを参照することで、対応する可動柵110Aの状態を把握できる。
【0042】
マーカDB185Mが記憶するマーカ情報には、付設されたRFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)が紐付け(対応付け)されている。本例の構成では、タグIDを利用してマーカDB185Mを参照することで、対応する磁気マーカ10の特定が可能である。マーカ情報には、敷設位置を表す情報や、その敷設位置の属性を表す情報や、制限速度などの規制情報などが含まれている。特に、可動柵110Aに対応して位置する磁気マーカ10のマーカ情報には、可動柵110Aを特定するための識別情報が含まれている。
【0043】
地
図DB185Tに格納される地図データは、走行レーン11の構造や周囲環境などを表すベクターデータによって構成されている。この地図データにおいて、走行レーン11上には磁気マーカ10の敷設位置等がマッピングされている。例えば、バス5がいずれかの磁気マーカ10を検出した場合、この地図データを参照すれば、バス5の前方のレーン形状を取得できる。
【0044】
接続箇所DB185Cは、後述する設定部により設定された接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10の特定情報であるタグIDを、接続箇所特定情報として記憶する記憶部の一例をなしている。ここで、上記のごとく、マーカDB185Mが記憶するマーカ情報にはタグIDがひも付けられていると共に、可動柵110Aに対応する磁気マーカ10のマーカ情報には、可動柵110Aを特定するための識別情報が含まれている。したがって、接続箇所DB185Cにより接続箇所特定情報として記憶されたタグIDに基づけば、接続箇所13をなす可動柵110A、すなわち開放位置に制御する対象の可動柵110Aを特定可能である。
【0045】
接続箇所DB185Cにより接続箇所特定情報として記憶されるタグIDには、接続箇所13の属性情報がひも付けされている。属性情報としては、分岐及び合流の2種類がある。分岐の属性情報は、専用レーン111から一般レーン112への分岐の接続箇所13である旨を表している。合流の属性情報は、一般レーン112から専用レーン111への合流の接続箇所13である旨を表している。
【0046】
制御サーバ装置18は、ROM182から読み出されたプログラムをCPU181が実行することで、以下の各構成としての機能を実現する。
(4.1)データ通信部:データ通信部は、バス5やモータ制御ユニット16等との間でデータ通信を実行する。
(4.2)マーカ情報取得部:マーカ情報取得部は、バス5側からタグ情報(タグID)を含む車両ステータス情報が受信されたとき、タグIDを利用してマーカDB185Mを参照し、対応する磁気マーカ10に関するマーカ情報を取得する。
(4.3)車両位置特定部(位置特定部):車両位置特定部は、バス5が所在する車両位置及びバス5の姿勢(方位)を特定する。
(4.4)遠隔制御部:遠隔制御部は、走行レーン11に沿って移動できるようにバス5を遠隔制御する。遠隔制御部は、バス5の車速や操舵角やタグID等を含む車両ステータス情報を入力値とした演算処理により、目標操舵角、目標車速等の制御値を算出し、制御情報として返信する。なお、目標速度は、速度ゼロ、すなわち停止制御を含む制御値となっている。
(4.5)設定部:設定部は、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13を設定あるいは解除する。上記のごとく、設定部により接続箇所13が設定されたとき、その接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10の特定情報であるタグIDが、接続箇所特定情報として接続箇所DB185Cにより記憶される。
(4.6)接続箇所特定部:接続箇所DB185Cにより接続箇所特定情報として記憶されたタグIDに基づいて、接続箇所13に対応する可動柵110Aを特定する。
(4.7)可動柵制御部:制御部の一例をなす可動柵制御部は、可動柵110Aの開閉を遠隔制御する。本例の運行システム1では、可動柵110Aの開閉に応じて、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13が設定/解除される。
【0047】
(5)システム運用
次に、以上のような構成の運行システム1における(5.1)マーカ検出処理、(5.2)自動走行制御、(5.3)接続箇所の制御、について順番に説明する。
【0048】
(5.1)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、磁気センサアレイ21A・B(
図8参照。)が実行する処理である。磁気センサアレイ21A・Bは、磁気センサCnを用いて3kHzの周期でマーカ検出処理を実行する。
【0049】
上記のごとく、磁気センサCnは、バス5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図10のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、バス5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、磁気センサアレイ21A・Bが磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このように磁気センサアレイ21A・Bが磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0050】
また、例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ11の両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した磁気センサアレイ21A・Bの場合には、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(
図11)。
【0051】
磁気センサアレイ21A・Bに属する各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図11の分布に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは検出する車幅方向の磁気がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、磁気センサアレイ21A・Bのセンター位置(例えば磁気センサC8の位置)の磁気マーカ10に対する車幅方向の位置的な偏差を、上記の横ずれ量として計測する。例えば、
図11の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する横ずれ量は、車幅方向において磁気センサアレイ21A・Bの中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10cmとなる。
【0052】
(5.2)自動走行制御
バス5の自動走行制御の内容について、
図12及び
図13のフロー図を参照しながら説明する。
図12は、専用レーン111(
図1参照。)から一般レーン112に分岐し、停留所115に停車するまでの動作の流れを表すフロー図である。
図13は、停留所115を出発してから専用レーン111に合流するまでの動作の流れを表すフロー図である。なお、以下の説明では、合流あるいは分岐の接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10を特定マーカ10Sという。
【0053】
(5.2.1)専用レーンから分岐し、停留所に停車するまでの動作
バス5は、専用レーン111を走行している間(
図12中のS101)、十分に速い周波数で上記の車両ステータス情報を制御サーバ装置18に送信する。磁気マーカ10が検出されたときの車両ステータス情報には、磁気センサアレイ21A・Bにより検出された前後2つの磁気マーカ10に対する横ずれ量や、磁気センサアレイ21Aにより検出された前側の磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15のタグID等が含まれている。
【0054】
制御サーバ装置18は、横ずれ量やタグIDを含む車両ステータス情報を受信すると、磁気マーカ10を伝ってバス5が走行するための制御値を演算して求め、制御情報としてバス5に送信する。バス5の制御ユニット32は、受信した制御情報を車載ECU61に入力し、遠隔制御によってバス5を自動走行させる。なお、ミリ波レーダ37等のセンサによって専用レーン111上の障害物等が検出された場合には、例えば、緊急ブレーキ等の割込み指令を含む制御情報が送信され、これによりバス5を停止できる。
【0055】
制御サーバ装置18は、バス5が専用レーン111を走行している最中に(
図12中のS101)、接続箇所DB185Cの記憶領域を参照する。制御サーバ装置18は、バス5が専用レーン111を走行しているとき、接続箇所DB185Cの記憶領域の中から分岐の属性情報がひも付けられたタグID(接続箇所特定情報)を読み取る。そして、制御サーバ装置18は、接続箇所DB185Cから読み取ったタグIDを利用してマーカDB185Mを参照し、接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10である特定マーカ10Sを特定する。これにより、制御サーバ装置18は、前方の分岐の接続箇所13の位置を特定する。また、制御サーバ装置18は、地
図DB185Tを参照し、特定マーカ10Sの10個手前に位置する磁気マーカ10を特定する。
【0056】
制御サーバ装置18は、特定マーカ10Sの10個手前の磁気マーカ10が検出されるまで(S102)、そのまま専用レーン111に沿ってバス5を自動走行させる(S102:NO→S101)。そして、制御サーバ装置18は、特定マーカ10Sの10個手前の磁気マーカ10が検出された場合(S102:YES)、バス5の走行状態を減速走行に切り換える(S103)。
【0057】
制御サーバ装置18は、その後、特定マーカ10Sが検出されるまで、バス5の減速走行を継続させる(S104:NO→S103)。特定マーカ10Sが検出されたとき(S104:YES)、制御サーバ装置18は、バス5に対して分岐制御を適用する(S105)。そして、制御サーバ装置18は、分岐制御の終了に応じて、一般レーン112を走行するようにバス5を遠隔制御する(S106)。制御サーバ装置18は、停留所115に到着するまで、一般レーン112に沿ってバス5を走行させる(S107:NO→S106)。その後、停留所115に到着したとき(S107:YES)、制御サーバ装置18は、利用者が乗降できるように停留所115でバス5を停車させる(S108)。
【0058】
このように制御サーバ装置18は、専用レーン111からバス5を分岐させ、停留所115が設けられた一般レーン112に進入させる。制御サーバ装置18は、専用レーン111の場合と同様、磁気マーカ10を伝って一般レーン112を走行するようにバス5を遠隔制御する。但し、専用レーン111と一般レーン112とでは、制御サーバ装置18による遠隔制御のモードが異なっている。例えば、専用レーン111と一般レーン112との制御の違いのひとつは、制御速度にある。上記のごとく、専用レーン111での制御速度と比較して、一般レーン112での制御速度は低く設定されている。一般レーン112では、人や他の車両などと遭遇する可能性があり、接触するおそれが生じたとき、直ちに停車する必要があるからである。
【0059】
(5.2.2)停留所を出発し、専用レーンに合流するまでの動作
利用者の乗降が済んだ後(
図13中のS201:YES)、制御サーバ装置18は、バス5を出発させる。バス5が一般レーン112にあるとき、制御サーバ装置18は、接続箇所DB185Cの記憶領域を参照する。そして、制御サーバ装置18は、接続箇所DB185Cの記憶領域の中から合流の属性情報がひも付けられたタグID(接続箇所特定情報)を読み取り、タグIDに係る特定マーカ10Sを特定する。この特定マーカ10Sは、一般レーン112から専用レーン111へ合流する接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10である。さらに、制御サーバ装置18は、走行中の一般レーン112に敷設された磁気マーカ10のうち、特定マーカ10Sと隣り合う磁気マーカ10、すなわち合流前の最後の磁気マーカ10を特定する。
【0060】
制御サーバ装置18は、バス5を遠隔制御し、一般レーン112を走行させる(S202)。その後、一般レーン112の最後の磁気マーカ10が検出されたとき(S203:YES)、制御サーバ装置18は、バス5に対して合流制御を適用する(S204)。そして制御サーバ装置18は、一般レーン112から専用レーン111へ合流する接続箇所13に対応して位置する特定マーカ10Sが検出されたとき(S205:YES)、バス5が専用レーン111を走行できるように遠隔制御する(S206)。
【0061】
なお、バス5が専用レーン111に合流するに当たり、専用レーン111を走行する他のバス5が併存する場合、合流の接続箇所13の手前の位置で、一般レーン112あるいは専用レーン111上のバス5を徐行あるいは待機させることも良い。この場合には、専用レーン111に合流しようとするバスと、専用レーン111を走行中のバス5と、が干渉するおそれを未然に回避できる。
【0062】
(5.3)接続箇所の制御
接続箇所13(
図1参照。)の設定処理および解除処理の流れについて、
図14及び
図15を参照して説明する。本例の運行システム1では、制御サーバ装置18による遠隔制御によって、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13を随時、変更可能である。可動柵110Aが開放位置に変位すると、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13が設定される。可動柵110Aが開放位置から閉鎖位置に移行すれば、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13が解除される。
【0063】
(5.3.1)接続箇所の設定処理
運行システム1において接続箇所13が設定されると(S301)、その接続箇所13を特定するための接続箇所特定情報が接続箇所DB185Cにより記憶される(S302)。ここで、本例の接続箇所特定情報は、接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10の特定情報であるタグIDである。
【0064】
制御サーバ装置18は、接続箇所DB185Cの記憶領域を随時、参照し、接続箇所特定情報として記憶されているタグIDを読み出す(S303)。そして、制御サーバ装置18は、読み出したタグID(接続箇所特定情報)に基づいて接続箇所13を特定すると共に、対応する可動柵110Aを特定する(S304)。
【0065】
制御サーバ装置18は、接続箇所13に対応する可動柵110Aとして特定された柵が開放位置にない場合、対応する駆動モータ160を制御し(S305)、可動柵110Aを開放位置に変位させる(S306)。運行システム1では、以上のような処理によって接続箇所13が設定される(S307)。
【0066】
(5.3.2)接続箇所の解除処理
運行システム1において接続箇所13が解除されると(S401)、その接続箇所13を特定可能な接続箇所特定情報が接続箇所DB185Cから消去される(S402)。接続箇所特定情報は、接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10の特定情報であるタグIDである。
【0067】
制御サーバ装置18は、接続箇所DB185Cの記憶領域を随時、参照し(S403)、開放位置に制御された可動柵110Aのうち、接続箇所特定情報としてのタグIDが記憶されていない柵を特定する(S404)。そして、制御サーバ装置18は、ステップS404で特定された可動柵110Aに対応する駆動モータ160を制御し(S405)、その可動柵110Aを開放位置から閉鎖位置に変位させる(S406)。運行システム1では、以上のような処理によって接続箇所13を解除する(S407)。
【0068】
以上のように、本例の運行システム1では、接続箇所特定情報としてのタグIDを接続箇所DB185Cに記憶させることで、そのタグIDに係る磁気マーカ10に対応する可動柵110Aを開放位置に変位させることができる。そして、運行システム1では、可動柵110Aが開放位置に変位することで、接続箇所13を設定できる。また、接続箇所特定情報としてのタグIDを消去すれば、そのタグIDに係る磁気マーカ10に対応する可動柵110Aを開放位置から閉鎖位置に変位させることができる。そして、運行システム1では、可動柵110Aが閉鎖位置に変位することで、接続箇所13を解除できる。
【0069】
運行システム1では、接続箇所DB185Cにより記憶された接続箇所特定情報の管理により、専用レーン111と一般レーン112との接続箇所13を設定したり解除したりできる。例えば、停留所115で乗降したい利用者のリクエストを受けて、対応して位置する磁気マーカ10のタグIDを、接続箇所特定情報として接続箇所DB185Cに記憶させることも良い。この場合には、乗降する利用者が待つ停留所115にのみ、選択的にバス5を向かわせることができる。
【0070】
本例では、専用レーン111に接続箇所13を適宜、設定可能な運行システム1を例示している。接続箇所13に代えて、あるいは加えて、一旦停止の箇所、減速区間の始点及び終点の箇所を適宜、設定可能としても良い。これらの箇所についても、本例と同様、対応する磁気マーカの特定情報を記憶したり消去することで、設定/解除できる。
【0071】
本例では、他のレーンとして、停留所115に至る一般レーン112を例示している。
図16のごとく、他のレーンは、専用レーン111に対するサブレーン111Sであっても良い。サブレーン111Sに停留所115を設置することも良い。また、一般レーン112の行先は、停留所115以外であっても良い。例えば、単なる迂回路としての一般レーン112であっても良い。迂回路としての一般レーン112を設ければ、例えば、道路工事作業等に伴うルート変更等に柔軟に対応できる。
【0072】
なお、専用レーン111とサブレーン111Sとを区分する分離帯を設けた
図16の構成を元にして、
図17のように分離帯を無くし、専用レーン111とサブレーン111Sとを一車線内に設けることも良い。同図の構成では、バスが走行する車線のうち、停留所115を設けた箇所の車線幅が拡幅されている。そして、車線幅が拡幅された箇所では、停留所を停車せずに通過するバスのメインルートをなす専用レーン111と、停留所に停車するバスのサブルートをなす他のレーン111Tと、が並列している。
【0073】
また、本例では、一般レーン112でもバス5が自動走行する構成を例示したが、一般レーン112では、運転者のマニュアル操作によってバス5が走行(マニュアル走行)しても良い。例えば、接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10(特定マーカ10S)が検出されたとき、自動走行とマニュアル走行とを切り換えることも良い。また、本例では、制御サーバ装置18による遠隔制御によりバス5が自動走行する構成を例示している。これに代えて、バス5の制御ユニット32が、自動走行のための制御値を演算しても良い。この場合には、バス5が自律走行できる。
【0074】
本例では、磁気マーカ10の上面に、シート状のRFIDタグ15を取り付けた構成を例示しているが、磁気マーカ10とRFIDタグ15とが一体をなしている構成は必須ではない。磁気マーカ10とRFIDタグ15とが同じ位置に配置されていれば良く、磁気マーカ10の鉛直方向上方、あるいは下方にRFIDタグ15が配置されていても良い。
【0075】
なお、本例の磁気マーカ10は、RFIDタグ15が一体化されたマーカである。これに代えて、RFIDタグ15が付設されない磁気マーカを含めても良い。例えば、可動柵110Aに対応して位置する磁気マーカとして、RFIDタグ15が一体化された磁気マーカ10を採用する一方、それ以外の磁気マーカとして、RFIDタグ15が付設されていない磁気マーカを採用することも良い。
【0076】
本例では、接続箇所13に対応する磁気マーカ10の特定情報(本例ではタグID)を、接続箇所特定情報として接続箇所DB185Cに記憶させるか否かにより、接続箇所13の設定/解除をコントロールしている。設定状態の接続箇所13を解除する際には、対応する接続箇所特定情報が接続箇所DB185Cから消去される。この構成に代えて、接続箇所13の候補となる箇所に対応する全ての磁気マーカ10の特定情報を、フラグ付きで接続箇所DB185Cが記憶していても良い。フラグは、接続箇所13に設定されているか否かを表すフラグである。この場合、接続箇所DB185Cに記憶された磁気マーカ10の特定情報のうち、フラグがONの磁気マーカ10の特定情報が接続箇所特定情報となる。一方、フラグがOFFの磁気マーカ10の特定情報は、接続箇所特定情報ではない。例えば、フラグONの磁気マーカ10の特定情報について、フラグをOFFに切り替えることは、接続箇所特定情報を消去することに相当している。また例えば、フラグOFFの磁気マーカ10の特定情報について、フラグをONに切り替えることは、接続箇所特定情報を新たに記憶することに相当している。
【0077】
本例では、接続箇所13に対応する磁気マーカ10の一例として、接続箇所13に対応して位置する磁気マーカ10を例示している。接続箇所13に対応して位置するとは、接続箇所13と磁気マーカ10との位置関係が略一定であって、対応する磁気マーカ10の位置を特定できれば、接続箇所13の位置を特定できることを意味している。接続箇所13に対応する磁気マーカ10は、いずれかの磁気マーカ10が特定されたとき、対応する接続箇所13を特定できるものであれば良い。バス5の進行方向において、対応する磁気マーカ10の下流に接続箇所13が位置していても良いが、その逆であっても良い。地
図DB185Tを参照すれば、対応する磁気マーカ10に対して上流側に位置する磁気マーカ10を把握できる。上流側に位置する磁気マーカ10の検出に応じて、接続箇所13へのバス5の接近を認識しても良い。
【0078】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0079】
1 運行システム
10 磁気マーカ
11 走行レーン
110 柵
110A 可動柵
111 専用レーン
112 一般レーン(他のレーン)
115 停留所
13 接続箇所
15 RFIDタグ(無線タグ)
18 制御サーバ装置(設定部、可動柵制御部(制御部))
185 記憶装置(記憶媒体)
185M マーカデータベース(マーカDB)
185C 接続箇所データベース(接続箇所DB、記憶部)
185T 地図データベース(地
図DB)
21 磁気センサアレイ(磁気検出部)
212 検出処理回路
32 制御ユニット
34 タグリーダユニット
37 ミリ波レーダ
39 前方カメラ
5 バス(車両)
61 車載ECU