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特許7437905温度制御回路、発振制御回路及び温度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】温度制御回路、発振制御回路及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240216BHJP
   G05D 23/00 20060101ALI20240216BHJP
   G05D 23/19 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H03B5/32 A
G05D23/00 Z
G05D23/19 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019190295
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021064922
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-230201(JP,A)
【文献】特開2018-157369(JP,A)
【文献】特開2018-133816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00-5/42
G05D 23/00
G05D 23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え、
前記キャンセル回路は、前記駆動量検出値から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成するN次成分第1生成回路と、当該N次成分第1生成回路で生成した前記N次成分を前記温度センサの検出信号に加算する加算回路とを含む温度制御回路。
【請求項2】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え
前記キャンセル回路は、前記ターゲット温度生成回路と前記駆動回路との間に設けられ、前記ターゲット温度から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成するN次成分第2生成回路を含み、当該N次成分第2生成回路で生成した前記N次成分を前記ターゲット温度として前記駆動回路に出力する温度制御回路。
【請求項3】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え
前記キャンセル回路は、前記駆動量検出回路と前記ターゲット温度生成回路との間に設けられ、前記駆動量検出値から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成するN次成分第2生成回路を含み、当該N次成分第2生成回路で生成した前記N次成分を、前記駆動量検出値として前記ターゲット温度生成回路に出力する温度制御回路。
【請求項4】
前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の温度制御回路。
【請求項5】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え
前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備える温度制御回路。
【請求項6】
前記電源変動キャンセル回路は、前記キャンセル回路に入力される信号に前記電源電圧を乗算する乗算器を含む請求項4又は請求項5に記載の温度制御回路。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含むことを特徴とする発振制御回路。
【請求項8】
前記キャンセル回路は、前記ターゲット温度から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成するN次成分第1生成回路を含み、当該N次成分第1生成回路で生成した前記N次成分を前記発振回路に出力し、当該発振回路は前記N次成分に応じて前記共振子の周波数の温度による変動をキャンセルする請求項7に記載の発振制御回路。
【請求項9】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備える温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含み、
前記キャンセル回路は、前記ターゲット温度から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成するN次成分第1生成回路を含み、当該N次成分第1生成回路で生成した前記N次成分を前記発振回路に出力し、当該発振回路は前記N次成分に応じて前記共振子の周波数の温度による変動をキャンセルする発振制御回路。
【請求項10】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備える温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含み、
前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記共振子への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備える発振制御回路。
【請求項11】
前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記共振子への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備える請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の発振制御回路。
【請求項12】
前記電源変動キャンセル回路は、前記キャンセル回路に入力される信号に前記電源電圧を乗算する乗算器を含む請求項10又は請求項11に記載の発振制御回路。
【請求項13】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記温度センサの検出信号を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、
前記駆動量検出値から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を前記温度センサの検出信号に加算する温度制御方法。
【請求項14】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記ターゲット温度を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、
当該ターゲット温度から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を前記ターゲット温度として前記駆動回路に出力する温度制御方法。
【請求項15】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記ターゲット温度を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、
前記駆動量検出値から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を、前記駆動量検出値として前記ターゲット温度生成回路に出力する温度制御方法。
【請求項16】
対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、
前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、
前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、
前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、
前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、
前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記温度センサの検出信号又は前記ターゲット温度を調整することでキャンセルし、
さらに、調整された前記温度センサの検出信号又は調整された前記ターゲット温度に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルする温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御回路、発振制御回路及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基地局向けの基準クロックには、数十~数百ppbのオーダーにまで周波数温度変動を抑えることが求められている。基準クロックのクロック源として、水晶振動子(Xtal)を用いた水晶発振器(XO)が一般的に用いられているが、水晶振動子の周波数温度変動は、例えば-40℃~85℃の範囲で、数十ppmといった大きなものとなる。
そこで、水晶振動子の温度を一定に保つOCXO(オーブン制御型水晶発振器、Oven Controlled Xtal Oscillator)が一般的に用いられ、水晶振動子の周波数温度変動の抑制が図られている。
【0003】
OCXOは、例えば図17に示すように、温度センサ101で検出される温度Vsensが、一定電圧であるターゲット温度Vgtと一致するように、差動アンプ102を設けて熱フィードバックループを形成し、差動アンプ102の出力に応じて、電流ドライバ103としてのPMOS素子を制御することで、所定のヒータ電流Ihを流す。これにより、ヒータが発熱し、この発熱により水晶振動子104を含むパッケージ105内の温度を一定とするようにしている。また、温度センサ101と、差動アンプ102と、電流ドライバ103と、水晶発振器のうちの水晶振動子104を制御する制御回路とは、集積回路ICとして構成されている。
【0004】
ここで、図17に示す熱制御では、環境温度の変化に対して一定となるのは温度センサ101の出力温度であって、水晶振動子104の温度ではない。そのため、水晶振動子104の温度が、現実的には数〔℃〕のオーダーで変化する。この原理について図18に示す熱抵抗モデルについて説明する。
図18に示すパッケージ105内の熱抵抗モデルにおいて、環境温度Ta〔℃〕に対し、ヒータの電流ドライバ103や水晶振動子104の制御回路等が搭載された集積回路ICの温度(以下、IC温度ともいう。)をTi〔℃〕、水晶振動子104の温度(以下、水晶子温度ともいう。)をTx〔℃〕、集積回路ICの消費電力をPi〔W〕とする。また、熱抵抗として、外気~IC間をθai[℃/W]、外気~水晶振動子104間をθax[℃/W]、集積回路IC~水晶振動子104間をθix[℃/W]とおく。
【0005】
まず、IC温度Tiは熱フィードバックにより目標値Tgtに制御されているため、Ti=Tgt(一定)となる。
一方、水晶子温度Txについては、IC温度Ti(=Tgt)と環境温度Taとを、熱抵抗θixとθaxとで分割する事により、次式(1)で表すことができる。
Tx
={(θax/(θix+θax)}×Tgt+{θix/(θix+θax)}×Ta
……(1)
つまり、環境温度Taの変動に対し、水晶子温度Txは1次の変化を示す。例えばTgt=98〔℃〕、θai=300〔℃/W〕、θax=295〔℃/W〕、θix=5〔℃/W〕の場合、水晶振動子104の温度変動は約2〔℃〕にも達する。
【0006】
仮に、水晶振動子104として、その周波数温度特性が極値となるターンオーバー温度付近での周波数温度変動が小さい、SC-cut型Xtalを用いたとしても、そのSC-cut型Xtalの周波数温度特性は極値から数〔℃〕離れた温度にて例えば100〔ppb/℃〕程度である。そのため約2〔℃〕の水晶子温度変動により生ずる周波数変動は約200〔ppb〕となる。例えばStratum3E準拠の基準クロックでは自走時周波数変動(ホールドオーバー特性)の要求は1日あたり10〔ppb〕と言われ、図18に示す熱抵抗モデルでは満足する事ができない。このように一般的なOCXOでは水晶子温度が1次変動を示し、周波数温度変動が大きくなるという問題がある。
【0007】
そのため、例えば、ターゲット温度Vgtと環境温度Taとの差分に比例して、ターゲット温度Vgtを1次の補正成分でシフトすることにより、周波数温度変動を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5977197号
【文献】米国特許第7154351号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現実の回路にて従来技術を実現しようとした場合、ICのターゲット温度を1次では補正しきれず、非線形なエラー成分(N次の高次成分)が残ってしまう。その結果、周波数温度変動特性を劣化させてしまう。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、より高精度に温度制御を行うことができる温度制御回路、発振制御回路及び温度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る温度制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え、前記キャンセル回路は、前記駆動量検出値から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成するN次成分第1生成回路と、当該N次成分第1生成回路で生成した前記N次成分を前記温度センサの検出信号に加算する加算回路とを含むことを特徴としている。
また、本発明の他の実施形態に係る温度制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え、前記キャンセル回路は、前記ターゲット温度生成回路と前記駆動回路との間に設けられ、前記ターゲット温度から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成するN次成分第2生成回路を含み、当該N次成分第2生成回路で生成した前記N次成分を前記ターゲット温度として前記駆動回路に出力することを特徴としている。
また、本発明の他の実施形態に係る温度制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え、前記キャンセル回路は、前記駆動量検出回路と前記ターゲット温度生成回路との間に設けられ、前記駆動量検出値から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成するN次成分第2生成回路を含み、当該N次成分第2生成回路で生成した前記N次成分を、前記駆動量検出値として前記ターゲット温度生成回路に出力することを特徴としている
さらに、本発明の他の実施形態に係る温度制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備え、前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の実施形態に係る発振制御回路は、上記実施形態に係る温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含むことを特徴としている。
また、本発明の他の実施形態に係る発振制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備える温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含み、前記キャンセル回路は、前記ターゲット温度から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成するN次成分第1生成回路を含み、当該N次成分第1生成回路で生成した前記N次成分を前記発振回路に出力し、当該発振回路は前記N次成分に応じて前記共振子の周波数の温度による変動をキャンセルすることを特徴としている。
さらに、本発明の他の実施形態に係る発振制御回路は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御回路であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路の前記駆動量を制御する駆動回路と、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の前記駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルするキャンセル回路と、を備える温度制御回路と、前記パッケージ内に配置された前記対象物としての共振子及び当該共振子を制御する発振回路と、を含み、前記キャンセル回路により生成される信号に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記共振子への影響をキャンセルする電源変動キャンセル回路をさらに備えることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の実施形態に係る温度制御方法は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記温度センサの検出信号を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、前記駆動量検出値から一次成分を含まない二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を前記温度センサの検出信号に加算することを特徴としている。
また、本発明の他の実施形態に係る温度制御方法は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記ターゲット温度を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、当該ターゲット温度から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を前記ターゲット温度として前記駆動回路に出力することを特徴としている。
さらに、本発明の他の実施形態に係る温度制御方法は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記ターゲット温度を調整することでキャンセルする温度制御方法であって、前記駆動量検出値から一次成分を含む二次以上のN次成分を生成し、当該N次成分を、前記駆動量検出値として前記ターゲット温度生成回路に出力することを特徴としている。
またさらに、本発明の他の実施形態に係る温度制御方法は、対象物と発熱回路とがパッケージ内に収納されたモジュールの温度制御方法であって、前記パッケージ内に配置され前記パッケージ内の温度を検出する温度センサと、前記発熱回路の駆動量を検出する駆動量検出回路と、前記対象物の目標温度と前記駆動量検出回路で検出した駆動量検出値とから、前記対象物の位置と前記温度センサの位置とのずれにより生じる、温度偏差を加味した前記対象物の目標温度であるターゲット温度を生成するターゲット温度生成回路と、前記温度センサで検出された検出温度と前記ターゲット温度とが一致するように前記発熱回路を制御する駆動回路と、を備え、前記駆動量検出回路で検出した前記駆動量検出値に含まれる前記発熱回路の駆動量の二次以上の変動成分による前記対象物の温度への影響を、前記温度センサの検出信号又は前記ターゲット温度を調整することでキャンセルし、さらに、調整された前記温度センサの検出信号又は調整された前記ターゲット温度に含まれる、電源電圧変動によって生じる変動成分による前記対象物の温度への影響をキャンセルすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、より高精度に温度制御を行うことができ、例えば発振制御回路においては、温度変動に伴う周波数温度変動をより抑制することができ、発振制御の精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の発振制御回路の一例を示す回路図である。
図2】従来の発振制御回路の動作説明に供する説明図である。
図3】従来の発振制御回路の特性を説明するための特性図である。
図4】従来の発振制御回路の動作説明に供する特性図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る発振制御回路の一例を示すブロック図である。
図6】N次補正回路の一例を示す回路図である。
図7】第2実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図8】第3実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図9】第4実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図10】第5実施形態に係る発振制御回路の一例を示すブロック図である。
図11】アナログ回路で構成した乗算器の一例を示す回路図である。
図12図11の乗算器の特性の一例を示す特性図である。
図13】デジタル回路で構成した乗算器の一例を示すブロック図である。
図14】第6実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図15】第7実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図16】第8実施形態に係る温度制御回路の一例を示すブロック図である。
図17】従来の発振制御回路の動作説明に供する説明図である。
図18】従来の発振制御回路の熱抵抗モデルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものである。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
<N次のエラー成分が残る要因>
まず、上記従来の1次の補正を行う方法において、N次のエラー成分が残る要因について説明する。
特許文献1には、集積回路ICのターゲット温度を1次の補正成分でシフトすることにより、温度制御を行う温度制御回路が示されている。この温度制御回路は、図1に示すように、温度センサ(温度検出回路)TSと、アンプOPCと、ヒータ電流源HPと、ヒータ抵抗HRと、による熱フィードバックにより、環境温度Taの温度に応じて、ヒータ電流量Ihを制御している。例えば、環境温度Taが高温であれば、環境温度Taの影響を受けて集積回路ICの温度も比較的高いため、ヒータ発熱量は少なくてすみ、その結果ヒータ電流は低くなる。つまり、ヒータ電流源HPを流れる電流値を検出するためのレプリカ電流源PDCPの電流値は、集積回路ICと外気の温度差Tgt-Taに比例する。このレプリカ電流値Tgt-Taを抵抗RACに流して得られる「ターゲット温度シフト量ΔTgt」は、集積回路ICと外気の温度差Tgt-Taに比例する。これにより、環境温度Taの変化に対し、ターゲット温度を1次でシフトさせる機能を実現している。
【0017】
ここで、ヒータ電流源HPとレプリカ電流源PDCPとは、PMOS素子同士がミラー接続されたミラー回路を構成しており、ミラー比が非常に大きいことが、ターゲット温度制御に非線形成分(N次成分)が加わる要因となっている。
つまり、電流値の典型例としては、IC温度を上昇させるため、ヒータ電流源HPの電流値は数百〔mA〕のオーダーとなる。また、レプリカ電流源PDCPの電流値は、不要な発熱オフセットを防ぐため、例えば数十〔μA〕オーダーとなる。そのため、ヒータ電流源HPとレプリカ電流源PDCPとの電流ミラー比の典型例は、「数百〔mA〕/数十〔μA〕=数万」となり、非常に大きなものとなる。このミラー比の値が非常に大きいことが、電流ミラーの非線形性を生んでいる。
【0018】
ここで、ミラー比は、ミラー元とミラー先との、MOSトランジスタのサイズパラメータW/Lの比で決まる。ここでWはチャネル幅、Lはチャネル長を示す。
ミラー比を例えば「10,000」としようとした場合には、W値のみで「10,000」もの比を実現することは非現実的である。そのため図2の例のように、ミラー先側でチャネル長Lを長くするという手段がとられる。
しかし、L値が異なる事によりミラー元とミラー先のPMOS素子のゲート電圧閾値Vthが異なるものになる。
【0019】
ここで、ミラー元MOS素子のサイズ及び電圧閾値をW1/L1及びVth1、ミラー先MOS素子のサイズ及び電圧閾値をW2/L2及びVth2、両方のMOS素子のゲート及びソース間電圧をVgs、電流ミラー比をMとすると、次式(2)が成り立つ。

={(W2/L2)/(W1/L1)}×{(Vgs-Vth2)/(Vgs-Vth1)} ……(2)
Vth1=Vth2であればミラー比はW/Lの比となるが、図2に示すように、ミラー先とミラー元とで、チャネル長が異なることから、電圧閾値はVth1≠Vth2であるため、ミラー比MがVgsに依存してしまう。すなわちミラー比Mがヒータ電流Ihに依存してしまう。
【0020】
図2に示すミラー回路において、電源電圧が3.3〔V〕、PMOSのドレイン電圧を0〔V〕とした場合の電流値および電流ミラー比のシミュレーション結果は図3に示す通りとなる。図3(a)は、ヒータ電流値(Ih)とレプリカ電流値(Irep)との関係を示す。図3(b)はヒータ電流値(Ih)と電流ミラー比(Ih/Irep)との関係を示す。
電流ミラー比は図3(b)に示すように、固定値10,000とはならず、ヒータ電流値に対して非線形に変動している。
【0021】
このレプリカ電流を用いてICのターゲット温度を1次で補正しようとした場合、ミラー比が変動するために、図4に示すように、余計な非線形成分(N次の成分(NはN>1の整数)がターゲット温度に加わってしまう。そのため、共振子にもN次の成分が残ってしまう。つまり、このN次のエラー成分を低減する必要がある。なお、図4において横軸は環境温度Ta、縦軸は共振子温度又は集積回路ICのターゲット温度を示す。
そこで、ターゲット温度補正を、1次ではなく、N次(NはN>1の整数)とすることで、N次成分を除去することができる。
【0022】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態は、温度変動による発振周波数の変動を抑制するようにした発振制御回路において、ターゲット温度補正を、1次ではなく、N次(NはN>1の整数)とすることで、N次成分を除去するようにしたものである。
【0023】
図5は、本発明の第1実施形態に係る発振制御回路1-1の一例を示すブロック図である。図5に示すように、発振制御回路1-1は、ターゲット温度生成回路11と、温度センサ12と、差動アンプ13と、駆動量検出回路としてのヒータ電流検出回路14と、ヒータ電流ドライバ15と、ヒータ抵抗(発熱回路としてのヒータ)16と、N次補正回路17と、発振回路18と、温度制御の対象物としての共振子19と、を備え、発振回路18と共振子19とで電圧制御水晶発振器(VCXO)を形成している。ターゲット温度生成回路11と、温度センサ12と、差動アンプ13と、ヒータ電流検出回路14と、ヒータ電流ドライバ15と、N次補正回路17と、発振回路18とが、集積回路ICとして形成され、集積回路ICと、ヒータ抵抗(ヒータ)16と、共振子19とが、パッケージ(図示せず)に収納され、モジュールを形成している。差動アンプ13及びヒータ電流ドライバ15が駆動回路に対応し、N次補正回路17がキャンセル回路に対応している。
【0024】
ターゲット温度生成回路11は、オペアンプOP1を有し、オペアンプOP1の「+入力」に共振子19の目標温度相当の一定電圧である基準電圧を入力し、「-入力」にヒータ電流検出回路14の出力(駆動量検出値)と、オペアンプOP1の出力を抵抗Rを介して入力することで、共振子19の周囲温度を加熱するために必要な発熱量相当の信号が出力される。
温度センサ12は、パッケージ内部の温度を測定し検出信号を差動アンプ13に出力する。差動アンプ13の一方の入力端子には温度センサ12の検出信号が入力され、他方の入力端子には、ターゲット温度生成回路11の出力信号が入力される。差動アンプ13は、ターゲット温度生成回路11の出力信号と温度センサ12の検出信号との差分をとり、差分値をヒータ電流検出回路14及びヒータ電流ドライバ15に出力する。
【0025】
ヒータ電流検出回路14は、PMOS素子14aを備え、PMOS素子14aのソースは電源VDDに接続されドレインはオペアンプOP1の「-入力」に接続される。PMOS素子14aのゲートには、差動アンプ13の出力が入力される。
ヒータ電流ドライバ15は、電源VDD及び接地電位間に接続されたPMOS素子15aを備え、PMOS素子15aのドレインと接地電位との間にヒータ抵抗つまりヒータ16が接続される。PMOS素子15aのゲートには、差動アンプ13の出力が入力される。ヒータ電流検出回路14のPMOS素子14aと、ヒータ電流ドライバ15のPMOS素子15aとはミラー回路を構成している。
【0026】
N次補正回路17は、ターゲット温度生成回路11のオペアンプOP1の出力を入力し、入力信号に対し、2次以上のN次(NはN>1の整数)の出力信号を生成し補正信号として発振回路18に出力する。N次補正回路17は、例えば、特許文献2に記載されている、図6に示すN次成分発生回路を適用することができる。N次補正回路17は、図6に示すN次成分発生回路に限るものではなく、その他の公知のN次成分発生回路であっても適用することができる。
【0027】
発振回路18は、ソースとドレインを短絡したNMOS素子からなる可変容量トランジスタ18a及び18bと、可変容量トランジスタ18aのソースおよびドレイン端と可変容量トランジスタ18bのソースおよびドレイン端との間に接続される、反転信号を出力する増幅器18c及び抵抗18dと、可変容量トランジスタ18bのソースおよびドレイン端に接続される増幅器18eとを備える。可変容量トランジスタ18a及び18b間には、さらに抵抗18dと並列に共振子19が接続される。
可変容量トランジスタ18a及び18bのゲートには、N次補正回路17から出力される補正信号が入力され、補正信号に応じて可変容量トランジスタ18a及び18bの容量値が調整される。これにより、共振子19の出力周波数が調整されて発振信号として出力される。共振子19は、水晶振動子、MEMS振動子、また、他の振動子を適用することができる。
【0028】
このような構成を有する発振制御回路1-1においては、ターゲット温度生成回路11で設定されるターゲット温度Tgtと、温度センサ12で検出されるパッケージ内温度との差分が差動アンプ13で検出され、ターゲット温度Tgtがパッケージ内温度と一致するようにヒータ電流ドライバ15が駆動され、そのときのヒータ電流がヒータ電流検出回路14で検出されてターゲット温度生成回路11に入力される。一方、N次補正回路17では、ターゲット信号Tgtを入力としてN次(NはN>1の整数)の補正信号が生成され、このN次の補正信号に応じて発振回路18により共振子19が制御され、共振子19の周波数がN次の補正信号が反映された周波数に制御される。
【0029】
発振制御回路1-1の熱フィードバックループにより、温度センサ12の検出温度がターゲット温度Tgtに一致するように、ヒータ電流量が制御される。すなわちヒータ電流量は、パッケージ内部の温度上昇量、言い換えるとターゲット温度Tgtと環境温度Taとの差に比例する量に収束する。よって、ヒータ電流ドライバのミラー電流源であるヒータ電流検出回路14の出力も、環境温度Taに対して1次の依存性を持ち、環境温度Taの状態を表す電気信号として用いる事ができる。
ここで、熱フィードバックループによる制御が行われていても、共振子19の温度は前述(1)式の通りターゲット温度Tgtに完全には一致せず、環境温度Taに対して1次の依存性をもって変動する。そこで、この共振子19の1次の温度変化を相殺すべく、この回路構成ではターゲット温度Tgtを環境温度Taに対して1次で変化させる事で、共振子19の温度を一定に維持する。そのための手段として、ヒータ電流検出回路14の出力に対し1次の依存性を持つように、ターゲット温度Tgtを変化させている。
【0030】
また、このとき、N次補正回路17によりターゲット温度生成回路11の出力信号を入力としてN次の補正信号を生成し、この補正信号に応じて発振回路18の可変容量を調整している。そのため、ヒータ電流検出出力に含まれる非線形成分による周波数変動を打ち消すように発振回路18の可変容量が調整され、共振子19の発振周波数がN次(NはN>1の整数)の補正信号で補正されることになる。その結果、ターゲット温度生成回路11の出力信号によりヒータ電流を調整することで共振子19の周囲温度の調整を行って温度変動による周波数変動を抑制することができる。さらに、ヒータ電流を検出するためのミラー回路であるヒータ電流検出回路14に非線形成分が付加されたとしても、共振子19の周波数をN次の補正信号で補正することによって、非線形成分により生じる発振周波数変動に与える影響を抑制することができる。その結果、温度変動により生じる発振周波数変動を、より抑制することができ、共振子19の発振周波数が目標とする周波数となるように、より高精度に制御することができる。
【0031】
また、N次補正回路17により、ターゲット温度生成回路11、差動アンプ13、ヒータ電流ドライバ15、ヒータ電流検出回路14からなる熱制御系ループを調整するのではなく、発振回路18の可変容量を調整するようにしているため、N次補正回路17により熱制御系ループを調整することにより、却って熱制御系の安定性を損なうことなく、調整することができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、集積回路ICの温度を一定に制御するようにした温度制御回路であって、N次補正回路17によって、温度センサ12の検出信号を補正することで、集積回路ICの温度すなわちパッケージ内の温度をより高精度に目標温度に一致させるようにしたものである。
【0033】
図7は、第2実施形態に係る温度制御回路2-1の一例を示すブロック図である。なお、図5に示す第1実施形態に係る発振制御回路1-1は、温度制御を行うことで発振周波数を目標値に一致させるようにしたものであり、温度制御処理については、温度制御回路2-1における温度制御処理と同様の処理を含んでいるため、図7の温度制御回路2-1において、発振制御回路1―1と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
温度制御回路2-1は、図7に示すように、N次補正回路17の出力は温度センサ12の検出信号に加算される。
【0034】
すなわち、温度制御回路2-1は、ターゲット温度生成回路11と、温度センサ12と、差動アンプ13と、ヒータ電流検出回路14と、ヒータ電流ドライバ15と、ヒータ抵抗(ヒータ)16と、N次補正回路(N>1)17とを備え、さらに加算器21と、ヒータ電流検出回路22とを備えている。ターゲット温度生成回路11と、温度センサ12と、差動アンプ13と、ヒータ電流検出回路14と、ヒータ電流ドライバ15と、N次補正回路17と、加算器21と、ヒータ電流検出回路22とが集積回路ICとして形成され、集積回路IC及びヒータ抵抗(ヒータ)16が、パッケージ(図示せず)に収納され、モジュールを形成している。
【0035】
加算器21は、N次補正回路17の出力信号と温度センサ12の検出信号とを加算する。
ヒータ電流検出回路22は、PMOS素子22aを含み、PMOS素子22aのソースが電源VDDに接続され、ドレインがN次補正回路17の入力端に接続され、ゲートに差動アンプ13の出力が入力される。差動アンプ13の出力は,PMOS素子22aと共に、ヒータ電流検出回路14のPMOS素子14a及びヒータ電流ドライバ15のPMOS素子15aにも入力され、ヒータ電流検出回路22と、ヒータ電流検出回路14と、ヒータ電流ドライバ15とは、ミラー回路を構成している。
【0036】
このような温度制御回路2-1において、ヒータ電流検出回路22で検出されたヒータ電流を入力としてN次補正回路17がN次(NはN>1の整数)の補正信号を生成し、生成した補正信号は温度センサ12の検出信号に加算される。そして、補正信号が加算された温度センサ12の検出信号と、ターゲット温度生成回路11の出力信号との差分信号が差動アンプ13で算出され、この差分信号に基づき、ヒータ電流検出回路14及び22と、ヒータ電流ドライバ15とが制御される。
【0037】
このように、第二実施形態における温度制御回路2-1は、ヒータ電流検出回路22で検出されたヒータ電流を入力としてN次の補正信号が形成され、この補正信号が加算器21により温度センサ12の検出信号に加算される。そして、この補正信号が加算された温度センサ12の検出信号とターゲット温度生成回路11の出力信号とが一致するように制御される。その結果、温度変動による周波数変動を抑制することができると共に、ヒータ電流を検出するためのミラー回路であるヒータ電流検出回路14およびヒータ電流検出回路22に非線形成分が付加されたとしても、この非線形成分による温度変動を含めて温度制御を行うことができ、より高精度に温度調整を行うことができる。
第2実施形態において、N次補正回路17がN次成分第1生成回路に対応し、加算器21が加算回路に対応し、N次補正回路17及び加算器21がキャンセル回路に対応している。
【0038】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態は、第2実施形態における温度制御回路2-1において、N次補正回路17に変えてN次補正回路17aを設け、加算器21及びヒータ電流検出回路22を取り除いたものである。
すなわち、図8に示すように、温度制御回路2-2は、ターゲット温度生成回路11と差動アンプ13との間にN次補正回路17aを備える。N次補正回路17aは、ターゲット温度生成回路11の出力信号を入力とし、1次以上のN次(N≧1)の出力信号を生成し補正信号として出力する。
【0039】
差動アンプ13は、温度センサ12の検出信号とN次補正回路17aから出力されるN次(NはN≧1の整数)の補正信号との差分が零となるように、ヒータ電流を制御する。
したがって、この場合も第2実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
第3実施形態において、N次補正回路17aがN次成分第2生成回路及びキャンセル回路に対応している。
【0040】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態は、第3実施形態における温度制御回路2-2において、N次補正回路17aの配置位置を変え、ターゲット温度生成回路11に替えてターゲット温度生成回路11aを備えている。
図9に示す温度制御回路2-3は、ヒータ電流検出回路14の出力側、つまりPMOS素子14aのドレイン側に電流電圧変換回路23を設け、ヒータ電流検出回路14から出力されるヒータ電流を電流電圧変換回路23で電圧信号に変換し、この電圧変換信号をN次補正回路17aに入力し、N次補正回路17aの出力をターゲット温度生成回路11aに入力する。
【0041】
N次補正回路17aは、ヒータ電流の電圧相当値に変換され、1次以上のN次(N≧1)の補正信号を出力する。ターゲット温度生成回路11aのオペアンプOP1は、N次の補正信号を抵抗R2を介して入力する。つまり、オペアンプOP1の「-入力」には、ターゲット温度生成回路11aの出力信号と、N次補正回路17aのN次の補正信号とが入力される。
差動アンプ13は、ターゲット温度生成回路11aの出力信号と温度センサ12の検出信号との差分が零となるように、ヒータ電流を制御する。したがって、この場合も第3実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0042】
上記第4実施形態において、N次補正回路17aがN次成分第2生成回路及びキャンセル回路に対応している。
なお、上記第2から第4実施形態における温度制御回路2-1~2-3では、集積回路ICが温度センサ12により検出する温度が目標温度に一致するように、より高精度に制御することができる。そのため、温度制御回路2-1~2-3を、例えば、第1実施形態における発振制御回路1-1のように、共振子の発振周波数を制御する発振制御回路等、温度制御が必要な任意の回路に適用すれば温度変動に伴う任意の回路における特性変動を抑制することができる。
【0043】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
第5実施形態は、図5に示す第1実施形態における発振制御回路1-1において、さらに電源VDDの電圧変動を考慮するようにしたものである。
第5実施形態における発振制御回路1―2は、図10に示すように、第1実施形態における発振制御回路1-1において、さらにターゲット温度生成回路11と差動アンプ13との間に乗算器24を備える。電源変動キャンセル回路としての乗算器24は、ターゲット温度生成回路11の出力信号と電源VDDの電圧とを乗算し、乗算結果が、差動アンプ13に入力されると共に、N次補正回路17に入力される。
【0044】
つまり、集積回路ICから見た発振制御回路1-2のパッケージの熱抵抗をθa[℃/W]、電源VDDの電圧をVDD[V](以下、電源電圧VDDともいう。)、ヒータ電流をIh[A]とおくと、次式(3)が成り立つ。
Ih=(Tgt-Ta)/(θa×VDD) ……(3)
(3)式から、ヒータ電流Ihは電源VDDに反比例する。
ここで、上記第1から第4実施形態におけるN次補正回路17及び17aでは、ターゲット温度TgtのN次の補正成分を、ヒータ電流量Ihに比例するように生成している。
ある電源電圧VDDにて生成したN次の補正成分が、発振周波数の温度変動を過不足無く打ち消したとする。
【0045】
この状態で、電源電圧VDDが変動した場合、(3)式から、ヒータ電流Ihは電源電圧VDDに反比例して変動することがわかる。その結果、ターゲット温度のN次の補正成分も、電源電圧VDDに反比例して変動してしまい、結果的に、発振周波数の温度変動が生じる。
つまり、電源電圧VDDが低下するとN次の補正成分による補償が過剰となり、電源電圧VDDが上昇すると逆にN次の補正成分による補償が不足する。
これを回避するために、N次の補正量を電源電圧VDDに比例させる。これにより、電源電圧VDDの変化に伴い生じるN次の補正成分の変動を抑制することができ、N次の補正成分による補正をより高精度に行うことができる。そのため、温度制御をより高精度に行うことができ、その結果、周波数制御をより高精度に行うことができる。
【0046】
乗算器24は、例えば、図11に示す構成を有する。
乗算器24は、差動対電流生成部31と、電源部32と、PMOS受け差動対部33とを備える。
差動対電流生成部31は、電源電圧VDDと接地電位との間に直列に接続される、PMOS素子M1及び抵抗値がR0の抵抗R31と、ソースが電源電圧VDDに接続されPMOS素子M1とミラー接続されたPMOS素子M2と、増幅器AMP1と、を備える。増幅器AMP1の「-入力」には、ターゲット温度生成回路11の出力Vtgt〔V〕が入力され、「+入力」には、PMOS素子M1と抵抗R31との接続点の電圧が入力される。増幅器AMP1の出力はPMOS素子M1及びPMOS素子M2のゲートに入力される。
【0047】
電源部32は、電源電圧VDDと接地電位との間に直列に接続された抵抗R321及びR322を有する分圧回路を備える。この分圧回路は電源電圧がTypicalVDD(実使用条件における典型的な電源電圧値)であるときに、例えば1.2Vを出力するように構成される。
PMOS受け差動対部33は、PMOS素子M3及びPMOS素子M3のドレインに一端が接続される抵抗ロードR331と、PMOS素子M4及びPMOS素子M4のドレインに一端が接続される抵抗ロードR332と、バンドギャップリファレンス回路33aとを備え、PMOS素子M3及びM4のソースは差動対電流生成部31のPMOS素子M2のドレインに接続され、抵抗ロードR331及びR332の他端が接地電位に接続される。
【0048】
PMOS素子M3のゲートには、電源部32に含まれる分圧回路の出力が入力される。PMOS素子M4のゲートには、バンドギャップリファレンス回路33aの出力が入力され、電源電圧VDDの大きさに関係なくリファレンス電圧1.2Vが印加される。
そして、PMOS素子M4のドレイン電圧が、乗算器出力電圧Voutとして出力される。
このような構成を有する乗算器24は、差動対電流生成部31により、PMOS受け差動対部33に向けて、Itail=Vtgt/R0の電流が生成される。
乗算器24の出力電圧Voutは、抵抗ロード(片側2R0)R332に流れる電流で決定される。
【0049】
電源電圧がTypical VDDである時には、PMOS受け差動対部33のPMOS素子M3及びPMOS素子M4のゲートへの入力が共に1.2Vで釣り合い、その結果、抵抗ロードR331及び抵抗ロードR332には、Itail/2の電流(=Vtgt/(2R0))が流れる。すなわちVout=2R0×{Vtgt/(2R0)}=Vtgtとなる。
一方、電源電圧VDDが増加しきると、出力電圧Voutは2Vtgtとなり、逆に電源電圧VDDが減少しきると、出力電圧Voutは0Vとなる。
【0050】
以上の動作から、横軸を電源電圧VDD、縦軸を出力電圧Voutとして特性グラフを描くと図12で表すことができる。
図12に示すように、乗算器24の出力電圧Voutは、電源電圧VDDがTypical VDDの近傍であるときには線形性を有し、Typical VDDよりもある程度大きい領域及びある程度低い領域の電圧である場合には、非線形性を有する。そのため、出力特性が線形性を有する領域では、電源電圧VDDとの乗算器とみなすことができる。
【0051】
次に、乗算器24を、デジタル回路で構成した場合には、例えば、図13に示す回路となる。
乗算器24は、電源部41と、バンドギャップリファレンス回路42と、デジタル除算器43と、デジタル乗算器44とを備える。
電源部41は、電源電圧VDD及び接地電位間に直列に接続される、抵抗R41及びR42を備え、分圧回路を構成している。分圧回路は、電源電圧がTypical VDDであるときに、1.2Vを出力する。
バンドギャップリファレンス回路42は電源電圧VDDの大きさに関わらず、リファレンス電圧1.2Vを出力する。
【0052】
電源部41の出力電圧はA/D変換器41aを介してデジタル除算器43の「X入力」として入力され、バンドギャップリファレンス回路42の出力はA/D変換器42bを介してデジタル除算器43の「Y入力」として入力される。バンドギャップリファレンス回路42は、「X入力」を「Y入力」で割り算した「X÷Y」を除算器出力とする。デジタル除算器43の除算器出力はTypical VDDに対する電源電圧VDDの変動割合を示す。
デジタル乗算器44は、デジタル除算器43の除算器出力を「X入力」とし、ターゲット温度生成回路11の出力を「A/D変換器43a」で変換したデジタル信号をY入力とし、除算器出力とターゲット温度生成回路11の出力信号とを乗算し、乗算結果「X*Y」を出力する。乗算結果「X*Y」は、D/A変換器44bでアナログ信号に変換され、乗算器出力として出力される。
【0053】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
第6実施形態は、図8に示す第3実施形態における温度制御回路2-2において、さらに、電源電圧VDDの変動を考慮するようにしたものである。
第6実施形態における温度制御回路2-4は、図14に示すように、第3実施形態における温度制御回路2-2において、さらに、ターゲット温度生成回路11とN次補正回路(N≧1)17aとの間に乗算器24を備える。電源変動キャンセル回路としての乗算器24は、ターゲット温度生成回路11の出力信号と電源電圧VDDとを乗算し、乗算結果が、N次補正回路17aに入力される。
【0054】
N次補正回路17aは、ターゲット温度生成回路11の出力信号と電源電圧VDDとの乗算結果を入力とし、1次以上のN次(NはN≧1の整数)の補正信号を生成し、差動アンプ13に出力する。
差動アンプ13は、ターゲット温度生成回路11の出力信号及び電源電圧VDDの乗算値と、温度センサ12の検出信号と、が一致するようにヒータ電流を制御する。したがって、この場合も、上記第3実施形態における温度制御回路2-2と同等の作用効果を得ることができると共に、さらに電源電圧VDDの変動を考慮してヒータ電流を制御しているため、電源電圧VDDの変動が、温度制御に与える影響を抑制し、より高精度に温度制御を行うことができる。
【0055】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態を説明する。
第7実施形態は、図7に示す第2実施形態における温度制御回路2-1において、さらに電源電圧VDDの変動を考慮するようにしたものである。
第7実施形態における温度制御回路2-5は、図15に示すように、第2実施形態における温度制御回路2―1において、ヒータ電流検出回路22の出力とN次補正回路17との間にさらに乗算器24を備える。電源変動キャンセル回路としての乗算器24は、ヒータ電流検出回路22の出力と電源電圧VDDとを乗算し、乗算結果が、N次補正回路17に入力される。
【0056】
そして、差動アンプ13は、電源電圧VDDの変動を考慮したN次(NはN>1の整数)の補正信号と温度センサ12の検出信号との加算値と、ターゲット温度生成回路11の出力信号とが一致するようにヒータ電流を制御する。したがって、この場合も上記第2実施形態における温度制御回路2-1と同等の作用効果を得ることができると共に、さらに電源電圧VDDを考慮してヒータ電流を制御しているため、より高精度に温度制御を行うことができる。
なお、第6実施形態及び第7実施形態においては、各温度制御回路2-4、2-5では、集積回路ICが置かれた環境温度が目標温度に一致するように、より高精度に制御することができる。そのため、温度制御回路2-4、2-5を、例えば、第1実施形態における発振制御回路1-1のように、共振子の発振周波数を制御する発振制御回路等、温度制御が必要な任意の回路に適用すれば温度変動に伴う任意の回路の特性変動を抑制することができる。
【0057】
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態を説明する。
第8実施形態は、図16に示すように、図5に示す発振制御回路1-1において、さらに不揮発性メモリと不揮発性メモリへのアクセスを行うインタフェースとを含む記憶処理部25を備える。
第8実施形態に係る発振制御回路1-3は、記憶処理部25では、N次補正回路17の出力を、個体間のばらつき等に応じて補正するための補正データや、発振制御回路1-3に含まれる各部の様々な製造ばらつきを調整するためのデータ等といった調整用データを不揮発性メモリに保持する。
【0058】
発振制御回路1-3の制御を行う図示しない制御装置では、例えば、出荷前に各種の調整用データを検出して、記憶処理部25の不揮発性メモリに格納し、出荷後、記憶処理部25の不揮発性メモリに格納した各種調整用データを用いて、発振制御を行う。これによって、個体間ばらつき等の影響による誤差を低減することができ、すなわち発振制御回路1-3の制御精度をより向上させることができる。
なお、第8実施形態では、発振制御回路1-1に適用した場合について説明したが、これに限らず、第2から第7実施形態における各発振制御回路1-2、または、温度制御回路2-1~2-5に適用することも可能であり、この場合も上記第8実施形態における発振制御回路1-3と同等の作用効果を得ることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、温度センサ12の検出信号、ターゲット温度生成回路11の出力信号、ヒータ電流検出回路14の出力信号を、N次補正回路17又は17aによって補正する場合について説明したが、これらに限るものではなく、例えば差動アンプ13とヒータ電流ドライバ15との間の信号を補正することも可能であり、ヒータ電流の制御系、また、共振子19を備えている場合には共振子19の制御系のうち、ヒータ電流又は共振子19の駆動信号を、N次の補正信号を加味した駆動信号に補正し得る箇所で補正すればよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、対象物として共振子の温度制御を行う場合について説明したが、共振子に限るものではなく、圧電素子等であってもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0061】
1-1~1-3 発振制御回路
2-1~2-5 温度制御回路
11、11a ターゲット温度生成回路
12 温度センサ
13 差動アンプ
14 ヒータ電流検出回路
15 ヒータ電流ドライバ
16 ヒータ抵抗(ヒータ)
17、17a N次補正回路
18 発振回路
19 共振子
21 加算器
22 ヒータ電流検出回路
23 電流電圧変換回路
24 乗算器
25 記憶処理部
図1
図2
図3
図4
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