(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】流体制御装置、流体制御システム、診断方法、及び、流体制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20240216BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
F16K51/00 F
(21)【出願番号】P 2020038849
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019045190
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019118986
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】松本 颯太
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】今里 裕子
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110066(WO,A1)
【文献】特開2017-191597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた流体抵抗と、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、
前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、
前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、
前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、
前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、を備え
、
前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの測定圧力がほぼ一致して以降において、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力の変化傾向に基づいて、前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定し、前記変化傾向は、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力の時間変化の傾向である流体制御装置。
【請求項2】
前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が上昇している場合には、前記第1バルブにシートリークが発生していると判定する請求項
1記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が低下している場合には、前記第2バルブにシートリークが発生していると判定する請求項
1又は2記載の流体制御装置。
【請求項4】
流路に設けられた流体抵抗と、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、
前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、
前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、
前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、
前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、
前記バルブ制御器が前記第1バルブを全閉し、前記第2バルブを開放している状態において、前記第2圧力センサの測定圧力とその時間変化率に基づいて前記第2圧力センサを診断する診断部とを備え、
前記診断部が、前記第2圧力センサの測定圧力の時間変化率がほぼゼロで、測定圧力が所定値に保たれている場合に前記第2圧力センサにゼロ点シフトが発生していないと診断する流体制御装置。
【請求項5】
前記診断部が、前記バルブ制御器が前記第1バルブを開放し、前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1圧力センサを診断する請求項
4記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記診断部が、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサの各測定圧力がほぼ等しい場合に前記第1圧力センサにゼロ点シフトが発生していないと診断する請求項
5記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記シートリーク判定部が前記第1バルブ及び前記第2バルブにシートリークが発生していないと判定している場合のみ、前記診断部に前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの診断を実行させる診断トリガをさらに備えた請求項
4乃至6の何れか一項に記載の流体制御装置。
【請求項8】
前記第1バルブの上流側の圧力を測定する供給圧センサ、をさらに備え、
前記バルブ制御器が、少なくとも前記第1バルブ及び前記第2バルブを開放し、前記供給圧センサの上流側に設けられている前段バルブが全閉されている状態において、
前記診断部が、前記供給圧センサ、前記第1圧力センサ、及び、前記第2圧力センサの各測定圧力がほぼ等しい場合に前記供給圧センサ、前記第1圧力センサ、及び、前記第2圧力センサのそれぞれにゼロ点シフトが発生していないと診断する請求項
4乃至7の何れか一項に記載の流体制御装置。
【請求項9】
前記バルブ制御器が、少なくとも前記第1バルブと前記第2バルブとを全閉し、前記前段バルブが開放されている状態において、
前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が上昇している場合に前記第1バルブにシートリークが発生していると判定する請求項
8記載の流体制御装置。
【請求項10】
前記バルブ制御器が、前記第1バルブを開放し、前記第2バルブを全閉した状態で所定時間経過した後に前記第1バルブと前記第2バルブとを全閉した状態において、
前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が低下している場合に前記第2バルブにシートリークが発生していると判定する請求項
9記載の流体制御装置。
【請求項11】
前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記流体抵抗を流れる流体の流量である抵抗流量を算出する抵抗流量算出部をさらに備え、
前記バルブ制御器が、前記第1バルブを全閉し、前記第2バルブを開放した状態において、前記診断部が、前記第1圧力センサの測定圧力の変化に基づいて前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量を検定する請求項
10記載の流体制御装置。
【請求項12】
流路に設けられた流体抵抗と、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、
前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、
前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、
前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、
前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、を備え、
前記シートリーク判定部が、
前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて、前記第1バルブ又は前記第2バルブのシートリーク量を算出するシートリーク算出部と、
前記シートリーク算出部で算出されるシートリーク量と、予め定められた基準値とを比較して、前記第1バルブ又は前記第2バルブのシートリークの有無に関する判定結果を出力するシートリーク比較部と、からなり、
少なくとも前記シートリーク算出部を具備し、異常の程度を示す異常量を出力する異常量算出部と、
少なくとも前記シートリーク比較部を具備し、異常の有無を出力する異常判定部と、をさらに備えた
流体制御装置。
【請求項13】
前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記流体抵抗を流れる流体の流量である抵抗流量を算出する抵抗流量算出部をさらに備え、
前記異常量算出部が、
前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサのゼロ点シフト量を算出するセンサシフト算出部と、
前記抵抗流量算出部が算出する抵抗流量と、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて算出される基準流量と、に基づいて抵抗流量の流量精度を算出する流量精度算出部と、をさらに備えた請求項
12記載の流体制御装置。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載の複数の流体制御装置と、
複数の前記流体制御装置の各異常量算出部から出力される異常量、又は、各異常判定部から出力される異常の有無を取得し、各流体制御装置について異常量又は異常の有無を一覧表示する状態表示部と、を備えた流体制御システム。
【請求項15】
流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、
前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、を備えた流体制御装置の診断方法であって、
前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉するバルブ制御ステップと、
前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定ステップと、を備え
、
前記シートリーク判定ステップは、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの測定圧力がほぼ一致して以降において、前記第1圧力センサの測定圧力又は前記第2圧力センサの測定圧力の時間変化の傾向である変化傾向に基づいて、前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定する診断方法。
【請求項16】
流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、
前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、
前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、としての機能をコンピュータに発揮させ
、
前記シートリーク判定部は、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの測定圧力がほぼ一致して以降において、前記第1圧力センサの測定圧力又は前記第2圧力センサの測定圧力の時間変化の傾向である変化傾向に基づいて、前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定する流体制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体抵抗の上流側と下流側のそれぞれにバルブが設けられた流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば原子一層分を成膜するALDプロセスのような半導体製造プロセスでは、チャンバに対してガスの供給と停止とがごく短いサイクルで繰り返される(特許文献1参照)。
【0003】
このような用途ではガスの流量を短時間で設定流量に追従させるために、2つのバルブを備え、それぞれでガスの圧力と流量を個別に制御する流体制御装置が用いられることがある。
【0004】
ところで、前述した流体制御装置はバルブが閉止されている状態では確実に下流側にガスが流れないことも求められる。このため、2つのバルブのそれぞれについてシートリークについて定期的に診断を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、2つのバルブについて短時間で正確にシートリークの有無を判定することができる流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る流体制御装置は、流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、前記第1バルブ又は前記第2バルブにシートリークが発生している場合には、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサにより前記第1容積への流体の流入、あるいは、前記第2容積から流体の流出に起因する圧力変化としてシートリークを検知することができる。
【0009】
また、前記第1バルブ又は前記第2バルブのシートリークを検知するためにそれぞれ別々に診断用の動作を行う必要がないので、短時間で診断を終了できる。
【0010】
前記第1バルブ又は前記第2バルブのいずれにシートリークが発生しているかまで判定できるようにするには、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの測定圧力がほぼ一致して以降の前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力の変化傾向に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するものであればよい。また、変化傾向に基づいてシートリークの有無が判定されるので、仮に前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの示す測定圧力にゼロシフト等の誤差が含まれていたとしても判定結果に対して影響がでないようにすることができる。
【0011】
前記第1バルブのシートリークを検出するための具体的な構成例としては、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が上昇している場合には、前記第1バルブにシートリークが発生していると判定するものが挙げられる。このようなものであれば、前記第1バルブにシートリークが発生し、前記第1容積に上流側から流体が流入していることを検知できる。
【0012】
前記第2バルブのシートリークを検出するための具体的な構成例としては、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が低下している場合には、前記第2バルブにシートリークが発生していると判定するものが挙げられる。このようなものであれば、前記第2バルブにシートリークが発生し、前記第2容積から流体が下流側へ流出していることを検知できる。
【0013】
前記第2圧力センサにおいて例えば測定圧力に誤差が発生しているかどうかを診断できるようにするには、前記バルブ制御器が前記第1バルブを全閉し、前記第2バルブを開放している状態において、前記第2圧力センサの測定圧力とその時間変化率に基づいて前記第2圧力センサを診断する診断部をさらに備えたものであればよい。
【0014】
前記第2圧力センサを診断するための具体的な構成例としては、前記診断部が、前記第2圧力センサの測定圧力の時間変化率がほぼゼロで、測定圧力が所定値に保たれている場合に前記第2圧力センサにゼロ点シフトが発生していないと診断するものが挙げられる。
【0015】
前記第1圧力センサにおいて例えば測定圧力に誤差が発生しているかどうかについて診断できるようにするには、前記診断部が、前記バルブ制御器が前記第1バルブを開放し、前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1圧力センサを診断するものであればよい。
【0016】
前記第1圧力センサを診断するための具体的な構成例としては、前記診断部が、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサの各測定圧力がほぼ等しい場合に前記第1圧力センサにゼロ点シフトが発生していないと診断するものが挙げられる。
【0017】
前記第1バルブ又は前記第2バルブにシートリークが発生していないことが保証された状態で、第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの診断が行われるようにして、診断の信頼性を高められるようにするには、前記シートリーク判定部が前記第1バルブ及び前記第2バルブにシートリークが発生していないと判定している場合のみ、前記診断部に前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの診断を実行させる診断トリガをさらに備えたものであればよい。
【0018】
複数の圧力センサについてそれぞれにゼロ点シフトが発生していないかどうかについて同時に診断できるようにするには、前記第1バルブの上流側の圧力を測定する供給圧センサ、をさらに備え、前記バルブ制御器が、少なくとも前記第1バルブ及び前記第2バルブを開放し、前記供給圧センサの上流側に設けられている前段バルブが全閉されている状態において、前記診断部が、前記供給圧センサ、前記第1圧力センサ、及び、前記第2圧力センサの各測定圧力がほぼ等しい場合に前記供給圧センサ、前記第1圧力センサ、及び、前記第2圧力センサのそれぞれにゼロ点シフトが発生していないと診断するものであればよい。
【0019】
第1バルブのシートリークの有無について判定結果の信頼性が担保されるようにするには、前記バルブ制御器が、少なくとも前記第1バルブと前記第2バルブとを全閉し、前記前段バルブが開放されている状態において、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が上昇している場合に前記第1バルブにシートリークが発生していると判定するものであればよい。このようなものであれば、前記第1バルブの前後にはシートリークの有無を判定するための差圧を発生させつつ、前記第2バルブの前後については圧力をほぼ一致させることができる。したがって、第2バルブにシートリークがあったとしても前記第1バルブと前記第2バルブとの間の容積内から前記第2バルブを介して流出する流体の量は非常に微小なものにでき、前記第1バルブのシートリークの判定結果に対する影響は無視できる。また、前述した各圧力センサのゼロ点シフトに関する診断を予め行っておくことで、前記第1バルブのシートリークの判定結果について基礎となる各圧力センサの誤りが影響を与えていないことも保証できる。
【0020】
例えば前記第1バルブのシートリークが発生していないことを利用して前記第2バルブにおけるシートリークの有無の判定結果に関する信頼性を向上させることができるようにするには、前記バルブ制御器が、前記第1バルブを開放し、前記第2バルブを全閉した状態で所定時間経過した後に前記第1バルブと前記第2バルブとを全閉した状態において、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力が低下している場合に前記第2バルブにシートリークが発生していると判定するものであればよい。またこのようなものであれば、前記第2バルブの前後にはシートリークの有無を判定するための差圧を発生させつつ、前記第1バルブの前後については圧力をほぼ一致させることができる。したがって、仮に前記第1バルブにシートリークがあったとしても、あるいは、前記第1バルブにはシートリークが発生している判定されない程度の閾値以下の出流れがある場合でも、前記第1バルブと前記第2バルブとの間の容積内に上流側から流入する流体の量は非常に微小なものにでき、前記第2バルブの判定結果に対する影響は無視できる。
【0021】
例えば各圧力センサの診断と各バルブにおいてシートリークの有無の判定を行ったあとの流体制御装置内の圧力を利用して、流体装置内の流量の検定を行えるようにするには、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記流体抵抗を流れる流体の流量である抵抗流量を算出する抵抗流量算出部をさらに備え、前記バルブ制御器が、前記第1バルブを全閉し、前記第2バルブを開放した状態において、前記第1圧力センサの測定圧力の変化に基づいて前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量を検定するものが挙げられる。
【0022】
例えばシートリークの有無といった異常の有無だけでなく、異常が発生していない場合でも、どの程度異常に近い状態にあるかを表示することを可能にするには、前記シートリーク判定部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて、前記第1バルブ又は前記第2バルブのシートリーク量を算出するシートリーク算出部と、前記シートリーク算出部で算出されるシートリーク量と、予め定められた基準値とを比較して、前記第1バルブ又は前記第2バルブのシートリークの有無に関する判定結果を出力するシートリーク比較部と、からなり、少なくとも前記シートリーク算出部を具備し、異常の程度を示す異常量を出力する異常量算出部と、少なくとも前記シートリーク比較部を具備し、異常の有無を出力する異常判定部と、をさらに備えたものであればよい。
【0023】
流体制御装置を構成する各機器における異常の進行度を外部に表示できるようになる具体的な態様としては、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記流体抵抗を流れる流体の流量である抵抗流量を算出する抵抗流量算出部をさらに備え、前記異常量算出部が、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサのゼロ点シフト量を算出するセンサシフト算出部と、前記抵抗流量算出部が算出する抵抗流量と、前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサの測定圧力に基づいて算出される基準流量と、に基づいて抵抗流量の流量精度を算出する流量精度算出部と、をさらに備えたものが挙げられる。
【0024】
本発明に係る複数の流体制御装置と、複数の前記流体制御装置の各異常量算出部から出力される異常量、又は、各異常判定部から出力される異常の有無を取得し、各流体制御装置について異常量又は異常の有無を一覧表示する状態表示部と、を備えた流体制御システムであれば、複数の流体制御装置からなる流体制御システムにおいて、どの流体制御装置に異常が発生しているかだけでなく、どの程度異常が進行しているかについてもユーザは状態表示部の出力を参照することで簡単に把握することができる。
【0025】
本発明に係る診断方法は、流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、を備えた流体制御装置の診断方法であって、前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉するバルブ制御ステップと、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定ステップと、を備えた方法である。このような方法であれば、短時間で正確に各バルブのシートリークの有無を判定することができる。
【0026】
既存の流体制御装置において例えばプログラムを更新することで、本発明に係る流体制御装置と同様の効果を享受できるようにするには、流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1バルブと、前記流路において前記第1バルブと前記流体抵抗との間にある第1容積内の圧力を測定する第1圧力センサと、前記流体抵抗の下流側に設けられた第2バルブと、前記流路において前記流体抵抗と前記第2バルブとの間にある第2容積の圧力を測定する第2圧力センサと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、前記第1バルブ又は前記第2バルブを制御するバルブ制御器と、前記バルブ制御器が前記第1バルブ及び前記第2バルブを全閉している状態において、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサの各測定圧力に基づいて前記第1バルブ及び前記第2バルブのシートリークの有無を判定するシートリーク判定部と、としての機能をコンピュータに発揮させる流体制御装置用プログラムを用いれば良い。
【0027】
なお、流体制御装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明に係る流体制御装置であれば、前記第1バルブ及び前記第2バルブについてシートリークが発生した場合に発生する圧力変化を前記第1圧力センサ又は前記第2圧力センサで検知して、2つのバルブについてシートリークの有無を短時間で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態における流体制御装置を示す模式図。
【
図2】第1実施形態におけるシートリークの判定例を示す模式図。
【
図3】第1実施形態における各圧力センサの診断手順を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態における第2圧力センサの診断時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図5】第1実施形態における第1圧力センサの診断時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図6】第2実施形態における診断及び判定手順を示すフローチャート。
【
図7】本発明の第2実施形態における各圧力センサの診断時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図8】本発明の第2実施形態における第1バルブの診断時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図9】本発明の第2実施形態における第2バルブの診断時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図10】本発明の第2実施形態における抵抗流量の検定時における流体制御装置の状態を示す模式図。
【
図11】第2実施形態における一連の診断及び検定における流体制御装置内の圧力変化を示す模式図。
【
図12】本発明の第3実施形態における自己診断機構の構成を示す模式的ブロック図。
【
図13】本発明の第3実施形態における診断及び判定手順を示すフローチャート。
【
図14】本発明の第4実施形態における流体制御システムを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1実施形態における流体制御装置100について各図を参照しながら説明する。
【0031】
この流体制御装置100は、例えば半導体製造プロセスにおいて例えば所定の真空度に保たれたチャンバに対して流体であるガスを設定流量で供給するために用いられるものである。ここで、設定流量は、ある流量値から別の流量値へ階段状に立ち上がる、あるいは、立ち下がるステップ信号である。このステップ信号に対して例えば製造される半導体の品質を満たすように所定時間内に追従するように流体制御装置100は構成してある。
【0032】
すなわち、流体制御装置100は、
図1に示すように、流路に設けられたセンサ、バルブからなる流体機器と、当該流体機器の制御を司る制御演算器と、を備えている。
【0033】
流路に対して上流側から順番に供給圧センサP0、第1バルブV1、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2、第2バルブV2が設けてある。ここで、流体抵抗Rは例えば層流素子であり、その前後に差圧に応じた当該流体抵抗R内に流れるガスの流量が生じる。
【0034】
供給圧センサP0は、上流側から供給されるガスの圧力をモニタリングするためのものである。なお、供給圧センサP0については供給圧が安定していることが保証されている場合等には省略してもよい。
【0035】
第1圧力センサP1は、流路において第1バルブV1と流体抵抗Rとの間における容積である第1容積VL1内にチャージされているガスの圧力(以下、上流側圧力とも言う。)を測定するものである。
【0036】
第2圧力センサP2は、流路において流体抵抗Rと第2バルブV2との間における容積である第2容積VL2にチャージされているガスの圧力(以下、下流側圧力とも言う。)を測定するものである。
【0037】
このように第1圧力センサP1と第2圧力センサP2は、第1バルブV1、流体抵抗R、第2バルブV2で形成される2つの容積である第1容積VL1、第2容積VL2の圧力をそれぞれ測定している。また、別の表現をすると、第1圧力センサP1と第2圧力センサP2は、流体抵抗Rの前後に配置されたそれぞれの容積内の圧力を測定するものである。
【0038】
第1バルブV1、及び、第2バルブV2は、この実施形態では同型のものであり、例えばピエゾ素子によって弁体が弁座に対して駆動されるピエゾバルブである。第1バルブV1は、第1圧力センサP1で測定される上流側圧力と、第2圧力センサP2で測定される下流側圧力から算出される抵抗流量QRに基づいて流量を制御する。一方、流体制御装置100の具備する流体機器において最も下流側に設けられている第2バルブV2は、流体制御装置100から流出するガスのオンオフを制御する。なお、この実施形態では第2バルブV2は、全閉と全開のいずれかの状態のみを取るように制御されるが、第1バルブV1と同様に全閉又は全開だけでなく、それらの間の任意の開度となるように制御されてもよい。
【0039】
次に制御演算器COMについて詳述する。制御演算器は、例えばCPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を具備するいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されている流体制御装置用プログラムが実行されて各種機器が協業することにより、流量制御機能を主に司る抵抗流量算出部1、第1バルブ制御部41及び第2バルブ制御部42からなるバルブ制御器4として機能を発揮する。また、この制御演算器は、診断動作指令部51、シートリーク判定部52、診断トリガ53、診断部54から構成される自己診断機構5としての機能も発揮する。
【0040】
まず、流量制御に関連する各部について詳述する。抵抗流量算出部1は、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2とともにいわゆる圧力式の流量センサである流量測定機構Fを構成するものである。つまり、抵抗流量算出部1は、第1圧力センサP1で測定される上流側圧力と、第2圧力センサP2で測定される下流側圧力、さらには温度センサで測定される流体又は周囲の環境温度を入力として、流体抵抗Rを流れる流体流量である抵抗流量QRを算出し、出力するものである。ここで、抵抗流量算出部1で用いられる流量の算出式は既存のものを用いることができる。
【0041】
第1バルブ制御部41は少なくとも通常動作時においてはユーザによって設定される設定流量と、抵抗流量算出部1で算出される抵抗流量QRに基づいて第1バルブV1を制御する。すなわち、第1バルブ制御部41は、設定流量と抵抗流量の偏差が小さくなるように流量フィードバック制御を行う。
【0042】
第2バルブ制御部42は、少なくとも通常動作時にはユーザによって設定される開閉指令に基づいて、第2バルブV2を全閉状態と開放状態のいずれかに切り替える。例えば開閉指令信号は、第2バルブV2を開放してチャンバに対してガスを供給する供給期間を示すオン信号と、第2バルブV2を閉止してチャンバに対するガスの供給を停止する停止期間を示すオフ信号と、が交互に周期的に繰り返されるオンオフ信号である。開閉指令信号の周期は例えばALDプロセス等におけるガス供給期間と停止期間のそれぞれの長さに併せて設定される。なお、第1バルブ制御部41に設定される設定流量は開閉指令信号に関係なく、例えば供給期間においてチャンバに流したい流量値で一定に保たれている。
【0043】
次に、自己診断機構5について説明する。この自己診断機構5は、第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリークのチェックと、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の診断を行う。より具体的には自己診断機構5は第1バルブV1及び第2バルブV2にシートリークが存在しない場合のみ、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の診断を行うように構成されている。以下では自己診断機構5の各部の詳細について説明する。
【0044】
診断動作指令部51は、例えばユーザにより入力される診断開始指令を受け付けると、設定圧力、設定流量とは別の指令である全閉指令又は開放指令を第1バルブ制御部41及び第2バルブ制御部42に対して入力する。全閉指令又は開放指令により第1バルブV1及び第2バルブV2はオンオフバルブとほぼ同様に動作する。診断動作指令部51はまず第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリークの有無をチェックするために、第1バルブ制御部41及び第2バルブ制御部42に対してそれぞれ全閉指令を入力する。また、診断動作指令部51は第1バルブV1及び第2バルブV2にシートリークが発生していないと判定された場合には、第1バルブ制御部41又は第2バルブ制御部42の一方にのみ全閉指令を入力し、他方には開放指令を入力する。
【0045】
シートリーク判定部52は、バルブ制御器4が第1バルブV1及び第2バルブV2を全閉している状態において、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力に基づいて第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリークの有無を判定する。本実施形態では、
図2に示すようにシートリーク判定部52は、第1バルブV1及び第2バルブV2が全閉されてから所定時間待機したあとにおける第1圧力センサP1と第2圧力センサP2の各測定圧力の時間変化に基づいて第1バルブV1及び第2バルブV2におけるシートリークの有無の判定が行われる。ここで、全閉されてから第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリークのチェックが開始される開始時点の判定は、例えば第1圧力センサP1と第2圧力センサP2の測定圧力がほぼ一致したことを基準にしてもよいし、第1バルブV1及び第2バルブV2が全閉されてからの経過時間のみで設定されてもよい。シートリーク判定の開始時点を経過時点のみで判定すれば、例えば第1圧力センサP1第2圧力センサP2のいずれかにゼロシフト等が発生しており、各測定圧力が一致せずにシートリークのチェックが開始されないといった事態が発生するのを防ぐことができる。
【0046】
具体的にはシートリーク判定部52は、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力が上昇している場合には、第1バルブV1にシートリークが発生していると判定する。これは第1バルブV1にシートリークが発生している場合には、上流側から第1バルブV1を介して第1容積VL1に対してガスが流入し、第1容積VL1及び第2容積VL2の圧力上昇が発生することに基づいている。
【0047】
一方、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力が低下している場合には、シートリーク判定部52は第2バルブV2にシートリークが発生していると判定する。これは第2バルブV2にシートリークが発生している場合には、第2容積VL2から第2バルブV2を介して下流側にガスが流出し、第1容積VL1及び第2容積VL2の圧力低下が発生することに基づいている。
【0048】
また、シートリーク判定部52は第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力がほぼ一致してから予め定められたレンジ内でしか推移しない場合には第1バルブV1及び第2バルブV2にはシートリークが発生していないと判定する。加えて、シートリーク判定部52は判定結果を示すデータを診断トリガ53に対して送信する。
【0049】
診断トリガ53は、シートリーク判定部52において第1バルブV1又は第2バルブV2のいずれにもシートリークが発生していないと判定している場合にのみ、後述する診断部54に第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の診断を実行させるものである。
【0050】
診断部54は、第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2について各測定圧力に基づき診断する。本実施形態では診断部54は第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2にゼロ点シフトが発生してないかどうかを各測定圧力に基づいて診断する。
【0051】
以下では診断トリガ53及び診断部54の詳細について、
図3のフローチャート、及び、
図4、
図5の模式図を参照しながら説明する。
【0052】
診断トリガ53は、シートリーク判定部52から判定結果に関するデータを取得し、第1バルブV1及び第2バルブV2にシートリークが発生していない場合にのみ、診断トリガ53は診断許可信号を診断部54に対して出力する(ステップS1)。一方、判定結果が第1バルブV1又は第2バルブV2にシートリークが発生していることを示す場合には、診断トリガ53は診断許可信号を出力しない。したがって、診断部54は第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の診断を行わない(ステップS2)。
【0053】
第1バルブV1及び第2バルブV2にシートリークが発生してない場合には、診断トリガ53は診断動作指令部51にバルブ制御器4に対して診断動作指令を出力させる。なお、本実施形態では第2圧力センサP2の診断が行われた後で、第1圧力センサP1の診断が行われる。すなわち、
図4に示すようにバルブ制御器4は最初に第2バルブV2を開放するとともに、第1バルブV1を閉止した状態にする(ステップS3)。
【0054】
この状態で診断部54は第2圧力センサP2の診断を開始する。まず、診断部54は第2圧力センサP2の測定圧力の時間変化率がほぼゼロとなり、ある圧力で安定している状態かどうかを判定する(ステップS4)。第2容積VL2内の圧力が安定した後で、診断部54は第2圧力センサP2の測定圧力がチャンバ内の圧力、すなわち、真空圧にほぼ等しいかどうかを判定する(ステップS5)。ここで、「ほぼ等しい」とは第2圧力センサP2の測定圧力が予め定めた閾値内の差しか有していない状態を言う。第2圧力センサP2の測定圧力が真空圧にほぼ等しい場合には、診断部54は第2圧力センサP2が正常であると診断する(ステップS6)。また、第2圧力センサP2の測定圧力が真空圧と一致せず、例えば予め定めた閾値よりも大きい場合には第2圧力センサP2にゼロシフトが発生していると判定する(ステップS7)。なお、ここで得られるゼロシフト量に基づいて第2圧力センサP2のゼロ点校正を行っても構わない。
【0055】
第2圧力センサP2の診断が完了すると、診断トリガ53は診断動作司令部にバルブ制御器4に対して第1バルブV1を開放し、第2バルブV2を閉止するように診断動作指令を出力させ、
図5に示す状態を実現する(ステップS8)。
【0056】
次に診断部54は、供給圧センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2の各測定圧力がほぼ等しいかどうかを判定する(ステップS9)。ここでも各測定圧力の差が予め定めた閾値内である場合にほぼ等しいと判定する。
【0057】
各測定圧力がほぼ等しい場合には、診断部54は第1圧力センサP1が正常であると診断し(ステップS10)、各測定圧力が等しくない場合には第1圧力センサP1にゼロシフトが発生していると診断する(ステップS11)。
【0058】
このように構成された本実施形態の流体制御装置100によれば、圧力制御用の第1バルブV1と、流量制御用の第2バルブV2について同時にシートリークの有無を判定することができる。
【0059】
また、シートリークの有無は、第1バルブV1から第2バルブV2までの容積内の圧力が安定してからの各測定圧力の変化傾向に基づいて判定されるので、仮に第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2にゼロ点シフト等が発生していたとしてもその影響を受けることがない。
【0060】
さらに、診断部54は第1バルブV1と第2バルブV2にシートリークが発生していない状態でしか第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の診断を行わないので、シートリークに起因して診断結果が不確かなものになるのを防ぐことができる。したがって、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2の双方について信頼性の高い診断を下すことができる。
【0061】
加えて、シートリークの有無の判定、第1圧力センサP1の診断、及び、第2圧力センサP2の診断は圧力制御又は流量制御に関わる流体機器だけを用いて実施できる。このため、診断のために別途センサ等を設ける必要がない。
【0062】
本発明の第2実施形態に係る流体制御装置100について
図6乃至
図11を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0063】
第2実施形態の流体制御装置100は、
図1に示す流体制御装置100の構成とほぼ同じであるが、第1実施形態と比較して診断部54が、供給圧センサP0のゼロ点シフトに関する診断を行う点、算出される抵抗流量に関する診断を行う点で異なっている。また、バルブ制御器4が診断のために行う動作も異なっている。
【0064】
具体的には、
図6のフローチャートに示すように第2実施形態の流体制御装置100は、(a)3つの各圧力センサにおけるゼロ点シフトの診断、(b)第1バルブV1のシートリークの判定、(c)第2バルブV2のシートリークの判定、(d)抵抗流量の診断をこの順番で行う。以下では各4つの工程について詳述する。
【0065】
診断部54が3つの各圧力センサにおけるゼロ点シフトの診断を行う前に、
図6及び
図7に示すように流体制御装置100の上流側に配置された前段バルブAV1が全閉されている状態において、バルブ制御器4は、第1バルブV1及び第2バルブV2を開放した状態にし、流体制御装置100内の各容積内に存在しているガスが排出されて真空となるまで所定時間待機する(ステップST1)。ここで、前段バルブAV1の開閉については、例えばユーザによる前段バルブAV1の操作やプロセス全体の各種機器を制御する制御装置の指令によって制御される。また、流体制御装置100内のガスは例えば第2バルブV2の下流側に接続されたチャンバ等の真空源により吸引される。流体抵抗Rよりも上流側の空間については、チャンバ等の真空源から排気を行うと流体抵抗Rが存在するため、完全に排気されるまでに時間がかかる場合がある。このため、流体制御装置100と前段バルブAV1との間から分岐する排気流路(図示しない)等から流体抵抗Rよりも上流側の容積内の流体を排気するようにして時間を短縮してもよい。
【0066】
前段バルブAV1と流体制御装置100との間の容積、及び、流体制御装置100内の第1容積VL1及び第2容積VL2からガスが完全に排気されて真空となった後で、診断部54は供給圧センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2のそれぞれの測定圧力がそれぞれほぼゼロを示し、予め定めた許容差内で等しいかどうかを判定する(ステップST2)。このように第1バルブV1と第2バルブV2が開放された状態でゼロ点シフトの診断が行われるので、この診断結果には各バルブにシートリークが発生していたとしてもその影響が診断結果に現れないようにすることができる。
【0067】
いずれかの圧力センサの測定圧力が許容差を超えて異なっている場合には、診断部54は例えば最も大きい測定圧力を出力している圧力センサにゼロ点シフトが発生していると判定する。また、診断トリガ53は以降のシートリークの判定や抵抗流量の診断を許可せず、終了となる(ステップST3)。
【0068】
一方、各圧力が等しい場合には、診断部54は供給圧センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2にはゼロ点シフトが発生していないと診断する(ステップST4)。この場合には、診断トリガ53が第1バルブV1についてシートリークの判定の開始を許可する。
【0069】
診断トリガ53により次の第1バルブV1におけるシートリークの判定が許可されている場合には、バルブ制御器4は
図6及び
図8(a)に示すように、第1バルブV1及び第2バルブV2を全閉する。また、前段バルブAV1についてはユーザによる操作やプロセス全体を統括する制御装置の指令によって開放される。(ステップST5)。すなわち、流体制御装置100内における第1バルブV1から第2バルブV2までの容積内はほぼ真空に保たれた状態となり、第1バルブV1の上流側にはガスの供給圧がかかることになる。
【0070】
この状態でシートリーク判定部52は、第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2の測定圧力が所定時間内で上昇しているかどうかに基づいて第1バルブV1のシートリークの有無を判定する(ステップST6)。ここで、第2バルブV2の前後ではほぼ同じ真空状態で保たれているので、第2バルブV2にシートリークが発生していたとしても、第1バルブV1から第2バルブV2へと流出するガスの量は非常に少ない。したがって、第2バルブV2でのシートリークの有無がステップST6における判定に対して与える影響は実質的に無視できる。
【0071】
シートリーク判定部52は、
図8(b)に示すように第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2において圧力の上昇が検知された場合には、第1バルブV1にシートリークが発生していると判定する(ステップST7)。これは、第1バルブV1にシートリークが発生している場合には、第1バルブV1の上流側からガスが流体制御装置100内に流入して圧力上昇が発生するからである。
【0072】
一方、シートリーク判定部52は所定時間内において第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2のいずれにも圧力の上昇が検知されなかった場合には、第1バルブV1にはシートリークが発生していないと判定する(ステップST8)。この場合、診断トリガ53は引き続き第2バルブV2のシートリークの判定動作を許可する。
【0073】
次にバルブ制御器4は、
図6に示すように第1バルブV1を全閉状態から開放し、第2バルブV2については全閉を維持した状態で流体制御装置100内の容積にガスが所定圧力でチャージされるまで所定時間待機する(ステップST9)。その後、
図6及び
図9(a)に示すようにバルブ制御器4は第1バルブV1についても再び全閉する(ステップST10)。
【0074】
そしてシートリーク判定部52は、第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2の測定圧力が低下しているかどうかに基づいて第2バルブV2のシートリークの有無を判定する(ステップST11)。ここで、第2バルブV2の前後にはシートリークを判定するのに必要な差圧が形成されているのに対して、第1バルブV1の前後については所定圧力でほぼ同じ圧力に保たれている。したがって、仮にステップST6の判定後に第1バルブV1にシートリークが発生した場合、あるいは、ステップST6の判定時にはシートリークは無いと判定されるわずかな出流れが発生していた場合でも、容積内に流入するガスの量を非常に微小なものにでき、ステップS11における判定への影響は無視できる。
【0075】
図9(b)に示すように所定時間内に測定圧力の低下が検知された場合には、シートリーク判定部52は第2バルブV2にシートリークが発生していると判定する(ステップST12)。所定時間内に測定圧力の低下が検知されなかった場合には、シートリーク判定部52は第2バルブV2にシートリークは発生していないと判定する(ステップST13)。
【0076】
第2バルブV2にシートリークが発生していない場合のみ、診断トリガ53は次の抵抗流量に関する診断を許可する。この場合、
図6及び
図10に示すようにバルブ制御器4は第1バルブV1を全閉にしたまま、第2バルブV2を開放し、流体制御装置100内の容積にチャージされていたガスの圧力を低下させる(ステップST14)。診断部54はこの際に生じる圧力低下に基づいて、抵抗流量算出部1において第1圧力と第2圧力から算出される抵抗流量の診断を行う(ステップST15)。圧力低下を用いた診断手法としては例えばROF法等既知の様々な方法を用いることができる。例えば第1容積VL1内に生じる所定時間内の圧力低下区間において、抵抗流量の積分値と、気体の状態方程式から算出される第1容積VL1からのガスの流出体積とを比較することで、抵抗流量が正常であるかどうかを判定することができる。
【0077】
このように第2実施形態の流体制御装置100でも、各圧力センサのゼロ点シフトについて診断したり、各バルブのシートリークの有無を判定したりすることができる。また、第2実施形態ではさらに流量センサの出力として算出される抵抗流量についても異常がないかどうかを診断できる。そして、これらの複数の診断や判定は
図6のフローチャートに示す手順で実施することにより、流体制御装置100内の容積内へのガスのチャージや開放を効率よく行うことができる。すなわち、
図11に示すように順次上流側のバルブが開放されて流体制御装置100の下流側へとガスがチャージされていき、最後に流体制御装置100内にチャージされたガスを排出することで抵抗流量の診断を行うことができ、ガスを無駄なく使用することができる。
【0078】
第2実施形態の変形例について説明する。第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリークの有無の判定では、第1圧力又は第2圧力の変化傾向ではなく、例えば供給圧センサP0で測定される供給圧と第1圧力又は第2圧力の差や差の変化に基づいてシートリークが発生していると判定してもよい。すなわち、
図8(b)、
図9(b)に示すようにバルブにシートリークが発生している場合でも供給圧センサP0で測定される供給圧はほぼ一定に保たれるので、第1圧力又は第2圧力と比較する際の基準にできる。
【0079】
本発明の第3実施形態に係る流体制御装置100について
図12及び
図13を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととする。また、
図12では主にハードウェア部分については第1実施形態と同様であるため省略してある。
【0080】
図12に示すように第3実施形態の流体制御装置100は、第1実施形態と比較して自己診断機構5の構成が異なっている。すなわち、自己診断機構5は供給圧センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2、抵抗流量算出部1の出力を受け付けて、それらの測定値又は算出値に基づき、流体制御装置100の各部における異常の進行度合いを示す異常量を算出する。また、自己診断機構5は算出される異常量に基づき、流体制御装置100の各部における異常の有無についても判定する。ここで、異常が有るとは、例えば所望の制御精度を保証できない程度にシートリークや測定誤差が発生している状態を言う。また、異常が無いとは例えば算出される異常量が許容値内の値であり、所望の制御精度が保証される状態を言う。
【0081】
より具体的には自己診断機構5は、異常量算出部5A、異常判定部5B、診断状態管理部5C、診断動作指令部51からなる。診断状態管理部5Cは第1実施形態の診断トリガ53に相当し、異常判定部5Bの出力に応じて異常量算出部5A及び診断動作指令部51の動作を制御する。
【0082】
異常量算出部5Aは、供給圧センサP0から出力される供給圧力、第1圧力センサP1から出力される上流側圧力、第2圧力センサP2から出力される下流側圧力に基づいて、各圧力センサや第1バルブV1、第2バルブV2の状態を示す異常量を算出する。具体的には異常量算出部5Aは、シートリーク算出部521、センサシフト算出部541、流量精度算出部543からなる。
【0083】
また、異常判定部5Bは、異常量算出部5Aで算出される異常量と予め定められた基準値とを比較して各圧力センサや各バルブ、あるいは、流量センサにおける異常の有無を判定する。具体的には異常判定部5Bは、シートリーク比較部522、センサシフト比較部542、流量精度比較部544からなる。
【0084】
異常量算出部5A、及び、異常判定部5Bの詳細について説明する。
【0085】
シートリーク算出部521は、バルブ制御器4が第1バルブV1及び第2バルブV2を全閉している状態において、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力に基づいて第1バルブV1及び第2バルブV2のシートリーク量を算出する。例えば各バルブが全閉されてからの圧力の上昇量又は低下量と気体の状態方程式に基づいて、シートリーク算出部521は、第1容積VL1及び第2容積VL2に流入又は流出するガスの流量をシートリーク量(sccm)として算出する。すなわち、シートリーク算出部521は、圧力の上昇がある場合には第1バルブV1のシートリーク量として算出し、圧力の低下がある場合には第2バルブV2のシートリーク量として算出する。
【0086】
また、シートリーク比較522は、シートリーク算出部521で算出されたシートリーク量と基準値とを比較して、シートリーク量が基準値を超える場合には、第1バルブV1又は第2バルブV2にシートリークが発生していると判定する。なお、シートリーク算出部521及びシートリーク比較部522は第2実施形態におけるシートリーク判定部52に対応する。
【0087】
センサシフト算出部541は、例えばバルブ制御器4が第1バルブV1及び第2バルブV2を全開にしている状態における第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の各測定圧力に基づいてそれぞれの圧力センサのゼロ点シフト量を算出する。センサシフト比較部542は、センサシフト算出部541で算出されたゼロ点シフト量と基準値とを比較し、ゼロ点シフト量が基準値を超える場合には第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2に異常が発生していると出力する。
【0088】
流量精度算出部543は、例えばROR法等により第1圧力センサP1又は第2圧力センサP2の測定値から算出される流量と、ROR法を行っている間に抵抗流量算出部1が算出する抵抗流量との差を流量精度として算出する。流量精度比較部544は、流量精度算出部543で算出される流量精度と基準値とを比較し、流量精度が基準値を超える場合には流量センサFに異常が発生していると出力する。なお、センサシフト算出部541、センサシフト比較部542、流量精度算出部543、流量精度比較部544が第2実施形態における診断部54に相当する。
【0089】
このように構成された第3実施形態の診断動作について
図13のフローチャートに示す。
図13のフローチャートは第2実施形態の診断動作を示す
図12のフローチャートにおけるステップST2、ステップST6、ステップST11における動作が異なっている。具体的には、
図13において破線の枠で囲われている部分に示す部分が異なっている。具体的には、ステップST1が終了した後、異常量算出部Aは、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2の測定値から各圧力センサのゼロ点シフト量を算出する(ステップST2A)。次に異常判定部5Bは、算出された各ゼロ点シフト量が基準値を超えておらず、ほぼゼロに近い値かどうかによってゼロ点シフトの有無を判定する(ステップST2B)。
【0090】
また、ステップST5及びステップST10が終了した後は、異常量算出部5Aは、第1バルブV1又は第2バルブV2のシートリーク量をそれぞれ算出する(ステップST6A、ステップST11A)。次に異常判定部5Bは、算出されたシートリーク量が基準値を超えておらず、ほぼゼロに近い値かどうかによってシートリークの有無を判定する(ステップST6B、ステップST11B)。
【0091】
このように構成された第3実施形態の流体制御装置100によれば、異常量算出部5Aにおいて各圧力センサ、各バルブの異常の進行度を示す異常量を算出し、その異常量の値に応じてゼロ点シフトやシートリークの有無を判定できる。
【0092】
次に第4実施形態の流体制御システム200について説明する。
図14に示すように第4実施形態の流体制御システム200は、第3実施形態の流体制御装置100を複数備えるとともに、各流体制御装置100の少なくとも診断に関わる制御を司る統合制御装置6を備える。
【0093】
統合制御装置6は、ユーザから診断要求を受け付けると、各流体制御装置100の診断動作司令部51に対して診断入力を入力する。各流体制御装置100は前述した実施形態で説明した動作によって自己診断機構5がバルブや各種センサの自己診断を行う。各流体制御装置100の異常量算出部5Aから出力される異常量、及び、異常判定部5Bから出力される異常の有無に関するデータは、統合制御装置6に送信にされる。統合制御装置6は、各流体制御装置100から受け付けられた異常量及び異常の有無をユーザに対して一覧表示する状態表示部としての機能も発揮する。
【0094】
このような第4実施形態の流体制御システム200であれば、複数の流体制御装置100によって構成されていても、どの流体制御装置100に異常が発生しているかと、異常が生じている流体制御装置100においてどの部分に異常が発生しているかについてもユーザはすぐに理解できる。また、異常が生じていない機器についても異常判定の基礎となる異常量が同時に表示されているので、異常の進行度についてユーザは予測することが可能となる。
【0095】
その他の実施形態について説明する。
【0096】
シートリーク判定部は、第1圧力センサ又は第2圧力センサのいずれか一方の測定圧力の変化傾向に基づいてシートリークの有無を判定してもよい。例えば、第1バルブ及び第2バルブが閉止されてから第1容積及び第2容積内の圧力が安定する所定時間経過後を判定開始時点として設定し、それ以降においては第1圧力センサの測定圧力又は第2圧力センサの測定圧力のいずれか一方のみが監視されるようにしてもよい。また、測定圧力の変化傾向については例えば時間変化率を算出する、微分値を演算するなど様々な算出方法を用いてもよい。また、判定開始時点の測定圧力と、判定開始から所定時間経過後における測定圧力との差の絶対値や正負に基づいて第1バルブ又は第2バルブのシートリークの有無を判定してもよい。例えば判定開始時点の第1圧力センセの測定圧力が、判定開始時点から所定時間経過後の第1圧力センサの測定圧力よりも大きくなっている場合には、第1バルブにシートリークが発生しているとシートリーク判定部は判定する。逆に判定開始時点の第2圧力センサの測定圧力が、判定開始時点から所定時間経過後の第2圧力センサの測定圧力よりも小さくなっている場合にはシートリーク判定部は第2バルブにシートリークが発生していると判定する。
【0097】
診断部は、最初に第1圧力センサについて診断し、その後第2圧力センサについて診断するように構成してもよい。また、第1圧力センサの診断については例えば供給圧センサの測定圧力を用いずに、第1圧力センサと第2圧力センサの測定圧力のみを用いてもよい。また、圧力センサの診断についてはゼロ点シフトのみに限られるものではなく、その他の誤差等について診断してもよい。また、前述した実施形態ではシートリークチェックが行われ、第1バルブ及び第2バルブのいずれにもシートリークが発生していない場合に第1圧力センサ及び第2圧力センサの診断が行われていたが、シートリークのチェック結果によらず、常に第1圧力センサ及び第2圧力センサの診断を行うようにしてもよい。また、シートリークのチェックを行わずに、第1圧力センサ及び第2圧力センサの診断を独立して行っても構わない。
【0098】
流体抵抗については、層流素子に限られるものではなく、例えば熱式の流量センサに用いられる分流素子等であっても構わない。
【0099】
シートリーク判定部、診断部、あるいは、自己診断機構については、流体制御装置に内蔵されているコンピュータや制御ボード等の演算装置によってその機能が実現されるものに限られず、例えば流体制御装置とは別に設けられた一般的なコンピュータ等によってその機能が実現されるものであってもよい。
【0100】
第2実施形態に記載した開度制御器は、第1バルブ及び第2バルブの開閉を制御するものであったが、流体制御装置の外部に設けられた前段バルブ等についても開閉の制御を行うように構成してもよい。
【0101】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、実施形態の変形を行っても良いし、各実施形態の一部又は全体をそれぞれ組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0102】
100・・・流体制御装置
V1 ・・・第1バルブ
P1 ・・・第1圧力センサ
R ・・・流体抵抗
Vl1 ・・・第1容積
VL2 ・・・第2容積
P2 ・・・第2圧力センサ
V2 ・・・第2バルブ
F ・・・流量測定機構
1 ・・・抵抗流量算出部
42 ・・・第2バルブ制御部
5 ・・・自己診断機構
51 ・・・診断動作指令部
52 ・・・シートリーク判定部
53 ・・・診断トリガ
54 ・・・診断部