(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】挽肉様大豆加工食品およびその製造方法、並びに食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240216BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240216BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23L13/00 Z
A23J3/00 505
(21)【出願番号】P 2020080165
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紀長
(72)【発明者】
【氏名】丹生谷 和詩
(72)【発明者】
【氏名】日比 亜弥音
(72)【発明者】
【氏名】細井 美香
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 紫乃
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-021163(JP,A)
【文献】特開2018-029565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状脱脂大豆蛋白
10~22質量%と、油脂
2~9質量%と、セルロースエーテル誘導体
0.1~4質量%と、加工澱粉
0.2~2質量%とを含み、
前記
セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくともいずれかであり、
前記加工澱粉が、架橋澱粉であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品。
【請求項2】
前記油脂
の含有量が、4~8質量%
である請求項1に記載の挽肉様大豆加工食品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の挽肉様大豆加工食品を使用したことを特徴とする食品。
【請求項4】
粒状脱脂大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを混合して混合物を得る工程と、
ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程とを含み、
前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくともいずれかであり、
前記加工澱粉が、架橋澱粉であり、
挽肉様大豆加工食品における含有量が、前記粒状脱脂大豆蛋白は10~22質量%、前記油脂は2~9質量%、前記セルロースエーテル誘導体は0.1~4質量%、前記加工澱粉は0.2~2質量%であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽肉様の食感、風味等を有する大豆加工食品およびその製造方法、並びに前記大豆加工食品を使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱脂大豆を原料として製造される粒状又は粉末状大豆蛋白を使用した疑似肉製品が開発され、食肉や惣菜など幅広い食品への利用が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
これまでに、大豆蛋白を使用した疑似肉製品について、肉らしさなどを向上させるために、様々な開発が行われている。
【0004】
例えば、肉様の食感などを有するハンバーグを製造する際に用いる粒状大豆蛋白として、分離大豆蛋白、グルテン、澱粉に高グルタチオン含有酵母エキス又は高γ-グルタミルシステイン含有酵母エキスを添加してエクストルーダーで加工した組織状蛋白含有物を用いる技術(例えば、特許文献1参照)、乾燥粒状脱脂大豆蛋白を弱アルカリ溶液を用いて水戻し又は湯戻しして得られた粒状脱脂大豆蛋白を用いる技術(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
また、分離大豆蛋白質素材、水および油脂を含有するエマルジョンカードを、畜肉様加工食品生地に所定の粒径で、所定量添加する技術(例えば、特許文献3参照)や、肉の生地、炭水化物系ゲル、非動物脂肪、矯味剤、結合剤、並びにヘム含有タンパク質および/又は鉄塩を含む食肉レプリカ組成物(例えば、特許文献4参照)なども提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の大豆蛋白を使用した疑似肉製品は物性が挽肉と異なるため、例えば、乾燥製品の場合には水戻しする手間がかる等、製造オペレーションが煩雑になるなどの問題がある。また、大豆独特の風味が残存し、肉様の風味、ジューシー感、食感に欠けるなどの問題もある。さらに、特に挽肉様製品については、成型時における結着性、焼成後の保形性などにも課題がある。また、挽肉を用いた食品は冷凍および解凍して調理される場合もあることから、冷凍耐性を有することも求められる。
【0006】
したがって、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する大豆蛋白製品は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-061592号公報
【文献】特開2013-009617号公報
【文献】特開2018-029565号公報
【文献】特表2017-509349号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】中野康行、「植物性肉様食品の開発における大豆の可能性」、月刊フードケミカル、2019-9、29-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する挽肉様大豆加工食品およびその製造方法、並びに前記挽肉様大豆加工食品を使用した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、大豆蛋白と、2~9質量%の油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを配合することにより、挽肉と同様のハンドリングを可能とする物性を有し、かつ、肉様風味、ジューシー感、および肉粒感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する挽肉様大豆加工食品とすることができることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを含み、
前記油脂の挽肉様大豆加工食品における含有量が2~9質量%であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品である。
<2> 大豆蛋白を10~22質量%、油脂を4~8質量%、セルロースエーテル誘導体を0.1~4質量%、および加工澱粉を0.2~2質量%含む前記<1>に記載の挽肉様大豆加工食品である。
<3> 大豆蛋白が粒状脱脂大豆蛋白である前記<1>又は<2>に記載の挽肉様大豆加工食品である。
<4> 前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の挽肉様大豆加工食品を使用したことを特徴とする食品である。
<5> 大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを混合して混合物を得る工程と、
ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程とを含み、
前記油脂の挽肉様大豆加工食品における含有量が2~9質量%であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する挽肉様大豆加工食品およびその製造方法、並びに前記挽肉様大豆加工食品を使用した食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の挽肉様大豆加工食品は、大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを少なくとも含み、調味液等、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記挽肉様大豆加工食品の製造方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、本発明の挽肉様大豆加工食品の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、本発明の挽肉様大豆加工食品の製造方法の説明と併せて、本発明の挽肉様大豆加工食品についても説明する。
【0014】
(挽肉様大豆加工食品およびその製造方法)
本発明の挽肉様大豆加工食品の製造方法は、混合工程と、加熱殺菌工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0015】
<混合工程>
前記混合工程は、大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを混合して混合物を得る工程である。
【0016】
-大豆蛋白-
前記大豆蛋白としては、大豆蛋白を原料として加工食品用として製造されたものであれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。前記大豆蛋白は、脱脂大豆を原料として粒状又はおよび粉末状大豆蛋白として製造される。粒状又はおよび粉末状大豆蛋白の原料となる大豆蛋白としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、脱脂大豆、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂豆乳粉末、全脂豆乳粉末などが挙げられる。これらの中でも、脱脂大豆、分離大豆蛋白が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記粒状大豆蛋白は、脱脂大豆等の原料に水を加え、エクストルーダー等の押し出し加工機械を用いて混錬、加熱、加圧された生地をダイと呼ばれるノズルから大気圧下への放出と同時に組織加工されて製品化される。また、前記粉末状大豆蛋白は、脱脂大豆から水抽出した脱脂豆乳を酸沈殿してたんぱく質を濃縮、中和工程等を経て製品となる(非特許文献1参照)。
本発明に用いられる大豆蛋白としては、粒状脱脂大豆蛋白が好ましい。
前記大豆蛋白は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0017】
前記大豆蛋白の挽肉様大豆加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、10~22質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感がより優れる点で、有利である。
【0018】
前記混合工程における大豆蛋白は、大豆蛋白のみからなる態様であってもよいし、調味液等のその他の成分を含む大豆蛋白含有物の態様であってもよい。
【0019】
前記調味液は、調味料を配合したものである。
前記調味料としては、食品分野において使用可能なものであれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、醤油、醸造酢、香辛料、酵母エキス、ビーフエキス、香料、色素、pH調整剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記調味液は、前記調味料を適量の水に分散させ、調製することができる。
【0020】
前記大豆蛋白含有物の調製方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、前記調味液に、前記大豆蛋白、水などを添加し、加熱しながら混合する方法などが挙げられる。
前記加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50~90℃が挙げられる。
前記混合時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5~60分間が挙げられる。
【0021】
-油脂-
前記油脂としては、食用の油脂であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ラード、牛脂等の動物油脂や、菜種、大豆、綿実、コーン、ひまわり、米、ゴマ、オリーブ、パーム、やし、カカオ等の植物の油脂、それらの硬化油脂、それらの混合油脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記油脂は、液油であってもよいし、固型脂であってもよい。
前記油脂は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0022】
前記油脂の挽肉様大豆加工食品における含有量としては、2~9質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、4~8質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感がより優れる点で、有利である。
【0023】
-セルロースエーテル誘導体-
前記セルロースエーテル誘導体とは、セルロースをエーテル化したものである。
前記セルロースエーテル誘導体としては、食品分野で使用可能なものであれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましく、優れた冷凍耐性を付与することができ、またハンドリング性および保形性を向上することができる点で、メチルセルロースが特に好ましい。前記セルロースエーテル誘導体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記セルロースエーテル誘導体は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0024】
前記セルロースエーテル誘導体の挽肉様大豆加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.1~4質量%が好ましく、0.2~3質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、作業性、保形性、およびジューシー感がより優れる点で、有利である。
【0025】
-加工澱粉-
前記加工澱粉としては、食品分野で使用可能なものであれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦、米、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ、甘藷等を由来とする澱粉を原料とし、エーテル化、エステル化、アセチル化、α化、架橋処理、酸化処理、油脂加工等の処理の1つ以上を施したものが挙げられる。
前記エーテル化処理が施された加工澱粉の具体例としては、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルボキシメチル澱粉、カチオン澱粉などが挙げられる。
前記エステル化処理が施された加工澱粉の具体例としては、リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉などが挙げられる。
前記アセチル化処理が施された加工澱粉の具体例としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、酢酸澱粉などが挙げられる。
前記架橋処理が施された加工澱粉の具体例としては、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉などが挙げられる。
前記1つ以上の加工処理が施された加工澱粉の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉などが挙げられる。
前記加工澱粉の中でも、優れた冷凍耐性を付与することができる点で、架橋澱粉が好ましい。前記加工澱粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記加工澱粉は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0026】
前記加工澱粉の挽肉様大豆加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.2~2質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、作業性、保形性、風味、およびジューシー感がより優れる点で、有利である。
【0027】
-混合-
前記混合の方法としては、特に制限はなく、公知の混合手段を適宜選択して行うことができる。
前記混合において、前記大豆蛋白、油脂、セルロースエーテル誘導体、加工澱粉を添加する順序としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。前記混合では、前記大豆蛋白として、大豆蛋白と、調味液と、水とを混合した大豆蛋白含有物を用いることが好ましい。
前記混合における混合時間としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、混合物の均一性、良好な食感などの点で、15~60分間が好ましい。
前記混合における温度などの条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0028】
前記混合工程では、前記大豆蛋白と、前記油脂と、前記セルロースエーテル誘導体と、前記加工澱粉とを加熱しながら混合することが好ましい。
前記加熱しながら混合する方法としては、特に制限はなく、公知の加熱混合手段を適宜選択して行うことができる。
前記加熱しながら混合する場合の加熱温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、調味液の大豆蛋白への浸透しやすさ、油脂による被覆のしやすさ、良好な風味などの点で、60~90℃に維持することが好ましい。前記加熱温度は、前記混合工程を行う間、一定であってもよいし、変化してもよい。
【0029】
前記混合工程では、大豆蛋白、油脂、セルロースエーテル誘導体、および加工澱粉以外のその他の成分が存在していてもよい。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、水、色素、香料、糖類、エキス類、卵加工品、アミノ酸、静菌剤、食物繊維、ゼラチン、増粘剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0030】
前記混合工程により、油脂で被覆された粒状の混合物が得られる。前記被覆の程度としては、粒状の混合物の表面の少なくとも一部が油脂で被覆されていればよいが、表面全体が油脂で被覆されていることが好ましい。
【0031】
<加熱殺菌工程>
前記加熱殺菌工程は、ジュール加熱装置による通電加熱で前記混合物を加熱殺菌する工程である。
前記ジュール加熱装置による通電加熱を用いることで、前記混合物を短時間で所望の温度帯に昇温することができ、固形感、食感が維持され、粒が大きく、繊維感が残り、また、過加熱による色焼けがない挽肉様大豆加工食品を得ることができる。
前記ジュール加熱装置による通電加熱は、直接抵抗加熱に分類されるものであり、対象に直接電気を流すことにより、体積全体に流れた電気がすべて熱変換され、対象が自ら発熱する加熱方式である。
前記ジュール加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができる。
【0032】
前記加熱殺菌の温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、80~125℃が好ましい。
前記加熱殺菌の時間としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.1~10分間が好ましく、0.5~2.0分間がより好ましい。
【0033】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した大豆蛋白含有物を調製する工程などが挙げられる。
【0034】
前記挽肉様大豆加工食品の形状、構造、大きさとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記挽肉様大豆加工食品の応力としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、240~460gfであることが好ましい。前記応力は、10℃における応力のことをいう。
前記応力の測定方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。例えば、試料を10℃に調温し、測定装置としてクリープメーター(株式会社山電製)やテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製)を用い、測定条件を直径20mmの円柱型のプランジャーを使用し、押し込み速度1mm/秒、押し込み距離10mmとして測定することができる。
【0036】
本発明の挽肉様大豆加工食品は、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性(解凍後の離水の減少)を有するので、各種食品の材料として好適に使用することができる。また、本発明の挽肉様大豆加工食品は、焼成後の香ばしさにも優れる。
本発明の挽肉様大豆加工食品は、特に、ジューシー感、香ばしさ、焼成後の外観(焼き縮による外観の劣化の少なさ)、冷凍耐性(解凍後の離水の減少)は挽肉よりも優れ、挽肉を上回るメリットがある。
【0037】
(食品)
本発明の食品は、本発明の挽肉様大豆加工食品を使用したものである。
【0038】
前記食品としては、本発明の挽肉様大豆加工食品を用いる限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、従来挽肉が用いられてきた食品などが挙げられ、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール、担々肉味噌、ミートソース、キーマカレー、ミートパイ、そぼろ、餃子、シュウマイ、肉まん、肉詰めの具などが好適に挙げられる。
前記食品の製造方法としては、本発明の挽肉様大豆加工食品を用いる以外は、通常の加工処理やレシピなどに従い、調理することができる。
【0039】
前記挽肉様大豆加工食品の前記食品における使用量としては、特に制限はなく、食品の種類などに応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0040】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0041】
(試験例1)
下記の表1に示す配合で下記の調製方法に従い、挽肉様大豆加工食品を調製した。
[調製方法]
ニーダー内に下記の表1に記載の調味液の原料を投入して混合し、均一に分散されたことを確認後、大豆蛋白と水を投入し、加熱しながら混合した(加熱温度:60℃、混合時間:10分間)。
さらに、セルロースエーテル誘導体、油脂、加工澱粉、水を順次添加して加熱しながら混合し、80℃達温後(混合時間:30分間)、ジュール加熱殺菌機に投入して95℃にて殺菌し(加熱殺菌時間:1分間)、挽肉様大豆加工食品を調製した。
なお、使用した成分の詳細は以下の通りである。
・ 大豆蛋白 ・・・ 粒状脱脂大豆蛋白
・ セルロースエーテル誘導体 ・・・ メチルセルロース
・ 油脂 ・・・ サラダ油、牛脂
・ 加工澱粉 ・・・ ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
【0042】
<評価>
調製した挽肉様大豆加工食品を使用して下記の調製方法に従い、ハンバーグ様食品を調製し、下記の評価法に従い評価を行った。
[調製方法]
下記の材料をすべて混ぜ合わせ、軽くこねた後、70gずつ丸めた。
フライパンにサラダ油をひき、両面を約1分間ずつ焼いた後、水を入れて蓋をして4分間程度加熱した。また、対照として、挽肉様大豆加工食品の代わりに挽肉を用いたものも同様に調製した。
-材料-
・ 挽肉様大豆加工食品 ・・・ 480g
・ タマネギみじん切り(炒めたもの) ・・・ 180g
・ パン粉 ・・・ 33g
・ 卵白粉 ・・・ 19.8g
・ 調味料(食塩、黒コショウ、ナツメグ) ・・・ 3.3g
【0043】
[評価法]
-物性-
挽肉を用いたものを対照として、作業性、保形性について、以下の評価基準で評価した。結果を下記の表1に示す。
・ 作業性(ハンドリングのしやすさ、生地のまとまりやすさ)
◎ : 対照と同等にハンドリングしやすく、生地がまとまりやすい。
○ : 対照と比べて若干劣るが、ハンドリングしやすく、生地がまとまりやすい。
△ : 対照と比べてややハンドリングしにくく、やや生地がまとまりにくい。
× : 対照と比べてハンドリングしにくく、生地がまとまりにくい。
・ 保形性(焼成後の保形性)
◎ : 対照と同等に焼成前の成型状態を保つ。
○ : 対照と比べて若干劣るが焼成前の成型状態を保つ。
△ : 対照と比べて焼成前の成型状態を保ちにくい。
× : 対照と比べて焼成前の成型状態を全く保てない。
【0044】
-官能評価-
挽肉を用いたものを対照として、ハンバーグ様食品のジューシー感、肉粒感、肉様風味について、6名のパネラーにより以下の評価基準で評価した。最も多かった評価結果を下記の表1に示す。
・ ジューシー感
◎ : 対照以上のジューシー感がある。
○ : 対照と同等のジューシー感がある。
△ : 対照と比べてジューシー感がやや劣り、若干ぱさつく。
× : 対照と比べてジューシー感が劣り、ぱさつく。
・ 肉粒感
◎ : 対照と同等の肉粒感がある。
○ : 対照と比較して若干劣るものの肉粒感がある。
△ : 肉粒感があまり感じられない。
× : 肉粒感がまったくない。
・ 肉様風味
◎ : 対照と同等の肉様風味がある。
○ : 対照と比較して若干劣るものの肉様風味がある。
△ : 肉様風味があまり感じられない。
× : 肉様風味がまったくない。
【0045】
【0046】
(試験例2)
下記の表2に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。なお、試験例2-7では、セルロースエーテル誘導体に代えてセルロースを用いた。各試験例におけるセルロース以外の使用した各成分は、試験例1と同様である。
【0047】
<評価>
上記で得られた挽肉様大豆加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0048】
【0049】
(試験例3)
下記の表3に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。各試験例において使用した各成分は、試験例1と同様である。
【0050】
<評価>
上記で得られた挽肉様大豆加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0051】
【0052】
(試験例4)
下記の表4に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。なお、試験例4-7では、加工澱粉に代えて未加工澱粉を用いた。各試験例における未加工澱粉以外の使用した各成分は、試験例1と同様である。
【0053】
<評価>
上記で得られた挽肉様大豆加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、評価を行った。結果を下記の表4に示す。
【0054】
【0055】
(試験例5)
<試験例5-1>
下記の表5に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。使用した各成分は、試験例1と同様である。
【0056】
<試験例5-2>
大豆蛋白、セルロースエーテル誘導体、油脂、加工澱粉を順次添加して加熱しながら混合していた処理(以下、「混合時加熱」と称することがある。)における加熱を行わなかった以外は、試験例5-1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。
【0057】
<試験例5-3>
ジュール加熱殺菌機による加熱処理(以下、「殺菌時加熱」と称することがある。)をレトルト殺菌に代えた以外は、試験例5-1と同様にして挽肉様大豆加工食品を調製した。
【0058】
<評価>
-冷凍・解凍なし-
試験例5-1~5-3で得られた挽肉様大豆加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、官能評価を行った。結果を下記の表5に示す。
【0059】
-冷凍・解凍あり-
試験例5-1~5-2で得られた挽肉様大豆加工食品を-20℃で冷凍した後、25℃で解凍した。前記冷凍・解凍した挽肉様大豆加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、官能評価を行った。結果を下記の表5に示す。
【0060】
【0061】
-挽肉様大豆加工食品の硬さ-
試験例5-1~5-3で得られた挽肉様大豆加工食品の硬さ(応力)を下記のようにして測定した。
[応力の測定方法]
・ 測定装置 : テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製)
・ 測定条件 : 直径20mmの円柱型のプランジャーを使用し、押し込み速度1mm/秒、押し込み距離10mmとした。
・ 測定手順 : 10℃に調温した挽肉様大豆加工食品200g程度を口径70mm、高さ80mmの容器へ入れた。挽肉様大豆加工食品から空気を抜き、表面を軽く均した後に、上記測定条件にて応力を測定した。
【0062】
応力を測定した結果は下記のとおりであった。
・ 試験例5-1の挽肉様大豆加工食品 ・・・ 405gf
・ 試験例5-2の挽肉様大豆加工食品 ・・・ 390gf
・ 試験例5-3の挽肉様大豆加工食品 ・・・ 150gf
【0063】
(試験例6)
挽肉(試験例6-1)、大豆蛋白(粒状脱脂大豆蛋白)16質量部に加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)1.5質量部を添加したもの(試験例6-2)、試験例5-1で得られた挽肉様大豆加工食品(試験例6-3)をそれぞれ30gずつ丸め、ろ紙に乗せた状態で-20℃で冷凍し、25℃で解凍後、ろ紙に染み出た水分の円周長を画像解析ソフトcellSens(オリンパス社製)を用いて測定することで、冷凍耐性(冷凍・解凍時の離水)を評価した。結果を下記の表6に示す。
【0064】
【0065】
以上の結果から、本発明によれば、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する挽肉様大豆加工食品が得られることが確認された。また、加熱殺菌をレトルト処理で行った場合には、挽肉様大豆加工食品の固形感が崩れ、食感も劣ることが確認された。