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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】チャージポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02M3/07
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020108757
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006505
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄介
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0018618(US,A1)
【文献】特開2009-183111(JP,A)
【文献】特開2017-216812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を出力するチャージポンプ昇圧回路と、
前記昇圧電圧を出力電圧として出力するか否かを切り替える半導体スイッチである正側転送スイッチを有する出力回路と、
前記入力電圧および前記出力電圧を比較する比較回路と、
前記比較の結果に応じて、前記入力電圧および前記出力電圧のいずれを用いて前記チャージポンプ昇圧回路内の少なくとも1つの半導体スイッチを制御するための制御信号を発生させるかを切り替える切替回路と
前記昇圧電圧を前記出力電圧として出力させる場合に、前記正側転送スイッチ用の制御信号を昇圧して前記正側転送スイッチの制御端子に供給するゲート制御回路と
を備えるチャージポンプ装置。
【請求項2】
前記ゲート制御回路は、
前記正側転送スイッチのオフ期間の少なくとも一部において、前記入力電圧を用いてオフセット電圧を充電し、
前記正側転送スイッチをオンとする場合に、前記正側転送スイッチ用の制御信号の電圧に前記オフセット電圧を加えて前記正側転送スイッチの制御端子に供給する
請求項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項3】
入力端子から入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を出力するチャージポンプ昇圧回路と、
前記昇圧電圧を出力電圧として出力するか否かを切り替える正側転送スイッチを有する出力回路と、
前記正側転送スイッチのオフ期間の少なくとも一部において前記入力電圧を用いてオフセット電圧を充電し、前記正側転送スイッチをオンとする場合に、前記正側転送スイッチ用の制御信号の電圧に前記オフセット電圧を加えて前記正側転送スイッチの制御端子に供給するゲート制御回路と
を備えるチャージポンプ装置。
【請求項4】
前記入力電圧および前記出力電圧を比較する比較回路と、
前記比較の結果に応じて、前記入力電圧および前記出力電圧のいずれを用いて前記チャージポンプ昇圧回路内の少なくとも1つの半導体スイッチを制御するための制御信号を発生させるかを切り替える切替回路と
を備える請求項3に記載のチャージポンプ装置。
【請求項5】
前記ゲート制御回路は、
一端に前記正側転送スイッチ用の制御信号が入力され、他端が前記正側転送スイッチの制御端子に接続された第2キャパシタと、
前記入力端子と前記第2キャパシタの他端との間に接続され、前記第2キャパシタの他端から前記入力端子への電流の逆流を防ぐ整流素子と
を有する
請求項からのいずれか一項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項6】
前記正側転送スイッチは、N型MOSFETである請求項からのいずれか一項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項7】
前記出力電圧が前記入力電圧よりも低いことに応じて、前記チャージポンプ昇圧回路が入力する電流または前記チャージポンプ昇圧回路が出力する電流の少なくとも1つを制限する電流制限回路を備える請求項1からのいずれか一項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項8】
入力端子から入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を出力するチャージポンプ昇圧回路と、
前記昇圧電圧を出力電圧として出力する出力回路と、
前記入力電圧および前記出力電圧を比較する比較回路と、
前記比較の結果に応じて、前記入力電圧および前記出力電圧のいずれを用いて前記チャージポンプ昇圧回路内の少なくとも1つの半導体スイッチを制御するための制御信号を発生させるかを切り替える切替回路と、
前記出力電圧が前記入力電圧よりも低いことに応じて、前記チャージポンプ昇圧回路が入力する電流または前記チャージポンプ昇圧回路が出力する電流の少なくとも1つを制限する電流制限回路と
を備えるチャージポンプ装置。
【請求項9】
前記切替回路は、前記入力電圧および前記出力電圧のうちより高い電圧を用いて前記制御信号を発生させる請求項1、2、4、または8のいずれか一項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項10】
前記切替回路は、前記比較の結果に応じて前記入力電圧および前記出力電圧のいずれかを出力し、
前記切替回路が出力する電圧を用いて前記制御信号を発生する駆動回路を更に備える請求項1、2、4、8、または9のいずれか一項に記載のチャージポンプ装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの半導体スイッチは、N型MOSFETであり、
前記駆動回路は、前記切替回路が出力する電圧を用いて前記少なくとも1つの半導体スイッチをオンとする前記制御信号を発生する
請求項10に記載のチャージポンプ装置。
【請求項12】
前記チャージポンプ昇圧回路は、
第1キャパシタと、
前記入力端子と前記第1キャパシタの一端との間に接続される半導体スイッチである正側充電スイッチと、
前記第1キャパシタの他端とグランドとの間に接続される半導体スイッチである負側充電スイッチと、
前記入力端子と前記第1キャパシタの他端との間に接続される半導体スイッチである負側転送スイッチと
を有し、
前記駆動回路は、前記切替回路が出力する電圧を用いて発生した制御信号を、前記正側充電スイッチまたは前記負側転送スイッチの少なくとも1つの制御端子に供給する
請求項10または11に記載のチャージポンプ装置。
【請求項13】
前記チャージポンプ昇圧回路は、前記正側充電スイッチに供給される制御信号に基づいて、グランド電圧および前記第1キャパシタの一端の電圧のいずれを前記正側充電スイッチのバルク電圧とするかを切り替えるバルク制御回路を有する請求項12に記載のチャージポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、チャージポンプ方式の昇圧装置が記載されている。例えば、特許文献1においては、昇圧回路がスイッチングトランジスタTR1~4を有しており(段落0004)、トランジスタTR2はNチャネル電界効果トランジスタ(NチャネルFET)、トランジスタTR1、TR3、およびTR4はPチャネル電界効果トランジスタ(PチャネルFET)である(段落0006)。特許文献2~3においても同様である(特許文献2の図1、特許文献3の図1等参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平6-351229号公報
[特許文献2] 特開2008-283794号公報
[特許文献3] 特開2011-30327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PチャネルFETは、オン抵抗が同一サイズのNチャネルFETと比較して高いので、同量の電流を流すためにはNチャネルFETよりも大きなサイズとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、チャージポンプ装置を提供する。チャージポンプ装置は、入力端子から入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を出力するチャージポンプ昇圧回路を備えてよい。チャージポンプ装置は、昇圧電圧を出力電圧として出力する出力回路を備えてよい。チャージポンプ装置は、入力電圧および出力電圧を比較する比較回路を備えてよい。チャージポンプ装置は、比較の結果に応じて、入力電圧および出力電圧のいずれを用いてチャージポンプ昇圧回路内の少なくとも1つの半導体スイッチを制御するための制御信号を発生させるかを切り替える切替回路を備えてよい。
【0005】
切替回路は、入力電圧および出力電圧のうちより高い電圧を用いて制御信号を発生させてよい。
【0006】
切替回路は、比較の結果に応じて入力電圧および出力電圧のいずれかを出力してよい。チャージポンプ装置は、切替回路が出力する電圧を用いて制御信号を発生する駆動回路を更に備えてよい。
【0007】
少なくとも1つの半導体スイッチは、N型MOSFETであってよい。駆動回路は、切替回路が出力する電圧を用いて少なくとも1つの半導体スイッチをオンとする制御信号を発生してよい。
【0008】
チャージポンプ昇圧回路は、第1キャパシタを有してよい。チャージポンプ昇圧回路は、入力端子と第1キャパシタの一端との間に接続される半導体スイッチである正側充電スイッチを有してよい。チャージポンプ昇圧回路は、第1キャパシタの他端とグランドとの間に接続される半導体スイッチである負側充電スイッチを有してよい。チャージポンプ昇圧回路は、入力端子および第1キャパシタの他端子との間に接続される半導体スイッチである負側転送スイッチを有してよい。駆動回路は、切替回路が出力する電圧を用いて発生した制御信号を、正側充電スイッチまたは負側転送スイッチの少なくとも1つの制御端子に供給してよい。
【0009】
出力回路は、昇圧電圧を出力電圧として出力するか否かを切り替える半導体スイッチである正側転送スイッチを有してよい。チャージポンプ装置は、昇圧電圧を出力電圧として出力させる場合に、正側転送スイッチ用の制御信号を昇圧して正側転送スイッチの制御端子に供給するゲート制御回路を更に備えてよい。
【0010】
ゲート制御回路は、正側転送スイッチのオフ期間の少なくとも一部において、入力電圧を用いてオフセット電圧を充電してよい。ゲート制御回路は、正側転送スイッチをオンとする場合に、正側転送スイッチ用の制御信号の電圧にオフセット電圧を加えて正側転送スイッチの制御端子に供給してよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、チャージポンプ装置を提供する。チャージポンプ装置は、入力端子から入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を出力するチャージポンプ昇圧回路を備えてよい。チャージポンプ装置は、昇圧電圧を出力電圧として出力するか否かを切り替える正側転送スイッチを有する出力回路を備えてよい。チャージポンプ装置は、正側転送スイッチのオフ期間の少なくとも一部において入力電圧を用いてオフセット電圧を充電し、正側転送スイッチをオンとする場合に、正側転送スイッチ用の制御信号の電圧にオフセット電圧を加えて正側転送スイッチの制御端子に供給するゲート制御回路を備えてよい。
【0012】
ゲート制御回路は、一端に正側転送スイッチ用の制御信号が入力され、他端が正側転送スイッチの制御端子に接続された第2キャパシタを有してよい。ゲート制御回路は、入力端子と第2キャパシタの他端との間に接続され、第2キャパシタの他端から入力端子への電流の逆流を防ぐ整流素子を有してよい。
【0013】
正側転送スイッチは、N型MOSFETであってよい。
【0014】
チャージポンプ装置は、 出力電圧が入力電圧よりも低いことに応じて、チャージポンプ昇圧回路が入力する電流またはチャージポンプ昇圧回路が出力する電流の少なくとも1つを制限する電流制限回路を備えてよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るチャージポンプ装置100の構成を示す。
図2】本実施形態に係るチャージポンプ装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図3】本実施形態に係る切替回路160の構成を示す。
図4】本実施形態に係る駆動回路165の構成を示す。
図5】本実施形態に係る駆動回路165の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図6】本実施形態に係るゲート制御回路170の構成を示す。
図7】本実施形態に係るゲート制御回路170の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図8】本実施形態に係る電流制限回路140a~cの構成を示す。
図9】本実施形態の第1変形例に係るゲート制御回路900の構成を示す。
図10】本実施形態の第2変形例に係るゲート制御回路1000の構成を示す。
図11】本実施形態の第3変形例に係るゲート制御回路1100の構成を示す。
図12】本実施形態の第4変形例に係るゲート制御回路1200の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施形態に係るチャージポンプ装置100の構成を示す。本実施形態に係るチャージポンプ装置100は、チャージポンプ装置100内の正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150をN型とすることを可能とするべく、これらのスイッチの制御端子(ゲート端子)に供給する適切な制御電圧を発生する。
【0019】
チャージポンプ装置100は、チャージポンプ昇圧回路110と、出力回路145と、比較回路155と、切替回路160と、駆動回路165と、ゲート制御回路170とを備える。チャージポンプ昇圧回路110は、充電フェーズにおいて入力端子VDDから入力される入力電圧VDDを第1キャパシタ115に充電し、転送(Transfer)フェーズにおいて入力電圧VDDを第1キャパシタ115に充電した電圧によって昇圧した昇圧電圧を正側チャージポンプ端子CPPから出力する。ここで、説明の便宜上、入力端子VDDの電圧は、「電圧VDD」と示す。他の端子についても同様である。チャージポンプ昇圧回路110は、第1キャパシタ115と、正側充電スイッチ120と、バルク制御回路125と、負側充電スイッチ130と、負側転送スイッチ135と、電流制限回路140a~cとを有する。
【0020】
第1キャパシタ115は、正側チャージポンプ端子CPP(「端子CPP」とも示す。)および負側チャージポンプ端子CPN(「端子CPN」とも示す。)の間に接続される。第1キャパシタ115は、チャージポンプ昇圧回路110の昇圧用に入力電圧VDDを充電し、昇圧電圧を出力するときに放電する。
【0021】
正側充電スイッチ120は、入力端子VDDと第1キャパシタ115の一端(正側となる端子)としての端子CPPの間に主端子間が接続される半導体スイッチである。正側充電スイッチ120は、駆動回路165から電流制限回路140aを介して制御信号CHCP(図中「a」)を制御端子(ゲート)に入力し、ゲート-ソース間の電圧(ゲート-ソース電圧)Vgsが閾値電圧以下の場合に主端子間を電気的に切断し(オフ状態)、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧を超えると主端子間を電気的に接続する(オン状態)。本実施形態において、正側充電スイッチ120は、N型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。これに代えて、正側充電スイッチ120は、制御電圧が閾値を超えたことに応じてオンとなる他の種類のNチャネルFET等の半導体スイッチであってもよい。
【0022】
バルク制御回路125は、正側充電スイッチ120の端子CPP側の主端子と、グランドVSSと、駆動回路165とに接続される。バルク制御回路125は、正側充電スイッチ120のオンオフを制御するための制御信号CHCP(図中「a」)を駆動回路165から受け取る。バルク制御回路125は、制御信号CHCPに基づいて、グランド電圧VSSおよび端子CPPの電圧のいずれを正側充電スイッチ120のバルク電圧とするかを切り替える。本実施形態に係るバルク制御回路125は、充電フェーズ(制御信号CHCPが論理H)において、端子CPPの電圧を正側充電スイッチ120のバルク電圧として、正側充電スイッチ120の端子CPP側をソースとして機能させる。また、バルク制御回路125は、転送フェーズ(制御信号CHCPが論理L)において、グランド電圧VSSを正側充電スイッチ120のバルク電圧として、正側充電スイッチ120の入力端子VDD側をソースとして機能させて端子CPPの昇圧電圧が入力端子へと逆流するのを防ぐ。一例として、バルク制御回路125は、正側充電スイッチ120の端子CPP側の主端子とバルクとの間に接続され、制御信号CHCPが論理Hの場合にオンとなり、制御信号CHCPが論理Lの場合にオフとなるスイッチング素子と、正側充電スイッチ120のバルクとグランドVSSの間に接続され、制御信号CHCPが論理Hの場合にオフとなり、制御信号CHCPが論理Lの場合にオンとなるスイッチング素子とを有してよい。
【0023】
このようなバルク制御回路125は、充電フェーズにおいては、正側充電スイッチ120のソースとバルクを同電位として正側充電スイッチ120を低閾値MOS等の低閾値スイッチング素子として機能させることができるので、同サイズの通常の閾値のスイッチング素子を用いた場合よりもオン抵抗を小さくすることができる。これにより、チャージポンプ装置100は、通常の閾値のスイッチング素子を用いる場合と比較して、サイズが小さい正側充電スイッチ120を用いることができる。また、バルク制御回路125は、転送フェーズにおいては、正側充電スイッチ120のバルク電圧をグランド電圧VSSとすることでバルク-ソース間の電位差を大きくする。これによりバルク制御回路125は、正側充電スイッチ120として低閾値スイッチング素子を用いたとしても、基板バイアス効果によって正側充電スイッチ120の閾値を上昇させて端子VDDおよび端子CPPの間を確実に遮断することができる。
【0024】
負側充電スイッチ130は、第1キャパシタ115の他端(負側となる端子)としての端子CPNとグランドVSSとの間に主端子間が接続される半導体スイッチである。負側充電スイッチ130は、駆動回路165から電流制限回路140bを介して制御信号CHCN(図中「b」)を制御端子(ゲート)に入力し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧以下の場合に主端子間を電気的に切断し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧を超えると主端子間を電気的に接続する。本実施形態において、負側充電スイッチ130は、正側充電スイッチ120と同様にN型MOSFETであり、端子CPN側にドレイン、グランドVSS側にソースが接続される。ここで、グランドVSSは、接地電位を有し、入力電圧VDD>グランド電圧VSSである。負側充電スイッチ130は、他の種類のNチャネルFET等の半導体スイッチであってよい。
【0025】
負側転送スイッチ135は、入力端子VDDおよび第1キャパシタ115の他端としての端子CPNの間に主端子間が接続される半導体スイッチである。負側転送スイッチ135は、駆動回路165から電流制限回路140cを介して制御信号TRCN(図中「c」)を制御端子(ゲート)に入力し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧以下の場合に主端子間を電気的に切断し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧を超えると主端子間を電気的に接続する。本実施形態において、負側転送スイッチ135は、正側充電スイッチ120と同様にN型MOSFETであり、入力端子VDD側にドレイン、端子CPN側にソースが接続される。これに代えて、負側充電スイッチ130は、他の種類のNチャネルFET等の半導体スイッチであってよい。
【0026】
電流制限回路140a~cは、駆動回路165と、正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、および負側転送スイッチ135との間にそれぞれ接続される。電流制限回路140a~cは、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTの比較結果を示す信号UVDET_Nを比較回路155から受け取り、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、チャージポンプ昇圧回路110が入力端子VDDから入力する電流またはチャージポンプ昇圧回路110が端子CPPから出力回路145へと出力する電流の少なくとも1つを制限する。なお、本実施形態に係る電流制限回路140a~cは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合にも、これらの電流の少なくとも1つを制限する。
【0027】
出力回路145は、端子CPPおよび出力端子CPOUTの間に接続され、チャージポンプ昇圧回路110によって端子CPPから出力される昇圧電圧を出力電圧として出力端子CPOUTから出力する。出力回路145は、正側転送スイッチ150を有する。
【0028】
正側転送スイッチ150は、第1キャパシタ115の端子CPPおよび出力端子CPOUTの間に主端子間が接続される半導体スイッチである。正側転送スイッチ150は、駆動回路165からゲート制御回路170を介して制御信号TRCP(図中「d」)を制御端子(ゲート)に入力し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧以下の場合に主端子間を電気的に切断し、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧を超えると主端子間を電気的に接続する。これにより、正側転送スイッチ150は、チャージポンプ昇圧回路110が端子CPPから出力する昇圧電圧を、出力電圧として出力端子CPOUTから出力するか否かを切り替える。本実施形態において、正側転送スイッチ150は、正側充電スイッチ120と同様にN型MOSFETであり、出力端子CPOUT側にドレイン、端子CPP側にソースが接続される。これに代えて、正側転送スイッチ150は、他の種類のNチャネルFET等の半導体スイッチであってよい。
【0029】
比較回路155は、入力端子VDDおよび出力端子CPOUTに接続される。比較回路155は、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTを比較して、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTの比較結果を示す信号UVDET_Nを出力する。本実施形態において、信号UVDET_Nは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合に論理H、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超えた場合に論理Lとなる。これに代えて、比較回路155は、出力電圧CPOUTから入力電圧VDDを減じた差分が予め定められた閾値を超えた場合に信号UVDET_Nを論理Hとしてもよい。
【0030】
切替回路160は、入力端子VDD、出力端子CPOUT、および比較回路155に接続される。切替回路160は、比較回路155による比較の結果に応じて、チャージポンプ昇圧回路110および出力回路145内の少なくとも1つの半導体スイッチを制御するための制御信号の論理Hレベルを入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTのいずれかを用いて発生させるかを切り替える。
【0031】
本実施形態に係る切替回路160は、比較回路155からの信号UVDET_Nに基づいて、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTのうちより高い電圧を用いて制御信号を発生させるように制御信号の発生源とする電圧VDD_SELを出力する。切替回路160は、信号UVDET_Nに基づいて、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTのいずれかを電圧VDD_SELとして出力してよい。
【0032】
駆動回路165は、切替回路160に接続される。駆動回路165は、チャージポンプ昇圧回路110および正側転送スイッチ150のスイッチングに用いるクロック信号CPCLKを入力し、切替回路160が出力する電圧VDD_SELを用いて制御信号CHCP(a)、CHCN(b)、TRCN(c)、およびTRCP(d)を発生する。駆動回路165は、電圧VDD_SELを用いて発生した制御信号CHCP、CHCN、TRCN、およびTRCPを、正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150の制御端子にそれぞれ供給する。
【0033】
ゲート制御回路170は、入力端子VDD、端子CPP、および比較回路155に接続される。ゲート制御回路170は、チャージポンプ昇圧回路110の端子CPPからの昇圧電圧を出力電圧CPOUTとして出力させる場合に、正側転送スイッチ150用の制御信号TRCPを昇圧して正側転送スイッチ150の制御端子に供給し、正側転送スイッチ150をオンとする。
【0034】
図2は、本実施形態に係るチャージポンプ装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。本図は、上から順に出力電圧CPOUT、比較回路155による電源監視の結果(信号UVDET_Nの値)、電流制限回路140a~cによる電流制限の状態、切替回路160による制御信号の電源の切り替えの状態、ゲート制御回路170によるゲート制御の状態のそれぞれの時間変化を示す。
【0035】
(1)出力電圧CPOUT
チャージポンプ装置100は、時刻0においてパワーオンされて動作を開始する。駆動回路165は、クロック信号CPCLKに基づいて、充電フェーズおよび転送フェーズを繰り返す。駆動回路165は、充電フェーズにおいて、制御信号CHCPおよびCHCNを論理Hとして正側充電スイッチ120および負側充電スイッチ130をオンとし、制御信号TRCNおよびTRCPを論理Lとして負側転送スイッチ135および正側転送スイッチ150をオフとする。この結果、第1キャパシタ115の端子CPPが入力端子VDDに接続され、第1キャパシタ115の端子CPNがグランドVSSに接続される。これにより、第1キャパシタ115は、充電フェーズにおいて、第1キャパシタ115の両端電圧が入力電圧VDDに達するまで徐々に充電される。
【0036】
駆動回路165は、転送フェーズにおいて、制御信号CHCPおよびCHCNを論理Lとして正側充電スイッチ120および負側充電スイッチ130をオフとし、制御信号TRCNおよびTRCPを論理Hとして負側転送スイッチ135および正側転送スイッチ150をオンとする。これにより、第1キャパシタ115の端子CPNが入力端子VDDに接続され、第1キャパシタ115の端子CPPが出力端子CPOUTに接続される。この結果、入力電圧VDDが第1キャパシタ115の充電電圧により昇圧された昇圧電圧が出力端子CPOUTへと出力される。
【0037】
充電フェーズおよび転送フェーズを繰り返すことによって、出力電圧CPOUTは上昇し、時刻t1において出力電圧CPOUTは入力電圧VDDに達する。時刻t1以降、出力電圧CPOUTは、入力電圧VDDを超えて上昇する。出力電圧CPOUTは最大で入力電圧VDDの2倍に達する。
【0038】
出力端子CPOUTに接続された負荷に流れる出力負荷電流がチャージポンプ装置100の定格出力電流よりも大きくなると、出力電圧CPOUTは減少していく。本実施形態に係るチャージポンプ装置100は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下まで低下したことに応じて、チャージポンプに電流制限をかけ、駆動能力を低下させる。これに代えて、チャージポンプ装置100は、パワーダウン状態となって出力を停止してもよい。
【0039】
(2)電源監視
比較回路155は、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTを監視する。比較回路155は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の間(時刻0から時刻t1までの間、および時刻t2以降)、信号UVDET_Nを論理Hとする。比較回路155は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超えている間(時刻t1から時刻t2までの間)、信号UVDET_Nを論理Lとする。
【0040】
(3)電流制限
電流制限回路140a~cは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低い期間(時刻0から時刻t1までの間、および時刻t2以降)において、正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、および負側転送スイッチ135に流れる電流を制限する。これにより、電流制限回路140a~cは、チャージポンプ装置100の起動中に第1キャパシタ115に過大な突入電流が流れるのを防ぐことができ、また出力端子CPOUTに接続される負荷が短絡した場合に負荷に過電流が流れるのを防ぐことができる。
【0041】
(4)電源切替
切替回路160は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の期間(時刻0から時刻t1までの間、および時刻t2以降)においては入力電圧VDDを電圧VDD_SELとして出力する。切替回路160は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える期間(時刻t1から時刻t2までの間)においては出力電圧CPOUTを電圧VDD_SELとして出力する。
【0042】
前述したように、本実施形態においては、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150としてNMOSスイッチを用いる。ここで、PMOSスイッチは、制御信号に供給する制御電圧をグランド電圧VSSとすればオンとすることができる。しかし、NMOSスイッチをオンとするためには、ゲート-ソース電圧Vgsが閾値電圧を超えるように制御電圧を高くしなければならない。正側充電スイッチ120は、第1キャパシタ115が入力電圧VDD近くまで充電されると、ソース電圧が入力電圧VDDに近づく。このため、正側充電スイッチ120に十分な電流を流すためには正側充電スイッチ120の制御電圧(ゲート電圧)を入力信号VDDより高くすることが望ましい。そこで、切替回路160は、通常動作中は入力電圧VDDから昇圧された出力電圧CPOUTを用いて正側充電スイッチ120の制御信号CHCPを発生させるべく信号VDD_SELの電圧を出力電圧CPOUTとする(図中時刻t1から時刻t2の「CPOUT」)。
【0043】
ただし、チャージポンプ装置100の起動時等においては、出力電圧CPOUTは立ち上がっておらず、特にチャージポンプ装置100の起動直後は出力電圧CPOUTが0Vとなってしまう。そこで、切替回路160は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合には、入力電圧VDDを用いて正側充電スイッチ120の制御信号CHCPを発生させるべく信号VDD_SELの電圧を入力電圧VDDとする(図中時刻0から時刻t1の間、および時刻t2以降の「VDD」)。
【0044】
また、負側転送スイッチ135は、転送フェーズにおいてオンとされ、入力端子VDDから第1キャパシタ115および正側転送スイッチ150を介して出力端子CPOUTに出力電流を流す。負側転送スイッチ135は、オン状態において入力端子VDDおよび端子CPNを接続するので、ソース電圧は入力電圧VDDとほぼ等しくなる。この状態で負側転送スイッチ135に十分な電流を流すために、切替回路160は、制御信号TRCNについても、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える場合には出力電圧CPOUTを用いて制御信号TRCNを発生させ、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合には入力電圧VDDを用いて制御信号TRCNを発生させるようにする。
【0045】
なお、本実施形態においては、切替回路160は、負側充電スイッチ130の制御信号CHCNも同様にして発生させる。負側充電スイッチ130のソースはグランドVSSに接続されていることから、駆動回路165は、出力電圧CPOUTを用いずに入力電圧VDDを常に用いて制御信号CHCNを発生してもよい。
【0046】
(5)正側転送スイッチ150のゲート制御
正側転送スイッチ150は、転送フェーズにおいてオンとされ、出力端子CPOUTおよび端子CPPの間を接続する。このため、正側転送スイッチ150は、オン状態においてソース電圧は出力電圧CPOUTとほぼ等しくなる。この状態で正側転送スイッチ150に十分な電流を流すために、切替回路160および駆動回路165は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える場合(時刻t1から時刻t2の間)には、出力電圧CPOUTを用いて制御信号TRCPを発生し、ゲート制御回路170は、制御信号TRCPを昇圧して正側転送スイッチ150に供給する。出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合(時刻0から時刻t1までの間、および時刻t2以降)には、切替回路160および駆動回路165は、入力電圧VDDを用いて制御信号TRCPを発生し、ゲート制御回路170は、制御信号TRCPを昇圧して正側転送スイッチ150に供給する。ここで、ゲート制御回路170は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える場合には、入力電圧VDDを用いて制御信号TRCPの昇圧を行い、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合には、端子CPPの電圧を用いて制御信号TRCPの昇圧を行ってもよい。このためのゲート制御回路170の機能・構成については、図11に関連して後述する。
【0047】
以上に示したチャージポンプ装置100によれば、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTを比較した結果に応じて、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTのいずれを用いて正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150の制御信号を発生させるかを切り替えることができる。これにより、チャージポンプ装置100は、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150としてNチャネルFET等を用いた場合においても、これらに十分高い電圧の制御信号を供給してオンさせることができる。
【0048】
なお、本実施形態において、切替回路160は、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150の全てに対して、入力電圧VDDおよび出力電圧CPOUTのいずれを用いて制御信号の論理Hの電圧レベルを発生するかを切り替える構成を採る。これに代えて、切替回路160は、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150のうちの少なくとも1つの半導体スイッチに対してのみ、本手法を用いて制御信号を発生するようにしてもよい。この場合において、残りの半導体スイッチは、PチャネルFETとしてもよい。
【0049】
図3は、本実施形態に係る切替回路160の構成を示す。切替回路160は、論理否定素子310と、レベルシフタ320と、半導体スイッチMP_CPOと、半導体スイッチMP_B1と、半導体スイッチMP_B2と、半導体スイッチMP_VDDと、半導体スイッチMP_B3と、半導体スイッチMP_B4とを有する。
【0050】
論理否定素子310は、信号UVDET_Nの論理値を反転して、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合に論理L、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超えた場合に論理Hとなる反転値を出力する。レベルシフタ320は、論理否定素子310に接続される。レベルシフタ320は、出力電圧CPOUTを入力し、電圧VDDおよび電圧VSSをとる信号UVDET_Nの反転値を、電圧CPOUTおよび電圧VSSをとる信号UVDET_LSにレベルシフトする。ここで、レベルシフタ320は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合であっても、論理Lを出力可能である。
【0051】
半導体スイッチMP_CPOは、出力端子CPOUTおよび電圧VDD_SELの出力端子の間に主端子間が接続される。半導体スイッチMP_CPOは、制御端子に信号UVDET_Nを入力し、信号UVDET_Nが論理H(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDD)の場合にオフとなる。また、半導体スイッチMP_CPOは、信号UVDET_Nが論理L(出力電圧CPOUT>入力電圧VDD)の場合にオンとなって出力電圧CPOUTを電圧VDD_SELとして出力する。
【0052】
半導体スイッチMP_B1およびMP_B2は、半導体スイッチMP_CPOにおける出力端子CPOUT側の端子とバルクとの間、および半導体スイッチMP_CPOにおける駆動回路165側の端子とバルクとの間に主端子間が接続される。信号UVDET_Nが論理Hかつ信号UVDET_LSが論理L(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDD)の場合、半導体スイッチMP_B1はオフ、半導体スイッチMP_B2はオンとなり、半導体スイッチMP_CPOのバルク電圧は駆動回路165側の電圧となる。信号UVDET_Nが論理Lかつ信号UVDET_LSが論理H(出力電圧CPOUT>入力電圧VDD)の場合、半導体スイッチMP_B1はオン、半導体スイッチMP_B2はオフとなり、半導体スイッチMP_CPOのバルク電圧は出力端子CPOUT側の電圧となる。
【0053】
半導体スイッチMP_VDDは、切替回路160における、入力端子VDDおよび電圧VDD_SELの出力端子の間に主端子間が接続される。半導体スイッチMP_VDDは、制御端子に信号UVDET_LSを入力し、信号UVDET_LSが論理H(出力電圧CPOUT>入力電圧VDD)の場合にオフとなる。また、半導体スイッチMP_VDDは、信号UVDET_LSが論理L(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDD)の場合にオンとなって入力電圧VDDを電圧VDD_SELとして出力する。
【0054】
半導体スイッチMP_B3およびMP_B4は、半導体スイッチMP_VDDにおける入力端子VDD側とバルクとの間、および半導体スイッチMP_VDDにおける駆動回路165側とバルクとの間に主端子間が接続される。信号UVDET_Nが論理Hかつ信号UVDET_LSが論理L(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDD)の場合、半導体スイッチMP_B3はオン、半導体スイッチMP_B4はオフとなり、半導体スイッチMP_VDDのバルク電圧は入力端子VDD側の電圧となる。信号UVDET_Nが論理Lかつ信号UVDET_LSが論理H(出力電圧CPOUT>入力電圧VDD)の場合、半導体スイッチMP_B3はオフ、半導体スイッチMP_B4はオンとなり、半導体スイッチMP_VDDのバルク電圧は出力端子CPOUT側の電圧となる。
【0055】
以上に示した切替回路160によれば、信号UVDET_Nが論理Lの場合に電圧VDD_SELを出力電圧CPOUTとし、信号UVDET_Nが論理Hの場合に電圧VDD_SELを入力電圧VDDとすることができる。本実施形態において、切替回路160は、半導体スイッチMP_CPO、MP_VDD、およびMP_B1~4としてPチャネルMOSFETを用いている。これらの半導体スイッチは、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150のように負荷に供給する大電流を流すものではないので、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150と比較して非常に小さいサイズで実現できる。したがって、正側充電スイッチ120、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150をNチャネルFETとすることにより、切替回路160等の回路を付加してもなおチャージポンプ装置100のサイズを低減することができる。
【0056】
図4は、本実施形態に係る駆動回路165の構成を示す。駆動回路165は、タイミング発生器410と、クロックバッファ部420とを有する。
【0057】
タイミング発生器410は、クロック信号CPCLKを入力し、正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150用の制御信号を発生する。タイミング発生器410が発生する制御信号は、電圧VDDを論理Hとし、電圧VSSを論理Lとする。タイミング発生器410は、充電フェーズにおいて、正側充電スイッチ120および負側充電スイッチ130用の制御信号を論理Hとし、負側転送スイッチ135および正側転送スイッチ150用の制御信号を論理Lとする。また、タイミング発生器410は、転送フェーズにおいて、正側充電スイッチ120および負側充電スイッチ130用の制御信号を論理Lとし、負側転送スイッチ135および正側転送スイッチ150用の制御信号を論理Hとする。
【0058】
クロックバッファ部420は、タイミング発生器410に接続される。クロックバッファ部420は、電圧VDD_SELを入力し、タイミング発生器410が出力する制御信号の電圧レベルを、電圧VDD_SELを用いて変換する。クロックバッファ部420は、バッファ430a~dを含む。バッファ430a~dは、入力される制御信号の論理Hの電圧を電圧VDD_SELにレベル変換して、電圧VDD_SELを論理Hとし、電圧VSSを論理Lとする制御信号CHCP(図1中「a」)、CHCN(図1中「b」)、TRCN(図1中「c」)、およびTRCP(図1中「d」)を出力する。
【0059】
図5は、本実施形態に係る駆動回路165の動作の一例を示すタイミングチャートである。本図の上側は、制御信号CHCPおよびCHCNの電圧の時間変化を示し、本図の下側は、制御信号TRCPおよびTRCNの電圧の時間変化を示す。
【0060】
駆動回路165は、制御信号CHCPおよびCHCNと、制御信号TRCPおよびTRCNとを交互に論理Hとする。ここで、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合(図中時刻0から時刻t1までの間)、バッファ430a~dは、電圧VDD_SELとして入力電圧VDDを入力し、論理Hが入力電圧VDDとなる制御信号を出力する。出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える場合(図中時刻t2以降)、バッファ430a~dは、電圧VDD_SELとして出力電圧CPOUTを入力し、論理Hが出力電圧CPOUTとなる制御信号を出力する。このようにして、駆動回路165は、切替回路160が出力する電圧VDD_SELを用いて、正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、負側転送スイッチ135、および正側転送スイッチ150をオンとする制御信号を発生することができる。
【0061】
図6は、本実施形態に係るゲート制御回路170の構成を示す。ゲート制御回路170は、正側転送スイッチ150のオフ期間の少なくとも一部において、入力電圧VDDを用いてオフセット電圧を充電する。そして、ゲート制御回路170は、正側転送スイッチ150をオンとする場合に、正側転送スイッチ150用の制御信号TRCPの電圧にオフセット電圧を加えて正側転送スイッチ150の制御端子に供給する。
【0062】
ゲート制御回路170は、第2キャパシタ610と、整流素子620とを含む。第2キャパシタ610は、一端(負側となる端子)がバッファ430dに接続されて制御信号TRCPが入力され、他端(正側となる端子)が正側転送スイッチ150の制御端子に接続される。整流素子620は、入力端子VDDと第2キャパシタ610の他端との間に接続される。
【0063】
図7は、本実施形態に係るゲート制御回路170の動作の一例を示すタイミングチャートである。本図は、上から順に、制御信号CHCPおよびCHCN、制御信号TRCPおよびTRCN、端子CPP、および正側転送スイッチ150の制御端子(ゲート)に供給される昇圧された制御信号のそれぞれの電圧の時間変化を示す。
【0064】
充電フェーズにおいて、駆動回路165は、制御信号CHCPおよびCHCNを論理H、制御信号TRCPおよびTRCNを論理Lとする。これにより、正側充電スイッチ120および負側充電スイッチ130はオンになり、負側転送スイッチ135および正側転送スイッチ150はオフとなる。この結果、第1キャパシタ115には入力電圧VDDが充電されて、端子CPPの電圧は入力電圧VDDとほぼ同じとなる。
【0065】
充電フェーズにおいて、第2キャパシタ610は、一端に論理L(電圧VSS)の制御信号TRCPを入力し、他端に整流素子620を介して入力電圧VDDを入力する。これにより、第2キャパシタ610は、入力電圧VDDをオフセット電圧として充電する。
【0066】
転送フェーズにおいて、駆動回路165は、制御信号CHCPおよびCHCNを論理L、制御信号TRCPおよびTRCNを論理Hとする。出力電圧CPOUTが入力電圧VDDを超える場合、ゲート制御回路170は、論理Hの制御信号TRCPとして、出力電圧CPOUTを第2キャパシタ610の一端に入力する。これにより、正側転送スイッチ150の制御端子には、出力電圧CPOUTを第2キャパシタ610に充電したオフセット電圧分昇圧した制御信号が供給される。整流素子620は、入力端子VDDから第2キャパシタ610の他端への向きに電流を流し、第2キャパシタ610の他端から入力端子VDDへの電流の逆流を防ぐ。
【0067】
なお、正側転送スイッチ150は、ゲートに寄生容量を有するので、第2キャパシタ610の一端が出力電圧CPOUTとなったことに応じて、第2キャパシタ610および正側転送スイッチ150の寄生容量との間で電荷が再配分される。この結果、正側転送スイッチ150の制御端子は、出力電圧CPOUTにオフセット電圧VDDを再配分した電圧VDD×α(0<α<1)を加えた電圧CPOUT+VDD×αとなる。
【0068】
以上に示した170によれば、充電フェーズにおいて第2キャパシタ610に入力電圧VDDを充電しつつ、正側転送スイッチ150の制御端子に電圧VDDの制御信号を供給する。ここで、正側転送スイッチ150のソースは、充電フェーズにおいて入力電圧VDDとなるから、正側転送スイッチ150は、制御端子を電圧VSSまで落とさなくても十分にオフとすることができる。そして、充電フェーズにおいて制御端子に電圧VDDを供給することにより、ゲート制御回路170は、正側転送スイッチ150の寄生容量を電圧VDD相当分まで充電した状態とすることができる。これにより、ゲート制御回路170は、転送フェーズにおける電荷の再配分に伴って正側転送スイッチ150の寄生容量を電圧VSS相当分から充電する必要がなくなり、比較的少ない容量の第2キャパシタ610を用いて制御端子の電圧を十分に昇圧させることが可能となる。
【0069】
また、第2キャパシタ610の一端にバッファ430dからの制御信号TRCPを入力することにより、ゲート制御回路170は、第2キャパシタ610から正側転送スイッチ150へとオフセット電圧を供給するための半導体スイッチ等を設ける必要がなくなり、そのような半導体スイッチのタイミング制御を不要とすることができる。
【0070】
図8は、本実施形態に係る電流制限回路140a~cの構成を正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、および負側転送スイッチ135と共に示す。本実施形態において、正側充電スイッチ120は、並列に接続された複数の正側充電スイッチ120a~bを有する。複数の正側充電スイッチ120a~bのうちの一部である正側充電スイッチ120aは、制御信号CHCPを制御端子に入力し、制御信号CHCPに応じてオンオフを切り替える。複数の正側充電スイッチ120a~bのうちの残りの正側充電スイッチ120bは、電流制限回路140aの出力を制御端子に入力し、電流制限回路140aの出力に応じてオンオフを切り替える。
【0071】
電流制限回路140aは、駆動回路165からの制御信号CHCPおよび比較回路155からの信号UVDET_Nを入力する。電流制限回路140aは、信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)に、制御信号CHCPを強制的に論理Lとする。これにより、電流制限回路140aは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、正側充電スイッチ120bがオンとならないようにして、入力端子VDDからチャージポンプ昇圧回路110内の第1キャパシタ115へと流入する電流を制限する。
【0072】
本実施形態に係る電流制限回路140aは、制御信号CHCPの反転値と信号UVDET_Nとの否定論理和をとる否定論理和素子を含む。これにより、電流制限回路140aは、信号UVDET_Nが論理Hの場合には、制御信号CHCPの論理値によらず論理Lを出力する。
【0073】
負側充電スイッチ130は、並列に接続された複数の負側充電スイッチ130a~bを有する。複数の負側充電スイッチ130a~bのうちの一部である負側充電スイッチ130aは、制御信号CHCNを制御端子に入力し、制御信号CHCNに応じてオンオフを切り替える。複数の負側充電スイッチ130a~bのうちの残りの負側充電スイッチ130bは、電流制限回路140bの出力を制御端子に入力し、電流制限回路140bの出力に応じてオンオフを切り替える。
【0074】
電流制限回路140bは、駆動回路165からの制御信号CHCNおよび比較回路155からの信号UVDET_Nを入力する。電流制限回路140bは、信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)に、制御信号CHCNを強制的に論理Lとする。これにより、電流制限回路140bは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、負側充電スイッチ130bがオンとならないようにして、入力端子VDDからチャージポンプ昇圧回路110内の第1キャパシタ115へと流入する電流を制限する。電流制限回路140bの構成は、電流制限回路140aと同様であるから説明を省略する。
【0075】
負側転送スイッチ135は、並列に接続された複数の負側転送スイッチ135a~bを有する。複数の負側転送スイッチ135a~bのうちの一部である負側転送スイッチ135aは、制御信号TRCNを制御端子に入力し、制御信号TRCNに応じてオンオフを切り替える。複数の負側転送スイッチ135a~bのうちの残りの負側転送スイッチ135bは、電流制限回路140cの出力を制御端子に入力し、電流制限回路140cの出力に応じてオンオフを切り替える。
【0076】
電流制限回路140cは、駆動回路165からの制御信号TRCNおよび比較回路155からの信号UVDET_Nを入力する。電流制限回路140cは、信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)に、制御信号TRCNを強制的に論理Lとする。これにより、電流制限回路140cは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、負側転送スイッチ135bがオンとならないようにして、負側転送スイッチ135、第1キャパシタ115、および出力回路145を介して端子CPPから出力端子CPOUTへと出力される電流を制限する。電流制限回路140cの構成は、電流制限回路140aと同様であるから説明を省略する。
【0077】
以上に示した電流制限回路140a~cによれば、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、並列に接続された半導体スイッチを含む正側充電スイッチ120、負側充電スイッチ130、および負側転送スイッチ135のそれぞれの一部の半導体スイッチをオンとさせないようにする。これにより、電流制限回路140a~cは、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、チャージポンプ昇圧回路110が入力端子VDDから入力する電流またはチャージポンプ昇圧回路110が端子CPPから出力回路145へと出力する電流の少なくとも1つを制限してチャージポンプ装置100の動作を安定化することができる。
【0078】
図9は、本実施形態の第1変形例に係るゲート制御回路900の構成を示す。ゲート制御回路900は、図6に示したゲート制御回路170の第1変形例である。ゲート制御回路900は、第2キャパシタ910と、整流素子920とを有する。第2キャパシタ910は、図6の第2キャパシタ610と同様であるから説明を省略する。
【0079】
整流素子920は、入力端子VDDおよび第2キャパシタ610の他端(正側となる端子)の間に主端子間が接続される。より具体的には、整流素子920は、ソースが入力端子VDD側、ドレインが第2キャパシタ910側に接続され、ゲート(制御端子)が入力端子VDDに接続されたNチャネルFETである。このような構成により、整流素子920は、第2キャパシタ910の他端の電圧がVDD以下の場合には入力端子VDDから第2キャパシタ910の他端へと電流を流し、第2キャパシタ910の他端の電圧がVDDを超えると第2キャパシタ910の他端から入力端子VDDへの電流の逆流を防ぐ。
【0080】
図10は、本実施形態の第2変形例に係るゲート制御回路1000の構成を示す。ゲート制御回路1000は、図6に示したゲート制御回路170の第2変形例である。ゲート制御回路1000は、第2キャパシタ1010と、整流素子1020と、スイッチ1030と、スイッチ1040とを有する。第2キャパシタ1010および整流素子1020は、図9の第2キャパシタ910および整流素子920とそれぞれ同様であるから説明を省略する。
【0081】
スイッチ1030は、主端子間が入力端子VDDおよび整流素子1020の間に接続され、ゲートにパワーダウン信号PDを受ける。本実施形態に係るスイッチ1030は、一例としてPチャネルFETである。ここで、パワーダウン信号PDは、チャージポンプ装置100の動作中は論理Lであり、チャージポンプ装置100の電源を落とす前に論理Hとされる。パワーダウン信号PDが論理Lの間、スイッチ1030はオン状態となる。これにより、スイッチ1030は、チャージポンプ装置100の通常動作中、入力電圧VDDをノードGATE_DIに供給する。これにより、ゲート制御回路1000は、ゲート制御回路900と同様に機能する。パワーダウン信号PDが論理Hとなると、スイッチ1030はオフ状態となる。これにより、チャージポンプ装置100の電源が落ちる前に、スイッチ1030は、第2キャパシタ1010への入力電圧VDDの供給を遮断する。
【0082】
スイッチ1040は、正側の主端子(一例としてドレイン)が整流素子1020およびスイッチ1030の間のノードGATE_DIに接続され、負側の主端子(一例としてソース)がグランドVSSに接続され、ゲートにパワーダウン信号PDを受ける。本実施形態に係るスイッチ1040は、一例としてNチャネルFETである。パワーダウン信号が論理Lの間、スイッチ1040は、オフ状態となる。これにより、スイッチ1040は、チャージポンプ装置100の通常動作中、ノードGATE_DIとグランドVSSとの間を遮断する。パワーダウン信号PDが論理Hとなると、スイッチ1040はオン状態となる。これにより、チャージポンプ装置100の電源が落ちる前に、スイッチ1040は、ノードGATE_DIをグランドVSSに接続する。
【0083】
ここで、ノードGATE_DIがグランド電圧VSSになると、整流素子1020は、ゲート電圧がVDD、ソース電圧がVSSとなり、オン状態となる。これにより、整流素子1020は、チャージポンプ装置100の電源が落ちる前に、第2キャパシタ1010に充電された電荷をスイッチ1040を介して放電することができる。
【0084】
図11は、本実施形態の第3変形例に係るゲート制御回路1100の構成を示す。ゲート制御回路1100は、図6に示したゲート制御回路170の第3変形例である。ゲート制御回路1100は、第2キャパシタ1110と、整流素子1120と、スイッチ1130と、スイッチ1140とを有する。第2キャパシタ1110と、整流素子1120とは、図10の第2キャパシタ1010と、整流素子1020とそれぞれ同様であるから説明を省略する。
【0085】
スイッチ1130は、主端子間が入力端子VDDおよび整流素子1120の間に接続され、ゲートに信号UVDET_Nを受ける。本実施形態に係るスイッチ1130は、一例としてPチャネルFETである。信号UVDET_Nが論理Lの場合(出力電圧CPOUT>入力電圧VDDの場合)、スイッチ1130は、オン状態となる。これにより、スイッチ1130は、チャージポンプ装置100が入力電圧VDDを超える出力電圧CPOUTを出力している間、ノードGATE_DIを電圧VDDとし、ゲート制御回路1100を図9のゲート制御回路900と同様に動作させることができる。信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)、スイッチ1130は、オフ状態となる。
【0086】
スイッチ1140は、正側の主端子(一例としてドレイン)が端子CPPに、負側の主端子(一例としてソース)が整流素子1120およびスイッチ1130の間のノードGATE_DIに接続され、ゲートに信号UVDET_Nを受ける。本実施形態に係るスイッチ1140は、一例としてNチャネルFETである。信号UVDET_Nが論理Lの場合(出力電圧CPOUT>入力電圧VDDの場合)、スイッチ1040は、オフ状態となる。信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)、スイッチ1140は、オン状態となる。これにより、スイッチ1140は、チャージポンプ装置100の起動中およびチャージポンプ装置100の電源を落とす前には端子CPPの電圧をノードGATE_DIに供給する。
【0087】
これにより、ゲート制御回路1100は、図2の「ゲート制御」のタイミングチャートに示したように、出力電圧CPOUTが入力電圧VDD以下の場合には端子CPPの電圧を第2キャパシタ1110へと供給することができる。この結果、充電フェーズにおいては正側転送スイッチ150のゲートおよびソースの電圧がいずれも端子CPPの電圧となり、ゲート-ソース電圧Vgsが実質的に0となるので、正側転送スイッチ150はオフ状態となる。したがって、ゲート制御回路1100は、充電フェーズに切り替わった直後等において端子CPPの電圧が低い場合においても、正側転送スイッチ150をオフ状態とすることができる。
【0088】
転送フェーズにおいては、正側転送スイッチ150のゲートは出力電圧CPOUTに対して端子CPPの電圧分昇圧されるので、正側転送スイッチ150はオン状態となる。また、チャージポンプ装置100は、電源を落とす前にパワーダウン状態となって端子CPPをグランド電圧VSSに低下させる機能を有してよい。これにより、スイッチ1140は、パワーダウン状態においては整流素子1120を介して第2キャパシタ1110を放電することができる。
【0089】
図12は、本実施形態の第4変形例に係るゲート制御回路1200の構成を、正側転送スイッチ150a~bと共に示す。本変形例においては、正側転送スイッチ150は、並列に接続された複数の正側転送スイッチ150a~bを有する。複数の正側転送スイッチ150a~bのうちの一部である正側転送スイッチ150aは、制御信号TRCPを制御端子に入力し、制御信号TRCPに応じてオンオフを切り替える。複数の正側転送スイッチ150a~bのうちの残りの正側転送スイッチ150bは、電流制限回路1250の出力を制御端子に入力し、電流制限回路1250の出力に応じてオンオフを切り替える。
【0090】
ゲート制御回路1200は、図6に示したゲート制御回路170の第4変形例であり、正側転送スイッチ150に流れる電流を制限する機能を図11のゲート制御回路1100に追加したものである。ゲート制御回路1200は、複数の第2キャパシタ1210a~bと、複数の整流素子1220a~bと、スイッチ1230と、スイッチ1240と、電流制限回路1250とを有する。
【0091】
複数の第2キャパシタ1210a~bのそれぞれは、第2キャパシタ1210bの一端には制御信号TRCPに代えて電流制限回路1250の出力が入力されることを除いて図11の第2キャパシタ1110と同様であるから説明を省略する。複数の整流素子1220a~bのそれぞれは、複数の第2キャパシタ1210a~bのそれぞれに対応して設けられる他は、図11の整流素子1120と同様であるから説明を省略する。また、スイッチ1230およびスイッチ1240は、図11のスイッチ1130およびスイッチ1140と同様であるから説明を省略する。
【0092】
電流制限回路1250は、駆動回路165からの制御信号TRCPおよび比較回路155からの信号UVDET_Nを入力する。電流制限回路1250は、信号UVDET_Nが論理Hの場合(出力電圧CPOUT≦入力電圧VDDの場合)に、制御信号TRCPを強制的に論理Lとして第2キャパシタ1210bに供給する。これにより、電流制限回路1250は、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、正側転送スイッチ150bがオンとならないようにして、チャージポンプ昇圧回路110から出力端子CPOUTへと流出する電流を制限する。
【0093】
本変形例に係る電流制限回路1250は、制御信号TRCPの反転値と信号UVDET_Nとの否定論理和をとる否定論理和素子を含む。これにより、電流制限回路1250は、信号UVDET_Nが論理Hの場合には、制御信号TRCPの論理値によらず論理Lを出力する。
【0094】
以上に示したゲート制御回路1200によれば、出力電圧CPOUTが入力電圧VDDよりも低いことに応じて、チャージポンプ昇圧回路110から出力端子CPOUTへと流出する電流を制限する。これにより、ゲート制御回路1200は、チャージポンプ装置100の起動時の動作を安定化させ、また第1キャパシタ115の過放電を防ぐことができる。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0096】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0097】
100 チャージポンプ装置、110 チャージポンプ昇圧回路、115 第1キャパシタ、120 正側充電スイッチ、125 バルク制御回路、130 負側充電スイッチ、135 負側転送スイッチ、140a~c 電流制限回路、145 出力回路、150 正側転送スイッチ、155 比較回路、160 切替回路、165 駆動回路、170 ゲート制御回路、310 論理否定素子、320 レベルシフタ、410 タイミング発生器、420 クロックバッファ部、430a~d バッファ、610 第2キャパシタ、620 整流素子、900 ゲート制御回路、910 第2キャパシタ、920 整流素子、1000 ゲート制御回路、1010 第2キャパシタ、1020 整流素子、1030 スイッチ、1040 スイッチ、1100 ゲート制御回路、1110 第2キャパシタ、1120 整流素子、1130 スイッチ、1140 スイッチ、1200 ゲート制御回路、1210a~b 第2キャパシタ、1220a~b 整流素子、1230 スイッチ、1240 スイッチ、1250 電流制限回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12