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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240216BHJP
   C23C 16/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021079087
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172829
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 修一
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-141698(JP,A)
【文献】特開昭60-060714(JP,A)
【文献】特開2011-060979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原料にハロゲンガスを供給することで生成した反応ガスを基板上に導入することにより、前記基板上に半導体膜を成長させる気相成長装置であって、
パージガスで満たされた反応炉内において前記基板を保持するサセプタと、
前記サセプタを加熱する加熱手段と、
前記反応炉内に設けられるとともに、内部に第1の金属原料が配置され、該第1の金属原料に前記ハロゲンガスを供給することで生成した第1の反応ガスを前記基板上に導く第1ガスノズルと、
前記反応炉内に設けられるとともに、内部に第2の金属原料が配置され、該第2の金属原料に前記ハロゲンガスを供給することで生成した第2の反応ガスを前記基板上に導く第2ガスノズルと、
前記サセプタの位置を、前記第1ガスノズルにおける前記第1の反応ガスの噴出口と互いに向かい合う第1の位置と、前記第2ガスノズルにおける前記第2の反応ガスの噴出口と互いに向かい合う第2の位置とで切り替えるサセプタ移動機構と、
前記サセプタを回転させるサセプタ回転軸と、を備え、
さらに、前記第1ガスノズルと前記第2ガスノズルとの間に配置され、前記基板上にパージガスを導くパージガスノズルを具備し、
前記サセプタ移動機構は、前記サセプタの位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置し、前記パージガスノズルにおける前記パージガスの噴出口と互いに向かい合う第3の位置に切り替え可能であり、
前記サセプタ回転軸は、その中心軸に沿って前記サセプタを回転させることができる、ことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記第1ガスノズル及び前記第2ガスノズルのうちの一方又は両方が、内部に複数の金属原料が配置され、該複数の金属原料と前記ハロゲンガスとから生成される反応ガスを前記基板上に導くものであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記第1ガスノズルは、前記基板上に第1の半導体膜を成長させ、前記第2ガスノズルは、前記第1の半導体膜上に第2の半導体膜を成長させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記第1ガスノズルは、前記第2ガスノズルによって成長させた前記第2の半導体膜上に、さらに、前記第1の半導体膜を成長させることを特徴とする請求項3に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記第1ガスノズル及び前記第2ガスノズルは、前記第1の半導体膜と前記第2の半導体膜とを交互に積層しながら成長させることを特徴とする請求項3に記載の気相成長装置。
【請求項6】
さらに、前記反応炉における前記第2ガスノズルの近傍に、余剰となった前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガス、並びに前記パージガスを外部に排出する排気口が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関し、特に、反応炉内において、加熱環境下でサセプタに保持された基板に対して複数の反応ガスを供給して作用させることにより、基板上に複数の半導体薄膜を形成・成長させるための気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に半導体膜を成長させるための装置として気相成長装置が知られている。この気相成長装置は、反応炉内において、加熱環境下でサセプタの表面に配置された気相成長用の基板上に半導体膜を成長させる。例えば、窒化ガリウムやガリウム砒素等の化合物半導体薄膜を基板上に形成する場合には、金属原料としてIII族原料となるガリウムを含むものを使用し、これに塩化水素等のハロゲンガスを供給することで、ガス状の金属塩化物を基板上に供給する方法が用いられる。
【0003】
上記のように、金属原料にハロゲンガスを供給してガス状の金属塩化物を発生させる反応は、一般に300~800℃程度の高温下で行われることから、上記反応が行われる箇所から基板までの各工程の間は、通常、高温に加熱した状態とする(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、基板上に異なる組成の膜を連続して積層することで半導体膜を形成する工程においては、例えば、インジウムガリウム燐薄膜を基板の表面に形成した後に、その上にガリウム砒素薄膜を形成する場合、以下に説明するような手順が用いられる。即ち、まず、インジウムガリウム燐薄膜の原料の一つであるインジウムについては、インジウム単体金属に塩化水素等のハロゲンガスを供給することで塩化インジウムを生成させ、基板上に導入する。そして、インジウムガリウム燐薄膜の上にガリウム砒素薄膜を形成する工程を実施するが、この際、基板上に残留する塩化インジウムがガリウム砒素薄膜に混入することが避けられないという問題がある。これは、上記の反応によって得られた塩化インジウムからなる反応ガスが高温であるため、制御弁等によってガスの流れを制御することが困難であることから、気相成長装置において不可避的に生じる問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4546700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、気相成長用の基板上に異なる組成の膜を連続して成長させる場合であっても、最初に成膜した半導体膜の原料に由来する残留成分が、その後に成膜する半導体膜の膜中に混入するのを効果的に抑制でき、優れた成膜品質で半導体膜を成長させることが可能な気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。この結果、基板の表面に最初の半導体膜の成長に用いられる第1ガスノズルと、その上に積層して設けられる半導体膜の成長に用いられる第2ガスノズルとの間にパージガスノズルを配置し、最初の半導体膜を成長させた後、その表面にパージガスを供給できる構成を採用することで、その後に成長させる半導体膜に、最初に成膜した半導体膜の原料に由来する残留成分が混入するのを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、請求項1に係る発明は、金属原料にハロゲンガスを供給することで生成した反応ガスを基板上に導入することにより、前記基板上に半導体膜を成長させる気相成長装置であって、パージガスで満たされた反応炉内において前記基板を保持するサセプタと、前記サセプタを加熱する加熱手段と、前記反応炉内に設けられるとともに、内部に第1の金属原料が配置され、該第1の金属原料に前記ハロゲンガスを供給することで生成した第1の反応ガスを前記基板上に導く第1ガスノズルと、前記反応炉内に設けられるとともに、内部に第2の金属原料が配置され、該第2の金属原料に前記ハロゲンガスを供給することで生成した第2の反応ガスを前記基板上に導く第2ガスノズルと、前記サセプタの位置を、前記第1ガスノズルにおける前記第1の反応ガスの噴出口と互いに向かい合う第1の位置と、前記第2ガスノズルにおける前記第2の反応ガスの噴出口と互いに向かい合う第2の位置とで切り替えるサセプタ移動機構と、を備え、さらに、前記第1ガスノズルと前記第2ガスノズルとの間に配置され、前記基板上にパージガスを導くパージガスノズルを具備し、前記サセプタ移動機構は、前記サセプタの位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置し、前記パージガスノズルにおける前記パージガスの噴出口と互いに向かい合う第3の位置に切り替え可能である、ことを特徴とする気相成長装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の気相成長装置であって、前記第1ガスノズル及び前記第2ガスノズルのうちの一方又は両方が、内部に複数の金属原料が配置され、該複数の金属原料と前記ハロゲンガスとから生成される反応ガスを前記基板上に導くものであることを特徴とする気相成長装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置であって、前記第1ガスノズルは、前記基板上に第1の半導体膜を成長させ、前記第2ガスノズルは、前記第1の半導体膜上に第2の半導体膜を成長させることを特徴とする気相成長装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の気相成長装置であって、前記第1ガスノズルは、前記第2ガスノズルによって成長させた前記第2の半導体膜上に、さらに、前記第1の半導体膜を成長させることを特徴とする気相成長装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の気相成長装置であって、前記第1ガスノズル及び前記第2ガスノズルは、前記第1の半導体膜と前記第2の半導体膜とを交互に積層しながら成長させることを特徴とする気相成長装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の気相成長装置であって、さらに、前記反応炉における前記第2ガスノズルの近傍に、余剰となった前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガス、並びに前記パージガスを外部に排出する排気口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る気相成長装置によれば、上記のように、第1の反応ガスを基板上に導く第1ガスノズルと、第2の反応ガスを基板上に導く第2ガスノズルと、サセプタの位置を、第1ガスノズルに対応する第1の位置と、第2ガスノズルに対応する第2の位置とで切り替えるサセプタ移動機構とを備え、さらに、第1ガスノズルと第2ガスノズルとの間に配置され、基板上にパージガスを導くパージガスノズルを具備し、サセプタ移動機構が、サセプタの位置を、第1の位置と第2の位置との間に位置し、パージガスノズルに対応する第3の位置に切り替え可能な構成を採用している。
これにより、第1ガスノズルから成膜原料となる第1の反応ガスを基板上に供給した後、基板を保持したサセプタをパージガスノズルに対応する第3の位置に移動させ、基板上にパージガスを供給することで、基板上に残留した第1の反応ガスに由来する成分を除去できる。その後、基板を保持したサセプタを第2ガスノズルに対応する第2の位置に移動させ、基板上に第2の反応ガスを供給することで、第1の反応ガスに由来する成分が混入することなく、半導体膜を積層して成長させることが可能になる。
従って、気相成長用の基板上に異なる組成の膜を連続して成長させる場合であっても、最初に成膜した半導体膜の原料に由来する残留成分が、その後に成膜する半導体膜の膜中に混入するのを効果的に抑制でき、優れた成膜品質で半導体膜を成長させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である気相成長装置を模式的に説明する図であり、反応炉の内部構成の一例を概略で示す破断図である。
図2】本発明の一実施形態である気相成長装置を模式的に説明する図であり、反応炉の内部構成の他の例を概略で示す破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態である気相成長装置について、図1及び図2を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である気相成長装置100を模式的に説明する図であり、反応炉1の内部の構成の一例を概略で示す破断図である。
また、図2は、本発明の一実施形態である気相成長装置200を模式的に説明する図であり、反応炉1の内部の構成の他の例を概略で示す破断図である。
以下の説明においては、図1及び図2を参照しながら、当該気相成長装置の構成と、基板上に異なる組成の半導体膜を連続して形成する場合の工程について詳述する。
【0018】
<気相成長装置の構成>
本発明に係る気相成長装置の一例について説明する。
図1に例示する気相成長装置100は、金属原料にハロゲンガスを供給することで生成した反応ガスを基板上に導入することにより、基板上に半導体膜を成長させるものであり、第1ガスノズル10と、第2ガスノズル20と、パージガスノズル30と、サセプタ17と、サセプタ移動機構4とが設けられた反応炉1を備え、概略構成される。
【0019】
そして、本実施形態の気相成長装置100は、サセプタ移動機構4が、サセプタ17の位置を、第1ガスノズル10における第1の反応ガスG1の噴出口15と互いに向かい合う第1の位置P1と、第2ガスノズル20における第2の反応ガスG2の噴出口25と互いに向かい合う第2の位置P2と、第1の位置P1と第2の位置P2との間に位置し、パージガスノズル30におけるパージガスG3の噴出口35に対応する第3の位置P3とに切り替え可能な構成を採用している。
【0020】
反応炉1は、図1及び図2では詳細な図示を省略しているが、側壁、並びに、両端側に配置されたガス導入部2及びサセプタ保持部3により、概略略円筒状の密閉容器を形成している。
また、本実施形態の気相成長装置100においては、反応炉1の内部にパージガスが封入された構成を採用できる。
【0021】
反応炉1内においては、サセプタ保持部3、サセプタ移動機構4及びサセプタ回転軸18により、基板16が保持されたサセプタ17が支持されている。
サセプタ17は、通常、熱の良導体(例えば、カーボン等)で形成され、さらに好適には、原料ガス(反応ガス)による腐食を防止する観点から、SiC等のコーティングが施される。また、サセプタ17は、気相成長する薄膜の膜厚の平均化を図るため、その中心軸、即ち、図1中に示すサセプタ回転軸18の中心軸に沿って回転可能に構成されている。
また、サセプタ17の内部、あるいはその近傍には、このサセプタ17を加熱することで、サセプタ17に保持される基板16を加熱するための、図視略の加熱手段が設けられている。
【0022】
サセプタ17を加熱する図視略の加熱手段としては、特に限定されないが、昇降温レートを重視する観点からは、加熱手段として、高周波を発生させるRFコイルを用いることが好ましいが、RFコイルの代わりに、一般的なヒータやランプ等を用いることも可能である。このようなヒータを加熱手段に用いる場合には、通常、材質的に安価で加工が容易なカーボンヒータが多用され、上述したようなカーボン等から構成されるサセプタ17を加熱できる構成が採用される。
【0023】
ここで、図1中では図示を省略しているが、サセプタ回転軸18におけるサセプタ17が配置された一端とは反対側の他端には歯車等の回転力伝達機構が取り付けられており、さらに、この回転力伝達機構に図示略のモータが取り付けられていることで、このモータの駆動によってサセプタ回転軸18が回転するように構成されている。一方、サセプタ回転軸18、図視略の歯車及びモータは一体とされ、詳細を後述するサセプタ移動機構4により、第1ガスノズル10、第2ガスノズル20及びパージガスノズル30とそれぞれ対応する位置、即ち、第1~第3の位置P1~P3に、一定距離で摺動して移動することが可能に構成されている。即ち、一体とされたサセプタ回転軸18(サセプタ17も含む)、図視略の歯車及びモータは、図1中における紙面方向で上下に移動可能とされている。
【0024】
反応炉1内には、フランジ部材等からなるガス導入部2を貫通するように、このガス導入部2によって支持される第1ガスノズル10、第2ガスノズル20、及びパージガスノズル30が配置されている。これら第1ガスノズル10、第2ガスノズル20、及びパージガスノズル30としては、例えば、石英製のものが好適に用いられる。
【0025】
第1ガスノズル10は、上述したように、反応炉1内に設けられるものであり、内部に第1の金属原料M1が配置され、この第1の金属原料M1にハロゲンガスG4を供給することで生成した第1の反応ガスG1を、噴出口15から基板16上に導くように構成される。
【0026】
第1ガスノズル10は、図1中では詳細な図示を省略しているが、概略円筒状に構成され、内部に、第1の金属原料M1が充填される金属原料容器11が配置されている。また、第1ガスノズル10の内部には、ガス原料導入部13、ハロゲンガス導入部14が設けられ、ガス原料導入部13の円筒内にハロゲンガス導入部14が配置されている。また、ハロゲンガス導入部14の円筒内に金属原料容器11が配置されている。
【0027】
ガス原料導入部13は、反応炉1におけるガス導入部2側から導入されるガス原料G5を、噴出口15側から、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導くことが可能な構成とされている。
ハロゲンガス導入部14は、反応炉1におけるガス導入部2側から導入されるハロゲンガスG4を第1の金属原料M1に供給して反応させ、金属ハロゲン化物からなる第1の反応ガスG1として、噴出口15側から、ガス原料導入部13に導入されたガス原料G5とともに、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導くことが可能な構成とされている。
【0028】
金属原料容器11に充填される第1の金属原料M1としては、特に限定されず、所望する膜特性に応じた金属原料を採用することができ、例えば、ガリウム単体金属等が挙げられる。
【0029】
第2ガスノズル20は、反応炉1内に設けられるものであり、内部に第2の金属原料M2が配置され、この第2の金属原料M2にハロゲンガスG4を供給することで生成した第2の反応ガスG2を、噴出口25から基板16上に導くように構成される。
【0030】
第2ガスノズル20についても、第1ガスノズル10と同様、図1中では詳細な図示を省略しているが、概略円筒状に構成され、内部に、第2の金属原料M2が充填される金属原料容器21が配置されている。また、第2ガスノズル20の内部にも、ガス原料導入部23、ハロゲンガス導入部24が設けられ、ガス原料導入部23の円筒内にハロゲンガス導入部24が配置されている。また、ハロゲンガス導入部24の円筒内に金属原料容器21が配置されている。
【0031】
ガス原料導入部23は、上記のガス原料導入部13と同様、反応炉1におけるガス導入部2側から導入されるガス原料G5を、噴出口25側から、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導くことが可能な構成とされている。
また、ハロゲンガス導入部24も、上記同様、反応炉1におけるガス導入部2側から導入されるハロゲンガスG4を第2の金属原料M2に供給して反応させ、金属ハロゲン化物からなる第2の反応ガスG2として、噴出口25側から、ガス原料導入部23に導入されたガス原料G5とともに、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導くことが可能な構成とされている。
【0032】
金属原料容器21に充填される第2の金属原料M2としても、特に限定されないが、例えば、第1ガスノズル10の金属原料容器11に充填される第1の金属原料M1としてガリウム単体金属を用いた場合には、第2の金属原料M2として、インジウム単体金属、又は、第1の金属原料M1と同じガリウム単体金属を用いることが可能である。
【0033】
上記構成により、本実施形態の気相成長装置100によれば、第1ガスノズル10が、基板16上に図視略の第1の半導体膜を成長させ、第2ガスノズル20が、上記の第1の半導体膜上に図視略の第2の半導体膜を成長させる。
【0034】
パージガスノズル30は、反応炉1内において、第1ガスノズル10と第2ガスノズル20との間に配置され、噴出口35から基板16上にパージガスG3を導くように構成される。
パージガスノズル30も、上述した第1ガスノズル10及び第2ガスノズル20と同様、図1中では詳細な図示を省略しているが、概略円筒状に構成され、反応炉1におけるガス導入部2側、即ち、パージガス導入部33側から導入されるパージガスG3を、噴出口35側から、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導くことが可能な構成とされている。
【0035】
なお、本実施形態において説明する、上記の「円筒状」とは、例えば、その断面における内部空間の形状が、断面真円形状に近いものの他、楕円形状等、断面形状が概略円形状であるものを全て含む。
さらに、本実施形態においては、上記の第1ガスノズル10、第2ガスノズル20、及びパージガスノズル30の形状は、円筒状のみに限定されるものではなく、例えば、角筒状等、他の断面形状を採用することも可能である。
【0036】
サセプタ移動機構4は、上述したように、サセプタ17の位置を、第1ガスノズル10における第1の反応ガスG1の噴出口15と互いに向かい合う第1の位置P1と、第2ガスノズル20における第2の反応ガスG2の噴出口25と互いに向かい合う第2の位置P2との間で切り替え可能に構成されている。
また、本実施形態の気相成長装置100に備えられるサセプタ移動機構4は、サセプタ17の位置を、さらに、第1の位置P1と第2の位置P2との間に位置し、パージガスノズル30におけるパージガスG3の噴出口35に対応する第3の位置P3にも切り替え可能な構成を採用している。
【0037】
サセプタ移動機構4における、サセプタ17を移動させるための構成としては、特に限定されないが、例えば、図視略のモータを動力源として用い、複数の歯車を組み合わせて動力を伝達する構造の他、プーリとベルトとを組み合わせたものや、スプロケットとチェーンとを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0038】
また、図1中に示すように、本実施形態の気相成長装置100においては、さらに、反応炉1における第2ガスノズル20の近傍に、余剰となった第1の反応ガスG1及び第2の反応ガスG2、並びにパージガスG3を外部に排出するための排気口40が設けられている。
【0039】
本実施形態においては、上記のような、第1ガスノズル10と、第2ガスノズル20と、サセプタ17の位置を切り替えるサセプタ移動機構4とを備え、基板16上に複数の膜種の半導体膜を成長させる構成の気相成長装置において、さらに、上記のパージガスノズル30を具備し、サセプタ17の位置を、パージガスノズル30に対応する第3の位置P3を含めた位置で切り替え可能な構成を採用している。本実施形態の気相成長装置100によれば、上述した構成を採用することで、以下に説明するような作用・効果が得られる。
【0040】
従来の構成の気相成長装置においては、詳細な図示は省略するが、第1ガスノズルから原料ガスを基板に供給した後、基板の位置を第2ガスノズルに対応する位置に切り替えることで、異なる原料を基板に供給し、異なる複数の膜種からなる半導体膜を基板上に成長させていた。しかしながら、このような従来の装置では、第1ガスノズルから噴出した原料ガスが基板上に残留することから、第2ガスノズルから供給される原料ガスとの混在が生じ、半導体膜中に不純物として取り込まれてしまうという問題があった。
【0041】
これに対し、本実施形態の気相成長装置100によれば、第1ガスノズル10から成膜原料となる第1の反応ガスG1を基板16上に供給して第1の半導体膜を成長させた後、基板16を保持したサセプタ17をパージガスノズル30に対応する第3の位置P3に移動させ、基板16上にパージガスG3を供給することで、基板16上に残留した第1の反応ガスG1に由来する成分を除去できる。その後、基板16を保持したサセプタ17を第2ガスノズル20に対応する第2の位置P2に移動させ、基板16上に第2の反応ガスG2を供給することで、第1の反応ガスG1に由来する成分が混入することなく、第1の半導体膜の上に第2の半導体膜を積層して成長させることが可能になる。
【0042】
なお、本実施形態の気相成長装置100で用いる、ハロゲンガスG4及びガス原料G5のガス種としては、特に限定されず、従来からこの分野で用いられているガスを何ら制限無く用いることが可能である。
これらのうち、ハロゲンガス導入部14,24に導入するハロゲンガスG4としては、例えば、塩化水素ガス等を用いることができる。
また、ガス原料導入部13,23に導入するガス原料G5としては、例えば、アルシンガスやホスフィンガス等を用いることができる。
【0043】
また、本実施形態の気相成長装置100では、第1ガスノズル10側のハロゲンガス導入部14に導入されるハロゲンガスと、第2ガスノズル20側のハロゲンガス導入部24に導入されるハロゲンガスとを、それぞれ異なるガス種とすることも可能である。
さらに、本実施形態では、第1ガスノズル10側のガス原料導入部13に導入されるガス原料と、第2ガスノズル20側のガス原料導入部23に導入されるガス原料とを、それぞれ異なるガス種とすることも可能である。この場合、例えば、ガス原料導入部13に導入されるガス原料G5としてアルシンガスを用い、ガス原料導入部23に導入されるガス原料G5としてホスフィンガスを用いることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の気相成長装置100で用いるパージガスG3のガス種としても、に限定されず、例えば、窒素ガス等、基板16上の残留成分を効果的に除去可能なガスを何ら制限無く採用することができる。
【0045】
<気相成長装置を用いた半導体の製膜プロセス>
上記構成の気相成長装置100を用いた、半導体の製膜プロセスの一例について、以下に説明する。
【0046】
まず、第1ガスノズル10内の金属原料容器11に第1の金属原料M1を充填するとともに、第2ガスノズル20内の金属原料容器21に第2の金属原料M2を充填する。
また、サセプタ移動機構4により、基板16を保持したサセプタ17を、第1ガスノズル10の噴出口15と互いに向かい合う第1の位置P1にセットする。
【0047】
次いで、反応炉1におけるガス導入部2側から、第1ガスノズル10内のガス原料導入部13にガス原料G5を導入するとともに、ハロゲンガス導入部14にハロゲンガスG4を導入する。これにより、第1ガスノズル10は、ハロゲンガスG4を第1の金属原料M1に供給して反応させ、金属ハロゲン化物からなる第1の反応ガスG1として、噴出口15側から、ガス原料導入部13に導入されたガス原料G5とともに、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導く。
【0048】
この際、基板16上に到達した第1の反応ガスG1は、サセプタ17に設けられた図視略の加熱手段の作用により、基板16の表面で熱分解し、分解したガス分子が、サセプタ17の回転に伴って回転する基板16上に堆積して膜形成が行われる。
これにより、基板16の表面に、図視略の第1の半導体膜を成長させる。
【0049】
次に、サセプタ移動機構4を作動させることにより、基板16を保持したサセプタ17を、パージガスノズル30の噴出口35と互いに向かい合う第3の位置P3に移動させる。
次いで、パージガスノズル30の噴出口35から、基板16の表面、即ち、基板16上に形成された第1の半導体膜に向けてパージガスG3を供給することにより、基板16及び第1の半導体層の表面に存在する、第1の反応ガスG1に由来する残留成分を除去する。
【0050】
次に、サセプタ移動機構4を作動させることにより、基板16を保持したサセプタ17を、第2ガスノズル20の噴出口25と互いに向かい合う第2の位置P2に移動させる。
次いで、反応炉1におけるガス導入部2側から、第2ガスノズル20内のガス原料導入部23にガス原料G5を導入するとともに、ハロゲンガス導入部24にハロゲンガスG4を導入する。これにより、第2ガスノズル20は、ハロゲンガスG4を第2の金属原料M2に供給して反応させ、金属ハロゲン化物からなる第2の反応ガスG2として、噴出口25側から、ガス原料導入部23に導入されたガス原料G5とともに、サセプタ17に保持された基板16の表面、即ち、第1の半導体膜上に向けて導く。
【0051】
この際、基板16上に形成された第1の半導体膜上に到達した第2の反応ガスG2は、上述した第1の反応ガスG1の場合と同様、サセプタ17に設けられた加熱手段の作用により、第1の半導体膜の表面で熱分解し、分解したガス分子が、サセプタ17の回転に伴って回転する基板16上の第1の半導体膜の表面に堆積して膜形成が行われる。
これにより、基板16の表面に形成された第1の半導体膜上に、図視略の第2の半導体膜を成長させる。
【0052】
なお、反応炉1内における、残余の第1の反応ガスG1、第2の反応ガスG2、及びパージガスG3は、排気口40から外部に排出され、必要とされる除害処理等を施したうえで、工程で再利用されるか、あるいは、大気中に放出される。
【0053】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の気相成長装置100によれば、上記のような、第1の反応ガスG1を基板16上に導く第1ガスノズル10と、第2の反応ガスG2を基板16上に導く第2ガスノズル20と、基板16を保持するサセプタ17の位置を、第1ガスノズル10に対応する第1の位置P1と、第2ガスノズル20に対応する第2の位置P2とで切り替えるサセプタ移動機構4とを備え、さらに、第1ガスノズル10と第2ガスノズル20との間に配置され、基板16上にパージガスG3を導くパージガスノズル30を具備し、サセプタ移動機構4が、サセプタ17の位置を、第1の位置P1と第2の位置P2との間に位置し、パージガスノズル30に対応する第3の位置P3に切り替え可能な構成を採用している。
これにより、第1ガスノズル10から成膜原料となる第1の反応ガスG1を基板16上に供給し、第1の半導体膜を成長させた後、基板16を保持したサセプタ17をパージガスノズル30に対応する第3の位置P3に移動させ、基板16上にパージガスG3を供給することで、基板16上に残留した第1の反応ガスG1に由来する成分を除去できる。その後、基板16を保持したサセプタ17を第2ガスノズル20に対応する第2の位置P2に移動させ、基板16上の第1の半導体膜の表面に第2の反応ガスG2を供給することで、第1の反応ガスG1に由来する成分が混入することなく、第2の半導体膜を積層して成長させることが可能になる。
従って、気相成長用の基板16上に異なる組成の第1の半導体膜及び第2の半導体膜を連続して成長させる場合であっても、最初に成膜した第1の半導体膜の原料ガスに由来する残留成分が、その後に成膜する第2の半導体膜の膜中に混入するのを効果的に抑制でき、優れた成膜品質で半導体膜を成長させることが可能になる。
【0054】
<気相成長装置のその他の形態>
以上、実施形態により、本発明に係る気相成長装置の一例を説明したが、本発明に係る気相成長装置は、上述したような、図1に示す例の気相成長装置100の構成に限定されるものではない。上記の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0055】
例えば、第1ガスノズル又は第2ガスノズルのうちの一方又は両方が、内部に複数の金属原料が配置され、この複数の金属原料とハロゲンガスとから生成される反応ガスを基板上に導く構成を採用してもよい。
【0056】
図2に示す例の気相成長装置200においては、第2ガスノズル20Aの内部に第2の金属原料M21,M22が配置され、計2種類の金属原料が配置されており、これら第2の金属原料M21,M22とハロゲンガスG4とから生成される第2の反応ガスG21,G22を基板16上に導く構成とされている。
【0057】
より具体的には、図2中に示す第2ガスノズル20Aの内部には、第2の金属原料M21が充填される金属原料容器21a、及び、第2の金属原料M22が充填される金属原料容器21bの2つの容器が配置されている。また、第2ガスノズル20Aの内部にも、図1中に示した第2ガスノズル20と同様、ガス原料導入部23、ハロゲンガス導入部24が設けられている。
【0058】
そして、第2ガスノズル20Aは、ハロゲンガス導入部24によって導入されるハロゲンガスG4を、第2の金属原料M21及び第2の金属M22の両方に供給して反応させ、金属ハロゲン化物からなる第2の反応ガスG21として、噴出口25側から、ガス原料導入部23に導入されたガス原料G5とともに、サセプタ17に保持された基板16の表面に向けて導く。
【0059】
ここで、金属原料容器21a及び金属原料容器21bにそれぞれ充填される、2種類の第2の金属原料M21又は第2の金属原料M22としても、特に限定されるものではない。例えば、第1ガスノズル10の金属原料容器11に充填される第1の金属原料M1としてガリウム単体金属を用いた場合には、金属原料容器21aに充填される第2の金属原料M21としてインジウム単体金属を用い、金属原料容器21bに充填される第2の金属原料M22として、第1の金属原料M1と同じガリウム単体からなる金属原料を用いることが可能である。
【0060】
また、本実施形態においては、基板16の表面が水平方向を向くように、サセプタ17に基板16を保持させ、この状態で半導体膜を成長させる構成とされた気相成長装置100,200を例に挙げて説明しているが、本発明の気相成長装置は、このような構成には限定されない。本発明は、例えば、基板16の表面が鉛直上方を向くように、サセプタ17に基板16を保持させ、この状態で半導体膜を成長させる構成にも適用可能なものである。
但し、基板16や半導体膜の表面へのゴミ等の付着防止の観点からは、図1及び図2に示す気相成長装置100,200のように、基板16の表面が水平方向を向くように、サセプタ17に基板16を保持させ、この状態で半導体膜を成長させる構成を採用することが好ましい。
【実施例
【0061】
以下、実施例により、本発明に係る気相成長装置についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0062】
<半導体膜の気相成長条件及び手順>
本実施例においては、図2に示すような、本発明に係る構成を備えた気相成長装置200を使用して、GaAs(ヒ化ガリウム)系化合物半導体膜を製膜する実験を行った。
この際、気相成長装置200における、第1ガスノズル10の金属原料容器11に充填される第1の金属原料M1としてガリウム単体金属を用いた。また、第2ガスノズル20の金属原料容器21aに充填される第2の金属原料M21としてインジウム単体金属を用い、金属原料容器21bに充填される第2の金属原料M22として、第1の金属原料M1と同じガリウム単体からなる金属原料を用いた。
【0063】
そして、反応炉1の外部から、図視略の加熱手段によって第1ガスノズル10及び第2ガスノズル20を加熱し、第1の金属原料M1及び第2の金属原料M21,M22の近傍の温度を約800℃、基板16の近傍の温度を約700℃に保持した。
【0064】
次いで、ガス原料導入部13からガス原料G5としてアルシンガスを、ハロゲンガス導入部14からハロゲンガスG4として塩化水素ガスを導入し、第1の金属原料M1をなすガリウム単体金属と塩化水素ガスとを反応させ、塩化ガリウムの状態とした第1の反応ガスG1を生成させた。そして、第1の反応ガスG1である塩化ガリウムを、ガス原料G5であるアルシンガスとともに基板16の表面に供給し、ガリウム砒素薄膜からなる第1の半導体膜を成長させた。
【0065】
次いで、サセプタ移動機構4を作動させ、基板16を保持したサセプタ17を、パージガスノズル30に対応した第3の位置P3に移動させた。そして、パージガスノズル30にパージガスG3として窒素ガスを導入し、この窒素ガスを基板16上に形成された第1の半導体膜上に供給した。
【0066】
次いで、サセプタ移動機構4を作動させ、基板16を保持したサセプタ17を、第2ガスノズル20に対応した第2の位置P2に移動させた。その後、ガス原料導入部23からガス原料G5としてホスフィンガスを、ハロゲンガス導入部24a,24bの双方に、ハロゲンガスG4として塩化水素ガスを導入し、第2の金属原料M21であるインジウム単体金属、及び、第2の金属原料M22であるガリウム単体金属と反応させ、塩化インジウム及び塩化ガリウムからなる第2の反応ガスG21を生成させた。そして、第1の反応ガスG21である塩化インジウム及び塩化ガリウムを、ガス原料G5であるホスフィンガスとともに、基板16上に形成された第1の半導体膜の表面に供給し、インジウムガリウム燐薄膜からなる第2の半導体膜を成長させて積層した。
【0067】
次いで、サセプタ移動機構4を作動させ、基板16を保持したサセプタ17を第3の位置P3に戻し、パージガスノズル30にパージガスG3として窒素ガスを導入し、この窒素ガスを基板16の表面の最上層に形成された第2の半導体膜上に供給した。
【0068】
次いで、さらにサセプタ移動機構4を作動させ、基板16を保持したサセプタ17を第1の位置P1に戻し、再び、ガス原料導入部13からガス原料G5としてアルシンガスを、ハロゲンガス導入部14からハロゲンガスG4として塩化水素ガスを導入し、第1の金属原料M1をなすガリウム単体金属と塩化水素ガスとを反応させ、塩化ガリウムの状態とした第1の反応ガスG1をさせた。
【0069】
そして、第1の反応ガスG1である塩化ガリウムを、ガス原料G5であるアルシンガスとともに基板16の表面の最上層に形成された第2の半導体膜上に供給し、第2の半導体膜上に、さらに、ガリウム砒素薄膜からなる第1の半導体膜を成長させた。
上記条件及び手順で形成した各半導体膜のうち、最後の工程で形成したガリウム砒素薄膜からなる第1の半導体膜には、第2の半導体膜の原料に由来するインジウムの混在は確認されなかった。
【0070】
一方、上記の手順のうち、サセプタ移動機構4によって基板16を保持したサセプタ17を第3の位置P3に移動させる手順を省略し、パージガスノズル30による基板16上へのパージガスG3の供給も省略した場合には、インジウムガリウム燐薄膜からなる第2の半導体膜の上に形成したガリウム砒素からなる第1の半導体膜(3層目)の膜中に、インジウムが混入していることが認められた。
【0071】
以上説明したような実施例の結果より、パージガスノズルを備えた本発明の気相成長装置を用いることで、複数の膜種の半導体膜を連続して成長させた場合においても、その前に成膜した半導体膜の原料に由来する残留成分が、その後に成膜した半導体膜の膜中に混入するのを効果的に抑制でき、優れた成膜品質で半導体膜を成長させることが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の気相成長装置は、気相成長用の基板上に異なる組成の第1の半導体膜及び第2の半導体膜を連続して成長させる場合であっても、最初に成膜した第1の半導体膜の原料ガスに由来する残留成分が、その後に成膜する第2の半導体膜の膜中に混入するのを効果的に抑制でき、優れた成膜品質で半導体膜を成長させることが可能になるものである。従って、本発明の気相成長装置は、例えば、基板上に複数の半導体膜を積層して成長、成膜させるための装置として非常に好適である。
【符号の説明】
【0073】
100,200…気相成長装置
1…反応炉
2…ガス導入部
3…サセプタ保持部
4…サセプタ移動機構
10…第1ガスノズル
11…金属原料容器
13…ガス原料導入部
14…ハロゲンガス導入部
15…噴出口
20…第2ガスノズル
21,21a,21b…金属原料容器
23…ガス原料導入部
24,24a,24b…ハロゲンガス導入部
25…噴出口
30…パージガスノズル
33…パージガス導入部
35…噴出口
16…基板
17…サセプタ
18…サセプタ回転軸
40・・・排気口
P1…第1の位置
P2…第2の位置
P3…第3の位置
M1…第1の金属原料
M2,M21,M22…第2の金属原料
G1…第1の反応ガス
G2,G21,G22…第2の反応ガス
G3…パージガス
G4…ハロゲンガス
G5…ガス原料
図1
図2