(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】防錆剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20240216BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240216BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20240216BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240216BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240216BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20240216BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240216BHJP
C09D 179/00 20060101ALI20240216BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240216BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240216BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240216BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20240216BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240216BHJP
B32B 15/18 20060101ALI20240216BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C23F11/00 C
C08L101/12
C08L79/00 A
C08L75/04
C08L63/00 Z
C08K5/42
C09D201/00
C09D179/00
C09D175/04
C09D163/00
C09D7/65
C09D5/08
B32B15/08 N
B32B15/18
B32B27/06
(21)【出願番号】P 2021509032
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010857
(87)【国際公開番号】W WO2020195905
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019060942
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019227887
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笘井 重和
(72)【発明者】
【氏名】清野 美勝
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-533580(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0097781(KR,A)
【文献】特開平06-128769(JP,A)
【文献】国際公開第2014/106949(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019596(WO,A1)
【文献】特開平05-320958(JP,A)
【文献】特開2006-249128(JP,A)
【文献】国際公開第01/088047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00- 11/18
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 15/00- 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子と、樹脂と、溶剤とを含み、
前記導電性高分子が、ドーパントがドープしている置換又は無置換のポリアニリンであり、
前記ドーパントの種類及び添加量を調整することにより、酸価を0.0~14.5mgKOH/gであるか、又は塩基価を0.0~1.0mgHCl/gとする、
防錆剤の製造方法。
【請求項2】
前記防錆剤の粘度が25℃において1000cP以上、80000cP以下であることを特徴とする、請求項
1に記載の
製造方法。
【請求項3】
前記防錆剤の粘度が25℃において1000cP以上、60000cP以下であることを特徴とする、請求項
1に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記ドーパントがスルホコハク酸誘導体である、請求項
1~3のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1~
4のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂が、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミン、ポリウレタン及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂である、請求項
5に記載の
製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂がポリウレタン又はエポキシ樹脂である、請求項
5に記載の
製造方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の
製造方法で製造した防錆剤から得られる膜。
【請求項9】
請求項
8に記載の膜を含む金属部材。
【請求項10】
鋼材を前記膜で被覆した構造を有する、請求項
9に記載の金属部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子を含む溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアニリンと塗膜成分としてのエポキシ樹脂とを含む溶液組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、液状ゴムとを含有する組成物である防錆剤が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-324143号公報
【文献】特開2011-99152号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1のような、ポリアニリンと、塗膜成分としてのエポキシ樹脂とを含む溶液組成物を、鋼板に塗布して形成した膜について、塩水噴霧試験(JIS Z 2371)を行うと激しく錆が発生する。そのため、より高い防錆性能を有する膜を形成できる溶液組成物が求められていた。
本発明の課題は、錆の発生をより低減できる膜が得られる溶液組成物を提供することである。
【0005】
本発明者らが、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、組成物の酸価又は塩基価を制御することで、得られる膜の防錆性能が格段に向上することを見い出し、本発明を完成させた。
本発明によれば以下の溶液組成物が提供できる。
1.導電性高分子と、樹脂と、溶剤とを含み、酸価が0.0~14.5mgKOH/gであるか、又は塩基価が0.0~1.0mgHCl/gである、溶液組成物。
2.前記導電性高分子がポリアニリン系高分子である、1に記載の溶液組成物。
3.前記ポリアニリン系高分子が、ドーパントがドープしている置換又は無置換のポリアニリンである、2に記載の溶液組成物。
4.溶液組成物の粘度が25℃において1000cP以上、80000cP以下であることを特徴とする1~3のいずれかに記載の溶液組成物。
5.溶液組成物の粘度が25℃において1000cP以上、60000cP以下であることを特徴とする1~3のいずれかに記載の溶液組成物。
6.前記ドーパントがスルホコハク酸誘導体である、3~5のいずれかに記載
の溶液組成物。
7.前記樹脂が熱硬化性樹脂である、1~6のいずれかに記載の溶液組成物。
8.前記熱硬化性樹脂が、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミン、ポリウレタン及びエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂である、7に記載の溶液組成物。
9.前記熱硬化性樹脂がポリウレタン又はエポキシ樹脂である、7に記載の溶液組成物。
10.1~9のいずれかに記載の溶液組成物から得られる膜。
11.10に記載の膜を含む金属部材。
12.鋼材を前記膜で被覆した構造を有する、9に記載の金属部材。
【0006】
本発明によれば、錆の発生をより低減できる膜が得られる溶液組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施形態である溶液組成物は、導電性高分子と、樹脂と、溶剤とを含む。そして、溶液組成物の酸価が0.0~14.5mgKOH/gであるか、又は塩基価が0.0~1.0mgHCl/gである。溶液組成物の酸価又は塩基価を上記範囲に制御することによって、本実施形態の溶液組成物を、塗布及び乾燥して得られる膜(硬化膜)において、導電性高分子がマトリックスである樹脂に溶解するか、又は均一分散する。これにより、塩水噴霧試験による錆の発生を低減することができ、優れた防錆性能を有する膜が得られる。
【0008】
本実施形態において、溶液組成物の酸価が0.0~14.5mgKOH/gである。酸価が14.5mgKOH/g以下であると(酸価が0.0mgKOH/gの場合も含む)、被防錆物の酸による腐食を低減できるため、膜の防錆性能を向上できる。酸価は0.0~10.0mgKOH/gであることが好ましく、0.0~8.0mgKOH/gであることがより好ましく、さらに0.2~3.0mgKOH/gであることが好ましい。
【0009】
一方、溶液組成物の塩基価は0.0~1.0mgHCl/gである。塩基価が1.0mgHCl/g以下であれば(塩基価が0.0mgHCl/gの場合も含む)、被防錆物に塗布した後の乾燥工程における、導電性高分子の凝集を抑制でき、膜の均一性が向上する。塩基価は0.0~0.7mgHCl/gであることが好ましい。く、0.0~0.5mgHCl/gであることがより好ましい。
【0010】
酸価は、溶液組成物1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数で表される。塩基価は、溶液組成物1g中に含まれる塩基性成分を中和するのに要する塩酸(HCl)のmg数で表される。酸価及び塩基価は、溶液組成物を中和滴定することにより求められる。
エポキシ樹脂のように主剤と硬化剤を混合して使用する樹脂を用いる場合、酸価及び塩基価は、硬化剤を除く溶液組成物を中和滴定することにより求められる。
【0011】
溶液組成物の酸価及び塩基価は、例えば、導電性高分子及び/又は樹脂に、公知の方法で水酸基、カルボキシル基のような官能基を導入することで調整できる。また、後述するドーパントの種類及びその添加量によっても調整できる。
【0012】
本発明において「導電性高分子」とは、酸化還元電位が-0.2(V vs. SHE)以上1.5(V vs. SHE)以下である酸化還元性物質を意味する。酸化還元電位の測定方法は、0.1mol/lの支持電解質を溶解させた電解液中に測定対象の物質(化合物)を分散又は溶解させ、作用極、参照極及び対極の3電極式によって、参照極に対する作用極の自然電位を読み取る方法で測定する。このとき、作用極には金を使用する。測定温度は23℃とする。測定対象の物質の溶解性が低い場合は、作用極に当該物質を塗布し、電解液中に浸漬してもよい。標準水素電極(SHE)以外の参照極を用いる場合は、例えば、飽和カロメル電極であれば0.24V、銀塩化銀電極であれば0.22Vをそれぞれ測定された電位から差し引いて、水素電極電位に対する電位(V vs. SHE)に換算する(電気化学便覧第4版、77頁、電気化学協会編を参照のこと)。
【0013】
導電性高分子の酸化還元電位は、-0.2(V vs. SHE)以上、-0.15(V vs. SHE)以上、-0.1(V vs. SHE)以上、-0.05(V vs. SHE)以上又は0(V vs. SHE)以上であり得、また、1.5(V vs. SHE)以下、1.3(V vs. SHE)以下、1.0(V vs. SHE)以下又は0.8(V vs. SHE)以下であり得る。
【0014】
導電性高分子の具体例としては、ポリアセチレン、ポリメチルアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリフルオロアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレン等のポリアセチレン系高分子;ポリオルソフェニレン、ポリメタフェニレン、ポリパラフェニレン等のポリフェニレン系高分子;ポリピロール、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-ドデシルピロール)、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(N-ドデシルピロール)、ポリ(N-メチル-3-メチルピロール)、ポリ(N-エチル-3-ドデシルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)等のポリピロール系高分子;ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジエチルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリチオフェン系高分子;ポリフラン;ポリセレノフェン;ポリイソチアナフテン;ポリフェニレンスルフィド;ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(2-エチルアニリン)、ポリ(2,6-ジメチルアニリン)等のポリアニリン系高分子;ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリアントラセン、ポリナフタレン、ポリピレン、ポリアズレン、又はこれら樹脂の誘導体等が挙げられる。
【0015】
導電性高分子は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
安定性、信頼性又は入手の容易さ等の観点から、導電性高分子は、ポリピロール系高分子、ポリチオフェン系高分子及びポリアニリン系高分子からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、さらに、ポリアニリン系高分子が好ましい。ポリアニリン系高分子は、置換又は無置換のポリアニリンが好ましい。
【0016】
導電性高分子の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。製造方法の具体的な例としては、例えば、化学重合法、電解重合法、可溶性前駆体法、マトリックス(鋳型)重合法、蒸着法(CVD等)が挙げられる。導電性高分子は、市販品を用いてもよい。
【0017】
一実施形態では、導電性高分子はドーパントがドープしていてもよい。ドーパントを導電性高分子に添加し、ドープさせることにより、溶液組成物の酸価及び塩基価を適切にかつ容易に調整することができる。
ドーパントが導電性高分子にドープしていることは、紫外・可視・近赤外分光法やX線光電子分光法によって確認することができる。
【0018】
ドーパントの具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン;六フッ化ヒ酸イオン;硫酸イオン;硝酸イオン;チオシアン酸イオン;六フッ化ケイ酸イオン;燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオン等の燐酸系イオン;トリフルオロ酢酸イオン;トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のアルキルベンゼンスルホン酸イオン;メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオン、スルホコハク酸誘導体のイオン等のアルキルスルホン酸イオン;ジベンゾフランスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン;ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)イオン等の高分子イオン等が挙げられる。尚、ドーパントの中には、上記イオンの他に、イオン化していない元素又は化合物が含まれていてもよい。
【0019】
ドーパントは、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ドーパントの中でも、より高い溶解性が発現することから、ポリスチレンスルホン酸、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸等のスルホコハク酸誘導体(イオンを含む)がより好ましい。
【0020】
導電性高分子にドープしているドーパント量は、ドーパント比(ドーパント/導電性高分子を構成するモノマーユニット:モル比)で、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.75である。
ドーパント比とは、導電性高分子を構成するモノマーユニットに対するドーパント(カウンターアニオン)のモル比を意味する。例えば、無置換ポリアニリンとドーパントを含むポリアニリン複合体のドーパント比が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、ドーパントが1個ドープしていることを意味する。
ドーパント比は、ポリアニリン複合体中のドーパントとポリアニリンのモノマーユニットのモル数が測定できれば算出可能である。例えば、ドーパントが有機スルホン酸の場合、ドーパント由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドーパント比を算出できる。但し、ドーパント比の算出方法は、当該手段に限定されない。
【0021】
本発明において「樹脂」とは、酸化還元機能を有しないか、又は、酸化還元電位が-0.2(V vs. SHE)以上1.5(V vs. SHE)以下の範囲外である高分子材料を意味する。
【0022】
樹脂は、溶剤に可溶であればよく、特に限定されないが、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は化学反応によって、樹脂分子間又は樹脂と硬化剤間の反応による網目構造により、硬度、耐候性、耐薬品性、酸素遮断性等が向上する。また、熱硬化性樹脂は比較的低分子量であり、取扱いが容易である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミン、ポリウレタン、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂は主剤と硬化剤の配合により用いられるが、主剤としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、アミン類が、硬化剤としては、酸無水物型、脂環式アミン型、フェノール型、ケチミン型、イミダゾール型等から適宜組み合わされて用いられる。特に高温耐性が求められる場合には、主剤としてテトラグリシジルアミノジフェニルメタン、硬化剤としてジアミノフェニルスルホンの組み合わせが好ましい。
【0024】
熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。1種単独で使用する場合はポリウレタンが好ましい。2種以上使用する場合は、ポリエステルとメラミン樹脂、ポリエステルとポリイソシアネート、アクリル樹脂とメラミン樹脂、アクリル樹脂とポリイソシアネート、エポキシ樹脂とポリアミン等の組み合わせから、用途、使用部位、使用環境に応じて適宜選定できる。例えば、エポキシ樹脂は耐候性に劣るが、金属への付着性が良好で下塗りに適する。アクリル樹脂やポリエステルは光沢、耐候性ともに優れ、上塗りに適する。
【0025】
本実施形態の溶液組成物は、導電性高分子100質量部に対し、上記樹脂を500~100000質量部の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは1000~10000質量部の範囲で含んでいる。これにより、良好な膜を形成でき、しかも優れた防錆性能を得ることができる。
【0026】
本実施形態の導電性高分子の分子量は、5000~75000の範囲が好ましい。導電性高分子の分子量を5000以上とすることで、酸化還元の可逆性を維持し、防錆能を継続することができる。また、導電性高分子の分子量を75000以下とすることで、溶媒溶解性を維持し、防錆能を高めることができる。導電性高分子の分子量は10000~60000の範囲がより好ましく、15000~55000の範囲がさらに好ましい。
【0027】
溶剤は、上述した導電性高分子及び樹脂を、溶解又は分散する溶媒であれば、特に制限はない。溶媒の例としては、水;
軽油、灯油、n-ペンタン、iso-ペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、iso-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、アニソール、安息香酸、水素化パラフィン等の芳香族系炭化水素系溶媒:
【0028】
メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;
【0029】
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンコン等のケトン系溶媒;
【0030】
エチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェノキシエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
【0031】
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;
【0032】
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。
【0033】
上記溶媒の中でも、保存安定性、取り扱い容易性、入手の容易さ等の観点から、n-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェノキシエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましく、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテルがより好ましい。
【0034】
水等の高い極性を有する溶媒を用いる場合は、溶媒の極性に応じて適切な導電性高分子と樹脂がそれぞれ選択される。例えば、溶媒として水を用いる場合は、樹脂として、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ポリエステル樹脂を用いることができる。従来の油溶性樹脂をエマルション化して用いることもできる。導電性高分子としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)等のポリチオフェン系高分子が、可溶性に優れる点で好ましい。特に、下記式(1)で表される構造単位を有するような自己ドープ型のポリチオフェンが、水溶性の維持性能に優れることから好ましい。
【0035】
【0036】
[式(1)中、Lは、下記式(2)又は式(3)で表される2価の基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、又はNH(R1)3である。R1は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基である。]
【0037】
【0038】
[式(2)中、lは、6~12の整数である。]
【0039】
【0040】
[式(3)中、mは、1~6の整数である。R2は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子である。]
【0041】
溶剤は、上記溶媒を1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の溶液組成物における溶剤の量は、導電性高分子、樹脂及び任意の添加剤の種類や、溶液組成物の粘度等により、適宜調整することができる。通常、導電性高分子100質量部に対し、上記溶剤を20~100000質量部の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは100~10000質量部の範囲で含む。
【0042】
本実施形態の溶液組成物は、上述した導電性高分子、樹脂及び溶剤の他に、防錆性能に悪影響を及ぼさない範囲で、例えば、有色系顔料、可塑剤、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤、飛散防止剤、レベリング材等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
本発明の溶液組成物は、本質的に、導電性高分子、樹脂及び溶剤、並びに任意に、有色系顔料、可塑剤、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤及び飛散防止剤からなる群から選択される1以上の添加剤からなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の組成物の、例えば、90~100質量%、95~100質量%、99~100質量%、99.5~100質量%、99.9~100質量%又は100質量%が、導電性高分子、樹脂及び溶剤、又は、導電性高分子、樹脂、溶剤及び添加剤であってもよい。
【0044】
本実施形態の溶液組成物は、上述した導電性高分子と、樹脂と、溶剤と、任意に添加剤とを、混合して撹拌することにより容易に製造することができる。エポキシ樹脂のように主剤と硬化剤を混合して用いる樹脂を使用する場合、導電性高分子を予め主剤に添加して用いることができる。混合及び撹拌には、例えば、浅田鉄鋼株式会社製デスパ(商品名)、アシザワ・ファインテック株式会社製ハイパー(商品名)、株式会社シンキー製あわとり練太郎(商品名)等の撹拌装置を用いることができる。
【0045】
本実施形態の溶液組成物は、例えば、鋼板のような金属等の被防錆物に塗布し、乾燥又は硬化処理を施すことにより、膜を形成できる。得られる膜は防錆性能に優れている。
塗布は、例えば、スプレー、エアスプレー、はけ塗り、ローラー塗り等により実施できる。また、溶液組成物を水中に分散させて電着塗装してもよい。
【0046】
塗布後、自然乾燥、加熱乾燥等により乾燥した膜となる。樹脂に熱硬化性樹脂を使用した場合、加熱により硬化させてもよい。硬化条件は、熱硬化性樹脂に合わせて適宜設定することができる。
尚、膜において導電性高分子は、樹脂に溶解していてもよく、また、分散していてもよい。防錆性能の観点から溶解していることが好ましい。また、溶解している状態と分散している状態が共存していてもよい。
防錆性能の観点から、膜の厚さは乾燥状態で15~60μmが好ましい。膜の厚さが15μm以上であると、酸素や水の透過の影響を受けにくくなり、錆の進行が早まりにくい。また、膜の厚さが60μm以下であると、被防錆物との線膨張係数の差によって温度変化によるクラックが入るおそれが少ない。
【0047】
本実施形態の膜は、防錆性能を有するため、鋼材等の金属部材のコーティング膜として好適である。例えば、鋼材を膜で被覆した構造を有する金属部材は被覆面が優れた防錆性能を有する。
本実施形態の金属部材は、上記膜の上に、さらにトップコート層を設けてもよい。トップコート層は、例えばウレタン系樹脂により、厚さ15~60μmとなるように形成することが好ましい。
さらに、本実施形態の溶液組成物の粘度は、室温、具体的には25℃において1000cP以上100000cP以下が好ましく、1000cP以上80000cP以下がより好ましく、1000cP以上70000cP以下がさらに好ましく、1000cP以上60000cP以下が特に好ましい。粘度が1000cP以上であると、塗布した後に流れにくく、好ましい厚さである15~60μmを維持することができる。また、粘度が100000cP以下であると、塗布後のレベリング能が低下せず、凹凸の多い表面形態となりにくい。その場合、錆の原因となる水分や塩分が表面に滞りにくくなり、錆の進行が早まりにくい。
エポキシ樹脂のように主剤と硬化剤を混合して使用する樹脂を用いる場合、溶液組成物の粘度は、硬化剤を除く溶液組成物について測定される。
【0048】
本発明の一実施形態では、溶液組成物は防錆剤として使用できる。防錆剤の適用先は、防食を必要とするものであれば特に限定されるものではない。例えば、家屋、ビル、橋梁、プラント、タンク(例えば、石油タンク、天然ガスタンク)、道路、送電や通信用の鉄塔等の建築構造物;船舶、車両(例えば、鉄道車両、大型車両、小型車両、ハイブリッド自動車、電気自動車)、航空機、ロケット等の輸送媒体;自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等の金属部分や、高圧電力ケーブル;電気又は電子機器部品等の金属部分等が挙げられる。
【0049】
コネクタの適用箇所としては、例えば、端子圧着部がある。端子圧着部では、端子と電線とが同種の金属であってもよく、また、異種の金属であってもよい。
また、本発明の一実施形態の溶液組成物から得られる膜は、気化性錆止めフィルム、塗装型可剥性プラスチックフィルム、熱間浸漬型プラスチックフィルムとしても好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
実施例1
(1)ドーパントがドープしたポリアニリン(ポリアニリン複合体)の製造
エーロゾルOT(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、純度75%以上、富士フイルム和光純薬株式会社製)35.0g及びソルボンT-20(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル構造を有する非イオン乳化剤、東邦化学工業株式会社製)1.47gを、トルエン600mLに溶解し、溶液を調製した。
得られた溶液を、窒素気流下においた6Lのセパラブルフラスコに入れ、この溶液に、22.2gのアニリンを加えた。その後、1mol/Lのリン酸水溶液1800mLを添加し、5℃に冷却した。溶液はトルエンと水の2つの液相を有していた。
【0051】
溶液の温度が5℃になった後、すぐに、毎分390回転で撹拌した。撹拌後の溶液に、65.7gの過硫酸アンモニウムを1mol/Lのリン酸600mLに溶解した過硫酸アンモニウム溶液を、撹拌しながら、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま撹拌した。その後、溶液温度を40℃まで上昇させ、さらに1時間撹拌した。撹拌後、溶液を静置することで2相に分離させた。分離した水相を分液し、有機相を回収した。
【0052】
得られた有機相にトルエン1500mLを追加し、1mol/Lのリン酸600mLで1回、イオン交換水600mLで3回洗浄した。不溶物を、#5Cのろ紙を用いて、ろ過により除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を得た。
得られたトルエン溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温しながら減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、43.0gの粉末状のポリアニリン複合体を得た(分子量60000)。
【0053】
ポリアニリンの重量平均分子量は60000であった。尚、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算で測定した。
ポリアニリン複合体のドーパント比[(ポリアニリンにドープしているドーパントのモル数)/(ポリアニリンのモノマーユニットのモル数)]は0.63であった。
ドーパント比は、ポリアニリン複合体中のドーパントとポリアニリンのモノマーユニットのモル数から算出した。具体的に、ドーパント由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドーパント比を算出した。
【0054】
(2)溶液組成物の調製
上記(1)で得たポリアニリン複合体を1g秤量し、9gのプロピレングリコールモノブチルエーテルに撹拌しながら投入し、10質量%のポリアニリン複合体溶液を得た。続いて、ポリアニリン複合体溶液に樹脂溶液であるダイフェラミン90mL(大日精化工業株式会社製、ポリウレタン30質量%のγブチロラクトン溶液)を追加し、自公転型撹拌機(株式会社シンキー製、ARE-250)を用いて、2000rpmで5分間撹拌し、溶液組成物を調製した。
【0055】
得られた溶液組成物の酸価又は塩基価を、電位差滴定法を用いて評価した。測定装置は京都電子工業株式会社製のAT-500を使用し、得られた電位差の変曲点を終点とした。酸価は、滴定液に水酸化カリウムを使用して、下記式により求めた。
酸価(mgKOH/g)=(V1-V0)×N×f×M/S
(式中、V1は本試験での滴定量(mL)、V0は空試験での滴定量(mL)、Nは滴定液の濃度(mol/L)、fは滴定液のファクター(1.010)、Mは滴定液のモル質量(g/mol)、Sは試料質量(g)である。)
塩基価は、滴定液に塩酸を使用した他は、酸価と同様にして測定した。
測定結果を表1に示す。
【0056】
同様に、得られた溶液組成物の粘度を、25℃においてデジタル粘度計を用いて評価した。評価装置は、ブルックフィールド社のDV2Tを使用し、回転数が1rpmの時の粘度を評価した。測定結果を表1に示す。
【0057】
(3)膜の形成
上記(2)で得た溶液組成物を、スポイトで吸い取り、フィルムコータ(テスター産業株式会社製、PI-1210)を用い、SPC鋼板上に塗布した。次いで空気中80℃で2時間乾燥して、膜厚30μmの膜を有する金属部材を得た。
【0058】
得られた膜付き金属部材について、以下の条件で環境サイクル試験を実施し、錆発生の様子を観察した。
塩水噴霧:35℃のNaCl溶液(濃度5質量%)を2時間噴霧
乾燥:温度60℃、湿度20~30RH%の空気中で4時間乾燥
湿潤:温度50℃、湿度95RH%以上の空気中で2時間放置
上記塩水噴霧、乾燥及び湿潤を1サイクルとし、30サイクル(10日間)実施した。環境サイクル試験後の試料について、試料表面を覆う錆の面積の割合を評価した。
結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
実施例2
エーロゾルOTの使用量を17.8gとした他は、実施例1と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0061】
実施例3
ポリアニリン(シグマアルドリッチ社製、分子量20000)2.22gをNメチルピロリドン40mLに溶解した後、ナフタレンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.37gを加えて撹拌し、ポリアニリン複合体を得た。
溶液組成物の調製、膜の形成及び評価については、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0062】
実施例4
ナフタレンスルホン酸の使用量を0.67gとした他は、実施例3と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
ポリアニリン(シグマアルドリッチ社製、分子量5000)2.22gを使用し、ナフタレンスルホン酸1.37gを使用した他は、実施例3と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例6
ナフタレンスルホン酸の使用量を0.67gとした他は、実施例5と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例7
ナフタレンスルホン酸を使用しなかった他は、実施例3と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例8
ナフタレンスルホン酸の代わりに濃度99%の燐酸0.18gを使用した他は、実施例3と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0067】
実施例9
樹脂溶液であるダイフェラミン(ポリウレタン30質量%のγブチロラクトン溶液)の代わりに、エポキシ樹脂溶液90mL(荒川化学工業株式会社製アラキード9205、エポキシ40質量%を含有した溶液)を使用した他は、実施例1と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
実施例10
化研産業株式会社製のポリアニリン(レグルス、分子量75000)を用い、ナフタレンスルホン酸の添加量を2.48gとした他は、実施例3と同様にしてポリアニリン複合体を得た。溶液組成物の調製、膜の形成及び評価については、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0069】
実施例11
ポリアニリン(シグマアルドリッチ社製、分子量20000)2.22gをNメチルピロリドン40mLに溶解した後、ナフタレンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)2.48gを加えて撹拌し、ポリアニリン複合体を得た。溶液組成物の調製、膜の形成及び評価については、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0070】
実施例12
ポリアニリン(シグマアルドリッチ社製、分子量5000)2.22gをNメチルピロリドン40mLに溶解した後、ナフタレンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)2.48gを加えて撹拌し、ポリアニリン複合体を得た。溶液組成物の調製、膜の形成及び評価については、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0071】
実施例13
SPC鋼板の代わりにアルミニウム(A6061)を用いた他は実施例1と同様にして膜付き金属部材を得て、評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
実施例14
SPC鋼板の代わりに亜鉛メッキ鋼板を用いた他は実施例1と同様にして膜付き金属部材を得て、評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例15
SPC鋼板の代わりに錫メッキ銅を用いた他は実施例1と同様にして膜付き金属部材を得て、評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
比較例1
エーロゾルOTの使用量を200gとした他は、実施例1と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0075】
比較例2
ナフタレンスルホン酸の代わりに水酸化ナトリウム5gを使用した他は、実施例5と同様にして、溶液組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0076】
比較例3
ポリアニリン複合体溶液の代わりに樹脂溶液であるダイフェラミン(ポリウレタン30質量%のγブチロラクトン溶液)を使用した他は、実施例1と同様にして膜を形成し、評価した。結果を表1に示す。
【0077】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。