(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】線状物の除去方法
(51)【国際特許分類】
B07B 1/12 20060101AFI20240216BHJP
B07B 4/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B07B1/12 Z
B07B4/00 Z
(21)【出願番号】P 2022076271
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2019569192の分割
【原出願日】2019-01-30
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018015525
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 英俊
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-205193(JP,A)
【文献】特開2005-066952(JP,A)
【文献】特開2008-006423(JP,A)
【文献】特開2009-142765(JP,A)
【文献】特開2010-51888(JP,A)
【文献】特開平1-90074(JP,A)
【文献】実開昭55-58271(JP,U)
【文献】登録実用新案第3000020(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1256484(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00 - 15/00
B07C 1/00 - 99/00
B09B 1/00 - 5/00
B29B 17/00 - 17/04
C08J 11/00 - 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状物と板状物とを含む原料を振動篩機内のフィルター上へ供給する供給工程と、
前記原料の供給方向に互いに間隔を空けて延在する複数のロッドを備えた前記フィルターに振動を与えることにより、前記供給工程で前記フィルター上に供給された前記原料から
前記線状物を分離する篩別工程と、
前記供給工程の前に、風力選別によって前記原料からプラスチックを分離する風力選別工程と
を含み、
前記篩別工程が、前記フィルター上に供給された前記原料を覆うように配置された
厚さ2mm超20mm以下のシート状の押さえ部材であって、前記振動篩機内の供給側に固定された固定端を有し、前記原料の排出側に自由端を有し、前記固定端を起点として前記原料の供給側から前記排出側へむけてぶら下げられており、これにより前記自由端が前記原料の排出側において前記フィルター上に前記原料を押さえた状態で上下方向に移動可能な前記押さえ部材を用いて、前記原料を上部から直接押さえることによって前記線状物を篩下側へ篩い分けすることを含む線状物の除去方法。
【請求項2】
前記風力選別工程は、風速を5~8m/sとする請求項1に記載の線状物の除去方法。
【請求項3】
前記原料が
前記板状物として基板を含み、前記フィルター上に供給される前記原料中に含まれる前記基板の
最小短径の平均サイズをxmmとし、ロッド間距離をy、ロッド半径をrとした場合に、r
2+(y+2r)
2=(x+r)
2の関係を有するように、
且つロッド間の間隔yが前記線状物の代表径の1.2~6倍であって前記基板の前記最小短径より狭くなるように、ロッド間の間隔y及び半径rを調整することを含む請求項1又は2に記載の線状物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状物の除去方法に関し、特に、使用済み電子・電気機器のリサイクル処理に好適な線状物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選別対象物の中から特定の異物、例えば、線状物を選択的に除去するための装置が知られている。例えば、特開2015-150505号公報(特許文献1)には、振動スクリーンによる選別と気流による選別とにより、長尺状材の混合材から目的の選別対象を選別する選別装置の例が記載されている。
【0003】
また、近年の資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきており、その効率的な回収方法が検討されている。例えば、特開2015-123418号公報(特許文献2)では、銅を含む電子・電気機器部品屑を焼却後、所定のサイズ以下に粉砕し、粉砕した電子・電気機器部品屑を銅の溶錬炉で処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-150505号公報
【文献】特開2015-123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法は、
図8(a)及び
図8(b)に例示されるように、いずれも長尺線状及び長尺飛散性の選別対象物を選別するための選別装置が開示されるだけで、板状、柱状、筒状等の長尺状物以外の形状の異物を含む選別対象物を選別対象とはしていない。
【0006】
特許文献2に記載されるように、焼却処理後の電子・電気機器部品屑を溶錬炉で処理する場合、電子・電気機器部品屑中にアルミニウム、アンチモン、鉄、ニッケルなどの製錬阻害物質が存在すると、これを処理する溶練炉の処理効率を低下させる場合がある。製錬阻害物質の溶錬炉への投入を抑制するためには、溶錬炉へ投入される電子・電気機器部品屑中の製錬阻害物質を予め極力減らすような処理を行っておくことが望ましい。
【0007】
また近年、電子・電気機器部品屑から単体部品を分離して処理することも検討されはじめているが、多種多様且つ多形状の部品屑の中から所望の単体部品を選択的に分離回収することは現状では難しく、種々の検討がなされている。
【0008】
特に、電子・電気機器部品屑には、被覆線、銅線或いは鳥の巣等の線状の物体(以下「線状物」又は「線屑」という)が含まれている。線状物は、多種多様且つ多形状の部品屑の中から所望の単体部品を選別する際に他の部品や設備と絡まりやすく、分離精度の悪化や設備トラブルを引き起こす恐れがある。また、被覆線には、被覆部分に製錬阻害物質であるSbが含まれており、被覆線が溶錬炉へ混入することにより、溶錬炉の操業に影響を及ぼす場合もある。
【0009】
上記課題を鑑み、本発明は、種々の形状を含む被選別物から線状物を効率良く選別することが可能な線状物の除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討したところ、振動篩機に特定のフィルターを組み合わせて篩別を行うことで、種々の形状を含む被選別物から線状物を効率良く除去できることを見いだした。
【0011】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、原料をフィルター上へ供給する供給工程と、原料の供給方向に互いに間隔を空けて延在する複数のロッドを備えたフィルターに振動を与えることにより、供給工程でフィルター上に供給された原料から線状物を分離する篩別工程と、供給工程の前に、風力選別によって原料からプラスチックを分離する風力選別工程とを含む線状物の除去方法が提供される。
【0012】
本発明に係る線状物の除去方法は一実施態様において、原料と接触する複数のロッドの表面に線状物を篩下側に篩い落とすための曲面が形成されていることを含む。
【0013】
本発明に係る線状物の除去方法は別の一実施態様において、複数のロッド間の間隔及び複数のロッドの直径が、原料中に含まれる板状物の大きさに基づいて調整されていることを含む。
【0014】
本発明に係る線状物の除去方法は更に別の一実施態様において、複数のロッド間の間隔が、線状物の代表径の1.2~6倍で、且つ板状物の最小短径よりも狭くなるように調整されている。
【0015】
本発明に係る線状物の除去方法は更に別の一実施態様において、フィルター上に原料を押さえる押さえ部材を配置して篩い分けすることを含む。
【0016】
本発明に係る線状物の除去方法は更に別の一実施態様において、振動篩機が、フィルターの上流側に配置された平板状のテーブルを備え、テーブル上に供給された原料に振動を与えることにより、原料をテーブル上で分散させることと、分散させた原料をテーブル上からフィルター上へと供給することを更に含む。
【0017】
本発明に係る線状物の除去方法は更に別の一実施態様において、原料が、電子・電気機器部品屑であり、板状物が基板屑を含み、線状物が線屑を含む。
【0018】
本発明は別の一側面において、原料の供給方向に互いに間隔を空けて延在する複数のロッドを備えたフィルターを振動篩機内に配置し、フィルター上に、基板屑と線屑とを少なくとも含む原料を配置してフィルターに振動を与えることにより、線屑を篩下側に篩い分けすることを含む電子・電気機器部品屑の処理方法が提供される。
【0019】
本発明に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は更に別の一実施態様において、線屑が、被覆線を含む。
【0020】
本発明は別の一側面において、振動篩機と、振動篩機内に配置され、原料の供給方向に互いに間隔を空けて延在する複数のロッドを備えたフィルターと、フィルターに振動を与える振動付加手段とを備え、フィルター上に、線状物と板状物とを少なくとも含む原料を配置してフィルターに振動を与えることにより、線状物を篩下側に篩い分けする線状物の除去装置が提供される。
【0021】
本発明に係る線状物の除去装置は一実施態様において、フィルター上に配置された原料を上部から押さえることが可能な押さえ部材を更に備える。
【0022】
本発明に係る線状物の除去装置は別の一実施態様において、押さえ部材が弾性を有する。
【0023】
本発明に係る線状物の除去装置は更に別の一実施態様において、押さえ部材が、原料の供給側に振動篩機に固定された固定端を有し、原料の排出側に振動篩機に固定されない自由端を備える。
【0024】
本発明に係る線状物の除去装置は更に別の一実施態様において、固定端が、原料をフィルター上へと供給する供給口の上方に固定されており、固定端を起点として、押さえ部材が原料の供給側から排出側へ向けてぶら下げられており、押さえ部材の自由端が、原料の排出側においてフィルター上に原料を押さえた状態で上下方向に移動可能である。
【0025】
本発明に係る線状物の除去装置は更に別の一実施態様において、振動篩機が、フィルターの上流側に配置された平板状のテーブルを備え、テーブル上に供給された原料に振動を与えることにより、原料をテーブル上で分散させ、分散させた原料をテーブル上からフィルター上へと供給することを含む。
【0026】
本発明に係る線状物の除去装置は更に別の一実施態様において、原料が、電子・電気機器部品屑であり、板状物が基板屑を含み、線状物が線屑を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、種々の形状を含む被選別物から線状物を効率良く選別することが可能な線状物の除去方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態に係る線状物の除去装置を表す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るフィルターを表す模式図である。
【
図3】フィルターが備える複数のロッドの間隔及び半径の関係を表す模式図である。
【
図4】フィルターの上面からみた場合の選別状態を表す模式図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施の形態に係る線状物の除去装置について原料の供給方向からみた場合の押さえ部材の位置関係と板状物と線状物との選別状態を表す模式図であり、
図5(b)は、本発明の実施の形態に係る線状物の除去装置についてロッドの延在方向からみた場合の押さえ部材の位置関係と板状物と線状物との選別状態を表す模式図である。
【
図6】線屑の線径と累積重量割合の関係を評価した結果を示すグラフである。
【
図7】振動篩機内に配置するフィルターとして、ロッド直径8mm、ロッド間隔1.5mmのフィルターを配置して、部品毎に篩別した場合の各分配率を表すグラフである。
【
図8】振動篩機内に配置するフィルターとして、ロッド直径5mm、ロッド間隔4.0mmのフィルターを配置して、部品毎に篩別した場合の篩下への分配率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る線状物の除去方法に利用される原料としては、線状物と板状物とを少なくとも含む原料であれば特に限定されない。線状物としては以下に制限されるものではないが短径と長径とを有する線状部材を意味し、例えば電線、ケーブル、導線等の各種配線を含むことができる。板状物としては、板状の部材であれば特に制限されるものではなく、例えば基板、プラスチック板、金属板等があげられる。典型的には、例えば1cm2以上の表面積を有し、厚み2mm以上の板状部材が好適に利用できる。
【0030】
原料中には、線状、板状以外の例えば、筒状、柱状、方形状、不規則な塊状等の立体形状物を含むことができる。なお、以下の説明においては、原料として電子・電気機器部品屑を用いた場合を例に説明するが、上記したように、本発明の実施の形態に用いられる原料は、電子・電気機器部品屑に限定されないことは勿論である。
【0031】
本発明の実施の形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。本発明では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0032】
破砕方法として、特定の装置には限定されないが、粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。また、できる限り、部品の形状を損なわない破砕がのぞましく、例えば、基板表面剥離装置、クロスフローシュレッダ、竪型回転破砕機等が挙げられる。また、パーツセパレータ等の粗粉砕機を用いてもよい。
【0033】
以下に限定されるものではないが、本実施形態では、電子・電気機器部品屑は、最大直径100mm以下程度に破砕されているものが好ましい。さらに、本実施形態に係る電子・電気機器部品屑の原料を予め粗破砕することにより、コンデンサ、プラスチック、基板、線屑、IC、コネクタ、メタル等の形態で単体分離しておくことが好ましい。これにより、後述する転選機による特定の単体部品の選別がより容易になる。
【0034】
粗破砕された電子・電気機器部品屑を風力選別し、3~20m/sの風力選別において選別された軽量物を本実施形態の処理対象としてもよい。風力選別を組み合わせることにより、選別効率が向上する。風力選別は、以下に示す線屑の篩い分けの前に行っても良いし、後に行ってもよい。電子・電気機器部品屑中に含まれる材料によって異なるが、基板やIC等の貴金属含有物とメタルとの分離は10~18m/s、更には15~18m/sとするのが好ましく、コンデンサの濃縮やメタルの分率を向上させるためには最適風速を5~15m/s、更には8~12m/sとするのが好ましい。なお、後述するフィルター3の目詰まりやその後のソーター選別でのセンサーの誤検知に影響するフィルム、粉状物、プラスチック等を含む部品屑からプラスチックを分離する場合には風速を5~8m/s、更には6~7m/sとするのが好ましい。
【0035】
本実施形態では、例えば
図1に示す振動篩機1を用いて原料、即ちここでは電子・電気機器部品屑から電子・電気機器部品屑中に含まれる線状物として、線屑を篩い分けする。「線屑」とは銅、銅合金又はアルミニウムなどからなる電子・電気機器の機器間配線や機器の内部に使用される電線を意味する。線屑には、被覆線、銅線或いは鳥の巣などと呼ばれる細長い線状の屑等が含まれる。
【0036】
線屑は、電子・電気機器部品屑を選別する際に他の部品や設備と絡まりやすく、分離精度の悪化や設備トラブルを引き起こす恐れがある。線屑の中でも特に被覆線には、被覆部分に製錬阻害物質であるSbが約0.3%程度含まれている。被覆線が溶錬炉へ混入することにより、溶錬炉の操業に影響を及ぼす場合がある。
【0037】
本実施形態では、振動篩機1を用いて電子・電気機器部品屑から線屑を篩い分けする場合に、被覆線を篩別により分離することで、製錬阻害物質であるSbを溶錬炉の処理の系外へ取り除くことができる。
【0038】
振動篩機1としては、一般的に入手可能な装置を用いればよく、その詳細構造は特に限定されない。但し、線状物の篩別に際しては、特にフィルター3の形状を工夫する。具体的には、
図2又は
図3に示すように、互いに間隔yを空けて延在する複数のロッド2を備えたフィルター3を振動篩機1内に配置することで、線屑の篩別効率が向上する。
【0039】
複数のロッド2は、原料の供給方向と実質的に平行な向き(
図2及び
図4参照)に延在し、且つ、間隔y(
図3参照)を空けて互いに平行になるように延在している。
図1に示すように、電子・電気機器部品屑がテーブル4上からフィルター3上に配置され、フィルター3上において振動を与えられることにより、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、篩上側に基板やIC等の板状物からなる貴金属含有物が選別され、篩下側に被覆線を含む線屑が選別される。選別効率を向上させるために、テーブル4及びフィルター3が水平面に対して傾斜するように配置されてもよい。
【0040】
テーブル4は、線屑を篩い落とすための隙間を実質的に備えない平板状の板で構成されており、原料は、フィルター3に供給される前にまずテーブル4上に供給される。テーブル4上に供給された原料にまず振動を与えることにより、原料をテーブル4上で分散させることができる。そして、分散させた原料をテーブル上からフィルター上へと供給することにより、線状物と板状物とのフィルター3での選別効率をより高めることができる。また、テーブル4上で一旦原料に振動を与えることにより、線状物の方向を揃えることができる効果も有する。テーブル4に与える振動は、フィルター3へ与える振動と同一程度で良い。
【0041】
図3に示すように、複数のロッド2の表面には、線屑を篩下側に篩い落とすための曲面Rが形成されていることが好ましい。線屑は線形状を有するため、ロッド2の表面が角ばっていると、原料の供給方向に沿って線屑が移動する際にロッド2に引っかかって浮き上がり、上手く篩下側に篩別されない場合がある。
【0042】
複数のロッド2の表面に曲面Rが付されることにより、線屑とロッド2との接触をより円滑にすることができるため、線屑の篩別効率をより高めることができる。なお、複数のロッド2の表面には線屑との接触を円滑にするための表面加工などが施されていてもよい。
【0043】
ここで、ロッド2間の間隔及びロッドの直径が、電子・電気機器部品屑中に含まれる基板の大きさに基づいて調整されていることが好ましい。具体的には、例えば、
図3に示すように、フィルター3上に供給される電子・電気機器部品屑中に含まれる基板の平均サイズ(直径)をxmmとし、ロッド間距離をy、ロッド半径をrとすると、r
2+(y+2r)
2=(x+r)
2の関係を有するように、ロッド2間の間隔y及び半径rが調整されることが好ましい。
【0044】
例えば、複数のロッド間の間隔が、線状物の代表径の1.2~6倍で、且つ板状物の最小短径よりも狭くなるように調整されることが好ましい。ここで、線状物の「代表径」とは、原料中の線状物の任意の10点を抽出し、抽出した10点の線状物の長径側の平均径を算出する。これを5回繰り返し、5回の平均値を「代表径」としたものである。また、板状物の最小短径も同様に、原料中の板状体の任意の10点を抽出し、抽出した10点の板状物の短径側の平均径を算出し、これを5回繰り返した平均値を意味する。
【0045】
具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、ロッド直径(2r)は1~15mmとすることができる。ロッド間隔は、1~10mm、より好ましくは1.5~5mmとすることができる。
【0046】
本実施形態では、フィルター3上に配置された原料の上に、原料を押さえる押さえ部材5を配置して篩い分けすることが更に好ましい。押さえ部材5としては、原料中に含まれる板状物がフィルター3に与えられる振動により回転することを抑制し、ロッド2の間から抜け落ちることを抑制できるような材質及び形状を有していればよい。
【0047】
例えば、押さえ部材5としては、弾性を有し、原料をその弾性力で保持することが可能なゴム材、樹脂材、スポンジ材などの弾性部材を用いることができる。弾性を有するビニールシートなども押さえ部材5として利用できる。押さえ部材5として弾性部材を使用することにより、振動するフィルター3と一定距離を保って原料とともに動くことができるため、原料中の板状物の不必要な回転を抑制させることができる。押さえ部材5としては、原料との適度な摩擦力を有するように1又は複数の穴を有する部材であってもよい。
【0048】
押さえ部材5は、フィルター3上に供給された原料の上に複数枚積層することも可能であるが、積層しすぎると、原料に含まれる部品の形状や大きさのバラツキが大きい対象物に関しては、荷重の調整が難しくなる場合がある。押さえ部材5を原料の上から押しつけるように負荷をかけることも可能であるが、負荷が大きすぎると、押さえ部材5とフィルター3との間に基板などの板状物が詰まってしまう場合がある。
【0049】
押さえ部材5の厚みは、使用する原料によって最適な厚みを適宜選択することが可能である。以下に制限されるものではないが、押さえ部材5として例えばゴム材を用いる場合には、厚さ2~20mm程度のシート状の部材を原料上へ覆うように配置することが好ましい。原料を押さえ部材5で覆うことにより、電子・電気機器部品上に適度な負荷が加わり、篩別効率が向上する。押さえ部材5上に鉄板などの重りを置いて荷重を調節してもよい。
【0050】
押さえ部材5は、
図5(b)に示すように、原料の供給側の一端が、振動篩機1に固定された固定端を有しており、原料の排出側の他端が、振動篩機1に固定されない自由端を備えることが好ましい。押さえ部材5の一端が固定されることにより、押さえ部材が原料とともに原料排出側へ流れることを抑制できるとともに、押さえ部材5の他端が自由端となることにより、押さえ部材5の他端が原料の形状及び振動に合わせて動きやすくなるため、原料をより適切に押さえやすくなる。
【0051】
押さえ部材5は、
図5(b)に示すように、その固定端が、原料をフィルター3上へと供給する振動篩機1の供給口の上方(上端)に固定されている。この固定端を起点として、押さえ部材5が原料の供給側から排出側へ向けてぶら下げられるような構成を有しており、押さえ部材5の自由端が、原料の排出側においてフィルター3上に原料を押さえた状態で上下方向に移動可能となっている。このような構成を有することにより、原料の供給側においては原料が振動しやすくなり、線状物の方向を揃えやすくできるとともに、原料の排出側においては原料の振動による上下移動を、押さえ部材5で押さえることで、線状物をフィルター3の下方へと篩い落としやすくすることができる。
【0052】
押さえ部材5は、フィルター3全面を覆うような大きさを有して配置することができる。これにより、フィルター3上にある全ての原料の不必要な回転を1枚の押さえ部材5で押さえることができ、板状物のロッド2の間からの落下を抑制できる。或いは、複数の押さえ部材5を原料の供給方向から原料の排出方向にむけて複数個配置することもできる。
【0053】
振動篩機1を用いた原料の篩い分けは、2回以上繰り返すことが好ましい。例えば、原料として電子・電気機器部品を用いた場合は、第一段目の篩い分けにより、電子・電気機器部品中の部品付き基板と部品無し基板の分離を行う。そして、第二段目の篩い分けにより、部品無し基板に対して更に篩い分けを行うことで、電子・電気機器部品全体の約4割程度の基板を篩上側へ移行させることができる。
【0054】
また、二段階篩い分けに加えてさらに押さえ部材5による電子・電気機器部品への荷重調整を実施することで、2段階目の篩い分けが終了した時点で電子・電気機器部品に含まれる基板の約7割が篩上側へ移行し、線屑(被覆線)の約9割を篩下側へと移行させることができる。
【0055】
フィルター3へ与える振動の大きさは任意であり、線状物の向きを揃えることができる程度の大きさであれば特に制限されない。振動方向は、ロッド2の延在方向と同じ方向、即ち原料の供給方向と平行な方向(前後方向)とすることが好ましい。連続処理を行う場合は、前後方向に加えて更に上下方向に振動させることが好ましい。振幅は原料が前へ進む振幅であれば何でも良く、原料の処理量に応じて適宜設定することができる。フィルター3へ与える振動を供給するための装置は、直線型でも回転型でもいずれでもよく、所定の振動を発生させるものであれば特に限定されない。
【0056】
例えば、フィルター3上面に対して垂直方向の振動幅(上下方向の振動幅)及び前後方向の振動幅が0.5~10mmとなるように、振動を付与することができる。振動幅が大きすぎる場合には線屑の分離効率が低下する場合があり、振動幅が小さすぎる場合には振動の効果が有意に得られなくなることから、振動幅は5~8mmとすることが更に好ましい。或いは、以下の例に制限されるものではないが、フィルター3に振動数50Hz程度の振動を与え、振動源からフィルター3へ伝達される振動伝達率(加振率)が10~90%の間となるように振動の大きさを調整することができる。
【0057】
振動はフィルター3に対し、断続的又は連続的に付与することができる。連続的に振動を付与することで安定的に線屑の回収処理を行うことができ、断続的に振動を付与することで、振動の駆動に必要な動力を省略できる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0059】
原料として電子・電気機器部品屑原料を使用し、この電子・電気機器部品屑原料を15m/sで風力選別した軽量物に対し、振動篩機(氣工社製、VSB-312、篩別サイズW300×L1200mm、処理能力0.2t/h)を用いて篩い分けを行った。振動篩機内には
図1に示すように、テーブル及びフィルターを並列配置して篩い分けを行った。
【0060】
フィルターは、ロッド間間隔1.5mm、ロッド直径8mmの銅線用フィルターと、ロッド間間隔4.0、5.0、6.0mm、ロッド直径5mmの被覆線用フィルターのうちのいずれかをテーブルに隣接させて配置した。フィルター上に配置された軽量物上に弾性体(ゴム板)を配置して篩い分けを行った。
【0061】
<線屑と基板の選別特性>
線屑を含む部品屑として、表1に示す試験材料を用意した。
【0062】
【0063】
材料A及びBを用いて、線径と累積重量割合の関係を評価した結果を
図6に示す。
図6より、銅線の線形サイズは全て1.5mm以下に収まることが解った。即ち、フィルターのロッド間距離としては、1.5mm程度であれば部品屑の中から銅線を選別できることが解る。一方、被覆線は、8割以上の線形サイズが4.0mm以下であったことから、ロッド間距離としては4.0mm程度であれば部品屑の中から被覆線を選別できることが解った。
【0064】
基板に対しては、
図3に示すようなモデリングを行い、材料Aを線屑として含有する部品屑の中の基板サイズ(直径)をxmmとし、ロッド間距離をy、ロッド半径をrとし、r
2+(y+2r)
2=(x+r)
2の関係を有するように、ロッド2間の間隔y及び半径rを調整するように評価した結果、基板サイズ6.7mmの場合は、ロッド2間距離yが4mmのとき、最適なロッド直径2r=4.8mmとなった。これにより、ロッド直径としては5mm程度が良好であることが解った。
【0065】
<線屑と基板の選別特性>
振動篩機内に配置するフィルターとして、ロッド直径8mm、ロッド間隔1.5mmのフィルターを配置して、部品毎に篩別した場合の各分配率を
図7に示す。分配率は、一度篩別した篩上物を再度篩別し、合計3回篩別して、篩下物がほとんど無くなったところで評価した。
【0066】
図7に示すように、基板を篩上に残したまま、銅線の約9割を篩下へ移行できていることがわかる。なお、銅線と一緒に、粉状物もほぼ全量分離できた。粉状物も分離することで、選別時のセンサーの誤検知防止と減容による後工程の負荷低減の効果が期待できる。
【0067】
<被覆線の分離>
振動篩機内に配置するフィルターとして、ロッド直径5mm、ロッド間隔4.0mmのフィルターを配置して、部品毎に篩別した場合の篩下への分配率を
図8に示す。
図8に示すように、被覆線の9割以上を篩下へ移行させることができたが、基板も約6割が篩下へ移行した。
【0068】
そのため、篩上物と篩下物の基板の特性について評価したところ、篩上物には基板に部品が付着した部品付き基板が多く、篩下物は部品無し基板が多いことが解った。原因としては、部品付き基板がフィルター上方に配置された弾性部材を押し上げたことにより部品無し基板が立ち、ロッド2間から落ちてしまったことが想定された。このため、以下の対策1~4を施した。
【0069】
(対策1)篩い分け時に弾性部材を上部から押さえつけて固定する。
(対策2)押さえ部材として弾性部材(ゴム板)を積層して荷重をかける。
(対策3)二段階で篩別する(一段目:部品付き基板と部品無し基板の分離、二段目:部品無し基板と線屑との分離)。
(対策4)二段階で篩別する+押さえ部材を配置してフィルターへかける荷重を調整する。
【0070】
対策1では、押さえ部材とフィルターの間に部品付き基板が詰まる場合があった。対策2では、基板に付く部品の種類及び大きさにバラツキが大きく、荷重の調整が困難であった。対策3では、一段目で部品付き基板と部品無し基板の選別を行い、二段目で部品無し基板と線屑との分離を行ったところ、二段目において基板の約4割(63%)を篩上に移行させることができた。対策4では、二段目において基板の約7割が篩上に移行し、被覆線の約9割が篩下へ移行した。