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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】搬送機構及びシート拡張装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240219BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240219BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240219BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/78 X
H01L21/78 P
B65G49/07 C
B23Q7/04 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020061923
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163803
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 良典
(72)【発明者】
【氏名】木村 公
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-117885(JP,U)
【文献】特開2000-183132(JP,A)
【文献】実開昭59-151689(JP,U)
【文献】特開2017-127955(JP,A)
【文献】特開平1-176512(JP,A)
【文献】特開平9-272121(JP,A)
【文献】特開2000-21952(JP,A)
【文献】特開平7-186080(JP,A)
【文献】特開2001-341090(JP,A)
【文献】特開2018-198242(JP,A)
【文献】国際公開第2005/049287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/301
B65G 49/07
B23Q 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物としてのシートを吸引保持して搬送する搬送機構であって、
それぞれ吸引パッドを有し、該対象物を該吸引パッドで吸引保持する複数の吸引部と、
揺動可能な継手を介して該複数の吸引部に接続されたブラケットと、
一端部が該複数の吸引部の異なる吸引部にそれぞれ固定され、他端部が該ブラケットにそれぞれ固定された複数の弾性部材と、
複数の蛇腹状吸引パッドと、
複数の吸引部に接続された所定の流路に配置されたバルブを有し、該複数の吸引部における負圧の発生を制御する負圧制御ユニットと、
該ブラケットを移動させる移動ユニットと、
を備え、
該ブラケットは、一対の直線部と、該一対の直線部の長手方向の中間部分において該一対の直線部を連結する連結部と、該一対の直線部の各々において両端部の下部に固定された水平板と、を含み、
それぞれの該水平板には、1つの吸引部と、2つの蛇腹状吸引パッドと、が直角三角形状に配置されており、該1つの吸引部は直角状部分に位置し、該2つの蛇腹状吸引パッドはそれぞれ鋭角状部分に位置しており、該1つの吸引部は、該一対の直線部の長手方向において該2つの蛇腹状吸引パッドのうち1つの蛇腹状吸引パッドよりも端部側に位置し、且つ、該連結部の長手方向において該2つの蛇腹状吸引パッドのうちもう1つの蛇腹状吸引パッドよりも端部側に位置しており、
複数の弾性部材は、吸引保持された該対象物の傾き又は変形に応じて該複数の吸引部の揺動を許容し、且つ、該対象物の吸引保持が解除されると、該吸引パッドが該対象物を吸引保持していないときの所定の向きに該吸引パッドの向きを戻すことを特徴とする搬送機構。
【請求項2】
複数の弾性部材のそれぞれは、ゴムシート、樹脂シート、エラストマーシート又はバネであることを特徴とする請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
板状物に貼り付けられたシートを拡張するシート拡張装置であって、
該板状物に貼り付けられた矩形状の該シートを、所定の平面方向に拡張する拡張ユニットと、
該板状物の一面の大きさよりも大きな直径を有する開口が形成されている環状フレームを吸引するための第1の吸引パッドを有し、該環状フレームが該板状物の周囲を囲む様に、該拡張ユニットで拡張された該シートの一面側に該環状フレームを配置するフレーム配置ユニットと、
切刃を有し、該板状物と該環状フレームとが貼り付けられた該シートのうち該開口の外側を該切刃でカットするためのカットユニットと、
該シートのうち、該切刃でカットされて形成された穴の外周部を吸引保持して、該シートを廃棄箱へ搬送する搬送機構と、を備え、
該搬送機構は、
第2の吸引パッドを有し、該シートを該第2の吸引パッドで吸引保持する吸引部と、
揺動可能な継手を介して該吸引部に接続されたブラケットと、
一端部が該吸引部に固定され、他端部が該ブラケットに固定された弾性部材と、
該吸引部に接続された所定の流路に配置されたバルブを有し、該吸引部における負圧の発生を制御する負圧制御ユニットと、
該ブラケットを移動させる移動ユニットと、を備え、
該弾性部材は、吸引保持された該シートの傾き又は変形に応じて該吸引部の揺動を許容し、且つ、該シートの吸引保持が解除されると、該第2の吸引パッドが該シートを吸引保持していないときの所定の向きに該第2の吸引パッドの向きを戻すことを特徴とするシート拡張装置。
【請求項4】
該搬送機構は、該廃棄箱に先に収容されている該シートの該一面に、該吸引部で吸引保持された該シートを押圧して接着させた後に、該シートの吸引を解除することにより、該廃棄箱に先に収容されている該シート上に、押圧して接着させた該シートを積み重ねることを特徴とする請求項3に記載のシート拡張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を吸引保持して搬送する搬送機構、及び、板状物に貼り付けられたシートを拡張するシート拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性及び伸縮性を有するシート状の対象物を吸引して搬送する搬送機構が知られている。この搬送機構は、例えば、上面視で略H字形状を有する金属製のブラケットを備える。ブラケットには、複数の吸引ユニットが設けられている。各吸引ユニットは、吸引パッドを備える吸引部と、吸引部とブラケットとの間に配置された継手と、を有する。
【0003】
搬送機構で対象物を吸引保持すると、対象物が変形したり、傾いたりすることがある。これに対して、継手を揺動可能に(即ち、首振り可能に)構成することにより、対象物に変形、傾き等が生じたとしても吸引パッドの底面の向きを対象物の表面に追従させ、対象物を適切に保持する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-194991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸引パッドの底面の向きを対象物の表面に追従させた場合、搬送後に吸引を解除して対象物を吸引パッドから放しても、吸引パッドの底面の向きが搬送時の向きから元に戻らず、次の対象物を吸引保持できないことがある。
【0006】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、吸引を解除した後に吸引パッドの底面の向きが元に戻る搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、対象物としてのシートを吸引保持して搬送する搬送機構であって、それぞれ吸引パッドを有し、該対象物を該吸引パッドで吸引保持する複数の吸引部と、揺動可能な継手を介して該吸引部に接続されたブラケットと、一端部が該複数の吸引部の異なる吸引部にそれぞれ固定され、他端部が該ブラケットにそれぞれ固定された複数の弾性部材と、複数の蛇腹状吸引パッドと、複数の吸引部に接続された所定の流路に配置されたバルブを有し、該複数の吸引部における負圧の発生を制御する負圧制御ユニットと、該ブラケットを移動させる移動ユニットと、を備え、該ブラケットは、一対の直線部と、該一対の直線部の長手方向の中間部分において該一対の直線部を連結する連結部と、該一対の直線部の各々において両端部の下部に固定された水平板と、を含み、それぞれの該水平板には、1つの吸引部と、2つの蛇腹状吸引パッドと、が直角三角形状に配置されており、該1つの吸引部は直角状部分に位置し、該2つの蛇腹状吸引パッドはそれぞれ鋭角状部分に位置しており、該1つの吸引部は、該一対の直線部の長手方向において該2つの蛇腹状吸引パッドのうち1つの蛇腹状吸引パッドよりも端部側に位置し、且つ、該連結部の長手方向において該2つの蛇腹状吸引パッドのうちもう1つの蛇腹状吸引パッドよりも端部側に位置しており、複数の弾性部材は、吸引保持された該対象物の傾き又は変形に応じて該複数の吸引部の揺動を許容し、且つ、該対象物の吸引保持が解除されると、該吸引パッドが該対象物を吸引保持していないときの所定の向きに該吸引パッドの向きを戻す搬送機構が提供される。
【0008】
好ましくは、該複数の弾性部材のそれぞれは、ゴムシート、樹脂シート、エラストマーシート又はバネである。
【0009】
本発明の他の態様によれば、板状物に貼り付けられたシートを拡張するシート拡張装置であって、該板状物に貼り付けられた矩形状の該シートを、所定の平面方向に拡張する拡張ユニットと、該板状物の一面の大きさよりも大きな直径を有する開口が形成されている環状フレームを吸引するための第1の吸引パッドを有し、該環状フレームが該板状物の周囲を囲む様に、該拡張ユニットで拡張された該シートの一面側に該環状フレームを配置するフレーム配置ユニットと、切刃を有し、該板状物と該環状フレームとが貼り付けられた該シートのうち該開口の外側を該切刃でカットするためのカットユニットと、該シートのうち、該切刃でカットされて形成された穴の外周部を吸引保持して、該シートを廃棄箱へ搬送する搬送機構と、を備え、該搬送機構は、第2の吸引パッドを有し、該シートを該第2の吸引パッドで吸引保持する吸引部と、揺動可能な継手を介して該吸引部に接続されたブラケットと、一端部が該吸引部に固定され、他端部が該ブラケットに固定された弾性部材と、該吸引部に接続された所定の流路に配置されたバルブを有し、該吸引部における負圧の発生を制御する負圧制御ユニットと、該ブラケットを移動させる移動ユニットと、を備え、該弾性部材は、吸引保持された該シートの傾き又は変形に応じて該吸引部の揺動を許容し、且つ、該シートの吸引保持が解除されると、該第2の吸引パッドが該シートを吸引保持していないときの所定の向きに該第2の吸引パッドの向きを戻すシート拡張装置が提供される。
【0010】
好ましくは、該搬送機構は、該廃棄箱に先に収容されている該シートの該一面に、該吸引部で吸引保持された該シートを押圧して接着させた後に、該シートの吸引を解除することにより、該廃棄箱に先に収容されている該シート上に、押圧して接着させた該シートを積み重ねる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る搬送機構は、一端部が吸引部に固定され他端部がブラケットに固定された弾性部材を備える。弾性部材は、吸引保持された対象物の傾き又は変形に応じて吸引部の揺動を許容する。更に、対象物の吸引保持が解除されると、対象物から吸引部に作用する外力がなくなるので、吸引パッドの底面の向きは、弾性部材の復元力により自然と元の向きに戻される。従って、次に吸引する対象物を吸引する際の動作が阻害されないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シート拡張装置の斜視図である。
図2】受渡ユニットの斜視図である。
図3】拡張ユニットの上面図である。
図4図4(A)はZ軸方向移動機構等の斜視図であり、図4(B)は搬送機構の斜視図である。
図5図5(A)は吸引部等の一部断面側面図であり、図5(B)は吸引パッドの底面の向きが変化したときの吸引部等の拡大図である。
図6】シート拡張ステップを示す図である。
図7】フレーム配置ステップ及びカットステップを示す図である。
図8】デバイスチップユニット分離ステップを示す図である。
図9】シート吸引ステップを示す図である。
図10】挟持ユニット退避ステップを示す図である。
図11】シート廃棄ステップを示す図である。
図12】シートの処理方法を示すフロー図である。
図13】変形例に係るシート廃棄ステップを示す図である。
図14】第2の実施形態に係る搬送機構の一部拡大図である。
図15】吸引パッド及び蛇腹状吸引パッドの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るシート拡張装置2の斜視図である。シート拡張装置2は、板状の被加工物(板状物)11に、伸縮性を有するエキスパンドテープであるシート(対象物)19を貼り付けた後(図2等参照)、当該シート19を拡張するための装置である。
【0014】
まず、図2を参照して、被加工物11等について説明する。本実施形態の被加工物11は、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハである。被加工物11の表面11a側には、互いに交差する複数の分割予定ライン13が設定されている。
【0015】
分割予定ライン13で区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。なお、表面11a側には、被加工物11と略同径であり樹脂製の保護部材17が貼り付けられている。
【0016】
本実施形態の被加工物11には、複数の改質層が、各分割予定ライン13に沿って被加工物11の異なる深さ位置に形成されている。改質層は、レーザー加工装置(不図示)を用いて形成される。
【0017】
例えば、被加工物11を透過する波長を有するレーザービームの集光点を、被加工物11の内部の所定の深さに位置付けて、集光点を分割予定ライン13に沿って移動させることで、1つの改質層が形成される。
【0018】
図2に示す被加工物11は、各分割予定ライン13に複数の改質層を形成した後、被加工物11に外力を印加することで、被加工物11は改質層を起点として複数のデバイスチップ25(図6等参照)に分割される前の状態である。なお、被加工物11は、分割される前の状態に限定されず、研削、切削等を経て、複数のデバイスチップ25に分割された状態であってもよい。
【0019】
ところで、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に特に制限はない。例えば、シリコン以外の他の半導体材料で成る基板を被加工物11として用いることもできる。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0020】
ここで、図1に戻って、シート拡張装置2の構成要素について説明する。図1に示す、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。シート拡張装置2は、平板状の基台4を備える。
【0021】
X軸方向の一方側の端部に位置する基台4の角部には、被加工物11にシート19を供給するためのシート供給ユニット8が配置されている。なお、図1では、シート供給ユニット8を簡略化して直方体で示す。
【0022】
シート供給ユニット8には、離型フィルム付きのシート19がロール状に巻回されたロール体(不図示)が配置されている。シート19は、基材層と、基材層の一面側に設けられた粘着層(糊層)とで構成される。
【0023】
基材層は、例えば、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂で形成されている。また、粘着層は、例えば、紫外線硬化樹脂等の樹脂で形成されており、粘着層には上述の離型フィルムが貼り付けられている。
【0024】
シート供給ユニット8は、ロール体から離型フィルム付きのシート19を送り出す送出ローラー(不図示)と、離型フィルム付きのシート19から離型フィルムを剥がす剥離プレート(不図示)と、を有する。
【0025】
更に、シート供給ユニット8は、剥離された離型フィルムを巻き取る巻取ローラー(不図示)と、離型フィルムが剥離されたシート19の基材層側を支持する貼付ローラー(不図示)と、を有する。
【0026】
シート供給ユニット8の上方には、被加工物11を吸引保持した状態で、被加工物11をシート19の粘着層側に押し付ける貼付ユニット10が配置されている。貼付ユニット10は、長手部が各々Y軸方向に略平行に配置された一対の腕部を含む支持部12を備える。
【0027】
一対の腕部の端部は、X軸方向に略平行に配置された連結部により連結されている。また、一対の腕部の間には、高さ方向がX軸方向と略平行な円柱状の軸部14が配置されている。軸部14の一端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0028】
軸部14の一端部及び他端部の間において、軸部14には、平板状のベース部16が固定されている。このベース部16の一面には、円盤状のチャックテーブル20が固定されている。
【0029】
チャックテーブル20は、所定の流路を介してエジェクタ等の吸引源に接続された円盤状の多孔質板を有する。多孔質板の上面20aは、チャックテーブル20の表面に露出しており、吸引源を動作させると上面20a(保持面)には負圧が生じる。
【0030】
支持部12の連結部において、ベース部16とは反対側に位置する側面には、支持部12をZ軸方向に沿って移動させるためのエアシリンダ18が配置されている。エアシリンダ18は、シリンダチューブとピストンロッドとを有し、ピストンロッドの上端部に、上述の支持部12が固定されている。
【0031】
エアシリンダ18の下部には、矩形板22が固定されている。矩形板22は、チャックテーブル20の直下に位置しており、チャックテーブル20の外径よりも大きい直径の貫通開口22aを有する。
【0032】
矩形板22のX軸方向の一方側の側面には、シート19を切断するための切刃を有する切刃部24と、切刃を加熱するためのヒーター26とが配置されている。切刃部24は、矩形板22に設けられた移動機構(不図示)により、Y軸方向に沿って移動可能である。
【0033】
矩形板22のY軸方向の一方側の端部には、貼付ユニット10をX軸方向に移動させるためのボールネジ式のX軸移動機構28が設けられている。X軸移動機構28は、X軸方向に略平行でありZ軸方向に重なる様に配置された一対のガイドレール30を有する。
【0034】
各ガイドレール30には、X軸方向に移動可能な態様で移動板32が取り付けられている。移動板32の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸方向に略平行なボールネジ34が回転可能な態様で連結されている。ボールネジ34の一端部には、モータ等の回転駆動源36が連結されている。
【0035】
ここで、被加工物11の裏面11b側にシート19を貼り付ける手順を簡単に説明する。まず、貼付ユニット10をシート供給ユニット8の上方に配置する。そして、チャックテーブル20の上面20aを上方に向けた状態で、被加工物11の表面11a側を上面20aで吸引保持する。
【0036】
その後、軸部14を回転させて上面20aを下方に向ける。そして、エアシリンダ18を動作させて上面20aを下方に移動させることにより、被加工物11の裏面11b側の全体にシート19の粘着層を貼り付ける。
【0037】
次に、切刃部24をY軸方向に沿って移動させることによりシート19を切断した後、貼付ユニット10をX軸方向の他方側に移動させる。これにより、シート19は略正方形(矩形)に切り取られ、保護部材17及び被加工物11と、シート19とが一体化される(図2参照)。
【0038】
シート19が貼り付けられた被加工物11は、貼付ユニット10の下方に配置された受渡ユニット40へ受け渡される。図2は、受渡ユニット40の斜視図である。受渡ユニット40は、矩形状の移動板42を有する。
【0039】
移動板42上には、モータ等の回転駆動源44が設けられている。回転駆動源44の出力軸(不図示)は、Z軸方向と略平行に配置されており、この出力軸には、円盤46の下面の中央部が固定されている。
【0040】
円盤46の上面の中央部には、エアシリンダ48が設けられている。エアシリンダ48は、Z軸方向と略平行に配置された円柱状のシリンダチューブ48aを有する。シリンダチューブ48aの内部には、ピストンロッド48bの下部が配置されている。
【0041】
ピストンロッド48bの上端部には、チャックテーブル50の下部が固定されている。チャックテーブル50の構造は、上述のチャックテーブル20と略同じである。チャックテーブル50の上面には、負圧が生じる保持面50aが露出している。
【0042】
チャックテーブル50の側面において、チャックテーブル50の周方向の異なる四箇所の各々には、シート19の四隅を挟持するためのクランプ機構52が設けられている。チャックテーブル50の周方向においてクランプ機構52の間には、直方体状の支柱54が設けられている。
【0043】
支柱54の下端部は、円盤46の上面に固定されている。支柱54の上端部には、2つのローラー部56が設けられている。各ローラー部56は、後述する環状フレーム23をシート19に貼り付ける際に使用される。
【0044】
各ローラー部56の下部には、エアシリンダ(不図示)が設けられており、このエアシリンダにより各ローラー部56の高さは調節される。2つのローラー部56の間には、円環状の切刃58aを有するカットユニット58が設けられている。
【0045】
カットユニット58の下部にも、エアシリンダ(不図示)が設けられている。切刃58aの上端の高さは、このエアシリンダにより調節される。受渡ユニット40の移動板42の下部には、図1に示す様にX軸移動機構60が連結されている。
【0046】
X軸移動機構60は、X軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール62を有する。ガイドレール62上には、移動板42がX軸方向に移動可能な態様で取り付けられている。移動板42の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0047】
ナット部には、X軸方向に略平行なボールネジ64が回転可能な態様で連結されている。ボールネジ64の一端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。ところで、受渡ユニット40よりも上方には、被加工物11の表面11a側に貼り付けられた保護部材17を剥離するための剥離機構70が設けられている。
【0048】
裏面11b側にシート19を貼り付けた後、剥離機構70で表面11a側の保護部材17が剥離されると、被加工物11及びシート19から成る被加工物ユニット21が形成される(図3等参照)。
【0049】
図1に示す様に、剥離機構70に対してX軸方向の他方側、且つ、受渡ユニット40の上方には、拡張ユニット72が設けられている。拡張ユニット72は、受渡ユニット40で保持された被加工物ユニット21のシート19を、XY平面方向(所定の平面方向)に沿って拡張する。
【0050】
図3を主として参照しながら、拡張ユニット72について説明する。図3は、拡張ユニット72の上面図である。拡張ユニット72は、シート19を挟持する第1挟持ユニット74Aを有する。第1挟持ユニット74Aは、それぞれY軸方向に沿う長手部を有する下側挟持部76a(図6参照)と上側挟持部76bとを有する。
【0051】
下側挟持部76aの上面側には、複数のローラー76a図6参照)がY軸方向に沿って配置されている。各ローラー76aは、X軸方向と略平行な回転軸を中心として回転可能であり、下側挟持部76aの上面から径方向の略半分が上方に突出している。
【0052】
同様に、上側挟持部76bの下面側には、複数のローラー76b図6参照)がY軸方向に沿って配置されている。各ローラー76bは、X軸方向と略平行な回転軸を中心として回転可能であり、上側挟持部76bの下面から径方向の略半分が下方に突出している。
【0053】
下側挟持部76aの略中央部には、下面視で略L字形状の下アーム(図3では不図示)の一端部が連結されている。上側挟持部76bの略中央部にも、同様に、下面視で略L字形状の上アーム78の一端部が連結されている。
【0054】
下アームの他端部には、下側可動板(図3では不図示)が連結されており、上アーム78の他端部には、上側可動板80が連結されている。下側可動板及び上側可動板80は、Z軸方向と略平行に配置されたガイドレール82に対して、Z軸方向に移動可能な態様で取り付けられている。
【0055】
下側可動板のうち下アームと反対側(裏面側)には、ナット部が設けられており、上側可動板80のうち上アーム78とは反対側(裏面側)にも、ナット部が設けられている(いずれも図3では不図示)。
【0056】
下側可動板のナット部には、Z軸方向に略平行なボールネジ(図3では不図示)が回転可能な態様で連結されており、このボールネジの下端部には、モータ等の回転駆動源(図3では不図示)が連結されている。
【0057】
同様に、上側可動板80のナット部には、Z軸方向に略平行なボールネジ(図3では不図示)が回転可能な態様で連結されており、このボールネジの上端部には、モータ等の回転駆動源84が連結されている。
【0058】
回転駆動源を動作させることにより下アームを上昇させ、回転駆動源84を動作させることにより上アーム78を下降させれば、下側挟持部76aの複数のローラー76aと、上側挟持部76bの複数のローラー76bとで、シート19を挟持できる。
【0059】
ガイドレール82は、直方体状のベース部の一面に固定されており、このベース部の下部には、第1挟持ユニット74AをX軸方向に沿って移動させるためのX軸移動機構86が設けられている。
【0060】
X軸移動機構86は、ベース部の下部に設けられたナット部(不図示)と、このナット部に回転可能な態様で連結されたX軸方向に略平行なボールネジ88とを有する。ボールネジ88の一端部には、モータ等の回転駆動源90が連結されている。
【0061】
また、ボールネジ88の他端部には、軸受け92が連結されている。下側挟持部76a及び上側挟持部76bでシート19を挟持した状態で、第1挟持ユニット74AをX軸方向の一方側へ移動させれば、シート19はX軸方向の一方側へ引っ張られる。
【0062】
拡張ユニット72を上面視した場合に、拡張ユニット72のX軸方向の中心を通りY軸方向と平行な直線(第1の線対称軸)に対して、第1挟持ユニット74Aの反対側には、第2挟持ユニット74Bが配置されている。
【0063】
第2挟持ユニット74Bの構成は、基本的には第1挟持ユニット74Aと同じである。但し、第2挟持ユニット74Bの下アーム及び上アーム78は、第1の線対称軸に対して、第1挟持ユニット74Aの下アーム及び上アーム78と線対称に配置されている。
【0064】
第2挟持ユニット74Bの下側挟持部76aと上側挟持部76bとでシート19を挟持した状態で、第2挟持ユニット74B用のX軸移動機構86を用いて第2挟持ユニット74BをX軸方向の他方側へ移動させれば、シート19はX軸方向の他方側へ引っ張られる。
【0065】
第1挟持ユニット74A及び第2挟持ユニット74Bの間において、上側挟持部76bのY軸方向の他方側の端部よりも更に他方側には、第3挟持ユニット74Cが配置されている。第3挟持ユニット74Cは、それぞれX軸方向に沿う長手部を有する下側挟持部(図3では不図示)と上側挟持部94とを有する。
【0066】
下側挟持部の上面側には、複数のローラー(図3では不図示)がX軸方向に沿って配置されている。各ローラーは、Y軸方向と略平行な回転軸を中心として回転可能であり、下側挟持部の上面から径方向の略半分が上方に突出している。
【0067】
同様に、上側挟持部94の下面側には、複数のローラー(不図示)がX軸方向に沿って配置されている。各ローラーは、Y軸方向と略平行な回転軸を中心として回転可能であり、上側挟持部94の下面から径方向の略半分が下方に突出している。
【0068】
下側挟持部の略中央部には、Y軸方向の他方側に延伸する態様で、直線形状の下アーム(不図示)の一端部が連結されており、上側挟持部94の略中央部にも、Y軸方向の他方側に延伸する態様で、直線形状の上アーム96の一端部が連結されている。
【0069】
下アームの他端部には、下側可動板(不図示)が連結されており、上アーム96の他端部には、上側可動板98が連結されている。下側可動板及び上側可動板98は、Z軸方向と略平行に配置されたガイドレール100に対して、Z軸方向に移動可能な態様で取り付けられている。
【0070】
下側可動板のうち下アームとは反対側(裏面側)には、ナット部が設けられており、上側可動板98のうち上アーム96とは反対側(裏面側)にも、ナット部が設けられている(いずれも不図示)。
【0071】
下側可動板のナット部には、Z軸方向に略平行なボールネジ(不図示)が回転可能な態様で連結されており、このボールネジの下端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0072】
同様に、上側可動板98のナット部には、Z軸方向に略平行なボールネジ(不図示)が回転可能な態様で連結されており、このボールネジの上端部には、モータ等の回転駆動源102が連結されている。
【0073】
下側挟持部用の回転駆動源を動作させることにより下アームを上昇させ、回転駆動源102を動作させることにより上アーム96を下降させれば、下側挟持部の各ローラーと、上側挟持部94の各ローラーとで、シート19を挟持できる。
【0074】
ガイドレール100は、直方体状のベース部の一面に固定されており、このベース部の下部には、第3挟持ユニット74CをY軸方向に沿って移動させるためのY軸移動機構104が設けられている。
【0075】
Y軸移動機構104は、ベース部の下部に設けられたナット部(不図示)と、このナット部に回転可能な態様で連結されたY軸方向に平行なボールネジ106と、を有する。ボールネジ106の一端部には、モータ等の回転駆動源108が連結されている。
【0076】
ボールネジ106の他端部には、軸受けが連結されている。下側挟持部と上側挟持部94とでシート19を挟持した状態で、第3挟持ユニット74CをY軸方向の他方側へ移動させれば、シート19はY軸方向の他方側へ引っ張られる。
【0077】
第1挟持ユニット74Aの下側挟持部76a及び上側挟持部76bに対して、第3挟持ユニット74Cの反対側には、第4挟持ユニット74Dが配置されている。第4挟持ユニット74Dの構成は、第3挟持ユニット74Cと略同じである。
【0078】
但し、下側挟持部には、Y軸方向の一方側に延伸する態様で、直線形状の下アーム(不図示)の一端部が連結されており、上側挟持部94にも、Y軸方向の一方側に延伸する態様で、直線形状の上アーム96の一端部が連結されている。
【0079】
第4挟持ユニット74Dの下側挟持部と上側挟持部94とでシート19を挟持した状態で、第4挟持ユニット74DをY軸方向の一方側へ移動させれば、シート19はY軸方向の一方側へ引っ張られる。
【0080】
再び図1に戻って、シート拡張装置2の他の構成要素について説明する。拡張ユニット72のY軸方向の一方側には、金属製の環状フレーム23(図7参照)がZ軸方向に重ねて配置されたフレームストック領域(不図示)が存在する。
【0081】
なお、環状フレーム23は、リング状の薄板であり、被加工物11の表面11a又は裏面11b(即ち、一面)の直径(大きさ)よりも大きな直径を有する貫通開口(開口)23aを有する(図7参照)。
【0082】
基台4の上方には、1つの環状フレーム23を吸引保持した状態で搬送し、拡張ユニット72で拡張されたシート19の一面19a(即ち、シート19の粘着層側の面。図7参照)側に、環状フレーム23を配置するフレーム配置ユニット110が設けられている。
【0083】
フレーム配置ユニット110は、上面視で円盤形であり、金属製のベース部112を含む。ベース部112の下面側には、ベース部112の周方向に沿って互いに離れた態様で4つの吸引パッド(第1の吸引パッド)112aが配置されている。
【0084】
本実施形態の吸引パッド112aは、バキューム方式の吸引機構で使用されるパッドであり、吸引パッド112aには、バキュームポンプ、エジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された流路(不図示)の他端が接続されている。
【0085】
当該流路には、電磁弁等のバルブ(不図示)が配置されている。バルブを開状態とすれば吸引パッド112aの底面側には負圧が生じる。なお、吸引パッド112aは、バキューム方式に限定されず、ベルヌーイ方式の吸引機構で使用されるパッドであってもよい。
【0086】
ベルヌーイ方式の場合、流路の一端には、吸引源に代えて、エアー等の気体を供給するための気体供給源が設けられる。なお、独立した複数個の吸引パッド112aに代えて、ベース部112の下面側に環状の吸引パッドが設けられてもよい。
【0087】
ベース部112の上面には、Z軸方向に長手部を有する角柱状の支持柱114aの下端部が接続されている。支持柱114aの上端部には、X軸方向に沿って延伸する角柱状の接続部114bの一端部が接続されている。
【0088】
接続部114bの他端部には、矩形状の移動板114cの一面(表面)が接続されている。移動板114cの他面(裏面)側には、Z軸方向移動機構116が設けられている。図4(A)は、Z軸方向移動機構116等の斜視図である。
【0089】
Z軸方向移動機構116は、長手部がZ軸方向に沿って配置された平板状の移動板118を有する。移動板118の一面(表面)には、Z軸方向に沿って配置された一対のガイドレール120が固定されている。
【0090】
一対のガイドレール120上には、上述の移動板114cがZ軸方向に沿って移動可能な態様で配置されている。移動板114cの裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、一対のガイドレール120に沿って配置されたボールネジ122が回転可能な態様で連結されている。
【0091】
ボールネジ122の上端部には、モータ等の回転駆動源124が配置されている。移動板118、ガイドレール120、ボールネジ122及び回転駆動源124等は、支持柱114aをZ軸方向に沿って移動させるZ軸方向移動機構116を構成する。
【0092】
移動板118の他面(裏面)側には、移動ブロック126の一面(表面)側が固定されている。移動ブロック126は、Y軸方向に略平行でありZ軸方向に重なる様に配置された一対のガイドレール128に、移動可能な態様で取り付けられている。
【0093】
移動ブロック126の他面(裏面)側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部は、一対のガイドレール128の間においてY軸方向に略平行に配置されたボールネジ130に回転可能な態様で連結されている。
【0094】
ボールネジ130の一端部には、モータ等の回転駆動源132が連結されている。移動ブロック126、ガイドレール128、ボールネジ130及び回転駆動源132等は、支持柱114a等をY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構134を構成する。
【0095】
図1に示す様に、支持柱114aの側面には、エアシリンダ138が固定されている。エアシリンダ138は、長手方向がZ軸方向に沿って配置されたシリンダチューブ138aを有する。シリンダチューブ138aの内部には、ピストン138bの上部が配置されている。
【0096】
ピストン138bの下部には、搬送機構140が固定されている。Z軸方向移動機構116、Y軸移動機構134及びエアシリンダ138は、搬送機構140をZ軸方向及びY軸方向に沿って移動させるための移動ユニット136(図4(A)参照)を構成する。
【0097】
図4(B)は、シート19(対象物)を吸引保持して搬送する搬送機構140の斜視図である。なお、図4(B)では、構成要素の一部を、線、機能ブロック等で簡略化して示す。搬送機構140は、上面視で略H字形状を有する金属製のブラケット142を含む。
【0098】
ブラケット142は、X軸方向に略平行に配置された一対の直線部142aを含む。一対の直線部142aの長手方向の中間部分は、Y軸方向に略平行に配置された連結部142bにより連結されている。
【0099】
直線部142aの両端部の下部には、円筒部142cが形成されている。なお、円筒部142cは、ブラケット142の一部である。円筒部142cには、流路が形成されており、円筒部142cの上部には、流路150(所定の流路)を構成するホース、チューブ(いずれも不図示)等の一端が接続されている。
【0100】
流路150の他端には、バキュームポンプ、エジェクタ等の吸引源152が接続されており、また、流路150には、後述する制御ユニットにより制御される電磁弁等のバルブ154が配置されている。
【0101】
円筒部142cの底部側の外周側面には、弾性部材144の上端部(他端部)144aが固定されている。本実施形態の弾性部材144は、弾性材料を用いて円筒状に形成された弾性シートである。
【0102】
弾性材料としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン系樹脂や、PET(ポリエチレンテレフタラート)等のポリエステル系樹脂、又は、エラストマーが用いられる。
【0103】
なお、弾性部材144の形状は、円筒状に限定されず、短冊状であってもよい。つまり、弾性部材144は、円筒状又は短冊状のゴムシート、樹脂シート、エラストマーシート等であってよい。
【0104】
弾性部材144の形状が短冊状の場合、円筒部142cの周方向において離散的に複数の短冊状のシートが配置される。また、弾性部材144は、円筒状又は短冊状のシートではなく、バネであってもよい。
【0105】
弾性部材144としてバネを用いる場合、円筒部142cの周方向において離散的に複数のバネが配置される。各バネとしては、コイルバネ、薄板バネ等の種々のバネを用いてよい。なお、弾性部材144は、XY平面方向において復元力を発揮できるならば、材料及び形状は上述の例に限定されない。
【0106】
弾性部材144の下端部(一端部)144bには、円柱状の吸引部146の外周側面が固定されている。図5(A)は、吸引部146等の一部断面側面図である。図5(A)では、円筒部142cと、弾性部材144と、吸引部146の一部とを断面で示す。
【0107】
図5(A)に示す様に、円筒部142cの底部には、継手148が所定の立体角の範囲で揺動可能な態様で接続されており、継手148の下部には、吸引部146の上部の中央部が固定されている。
【0108】
吸引部146には、流路146aが形成されており、流路146aは、負圧が生じる保持面が下方を向く様に配置された吸引パッド(第2の吸引パッド)146bに接続されている。なお、図5(A)では、吸引パッド146bの側面が示されている。
【0109】
吸引パッド146b自体はゴム等で形成されているが、吸引パッド146bの表面は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)等の離型剤で覆われている。それゆえ、吸引パッド146bは、シート19の粘着層に接した後であっても、容易にシート19から離れる。
【0110】
流路146aは、継手148の流路148aを介して、ブラケット142における流路150の他端部に接続されている。吸引パッド146bは、バルブ154等で構成される負圧制御ユニット156により負圧の発生が制御される。
【0111】
例えば、バルブ154を開状態にすると、吸引パッド146bと吸引源152とが連通し、吸引パッド146bには負圧が発生する。また、バルブ154を閉状態にすると、吸引パッド146bと吸引源152とが遮断され、吸引源152から吸引パッド146bへの負圧の伝達が遮断される。
【0112】
本実施形態の吸引パッド146bは、バキューム方式の吸引機構で使用されるパッドであるが、これに限定されず、ベルヌーイ方式の吸引機構で使用されるパッドであってもよい。ベルヌーイ方式の場合、流路150の一端には、吸引源152に代えて、エアー等の気体を供給するための気体供給源が設けられる。
【0113】
気体供給源は、例えば、エアーを圧縮するコンプレッサーと、圧縮されたエアーが溜められたタンクと、エアー中の水滴やダストを除去するフィルターと、を有する。バルブ154を開状態にすると、気体供給源から吸引パッド146bへ気体が供給される。
【0114】
吸引パッド146bが、円形の底面の径方向の外側へ気体を噴射する、又は、底面の下方に旋回流が生じる様に気体を噴射すると、吸引パッド146bの底面の中央部の近傍では、ベルヌーイの定理に従って圧力が低下して負圧が生じる。
【0115】
次に、継手148について更に詳しく説明する。継手148は、金属製の球状部148bを有する。球状部148bの下部には、円筒部148cが固定されている。球状部148b及び円筒部148cには、両者を貫通する様に、流路150の径よりも小さい径を有する流路148aが形成されている。
【0116】
球状部148bは、X軸、Y軸及びZ軸方向に沿う平行移動が規制されているが、流路148aが流路150と連通する限りにおいて任意の方向に回転可能な態様で、円筒部142cの底部で保持されている。
【0117】
この様な球状部148bの回転を可能にする構造は、例えば、上述の特許文献1に記載されている。球状部148bの回転に伴い、継手148及び吸引部146は、一体となって揺動できる(即ち、揺動が許容される)。
【0118】
例えば、Z軸方向と直交する任意の方向で継手148を見た場合に、継手148は、Z軸方向に対して+15度から-15度までの範囲で揺動可能である。それゆえ、吸引パッド146bがシート19を吸引保持している場合に、シート19の変形、傾き等が生じても、吸引パッド146bの底面の向きは、シート19の表面に追従して変化できる。
【0119】
図5(B)は、吸引パッド146bの底面の向きが、Z軸方向に平行な所定の向きA1から、向きA1とは異なる向きA2に変化したときの吸引部146等の拡大図である。シート19の吸引保持を解除した場合、シート19から吸引部146に作用する外力が無くなる。
【0120】
それゆえ、弾性部材144の復元力により、継手148及び吸引部146は揺動し、吸引パッド146bの底面の向きは、シート19を吸引保持していないときの元の所定の向きA1(即ち、図5(A)の状態)に戻る。従って、本実施形態の搬送機構140では、次に吸引するシート19を吸引する際の動作が阻害されないという利点がある。
【0121】
ところで、シート拡張装置2には、各回転駆動源、各吸引源、バルブ154等の動作を制御する制御ユニット(不図示)が設けられている。制御ユニットは、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0122】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニットの機能が実現される。次に、主として図6から図12を用いて、シート拡張装置2の動作を説明する。なお、図12は、シート拡張装置2を用いたシート19の処理方法を示すフロー図である。
【0123】
受渡ユニット40には、シート19の四隅をクランプ機構52で挟持した状態で、被加工物ユニット21が吸引保持されている。まず、この受渡ユニット40を拡張ユニット72の下方へ移動させる。
【0124】
そして、エアシリンダ48で受渡ユニット40のチャックテーブル50を上昇させ、第1挟持ユニット74Aから第4挟持ユニット74Dと略同じ高さまで被加工物ユニット21を移動させる。
【0125】
第1挟持ユニット74Aから第4挟持ユニット74Dでシート19の四辺を挟持した後、チャックテーブル50の吸引を解除し、チャックテーブル50を下方へ退避させる。次に、第1挟持ユニット74Aから第4挟持ユニット74Dが、シート19をXY平面方向に沿って拡張する。
【0126】
シート19の拡張に伴い、被加工物11には外力が印加され、被加工物11は、改質層を起点として複数のデバイスチップ25に分割される(シート拡張ステップS10)。図6は、シート拡張ステップS10を示す図である。
【0127】
次に、図7に示す様に、フレーム配置ユニット110の吸引パッド112aで環状フレーム23の一面側を吸引保持して搬送し、拡張されたシート19の粘着層側に環状フレーム23を配置する(フレーム配置ステップS20)。
【0128】
環状フレーム23は、分割後の被加工物11(即ち、デバイスチップ25全体)を囲む様に配置される。そして、受渡ユニット40の2つのローラー部56を上昇させた後、回転駆動源44を動作させて、所定方向に支柱54を回転させる。これにより、環状フレーム23がシート19に確実に貼り付けられる。
【0129】
その後、2つのローラー部56を下降させ、代わりに、カットユニット58を上昇させて、シート19のうち、貫通開口23aの外側であって環状フレーム23の直下に位置する領域に切刃58aを切り込ませる。そして、所定方向に支柱54を回転させる。
【0130】
これにより、切刃58aの上端の軌跡に沿って、シート19が円形にカットされる(カットステップS30)。図7は、フレーム配置ステップS20及びカットステップS30を示す図である。なお、図7では、搬送機構140を省略している。
【0131】
カットステップS30により、円形のシート19、環状フレーム23及び複数のデバイスチップ25が一体と成ったデバイスチップユニット27が形成される(図8参照)。また、シート19には、カットステップS30に伴う穴19bが形成される(図8参照)。
【0132】
次に、Z軸方向移動機構116を動作させて、フレーム配置ユニット110を上方へ移動させる。これにより、デバイスチップユニット27をシート19から分離する(デバイスチップユニット分離ステップS40)。
【0133】
図8は、デバイスチップユニット分離ステップS40を示す図である。なお、図8でも、搬送機構140を省略している。デバイスチップユニット分離ステップS40の後、Z軸方向移動機構116で支持柱114aを下降させると供に、ピストン138bを下方に伸ばして、搬送機構140を拡張された状態のシート19へ向けて下降させる。
【0134】
そして、搬送機構140の吸引部146で、第1挟持ユニット74A及び第2挟持ユニット74BのY軸方向の端部よりも外側に位置するシート19の外周部19cを吸引保持する(シート吸引ステップS50)。図9は、シート吸引ステップS50を示す図である。なお、図9では、フレーム配置ユニット110を省略している。
【0135】
吸引部146でシート19を保持した後、各挟持ユニットの上側挟持部と下側挟持部とをZ軸方向で離すことにより、各挟持ユニットでのシート19の挟持を解除する。その後、第1挟持ユニット74AをX軸方向の一方側へ移動させ、第2挟持ユニット74BをX軸方向の他方側へ移動させる。
【0136】
また、第3挟持ユニット74CをY軸方向の他方側へ移動させ、第4挟持ユニット74DをY軸方向の一方側へ移動させる。この様にして、シート19から各挟持ユニットを退避する(挟持ユニット退避ステップS60)。
【0137】
図10は、挟持ユニット退避ステップS60を示す図である。なお、図10でも、フレーム配置ユニット110を省略している。また、図6から図10では、第3挟持ユニット74C及び第4挟持ユニット74Dを省略している。
【0138】
挟持ユニット退避ステップS60では、外力が解除されたことにより、拡張されていたシート19が収縮する。それゆえ、シート19に変形等が生じる。しかし、上述の様に、吸引部146及び継手148は一体として揺動可能であるので、吸引パッド146bの底面の向きは、シート19の表面に追従して変化できる。
【0139】
挟持ユニット退避ステップS60の後、拡張ユニット72のY軸方向の一方側に配置されたシート廃棄領域(不図示)上に搬送機構140を移動させる。シート廃棄領域には、使用済のシート19が配置される廃棄箱158が設けられている。
【0140】
廃棄箱158は、ブラケット142を上面視した場合のブラケット142のXY平面方向の大きさよりも大きな矩形状の開口を、上部に有する。廃棄箱158は、4つの側板と、1つの底板とから成る直方体状の箱体である。
【0141】
搬送機構140は、廃棄箱158上において使用済のシート19の吸引保持を解除し、シート19を下方へ落下させる(シート廃棄ステップS70)。これにより、使用済のシート19を廃棄箱158へ搬送する。図11は、シート廃棄ステップS70を示す図である。なお、図11でも、フレーム配置ユニット110を省略している。
【0142】
本実施形態では、シート廃棄ステップS70後、弾性部材144の復元力により継手148が揺動され、吸引パッド146bの底面の向きが元の所定の向きに戻される。それゆえ、搬送機構140を用いて次にシート19を吸引する際の動作が阻害されないという利点がある。
【0143】
S70の後、フレーム配置ユニット110は、不図示の搬送テーブルの上方へ移動し、搬送テーブルにデバイスチップユニット27を受け渡す。その後、デバイスチップユニット27は、搬送テーブルにより、シート拡張装置2における所定の領域へ搬送される。
【0144】
次に、シート廃棄ステップS70の変形例について説明する。図13は、変形例に係るシート廃棄ステップS70を示す図である。なお、図13では、フレーム配置ユニット110を省略している。
【0145】
当該変形例において、搬送機構140は、吸引部146でシート19を吸引保持した状態で、ブラケット142を廃棄箱158の内部へ搬送する。そして、シート19の他面(粘着層とは反対側に位置する基材層の表面)が廃棄箱158の底板の上面に接するまでブラケット142を下降させた後、シート19の吸引を解除する。
【0146】
次に、ブラケット142を上昇させる。この様にして、1枚目のシート19は、廃棄箱158の底板に載置される。また、2回目のS10からS60の後、2回目のシート廃棄ステップS70でも、同様に、搬送機構140は、シート19を吸引保持した状態で、ブラケット142を廃棄箱158の内部へ搬送する。
【0147】
これにより、廃棄箱158に先に収容されている1枚目のシート19の一面19aに、2枚目のシート19が押圧されて接着される。その後、シート19の吸引を解除する。この様にして、先に廃棄箱158に収容されているシート19上のXY平面方向の略同じ位置に、2枚目以降のシート19が配置される。
【0148】
従って、使用済のシート19が、Z軸方向に比較的整然と積み重ねられるので、複数枚のシート19がランダムに積み重ねられる場合に比べて、使用済の複数枚のシート19により形成される積層体の高さを抑えることができる。それゆえ、当該積層体の搬送、処分等が容易になる。
【0149】
次に、第2実施形態について説明する。図14は、第2の実施形態に係る搬送機構140の一部拡大図である。第2実施形態の搬送機構140では、ブラケット142の直線部142aの両端部の下部に、2つの板状の柱142dの上部が固定されている。
【0150】
各柱142dは、長手部がZ軸方向と各々略平行に配置されている。各柱142dの下部には、上面視で直角三角形状の水平板142eが固定されている。水平板142eの直角状部分と、2つの鋭角状部分の各々とには、上述の円筒部142cが固定されている。
【0151】
各円筒部142cの上部には、流路150を構成するホース、チューブ等が接続されるが、図14では、ホース等を省略している。水平板142eの直角状部分に配置された円筒部142cの下部には、上述の弾性部材144の上端部144aが固定されている。
【0152】
更に、弾性部材144の下端部144bには、吸引部146の外周側面の上部が固定されている。なお、吸引部146の上部の中央部は、第1の実施形態と同様に、継手148の下部に固定されている。
【0153】
水平板142eの2つの鋭角状部分の各々に配置された円筒部142cには、蛇腹状吸引パッド160が固定されている。蛇腹状吸引パッド160の表面も、吸引部146の吸引パッド146bと同様に、離型剤で覆われている。
【0154】
蛇腹状吸引パッド160と、吸引部146の吸引パッド146bとは、シート19の一面19aを吸引保持する。図15は、各水平板142eにおける、吸引パッド146b及び蛇腹状吸引パッド160の位置関係を示す図である。
【0155】
第2の実施形態では、吸引パッド146b及び蛇腹状吸引パッド160でシート19を吸引保持する。それゆえ、シート19に変形等が生じ、シート19が吸引パッド146b及び蛇腹状吸引パッド160のいずれかから離れたとしても、シート19を吸引保持できる。
【0156】
つまり、第1の実施形態に比べて、より確実にシート19を吸引保持できる。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0157】
2:シート拡張装置
4:基台
8:シート供給ユニット
10:貼付ユニット
12:支持部
14:軸部
16:ベース部
18:エアシリンダ
20:チャックテーブル、20a:上面
22:矩形板、22a:貫通開口
24:切刃部
26:ヒーター
28:X軸移動機構
30:ガイドレール、32:移動板、34:ボールネジ、36:回転駆動源
40:受渡ユニット
42:移動板
44:回転駆動源
46:円盤
48:エアシリンダ、48a:シリンダチューブ、48b:ピストンロッド
50:チャックテーブル、50a:保持面
52:クランプ機構
54:支柱
56:ローラー部
58:カットユニット、58a:切刃
60:X軸移動機構
62:ガイドレール、64:ボールネジ
70:剥離機構
72:拡張ユニット
74A:第1挟持ユニット、74B:第2挟持ユニット
74C:第3挟持ユニット、74D:第4挟持ユニット
76a:下側挟持部、76a:ローラー
76b:上側挟持部、76b:ローラー
78:上アーム、80:上側可動板
82:ガイドレール、84:回転駆動源
86:X軸移動機構
88:ボールネジ、90:回転駆動源、92:軸受け
94:上側挟持部、96:上アーム、98:上側可動板
100:ガイドレール、102:回転駆動源
104:Y軸移動機構
106:ボールネジ、108:回転駆動源
110:フレーム配置ユニット
112:ベース部、112a:吸引パッド
114a:支持柱、114b:接続部、114c:移動板
116:Z軸方向移動機構
118:移動板、120:ガイドレール、122:ボールネジ、124:回転駆動源
126:移動ブロック、128:ガイドレール
130:ボールネジ、132:回転駆動源
134:Y軸移動機構、
136:移動ユニット
138:エアシリンダ、138a:シリンダチューブ、138b:ピストン
140:搬送機構
142:ブラケット、142a:直線部、142b:連結部、142c:円筒部
142d:柱、142e:水平板
144:弾性部材、144a:上端部、144b:下端部
146:吸引部、146a:流路、146b:吸引パッド
148:継手、148a:流路、148b:球状部、148c:円筒部
150:流路、152:吸引源、154:バルブ、156:負圧制御ユニット
158:廃棄箱
160:蛇腹状吸引パッド
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、13:分割予定ライン、15:デバイス
17:保護部材、19:シート、19a:一面、19b:穴、19c:外周部
21:被加工物ユニット、23:環状フレーム、23a:貫通開口
25:デバイスチップ、27:デバイスチップユニット
A1,A2:向き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15