(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】認知機能を改善するビフィズス菌
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20240219BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240219BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240219BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240219BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240219BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P25/28
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2019182183
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-07-19
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02214
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 恭久
(72)【発明者】
【氏名】大木 篤史
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184366(JP,A)
【文献】特開2017-175949(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098810(WO,A1)
【文献】特表2018-525390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィズス菌N61株(NITE BP-02214)の菌体を有効
成分として含有する、
視覚記憶力の向上による認知機能改善剤。
【請求項2】
N61株の菌体が死菌である、請求項
1に記載の
視覚記憶力の向上による認知機能改善剤。
【請求項3】
一食当たりの単位摂取形態からなり、該単位中に、N61株が有効成分として含有されている、
視覚記憶力の向上による認知機能改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能改善効果を有するビフィズス菌に関する。より詳しくは、視覚記憶力の向上によって認知機能を改善するビフィズス菌に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知症患者の増加が問題となっている。認知症患者は世界で5000万人いると推計され、2050年には1億5200万人に達するものと試算されている。また、2025年には全国民のおよそ1割が認知症になるとも予測されている。
【0003】
認知症の最大のリスク因子としては、加齢が知られている。日本を例に具体的数値を挙げると、認知症の有病率は加齢に伴って増加し、65歳では3%、75歳で14%、85歳で40%、95歳では80%に達する(非特許文献1参照)。
【0004】
一般的に認知症とは、記憶や認識、判断などの認知機能が低下し、生活に支障をきたしている状態を指す。そして、代表的な認知症としてはアルツハイマー病(Alzheimer’s disease : AD)がよく知られているが、ADの発症原因はいまだ明らかになっておらず、根本的な治療法も確立していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】朝田 隆:都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 厚生労働省化学研究費補助金 認知症対策総合研究事業 平成23年度~平成24年度総合研究報告書 平成25年(2013)年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、認知症にならないためには、早期の対策が重要となる。具体的には、認知機能が低下する前に、現在の認知機能を維持するか、もしくは認知機能を向上させることが重要となる。認知機能を改善する食材として、様々な食材が提案されている。本発明者らは、従来報告されている食材以外に、認知機能を改善することができる新たな食材がないか検討を行った。そして、セロトニン分泌促進能を有するビフィズス菌N61株を摂取すると、視覚記憶力が向上することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本発明は、ビフィズス菌N61株(NITE BP-02214)の菌体を有効成分として含有する、認知機能改善剤である。
【0008】
上記構成において、N61株の菌体が死菌であることが好ましい。
【0009】
上記課題解決のため、本発明は、一食当たりの単位摂取形態からなり、該単位中に、N61株が有効成分として含有されている、認知機能改善剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のビフィズス菌N61株は視覚記憶力の向上によって認知機能を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、Cognitraxにおける各検査項目の結果表記方法を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、Cognitraxの各検査項目と機能領域との関連性を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株(NITE BP-02214)
本発明のビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)である。特にビフィドバクテリウム・ロンガムに属するビフィズス菌のうち、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株(NITE BP-02214)である。本発明にいうN61の記号は日清食品ホールディングス株式会社で独自に菌株に付与した番号であり、本ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株は本発明者によって初めて分離されたものである。
【0013】
本発明のビフィドバクテリウム・ロンガムN61株は、下記条件で寄託されている。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
(3)受託番号:NITE BP-02214
(4)識別のための表示:N61
(5)原寄託日:2016年3月3日
(6)ブダペスト条約に基づく寄託への移管日:2017年1月5日
【0014】
本実施形態で用いられるビフィドバクテリウム・ロンガムN61株菌体の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、前培養および本培養はGAM培地 (ニッスイ) を所定の方法で調製し、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株を接種後37℃、24時間する。本培養液中の菌体を遠心分離や膜濃縮により集菌し、菌体を水で洗浄後加熱殺菌処理する。なお、集菌処理前に殺菌処理しても良い。殺菌、菌体洗浄後凍結乾燥処理により乾燥殺菌体粉末を得ることができる。菌体の粉末化の方法は凍結乾燥に限らず、スプレードライやドラム乾燥などで行っても良い。また、殺菌処理を施さなければ生菌体粉末を得ることもできる。
【0015】
本実施形態におけるビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の菌体は、生菌を用いても良く、死菌を用いても良い。また、生菌を用いる場合は、死菌が混在していても良い。また、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の菌体は、一日当たり20mg以上摂取することが好ましい。摂取については、一日当たりの量を一度に摂取しても、数回に分けて摂取してもよく、摂取のタイミングも問わない。例えば、単位摂取形態として一錠当たりビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の死菌10mgを含んだ錠剤がある場合、一度に2錠摂取してもよいし、2錠を何回かに分けて摂取してもよい。また、一錠当たりビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の死菌20mgを含んでいる場合には、一日に1錠摂取すればよい。なお、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の菌体の一日当たり摂取量に上限はないが、あえて上限を設けるのであれば、1 g摂取すれば十分であると考える。それ以上摂取しても、効き目に差がないと考えられるためである。また、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株の菌体は継続して12週間以上摂取することが好ましい。
【0016】
ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株菌体の摂取方法としては、特に制限されないが、経口摂取であることが好ましい。具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガムN61株菌体を食品組成物として含有する飲食品、医薬組成物として含有する医薬品等として摂取することが好ましい。
【0017】
飲食品として摂取する場合、例えばビフィドバクテリウム・ロンガムN61株菌体を食品組成物として発酵乳及び乳酸菌飲料、バター等の乳製品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子パン類等の材料としても利用することができる。また、即席麺やクッキー等の加工食品にも好適に利用することができる。さらに、水やジュースなどに溶解させて、飲料として摂取してもよい。なお、ビフィドバクテリウム・ブレーベ N61株菌体単体をそのまま飲食品として摂取してもよい。また、一般の飲料や食品以外にも特定保健用食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント等に含有させてもよい。
【0018】
医薬品として摂取する場合、添加剤やその他の薬学的に許容される担体とともに用いることができる。医薬品の形状としては、例えば、錠剤、カプセル、顆粒等が挙げられる。なお、製剤化は公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。本実施例では、健常な成人56名を対象とした摂取試験を行い、本発明の効果を調べた。
【0020】
<試験食品及び対照食品(プラセボ食品)の作成>
試験食品及びプラセボ食品は表1の通りとした。
【0021】
【0022】
<試験>
本実施例では、スクリーニングにより60名を選抜し,割付用乱数表を用いて各30名ずつ二群に分けた.二群に分けた被験者に対して、試験食品とプラセボ食品のいずれかを12週間にわたって摂取させた。摂取終了時には規約違反や試験辞退の被検者を除いて56名(それぞれ摂取群(A群)29名と非摂取群(P群)27名)となった。被験者のスクリーニング時における一般背景は表2の通りであった。
【0023】
【表2】
被験者背景因子
数値は、性別は該当被験者数、それ以外は平均値 ± 標準偏差で示す。
P群との群間比較(性別:χ2検定、性別以外の項目:2標本t検定)
【0024】
被験者には、1日1包(2粒)を、水やぬるま湯と一緒に噛まずに摂取させた。ただし、摂取時刻は規定しなかった。また、万が一、摂取し忘れた場合でも、翌日多く摂取しないようにした。試験中、被験者には日誌を配布し、毎日記録をつけさせた。
【0025】
<認知機能評価検査(Cognitrax)>
Cognitrax basic(株式会社ヘルス・ソリューション社製)を実施した。Cognitraxの検査項目及びその内容は、表3の通りである。検査の順番は、表3の各検査項目の記載順とした。
【0026】
【0027】
また、各テストの結果は
図1の右欄に記載された項目として表される。一例をあげて説明すると、言語記憶テストの結果は、正解ヒット数(即時)、正解パス数(即時)、正解ヒット数(遅延)、正解パス数(遅延)で表される。
【0028】
さらに、
図2に示すように、上記検査テストは各機能領域と関係している。ここで、各検査テストの結果は、各機能領域についてのスコア(点数)算出に用いられる。
図2において、「〇」は直接、機能領域のスコアの計算に利用されていることを示す。「△」は間接的に使われていることを示す。
【0029】
各機能領域の詳細については次の通りである。
(1)総合記憶力:記憶する力を示し、言語記憶力と視覚記憶力の合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(2)言語記憶力:言葉を記憶する力を示し、言語記憶力テストにて評価する。数値の増加が改善を示す。
(3)視覚記憶力:図形を記憶する力を示し、視覚記憶テストにて評価する。数値の増加が改善を示す。
(4)認知機能速度:視覚情報を素早く処理する力を測定するテストである。指たたきテストの右手平均と左手平均の合計と、SDCテストの正解応答回数の合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(5)反応時間:指示に素早く反応する力を測定するテストである。ストループテストの複合反応時間とストループ反応時間の平均値で評価する。数値の低下が改善を示す。
(6)総合注意力:注意を維持し正確に対処する力を測定するテストである。ストループテストのストループ誤反応回数、注意シフトテストの誤答回数、持続処理テストの正解見過し数の回数と誤反応の回数の合計点で評価する。数値の低下が改善を示す。
(7)認知柔軟性:指示の変化に対応して処理する力を測定するテストである。注意シフトテストの正解応答回数から、注意シフトテストの誤答回数とストループテストのストループ誤反応回数を差し引いた合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(8)処理速度:情報を素早く処理する力を測定するテストである。SDCテストの正解応答回数から、SDCテストの誤答回数を差し引いた合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(9)実行機能:規則や概念を理解し意思決定する力を測定するテストである。注意シフトテストの正解(応答)回数から、注意シフトテストの誤答回数を差し引いた合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(10)単純注意力:長い間注意を払う力を測定するテストである。持続処理テストの正解応答回数から、持続処理テストの誤反応の回数を差し引いた合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
(11)運動速度:細やかな動きを早く繰り返す力を測定するテストである。指たたきテストの右手平均と左手平均の合計点で評価する。数値の増加が改善を示す。
【0030】
Cognitraxの検査結果を表4~10に示す。
【0031】
【表4】
Cognitrax言語記憶テストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
数値の増加が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=29
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0032】
【表5】
Cognitrax視覚記憶テストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
P群:n=27、A群:n=29
数値の増加が改善を示す。
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0033】
表5の結果から、正解ヒット数(即時)において優位性が、正解ヒット数(遅延)において有意差が認められた。
図2に示すように、視覚記憶テストは視覚記憶力領域と関係しており、視覚記憶力テストは視覚記憶力領域のスコア計算に直接利用されている。これらのことから、視覚記憶力に効果があることが示唆された。
【0034】
【表6】
Cognitrax指たたきテストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
P群:n=27、A群:n=29
数値の増加が改善を示す。
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0035】
表6の結果から、左手平均において優位性が、右手平均において有意差が認められた。
図2に示すように、指たたきテストは認知機能速度領域と運動速度領域に関係している。また、指たたきテストは認知機能速度領域と運動速度領域のスコア計算に直接利用されている。これらのことから、認知機能速度領域と運動速度領域に効果があることが示唆された。
【0036】
【表7】
Cognitrax SDCテストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
※で示した項目は数値の低下が改善を示し、その他は数値の増加が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=29
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0037】
【表8】
Cognitraxストループテストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
数値の低下が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=28
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0038】
【表9】
Cognitrax注意シフトテストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
※で示した項目は数値の低下が改善を示し、その他は数値の増加が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=29
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0039】
【表10】
Cognitrax持続処理テストの測定値
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
※で示した項目は数値の低下が改善を示し、その他は数値の増加が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=29
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0040】
また、各機能領域のスコアは表11の通りであった。
【0041】
【表11】
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。
数値の増加が改善を示す。
P群:n=27、A群:n=29
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0042】
表11の結果より、視覚記憶力領域において、群間比較でも有意傾向が認められた。
【0043】
本試験(n=56)の平均年齢は58.2±5.3歳であった。Gualtieri and Johnson,が報告したCNSバイタルサイン(Cognitraxの基本パッケージに相当)の標準データによれば、20~29歳の総合記憶力ドメインスコアの平均値は99.7であった。全体として、本研究の被験者は、総合記憶力ドメインスコアが<99.7であったことから、記憶機能が低い高齢者であると考えられた。また、規範データでは、50~59歳の総合記憶力ドメインスコアが97.4であったことから、スコア<97.4~1SD(89.9)の被験者は、加齢によって記憶機能がかなり低いと推定された。これらのことから、ベースラインの総合記憶力ドメインスコア>=90を用いて層別解析を行った。ベースラインの総合記憶力ドメインスコアが90以上の被験者では、総合記憶力ドメインスコアが90~98の範囲であったことから、これらの被験者は健常であるが、記憶力がわずかに低いことが示唆された(低正常記憶機能グループ、n=34)。一方、ベースラインの総合記憶力ドメインスコアが90未満の被験者では、総合記憶力ドメインスコアの平均値は83.9であり、軽度認知障害患者の標準データ(86.9)よりも低かった。しかし、認知症の診断によく用いられる認知症スクリーニング検査ミニメンタルステートテスト(MMSE-J)のスコアは正常範囲内であった(正常以下の記憶機能グループ、n=22)。
【0044】
表12に、総合記憶力が90~98点の被験者層34名(P群17名、A群17名)、総合記憶力が90点未満の被験者層22名(P群10名、A群12名)の被験者背景因子を示した。
【0045】
【表12】
数値は、性別は該当被験者数、それ以外は平均値 ± 標準偏差で示す。
P群との群間比較(性別:χ2検定、性別以外の項目:2標本t検定)
【0046】
次に、被験者34名の各機能領域のスコアの再解析を行った。結果を表13に示す。
【0047】
【表13】
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。数値の増加が改善を示す。
P群:n=17、A群:n=17
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0048】
表13に示すように、摂取前後において総合記憶力と視覚記憶力において有意差が認められた。また、群間では視覚記憶力に有意差が認められた。
【0049】
次に、ストループテスト成績について再解析を行った。結果を表14に示す。
【0050】
【表14】
いずれの数値も、平均値 ± 標準偏差で示す。数値の低下が改善を示す。
P群:n=17、A群:n=17
摂取前との群内比較 * p < 0.05、** p < 0.01(1標本t検定)
P群との群間比較 † p < 0.1、# p < 0.05、## p < 0.01(2標本t検定)
【0051】
表14に示すように、摂取前後において単純反応時間、複合反応時間(正解)、ストループ反応時間(正解)で有意差が認められた。また、群間比較においては、複合反応時間(正解)において有意差が認められた。
図2に示すように、ストループテストは反応時間領域、総合注意力領域および認知柔軟性領域に関係している。また、ストループテストは反応時間領域、総合注意力領域および認知柔軟性領域のスコア計算に直接利用されている。これらのことから、反応時間領域、総合注意力領域および認知柔軟性領域に効果があることが示唆された。
【0052】
以上の結果より、N61ビフィズス菌を摂取することで、認知機能、特に視覚に基づく認知機能が向上することが示唆された。