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特許7438735イソチオシアネート生成剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】イソチオシアネート生成剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240219BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20240219BHJP
   A23L 3/44 20060101ALI20240219BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240219BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240219BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20240219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 17/18 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L3/40 A
A23L3/44
A23L5/00 K
A61K8/9789
A61K9/19
A61K36/31
A61Q19/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P17/18
A61P19/06
A61P25/28
A61P43/00 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019221011
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021087410
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(うち「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】大越 幸太
(72)【発明者】
【氏名】山下 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】安田 大佑
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110955(JP,A)
【文献】特表2004-514456(JP,A)
【文献】特開2019-004709(JP,A)
【文献】特開2017-132703(JP,A)
【文献】特開2019-052114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブラナ科植物乾燥加工品を含むイソチオシアネート生成剤であって、
前記アブラナ科植物乾燥加工品は、凍結乾燥加工品と熱風乾燥加工品からなり、且つアブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して10質量%~45質量%の凍結乾燥加工品を含
前記アブラナ科植物はケールである、イソチオシアネート生成剤。
【請求項2】
アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して12質量%~30質量%の凍結乾燥加工品を含む、請求項1に記載のイソチオシアネート生成剤。
【請求項3】
アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して15質量%~25質量%の凍結乾燥加工品を含む、請求項1に記載のイソチオシアネート生成剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む食品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む化粧用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアブラナ科植物の乾燥加工品を含有するイソチオシアネート生成剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科はアブラナ目に属される科の一つであり、属する植物には世界各国で広く食されている野菜類を含んでいる。例えば、アブラナ科の野菜には、キャベツやブロッコリー、ダイコン、ケール、白菜などがあり、各種料理に使用されるほか、粉末や搾汁などの加工を経て青汁などの飲料としても供されている。
アブラナ科植物には、他の植物にはみられないグルコシノレート(以下、GSLと表記することもある)という成分が含まれており、生のアブラナ科植物を摂取すると、植物体に含まれる内在性ミロシナーゼもしくは特定の腸内細菌によって、イソチオシアネートが生成される(非特許文献1)。例えば、GSLの一種であるグルコラファニンからはイソチオシアネートの一種であるスルフォラファンが生成される。スルフォラファンは、第二相解毒酵素誘導作用や抗酸化作用等が報告されており、アブラナ科植物は肝機能の改善(非特許文献2)、胃の粘膜保護(非特許文献3)、抗酸化能の改善(非特許文献4)、認知機能の改善(非特許文献5,6)、血中尿酸値の低減(特許文献3)等の健康機能を有する植物として近年着目されている。
イソチオシアネートは揮発性のある物質であるため、アブラナ科植物の調理・加工時に生成されたイソチオシアネートは経時的に減少する。そのため、摂取前のイソチオシアネートの生成を抑えるために加熱処理による内在性ミロシナーゼを含む酵素の失活が行われるため、特定の腸内細菌をもつ一部の人しかイソチオシアネートに生成されず、その健康機能を享受できない(特許文献1)。したがって、全ての人がアブラナ科植物由来のイソチオシアネートの健康機能を享受するためには、アブラナ科植物に含まれるグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持した加工品及びその製造方法が求められている。
グルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持したまま長期の保存に耐えうるアブラナ科植物を得る方法としては、アブラナ科植物を穏やかに加熱処理し脱水する方法が提唱されているが、殺菌工程が不十分となり加工後の一般生菌数が高くなるばかりか、野菜の青臭さが強く残るなど食品用途として不適であり、さらに当該方法で製造されたアブラナ科植物組成物のイソチオシアネート生成量は示されていない(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-541369号公報
【文献】特表2004-514456号公報
【文献】特開2019-172602号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Vijitra Luang-In, 2013, Imperial College London p39-44, p101-113
【文献】Kikuchi M et al.,Jpn Pharmacol Ther 2018 46(1)81-95
【文献】Yanaka A et al., Cancer Prev Res (Phila). 2009 Apr;2(4):353-60.
【文献】Murashima M et al., Biofactors. 2004;22(1-4):271-5.
【文献】Shirai Y et al., PLoS One. 2015 Jun 24;10(6):e0127244
【文献】Singh K et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Oct 28;111(43):15550-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アブラナ科植物に含まれるグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持するイソチオシアネート生成剤を提供することを課題とする。またイソチオシアネート生成量に優れたイソチオシアネート生成剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、乾燥方法の異なる二種以上の乾燥加工品を含み、所定量の凍結乾燥加工品を含むアブラナ科植物乾燥加工品を含むイソチオシアネート生成剤が、アブラナ科植物に含まれるグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持し、また優れたイソチオシアネート生成剤を提供することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]アブラナ科植物乾燥加工品を含むイソチオシアネート生成剤であって、
前記アブラナ科植物乾燥加工品は、凍結乾燥加工品と凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品を含む二種以上の乾燥加工品からなり、且つアブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して4質量%以上の凍結乾燥加工品を含む、イソチオシアネート生成剤。
[2]アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して7.5質量%~50質量%の凍結乾燥加工品を含む、[1]に記載のイソチオシアネート生成剤。
[3]前記アブラナ科植物乾燥加工品が、凍結乾燥加工品と熱風乾燥加工品からなる、[1]又は[2]に記載のイソチオシアネート生成剤。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む食品。
[5][1]~[3]のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む医薬組成物。
[6][1]~[3]のいずれか1項に記載のイソチオシアネート生成剤を含む化粧用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して4質量%以上の凍結乾燥加工品を配合することで、アブラナ科植物由来イソチオシアネートの生成に必要なグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持したイソチオシアネート生成剤を得ることができる。さらに驚くべきことに、アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して4質量%の凍結乾燥加工品を配合することで、凍結乾燥加工品を100質量%配合した結果から予測されるよりも極めて高いアブラナ科植物由来イソチオシアネートの生成量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】反応0分後のグルコラファニン量に対する反応60分後のスルフォラファン生成量を示す。
図2】ラットにおけるスルフォラファン生成量(尿中DTC濃度)を示す。
図3】ヒトにおけるスルフォラファン生成量の試験タイムスケジュールを示す。
図4】ヒトにおけるスルフォラファン生成量(尿中DTC濃度)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のイソチオシアネート生成剤はアブラナ科植物乾燥加工品を含む。
本発明においてアブラナ科植物はグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを含むものであれば特に限定なく使用でき、例えば、ケール、キャベツ、ブロッコリー、ダイコン、わさび、小松菜、かぶ、白菜等の食用に使用される種であれば何れも使用できる。これらのアブラナ科植物は1種のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせても良い。このうち、本発明ではアブラナ属植物として、少なくとも、ケールを用いることが好ましい。本発明で用いるアブラナ属植物の植物体部位としては特に限定されず、例えば、葉、茎、根、種子、花蕾等を挙げることができる。これらの植物体部位については、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明では葉と茎が好ましく用いられ、葉が特に好ましく用いられる。
【0010】
本発明においてアブラナ科植物乾燥加工品は、凍結乾燥加工品と凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品を含む二種以上の乾燥加工品からなる。好ましくは、アブラナ科植物乾燥加工品は、凍結乾燥加工品と熱風乾燥加工品からなる。
本発明において「凍結乾燥加工品」は、凍結乾燥による乾燥加工品をいい、乾燥対象をブランチングなどの加熱処理を加えずに凍結し乾燥したものをいう。
凍結乾燥工程の時間は、乾燥対象のサイズや形態により適宜調整することができる。また乾燥対象のサイズや形態も適宜調整することができる。例えばケールの葉を使用した凍結乾燥加工品の場合、生の葉を15mm~20mm幅に裁断し、-20℃~-30℃で一晩予備凍結を行った後、予備凍結された原料を真空乾燥機に入れ、棚温35℃~45℃(品温目安35℃)で24時間~48時間乾燥することができる。
【0011】
本発明においてアブラナ科植物乾燥加工品は、アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して4質量%以上の凍結乾燥加工品を含む。好ましくは、アブラナ科植物乾燥加工品は凍結乾燥加工品と熱風乾燥加工品からなる。アブラナ科植物乾燥加工品はアブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して4質量%以上の凍結乾燥加工品を含む。好ましくは7.5質量%~50質量%さらに好ましくは10質量%~45質量%、より好ましくは12質量%~40質量%、さらに好ましくは17質量%~25質量%の凍結乾燥加工品を含む。アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して凍結乾燥加工品を4質量%以上配合することで、アブラナ科植物由来イソチオシアネートの生成に必要なグルコシノレート及び内在性ミロシナーゼを保持したイソチオシアネート生成剤を得ることができる。アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して凍結乾燥加工品を7.5質量%~50質量%配合することで、凍結乾燥加工品を100質量%配合した場合よりも、高いアブラナ科植物由来イソチオシアネートの生成量を得ることができる。
【0012】
本発明において「凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品」は凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥工程を含む製造方法により得られるものであり、乾燥工程には公知の乾燥方法を用いることができる。そのような乾燥方法として熱風乾燥や減圧乾燥、赤外線乾燥、自然乾燥等があげられる。
各乾燥加工品についての乾燥工程の時間は、乾燥方法や乾燥対象のサイズや形態により適宜調整することができる。また乾燥対象のサイズや形態も適宜調整することができる。
例えばケールの葉を使用した熱風乾燥加工品の場合、生の葉を15mm~20mm幅に裁断し、60℃~100℃、18~24時間、食品乾燥機にて熱風乾燥を行うことができる。熱風乾燥の温度は例えば60℃~100℃であり、ケール加工品の風味の点から、70℃~90℃が好ましく、75℃~85℃がより好ましい。乾燥温度が60℃未満である場合には乾燥が不十分となりミロシナーゼによるグルコラファニン分解を十分に抑制できない可能性がある。
アブラナ科植物乾燥加工品は、アブラナ科植物乾燥加工品の総量に対して凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品を好ましくは少なくとも5質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上含む。
【0013】
凍結乾燥及び凍結乾燥以外のいずれの乾燥方法による乾燥加工品も、乾燥工程の前もしくは乾燥工程後に殺菌処理を行ってもよい。この殺菌方法として、次亜塩素殺菌や高圧殺菌など、当業者が通常用いる任意の方法を用いることができ、複数の殺菌方法を組み合わせることもできる。凍結乾燥加工品においては、加熱工程を含まないため加熱殺菌は行わない。熱風乾燥加工品などの他の乾燥方法による乾燥加工品においては、ボイルや過熱水蒸気による加熱殺菌を行っても良く、加工品の風味への影響の観点から過熱水蒸気にて加熱殺菌することが好ましく、殺菌の効力の観点から80℃~95℃かつ3分~10分が好ましく、80℃~85℃かつ7~9分間がより好ましい。
【0014】
乾燥加工品の形態としては特に限定されず、例えば、乾燥チップ及びその粉砕物、粉砕物より成型された錠剤、等を挙げることができる。本発明では粉末が特に好ましく用いられる。
【0015】
本発明のイソチオシアネート生成剤は、組成物の態様でもよく、例えば、医薬組成物、食品組成物、又は化粧品用組成物であり得る。好ましくは食品組成物である。なお、水分活性の高い実施形態の場合は、本発明のイソチオシアネート生成剤に含まれるグルコシノレート及びミロシナーゼが反応し、発生したイソチオシアネートは経時的に減少することが予測されるため、人あるいは動物が摂取する直前(数十分~数時間前)までは水分活性が低い状態とし、その後配合して使用することが好ましい。
【0016】
本発明のイソチオシアネート生成剤は、機能性食品、健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品、特別用途食品(例えば、病者用食品)、健康補助食品、サプリメント等として調製されてもよい。サプリメントとして、例えば、一般的なサプリメントの製造に用いられる種々の添加剤とともに錠剤、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等の形状とすることができる。
【0017】
本発明のイソチオシアネート生成剤は、飲食品に配合することができる。配合可能な食品に特に限定はないが、例えば、飴、グミ、チューインガム等の菓子類;クッキー、クラッカー、ビスケット、チョコレート、プリン、ゼリー、スナック菓子、米菓、饅頭、羊羹などの菓子類;アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート等の冷菓;ドーナツ、ケーキ、食パン、フランスパン、クロワッサン等のベーカリー食品;うどん、そば、中華めん、きしめん等の麺類;白飯、赤飯、ピラフ等の米飯類;カレー、シチュー、ドレッシング等のソース類;ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の練り製品;天ぷら、コロッケ、ハンバーグなどの各種惣菜類;ジュース、お茶等の飲料等が挙げられる。
【0018】
本発明のイソチオシアネート生成剤は、動物用飼料に配合することができる。動物用飼料としてどのような飼料に配合しても良く、飼料の製造工程中に原料に添加しても良い。動物用飼料として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、動物用飼料の種類に応じ適宜決めればよい。
【0019】
本発明のイソチオシアネート生成剤は、助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口投与または非経口投与が可能な医薬品とすることができる。例えば、経口用の剤形としては、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態とすることができる。非経口の剤形としては、注射剤、点眼剤、点鼻剤、貼付剤、坐剤、皮膚外用剤の形態で投与される。なお、医薬品には医薬部外品も含まれる。
【0020】
固形投薬形態とする場合、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0021】
液体投薬形態とする場合、本発明のイソチオシアネート生成剤は必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、等張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
【0022】
皮膚外用剤の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等の医薬品などとすることができる。上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、各種皮膚栄養成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、色剤、水、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0023】
また本発明のイソチオシアネート生成剤により、イソチオシアネートが生成されることから、イソチオシアネートによる健康機能を期待することができる。イソチオシアネートによる健康機能は、以下に限定されるものではないが例えば、肝機能の改善、胃の粘膜保護、抗酸化能の改善、認知機能の改善、血中尿酸値の低減等を例示することが出来る。
【実施例
【0024】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
製造例1 凍結乾燥粉末の製造
ケール(商品名「こいあおな」(登録商標)、日本製粉株式会社)の生の葉をフードスライサーで15mm~20mm幅に裁断し、次亜塩素酸(200ppm~300ppm)に5~20分間漬け殺菌処理を行った。殺菌処理後の原料を水で洗浄し、トレイに並べ-20℃~-30℃で一晩予備凍結を行った。予備凍結された原料を真空乾燥機に入れ、棚温35℃~45℃(品温目安35℃)で24時間~48時間乾燥を行った。この凍結乾燥物を粗粉砕後、気流粉砕機にて微粉砕(平均粒子径20μm以下)し、振動篩(目開き0.28mm)にて篩い抜けしたものより凍結乾燥粉末を得た。
【0026】
製造例2 熱風乾燥粉末の製造
ケール(商品名「こいあおな」(登録商標)、日本製粉株式会社)の生の葉をフードスライサーで15mm~20mm角に裁断し、ボイル(71℃以上、40秒~3分)した。その後、加熱水蒸気にて加熱殺菌(70℃以上、1分~10分)を行った。殺菌処理後の原料を冷却し、トレイに並べ食品乾燥機にて熱風乾燥(60℃~100℃、18~24時間)を行った。この熱風乾燥物を粗粉砕後、気流粉砕機にて微粉砕(平均粒子径20μm以下)し、振動篩(目開き0.28mm)にて篩い抜けしたものより熱風乾燥粉末を得た。
【0027】
試験例1 凍結乾燥加工品配合によるスルフォラファン生成量の評価
(1)ケール乾燥粉末中のグルコラファニン量及びスルフォラファン量の測定方法
スルフォラファン未生成(反応時間0分)サンプルは、ケール乾燥粉末0.5gに熱水を一定量加水し即座に酵素失活処理(100℃、10分)したものを、グルコラファニン量及びスルフォラファン量の測定に供した。
スルフォラファン生成後(反応時間60分)サンプルは、ケール乾燥粉末0.5gに常温の水を一定量加水し、37℃下で60分間反応させたものを、グルコラファニン量及びスルフォラファン量の測定に供した。
また、反応時間60分のスルフォラファン量から反応時間0分のスルフォラファン量を引いた値をスルフォラファン生成量と定義した。
(2)グルコラファニン量の測定
グルコラファニンの測定方法としては、デスルフォGSL分析法(ISO9167)などがあるが、本発明においては、HPLCによる測定を行った。具体的な方法は次の通りである。
上記(1)に記載の方法により得られた前処理したサンプルを適当な濃度まで希釈し、希釈液をHPLCに供した。
<HPLC条件>
・分析機器:高速液体クロマトグラフChromaster(日立ハイテクノロジーズ)
・カラム:InertSusutain HP C18 φ2.1×250mm 3μm
・カラム温度:40℃
・検出波長:229nm
・流速:0.4ml/min
・移動相:50mM酢酸アンモニウム
・測定時間:5min
(3)スルフォラファン量の測定
スルフォラファンの測定方法としては、GC-MSを利用した手法などがあるが、本発明においては、HPLCによる測定を行った。具体的な方法は次の通りである。
上記(1)に記載の方法により得られた前処理したサンプルを適当な濃度まで希釈し、希釈液をHPLCに供した。
<HPLC条件>
・分析機器:高速液体クロマトグラフChromaster(日立ハイテクノロジーズ)
・カラム:Inertsil ODS-3 φ4.6×250mm 4μm
・カラム温度:20℃
・検出波長:202nm
・流速:0.6ml/min
・移動相:水:アセトニトリル=70:30
・測定時間:15min
(4)上記の製造例1及び製造例2より得られたケールの凍結乾燥粉末及び熱風乾燥粉末を、0質量%~100質量%:0質量%~100質量%にある任意の配合比率で混合し、上記(1)~(3)に示す測定方法にてケール乾燥粉末中に含有するグルコラファニン量及び生成されるスルフォラファン量を測定した。ケールの凍結乾燥粉末及び熱風乾燥粉末の配合比率および反応時間0分のグルコラファニン量とスルフォラファン量、反応時間60分のグルコラファニン量とスルフォラファン量を表1に示す。また、グルコラファニン含量(反応時間0分時)に対するスルフォラファン生成量を図1に示す。
ケール熱風乾燥粉末に凍結乾燥粉末5質量%を配合した実施例1では、配合しなかった比較例1と比較してスルフォラファン生成量は著しく高かった。
ケール熱風乾燥粉末に凍結乾燥粉末10質量%~40質量%を配合した実施例2~6では、凍結乾燥粉末100質量%配合した比較例2と比較してスルフォラファン生成量が高かった。
以上のことから、凍結乾燥加工品と凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品を含む二種以上の乾燥加工品を含み、所定量の凍結乾燥加工品を含むアブラナ科植物乾燥加工品を配合することにより、熱風乾燥あるいは凍結乾燥100%重量の乾燥加工品を配合した場合よりも高いイソチオシアネート生成量を得ることができることが明らかになった。
【0028】
【0029】
試験例2 ラットを用いた凍結乾燥加工品配合によるスルフォラファン生成量の評価
(1)試験方法
Wisterラット(5週齢)を、熱風乾燥粉末単独群、熱風乾燥粉末及び凍結乾燥粉末併用群、凍結乾燥粉末単独群の3群(各5匹)に群分けを行った。3群とも予備飼育として標準食(AIN93G)の自由摂取下で1週間飼育を行った後に、表2に示す試験飼料を各群に自由摂取させた。試験飼料には、上記製造例1及び2より得たケール乾燥粉末を用いた。
動物体内でのスルフォラファンの生成及び吸収量の指標として、一般的に尿中DTC(Dithiocarbamates)濃度が測定される。DTCとはスルフォラファンやそれから派生する複数の代謝体であり、体内に吸収されたスルフォラファンの量を把握するためには代謝体の量も網羅的に測定する必要がある。本試験でも、各試験飼料投与の6日目から7日目の24時間にかけて尿を採取し、DTC濃度を下記の方法にて測定した。
尿試料を攪拌し、エッペンチューブに分取した。10000rpmで5分遠心し、共栓試験管に上清を100μL分取した。10mM 1,2-ベンゼンチオール溶液 600μL、0.1M リン酸緩衝液 500μLを添加し攪拌後、65℃のヒートブロックで2時間インキュベートした。溶液を室温に戻し遠心後、0.2μmフィルターに通し、オートサンプラーバイアルに入れ、HPLCに供した。
<HPLC条件>
・分析機器:高速液体クロマトグラフChromaster(日立ハイテクノロジーズ)
・カラム:ODS-3 粒子径4μm、内径4.6mm、長さ250mm(ジーエルサイエンス社)
・カラム温度:40℃
・検出波長:265nm
・移動相:メタノール:水=7:3
・注入量:20μl
【0030】
表2 各群に投与した試験飼料のケール乾燥粉末の配合率(質量%)
【0031】
(2)結果
結果を図2に示す。図2の縦軸はスルフォラファン生成・吸収量の指標である尿中DTC濃度(尿の濃度を補正するために尿中クレアチニンで除した値)であり、各バーは平均値を表している。熱風乾燥及び凍結乾燥併用群は、熱風乾燥単独群、凍結乾燥単独群のいずれより高い値を示した。以上のことから、動物体内においても凍結乾燥加工品と凍結乾燥以外の乾燥方法による乾燥加工品を含む二種以上の乾燥加工品を含み、所定量の凍結乾燥加工品を含むアブラナ科植物乾燥加工品を配合することにより、熱風乾燥あるいは凍結乾燥100質量%の乾燥加工品を配合した場合よりも高いイソチオシアネート生成量を得ることができることが明らかになった。
【0032】
試験例3 ヒトにおける凍結乾燥加工品配合によるスルフォラファン生成量の評価
(1)試験方法
20~40歳の健康な男女7名に、表3に示す試験食品を朝食時及び夕食時の食前に1日2回、1回1包(8g)摂取させた。試験食品の摂取期間は、月曜日から木曜日の4日間とし、月曜日朝の試験食品摂取前と摂取終了後の金曜日朝に採尿を行った。試験食品には、上記製造例1及び2より得たケール乾燥粉末を用いた。
上記の試験を、4種類の試験食品で同様に実施し、次の試験食品を摂取する前には1週間の非摂取期間を置いた。試験のタイムスケジュールを図3に示す。
人体内でのスルフォラファンの生成及び吸収量の指標についても、一般的に尿中DTC(Dithiocarbamates)濃度が測定される。本試験でも、試験食品摂取前後に採取した尿について、DTC濃度を下記の方法にて測定した。
尿試料を攪拌し、エッペンチューブに分取した。10000rpmで5分遠心し、共栓試験管に上清を100μL分取した。10mM 1,2-ベンゼンチオール溶液 600μL、0.1M リン酸緩衝液 500μLを添加し攪拌後、65℃のヒートブロックで2時間インキュベートした。溶液を室温に戻し遠心後、0.2μmフィルターに通し、オートサンプラーバイアルに入れ、HPLCに供した。
<HPLC条件>
・分析機器:高速液体クロマトグラフChromaster(日立ハイテクノロジーズ社製)
・カラム:L-colum2 ODS(250nm×4.6nm,5.0μm)
・カラム温度:40℃
・移動相:メタノール:水=7:3(アイソクラティック)
・検出波長:365nm
・注入量:10μl
表3 各試験食品のケール乾燥粉末の配合率(質量%)
(2)結果
結果を図4に示す。図4の縦軸はスルフォラファン生成・吸収量の指標である尿中DTC濃度(尿の濃度を補正するために尿中クレアチニンで除した値)であり、各バーは平均値を表している。試験食品A(熱風乾燥粉末100質量%)に比べ、凍結乾燥を配合した試験食品B~Dはいずれも高い値を示した。特に、熱風乾燥粉末80質量%及び凍結乾燥粉末20質量%を配合した試験食品Cが最も高く、in vitro試験である試験例1と同じ傾向を示した。
以上のことから、人体内においても凍結乾燥加工品を含む、2つ以上のアブラナ科植物乾燥加工品を配合させることにより、熱風乾燥加工品よりもイソチオシアネート生成量に優れ、特に凍結乾燥粉末を20質量%配合することでより多くのイソチオシアネート生成量を得られることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4