(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】アイドルシールド、堆積装置、堆積システム、ならびに組み立てる方法および動作させる方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
C23C14/00 B
(21)【出願番号】P 2022525047
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079402
(87)【国際公開番号】W WO2021083483
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー ラモン
(72)【発明者】
【氏名】リース フロリアン
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/220731(WO,A1)
【文献】特表2019-512043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドであって、
前記堆積装置に取り付けられるように構成されたフレームと、
前記フレームに結合されたシールドアセンブリであって、
第1の側方シールド部、
第2の側方シールド部、および
前記第1の側方シールド部と前記第2の側方シールド部の間の中心シールド部
を含む、シールドアセンブリとを備え、
前記シールドが、ドア構成体を更に備え、
前記シールドアセンブリが、前記
ドア構成体の閉位置で堆積材料を遮蔽するために、前記真空チャンバの壁と前記堆積源の間に配置されるように構成され、
前記ドア構成体が、前記
ドア構成体の開位置で前記堆積源
への保守アクセスを可能にするために前記シールドアセンブリの少なくとも一部分を動かすように構成
されている、シールド。
【請求項2】
前記ドア構成体が、
前記中心シールド部の第1の側部をある角度だけ動かすために、および前記中心シールド部の第2の側部をある角度だけ動かすために、前記中心シールド部に結合されたヒンジを備える、請求項1に記載のシールド。
【請求項3】
前記中心シールド部の前記第1の側部と前記中心シールド部の前記第2の側部とが、ヒンジ付きドアとして開かれるように構成される、請求項2に記載のシールド。
【請求項4】
前記ドア構成体が、
前記シールドアセンブリの少なくとも前記中心シールド部を摺動させて前記堆積源
への保守アクセスを可能にするための案内レールを備える、請求項1に記載のシールド。
【請求項5】
前記シールドアセンブリの前記中心シールド部の少なくとも一部分を冷却するための冷却ユニットであって、
前記フレーム内の冷却導管と、
前記シールドアセンブリのプレートアセンブリ内の冷却導管と
の少なくとも一方を含む冷却ユニットをさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載のシールド。
【請求項6】
前記フレームに接触することによって冷却される複数のタイルを含む、請求項1~4のいずれかに記載のシールド。
【請求項7】
複数のタイルのうちのいくつかのタイルが、前記プレートアセンブリのうちの対応するプレートに結合される、請求項5に記載のシールド。
【請求項8】
前記複数のタイルのうちのいくつかのタイルが、前記プレートアセンブリに接触することによって冷却される、請求項7に記載のシールド。
【請求項9】
前記シールドアセンブリがさらに、
前記第1の側方シールド部と、前記第2の側方シールド部と、前記中心シールド部との上に少なくとも部分的に設けられた上部シールド部であって、実質的に水平に配向されている上部シールド部を備える、請求項1~4のいずれかに記載のシールド。
【請求項10】
真空チャンバ内で複数の基板を続けて堆積するための堆積装置であって、
前記真空チャンバの第1の側壁に隣接する第1の基板処理位置と、
真空チャンバの第2の側壁に隣接する第2の基板処理位置であって、前記第1の側壁の反対側にある第2の基板処理位置と、
前記第1の基板処理位置と前記第2の基板処理位置の間の堆積源と、
前記第1の基板処理位置と前記第2の基板処理位置の間で前記堆積源を並進させるように構成された堆積源カートと、
前記第1の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第1の方向と、前記第2の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第2の方向との間で前記堆積源を回転させるように構成されたアクチュエータと、
請求項1~4のいずれかに記載のシールドと
を備える堆積装置。
【請求項11】
前記シールドが前記堆積源カートに取り付けられる、請求項
10に記載の堆積装置。
【請求項12】
前記シールドの前記ドア構成体が、前記第1の側壁と前記第2の側壁を連結する前記真空チャンバの第3の側壁に面する、請求項
10に記載の堆積装置。
【請求項13】
前記第3の側壁が、前記ドア構成体の前記閉位置で前記シールドへの保守アクセスを可能にするように、かつ前記ドア構成体の前記開位置で前記堆積源への保守アクセスを可能にするように配置される、請求項
12に記載の堆積装置。
【請求項14】
真空チャンバを有する堆積装置の堆積源にアクセスする方法であって、
ドア構成体を備えたシールドアセンブリが、前記真空チャンバの壁と前記堆積源の間に配置されるように構成され、
前記方法が、
前記ドア構成体の閉位置で堆積材料を遮蔽するステップと、
前記シールドアセンブリの前記ドア構成体を開いて、前記堆積源への保守アクセスを可能にするステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、堆積システムのシールドに関し、また、蒸発材料、特に蒸発有機材料を1つまたは複数の基板上に堆積させるように構成された堆積システムに関する。本開示の実施形態はさらに、たとえば、堆積源のアイドル位置において蒸発材料を遮蔽、阻止、および/または収集するように構成されたアイドルシールドに関する。本開示の実施形態はさらに、基板上に蒸発材料を堆積させるための堆積システム付きの堆積装置に関する。別の実施形態は、蒸発源を動作させる方法、アイドルシールドを組み立てる方法、および堆積システム、特に真空処理チャンバ内で基板上に蒸発材料を堆積させるためのシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物蒸発器は、有機発光ダイオード(OLED)を製造するためのツールである。OLEDは、発光層が特定の有機化合物の薄膜を含む、特殊なタイプの発光ダイオードである。有機発光ダイオード(OLED)は、テレビ画面、コンピュータモニタ、携帯電話、その他、たとえば情報を表示するためのハンドヘルドデバイスを製造する際に使用される。OLEDはまた、一般的な空間照明に使用することもできる。OLEDディスプレイの色の範囲、輝度および視野角は、OLEDピクセルが直接発光し、バックライトを要しないために、従来のLCDディスプレイよりも大きくなり得る。したがって、OLEDディスプレイのエネルギー消費量は、従来のLCDディスプレイよりもかなり少ない。さらに、OLEDはフレキシブル基板上に製造できることから、さらなる用途が生まれる。
【0003】
通常、蒸発材料は、蒸気源の1つまたは複数の出口から基板に向けられる。たとえば、蒸気源は、蒸発材料のプルームを基板に向けるように構成された複数のノズルを備え得る。蒸気源は、基板を蒸発材料でコーティングするために、基板に対して動かすことができる。
【0004】
材料パターンを所定の均一性で基板上に堆積させるには、蒸気源の1つまたは複数の蒸気出口からの蒸発材料のプルームが安定していることが有利であり得る。蒸気源が始動後に安定するには、いくらか時間がかかることがある。したがって、蒸気源の頻繁な中断と起動は好ましくないことがあり、蒸気源は、アイドル期間にも動作しているままにしておくことがある。このようなアイドル期間中には、真空処理チャンバの壁が蒸発材料でコーティング(「スプリンクルコーティング」)されるリスクがあり得る。
【0005】
さらに、様々な基板を続けて堆積すること、すなわち、次の基板の処理との間に不要な蒸発休止がないことが有利である。たとえば、蒸発源は回転させて、第1の堆積領域における基板処理と、第1の堆積領域に対向する第2の堆積領域における基板処理との間で切り替えることができる。第1の堆積領域から第2の堆積領域に向けて回転する間に、真空処理チャンバの壁もまた蒸発材料でコーティングされることがある。
【0006】
したがって、装置またはシステムの表面のスプリンクルコーティングを低減しながら基板上に蒸発材料を正確に堆積するように構成された堆積装置、堆積装置および堆積システムに、アイドルシールドを設けることが有利である。
【発明の概要】
【0007】
上記を考慮して、堆積源の材料を遮蔽するためのシールドと、真空チャンバ内で複数の基板を続けて堆積するための堆積装置と、堆積源の材料を遮蔽するためのシールドを組み立てる方法と、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源にアクセスする方法とが提供される。さらなる利点、特徴、態様および詳細が、従属請求項、本明細書および図面から明らかになる。
【0008】
1つの実施形態によれば、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドが提供される。このシールドは、堆積装置に取り付けられるように構成されたフレームと、フレームに結合されたシールドアセンブリであって、第1の側方シールド部、第2の側方シールド部、および第1の側方シールド部と第2の側方シールド部の間の中心シールド部を含む、シールドアセンブリとを含み、このシールドアセンブリは、シールドアセンブリの閉位置で堆積材料を遮蔽するために、真空チャンバの壁と堆積源の間に配置されように構成され、シールドはさらに、シールドアセンブリの開位置で堆積源にアクセスできるようにするためにシールドアセンブリの少なくとも一部分を動かすように構成されたドア構成体を含む。
【0009】
1つの実施形態によれば、真空チャンバ内で複数の基板を続けて堆積するための堆積装置が提供される。この堆積装置は、真空チャンバの第1の側壁に隣接する第1の基板処理位置と、真空チャンバの第2の側壁に隣接する第2の基板処理位置であって、第1の側壁の反対側にある第2の基板処理位置と、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間の堆積源と、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間で堆積源を並進させるように構成された堆積源カートと、第1の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第1の方向と第2の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第2の方向との間で堆積源を回転させるように構成されたアクチュエータと、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるシールドとを含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドを組み立てる方法が提供される。この方法は、タイルの凹部を、ねじに結合されたピンの上に案内するステップと、ねじにトルクを加えることによって、タイルをプレートアセンブリまたはフレームに固定するステップとを含む。
【0011】
1つの実施形態によれば、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源にアクセスする方法が提供される。この方法は、真空チャンバの壁と堆積源の間に配置されたシールドアセンブリのドア構成体を開いて、堆積材料をドア構成体の閉位置で遮蔽するステップを含む。
【0012】
本開示はまた、開示された方法を実行するための、その方法を実施するための装置部品を含む装置も対象とする。方法は、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、これら2つの任意の組み合わせによって、または他の任意の手法で、実施することができる。さらに、本開示は、記載された装置を動作させる方法も対象とする。本開示は、装置のあらゆる機能を実行するための方法を含む。
【0013】
本明細書に記載の本開示の、上記に列挙された特徴が細部にわたり理解できるように、上で簡潔に要約された、より具体的な説明が、実施形態を参照することによって得られよう。添付の図面は、本開示の実施形態に関連しており、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A-1B】本明細書に記載の実施形態による堆積装置の、堆積位置(
図1A)およびアイドル位置(
図1B)における概略図である。
【
図2】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドの斜視図である。
【
図3】本明細書に記載の実施形態による堆積装置の一部分の概略断面図である。
【
図4A】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドの斜視図である。
【
図4B】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドのタイルの拡大図である。
【
図5A-5B】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドの一部分の、シールドタイルの取り付けを示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態による堆積装置のシールドの一部分の概略図である。
【
図7】本開示の実施形態による堆積装置の一部分の、本開示の実施形態によるシールド、たとえばアイドルシールドを含む概略図である。
【
図8】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドの斜視図である。
【
図9A-9B】本明細書に記載の実施形態による堆積装置のシールドの概略図である。
【
図10】本明細書に記載の実施形態による堆積装置付きの堆積装置の概略図である。
【
図11】本明細書に記載の実施形態による堆積装置の概略断面図である。
【
図12】本明細書に記載の実施形態による堆積システムを動作させる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本開示の多様な、その1つまたは複数の例が図に示されている実施形態を詳細に参照する。以下の図面の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。以下では、個々の実施形態に関する相違点について説明する。各例は、本開示を説明のために提示されており、本開示を限定するものではない。さらに、1つの実施形態の一部として図示または説明されている特徴は、さらに別の実施形態が得られるように他の実施形態に使用することも、それと組み合わせて使用することもできる。本明細書は、このような修正形態および変形形態を含むものである。
【0016】
図1Aは、本明細書に記載の実施形態による堆積システム100の概略図である。堆積システム100は、1つまたは複数の蒸気出口125を有する蒸気源120などの、堆積源を含む。蒸気源120は、基板10をコーティングするための堆積位置(II)にある。堆積位置では、1つまたは複数の蒸気出口は、基板10が配置されている堆積領域に向けられている。
【0017】
図1Bは、
図1Aの堆積システム100の概略図であり、蒸気源120はアイドル位置(I)にある。アイドル位置では、1つまたは複数の蒸気出口125は、シールド110に向けられている。
【0018】
蒸気源120は、堆積位置(II)から、1つまたは複数の蒸気出口125がシールド110に向けられるアイドル位置(I)へ、および/またはアイドル位置(I)から、1つまたは複数の蒸気出口125が堆積領域に向けられる堆積位置(II)へ可動にすることができる。たとえば、蒸気源120などの堆積源は、ある角度だけ動かすことができる。堆積源は、軸Aのまわりに回転させることができる。
【0019】
堆積源または蒸気源120は、堆積領域に配置されている基板10上に蒸発材料を堆積させるための蒸発源として構成することができる。いくつかの実施形態では、蒸気源120は、1つまたは複数のるつぼ、および1つまたは複数の分配パイプを含み、1つまたは複数の蒸気出口125を1つまたは複数の分配パイプのそれぞれに設けることができる。各るつぼは、結合された分配パイプと流体連通することができる。蒸発材料は、るつぼから、結合された分配パイプへ流れることができる。蒸発材料のプルームは、堆積システムが堆積位置にあるときに、分配パイプの1つまたは複数の蒸気出口から堆積領域に向けることができる。
【0020】
図1Aで、蒸発材料は、1つまたは複数の蒸気出口125から基板10に向けられる。材料パターンを基板上に形成することができる。いくつかの実施形態では、堆積中にマスク(図示せず)が基板10の前(すなわち基板10と蒸気源120の間)に配置される。マスクの開口パターンに対応する材料パターンを基板上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、蒸発材料は有機材料である。マスクは、ファインメタルマスク(FMM)または別のタイプのマスク、たとえばエッジ排除マスクとすることができる。
【0021】
基板10への堆積の後または前に、蒸気源120は、
図1Bに例示的に示されているアイドル位置(I)へ動かすことができる。アイドル位置(I)への蒸気源120の動きは、蒸気源120とシールド110の間の相対的な動きであってよい。アイドル位置では、1つまたは複数の蒸気出口は、シールド110の表面に向けられている。
【0022】
いくつかの実施形態では、蒸気源120は、アイドル位置において、および/またはアイドル位置へ動いている間に、動作停止されない。したがって、蒸発材料は、蒸気源がアイドル位置(I)にあるときに、1つまたは複数の蒸気出口125からシールド110に向けることができ、シールドの表面で凝縮し得る。蒸発をアイドル位置でも、たとえばシステムのアイドル時間中に継続することによって、蒸気源内の蒸気圧を実質的に一定に保つことができ、堆積はその後、蒸気源の安定化時間がなくても継続することができる。
【0023】
シールド110は、蒸気源120がアイドル位置(I)にあるときに、1つまたは複数の蒸気出口125からの蒸発材料の80%以上、詳細には90%以上、より詳細には99%以上がシールド110の表面に向けられるように形成することができる。蒸気源120がアイドル位置にあるとき、蒸発プルームをシールド110によって遮断および遮蔽できるので、真空処理チャンバ内の他の面の汚染を低減または回避することができる。特に、チャンバ壁と、真空処理チャンバ内に配置されたデバイスと、マスクキャリアと、基板キャリアとをコーティングすることが、低減または回避され得る。いくつかの実施形態では、蒸発材料のほとんどがアイドル位置の他の面ではなくシールドの面で凝縮することを確実にするために、シールド110の表面を大きくすること、たとえば0.5m2以上、詳細には1m2以上、より詳細には2m2以上とすることができる。
【0024】
蒸気源120は、以下の目的、すなわち、(i)蒸気源を加熱すること、(ii)たとえば加熱中に、実質的に一定の蒸気圧が蒸気源内に生じるまで、蒸気源を安定化させること、(iii)蒸気源の点検または保守をすること、(iv)たとえばクールダウン中に蒸気源を停止すること、(v)蒸気源を洗浄すること、たとえば1つまたは複数の蒸気出口を清掃する、および/または蒸気出口の前に配置されたシェーパシールドを洗浄すること、のうちの少なくとも1つ以上のために、(vi)マスクおよび/または基板の位置合わせ中に、(vii)待ち時間中およびアイドル期間に、アイドル位置(I)へ動かすことができる。たとえば、アイドル位置は、堆積システムのアイドル期間中に、堆積システムのパーク位置として使用することができる。いくつかの実施形態では、真空処理チャンバ、および/または堆積領域に配置できるマスクは、たとえば蒸気源をアイドル位置へ動かしている間、スプリンクルコーティングをシールド110によって防止することができる。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、堆積源または蒸気源は、より詳細には
図10および
図11に示されるように、アイドル位置(I)を通り越して基板10から別の基板に向かって動くことができる。したがって、このアイドル位置は別法として、堆積源、たとえば蒸気源120が動く(すなわち回転する)間のスプリンクルコーティングを防止するために用いることができる。
【0026】
本明細書に記載の実施形態によれば、シールド110を冷却するための冷却デバイス112が設けられる。シールドの遮蔽効果は、冷却デバイスを用いてシールドの温度を下げることによって改善することができる。さらに、シールド110を冷却することによって、シールドから蒸気源に向けての、マスクに向けての、および/または基板に向けての熱放射を低減することができる。熱によって動くことを低減または回避することができ、堆積品質が向上し得る。
【0027】
蒸発材料は、温度が数百度に、たとえば100℃以上、300℃以上、または500℃以上になり得る。有機材料の蒸発と比較して、金属材料の蒸発では熱負荷が特に高い場合がある。
【0028】
シールド110は、蒸発材料がシールドの表面で凝縮するときに、アイドル位置で高温になり得る。いくつかの実施形態では、蒸気源120は、かなりの期間にわたって、たとえば、位置合わせまたは洗浄のために数十秒にわたって、または蒸気源の加熱および点検のために数分にわたって、アイドル位置に留まることがある。シールド110の温度は、冷却デバイス112によって下げることができ、シールドから蒸気源およびマスクに向かう熱放射は、低減させることができる。たとえば、シールドの温度は100℃以下に保つことができる。マスクの熱移動が低減されるので、堆積品質を改善することができる。いくつかの実施形態では、マスクは数μmの範囲の構造を有することがあるので、マスクの温度が一定であることは、熱によってマスク構造が動くことを低減するのに有益であることに留意されたい。さらに、シールド110の表面を冷却することによって、蒸発材料がシールド上で凝縮しやすくなり得る。
【0029】
冷却デバイスは、シールドに連結された冷却導管、冷却ラインもしくは冷却チャネル、水冷などの流体冷却部、空冷などの気体冷却部、および/または熱電冷却部のうちの少なくとも1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、冷却デバイスは、シールドのフレーム内の冷却導管および/またはシールドのプレートアセンブリ内の冷却導管を含む冷却回路を含む。水などの冷却流体が、その冷却回路内を循環することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、冷却導管は、シールドの中心シールド部115に設けることができる。1つまたは複数の蒸気出口125は、中心シールド部115が熱負荷の大部分をアイドル位置で受けることができるように、アイドル位置で中心シールド部115に向けることができる。シールド110は、中心シールド部115に隣接して配置された1つまたは複数の側方シールド部116をさらに含み得る。1つまたは複数の側方シールド部116は、蒸気源がアイドル位置へ動いている間、またはアイドル位置を通り越して動いている間に蒸発材料を遮蔽するために設けることができる。蒸気源が動いている間に1つまたは複数の側方シールド部116が蒸発材料を阻止できるので、マスクは、蒸気源蒸気源が動いている間にスプリンクルコーティングを防止することができる。いくつかの実施形態では、2つの側方シールド部116は、中心シールド部115の両側に設けられる。側方シールド部116は、湾曲させることができる。
【0031】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、堆積システム100は、蒸気源120をシールド110と一緒に蒸気源搬送経路P(
図11参照)に沿って移動させるように構成された、第1の駆動装置を含み得る。たとえば、蒸気源搬送経路は、基板10が配置されている堆積領域を通り越して延び得る。蒸気源120は、シールド110と一緒に基板10を通り越して、たとえば実質的に一定の速度で動かすことができる。たとえば、シールド110および蒸気源120は、軌道に沿って案内されるように構成された蒸気源支持体上に、たとえば蒸気源カート上に、配置することができる。いくつかの実施形態では、第1の駆動装置は、蒸気源搬送経路Pに沿った軌道をたどって蒸気源支持体を動かすように構成することができ、蒸気源およびシールドは、蒸気源支持体によって、すなわち蒸気源カートによって支持することができる。いくつかの実施形態では、蒸気源支持体は、たとえば磁気浮上システムによって、軌道に接触することなく軌道に沿って搬送することができる。特に、第1の駆動装置は、蒸気源搬送経路Pに沿って延びる軌道をたどってシールドと一緒に蒸気源を直線的に動かすように、すなわち並進移動させるように構成することができる。
【0032】
シールド110が蒸気源搬送経路Pに沿って蒸気源120と一緒に可動である場合、蒸気源とシールドの間の距離は、堆積処理中に小さく保つこと、または一定に保つことができる。たとえば、堆積中の蒸気源とシールドの間の最大距離は、0.5m以下に、詳細には0.2m以下にすることができる。
【0033】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、堆積システムはさらに、蒸気源120をシールド110に対してアイドル位置(I)まで動かすための第2の駆動装置を含み得る。言い換えると、第1の駆動装置は、蒸気源をシールドと一緒に動かすように構成することができ、第2の駆動装置は、蒸気源をシールドに対して動かすように構成することができる。
図1Aおよび
図1Bの実施形態では、蒸気源120は、シールド110に対して堆積位置からアイドル位置へ回転軸Aのまわりに回転可能である。たとえば、蒸気源は、堆積位置からアイドル位置へ、45°以上で135°以下の、詳細には約90°の角度だけ回転させることができる。さらに、蒸気源などの堆積源は、第1の堆積位置から第2の堆積位置へ、170°以上で190°以下の、詳細には約180°の角度だけ回転させることができる。たとえば、蒸気源は、蒸気源を回転させることによって、たとえば、蒸気源を元の堆積領域に向けて、たとえば約90°の角度だけ回転させることによって、または蒸気源を、第2の基板を配置できる第2の堆積領域に向けて、たとえば約90°の角度だけ回転させることによって、アイドル位置から堆積位置へ可動になり得る。
【0034】
蒸気源の回転には、1つまたは複数の蒸気出口の蒸発方向の方向変化をもたらす、蒸気源の任意のタイプのスイングまたは旋回する動きが含まれ得る。特に、回転軸は、蒸気源を横切っても、蒸気源の周辺部を横切っても、蒸気源を全く横切らなくてもよい。
【0035】
回転軸Aは、実質的に垂直な回転軸とすることができる。蒸気源120は、アイドル位置と堆積位置の間で、実質的に垂直な回転軸のまわりに回転可能であり得る。特に、蒸気源120は、それぞれ実質的に垂直方向に延び得る、1つの、または2つ以上の分配パイプを含み得る。複数の蒸気出口を各分配管の全長に沿って、すなわち実質的に垂直な方向に沿って設けることができる。小型で省スペースの堆積システムを提供することができる。いくつかの実施形態によれば、回転軸は垂直にすることができる。さらに、追加的または代替的に、1つまたは複数の分配パイプは、実質的に垂直な方向に、すなわち垂直になっている方向に、または垂直配向から15°以下の、たとえば7°以下の角度だけ逸脱している方向に、延びることができる。
【0036】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、シールド110の半径方向内面を蒸気源に向けることができる。特に、シールド110は、蒸気源のまわりに部分的に延びる湾曲部分を含み得る。たとえば、シールドは、湾曲していてよい、かつ蒸気源のまわりに部分的に延びていてよい2つの側方シールド部116を含み得る。いくつかの実施形態では、シールド部は、蒸気源の回転軸Aのまわりに部分的に延びていてもよい。
【0037】
蒸気シールドが湾曲することにより、シールド110が回転軸Aのまわりを回転中の、シールドの遮蔽効果を改善することができる。特に、シールドの回転中、1つまたは複数の蒸気出口とシールドの表面との間の距離は、実質的に一定のままにすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、シールドの少なくとも一部分は、蒸気源のまわりに延びる、特に蒸気源の回転軸Aのまわりに延びる、円筒表面の一部として形成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、シールド110の湾曲部分は、蒸気源120のまわりに60°以上の、詳細には90°以上の角度だけ延びることができる。したがって、蒸気源が堆積位置からアイドル位置まで60°以上の、詳細には90°以上の角度だけ回転するときに、蒸発材料は、シールドによって実質的に連続的に遮蔽することができる。真空処理チャンバの汚染を低減し、かつ真空処理チャンバへの熱放射を減らすことができる。
【0040】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、蒸気源がアイドル位置にあるとき、1つまたは複数の蒸気出口とシールドの間の距離D1は、5cm以上で30cm以下とすることができる。詳細には、距離D1は、5cm以上で10cm以下とすることができる。シールド110の遮蔽効果は、シールドと1つまたは複数の蒸気出口との間に小さな距離を置くことによって、さらに改善することができる。さらに、蒸気源の熱負荷のほとんどがアイドル位置のシールドの小部分に局在化するので、より小型の冷却デバイスを使用することができる。
【0041】
図2は、本明細書に記載の実施形態による堆積システムのシールド110の斜視図である。シールド110は、
図1Aの実施形態のシールドと同様でよいために、上記の説明を参照することができ、その説明をここでは繰り返さない。他の図を参照して説明される実施形態は、
図2に関して説明される、さらに別の実施形態を形成する細部にも同様に適用可能であり得る。
【0042】
シールド110は、蒸気源がアイドル位置にあるときに、蒸気源の1つまたは複数の蒸気出口がシールドの表面に向けられているように、蒸気源に隣接して配置することができる。シールドの少なくとも一部分を冷却するための冷却デバイス112を設けることができる。たとえば、シールドまたはシールドアセンブリの中心シールド部115は、冷却デバイス112を用いて冷却することができる。中心シールド部115は、蒸気源がアイドル位置にあるときに1つまたは複数の蒸気出口が向けられる、シールドの一部分であると理解することができる。いくつかの実施形態では、中心シールド部115は、シールド110またはシールドアセンブリそれぞれの中心部である。
【0043】
シールド110は湾曲させることができ、蒸気源が配置されるべき領域のまわりに部分的に延び得る。詳細には、シールドは、1つまたは複数の湾曲部分を含み得る。たとえば、シールドのシールドアセンブリは、中心シールド部115と、中心シールド部115の両側で中心シールド部115に隣接して配置されている2つの側方シールド部116とを含み得る。2つの側方シールド部116は、蒸気源が配置されるべき領域のまわりに湾曲させることができる。
【0044】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、シールドアセンブリは、シート要素として(たとえば金属シートまたはタイルとして)形成された複数のシールド部を含み得る。たとえば、シールドまたはシールドアセンブリは、フレームに結合することができる。シールドまたはシールドアセンブリは、第1の側方シールド部、第2の側方シールド部、および第1の側方シールド部と第2の側方シールド部の間の中心シールド部を含み得る。
【0045】
たとえば、シールドは、1つまたは複数の蒸気出口の下の位置で実質的に水平配向に延びる底部シールド部119と、1つまたは複数の蒸気出口の上の位置で実質的に水平配向に延びる上部シールド部118と、蒸気源がアイドル位置にあるときに1つまたは複数の蒸気出口の前で実質的に垂直配向に延びることができる中心シールド部115と、第1の側方シールド部および第2の側方シールド部とのうちの1つ以上を含み得る。中心シールド部115の両側で実質的に垂直配向に延びることができる2つの側方シールド部。
【0046】
いくつかの実施形態では、シールド110は、フレーム111を含み得る。シールド110のシート部分は、フレーム111に固定することができる。詳細には、フレーム111は、中心シールド部および/または側方シールド部のうちの少なくとも1つ以上を保持し支持するように構成することができる。フレーム111は、シールドと一緒に蒸気源を支持し搬送するように構成された蒸気源支持体によって支持することができる。冷却導管113の少なくとも一部は、シールド110のフレーム111に沿って延び得る。たとえば、冷却導管113は、支持フレーム111に固定されても、支持フレーム111に一体化されてもよい。
【0047】
シールドのシート部分またはタイルは、消耗品として構成することができる。言い換えると、タイルまたはシールド部のうちの1つ以上は、シールドに取り外し可能に取り付けることができ、特に、隣接するシート部分に、および/またはシールドの支持フレーム111に取り外し可能に取り付けることができる。たとえば、シート部分の表面にコーティング材料の層が形成された場合に、シート部分またはタイルのうちの1つ以上を定期的に交換および/または洗浄することが有益であり得る。たとえば、いくつかの実施形態では、中心シールド部115は、中心シールド部を洗浄のためにシールドから取り外すことができるように、支持フレーム111に取り外し可能に固定することができる。同様に、側方シールド部は、洗浄および/または交換のためにシールドから切り離すことができる。したがって、シールドの別々の区域または部分の迅速な交換が、たとえば、支持フレーム111を蒸気源支持体から切り離さなくても可能であり得る。システムのダウンタイムを低減することができる。
【0048】
冷却デバイス112は、中心シールド部115を冷却するための、および/またはシールドの他のシート部分を冷却するための、冷却流体の1つまたは複数の冷却ラインまたは冷却導管113を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、シールド110の高さは1m以上、詳細には2m以上である。特に、シールド110の高さは、蒸気源120よりも高くすることができ、それにより、蒸気源からの蒸発材料をシールドによってアイドル位置で遮蔽することができる。蒸気源120は、1m以上の、詳細には1.5m以上の高さを有し得る。
【0050】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、シールドの幅Wは、50cm以上、詳細には1m以上とすることができる。幅Wは、
図1Aおよび
図1Bに示されているように、水平方向の(たとえば、堆積中の基板10の向きに対して垂直配向の)シールド110の最大寸法とすることができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、シールドの平均曲率半径は60cm以上とすることができる。
【0051】
図3は、本明細書に記載の実施形態による堆積システムの一部を示す概略断面図である。蒸気源120は、蒸発材料15がシールド110に向けられる、詳細にはシールドの中心シールド部115に向けられる、アイドル位置で示されている。中心シールド部115は、シールドの温度を低く保つことができるように、かつ堆積領域への熱放射を低減できるように、冷却デバイスによって冷却することができる。
【0052】
図3に概略的に示されているように、2つの側方シールド部116を中心シールド部115の両側に、中心シールド部115に近接して配置することができる。側方シールド部は、蒸気源120がアイドル位置との間で動いている間、被蒸発物15を遮蔽することができる。具体的には、蒸気源は、アイドル位置の方へ回転軸のまわりに回転させることができ、シールドは、回転軸のまわりに湾曲して延び得る。冷却導管は、シールドの支持フレームに設けることができる。冷却導管を支持フレームに設けることによって、冷却導管を交換しなくてもシート部分を交換することができる。中心シールド部115は、冷却導管113の一部分を含む支持フレーム111の一部分に固定することができる。
【0053】
図2は、タイル410を含むシールドアセンブリを有する、シールド110を示す。タイル410は、たとえば、中心シールド部115を形成することができる。
図2に示されるように、タイルは、たとえば垂直方向に細長くすることができる。たとえば、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、タイルの幅と高さのアスペクト比は1:5以下とすることができる。タイルは、シールドまたは蒸気源120それぞれの全長に沿って延び得る。タイルが細長くなっていると、シールドアセンブリの一部分を数個の部片として交換することが可能になる。たとえば、中心シールド部は、中心シールド部を形成する2つ以上の、たとえば3つ以上のタイルを含み得る。しかし、タイルの重量の故に、細長いタイルの交換が困難なことがある。
【0054】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、小さいタイルを利用することができる。したがって、保守のための容易なタイル交換を実現することができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、タイルの幅と高さのアスペクト比は、1:4~4:1とすることができる。
【0055】
図4Aは、シールド110を示す。シールド110は、フレーム111を含む。シールドは、フレームに結合されたシールドアセンブリを含む。シールドアセンブリは、第1の側方シールド部116、第2の側方シールド部(
図4Aに図示せず)、および中心シールド部115を含み得る。シールドアセンブリの一部分、特に中心シールド部は、複数のタイル410を含み得る。
図4Aはさらに、
図5に関してより詳細に論じられる、上部シールド部118およびヒンジ420を示す。シールドの後側はさらに、プレート550を有するプレートアセンブリを含み得る。たとえば、複数のプレートを設けることができ、これらは任意選択で、シールドアセンブリ内の複数のシールドに対応することができる。
【0056】
タイル410の拡大図が、
図4Bに示されている。いくつかの実施形態によれば、シールドのタイルは、タイル本体を含み得る。タイルは、真空処理チャンバ内で堆積源の材料を遮蔽するように構成することができる。タイル本体は、第1の側部、たとえば、
図4Bに示される側部を含む。第1の側部は、構造化面を有する。したがって、堆積源からの材料の蓄積を改善でき、タイルからの材料の剥離を低減することができる。
【0057】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、構造化面は、マクロ構造412を含み得る。たとえば、マクロ構造は、
図4Bに示されるダイヤモンド形構造などの、圧延加工構造を含み得る。加えて、または別法として、構造化面は、マイクロ構造を含むことができる。マイクロ構造は、ブラスト構造またはブラスト面とすることができる。たとえば、マイクロ構造を有する構造化面は、サンドブラストすること、または他の粒子を付着させることができる。マイクロ構造の上にマイクロ構造を形成することができる。マクロ構造およびマイクロ構造を形成することにより、タイルへの材料付着性をさらに改善することができる。保守サイクル間の時間を増大させることができるので、堆積装置の稼働時間を改善することができる。本明細書に記載のように、マクロ構造は、パターン構造のサイズが2mm以上、および/またはパターン構造のピッチが4mm以上であるパターンを有する構造を含み得る。マイクロ構造は、パターン構造のサイズが1mm以下であるパターンを有する構造体を含み得る。
【0058】
1つの実施形態によれば、真空処理チャンバ内の堆積源のシールド遮蔽材用のタイルが提供される。このタイルは、タイル本体を含む。タイル本体は、堆積源に面するように構成されたタイル本体の第1の側部と、第1の側部の反対側のタイル本体の第2の側部とを有する。第2の側部は、タイルをシールドに取り付けるための少なくとも1つの凹部を含む。第1の側部は、構造化面を有する。
【0059】
他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、1つまたは複数のタイルを互いに隣接して設けて、シールドアセンブリ、または中心シールド部などのシールドアセンブリの一部分を形成することができる。第1の側部は、1つまたは複数の縁部それぞれとして(すなわち周辺縁部として)構造化面を有する。たとえば、周辺は、長方形の形状または他の多角形の形状を有することができる。縁部が、タイルの第1の側部と側面の間に境界を形成することができる。たとえば、長方形のタイルには、第1の側面、第2の側面、第3の側面、および第4の側面があり得る。側面は、第1の側部と、第1の側部に対向する第2の側部とを結合する。第1の側部の1つまたは複数の縁部には、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、丸みをつけることができる。たとえば、縁部は、半径を0.5mm以上、詳細には1mm以上とすることができる。丸みをつけた縁部により、タイル、すなわち構造化面を有するタイルの、第1の側部に集められた材料の剥離が低減する。
【0060】
次に、タイルおよびシールドの別の態様、詳細、修正および実施形態について、
図5Aおよび
図5Bに関して説明する。
図5Aは、タイル410を示す。このタイルは、第1の側部512と、第1の側部の反対側の第2の側部514とを有する。第1の側部は、堆積装置の動作中に堆積源に面するように配置される。第2の側部は、タイルをシールドに取り付けるように配置される。
【0061】
他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、シールドアセンブリの1つまたは複数のタイルは、フレーム(たとえば
図4Aに示すフレーム411)に取り付けることができる。加えて、または別法として、タイルは、プレートアセンブリのプレート550に取り付けることができる。プレート(または対応するフレーム)は、開口部552を含み得る。開口部は、鍵穴の形状を有し得る。ねじ562とピン564は連結して、少なくとも部分的に開口部552を通って伸びることができる。開口部の鍵穴形状により、ねじとピンを片側から組み合わせることが可能になる。ピンは、鍵穴形の開口部の大きい方の部分に挿入することができ、移動させてピンを鍵穴内で留めることができる。タイル410は、タイル410の第2の側部514に1つまたは複数の凹部を有し得る。1つまたは複数の凹部は、鍵穴スロットとすることができる。タイルの1つまたは複数の鍵穴スロットに1つまたは複数のピンを挿入することによって、タイルをプレート550に取り付けることができる。1つまたは複数のねじにトルクを加えて、タイル410をプレート550に固定することができる。詳細には、4本以上のねじを利用して、水冷構成要素へのタイルの連結を改善することができる。したがって、良好な熱的接触を実現することができる。したがって、タイル温度をある所定の温度未満にして、材料成長(たとえば、有機材料の成長)を剥離なしで改善することができる。タイルがフレームに追加的または代替的に取り付けられる場合、同様の固定を行うことができる。
【0062】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、シールドアセンブリに含まれる複数のタイルのうちのいくつかのタイルを、プレートアセンブリのうちの対応するプレートに結合することができる。タイルの第2の側部の少なくとも1つの凹部は、鍵穴スロットとすることができる。たとえば、少なくとも1つの凹部は、
図5Bに示される長方形などの、1つまたは複数のパターンの鍵穴スロット522である。別の任意選択の修正形態として、少なくとも4つの鍵穴スロットが、タイルの角部に対応して設けられ、かつ/または、2つの隣り合う鍵穴スロットの間隔が10cm以下である。
【0063】
図6は、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、タイルの実施形態の別の態様を示す。
図6に示されるタイルには、突出部622および凹部624の少なくとも一方がタイルの端部にあり得る。たとえば、1つのタイルには、一方の端部に突起があり、反対側の端部に凹部があり得る。したがって、隣り合うタイル間に重なり合い部を設けることができる。この重なり合う部分により、隣り合うタイル間の隙間を偶発的に通り抜ける堆積材料を低減することができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態によれば、タイルは、第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面を含むタイル本体の側面を含むことができ、これらの側面は、タイル本体の第1の側部とタイル本体の第2の側部を連結し、少なくとも2つの側面は、凹部と、タイルが隣接タイルと重なり合うように構成された突起との少なくとも一方を備える。
【0064】
図7は、堆積装置の一部分を示す。真空チャンバ702の片側が示されている。堆積領域において基板を搬送するための、第1の基板搬送部712が示されている。真空チャンバ内の別の堆積領域において第2の基板を搬送するための、第2の基板を設けることができる。堆積源カートの案内722が、堆積装置に設けられる。堆積源は、たとえば第1の駆動装置を用いて、案内に沿って動かすことができる。たとえば、堆積源は、
図7で左から右へ動かすことができ、逆も同様である。堆積源は、シールド110と一緒に動かすことができる。
【0065】
1つの実施形態によれば、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するシールドが設けられる。このシールドは、堆積装置に取り付けられるように構成されたフレーム411を含む。たとえば、フレーム411は、堆積装置の真空チャンバ702に取り付けることができる。シールドアセンブリがフレームに結合される。シールドアセンブリは、第1の側方シールド部116および第2の側方シールド部116を含む。シールドはさらに、第1の側方シールド部と第2の側方シールド部の間の中心シールド部を含み、シールドアセンブリは、シールドアセンブリの閉位置で堆積材料を遮蔽するために、真空チャンバ702の壁705と堆積源の間に配置されるように構成される。シールドはさらに、シールドアセンブリの開位置での堆積源へのアクセスを可能にするために、シールドアセンブリの少なくとも一部分を動かすように構成されたドア構成体を含む。
【0066】
図7で、中心シールド部は、第1の側部715Aおよび第2の側部715Bを含む。中心シールド部は、たとえば、
図4Aに示されたヒンジを利用して、ヒンジ付きドアとして開くことができる。ドア構成体は、中心シールド部の第1の側部をある角度だけ動かすために、および中心シールド部の第2の側部をある角度だけ動かすために、中心シールド部に結合されたヒンジを含み得る。
【0067】
図6に戻って参照すると、ドア構成体が閉位置にあるときに、隣り合うタイルに重なり合い部および凹部を設けることもできる。たとえば、凹部を第1の側部715Aに設けることができ、突起を第2の側部715Bに設けることができる。さらに、突起を第1の側面715Aに設けることもでき、凹部を第2の側面715Bに設けることもできる。
【0068】
図8は、ドア構成体のさらに別の実施形態を示す。ドア構成体はまた、シールド110の一部分またはシールドアセンブリを案内レール上に支持することによっても設けることができる。したがって、シールドまたはシールドの一部分は、案内レールに沿った摺動運動によって動かすことができる。したがって、ヒンジ付きドア動作に加えて、または別法として、摺動ドア動作を行うこともできる。シールドの少なくとも一部分を摺動させ動かすことによって、保守などのために堆積源にアクセスすることができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、ドア構成体は、シールドアセンブリの少なくとも中心部を摺動させて堆積源へのアクセスを可能にするための案内レールを含み得る。
【0069】
図9Aおよび
図9Bは、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態の、さらに別の態様を示す。
図9Aは、シールド110を示す。シールドは、たとえば、いくつかのフレームチューブを有するフレーム411を含み得る。シールドアセンブリの側方シールド部116は、フレームによって支持することができる。さらに、タイル410は、フレームに、またはフレームによって支持されたプレートアセンブリに、結合することができる。冷却チャネルまたは冷却導管113を設けることができる。冷却チャネルは、フレーム411の中へ延び得る。フレーム411に結合されたタイルは、フレームと接触することによって冷却される。たとえば、中心シールド部の中心のタイル910を冷却することができる。中心を冷却することは、アイドル位置を有利に中心に設けることができるので、有利になり得る。したがって、中心のタイルは、最も多くの熱負荷を受ける可能性がある。
【0070】
上で説明したように、タイルは、たとえばシールドアセンブリの高さに沿って細長くすることができる。中心の2つ、3つまたは4つのタイルの加熱はさらに、有機物蒸発のために行うことができ、その熱負荷は、金属の蒸発と比較して小さくすることができる。したがって、
図9Aに示されたシールドは、有機物の堆積源または蒸気源に、および/または有機材料堆積のための堆積装置に利用することができる。
図9Bに示されたドア構成体のヒンジは、
図9Aに提示することもできる。
【0071】
金属堆積の場合には、たとえば中心シールド部の冷却ゾーンを増大させることができる。このことは、
図9Bに例示されている。シールド110は、フレーム411を含む。冷却チャネルを有するプレートアセンブリが、フレーム411に取り付けられる。複数のタイルを、たとえば互いに近接してプレートアセンブリに取り付けること、または垂直に配置することもできる。冷却チャンネル913は、プレートアセンブリのプレートに取り付けること、またはプレートに埋め込むことができる。側方シールド部116間の中心シールド部115は、冷却することができる。増大させた加熱領域、ならびにプレート内の(すなわち拡大された領域にわたる)冷却導管により、シールドアセンブリの冷却を改善することができる。したがって、
図9Bに関して説明したシールドによって、より高い熱負荷に対処することができる。
【0072】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる、いくつかの実施形態によれば、シールドアセンブリの少なくとも中心シールド部、または中心シールド部の一部分を冷却するための冷却ユニットを提供することができる。冷却ユニットは、フレーム内の冷却導管、およびシールドアセンブリのプレートアセンブリ内の冷却導管のうちの少なくとも1つを含む。複数のタイルのうちのいくつかのタイルを、プレートアセンブリのうちの対応するプレートに結合することができる。タイルは、フレーム部分に接触させること、および/またはプレートアセンブリに接触させることによって冷却することができる。
【0073】
図10は、本明細書に記載の実施形態による堆積装置1000の概略図である。堆積装置は、真空処理チャンバ101などの真空チャンバ内で、材料を複数の基板に続けて堆積するように構成することができる。一実施形態によれば、真空チャンバ内で複数の基板を続けて処理するための堆積装置が提供される。この装置は、真空チャンバの第1の側壁に隣接する第1の基板処理位置と、真空チャンバの第2の側壁に隣接する第2の基板処理位置とを含み、第2の側壁は第1の側壁と対向している。堆積源が、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間に設けられる。装置はさらに、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間で堆積源を並進させるように構成された堆積源カートを含み、ならびに、第1の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第1の方向と第2の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第2の方向との間で堆積源を回転させるように構成されたアクチュエータを含む。堆積装置はさらに、本開示の実施形態のいずれかによるシールドを含む。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、シールドは、堆積源カートに取り付けることができる。さらに、加えて、または別法として、シールドのドア構成体は、第1の側壁と第2の側壁を連結する真空チャンバの第3の側壁1013に面する。たとえば、第3の側壁は、ドア構成体の閉位置でシールドへの保守アクセスを可能にするように、また、ドア構成体の開位置で堆積源への保守アクセスを可能にするように配置される。
【0075】
図10は、堆積装置1000を示す。堆積装置は、基板を配置するための少なくとも1つの堆積領域を有する真空処理チャンバ101を含む。真空処理チャンバ内には、大気圧以下、たとえば10ミリバール以下の圧力を与えることができる。本明細書に記載の実施形態による堆積装置100は、真空処理チャンバ101内に配置される。
【0076】
図10の例示的な実施形態では、真空処理チャンバ101内に2つの堆積領域、すなわち、コーティングされるべき基板10を配置するための第1の堆積領域103と、コーティングされるべき第2の基板20を配置するための第2の堆積領域104とが設けられている。さらに、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる堆積システム100は、真空処理チャンバ101内に配置される。第1の堆積領域103および第2の堆積領域104は、堆積システム100の反対側に設けられてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、堆積システム100は、蒸発材料のプルームを基板に向けるための1つまたは複数の蒸気出口を有する、1つまたは複数の分配パイプ付きの蒸気源120を含む。さらに、堆積システム100は、シールド110と、シールド110を冷却するための冷却デバイス112とを含む。蒸気源120は、
図10に示された堆積位置から、1つまたは複数の蒸気出口がシールド110に向けられるアイドル位置へ動かすことができる。堆積位置では、1つまたは複数の蒸気出口は、第1の堆積領域または第2の堆積領域に向けられる。
【0078】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、蒸気源120は、第1の堆積領域103を通り越して移動可能であり、第1の堆積領域103と第2の堆積領域104の間で回転可能であり、また第2の堆積領域104を通り越して移動可能である。アイドル位置は、第1の堆積領域103と第2の堆積領域104の間の、蒸気源120の中間回転位置とすることができる。詳細には、蒸気源は約90°だけ、たとえば時計回りに、
図10に示された(第1の)堆積位置からアイドル位置へ回転させることができる。蒸気源は、第2の基板20を配置できる第2の堆積領域104に蒸発材料を向けるために、同じ方向に約90°だけ、たとえば時計回りにアイドル位置から第2の堆積位置へ回転させることができる。あるいは、蒸気源は、たとえば反時計回りに、第2の堆積領域104からアイドル位置まで、および/またはアイドル位置から(第1の)堆積位置まで逆に回転させることができる。
【0079】
蒸気源120は、直線的経路であってよい蒸気源搬送経路Pに沿って、移動可能とすることができる。詳細には、蒸気源120をシールド110と一緒に蒸気源搬送経路Pに沿って、第1の堆積領域103を通り越して、および/または第2の堆積領域104を通り越して動かすために、第1の駆動装置を設けることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、シールド110および蒸気源120は、真空処理チャンバ101内の蒸気源軌道131に沿って移動可能な蒸気源支持体128上に、たとえば蒸気源カート上に支持することができる。蒸気源120およびシールド110を保持する蒸気源支持体128の一例が、
図11に示されている。蒸気源支持体128は、蒸気源軌道131に沿って、たとえば磁気浮上システムによって非接触で駆動することができる。
【0081】
より詳細に
図11の断面図に示されているように、蒸気源120は、実質的に垂直方向に延びることができる1つの、または2つ以上の分配パイプ122を含み得る。1つの、または2つ以上の分配パイプ122の各分配パイプは、材料を蒸発させるように構成された、るつぼ126と流体連通することができる。さらに、1つの、または2つ以上の分配パイプの各分配パイプは、1つの、または2つ以上の分配パイプ122の全長に沿って配置された複数の蒸気出口125、たとえばノズルを含み得る。たとえば、10個の、または20個以上の蒸気出口を分配パイプの全長に沿って、たとえば実質的に垂直方向に設けることができる。シールド110は、蒸気源の1つの、または2つ以上の分配パイプのまわりに少なくとも部分的に延び得る。たとえば、シールドは、1つの、または2つ以上の分配パイプ122を、45°以上の角度だけ、詳細には60°以上の角度だけ、より詳細には90°以上の角度だけ囲むことができる。いくつかの実施形態では、水平断面の平面で蒸気出口から広がる蒸発材料のプルームの開口角度は、30°から60°の間に、詳細には約45°にすることができる。
【0082】
図11は、複数の蒸気出口125がシールド110に向けられている、アイドル位置の堆積システムを示す。シールド110の表面は、冷却デバイス112を用いて冷却することができる。蒸気源120に向かう熱放射、および堆積領域に向かう熱放射が低減され得る。
【0083】
より詳細に
図10に示されているように、堆積装置1000は、第1の堆積領域103に配置された基板10をコーティングし、次いで、第2の堆積領域104に配置された第2の基板20をコーティングするように構成することができる。これらの堆積領域間で蒸気源120が動くとき、蒸気源120は、1つまたは複数の蒸気出口が冷却シールドに向けられるアイドル位置で停止することができる。たとえば、蒸気源120は、点検、保守、洗浄、待機、基板またはマスクの位置合わせのうちの少なくとも1つのために停止することができる。あるいは、蒸気源は、アイドル位置で停止せずに、堆積領域間で連続して動く。
【0084】
堆積装置1000は、1つまたは複数の基板のマスク堆積用に構成することができる。マスク11を基板10の前の第1の堆積領域103に配置することができ、かつ/または、第2のマスク21を第2の基板20の前の第2の堆積領域104に配置することができる。
【0085】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、
図10に示されているように、遮蔽構成体12が、マスク11の周辺部、たとえば、蒸気源搬送路Pの方向のマスク11の両側に隣接して配置されてもよい。いくつかの実施形態では、遮蔽構成体12は、マスク11を枠状に取り囲むことができる。遮蔽構成体は、マスク11を保持するマスクキャリアに取り付けることができる、複数の遮蔽ユニットを含み得る。たとえば、遮蔽構成体12は、たとえば洗浄のために容易かつ迅速に交換可能なように、マスクの周辺部に取り外し可能に取り付けることができる。
【0086】
遮蔽構成体12は、1つまたは複数の蒸気出口からマスク11の周辺部に向けられる蒸発材料を遮蔽するように構成することができる。マスクキャリアおよび/または真空処理チャンバ101の壁のコーティングは、低減または回避することができる。たとえば、基板10への堆積後、蒸発材料は遮蔽構成体12に向けることができ、この遮蔽構成体は、基板10に対して実質的に平行に延びることができ、また、蒸気源搬送経路Pに沿ってマスク11に隣接して配置することができる。
図10に示された堆積位置では、蒸発材料が遮蔽構成体12に向けられている。その後、蒸気源120はアイドル位置に向けて回転することができ、蒸発材料を遮蔽体110に向けることができる。洗浄の労力が軽減され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、遮蔽構成体12は、第1の堆積領域103においてマスク11に近接して配置され、第2の遮蔽構成体22は、第2の堆積領域104において第2のマスク21に近接して配置される。たとえば、第2の遮蔽構成体22は、第2のマスク21の周辺部に配置され、第2のマスク21の周辺部に向けられた蒸発材料を遮蔽するように構成される。詳細には、遮蔽構成体12は、第1の堆積領域103においてマスク11の周辺部に向けられた蒸発材料を遮蔽するように第1の堆積領域103に配置することができ、第2の遮蔽構成体22は、第2堆積領域104において第2マスク21の周辺部に向けられた蒸発材料を遮蔽するように第2の堆積領域104に配置することができる。蒸気源が堆積領域間で動いている間、遮蔽体110は、蒸発材料を遮蔽することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、遮蔽構成体12とシールド110の間の最小距離は、10cm以下、詳細には5cm以下、より詳細には2cm以下とすることができ、かつ/または、第2の遮蔽構成体22とシールド110の間の最小距離は、10cm以下、詳細には5cm以下、より詳細には2cm以下とすることができる。シールドと遮蔽構成体の間の移行部での、シールドおよび遮蔽構成体の各遮蔽面を通り越すスプリンクルコーティングは、低減または回避することができる。特に、シールドは、マスク11と第2のマスク21の間の真空処理チャンバ101の幅の50%以上、詳細には80%以上にわたって延び得る。
【0089】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、蒸気源が堆積位置からアイドル位置へ移動する間の蒸気源120とシールド110の間の最小距離は5cm以下、詳細には1cm以下である。言い換えると、蒸気源120とシールド110は、蒸気源がアイドル位置へ回転中に、互いに接近し得る。
【0090】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一部の実施形態では、基板上に堆積中の1つまたは複数の蒸気出口と基板の間の距離は、30cm以下、詳細には20cm以下、より詳細には15cm以下とすることができる。蒸気出口と基板の間の距離が小さいと、堆積中のマスク11の縁部領域での蒸発材料のはみだしが小さくなる。したがって、マスクおよび基板に当たる蒸発プルームの面積を小さくできるので、より小型の遮蔽構成体を実現することができる。さらに、堆積品質を向上させることができる。
【0091】
本明細書に記載の別の態様によって、堆積システムを動作させる方法について説明する。この堆積システムは、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる堆積システムでもよい。詳細には、堆積システムは、1つまたは複数の蒸気出口を有する蒸気源を含み、この蒸気源は、アイドル位置へ移動可能である。
【0092】
図12は、真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドを組み立てる方法、および/または真空チャンバを有する堆積装置の堆積源にアクセスする方法を概略的に示す流れ図である。動作710で、タイルの凹部が、ねじに結合されたピンの上に案内される。さらに、タイルは、ねじにトルクを加えることによって、プレートアセンブリまたはフレームに固定される。1つまたは複数のタイルをシールドに固定することができ、側方シールド部と、側方シールド部間の中心シールド部とを有するシールドアセンブリを形成することができる。たとえば、タイルは、シールドアセンブリのドア構成体の開口位置に取り付けることができる。
【0093】
シールドアセンブリは、ドア構成体の閉位置で堆積材料を遮蔽するように、真空チャンバの壁と堆積源の間に配置される。動作720で、たとえば堆積源がアイドル位置に配置されたときに、またはアイドル位置を通り越して動いたときにドアを閉じて、動作中に壁上に堆積されるべき材料を保持することができる。動作730で、ドアを開いて、保守のために堆積源および/またはシールドアセンブリのタイルにアクセスすることができる。
【0094】
上記に照らして、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる複数の実施形態を以下に提示する。
【0095】
実施形態1。 真空処理チャンバ内の堆積源の材料を遮蔽するように構成されたシールド用のタイルであって、タイル本体と、堆積源に面するように構成されたタイル本体の第1の側部と、第1の側部の反対側のタイル本体の第2の側部とを有し、第2の側部が、タイルをシールドに取り付けるための少なくとも1つの凹部を含み、第1の側部が構造化面を有する、タイル。
【0096】
実施形態2。 構造化面がマクロ構造およびマイクロ構造を含む、実施形態1に記載のタイル。
【0097】
実施形態3。 マクロ構造が圧延加工構造を含む、実施形態2に記載のタイル。
【0098】
実施形態4。 圧延加工構造がダイヤモンド形である、実施形態3に記載のタイル。
【0099】
実施形態5。 マイクロ構造がブラスト構造である、実施形態2に記載のタイル。
【0100】
実施形態6。 第1の側部に開口部がなく、凹部が第1の側部に向けて閉じられている、実施形態1~5のいずれかに記載のタイル。
【0101】
実施形態7。 第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面を含む、タイル本体の側面をさらに含み、これらの側面がタイル本体の第1の側部とタイル本体の第2の側部を連結し、少なくとも2つの側面は、凹部と、タイルが隣接タイルと重なり合うように構成された突起との少なくとも一方を含む、実施形態1~6のいずれかに記載のタイル。
【0102】
実施形態8。 第2の側部の少なくとも1つの凹部が鍵穴スロットである、実施形態1~7のいずれかに記載のタイル。
【0103】
実施形態9。 少なくとも1つの凹部が1つまたは複数のパターンの鍵穴スロットである、実施形態8のタイル。
【0104】
実施形態10。 1つまたは複数のパターンが長方形である、実施形態9のタイル。
【0105】
実施形態11。 少なくとも4つの鍵穴スロットが、タイルの角部に対応して設けられる、実施形態8~10のいずれかのタイル。
【0106】
実施形態12。 2つの隣り合う鍵穴スロットの間隔が18cm以下である、実施形態8~10のいずれかのタイル。
【0107】
実施形態13。 タイルの幅と高さのアスペクト比が1:4~4:1である、実施形態1~12のいずれかのタイル。
【0108】
実施形態14。 タイルの幅と高さのアスペクト比が1:5以下である、実施形態1~12のいずれかのタイル。
【0109】
実施形態15。 第1の側部は、半径が0.5mm以上の1つまたは複数の縁部を有する、実施形態1~14のいずれかのタイル。
【0110】
実施形態16。 真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドであって、堆積装置に取り付けられるように構成されたフレームと、フレームに結合されたシールドアセンブリであり、第1の側方シールド部、第2の側方シールド部、および第1の側方シールド部と第2の側方シールド部の間の中心シールド部を含む、シールドアセンブリとを含み、このシールドアセンブリは、シールドアセンブリの閉位置で堆積材料を遮蔽するために、真空チャンバの壁と堆積源の間に配置されように構成され、シールドはさらに、シールドアセンブリの開位置で堆積源にアクセスできるようにするためにシールドアセンブリの少なくとも一部分を動かすように構成されたドア構成体を含む、シールド。
【0111】
実施形態17。 ドア構成体が、中心シールド部の第1の側部をある角度だけ動かすために、および中心シールド部の第2の側部をある角度だけ動かすために、中心シールド部に結合されたヒンジを含む、実施形態16に記載のシールド。
【0112】
実施形態18。 中心シールド部の第1の側部と中心シールド部の第2の側部とが、ヒンジ付きドアとして開かれるように構成される、実施形態17に記載のシールド。
【0113】
実施形態19。 ドア構成体が、シールドアセンブリの少なくとも中心シールド部を摺動させて堆積源にアクセスできるようにするための案内レールを含む、実施形態16~18のいずれかに記載のシールド。
【0114】
実施形態20。 シールドアセンブリの中心シールド部の少なくとも一部分を冷却するための冷却ユニットであって、フレーム内の冷却導管と、シールドアセンブリのプレートアセンブリ内の冷却導管との少なくとも一方を含む冷却ユニットをさらに含む、実施形態16~19のいずれかに記載のシールド。
【0115】
実施形態21。 シールドアセンブリが、実施形態1~15のいずれかに記載の複数のタイルをさらに含む、実施形態16~19のいずれかに記載のシールド。
【0116】
実施形態22。 シールドアセンブリが、実施形態1~15のいずれかに記載の複数のタイルをさらに含む、実施形態20に記載のシールド。
【0117】
実施形態23。 複数のタイルが、フレームに接触することによって冷却される、実施形態21~22のいずれかに記載のシールド。
【0118】
実施形態24。 複数のタイルのうちのいくつかのタイルが、プレートアセンブリのうちの対応するプレートに結合される、実施形態22に記載のシールド。
【0119】
実施形態25。 複数のタイルが、プレートアセンブリに接触することによって冷却される、実施形態24に記載のシールド。
【0120】
実施形態26。 シールドアセンブリがさらに、第1の側方シールド部と、第2の側方シールド部と、中心シールド部との上に少なくとも部分的に設けられた上部シールド部であって、実質的に水平に配向されている上部シールド部を含む、実施形態16~25のいずれかに記載のシールド。
【0121】
実施形態27。 真空チャンバ内で複数の基板を続けて堆積するための堆積装置であって、真空チャンバの第1の側壁に隣接する第1の基板処理位置と、真空チャンバの第2の側壁に隣接する第2の基板処理位置であり、第1の側壁の反対側にある第2の基板処理位置と、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間の堆積源と、第1の基板処理位置と第2の基板処理位置の間で堆積源を並進させるように構成された堆積源カートと、第1の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第1の方向と第2の基板処理位置で材料を基板上に堆積する第2の方向との間で堆積源を回転させるように構成されたアクチュエータと、実施形態16~26のいずれかに記載のシールドとを含む、堆積装置。
【0122】
実施形態28。 シールドが堆積源カートに取り付けられる、実施形態27に記載の堆積装置。
【0123】
実施形態29。 シールドのドア構成体が、第1の側壁と第2の側壁を連結する真空チャンバの第3の側壁に面する、実施形態17~28のいずれかに記載の堆積装置。
【0124】
実施形態30。 第3の側壁が、ドア構成体の閉位置でシールドへの保守アクセスを可能にするように、また、ドア構成体の開位置で堆積源への保守アクセスを可能にするように配置される、実施形態29に記載の堆積装置。
【0125】
実施形態31。 真空チャンバを有する堆積装置の堆積源の材料を遮蔽するためのシールドを組み立てる方法であって、タイルの凹部を、ねじに結合されたピンの上に案内するステップと、ねじにトルクを加えることによって、タイルをプレートアセンブリまたはフレームに固定するステップとを含む、方法。
【0126】
実施形態32。 タイルが、効果的な熱伝導を得るために、ねじを用いて4つ以上の凹部で固定される、実施形態31に記載の方法。
【0127】
実施形態33。 真空チャンバを有する堆積装置の堆積源にアクセスする方法であって、真空チャンバの壁と堆積源の間に配置されたシールドアセンブリのドア構成体を開いて、堆積材料をドア構成体の閉位置で遮蔽するステップを含む、方法。
【0128】
以上は本開示の実施形態を対象とするが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他のさらなる実施形態を考案することができ、また本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。