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特許7439269変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/30 20060101AFI20240219BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20240219BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240219BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F8/42
C08K3/013
C08L15/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022541865
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2021010226
(87)【国際公開番号】W WO2022031002
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098095
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】スク・ジュン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ノ・マ・キム
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123225(JP,A)
【文献】特開2013-249419(JP,A)
【文献】特開2002-284934(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031850(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128583(KR,A)
【文献】特表2015-518516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0376321(US,A1)
【文献】特開2011-006543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/30
C08F 8/42
C08K 3/013
C08L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および窒素含有変性開始剤由来の単位を含む第1重合体鎖および第2重合体鎖を含み、
前記第1重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の単位を含み、
前記第2重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノエポキシ系変性剤由来の単位を含み、
前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、分子中に6個以上のアルコキシ基を含む、変性共役ジエン系重合体。
【請求項2】
前記第1重合体鎖および第2重合体鎖は、それぞれ芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記アミノエポキシ系変性剤は、分子中に4個以下の重合体の変性官能基を含み、
前記重合体の変性官能基は、エポキシ基、またはアルコキシ基およびエポキシ基を含む、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記窒素含有変性開始剤は、窒素含有化合物と有機金属化合物の反応生成物であり、
前記窒素含有化合物は、分子中に置換基で置換もしくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ピリミジル基、または環状アミノ基を含むスチレン系化合物であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数1~10のアルコキシシリル基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記窒素含有化合物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項4に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化1】
前記化学式1中、
~Rは、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30のヘテロ環基であり、
は、単結合;置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基;または下記化学式1aまたは化学式1bで表される官能基であり、
nは1~5の整数であり、Rのうち少なくとも1つは、下記化学式1aまたは化学式1bで表される官能基であり、nが2~5の整数である場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、
【化2】
前記化学式1a中、
は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
およびRは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基であり、
Zは、N、O、またはS原子であり、ZがOまたはSである場合、Rは存在せず、
【化3】
前記化学式1b中、
10は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
11およびR12は、互いに独立して、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基である。
【請求項6】
前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、下記化学式2~化学式4で表される化合物の中から選択された1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化4】
前記化学式2中、
2aおよびR2dは、互いに独立して、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
2bおよびR2cは、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロアルキニル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
2eは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアリル基、炭素数1~10のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、炭素数2~10のヘテロ環基、または-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dであり、
ここで、R2fは、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
2gおよびR2hは、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロアルキニル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
dは1~3の整数であり、
aは1~3の整数であり、bは0または1であり、cは2または3であり、
この際、bが0である場合およびbが1である際に、R2eが-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dではない場合、a+cは5または6であり、
bが1である際に、R2eが-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dである場合、a+cは4または5であり、
【化5】
前記化学式3中、
b2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
b12~Rb14は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
、m、m、およびmは、互いに独立して、1~3の整数であり、
【化6】
前記化学式4中、
h1およびRh2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基であり、
h3は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Aは、-N[Si(Rh4h5h6)]であり、ここで、Rh4~Rh6は、互いに独立して、炭素数1~10のアルコキシ基である。
【請求項7】
前記アミノエポキシ系変性剤は、下記化学式5~化学式7で表される化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化7】
前記化学式5中、
3aおよびR3bは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
3c~R3fは、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-R3g3hであり、この際、R3c~R3fのうち少なくとも1つは、-R3g3hであり、ここで、R3gは、単結合、またはヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、R3h、エポキシ基であり、
【化8】
前記化学式6中、
d1~Rd3は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Rd4d5であり、この際、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、
【化9】
前記化学式7中、
g1~Rg4は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、または-Rg5ORg6であり、この際、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5ORg6であり、ここで、Rg5は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数3~10のエポキシアルキル基であり、
Yは、CまたはNであり、この際、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【請求項8】
重量平均分子量が1,000,000g/mol~3,000,000g/molであり、分子量分布が1.0以上2.0以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項9】
重合体の全体重量を基準としてSiの含量およびNの含量がそれぞれ70ppm以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物。
【請求項11】
変性共役ジエン系重合体100重量部および充填剤0.1重量部~200重量部を含む、請求項10に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年08月05付けの韓国特許出願第10-2020-0098095号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、転がり抵抗性、加工性、および耐摩耗性が改善された変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、走行抵抗が少なく、耐摩耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性に代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの走行抵抗を減少させるためには、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられる。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい長所は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などにより分子量および物性などが調節可能であるという点である。よって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であり、鎖末端の結合や変性により鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられる。
【0006】
前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして末端に官能基を導入する技術が用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
また、前記溶液重合によるSBRをゴム材料として用いる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、走行抵抗などのタイヤに求められる物性を調節することができるが、ビニルの含量が高い場合、制動性能および耐摩耗性が不利になるという側面がある。よって、SBR中のスチレンの含量が一定レベル以上に維持されなければならないが、この場合、高いビニルの含量から発現される効果が現れないという問題がある。
【0008】
そこで、溶液重合によるSBRとしてスチレンおよびビニルの含量に勾配を有する2つのブロック共重合体単位を含むブロック共重合体SBRを用いて、走行抵抗性、ウェットスキッド抵抗性、および耐摩耗性をバランスよく改善させる試みがなされたが、改善が微々たるレベルにすぎないかまたは改善効果がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US4,397,994A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、それぞれ変性開始剤由来の単位を含み、活性重合体との反応活性を有する官能基数が異なる異種の変性剤由来の単位を含む第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、高分子量を有しながらも、分子量分布および分岐度が調節され、ゴム組成物に適用時に耐摩耗性および加工性を改善させることができる変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、加工性および耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、それぞれ共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および窒素含有変性開始剤由来の単位を含む第1重合体鎖および第2重合体鎖を含み、前記第1重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の単位を含み、前記第2重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノエポキシ系変性剤由来の単位を含み、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、分子中に6個以上のアルコキシ基を含む、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、それぞれ充填剤親和性官能基を含むとともに、活性重合体との反応活性を有する官能基数が異なる異種の変性剤を用いて製造され、互いに分岐度が異なる第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、高分子量を有しながらも、分子量分布および分岐度が調節され、機械的特性、加工性、および転がり抵抗性にバランスよく優れるという効果がある。
【0015】
また、本発明に係るゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を含むことで、耐摩耗性および加工性の何れにも優れることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
定義
本明細書において、用語「重合体」は、同一種類であるか異種類であるかを問わず、単量体を重合することで製造された重合体化合物を指す。これにより、一般用語の重合体は、単に1種の単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられる単独重合体という用語、および共重合体という用語を網羅する。
【0018】
本明細書において、用語「1,2-ビニル結合含量」は、前記重合体中の共役ジエン単量体(ブタジエンなど)部分(重合されたブタジエンの総量)に基づく、前記重合体鎖中の1,2番位置に内包されるブタジエンの質量(もしくは重量)パーセントを指す。
【0019】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基、およびイソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含む意味であり得る。
【0020】
本明細書において、用語「アルケニル基(alkenyl group)」は、二重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0021】
本明細書において、用語「アルキニル基(alkynyl group)」は、三重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0022】
本明細書において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0023】
本明細書において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0024】
本明細書において、用語「ヘテロ環基(heterocyclic group)」は、シクロアルキル基またはアリール基中の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子で置換されたものであって、例えば、ヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を何れも含む意味であり得る。
【0025】
本明細書において、用語「含む」、「有する」という用語、およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されているか否かを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤、もしくは化合物を含んでもよい。これとは対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられていない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0026】
測定方法および条件
本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は、変性共役ジエン系重合体を試料とし、ISO 22768:2006に準じて、示差走査熱量計(TA社製の商品名「DSCQ100」)を用い、窒素50mL/分の流通下、-80℃から10℃/分で昇温させながら70-6DSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度として測定したものである。
【0027】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「数平均分子量(Mn)」、および「分子量分布(MWD)」は、GPC(Gel permeation chromatography)分析により測定し、分子量分布曲線を確認することで測定したものである。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて用い、分子量の計算時、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて行い、GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を混ぜて製造する。
【0028】
また、カップリング数(Coupling Number、C.N.)は、最初の変性剤を投入して第1変性反応を行う前に、一部の重合物を採取して重合体のピーク分子量(Mp)を得、その後、最終的に変性されて製造された変性共役ジエン系重合体のピーク分子量(Mp)を得て、下記数学式1により計算した。
【0029】
[数学式1]
カップリング数(C.N.)=Mp/Mp
本明細書において、「1,2-ビニル結合含量」は、前記各重合体中のビニル(Vinyl)の含量を、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析し、NMRの測定時に、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は6.0ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして全体重合体中の1,2-ビニル結合含量を計算して測定したものである。
【0030】
本明細書において、「ムーニー粘度(MV)」および「ムーニー応力緩和率(-S/R)」は、前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃ MU)を、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定する。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定する。ムーニー粘度の測定後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定し、その絶対値をムーニー応力緩和率とする。
【0031】
本明細書において、「N原子の含量」は、一例として、NSX分析方法により測定されてもよく、前記NSX分析方法は、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定される。例示的に、前記極微量窒素定量分析器を用いる場合、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT & Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、Oを350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)を300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させる。分析器の安定化後、窒素標準(Nitrogen standard)(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するエリア(Area)を得た後、濃度に対するエリアの割合を用いて直線を作成する。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定してエリアを得る。得られた試料のエリアおよび前記検量線を用いて、Nの含量を計算する。この際、試料は、スチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体であって、残留単量体、残留変性剤、およびオイルが除去されたものである。
【0032】
本明細書において、「Si原子の含量」は、ICP分析方法により、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定した。具体的に、約0.7gの試料を白金ルツボ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れ、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ1~3のプログラムで灰化を進行した後、
【0033】
1)ステップ1:initial temp 0℃、(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
【0034】
残留物に濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μLを加え、白金ルツボを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れ、0℃で2時間以上保管した後、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定した。
【0035】
本発明は、それぞれ充填剤親和性官能基を含むとともに、活性重合体との反応活性を有する官能基数が異なる異種の変性剤を用いて製造され、分岐度が異なる第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、機械的物性および加工性にバランスよく優れた変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、それぞれ共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および窒素含有変性開始剤由来の単位を含む第1重合体鎖および第2重合体鎖を含み、前記第1重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の単位を含み、前記第2重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノエポキシ系変性剤由来の単位を含み、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、分子中に6個以上のアルコキシ基を含むことを特徴とする。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、活性重合体との反応活性を有する官能基数が異なる異種の変性剤を用いて順次変性反応させる後述の製造方法により製造されることで、相対的に前記官能基数が多い変性剤から変性されて製造された分岐度が高い第1重合体鎖、および相対的に前記官能基数が少ない変性剤から変性されて製造された分岐度が低い第2重合体鎖を同時に含むことができる。かかる前記第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、機械的物性に優れるとともに加工性に優れることができる。
【0038】
具体的に、前記第1重合体鎖および第2重合体鎖は、それぞれ窒素含有変性開始剤由来の単位および共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含み、前記第1重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の単位を、前記第2重合体鎖は、少なくとも片末端にアミノエポキシ系変性剤由来の単位を含んでもよい。
【0039】
ここで、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味し、前記変性剤由来の単位は、共役ジエン系単量体が重合して製造される活性重合体と変性剤との間の反応またはカップリングにより、前記活性重合体の少なくとも片末端に存在する変性剤に由来した官能基を意味し得る。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0041】
また、前記第1重合体鎖および第2重合体鎖は、それぞれ芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、この場合、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を30重量%以下、または10重量%~25重量%で含んでもよい。この範囲内にて、転がり抵抗およびウェットスキッド抵抗性の間のバランスに優れるという効果がある。
【0042】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0043】
また他の例として、前記第1重合体鎖および第2重合体鎖は、それぞれ前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来した繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。
【0044】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むものであって、相対的に分岐度が高い第1重合体鎖および分岐度が低い第2重合体鎖を含んで全体的な分岐度が適宜調節されることで、機械的物性および加工性が最適に改善されるという効果がある。
【0045】
具体的に、前記第1重合体鎖は、窒素含有変性開始剤由来の単位;共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位およびアミノアルコキシシラン系変性剤由来の単位を含み、必要に応じて、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含むものであって、後述の製造方法のように、共役ジエン系単量体を重合して製造された活性重合体に、重合体の変性官能基であるアルコキシ基を分子中に6個以上含む前記アミノアルコキシシラン系変性剤を一定時間反応させて製造されて分岐度が高い。
【0046】
また、前記第2重合体鎖は、窒素含有変性開始剤由来の単位;共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位およびアミノエポキシ系変性剤由来の単位を含み、必要に応じて、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含むものであって、後述の製造方法のように、アミノアルコキシシラン系変性剤との変性反応後に未変性の活性重合体と、変性官能基であるエポキシ基、またはエポキシ基およびアルコキシ基が分子中に4個以下であるアミノエポキシ系変性剤とを反応させて製造され、相対的に分岐度が低く、リニアリティが高い。
【0047】
一方、前記窒素含有変性開始剤は、窒素含有化合物と有機金属化合物を反応させて製造されてもよく、具体的に、分子中に置換基で置換もしくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ピリミジル基、または環状アミノ基を含むスチレン系化合物であってもよい。ここで、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数1~10のアルコキシシリル基であってもよい。
【0048】
例示的に、前記窒素含有化合物は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0049】
【化1】
【0050】
前記化学式1中、
~Rは、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30のヘテロ環基であり、
【0051】
は、単結合;置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0052】
は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基;または下記化学式1aまたは化学式1bで表される官能基であり、
【0053】
nは1~5の整数であり、Rのうち少なくとも1つは、下記化学式1aまたは化学式1bで表される官能基であり、nが2~5の整数である場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、
【0054】
【化2】
【0055】
前記化学式1a中、
は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0056】
およびRは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
【0057】
は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基であり、
【0058】
Zは、N、O、またはS原子であり、ZがOまたはSである場合、Rは存在せず、
【0059】
【化3】
【0060】
前記化学式1b中、
10は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0061】
11およびR12は、互いに独立して、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30のヘテロ環基である。
【0062】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、化学式1中、R~Rは、互いに独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;または炭素数2~10のアルキニル基であり、Rは、単結合;または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、Rは、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;または下記化学式1aまたは化学式1bで表される官能基であり、前記化学式1a中、Rは、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、RおよびRは、互いに独立して、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、Rは、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;または炭素数3~20のヘテロ環基であり、前記化学式1b中、R10は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R11およびR12は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;または炭素数3~20のヘテロ環基であってもよい。
【0063】
より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1~化学式1-3で表される化合物であってもよい。
【0064】
【化4】
【0065】
【化5】
【0066】
【化6】
【0067】
また、前記有機金属化合物は、有機アルカリ金属化合物であってもよく、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、および有機セシウム化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0068】
具体的に、前記有機金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-デシルリチウム、tert-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、および4-シクロペンチルリチウムの中から選択された1種以上であってもよい。
【0069】
また、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、分子中にアルコキシ基を6個以上含む化合物であってもよく、具体的には、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、分子中にアルコキシ基を6個以上12個以下、より具体的には、6個以上9個以下で含む化合物であってもよく、例示的に、下記化学式2~化学式4で表される化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0070】
【化7】
【0071】
前記化学式2中、
2aおよびR2dは、互いに独立して、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0072】
2bおよびR2cは、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロアルキニル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0073】
2eは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアリル基、炭素数1~10のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、炭素数2~10のヘテロ環基、または-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dであり、
【0074】
ここで、R2fは、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0075】
2gおよびR2hは、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロアルキニル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0076】
dは1~3の整数であり、
aは1~3の整数であり、bは0または1であり、cは2または3であり、
この際、bが0である場合およびbが1である際に、R2eが-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dではない場合、a+cは5または6であり、
bが1である際に、R2eが-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dである場合、a+cは4または5であり、
【0077】
【化8】
【0078】
前記化学式3中、
b2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
b12~Rb14は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
、m、m、およびmは、互いに独立して、1~3の整数であり、
【0079】
【化9】
【0080】
前記化学式4中、
h1およびRh2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基であり、
h3は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Aは、-N[Si(Rh4h5h6)]であり、ここで、Rh4~Rh6は、炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0081】
具体的に、前記化学式2中、R2aおよびR2dは、互いに独立して、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、R2bおよびR2cは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヘテロアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であり、R2eは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアリル基、炭素数1~10のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、炭素数2~10のヘテロ環基、または-N-[R2f-Si(OR2g(R2h3-dであり、R2fは、単結合、または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R2gおよびR2hは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヘテロアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であってもよい。
【0082】
より具体的な例として、前記化学式2で表される化合物は、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(N-(3-(1H-1,2,4-triazole-1-yl)propyl)-3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)、3-(トリメトキシシリル)-N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(3-(1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)-N-(3-(1-(3-(trimehtoxysilyl)propyl)-1H-1,2,4-triazol-3-yl)propyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、およびN,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン(N,N,N,N-tetrakis(3-(trimethoxysilyl)propyl)propane-1,3-diamine)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0083】
また、前記化学式3で表される化合物は、3,3’-(ピペラジン-1,4-ジイル)ビス(N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3,3’-piperazine-1,4-diyl)bis(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)であってもよい。
【0084】
また、前記化学式4で表される化合物は、3-(2,2-ジメトキシ-1,2-アザシロリジン-1-イル)-N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(2,2-dimethoxy-1,2-azasilolidin-1-yl)-N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)であってもよい。
【0085】
また、前記アミノエポキシ系変性剤は、分子中に重合体の変性官能基を4個以下で含む化合物であって、ここで、重合体の変性官能基は、エポキシ基、またはエポキシ基およびアルコキシ基であってもよい。具体的に、前記アミノエポキシ系変性剤は、分子中に重合体の変性官能基を1個以上4個以下で含む化合物であってもよく、例示的には、下記化学式5~化学式7で表される化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0086】
【化10】
【0087】
前記化学式5中、
3aおよびR3bは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
3c~R3fは、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-R3g3hであり、この際、R3c~R3fのうち少なくとも1つは、-R3g3hであり、ここで、R3gは、単結合、またはヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、R3hは、炭素数1~10のアルコキシシリル基またはエポキシ基であり、
【0088】
【化11】
【0089】
前記化学式6中、
d1~Rd3は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Rd4d5であり、この際、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、
【0090】
【化12】
【0091】
前記化学式7中、
g1~Rg4は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、または-Rg5ORg6であり、この際、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5ORg6であり、ここで、Rg5は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数3~10のエポキシアルキル基であり、
Yは、CまたはNであり、この際、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【0092】
具体的に、前記化学式5中、R3aおよびR3bは、互いに独立して、炭素数1~6のアルキレン基であり、R3c~R3fは、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基または-R3g3hであり、この際、R3c~R3fのうち少なくとも1つは、-R3g3hであり、ここで、R3gは、単結合、または炭素数1~6のアルキレン基であり、R3hは、エポキシ基であってもよい。
【0093】
より具体的に、前記化学式5で表される化合物は、下記化学式5-1で表される化合物であってもよい。
【0094】
【化13】
【0095】
前記化学式6中、Rd1~Rd3は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基または-Rd4d5であり、この際、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~6のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、前記ヘテロ原子は、O(酸素原子)であってもよい。
【0096】
さらに具体的に、前記化学式6で表される化合物は、下記化学式6-1で表される化合物であってもよい。
【0097】
【化14】
【0098】
また、前記化学式7中、Rg1~Rg4は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または-Rg5g6であり、この際、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5g6であり、ここで、Rg5は、ヘテロ原子を含むかもしくは含まない炭素数1~6のアルキレン基であり、Rg6は、エポキシ基であり、ここで、前記ヘテロ原子は、Oであってもよい。
【0099】
さらに具体的に、前記化学式7で表される化合物は、下記化学式7-1~化学式7-4で表される化合物の中から選択されてもよい。
【0100】
【化15】
【0101】
【化16】
【0102】
【化17】
【0103】
【化18】
【0104】
また、前記変性共役ジエン系共重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)により測定された重量平均分子量(Mw)が1,000,000g/mol~3,000,000g/molであってもよく、具体的には、1,200,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。この範囲内にて、走行抵抗性および耐摩耗性に優れるという効果がある。
【0105】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD;Mw/Mn)が1.0以上2.0以下、具体的には、1.5以上2.0以下であってもよい。この範囲内にて、引張特性および粘弾性特性に優れ、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0106】
一方、前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が500,000g/mol~3,000,000g/mol、または600,000g/mol~1、300,000g/molであってもよい。
【0107】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線がユニモーダル(unimodal)形態を有してもよく、前記ユニモーダルの曲線形態は、連続式重合の方法的な側面と、変性剤またはカップリング剤により行われる変性反応の側面により決定されてもよい。
【0108】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ガラス転移温度が-40℃以下であることを満たし、具体的には、-70℃以上-40℃以下、または-60℃以上-40℃以下であってもよい。前記ガラス転移温度は、前記共単量体である芳香族ビニル系単量体の含量に依存的に変化してもよいが、この共単量体の含量1つによってのみ決定されるものではなく、重合方法および条件に応じて流動的であってもよい。すなわち、前記範囲を満たすように製造された変性共役ジエン系重合体は、配合時にシリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との親和力に優れるため耐摩耗性が向上することができ、前記範囲内にてそれを含むゴム組成物の転がり抵抗性および耐摩耗性がバランスよく優れることができる。
【0109】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、Siの含量およびNの含量がそれぞれ重合体の全体重量を基準として70ppm以上であることを満たし、具体的には、70ppm~10,000ppm、または100ppm~5,000ppmであってもよい。この範囲内にて変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れるという効果がある。前記Siの含量およびNの含量は、それぞれ前記変性共役ジエン系重合体中に存在するSi原子およびN原子の含量を意味し得る。一方、前記Si原子は、変性剤由来の官能基に由来してもよく、N原子は、変性開始剤および変性剤由来の官能基に由来してもよい。
【0110】
ここで、前記Siの含量およびNの含量は、変性反応において、変性剤によりカップリングがどの程度起こるかに応じて影響を受けることができ、製造時に投入する変性剤量、極性添加剤量、反応時間、変性剤と活性重合体の混合時間および混合程度などに応じて制御されることができる。
【0111】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、カップリング数が2.5超過5.0未満であることを満たし、具体的には、2.8以上5.0未満、または3.0以上4.5以下であってもよい。この範囲内にて、Siの含量およびNの含量、そして重量平均分子量を前述したように容易に調節することができる。
【0112】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ASTM D1646条件で測定したムーニー粘度(Mooney viscosity)が90以上であることを満たし、具体的には、95以上125以下であることであってもよい。この範囲内にて、加工性に相当に優れることができる。
【0113】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されるムーニー応力緩和率(-S/R)が0.40以下であることを満たす。前記ムーニー応力緩和率は、当該変性共役ジエン系重合体の分岐度および分子量の指標となることができ、具体的には、前記ムーニー応力緩和率は、0.35以下であってもよい。また、ムーニー応力緩和率は低いほど、分岐度が高く、分子量が大きいことを意味し、これに下限が特に限定されないが、0.1以上であってもよい。
【0114】
前記100℃で測定されるムーニー応力緩和率は、前述したようにその変性共役ジエン系重合体の分岐度および分子量の指標となることができ、前記ムーニー応力緩和率が減少するにつれて、変性共役ジエン系重合体の分岐度および分子量が増加する傾向がある。ただし、一般的に、前記ムーニー応力緩和率は、前述したムーニー粘度と関わり得るが、重合体の分岐度に応じては、同等なレベルのムーニー粘度を有するとしても、ムーニー応力緩和率は全く異なり得るし、例えば、変性共役ジエン系重合体は、分岐が多いほど、ムーニー応力緩和率が小さくなるため、同等なムーニー粘度であっても、分岐差により、ムーニー応力緩和率は同一ではないこともある。
【0115】
一方、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、前述したムーニー粘度において前述したムーニー応力緩和率を満たすことで、加工性に優れながらも、分岐度が調節され、引張強度などの機械的物性にさらに優れることができる。
【0116】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、重合体の総重量に対して1,2-ビニル結合含量が30重量%を満たしてもよく、前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる共役ジエン系共重合体に対して、1,4-添加ではなく、1,2-添加された共役ジエン系単量体の重量%を意味し得、重合時、重合反応が終了する時点および重合反応が終了する時点の反応環境などに応じて影響を受け得る。
【0117】
具体的に、前記1,2-ビニル結合含量は、5~30重量%であってもよく、好ましくは、10~25重量%であってもよい。この1,2-ビニル結合含量に応じて耐摩耗性および転がり抵抗性に影響を与え得、1,2-ビニル結合含量が30重量%を超過する場合には、それとともにガラス転移温度が影響を受け得る。そこで、転がり抵抗性およびウェットスキッド抵抗性が劣悪になる恐れがあるため、変性共役ジエン系重合体を製造する際に、1,2-ビニル結合含量が前記範囲を満たすことができるように反応条件に留意する必要がある。
【0118】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
前記製造方法は、炭化水素溶媒中で、窒素含有変性開始剤の存在下、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記活性重合体とアミノアルコキシシラン系変性剤を反応させる第1変性反応ステップ(S2)と、第1変性反応後にアミノエポキシ系変性剤と反応させる第2変性反応ステップ(S3)と、を含むことを特徴とする。
【0119】
以下、製造された変性共役ジエン系重合体と、反応に用いられるアミン含有変性開始剤、単量体、アミノアルコキシシラン系変性剤、およびアミノエポキシ系変性剤に関する特徴は前述したものと重複するため、その記載は省略する。
【0120】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0121】
本発明の一実施形態によると、前記窒素含有変性開始剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。
【0122】
前記(S1)ステップの重合は、一例として、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップの重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、開始剤を投入した後に任意に熱を加えず、それ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記開始剤を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記開始剤を投入した後に熱を加えることで熱を増加させるかまたは熱を奪うことで重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0123】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合は、前記共役ジエン系単量体の他に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで行われてもよく、この場合、長時間運転時に反応器の壁面にゲルが形成されるのを防止するという効果がある。前記ジエン系化合物は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。
【0124】
前記(S1)ステップの重合は、一例として、100℃以下、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度範囲で行われてもよい。この範囲内にて、重合反応の転換率を高めることができ、重合体の分子量分布を調節しつつ重量平均分子量を満たすようにすることができるため、物性の改善に優れるという効果がある。
前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
【0125】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合により製造される活性重合体は、ランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れるという効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0126】
一方、前記(S1)ステップの重合は、極性添加剤を含んで行われてもよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gを基準として0.001g~50g、または0.002g~0.1gの割合で添加してもよい。また他の例として、前記極性添加剤は、有機金属化合物の総100gを基準として0g超過~1g、0.01g~1g、または0.1g~0.9gの割合で添加してもよい。上記の範囲で極性添加剤を投与する場合には、前述した範囲のガラス転移温度、ムーニー粘度、および1,2-ビニル結合含量を満たすようにすることができる。
【0127】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、tert-ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、トリエチルアミンまたはテトラメチルエチレンジアミンであってもよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合にこれらの反応速度を補うことで、ランダム共重合体を容易に形成できるように誘導するという効果がある。
【0128】
また、前記(S2)ステップは、活性重合体とアミノアルコキシシラン系変性剤を反応させて活性重合体を一次的に変性させて第1重合体鎖を形成させるための第1変性反応ステップであって、前記活性重合体とアミノアルコキシシラン系変性剤を反応させて行ってもよい。
また、前記第1変性反応ステップは、前記活性重合体の総重量の10重量%~90重量%が変性されるように行ってもよい。
【0129】
ここで、前記活性重合体の変性程度は、活性重合体に対するアミノアルコキシシラン系変性剤の割合、および一次変性反応時の温度および反応時間に応じて調節されてもよく、具体的には、前記アミノアルコキシシラン系変性剤を活性重合体の総100gを基準として0.05mmol~0.20mmol、または0.10mmol~0.15mmolで用いることで、一次変性反応により活性重合体の10重量%~90重量%が変性されることができる。
【0130】
また、前記(S3)ステップは、前記第1変性反応により変性されていない未変性の活性重合体をアミノエポキシ系変性剤と反応させて第2重合体鎖を形成させるための第2変性反応ステップであって、前記一次変性された活性重合体とアミノエポキシ系変性剤を反応させて行ってもよく、この際、アミノエポキシ系変性剤は、前記アミノアルコキシ系変性剤とアミノエポキシ系変性剤が8:2~5:5の重量比を有するように用いてもよい。
【0131】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、官能基数が相対的に多い変性剤で第1変性反応し、官能基数が相対的に少ない変性剤で第2変性反応するステップを含むことで、分岐度が高い第1重合体鎖および相対的に分岐度が低い第2重合体鎖を同時に含む変性共役ジエン系重合体を製造することができる。前記重合体は、第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、機械的物性に優れるとともに加工性に優れるという効果がある。
【0132】
本発明によると、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物が提供される。
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内にて、引張強度、耐摩耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0133】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0134】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの合成ゴムであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0135】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であってもよく、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ(wet grip)性の両立効果に最も優れた湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含んでもよい。
【0136】
また他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性の改善のためのシランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0137】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合よりも低減されてもよく、これにより、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内にて、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化を防止するという効果がある。
【0138】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴム組成物の必要な弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れるという効果がある。
【0139】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0140】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が用いられてもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0141】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐摩耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が用いられてもよい。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止するという効果がある。
【0142】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0143】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得ることができ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性であるとともに耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0144】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0145】
さらに、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0146】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0147】
実施例1
3器の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を2.58kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を12.68kg/h、n-ヘキサン46.94kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2-ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を50.0g/h、n-ヘキサンに変性開始剤として1-メチル-4-(4-ビニルベンジル)ピペラジン(1-methyl-4-(4-vinylbenzyl)piperazine)が10重量%で溶解された開始剤溶液を50.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は60℃となるように維持し、重合転換率が45%となった際に、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器に重合物を移送した。
【0148】
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を1.41g/hの速度で注入し、第2反応器の温度は70℃となるように維持し、重合を進行し続け、重合転換率が95%以上となった際に、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器に重合物を移送した。
【0149】
前記第2反応器から第3反応器に重合物を移送する際に、移送部に、第1変性剤としてn-ヘキサンにN,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン(N,N,N,N-tetrakis(3-(trimethoxysilyl)propyl)propane-1,3-diamine)が10重量%で溶解された第1変性剤溶液を135.0g/hの速度で投入して反応させ、その後、第3反応器に、n-ヘキサン溶液に第2変性剤として1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(1,3,5-tris(oxiran-2-ylmethyl)-1,3,5-triazinane-2,4,6-trione)が5重量%で溶解された第2変性剤溶液を56.1g/hで投入した。第3反応器の温度は、75℃となるように維持した。
【0150】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌して溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0151】
実施例2
実施例1において、変性開始剤として、1-メチル-4-(4-ビニルベンジル)ピペラジンの代わりに、n-ヘキサンに1-フェニル-4-(4-ビニルベンジル)ピペラジン(1-phenyl-4-(4-vinylbenzyl)piperazine)が10重量%で溶解された開始剤溶液を60g/hの速度で注入したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0152】
実施例3
実施例1において、第1変性剤として、N,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミンの代わりに、n-ヘキサンに3-(2,2-ジメトキシ-1,2-アザシロリジン-1-イル)-N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(2,2-dimethoxy-1,2-azasilolidin-1-yl)-N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)が10重量%で溶解された第1変性剤溶液を99.8g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0153】
実施例4
実施例1において、第1変性剤として、N,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-アミンの代わりに、n-ヘキサンに3,3’-(ピペラジン-1,4-ジイル)ビス(N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3,3’-piperazine-1,4-diyl)bis(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)が10重量%で溶解された第1変性剤溶液を187.5g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0154】
実施例5
実施例1において、第2変性剤として、1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンの代わりに、n-ヘキサンにN,N’-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(1-(オキシラン-2-イル)-N-(オキシラン-2-イルメチル)メタンアミン)(N,N’-(1,3-phenylenebis(methylene))bis(1-(oxiran-2-yl)-N-(oxiran-2-ylmethyl)methanamine))が5重量%で溶解された第2変性剤溶液を67.5g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0155】
実施例6
実施例1において、第2変性剤で1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンの代わりに、n-ヘキサンに2-(オキシラン-2-イル)-N,N-ビス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)エタンアミン(2-(oxiran-2-yl)-N,N-bis((oxiran-2-ylmethoxy)methyl)ethanamine)が5重量%で溶解された第2変性剤溶液を54g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0156】
比較例1
実施例1において、第2変性剤溶液を投入していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0157】
比較例2
実施例1において、第1変性剤溶液を投入していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0158】
比較例3
実施例1において、第1変性剤溶液および第2変性剤溶液として、それぞれn-ヘキサンにN,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミンが10重量%で溶解された溶液を56.1g/hの速度で投入したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0159】
比較例4
実施例1において、第1変性剤溶液および第2変性剤溶液として、それぞれn-ヘキサンに1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンが5重量%で溶解された溶液を67.8g/hの速度で投入したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0160】
比較例5
実施例1において、第1変性剤として、N,N,N,N-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-アミンの代わりに、n-ヘキサンにN,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)が10重量%で溶解された第1変性剤溶液を105.0g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0161】
比較例6
実施例1において、第2変性剤として、1,3,5-トリス(オキシラン-2-イルメチル)-1,3.5-トリアジナン-2,4,6-トリオンの代わりに、n-ヘキサンにN,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propyl-1-amine)が10重量%で溶解された第2変性剤溶液を105g/hの速度で投入して反応させたことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0162】
実験例1
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体に対して、重量平均分子量(Mw、×10g/mol)、数平均分子量(Mn、×10g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、ムーニー粘度(MV)、カップリング数、およびムーニー応力緩和率をそれぞれ測定し、それを下記表1に示した。
【0163】
1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(PDI)
前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、GPC(Gel permeation chromatography)分析により測定し、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて用い、分子量の計算時、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を用いて行った。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を混ぜて製造した。
【0164】
2)ムーニー粘度(MV)およびムーニー応力緩和率(-S/R)
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0165】
また、ムーニー応力緩和率は、ムーニー粘度の測定後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定し、その絶対値から得た。
【0166】
【表1】
【0167】
前記表1に示されたように、実施例1~6は、高分子量を有しながらも、分子量分布が狭く、比較例1~6に比べて中間程度に調節されたムーニー応力緩和率(分岐度)を示すことを確認した。
【0168】
実験例2
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品の物性を比較分析するために、加工性特性および耐摩耗性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0169】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとして下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0170】
【表2】
【0171】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練においては、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練においては、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に一次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して二次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0172】
2)加工性特性
前記1)ゴム組成物の製造時に得られた二次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。下記表3における結果値は、比較例1の測定結果値を基準とした指数値であり、低いほど優れることを示す。
【0173】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用い、各二次配合物は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0174】
3)耐摩耗性(DIN摩耗試験)
各ゴム試験片に対して、ASTM D5963に準じてDIN摩耗試験を進行し、DIN loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。下記表3における結果値は、比較例1の測定結果値を基準とした指数値であり、高いほど優れることを示す。
【0175】
4)転がり抵抗性
粘弾性特性は、動的機械分析器(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。この際、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、転がり抵抗性(燃費性)に優れることを示す。一方、下記表3における結果値は、比較例1の測定結果値を基準として指数化して示した。
【0176】
【表3】
【0177】
前記表3に示されたように、実施例1~6は、比較例1~6に比べて、転がり抵抗性、加工性、および耐摩耗性にバランスよく優れることを確認した。
【0178】
具体的に、実施例1~実施例6は、何れも同等レベルで加工性、耐摩耗性、および転がり抵抗性に均一に優れた特性を示したのに対し、比較例1、3、および6の場合は、実施例1~6に比べて、加工性が10%以上大きく低下し、比較例2、4および5は、実施例1~6に比べて、転がり抵抗性および耐摩耗性の何れも10%以上顕著に低下した。この際、比較例1~6は、アミノアルコキシシラン系変性剤またはアミノエポキシ系変性剤を用いた変性反応を行わないか、または前記2つの変性剤との変性反応を行うが、この際、前記アミノアルコキシシラン系変性剤が分子中にアルコキシ基を6個未満で含む化合物を用いて変性反応を行って製造された重合体である。
【0179】
前記結果から、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、それぞれ充填剤親和性官能基を含むとともに、活性重合体との反応活性を有する官能基数が異なる異種の変性剤を用いて製造され、互いに分岐度が異なる第1重合体鎖および第2重合体鎖を含むことで、高分子量を有しながらも、分子量分布および分岐度が調節され、機械的特性、加工性、および転がり抵抗性にバランスよく優れるという効果があることを確認することができる(表1および表3参照)。