(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240219BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
(21)【出願番号】P 2022552364
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030735
(87)【国際公開番号】W WO2023026317
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 功
(72)【発明者】
【氏名】落合 亮輔
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077862(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100357(WO,A1)
【文献】特開2020-109838(JP,A)
【文献】特開2010-103465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、
プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、
前記試料が載置される試料台と、
高周波電力を前記試料台に供給する第二の高周波電源と、
電圧を前記試料台に印加する電源と、
前記電源を制御する制御装置とを備え、
前記電圧の波形の一周期は、前記電圧が立ち上がる立上り期間と前記電圧が立ち下がる立下り期間と前記試料の荷電粒子を単位時間に除去する量を制御する除去量制御期間を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記除去量制御期間の前記電圧は、概ね無変化であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記除去量制御期間は、前記立上り期間の後の期間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記除去量制御期間は、前記立下り期間の後の期間であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台は、載置された前記試料を静電吸着させるための第一の電極と、前記第一の電極と異なる第二の電極と、を具備し、
前記第二の高周波電源からの高周波電圧と前記電圧が前記第二の電極に印加されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台は、載置された前記試料を静電吸着させるための第一の電極と、前記第一の電極と異なる第二の電極と、を具備し、
前記第二の高周波電源からの高周波電圧と前記電圧が前記第一の電極に印加されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台は、載置された前記試料を静電吸着させるための第一の電極と、前記第一の電極と異なる第二の電極と、を具備し、
前記第二の高周波電源からの高周波電圧が前記第二の電極に印加され、
前記電圧が前記第一の電極に印加されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料台は、載置された前記試料を静電吸着させるための第一の電極と、前記第一の電極と異なる第二の電極と、を具備し、
前記電源により電圧が前記第一の電極に印加されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
所望の電圧波形の振幅をa倍した値を前記立上り期間の振幅または前記立下り期間の振幅とする場合、前記除去量制御期間の時間は、前記立上り期間の時間と前記立下り期間の時間の和に前記aから1を減じた値を乗じた値の時間であり、
前記所望の電圧波形は、前記除去量制御期間を有しない電圧波形の場合における前記荷電粒子を除去するための所望の電圧波形であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
所望の電圧波形の振幅をa倍した値を前記立上り期間の振幅または前記立下り期間の振幅とする場合、前記除去量制御期間の時間は、前記立上り期間の時間と前記立下り期間の時間の和に前記aから1を減じた値を乗じた値の時間であり、
前記所望の電圧波形は、前記除去量制御期間を有しない電圧波形の場合における前記荷電粒子を除去するための所望の電圧波形であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項11】
第一の高周波電力により生成されたプラズマを用いて試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、
前記試料が載置され
電圧が印加された試料台に第二の高周波電力を供給しながら、前記プラズマを用いて前記試料をプラズマ処理する工程を有し、
前記電圧の波形の一周期は、前記電圧が立ち上がる立上り期間と前記電圧が立ち下がる立下り期間と前記試料の荷電粒子を単位時間に除去する量を制御する除去量制御期間を有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載のプラズマ処理方法において、
前記除去量制御期間の前記電圧は、概ね無変化であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項13】
請求項11に記載のプラズマ処理方法において、
所望の電圧波形の振幅をa倍した値を前記立上り期間の振幅または前記立下り期間の振幅とする場合、前記除去量制御期間の時間は、前記立上り期間の時間と前記立下り期間の時間の和に前記aから1を減じた値を乗じた値の時間であり、
前記所望の電圧波形は、前記除去量制御期間を有しない電圧波形の場合における前記荷電粒子を除去するための所望の電圧波形であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項14】
請求項12に記載のプラズマ処理方法において、
所望の電圧波形の振幅をa倍した値を前記立上り期間の振幅または前記立下り期間の振幅とする場合、前記除去量制御期間の時間は、前記立上り期間の時間と前記立下り期間の時間の和に前記aから1を減じた値を乗じた値の時間であり、
前記所望の電圧波形は、前記除去量制御期間を有しない電圧波形の場合における前記荷電粒子を除去するための所望の電圧波形であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程は主に成膜・リソグラフィ・エッチングに分かれる。成膜工程では、作製する構造物の材料の膜がウェハ上に形成される。代表的な成膜方法には化学気相成長法がある。リソグラフィ工程では、成膜した材料上に塗布したレジストの一部に対し、露光装置により紫外線を照射する。紫外線が照射される場所は形成するパターンに応じて決定される。続いて現像を行うことで一部のレジストが除去され、成膜した材料が露出する場所が現れる。エッチング工程では、この露出した材料を除去することで目的の構造物を作製する。この工程ではプラズマエッチング処理装置が用いられる。これは、装置内部に形成したプラズマを露出した材料と反応させることでその材料を除去する装置である。これらの工程を繰り返すことで集積回路が完成する。
【0003】
プラズマエッチング処理装置は、上述のように半導体デバイスの主要製造工程の一翼を担う重要なものである。ここではその詳細な動作を説明する。プラズマエッチング処理装置には所定の真空度まで減圧された処理室があり、処理室内部にはガスが供給されている。ガスは処理室内部に形成された電場によりプラズマとなる。プラズマには反応性の高いイオンやラジカルが含まれており、これらが処理対象物であるウェハ表面と物理的・化学的に反応することでエッチングが進行する。
【0004】
プラズマエッチング処理装置では、イオンとウェハ表面の反応を制御するため、プラズマ発生用の高周波電圧とは別に、ウェハの載置台に高周波電圧を印加することが一般的である。載置台に高周波電圧を印加すると、ウェハ電圧の時間平均は負となる。これは自己バイアスと呼ばれるもので、2つの要因により生じる。1つは、高周波電源と載置台の間に存在するキャパシタが直流電流を遮断していること、もう1つは、プラズマと載置台の間に生じるシースに整流作用があることである。自己バイアスはプラズマ中の正イオンを加速するため、エッチングを促進する。加えて、正イオンの軌道がウェハに対して垂直になるため、材料にトレンチ構造を形成する異方性エッチングが実現できる。
【0005】
異方性エッチングでは、トレンチの側壁がウェハ表面に対して垂直であることが理想である。しかし、半導体デバイスの微細化によりトレンチのアスペクト比が高くなるにつれ、側壁の垂直性を悪化させる電子シェーディング効果が生じるようになった。すなわち、正イオンがトレンチに垂直に入射するのに対し、電子はトレンチに等方的に入射する。そのため、トレンチの側壁は負に帯電し、また底部は正に帯電する。結果、正イオンが側壁に入射するようになり、側壁がエッチングされてしまうのである。
【0006】
電子シェーディング効果によるダメージを抑制する技術には、特許文献1に開示されるように、プラズマ処理中に自己バイアス用高周波電圧に低周波の直線三角波電圧もしくは曲線三角波電圧を重畳することでウェハ表面の荷電粒子を除去する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェハの表面がレジストなどの誘電体によるパターンで覆われた状態においてウェハ表面に蓄積した電荷は誘電体の表面を移動しづらい。これに対して特許文献1においては、電荷を効果的に除去するために、プラズマを発生させた状態で、ウェハを載置する載置台に三角波電圧を印加する構成が開示されている。このような構成において、ウェハ表面に蓄積した電荷の移動度を上げてウェハ表面の帯電を解消させるためには、載置台に印加する三角波電圧の振幅を大きくしてウェハ内部に生じる電場を大きくする必要がある。
【0009】
一方で、三角波電圧の振幅を大きくすることで高周波電源と載置台の間のキャパシタに蓄えられる電荷も増加する。ウェハ表面に形成されたトレンチ内に荷電粒子が存在するうちは、それらの粒子がキャパシタに蓄えられる電荷の増加分となる。しかし荷電粒子が完全に除去されると、ウェハ内の他の原子から電荷が奪われキャパシタに蓄えられるようになる。結果、ウェハが帯電してしまい、エッチングに悪影響を及ぼすことになる。
【0010】
本願発明は、かかる先行技術の課題に鑑みてなされたものであり、ウェハ表面から除去される電荷量は維持しつつ、除去を効率的に行うことで、高精度なプラズマ処理を行えるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、試料が載置される試料台と、高周波電力を試料台に供給する第二の高周波電源と、電圧を試料台に印加する電源と、電源を制御する制御装置とを備えたプラズマ処理装置において、電圧の波形の一周期は、電圧が立ち上がる立上り期間と電圧が立ち下がる立下り期間と試料の荷電粒子を単位時間に除去する量を制御する除去量制御期間を有するように構成した。
【0012】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、第一の高周波電力により生成されたプラズマを用いて試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、前記試料が載置され電圧が印加された試料台に第二の高周波電力を供給しながら、前記プラズマを用いて前記試料をプラズマ処理する工程を有し、電圧の波形の一周期は、電圧が立ち上がる立上り期間と電圧が立ち下がる立下り期間と試料の荷電粒子を単位時間に除去する量を制御する除去量制御期間を有するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェハ表面から除去される電荷量は維持しつつ、除去を効率的に行うことができる。その結果、高精度なプラズマ処理を行えるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例にかかるプラズマ処理装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例にかかる電極151の断面及びバイアス電圧発生部152の詳細を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示した実施例にかかるプラズマ処理装置100の電気的な等価回路を表す回路ブロック図である。
【
図4】実施例にかかるプラズマ処理装置100の直流電源203が出力する電圧波形を示す電圧波形図である。
【
図5】実施例にかかるプラズマ処理装置100において、ウェハ161上の誘電体膜161b内部に生じる電場の強度を示す波形図である。
【
図6】実施例にかかるプラズマ処理装置100において、ウェハ161に流れる電流を示す電流波形図である。
【
図7】実施例にかかるプラズマ処理装置100において直流電源203が出力する電圧波形の変形例を示す電圧波形図である。
【
図8】実施例にかかる直流電源203が出力する電圧波形の変形例を示す電圧波形図である。
【
図9】本発明の変形例1にかかる、電極151の断面、バイアス電圧発生部152および静電吸着用電源155の詳細を示すブロック図である。
【
図10】本発明の変形例2にかかる、電極151の断面、バイアス電圧発生部152-1および静電吸着用電源155の詳細を示すブロック図である。
【
図11】本発明の変形例2に係る静電吸着用電源155の出力電圧波形を示す電圧波形図である。
【
図12】本発明の変形例3に係る電極151の断面、バイアス電圧発生部152-1および静電吸着用電源155の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
プラズマ処理装置を用いてエッチング処理の異方性をより高めダメージをより抑制するには、エッチング中に荷電粒子からの影響を受ける時間を最小限に抑えなければならない。そのためには、ウェハ表面の荷電粒子の移動速度を上げ、速やかに表面から除去しなければならない。一方で、荷電粒子の時間当たりの除去量は最適値に保たなければならない。
【0016】
本発明では、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に維持しつつ荷電粒子の移動速度を上げるために、プラズマ処理装置の載置台に接続された直流電源は制御機構からの信号に基づき、出力電圧が上昇のみ、もしくは下降のみ、または上昇と下降が1回ずつ行われる第1のフェーズと、電圧が一定に維持される第2のフェーズとを交互に繰り返すようにした。
【0017】
ここで、第1のフェーズ開始時の出力電圧は第2のフェーズ終了時の出力電圧であり、また第2のフェーズ開始時の出力電圧は第1のフェーズの終了時の出力電圧であり、第2のフェーズの期間は、従来技術の最適な振幅に対して振幅をa倍にしたときには、直前の第1のフェーズの期間の(a-1)倍であり、第1のフェーズの出力電圧の上昇は1 ms以上継続し、また出力電圧の下降も1 ms以上継続させるようにすることで荷電粒子の時間当たりの除去量は最適値に保つようにした。
【0018】
上記したプラズマ処理を実現するために、本発明においては、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する第一の高周波電源と、試料が載置される試料台と、試料台に高周波電力を供給する第二の高周波電源と、周期的に繰り返される波形により変化させた電圧を試料台に印加する直流電源を備えるプラズマ処理装置において、試料台に印加する周期的に繰り返される電圧波形に、時間によって電圧が変化する領域と、時間によらず電圧が一定の領域を含ませることにより、ウェハ表面から除去される電荷量は維持しつつ、電荷の除去を効率的に行えるようにした。
【0019】
すなわち、本発明では、プラズマを発生させて試料台に載置された試料を加工処理するプラズマ処理装置において、プラズマを発生させている状態で、出力電圧が変化する期間と出力電圧が変化しない期間を有する電圧波形により出力された電圧を高周波電圧に重畳させながら試料が載置される試料台に印加してプラズマ処理を行うようにプラズマ処理装置を構成し、プラズマ処理を行うようにしたものである。
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0021】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例】
【0022】
以下、
図1から
図8を用いて、本願発明にかかるプラズマ処理装置の実施例を説明する。
図1は、本実施例にかかるプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示すものである。
【0023】
図1に示す本実施例にかかるプラズマ処理装置100は、その一例であるマイクロ波ECRプラズマエッチング装置である。本図では、プラズマ処理装置100に備わる真空処理室101について、その内部に配置された電極、並びに外部に配置された電場および磁場の発生装置等が模式的に示されている。
【0024】
真空処理室101は、周囲と電気的に絶縁した容器102の上部を誘電体窓103により気密封止した構造を持つ。誘電体窓103の直下には、複数の細孔104を備えた誘電体のシャワープレート105が配置される。誘電体窓103およびシャワープレート105の間の空間106には、ガス配管107を通じて、ガス供給機構108が接続される。空間106と真空処理室101は、細孔104を通じて連通している。
【0025】
真空処理室101の下部には、可変コンダクタンスバルブ109を通じてターボ分子ポンプ110が接続される。さらに、ターボ分子ポンプ110には粗引きポンプ111が接続される。真空処理室101内部のガスは、このターボ分子ポンプ110により排気される。ターボ分子ポンプ110と真空処理室101は共に略円筒形で、両者の軸は同一である。そのため、排気のガス流れは軸対称となり、プラズマ処理は軸に対して均一になる。真空処理室101内部の圧力は、可変コンダクタンスバルブ109の開度を調整することにより、所望の値となるよう制御される。この制御には、真空処理室101に接続された圧力計112の値に基づくフィードバック制御が用いられる。
【0026】
真空処理室101の上方にはマイクロ波電源121が設置されており、マイクロ波伝搬経路、すなわち順に自動整合器122、方形導波管123、方形円形導波管変換器124、円形導波管125を通じて、空洞共振器126に接続される。空洞共振器126は誘電体窓103の上部に設置される。なお、自動整合器122は、反射波を抑制するよう、インピーダンスを自動的に調整する役割を持つ。マイクロ波電源121から出力されたマイクロ波は、前記の経路を通じて空洞共振器126に伝搬する。空洞共振器126は、マイクロ波の分布をプラズマ処理に適したものに調整する。分布が調整されたマイクロ波は、さらに誘電体窓103およびシャワープレート105を通じて、真空処理室101に伝搬する。なお、マイクロ波の典型的な周波数は2.45GHzである。
【0027】
ソレノイドコイル131・132・133は全て、真空処理室101および空洞共振器126を環状に囲うように配置される。コイル電源134はソレノイドコイル131・132・133に電流を流し、真空処理室101内部に磁場を形成する。
【0028】
真空処理室101内部の電場の周波数および磁場の強さが特定の関係を満たす領域では、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)が発生する。この領域をECR領域といい、例えば、2.45GHzの電場に対しては、磁場の強さが0.0875Tとなる領域である。ECR領域にある電子は、電場から効率的にエネルギーを受け取り、周囲のガスの解離・電離を促進する。その結果、ECR領域でプラズマ141が発生し、真空処理室101内部に拡散する。
【0029】
ECR領域の位置は、真空処理室101内部の磁場分布により制御可能である。また、プラズマ中の荷電粒子は磁力線に沿って移動するため、荷電粒子の拡散も真空処理室101内部の磁場分布により制御可能である。一方、真空処理室101内部の磁場分布の制御は、ソレノイドコイル131・132・133に流れる電流を各々制御することで実現できる。従って、プラズマ処理装置100は、プラズマ処理の均一性を向上することが可能な構成となっている。
【0030】
真空処理室101内部には、図示していない梁により固定され、内部に電極151が配置された試料台150が配置される。試料台150および真空処理室101は略円筒形であり、両者の中心軸は同一である。そのため、プラズマ処理は軸に対して均一になる。処理対象物であるウェハ(試料)161は、プラズマ処理装置100に備えられたロボットアーム等の搬送装置(図示せず)により、試料台150の上部に搬送される。
【0031】
電極151の上面および側面は、誘電体膜153で覆われる。また、そのうち上面側の誘電体膜153の内部には、試料台150の中心側と外周側に分かれた静電吸着電極154が配置される。さらに、静電吸着電極154には静電吸着用電源155が接続される。静電吸着電極154の中心側と外周側に各々異なった電圧が印加されると、ウェハ161と静電吸着電極154との間に引力が発生する。その結果、ウェハ161は電極151上に保持される。
【0032】
プラズマ141は主に電極151の上方に形成される。また、プラズマ141とウェハ161の間、およびプラズマ141とアース142の間には、それぞれシース143およびシース144が形成される。プラズマ141の中には反応性の高いイオンおよびラジカルが存在しており、シース143を通過して、ウェハ161に到達する。ウェハ161上ではイオンおよびラジカルとウェハ材料が相互作用し、ウェハ161表面の材料がエッチングされる。
【0033】
電極151にはバイアス電圧発生部152が接続される。バイアス電圧発生部152より電極151に高周波電圧が印加されると、誘電体膜153、ウェハ161、シース143,プラズマ141を通じてアース142に至る電気回路が形成される。その結果、ウェハ161にも高周波電圧が発生する。また同時に、ウェハ161には直流の自己バイアス電圧が発生する。これらウェハ161の高周波電圧および自己バイアス電圧は、プラズマ141中の正イオンを、シース143内においてウェハ161に向かって加速させる。そのため、バイアス電圧発生部152を制御することでエッチング作用を制御することが可能である。
【0034】
電極151上部には温度制御膜156が形成されており、温度制御機構157に接続されている。この機構によりウェハ161の温度を制御することで、プラズマ処理形状の制御が可能である。
【0035】
以上の構成は、全て制御部171にある制御用コンピュータに接続されており、適切なシーケンスで動作するよう、そのタイミングおよび動作量が制御されている。動作シーケンスの詳細なパラメータはレシピと呼ばれ、制御はあらかじめ設定されたレシピに基づき行われる。レシピは通常、複数の処理から構成されており、各々の処理はあらかじめ設定された順序および時間で実行される。各々の処理においては、ガス供給機構108から真空処理室101に供給するガス種・ガス流量、マイクロ波電源121の出力電力、ソレノイドコイル131・132・133に流れる電流量、バイアス電圧発生部152より発生するバイアス電圧の態様等の処理条件が設定される。
【0036】
図2は、
図1に示した実施例にかかる試料台150、バイアス電圧発生部152およびウェハ161の詳細を示す模式図である。
【0037】
試料台150の上に載置されたウェハ161は、シリコン基材161aの上に誘電体膜161bが形成された構成となっている。ウェハ161の表面161cは、シース143を通過したプラズマ141中のイオンおよびラジカルに晒されている。
【0038】
バイアス電圧発生部152は、高周波電源201、自動整合器202、直流電源203およびローパスフィルタ204を備えている。高周波電源201は自動整合器202を、直流電源203はローパスフィルタ204を介して、電極151に接続される。高周波電源201、自動整合器202および直流電源203は全て制御部171と接続されており、制御部171からの指令に応じて動作が制御される。
【0039】
高周波電源201の出力周波数は、マイクロ波電源121の出力周波数より低く、かつ、誘電体膜153を介してウェハ161に電圧を伝達できる程度に高い。具体的には、数百kHzから数MHzである。自動整合器202は、高周波電源201の電力が効率的にシース143に伝達されるよう、プラズマ141のインピーダンスに応じて内部素子の回路定数を変化させることでインピーダンスマッチングを行う。
【0040】
図3は、
図1に示した実施例にかかるプラズマ処理装置100の電気的な等価回路を表す。バイアス電圧発生部152からの出力は、電極151に相当する点151’、誘電体膜153に相当するキャパシタンス153’、ウェハ161上の誘電体膜161bを表すキャパシタンス161b’、ウェハ161の表面161cに相当する点161c’、シース143に相当する並列回路143’、プラズマ141に相当する抵抗141’、シース144に相当する並列回路144’を順に伝わり、アース142へと至る。
【0041】
この等価回路では、バイアス電圧発生部152にて発生した電圧Vと、バイアス電圧発生部152からウェハ161を通ってアース142に流れる電流Iの間には、比例定数Aを用いてI=A×dV/dtの関係が概ね成り立つ。すなわち、バイアス電圧発生部152からウェハ161に流れる電流Iは、バイアス電圧発生部152にて発生した電圧Vの微分値に比例する。
【0042】
また、ウェハ161上の誘電体膜161b内部に生じる電場Eは、誘電体膜161bの厚さをdとすれば、比例定数Bを用いて概ねE=BV/dと表される。すなわち、ウェハ161上の誘電体膜161b内部に生じる電場Eは、バイアス電圧発生部152にて発生した電圧Vに比例し、誘電体膜161bの厚さdに反比例する。
【0043】
図4の(a)は、
図1に示した実施例にかかる直流電源203が出力する電圧波形を示す。直流電源203は、制御部171からの指令に従い、グラフ400に示す間欠三角波電圧401を出力する。(a)の間欠三角波電圧401の一周期は、電圧が変化する時間領域402および404と、電圧が一定の時間領域403および405から構成され、これらの時間領域は402、403、404、405の順に現れる。
【0044】
図4の(b)の三角波電圧411は、(a)の間欠三角波電圧401との比較のために示したもので、間欠でない三角波電圧411において、電圧波形の立ち上がりと立下りはいずれも直線で傾きが一定であるために、一定の電流が所定の時間流れることになる。この一定の電流値と所定の時間とを適切に設定することにより、プラズマ141に晒されたウェハ161の表面161cに蓄積した電荷を効率よく除去することができる。
図4の(b)の三角波電圧411は、ウェハ161上の荷電粒子を除去するのに最適な波形の場合を示している。
【0045】
ここで、
図4の(b)の三角波電圧411の振幅をV
0、周期をTとし、一周期のうち電圧が下降する時間の割合を(1-D)とする。Dは0を超え、かつ、1に満たない定数であり、ウェハ161上の誘電体膜161b内部における電子と正イオンの移動度から最適値が定まる。具体的には、ウェハ161上の誘電体膜161b内部における電子の移動度をμ
e、正イオンの移動度をμ
iとすれば、D=μ
i/(μ
e+μ
i)と表される。
【0046】
すなわち、Dは、ウェハ上の誘電体内における電子の移動度と誘電体内におけるイオンの移動度との和によりイオンの移動度を除した値である。このとき
図4の(b)の三角波電圧411で電圧が上昇する時間と下降する時間の比は、(1/μe):(1/μi)となり、これは負電荷の移動に要する時間と正電荷の移動に要する時間の比となる。
【0047】
図4(a)の間欠三角波電圧401の振幅は、1以上の定数aを用いてaV
0と表される。また、時間領域402および404の長さT
1はT/2、時間領域403および405の長さT
2は(a-1)T/2と表される。すなわち間欠三角波電圧401の周期はaTとなる。さらに時間領域402では、間欠三角波電圧701の電圧は最初に0からaV
0までDT
1の時間で上昇し、その後、aV
0から0まで(1-D)T
1の時間で下降する。電圧が上昇する期間と下降する期間の時間比は、D:(1-D)と表される。一方、時間領域404では、電圧が最初に0から-aV
0まで(1-D)T
1の時間で下降し、その後-aV
0から0までDT
1の時間で上昇する。電圧が下降する期間と上昇する期間の時間比は(1-D):Dである。
【0048】
なお、ウェハ161の誘電体膜161bの内部に蓄積した電荷を誘電体膜161bの外部まで移動させて除去するためには、誘電体膜161bにおける電荷(電子および正イオン)の移動度を考慮して、電流Iが継続して流れる時間を、1ms以上確保することが望ましい。すなわち、
図4(a)の波形図において、DT
1および(1-D)T
1は、いずれも1msを下回らないようにしなければならない。すなわち、T
1をミリ秒単位で表すとき、T
1≧2/DかつT
1≧2/(1-D)である。これは、上記したように、誘電体膜161bの表面161cの荷電粒子は移動が遅く、同じ方向の電場を1ms以上継続して発生させなければ除去できないからである。
【0049】
図5は、
図1に示した実施例にかかる、ウェハ161上の誘電体膜161b内部に生じる電場の強度を示す波形のグラフ500である。(a)の波形501が
図4の(a)に示した間欠三角波電圧401を用いた場合を表し、(b)の波形511は
図4の(b)に示した三角波電圧411を用いた場合を表す。
【0050】
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いた場合、
図5の(a)に示すように、電場強度は最大B×aV
0/dとなる。一方、
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合は、
図5の(b)に示すように、最大B×V
0/dとなる。
【0051】
このことから、直流電源203から
図4(a)に示すような間欠三角波電圧401を出力すると、
図4(b)に示すような三角波電圧411を出力したときと比べ、a倍の強度の電場をウェハ161上の誘電体膜161bに発生させることがわかる。誘電体膜161bに生成される電場が強くなると、ウェハ161の表面161cに蓄積された電荷にはより大きな力が働くことになるため、効率的に表面161cの電荷を除去することができる。
【0052】
図6は、
図1に示した実施例にかかる、ウェハ161に流れる電流を示す波形を示すグラフ600である。(a)の波形601は
図4の(a)に示した間欠三角波電圧401を用いた場合を表し、(b)の波形611は
図4の(b)に示した三角波電圧411を用いた場合を表す。
【0053】
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いた場合、直流電源203の出力電圧が上昇している期間に流れる電流は
図6の(a)に示すようにA×aV
0/(DT
1)と表され、下降している期間に流れる電流はA×aV
0/((1-D)T
1)と表される。一方、
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合は、直流電源203の出力電圧が上昇している期間は
図6の(b)に示すようにA×2V
0/(DT
1)、下降している期間はA×2V
0/((1-D)T
1)の電流が流れる。
【0054】
図6 (a) の網掛け部602の面積の合計は、
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いた場合にウェハの表面161cから流れる電荷量を表す。
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合は、
図6 (b) の網掛け部612の面積の合計が当該電荷量に相当する。従って、
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いた場合に単位時間当たりに移動する電荷量は、網掛け部602の面積の合計を一周期の時間で割った値、4AV
0/Tである。一方、
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合も当該電荷量は4AV
0/Tである。すなわち、間欠三角波電圧401と三角波電圧411のどちらを用いても、単位時間あたりに移動する電荷量は同じである。
【0055】
以上の説明によれば、
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いることで、
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合と同等のウェハの表面161cから除去される電荷量を維持しつつ、当該除去を三角波電圧411を用いた場合と比べて短時間で効率的に行うことが可能である。
【0056】
これにより、
図4(a)の間欠三角波電圧401を用いることで、ウェハ161の表面161cに電荷が蓄積されていることによりプラズマ141から高エネルギーの荷電粒子が入射する時間を
図4(b)の三角波電圧411を用いた場合と比べて短くすることができ、電子シェーディング効果に起因するウェハの表面161cのダメージを抑制することができる。
【0057】
さらに、
図4の(a)に示した正の側にピークを持つ三角波形と負の側にピークを持つ三角波形とを組み合わせた間欠三角波電圧401の代わりに、
図7のグラフ700の(a)に示した正の側にピークを持つ一つの三角波形で形成される間欠三角波電圧701を用いても、同様の効果が得られる。間欠三角波電圧701の一周期においては、最初に電圧が変化する時間領域702、次に電圧が一定の時間領域703が現れる。
【0058】
間欠三角波電圧701の最大電圧は、1以上の定数aを用いて2aV0と表される。また、時間領域702の長さT1はT/2、時間領域703長さT2は(a-1)Tと表される。すなわち間欠三角波電圧701の周期はaTとなる。時間領域702では、間欠三角波電圧701の電圧は、最初に0から2aV0までDT1の時間で上昇し、その後、2aV0から0まで(1-D)T1の時間で下降する。電圧が上昇する期間と下降する期間の時間比は、D:(1-D)と表される。
【0059】
間欠三角波電圧701を用いた場合、
図7の(b)に示すように、ウェハ161上の誘電体膜161b内部に生じる電場711の最大強度はB×aV
0/dとなり、
図4の(b)に示した三角波電圧411を用いた場合のa倍である。また、間欠三角波電圧701を用いた場合、
図7の(c)に示すように、ウェハ161に流れる電流721により単位時間当たりに移動する電荷量は、4AV
0/Tである。これは
図4の(a)に示した間欠三角波電圧401を用いた場合と同じである。
【0060】
以上の説明によれば、間欠三角波電圧701を用いても、間欠三角波電圧401の場合と同様に、三角波電圧411とウェハの表面161cから除去される電荷量を維持しつつ、当該除去を効率的に行うことが可能である。
【0061】
他にも、
図8の(a)に示した台形状の一つの波形で形成される電圧波形801および
図8の(b)に示した二つの台形状の波形で形成された電圧波形802を用いても同様の効果が得られる。すなわち、三角波電圧411の振幅をa倍にし、かつ、電圧が直前の電圧から変化しない一定電圧の時間領域を一箇所または二箇所以上に加えた波形である。このとき、一周期内における当該時間領域の長さの合計は(a-1)Tである。また電圧が0Vとなる位置は任意に選ぶことができる。これは、誘電体膜153によって直流成分が遮断されるためである。
【0062】
なお、
図4に示した例では、二つの間欠三角波電圧401の場合を示したが、これに限らず、時間aTの期間に4つまたはそれ以上の数の間欠三角波電圧を印加するようにしてもよい。印加する間欠三角波電圧の数を増やすことにより、
図4の時間領域403及び405に相当する各間欠三角波電圧を印加する間の電圧一定時間を短くすることができ、プラズマから入射した荷電粒子がウェハの表面に滞留する時間をより短くすることができる。
【0063】
本実施例によれば、載置台に印加される高周波バイアス電圧とは別に、三角波電圧をピーク値を高くして間欠的に重畳させてウェハの表面に蓄積された電荷を除去するのに十分な電流を所定の時間発生させるようにしたことにより、ウェハの表面に電荷が蓄積されていることにより生じる電子シェーディング効果を抑制できるようになった。これにより、電子シェーディング効果によるウェハの表面のダメージを抑制することができるようになり、試料の絶縁膜表面に蓄積した荷電粒子が除去された状態で、垂直性の高いトレンチ形状を形成することができ、トレンチ内部のエッチング対象でない膜のダメージを低減することができるようになった。
【0064】
また、本実施例によれば、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったままピーク電圧が高い間欠三角波電圧を印加することで荷電粒子をより速やかに除去しながらウェハをプラズマ処理できるので、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に少なくしたプラズマ処理方法を提供することができる。
[変形例1]
図9を用いて、本発明の実施例の第一の変形例(変形例1)を説明する。なお、実施例において説明した
図1および
図2と本変形例1における
図9とで同一の符号が付された部品は、同一の機能を有する。故にその部品については説明を省略する。
【0065】
図9は本変形例1にかかる、試料台150の断面及びバイアス電圧発生部152、静電吸着用電源155の詳細を示す模式図である。本変形例ではバイアス電圧発生部152が、キャパシタ901aおよび901bを介して静電吸着電極154aおよび154bとそれぞれ並列に接続されている。静電吸着用電源155は、電源ユニット155aおよび155bから構成され、これらの電源ユニットはそれぞれ静電吸着電極154aおよび154bに接続される。
【0066】
キャパシタ901aおよび901bは、静電吸着用電源155から出力される直流電圧がバイアス電圧発生部152に伝わることを防ぐ役割がある。また、
図1に示す実施例における電極151と静電吸着電極154aおよび154bとの間の静電容量をキャパシタ901aおよび901bで模擬することで、
図1に示す実施例の場合と同等の効果をえることができる。
【0067】
すなわち、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま電圧のピーク値を高くした間欠三角波電圧を印加することにより荷電粒子をより速やかに除去できるという効果をウェハ161にもたらすことができ、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に抑制可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
【0068】
また、本変形例においても、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま荷電粒子をより速やかに除去しながらウェハをプラズマ処理できるので、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に少なくしたプラズマ処理方法を提供することができる。
[変形例2]
図10および
図11を用いて、本発明の実施例の第二の変形例を説明する。
図10は本変形例2にかかる、試料台150の断面及びバイアス電圧発生部152―1、静電吸着用電源155の詳細を示す模式図である。バイアス電圧発生部152-1は、高周波電源201と自動整合器202を備えている点では実施例のバイアス電圧発生部152と同じであるが、直流電源203及びローパスフィルタ204を備えていない点で異なる。
【0069】
本変形例2では、電極151にバイアス電圧発生部152-1が接続され、静電吸着電極154aおよび154bに静電吸着用電源155が接続される。バイアス電圧発生部152-1および静電吸着用電源155は、制御部171により制御される。
【0070】
図11は、静電吸着用電源155の出力電圧波形を示す。(b)の電圧波形1101aは電源ユニット155aの出力電圧を表し、(a)の電圧波形1101bは電源ユニット155bの出力電圧を表す。
図1に示す実施例において静電吸着電極154aおよび154bに印加される電圧をそれぞれV
ESCa、V
ESCbとすれば、(b)の電圧波形1101aは実施例で
図4を用いて説明した間欠三角波電圧401にV
ESCaを加えたものであり、(a)の電圧波形1101bは電圧波形1101aから(V
ESCa-V
ESCb)を引いたものである。
【0071】
すなわち、間欠三角波形状の電圧波形1101a及び1101bの時間領域1111及び1115の電圧波形は
図4に示した間欠三角波電圧401のうち時間領域402の部分の電圧波形に相当し、時間領域1112及び1116の電圧一定区間は間欠三角波電圧401のうち時間領域403の部分に相当する。さらに、間欠三角波形状の電圧波形1101a及び1101bの時間領域1113及び1117の電圧波形は
図4に示した間欠三角波電圧401のうち時間領域404の部分の電圧波形に相当し、時間領域1114及び1118の電圧一定区間は間欠三角波電圧401のうち時間領域405の部分に相当する。
【0072】
なお、電圧波形1101aは、間欠三角波電圧401の代わりに実施例で
図7を用いて説明した間欠三角波電圧701、
図8を用いて説明した電圧波形810または電圧波形820にV
ESCaを加えた波形であってもよい。
【0073】
本変形例2においては、間欠三角波電圧401、間欠三角波電圧701、電圧波形810および電圧波形820の振幅の計算に用いるV
0は、
図1に示した実施例における三角波電圧411のV
0とは異なる。これは、
図1に示した実施例と本変形例2における直線三角波の印加位置の差が、ウェハ161上の荷電粒子を除去するのに最適な電圧の差異を生むためである。
【0074】
本変形例2においても、実施例の場合と同等の効果をえることができる。すなわち、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま荷電粒子をより速やかに除去できるという効果をウェハ161にもたらすことができ、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に抑制可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
【0075】
また、本変形例においても、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま荷電粒子をより速やかに除去しながらウェハをプラズマ処理できるので、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に少なくしたプラズマ処理方法を提供することができる。
[変形例3]
図12を用いて、本発明の実施例の第三の変形例を説明する。本変形例3は、変形例2で説明した、高周波電源201と自動整合器202を備えたバイアス電圧発生部152-1を、試料台150の電極151に接続する代わりに、変形例1の場合と同様に、キャパシタ1201a及び12-1bを介して静電吸着電極154aおよび154bに接続する構成とした。
【0076】
図12に示したような構成において、変形例2において
図11を用いて説明したように、制御部171で静電吸着用電源155を制御して、電源ユニット155aからは静電吸着電極154aに(b)のような電圧波形1101aを出力し、電源ユニット155bからは静電吸着電極154bに(a)に示すような電圧波形1101aを出力する。これにより、
図1に示す実施例において静電吸着電極154aおよび154bに印加される電圧をそれぞれV
ESCa、V
ESCbとすれば、(b)の電圧波形1101aは実施例で
図4を用いて説明した間欠三角波電圧401にV
ESCaを加えたものであり、(a)の電圧波形1101bは電圧波形1101aから(V
ESCa-V
ESCb)を引いたものである。
【0077】
本変形例3においても、実施例の場合と同等の効果をえることができる。すなわち、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま荷電粒子をより速やかに除去できるという効果をウェハ161にもたらすことができ、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に抑制可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
【0078】
また、本変形例においても、ウェハ表面の荷電粒子の時間当たりの除去量を最適値に保ったまま荷電粒子をより速やかに除去しながらウェハをプラズマ処理できるので、電子シェーディング効果に起因する形状ダメージを従来以上に少なくしたプラズマ処理方法を提供することができる。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施の形態には限定されず、様々な変形例を含む。例えば、上述した実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するため詳細であるが、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものには限定されない。
【0080】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施の形態の構成について、他の構成を追加したり、あるいは構成の一部を削除・置換したりすることも可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となることもある。
【0081】
なお、上述した実施の形態で説明した構造や方法については、上述の実施の形態のものに限定されるものではなく、様々な応用例が含まれる。
【符号の説明】
【0082】
100 プラズマ処理装置
101 真空処理室
121 マイクロ波電源
150 試料台
151 電極
152、152-1 バイアス電圧発生部
153 誘電体膜
154 静電吸着電極
155 静電吸着用電源
155a、155b 電源ユニット
171 制御部
201 高周波電源
203 直流電源