(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240220BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20240220BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240220BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/38
B41J2/01 401
B41J2/01 301
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41J2/21
B41M5/00 120
B41M5/00 134
B41M5/00 132
(21)【出願番号】P 2019143256
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】神原 一暁
(72)【発明者】
【氏名】澤瀬 啓史
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】浅田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】野沢 健二
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127495(JP,A)
【文献】特開2006-176734(JP,A)
【文献】特開2006-103142(JP,A)
【文献】特開2005-119193(JP,A)
【文献】特開2009-148904(JP,A)
【文献】特開2011-031600(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/050551(JP,A1)
【文献】特開2006-017634(JP,A)
【文献】特開2018-44270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
C09D 11/38
B41J 2/01
B41J 2/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と水又は有機溶剤とを含む液体組成物を記録媒体上に付与する第1の付与工程と、
前記記録媒体に、ピーク波長が300nm~450nmの光を照射する照射工程と、を行う画像形成方法であって、
前記液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいても含んでいなくてもよく、前記紫外線重合開始剤が当該液体組成物中に0.1質量%未満、又は、前記紫外線重合性化合物が当該液体組成物中に5質量%未満含まれ、
前記記録媒体に前記液体組成物のみを付与し、
前記照射工程は、前記照射を行う
ことで、重合反応による硬化を生じさせず又はほぼ生じさせずに乾燥を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記液体組成物は、水及び/又は有機溶剤を含み、当該液体組成物中に水と有機溶剤を合計で80質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の
画像形成方法。
【請求項3】
前記
照射工程は、光源としてLED
を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の
画像形成方法。
【請求項4】
前記照射工程を行った後、2つの円柱状の部材により前記記録媒体を挟み込んで搬送させるコロ搬送手段を
用いて前記記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の
画像形成方法。
【請求項5】
前記照射工程は、照射手段により照射を行い、
前記照射手段は、該照射手段を覆う開閉可能な第1のカバー部材と、該第1のカバー部材を覆う開閉可能な第2のカバー部材とに覆われており、前記第2のカバー部材が閉じられている場合に光照射を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット方式による画像形成においては、インクを吐出した後、インクを乾燥させる手段として、IR(赤外)ランプやNIR(近赤外)ランプを用いることが知られている。
【0003】
IRランプによる乾燥方式は、照射される波長が3000nm付近であり、水分子を振動させるエネルギーを持っているため、インクを乾燥させるのと同時に、インクが吐出されていない領域であり、画像が形成されていない領域(白紙部)まで加熱されて記録媒体の水分が飛んでしまう。このため、印刷物を出力後に含水率が低下した白紙部が大気中の水分を再吸湿し、白紙部が波打ってしまう問題があった。
【0004】
一方、NIRランプによる乾燥方式は、照射される波長が1000nm付近であり、この領域においては、インクが水よりもエネルギー吸収率が高く、白紙部が加熱されない効果が期待できる。しかし、エネルギー吸収率がインクの種類によって大きく異なるため、インクの乾燥ムラや特定のインクの過剰加熱が生じる問題があった。また、伝熱など白紙部の波打ち(コックリングなどとも称する)を発生させる他方式と併用された場合に、白紙部の波打ちを抑制する効果が十分得られない問題があった。
【0005】
また、インクジェット方式による画像形成において、UV硬化性のインク(UVインク)等のUV硬化性の材料を用いる技術が提案されている。例えば、特許文献1では、活性エネルギー線硬化型前処理液を記録媒体に塗布し、次いでインクジェット記録用水性インクを吐出した後、UV照射を行っていることが開示されている。この場合、先に塗布した活性エネルギー線硬化型前処理液により、後から塗布したインクジェット記録用水性インクが凝集して固定化され、ビーディングが防止できることが開示されているが、UV照射によるインクジェット記録用水性インクの乾燥性に関しては言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物を所定量以上含むUVインク等のUV硬化性の材料を用いる場合、UV光を照射するとラジカル又はカチオンの活性状態になった開始剤が紫外線重合性化合物と反応することで、紫外線重合性化合物が重合反応を起こして樹脂として硬化する。しかし、UV硬化性の材料を用いる場合、UV光が用いられるため、白紙部の波打ちは生じにくいが、その反面、硬化後の印刷画像に僅かながらラジカルやカチオンの活性状態の物質が残ることがあり、安全性を有する印刷物が得られにくいという問題があった。更に開始剤や重合性化合物は高コストであり、ランニングコストが高くなる傾向にあった。
【0007】
そこで本発明は、記録媒体における画像が形成されていない領域の波打ちを抑制できるとともに、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物が得られる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、色材と水又は有機溶剤とを含む液体組成物を記録媒体上に付与する第1の付与工程と、前記記録媒体に、ピーク波長が300nm~450nmの光を照射する照射工程と、を行う画像形成方法であって、前記液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいても含んでいなくてもよく、前記紫外線重合開始剤が当該液体組成物中に0.1質量%未満、又は、前記紫外線重合性化合物が当該液体組成物中に5質量%未満含まれ、前記記録媒体に前記液体組成物のみを付与し、前記照射工程は、前記照射を行うことで、重合反応による硬化を生じさせず又はほぼ生じさせずに乾燥を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録媒体における画像が形成されていない領域の波打ちを抑制できるとともに、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物が得られる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一例における概略図である。
【
図3】乾燥後の画像部温度と白紙部温度の相関を説明するための図である。
【
図4】白紙部が出力後に再吸湿した結果、どの程度波打ったかを説明するための図である。
【
図5】照射手段のカバーの構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
本実施形態の画像形成装置は、水又は有機溶剤を含む液体組成物を記録媒体上に付与する第1の付与手段と、前記記録媒体に、ピーク波長が300nm~450nmの光を照射する照射手段と、を備える画像形成装置であって、前記液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいても含んでいなくてもよく、前記紫外線重合開始剤が当該液体組成物中に0.1質量%未満、又は、前記紫外線重合性化合物が当該液体組成物中に5質量%未満含まれることを特徴とする。
【0013】
本実施形態によれば、記録媒体における画像が形成されていない領域の波打ちを抑制できる。以下、記録媒体における画像が形成されていない領域を「白紙部」と称することがあるが、画像が形成されていない領域の色や記録媒体の色は白色に限られるものではない。また、液体組成物が付与された領域を画像が形成されている領域と称し、画像としては有色、無色を問わない。
【0014】
本実施形態では、紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物の含有量が所定量未満に抑えられた液体組成物を記録媒体に付与し、ピーク波長が300nm~450nmの光を照射して乾燥させる。これにより、白紙部を加熱せずに液体組成物のみを乾燥させることができるため、出力後に記録媒体が大気中の水分を再吸湿することを抑制でき、白紙部の波打ちを抑制することができる。また、コックリング矯正装置を別途設けていた場合には、該装置を省くことができ、省スペース化や更なるコストの低減を図ることができる。
【0015】
また、KCMYインクにおいては、ピーク波長が300nm~450nmの光に対して同程度のエネルギー吸収率を有している。そのため、液体組成物としてKCMYインクを用いた場合、ピーク波長が300nm~450nmの光を用いることで、インク間での乾燥の進み方の差が生じにくくなり、乾燥ムラを抑制することができる。更に、インク間での乾燥の進み方の差が生じにくいため、他の乾燥方式と併用する必要がなく、白紙部の波打ちを抑制しやすくなる。
【0016】
また、本実施形態で用いられる液体組成物は、紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物の含有量が抑えられているため、ランニングコストを抑えることができる。更に、紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物の含有量が抑えられているため、良好な安全性を有する印刷物を得ることができる。また、良好な安全性を有しているため、フードセーフティーが求められる食品のパッケージ等の印刷にも使用することができる。
【0017】
<第1の付与手段及び第2の付与手段>
第1の付与手段は、水又は有機溶剤を含む液体組成物を記録媒体上に付与する。第2の付与手段は、後述の照射手段が記録媒体に光を照射する前に、照射手段により照射される光により硬化する硬化型組成物を記録媒体に付与する。以下、第1の付与手段と第2の付与手段を区別せず説明する場合は、単に付与手段と表記して説明する。
【0018】
付与手段としては、例えばインクジェットヘッド等を用いることができる。インクジェットヘッドを用いる場合、ライン型でもよいし、シリアル型でもよい。画像形成装置に備えられる付与手段の数としては、適宜変更することができ、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0019】
<照射手段>
照射手段は、記録媒体に、ピーク波長が300nm~450nmの光を照射する。本実施形態において、照射手段により照射される光のピーク波長は、波長カットフィルタ等を介して記録媒体に照射する場合はフィルタ透過後で判断する。
【0020】
照射される光の波長が300nm~450nmである場合、上述の所期の効果が得られる。300nm未満である場合、印刷装置からUV光が僅かにでも漏れた際の人体への悪影響(炎症など)のリスクが高まる。450nmよりも大きい場合、インクの色ごとの光の吸収率の差が大きくなり、乾燥ムラが生じる。例えば吸収率の高いブラックインクは高温に加熱されているのに対し、吸収率の低いシアンインクは乾燥が進まないため、印刷画像全体を均一に乾燥できない。
【0021】
記録媒体への照射位置や照射手段の発光強度としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。また、画像形成装置に備えられる照射手段の数としては、適宜変更することができ、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0022】
照射手段としては、例えば紫外線照射装置(UV光照射装置などとも称する)を用いることができる。UV光を照射する場合は、特にピーク波長が300nm~400nmの光を照射することが好ましい。
【0023】
照射手段は、光源としてLEDが用いられていることが好ましく、中でも紫外線を発光する発光ダイオード(以下UV-LEDという)を用いることが好ましい。LEDを用いる場合、メタルハライドランプなどと異なり、波長カットフィルタを用いなくても、光源として波長が単一ピークでシャープになりやすく、例えば液体組成物としてインクを用いた場合にも、インクの色差による乾燥の進み方の差を減らすことができる。
【0024】
照射手段により照射される光の波長分布としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、半値全幅を約15nmとすることができる。
【0025】
照射手段は、該照射手段を覆う開閉可能な第1のカバー部材と、該第1のカバー部材を覆う開閉可能な第2のカバー部材とに覆われていることが好ましい。この場合、照射手段のカバーが二重になっているともいえる。
【0026】
また、この場合、光照射手段は第2のカバー部材が閉じられている場合に光照射を行うことが好ましい。例えば、照射手段のインターロックが外側のカバー(第2のカバー部材)と連動していることが好ましい。これにより、内側のカバー(第1のカバー部材)を開ける前に確実にUV光等の光が消えた状態にすれば、オペレーターがUV光を視てしまうことを防ぐことができる。
【0027】
カバー部材の材質としては、特に制限されるものではなく、照射手段の光を遮ることができるものであればよい。
【0028】
<液体組成物>
本実施形態に用いられる液体組成物は、水又は有機溶剤を含み、必要に応じて、色材、樹脂等のその他の成分を含む。また、本実施形態に用いられる液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいてもよい。
【0029】
液体組成物は、例えば、着色インク、前処理液(アンダーコート液)、後処理液(プロテクターコート液)等として用いることができる。本実施形態に用いられる液体組成物をインクとして用いた場合、水性インクとも称することができる。
【0030】
液体組成物に、顔料や染料などの色材を含有させる場合、色材が照射手段により照射された光を吸収して熱エネルギーに変換し、発熱する。液体組成物の温度が上昇することで、水や有機溶剤が蒸発し、また液体組成物が樹脂を含有する場合には樹脂が溶融し、印字画像が記録媒体に定着する。このような乾燥プロセスでは、活性状態になる物質が十分少ない又は全く無いため、安全性が確保しやすくなる。
なお、液体組成物に色材として顔料を用いる場合、染料を用いる場合に比べて、UV光等の光を照射しても退色しにくいため、鮮やかな印刷画像が得られる。
【0031】
-紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物-
本実施形態に用いられる液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいてもよいが、これらを含む場合は、紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物の含有量が所定量未満に抑えられている。これにより、照射手段により光が照射されても、重合反応による硬化は生じない又はほぼ生じない。
【0032】
液体組成物中に紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物が含まれる場合、含有量としては、紫外線重合開始剤が液体組成物中に0.1質量%未満、又は、紫外線重合性化合物が液体組成物中に5質量%未満である。液体組成物中に紫外線重合開始剤が0.1質量%以上含まれ、かつ、紫外線重合性化合物が5質量%以上含まれる場合、コストが増大し、また良好な安全性を有する印刷物が得られない。
【0033】
紫外線重合開始剤としては、UV(紫外線)によって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものが挙げられる。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0035】
紫外線重合性化合物としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができ、例えば公知の重合性化合物を用いることができる。重合性化合物としては、モノマーでもよいし、オリゴマー等であってもよい。例えばメタアクリル酸等が挙げられる。
【0036】
-水-
液体組成物における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0037】
-有機溶剤-
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0038】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0039】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0042】
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0043】
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
【0044】
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0045】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0046】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0047】
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0048】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0049】
有機溶剤の液体組成物中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0050】
-水と有機溶剤の含有量-
液体組成物における水と有機溶剤を合計量としては、合計で80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。この場合、吐出性を向上させることができる。
【0051】
-色材-
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
【0052】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0053】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0054】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0055】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0056】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0057】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0059】
液体組成物中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0060】
顔料を分散して液体組成物を得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0061】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、液体組成物に配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が液体組成物中に分散していてもよい。
【0062】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインク等の液体組成物を得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合して液体組成物を製造することも可能である。
【0064】
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
【0065】
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0066】
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0067】
-樹脂-
液体組成物中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合して液体組成物を得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0069】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、液体組成物の保存安定性の点から、液体組成物全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0070】
-その他の成分-
液体組成物には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0071】
-前処理液(アンダーコート液)-
液体組成物を前処理液として用いる場合、前処理液は、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて凝集剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、液体組成物に用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0072】
-後処理液(プロテクターコート液)-
液体組成物を後処理液として用いる場合、後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水の他、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、選択された領域のみに塗布しても良い。
【0073】
<記録媒体>
記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0074】
<硬化型組成物>
本実施形態では、液体組成物のほか、照射手段により照射される光により硬化する硬化型組成物を記録媒体に付与するようにしてもよい。このような硬化型組成物を用いる場合、上述の照射手段により、液体組成物の乾燥と同時に硬化型組成物を硬化させることができるため、別途硬化手段を設ける必要がないという利点が得られる。
【0075】
硬化型組成物は、着色インク、ホワイトインク、クリアインク、前処理液(アンダーコート液)、後処理液(プロテクターコート液)等として用いることができる。中でも、ホワイトインク、クリアインクとして用いることが好ましい。UV硬化型のインクとする場合は、UVインクなどとも称することができる。
【0076】
硬化型組成物を用いる場合、安全性やコストの面で硬化型組成物を用いない場合に比べて劣るものの、ホワイトやクリア等の特色を付加することで、付加価値のある印刷物を得ることができる。また、本実施形態においては、硬化型組成物を用いた場合においても液体組成物を合わせて用いることができるため、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ホワイトインクをすべてUV硬化型インクとした従来例と比べて、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物が得られる。
【0077】
硬化型組成物を用いる場合、記録媒体に付与する順番としては、照射手段より前であればよく、適宜変更することができる。液体組成物を記録媒体に付与する前であってもよいし、液体組成物を記録媒体に付与した後であってもよいし、同時でもよい。また、硬化型組成物を付与する領域は、適宜変更することができ、液体組成物と同じ箇所であってもよい。
【0078】
硬化型組成物は、例えば重合開始剤、重合性化合物を含有し、必要に応じて色材や有機溶媒(有機溶剤)等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0079】
-重合開始剤及び重合性化合物-
重合開始剤や重合性化合物としては、液体組成物で述べた紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物等を用いることができる。
重合開始剤としては、照射手段により照射される光により、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、硬化型組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
【0080】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0081】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0082】
-色材-
色材としては、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができ、液体組成物で述べた色材等を用いることができる。
【0083】
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、硬化型組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層(プロテクターコート層)として好適である。
【0084】
-有機溶媒(有機溶剤)-
有機溶媒としては、液体組成物で述べた有機溶剤等を用いることができる。
硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0085】
その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0086】
-調製-
硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0087】
-粘度-
硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0088】
<印刷モード>
本実施形態の画像形成装置は、複数の印刷モード(動作モードなどとも称する)を備えていてもよく、1以上の印刷モードを選択可能である。印刷モードは、オペレーターが選択してもよいし、その他の手段により選択されるようにしてもよい。
【0089】
印刷モードとしては、例えば、付与手段のうち第1の付与手段のみを用いる第1の印刷モード、第2の付与手段を用いる第2の印刷モード等が挙げられる。ここで、「第2の付与手段を用いる第2の印刷モード」とあるのは、第1の付与手段と第2の付与手段を合わせて用いる場合を含み、第2の付与手段のみを用いる場合も含む。
【0090】
本実施形態では、選択可能な印刷モードのうちの少なくとも1つが、付与手段から記録媒体に付与される液体組成物の紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物の含有量が所定量に抑えられており、照射手段が所定のピーク波長となる光を照射する印刷モードであることを要する。このような印刷モードを選択可能であることにより、白紙部の波打ちを抑制できるとともに、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物を得ることができる。
【0091】
例えば、第1の付与手段により水性インクを付与し、照射手段により光照射される第1の印刷モードと、第2の付与手段によりUVインクを付与し、照射手段により光照射される第2の印刷モードとを有し、これらの印刷モードを適宜選択可能な装置構成とすることができる。
【0092】
第1の印刷モードとしては、UVインクやUV硬化型の前処理液等を用いずに、液体組成物のみを記録媒体に付与し、照射手段により光照射することで乾燥を行うことが好ましい。これにより、白紙部の波打ちを抑制し、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物を得ることができる。
【0093】
第1の印刷モード及び第2の印刷モードとしては、例えば、モノクロモード、フルカラーモード、ホワイトモード、特色印刷モード等から、1つ又は複数を適宜選択可能である。適宜変更することが可能であるが、例えばモノクロモードが選択されると、ブラックの液体組成物を付与する付与手段のみが画像形成に用いられる。フルカラーモードが選択されると、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの液体組成物を付与する付与手段のみが画像形成に用いられる。ホワイトモードが選択されると、ホワイトの液体組成物を付与する付与手段のみが画像形成に用いられる。特色印刷モードが選択されると、色材を含まない液体組成物を付与する付与手段のみが画像形成に用いられる。
【0094】
また、印刷モードを適宜選択することにより、液体組成物と硬化型組成物を混在して用いることも可能である。例えば、フルカラーモードとホワイトモードを合わせて用いる印刷モードとしてもよく、この場合、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの液体組成物を付与する第1の付与手段と、ホワイトの硬化型組成物を付与する第2の付与手段を用いることができる。この他にも、フルカラーモードと特色印刷モードを合わせて用いてもよく、この場合、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの液体組成物を付与する第1の付与手段と、色材を含まない硬化型組成物を付与する第2の付与手段を用いることができる。またこの他にも、モノクロモードとホワイトモード(及び/又は特色印刷モード)を合わせて用いてもよく、この場合、ブラックの液体組成物を付与する第1の付与手段と、ホワイトの硬化型組成物及び/又は色材を含まない硬化型組成物を付与する第2の付与手段を用いることができる。
【0095】
<コロ搬送手段>
本実施形態の画像形成装置は、記録媒体の片面に画像を形成してもよいし、両面に画像を形成してもよい。両面に画像を形成する場合、適宜変更することが可能であるが、本実施形態の画像形成装置は、2つの円柱状の部材により記録媒体を挟み込んで搬送させるコロ搬送手段を備えることが好ましい。
【0096】
コロ搬送手段を備える場合、記録媒体の搬送方向において、上流側から付与手段、照射手段、コロ搬送手段の順に備えられる。照射手段により光照射がされた後、コロ搬送手段により記録媒体が搬送されて、記録媒体の裏面(画像が形成されていない面)に対して再度、液体組成物の付与及び光照射が行われる。
【0097】
本実施形態によれば、記録媒体の先端を掴むグリッパー搬送に比べて、コロ搬送手段を用いる場合、簡易な構成で記録媒体を表裏反転させ両面印刷することができる。コロ搬送手段を用いる搬送方式(以下、コロ搬送とも称する)では、2つの円柱状の部材により記録媒体を挟み込んで搬送させるため、画像部(液体組成物が付与された部分)も含めて記録媒体を擦ることになる。しかし、上述の液体組成物及び照射手段を用いることにより、白紙部の波打ちを発生させずに液体組成物を乾燥させることができ、コロ搬送による擦れ跡の無い良好な印刷画像を得ることができる。
【0098】
画像形成装置に備えられるコロ搬送手段としては、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、記録媒体を反転させるために用いる場合もコロ搬送手段に含まれる。円柱状の部材(コロ部材などとも称する)としては、特に制限されるものではなく、径や軸方向の長さ、材質等は適宜変更することができる。
【0099】
<実施例1及び比較例1>
次に、本実施形態の画像形成装置について一例を挙げて説明する。以下、液体組成物として主にインクである場合の例について説明する。
図1に、本例の画像形成装置を示す。本例では、付与手段としてインクジェット方式を用いているため、本例の画像形成装置はインクジェット印刷装置などとも称することができる。
【0100】
本例の画像形成装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400、両面印刷用の反転部500からなる。
給紙部100の給紙トレイ110から給送装置120により1枚ずつ用紙Pが搬送され、レジストローラ対130で一時停止した後、所定のタイミングで画像形成部200に給紙される。
【0101】
画像形成部200では受け取り胴201を経由して用紙担持ドラム210に用紙Pが搬送され、この用紙担持ドラム210上でインクジェットヘッド220(付与手段)により用紙Pに画像が形成される。なお、インクが付与された時点を画像が形成されたとしてもよいし、照射手段により光が照射された後の時点を画像が形成されたとしてもよい。
【0102】
その際、オペレーターが選択した印刷モードに応じて、どの色のインクジェットヘッド220を画像形成に用いるかが切り替わる。オペレーターは印刷画像に応じて、例えばモノクロモード、フルカラーモード、フルカラー+ホワイトモードの3種類の印刷モードから1種類を選択可能である。
【0103】
モノクロモードを選択した場合は、インクジェットヘッド220Kのみが画像形成に用いられ、インクジェットヘッド220C、220M、220Y、220Wは印刷動作中もキャップで保護されたままである。
【0104】
フルカラーモードを選択した場合は、インクジェットヘッド220K、220C、220M、220Yが画像形成に用いられ、インクジェットヘッド220Wは印刷動作中もキャップで保護されたままである。
【0105】
フルカラー+ホワイトモードを選択した場合は、インクジェットヘッド220K、220C、220M、220Y、220Wの全てが画像形成に用いられる。
【0106】
本実施例はフルカラー+ホワイトモードを選択した場合の例である。
本実施例では、インクジェットヘッド220K、220C、220M、220Y(第1の付与手段)によって吐出されるインクを紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物の含有量が抑えられた水性インクとしている。ここで用いられる水性インクとしては、水及び他の高沸点有機溶剤が約90質量%であり、樹脂が約5質量%、顔料が約5質量%である。
顔料としては、インクジェットヘッド220Kはカーボンブラック、インクジェットヘッド220Cは銅フタロシアニン、インクジェットヘッド220Mはキナクリドン、インクジェットヘッド220Yはモノアゾイエローを用いた。
【0107】
一方、インクジェットヘッド220W(第2の付与手段)によって吐出されるインクを硬化型組成物とし、ここではUVインクとしている。UV重合開始剤としてアシルホスフィンオキシド系化合物、UV重合モノマーとしてメタアクリル酸、ホワイトの色材として酸化チタンを用いた。
【0108】
図中、矢印は用紙Pの搬送方向を示し、インクジェットヘッド220C、220M、220Y、220K、220Wの順にインクを記録媒体に吐出した。ただし、吐出の順番はこれに限られるものではない。
【0109】
用紙Pにインクが付与された後、受け渡し胴202を経由して乾燥部30に用紙Pが搬送される。乾燥部300では乾燥搬送ベルト302上で用紙Pが搬送され、UV光照射装置301(照射手段)がUV光を用紙Pに照射することで、印字画像が乾燥する。
【0110】
図1では、UV光照射装置301が3つ図示されているが、これに限られるものではない。UV光照射装置301は1つであってもよいし、複数備えられていてもよい。1つのUV光照射装置で乾燥に必要な光量を賄おうとすると装置が大型になることがあるため、小型のUV光照射装置を複数並べて使用することにより、装置の大型化を防止でき、更にはメンテナンス時の取り扱いを容易にすることができる。
【0111】
光照射された後、片面印刷の場合、用紙Pは反転部500を通過し、排紙部400の排紙トレイ410に排紙される。両面印刷の場合、用紙Pは分岐爪により搬送コロ510を経由して反転コロ520まで搬送される。ここで用紙Pは一旦停止した後、スイッチバックして逆方向に搬送される。スイッチバックした用紙Pは両面パスの搬送コロ530、540、550を経て、給紙部のレジストローラ対130に再合流し、裏面の画像形成を開始する。
【0112】
次に、乾燥部300による乾燥の詳細を説明する。
本実施例で用いたUV光照射装置301の模式図を
図2に示す。
図2は、UV光照射装置301を用紙Pや乾燥搬送ベルト302側から見た場合の模式図である。
【0113】
本実施例では、UV光照射装置301における、用紙Pや乾燥搬送ベルト302と対向する面をUV光照射面311としており、UV光照射面311においてUV-LED発光素子312が碁盤の目状に設けられている。1個1個のUV-LED発光素子312が同一の照度で発光することで、UV光照射装置301全体としては、UV光照射面311に沿って均一に発光している状態になる。
照射される光の波長としては、ピーク波長が395nmで、波長分布は半値全幅が約15nmのものを用いた。
【0114】
ここで、乾燥後の画像部温度と白紙部温度の相関を説明するためのグラフを
図3に示す。
図3では、本実施例を含む本実施形態における画像部温度と白紙部温度の相関を表すAと、比較例における画像部温度と白紙部温度の相関を表すBとが図示されている。
【0115】
本実施形態の例(図中のA)ではUV-LEDによる乾燥とし、比較例(図中のB)ではIR乾燥(IRランプによる乾燥)としている。それぞれ乾燥条件(IRランプやUV-LEDの出力設定)を振って乾燥通過後の用紙表面温度を測定し、画像部の温度と白紙部の温度を確認した。
【0116】
なお、両者で同じ水性インクを用いた。画像部温度が90℃前後まで上昇すると、水性インク中の水分や有機溶剤の蒸発が進んで乾燥することが分かっている。ここでは、水性インクが付与される個所を画像部、水性インクが付与されない箇所を白紙部としている。
【0117】
比較例のIRランプ乾燥では画像部温度が90℃になる設定にした時、同時に白紙部温度が105℃になっていた。これに対して、本実施形態のUV-LED乾燥では画像部温度を同様に90℃近辺になるように設定した時、白紙部温度が45℃近辺となり、IRランプ乾燥に比べて約60℃も低かった。
【0118】
このような白紙部温度の差により、IRランプ乾燥では白紙部の含水率が6.1%から1.4%まで低下していたのに対して、UV-LED乾燥では白紙部の含水率が6.1%から2.9%への低下にとどまっており、本実施形態の方が乾燥後に白紙部の水分をより多く保持できていることが確認できた。
【0119】
次に、白紙部が出力後に再吸湿した結果、どの程度波打ったかを説明するためのグラフを
図4に示す。
図4では、本実施例(図中A)と比較例(図中B)とが図示されている。図中、主走査位置とあるのは、記録媒体における白紙部の任意の点を0mmとし、ここから記録媒体の搬送方向と垂直な方向の距離としている。
【0120】
乾燥により白紙の水分を多く失ったIRランプ乾燥(比較例)では、出力後に白紙部が再吸湿して大きく波打ってしまった。凹凸の高さはPeak-to-Peakで最大1.4mm程度であった。
これに対して白紙の水分を保持できていたUV-LED乾燥(本実施例)では、出力後に白紙部がほとんど再吸湿しないため、波打ちもほぼ発生しなかった。凹凸の高さはPeak-to-Peakで0.2mm程度に収まっており、波打ちが抑制された良好な画像が得られていた。
【0121】
次に、本実施例及び本実施形態における両面印刷とコロ搬送について補足を説明する。
図1における両面印刷時の反転部500における用紙Pの挙動については、上述した通り、コロ搬送手段により、乾燥済みの印字画像が形成された用紙Pを挟んで搬送する際に画像面をコロ部材(円柱状の部材)で擦る力が働く。
図1の反転コロ520において、コロ部材の回転速度は、順回転で駆動する際、一時停止する際、逆回転で再駆動する際に変化する。このように、コロ部材の回転速度が変化する場合、画像面をコロで擦る力は特に大きくなる。
【0122】
コロ搬送された印字画像においては、印字画像の乾燥強度が不足している場合、コロで部材により擦られた箇所にキズや縦帯状の光沢ムラが発生してしまう。従来の乾燥方式では、乾燥強度を十分に強くしようとすると白紙部の波打ちが悪化してしまうため、コロ搬送でのキズや光沢ムラの抑制が困難だった。これに対して、本実施形態では、乾燥強度を十分に強くしても白紙部が波打たないため、コロ搬送でのキズや光沢ムラの抑制が可能となる。
【0123】
<実施例2>
次に、本実施形態の画像形成装置について他の例を挙げて説明する。
本実施例を説明するための図を
図5に示す。
図5(A)~(C)は、照射手段のカバーの構造を説明するための模式図である。本実施例は、上記実施例1において、UV光照射装置301が外側カバー310(第2のカバー部材)と内側カバー320(第1のカバー部材)の二重のカバー部材で囲われている。
【0124】
図5(A)は、外側カバー310と内側カバー320の両方が閉じられた状態であり、本実施例ではこの状態でのみ光を照射する動作が可能になっている。
図5(B)は、オペレーターが外側カバー310のみを開けた状態である。外側カバー310にはUV光照射装置301のインターロック装置(突起331、スイッチ332)が設けられており、インターロックの突起331がスイッチ332に刺さった状態でのみUV光照射装置301に給電されるようになっている。これにより、外側カバー310を開けて突起331がスイッチ332から抜けた結果、UV光照射装置301への給電が途切れ、UV光が照射できなくなっている。
【0125】
図5(C)は、オペレーターが外側カバー310を開けた後、さらに内側カバー320を開けた状態である。この状態で初めて、オペレーターはUV光照射装置301を目視確認できるようになる。外側カバー310を開けた時点で既にUV光照射装置301への給電は途切れているため、内側カバー320を開けた時点ではUV光が照射されることはなく、オペレーターは安全に作業することができる。
【0126】
このような二重カバー構造になっていないと、インターロックが切れるのとUV光照射部をオペレーターが目視できるタイミングが同時になってしまい、UV光の消灯までの僅かなタイムラグでオペレーターがUV光を視てしまうリスクがある。しかし、本実施例のような二重カバー構造にすることで、外側カバー310を開けてから内側カバー320を開けるまでのオペレーターの作業のタイムラグが必ず生じるため、内側カバー320を開けた時点ではUV光が消灯済みであることを担保でき、安全度合いが増す。
【符号の説明】
【0127】
1 画像形成装置
100 給紙部
110 給紙トレイ
120 給送装置
130 レジストローラ対
200 画像形成部
201 受け取り胴
202 受け渡し胴
210 用紙担持ドラム
220 インクジェットヘッド
300 乾燥部
301 UV光照射装置
302 乾燥搬送ベルト
310 外側カバー
311 UV光照射面
312 UV-LED発光素子
320 内側カバー
331 突起
332 スイッチ
400 排紙部
410 排紙トレイ
500 反転部
510、530、540、550 搬送コロ
520 反転コロ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】