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  • 特許-ポリエステルフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240220BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 63/553 20060101ALI20240220BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
C08G63/553
G09F9/00 302
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019143465
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021024940
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀二
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-246916(JP,A)
【文献】特開2001-288283(JP,A)
【文献】特開平07-247348(JP,A)
【文献】特開2005-008814(JP,A)
【文献】特開2001-335650(JP,A)
【文献】特開平10-324754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059322(WO,A1)
【文献】特開2002-161149(JP,A)
【文献】特開2004-131564(JP,A)
【文献】特開2019-131787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C08G 63/553
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含有するポリエステル層(I)を備えたポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルは、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエステルDと、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ホモポリエステルC、又は前記共重合ポリエステルD以外の共重合ポリエステルEEと、を含むポリエステル組成物であり、
ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して前記ダイマー酸の含有量が5~25質量%であり、前記ポリアルキレングリコールの含有量が1~20質量%である、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルは、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、イソフタル酸を、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、1質量%以上10質量%以下含む、請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステルを含有するポリエステル層(I)を備えたポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルは、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコールを含む共重合ポリエステルaと、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコール、及びポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエステルbと、を含むポリエステル組成物であり、
前記ポリエステルは、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、イソフタル酸を、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、1質量%以上10質量%以下含み、
ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して前記ダイマー酸の含有量が5~25質量%であり、前記ポリアルキレングリコールの含有量が1~20質量%である、ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル組成物は、さらに、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ホモポリエステルC及び/又は共重合ポリエステルEを含み、該共重合ポリエステルEは、前記共重合ポリエステルa及び共重合ポリエステルb以外の共重合ポリエステルである、請求項3記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールが、数平均分子量2000以下のポリテトラメチレングリコールである、請求項1~4の何れか一項記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記ポリアルキレングリコールが、質量平均分子量3000以下のポリエチレングリコールである、請求項1~5の何れか一項記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステル層(I)の表裏両側に、ポリエステル層(II)を積層してなる構成を備えている、請求項1~6の何れか一項記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項記載のポリエステルフィルムを用いた表面保護フィルム。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項記載のポリエステルフィルムを用いた光学部材。
【請求項10】
請求項1~7の何れか一項記載のポリエステルフィルムを用いたウェアラブル端末。
【請求項11】
請求項1~7の何れか一項に記載のポリエステルフィルムを用いたフレキシブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上のポリエステルを含有するポリエステル層を備えたポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムは、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れているため、工業材料、光学材料、電子部品材料、電池用包装材など様々な分野に使用されている。
【0003】
ポリエステルフィルムに関しては、例えば特許文献1において、成形性と透明性に非常に優れた、特に成形加工用途として優れた特性を有するポリエステルフィルムとして、少なくとも2種類のポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、炭素数4以上のアルキレン基を有する脂肪族成分を1~80モル%含有するポリエステルAと、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルBを含み、かつ昇温結晶化温度が70℃~140℃で、ヘーズが1~20%であることを特徴とするポリエステルフィルムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、柔軟性、耐溶剤性、印刷性、耐熱性、成形性、耐経時脆化性のいずれも満足し、さらにコストパフォーマンスに優れる積層ポリエステルフィルムとして、ポリエステル(A)を主成分とするポリエステル(A)層の少なくとも片面に、ポリエステル(B)を主成分とするポリエステル(B)層が積層された積層フィルムであって、該積層フィルムの23℃雰囲気下での弾性率が20~1000MPa、120℃雰囲気下での弾性率が10~200MPa、かつ実質的に無配向であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムが提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、従来のポリエステルフィルムにない軟質性を発現し、比較的低温度および低圧力下で成形性に優れる軟質化ポリエステルフィルムとして、フィルムの弾性率E’が120℃において20MPa以下であり、かつ、180℃において5MPa以下であり、フィルムヘーズが1.0%以下であり、ジオール構成成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を29~32モル%含有し、ジカルボン酸構成成分としてイソフタル酸単位を含まないことを特徴とする軟質化ポリエステルフィルムが提案されている。
【0006】
近年、画像表示装置として、携帯端末の小型化及び高性能化により身体に装着可能なサイズに小型したコンピュータ(ウェアラブルコンピュータ)が注目されている。
ウェアラブルコンピュータに使われる電子デバイス(ウェアラブル端末)は、腕時計のような人体の身の回りのものに備わっていることが理想的である(特許文献4)。
【0007】
ほかにも、次世代の画像表示装置として、自由自在に屈曲可能なフレキシブルディスプレイが注目を浴びている。フレキシブルディスプレイには、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイが主に使用されている。
【0008】
フレキシブルディスプレイには、薄いガラス基板やプラスチック基板が用いられることから、これら画像表示装置用部材に用いられるポリエステルフィルムには、従来の平面状ディスプレイパネルで必要とされた光学特性や耐久性に加えて、屈曲試験をしても折れなどが発生しないことが要求される。
【0009】
この種のポリエステルフィルムに関しては、例えば特許文献5において、従来のポリエステルフィルムに比べて、より柔軟であり、よりしなやかであり、それでいて、伸度、強度及び耐熱性を兼ね備えた新たな共重合ポリエステルフィルムとして、共重合ポリエステルAを主成分樹脂として含有する共重合ポリエステル層Aを備えた共重合ポリエステルフィルムであって、前記共重合ポリエステルAは、テレフタル酸及び「その他のジカルボン酸成分」と、エチレングリコール及び「その他のアルコール成分」との共重合体であり、当該共重合ポリエステルにおいてジカルボン酸成分に占める「その他のジカルボン酸成分」の割合は5~20mol%であり、アルコール成分に占める「その他のアルコール成分」の割合は25~50mol%であり、25℃の貯蔵弾性率が2500MPa以下であり、且つ、120℃の貯蔵弾性率が10MPa以上であることを特徴とする共重合ポリエステルフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-219509号公報
【文献】国際公開WO2009/078304号公報
【文献】特開2014-169371号公報
【文献】特開2014-134903号公報
【文献】国際公開第2019-059322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、ウェアラブル端末やフレキシブルディスプレイなどにポリエステルフィルムを用いることを考えると、従来一般的に使用されているポリエステルフィルムに比べて、単に柔軟であるばかりでなく、よりしなやかであり、それでいて、伸度及び強度を有しており、また、加熱された際に収縮しない耐熱性も備えた、ポリエステルフィルムを開発する必要がある。
【0012】
本発明者は、特許文献5において、かかる新規な共重合ポリエステルフィルムを開発したが、依然として、生産性の点で改善の余地があった。
そこで本発明の課題は、従来一般的に使用されているポリエステルフィルムに比べて、より柔軟であり、よりしなやかであり、また、伸度、強度及び耐熱性を兼ね備え、それでいて生産性に優れた、新たなポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決するための手段として、1種又は2種以上のポリエステルを含有するポリエステル層(I)を備えたポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルは、ジカルボン酸及びジオール成分から誘導される構成単位を含み、
前記ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、
前記ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含むことを特徴とする、ポリエステルフィルムを提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは、常温で柔軟性に優れており、単に柔軟であるだけでなく、よりしなやかであり、それでいて、伸度及び強度を有しており、さらには実用上十分な耐熱性を有することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、一般的に使用されているポリエステルフィルム(例えばポリエチレンテレフタレート)との相溶性に優れるものであることから、当該ポリエステルフィルムを製造後、汎用ポリエステル製品への段取り替えを行う場合であっても、該取り替え作業を行い易く、生産性が向上する。
よって、本発明のポリエステルフィルムは、例えば電池用包装材、画像表示用部材、特にフレキシブルディスプレイやウェアラブル端末などの構成部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例で行った、たわみ測定法の方法を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<本ポリエステルフィルム>>
本発明の実施形態の一例に係るポリエステルフィルム(以下、「本ポリエステルフィルム」とも称する)は、1種又は2種以上のポリエステルを含有するポリエステル層(I)を備えた単層又は積層のフィルムである。
【0018】
本ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。
中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。
その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
本ポリエステルフィルムが、このような延伸フィルムであれば、120℃の貯蔵弾性率を10MPa以上とすることが容易となる。
【0019】
<ポリエステル層(I層)>
ポリエステル層(I層)は、1種又は2種以上のポリエステルを含有する層であり、好ましくは、1種のポリエステル又は2種以上のポリエステルブレンドを主成分樹脂として含有する層である。
【0020】
ここで、前記「主成分樹脂」とは、ポリエステル層(I層)を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂の意味である。この際、ポリエステル層(I層)が、2種以上のポリエステルからなるポリエステルブレンドを含有する場合、当該2種以上のポリエステルの合計含有量が、ポリエステル層(I層)を構成する樹脂のうち最も含有割合が多ければよい。
該主成分樹脂の含有量(2種以上のポリエステルを含有する場合、2種以上のポリエステルの合計含有量)は、ポリエステル層(I層)を構成する樹脂のうち30質量%以上、中でも50質量%以上、その中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める場合がある。
【0021】
ポリエステル層(I層)は、それを構成する樹脂が1種のポリエステルのみであってもよいし、例えばポリエステルA及びポリエステルBを含む2種以上の混合樹脂(ポリマーブレンド)であってもよく、また、これらのポリエステル以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0022】
(本ポリエステル)
ポリエステル層(I層)の主成分樹脂としてのポリエステル(「本ポリエステル」とも称する)は、少なくともジカルボン酸及びジオール成分から誘導される構成単位を含むことが好ましい。
前記構成単位とは、ポリエステルの製造原料として用いた化合物(単量体)に由来してポリエステル中に導入された繰り返し単位を指す。
【0023】
また、本ポリエステルは、前記ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、かつ、前記ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含むことが好ましい。
また、本ポリエステルは、前記テレフタル酸、ダイマー酸、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを主構成単位として含むことが好ましい。
なお、主構成単位とは、ポリエステルを構成する全構成単位中の60質量%以上、中でも、70~100質量%を占める繰り返し単位をいう。
【0024】
本ポリエステルは、上述のとおり、1種のポリエステルであってもよいし、2種以上のポリエステルブレンドであってもよいから、本ポリエステルが1種のポリエステルからなる場合、すなわち、上記ポリエステル層(I層)が1種のポリエステルを含む場合、該ポリエステルは、前記ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、前記ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含む「共重合ポリエステルI(d2)」であるのが好ましい。
【0025】
他方、本ポリエステルが2種以上のポリエステルからなる場合、すなわち、上記ポリエステル層(I層)が、2種以上のポリエステルからなるポリエステルブレンドを含む場合、当該ポリエステルブレンドは、前記ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、前記ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含むことが好ましい。
かかる構成単位を有するポリエステルを主成分樹脂として含むポリエステル層(I層)を備えたポリエステルフィルムであれば、柔軟でしなやかであり、伸度、強度及び耐熱性を兼ね備えることができる。
【0026】
この際、ポリエステルブレンドとして、上記構成単位を有していればよく、例えば当該ポリエステルブレンドが、第1のポリエステルと第2のポリエステルの混合樹脂である場合、第1のポリエステル及び第2のポリエステルのそれぞれのポリエステルが、上記構成単位の全てを有している必要はない。
【0027】
(ジカルボン酸成分)
前記ダイマー酸としては、炭素数16以上の不飽和脂肪族カルボン酸の二量体又はその水添物を挙げることができる。
【0028】
前記ダイマー酸は、例えば大豆油や菜種油、牛脂、トール油等の非石油原料から抽出された炭素数16以上の不飽和カルボン酸(例えばリノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪族カルボン酸)の混合物を二量体化又はそれを水添して得ることができる。
このような製法を用いてダイマー酸を得ると、不純物として、過剰に反応した三量体、未反応物である不飽和脂肪族カルボン酸が含有される。
該不純物は、ポリエステルにおいては、ブリードアウトやゲル化の原因となるため、可能な限り少ないことが好ましい。
【0029】
ダイマー酸は、不飽和結合を含み、そのまま使用すると重合中に分岐反応が進行したり、ポリエステル樹脂の色調を悪化させたりする可能性があることから、水添されたものであることが好ましい。
【0030】
中でも、ガラス転移温度をより下げることができる観点から、炭素数20~80、その中でも、26以上或いは60以下、その中でも、30以上或いは50以下のダイマー酸が特に好ましい。
【0031】
前記ダイマーの含有量としては、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステル(二種類以上のポリエステルを含む場合にはその合計質量。以下同様)の全構成単位に対して、5質量%以上25質量%以下含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは19質量%以下であることがより好ましい。
前記ダイマー酸の含有量が、かかる範囲内であれば、本ポリエステルフィルムは、優れた柔軟性と高い透明性を有することができる。
【0032】
なお、ポリエステルのジカルボン酸成分は、1H-NMRスペクトルを測定することにより定量することができる。
【0033】
本ポリエステルは、前記テレフタル酸及びダイマー酸以外の「他のジカルボン酸成分」から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
該「他のジカルボン酸成分」から誘導される構成単位として、例えばa)イソフタル酸、フタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、b)ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の「脂肪族ジカルボン酸」、並びに、これらの炭素数1~4程度のアルキル基を有するエステル及びハロゲン化物等を挙げることができる。
これらは一種又は二種以上を混合して含んでいてもよい。
【0034】
中でも、本ポリエステルフィルムを柔軟化し易くする観点から、本ポリエステルは、前記テレフタル酸及びダイマー酸以外の「他のジカルボン酸成分」から誘導される構成単位として、イソフタル酸を含むことが好ましい。
【0035】
前記イソフタル酸の含有量としては、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、中でも2質量%以上或いは8質量%以下であることがより好ましい。
前記イソフタル酸の含有量が、かかる範囲内であれば、本ポリエステルフィルムは、優れた柔軟性と高い透明性を損なうことなく、耐衝撃性が向上する。
【0036】
また、前記「脂肪族ジカルボン酸」の中でも、ガラス転移温度をより下げることができる観点から、炭素数20~80、中でも30以上或いは60以下、その中でも36以上或いは48以下の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。
【0037】
(ジオール成分)
本ポリエステルは、前記ポリアルキレングリコール以外のジオール成分から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
該ジオール成分から誘導される構成単位として、例えば、a)エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール等の脂肪族ジオール、b)1,2-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、c)キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、ダイマージオールを挙げることができる。
これらは一種又は二種以上を混合して含んでいてもよい。
【0038】
前記ジエチレングリコールの含有量としては、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、0.5質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、中でも0.5質量%以上4質量%以下であるのがより好ましい。
前記ジエチレングリコールの含有量が、かかる範囲内であれば、ポリエステルの熱安定性が良好となり、本ポリエステルフィルムの透明性が向上する。
【0039】
前記1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量としては、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、1質量%以上12質量%以下であるのが好ましく、中でも2質量%以上或いは8質量%以下であるのがより好ましい。
前記1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量が、かかる範囲内であれば、ポリエステルの熱安定性が良好となり、本ポリエステルフィルムは、保管中での耐白化性が良好となる。
【0040】
なお、本ポリエステルの各ジオール成分は、1H-NMRスペクトルを測定することにより定量することができる。
【0041】
本ポリエステル中のジエチレングリコール量を制御する方法は、まず、ポリエステル製造時に原料として使用するジエチレングリコール量を調整する方法を挙げることができる。
また、本ポリエステル中のジエチレングリコールはポリエステル製造時に原料として使用するエチレングリコール2分子が脱水結合し、ジエチレングリコールとなり、ポリエステル中にジオール成分として組み込まれる場合もある。
【0042】
前記の制御方法としては、原料として使用するジカルボン酸成分に対する、原料として使用するエチレングリコールを含むジオール成分の仕込みモル比を上げる方法を挙げることができる。当該方法によると、エチレングリコールの2分子化は促進され、ジエチレングリコール量は増加する傾向となる。
【0043】
また、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物やテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ成分存在下でエステル化反応を行うとエチレングリコールの2分子化が抑制され、ジエチレングリコール量は低下する傾向となる。
【0044】
(ポリアルキレングリコール)
さらなる柔軟性やしなやかさを付与するためには、ダイマー酸成分を増やすことが考えられる。
しかし、ダイマー酸成分を増加させると、他の汎用ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートとの相溶性が失われ、段取り替え作業等により生産性が悪化する。
そこで本発明では、かかる相溶性を改善するために、ポリアルキレングリコール成分を加えることで、とりわけ、長い分子鎖を有するポリアルキレングリコール成分を加えることで、さらなる柔軟性やしなやかさを付与しつつ、それでいて生産性に優れた、ポリエステルフィルムを得ている。
【0045】
また、前記ダイマー酸とポリアルキレングリコールとの合計含有量は、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、6質量%以上45質量%以下であることが好ましく、中でも9質量%以上或いは35質量%以下であることがより好ましく、その中でも12質量%以上或いは25質量%以下であることが特に好ましい。
【0046】
前記ポリアルキレングリコールとしては、質量平均分子量が3000以下のポリエチレングリコールや、数平均分子量が2000以下のポリテトラメチレングリコールが好ましい。
また、ポリエチレングリコールであれば、その質量平均分子量は500以上であることが好ましく、1000以上であることが特に好ましく、その一方、2000以下であるのが好ましい。
さらに、ポリテトラメチレングリコールであれば、その数平均分子量は1500以下であるのがさらに好ましく、中でも1000以下であるのが特に好ましい。他方、500以上であることが好ましく、800以上であることがさらに好ましい。
ポリアルキレングリコールの分子量が、かかる範囲であれば、本ポリエステルフィルムの透明性が向上する。
なお、ポリエチレングリコールの質量平均分子量、ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)での値である。
【0047】
前記ポリアルキレングリコールの含有量としては、ポリエステル層(I)に含まれるポリエステルの全構成単位に対して、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、中でも2質量%以上或いは12質量%以下、その中でも11質量%以下であるのがさらに好ましい。
前記ポリアルキレングリコールの含有量が、かかる範囲内であれば、本ポリエステルフィルムは、優れた柔軟性と高い透明性を有することができる。
【0048】
(ポリエステルブレンド)
上記ポリエステルブレンドの好ましい態様としては、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含む「ポリエステルA」と、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含む「ポリエステルB」とを含むポリエステルブレンドを挙げることができる。
なお、この際、ポリエステルA及び/又はポリエステルBが、さらに、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含んでいればよい。
また、ポリエステルA及び/又はポリエステルBが、さらに、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含んでいればよい。
【0049】
中でも、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコールを含む「ポリエステルA」と、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコール、及びポリアルキレングリコールを含む「ポリエステルB」と、を含むポリエステルブレンドが好ましい。
【0050】
また、上記ポリエステルブレンドは、上記ポリエステルA及びB以外に、さらに、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ホモポリエステルC及び/又は共重合ポリエステルEを含むことが好ましい。
なお、前記ポリエステルEは、ポリエステルA及びポリエステルB以外の共重合ポリエステルである。
【0051】
また、上記ポリエステルブレンドの他例として、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含む「ポリエステルD」と、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む「ポリエステルC」又は「共重合ポリエステルEE」と、を含むポリエステルブレンドを挙げることができる。
なお、前記ポリエステルEEは、ポリエステルD以外の共重合ポリエステルである。
【0052】
1種の共重合ポリエステルに比べて、2種以上のポリエステルブレンドによると、前記ジカルボン酸成分から誘導される構成単位としてのテレフタル酸及びダイマー酸並びに前記ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールの各成分比や固有粘度(IV)を細かく制御することができる等の利点がある。
【0053】
(好適な実施態様1:ポリエステル組成物α)
上記ポリエステルブレンドの特に好ましい態様として、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む「共重合ポリエステルa1」と、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール及びポリアルキレングリコールを含む「共重合ポリエステルb1」と、を含む「ポリエステル組成物α」を挙げることができる。
上記ポリエステル組成物αの最も典型的な例としては、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位としてダイマー酸を含む共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合ポリエステルa1)と、ジオール成分から誘導される構成単位としてポリアルキレングリコールを含む共重合ポリブチレンテレフタレート(共重合ポリエステルb1)と、を含むポリエステル組成物を挙げることができる。
【0054】
上記共重合ポリエステルa1は、さらに、エチレングリコール以外のその他のジオール成分から誘導される構成単位を含むことが好ましく、柔軟性の観点から、ジエチレングリコールを含むことが好ましく、耐熱性及び強度の観点から、1,4-ブタンジオールを含むことが好ましい。
【0055】
上記共重合ポリエステルb1は、テレフタル酸以外のその他のジカルボン酸成分から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
また、上記共重合ポリエステルb1は、上述のとおり、ポリアルキレングリコールとして、ポリテトラメチレングリコール又はポリエチレングリコールを含むことが好ましい。
【0056】
ポリエステル層(I層)において、上記共重合ポリエステルa1と共重合ポリエステルb1の質量割合は、50:50~90:10であることが好ましく、中でも55:45~85:15であることがより好ましく、その中でも60:40~80:20であることがさらに好ましい。
【0057】
上記ポリエステル組成物αは、さらに、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ホモポリエステルC及び/又は「ポリエステルE1」を含むことが好ましい。
なお、ポリエステルE1は、前記共重合ポリエステルa1及び共重合ポリエステルb1以外の共重合ポリエステルである。
上記組成物αは、中でも、寸法安定性及び耐熱性の観点から、ホモポリエステルCを含むことが好ましい。
【0058】
上記共重合ポリエステルE1としては、例えばテレフタル酸以外のジカルボン酸から誘導される構成単位として、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸から選択される何れか1種又は2種以上を含み、また、エチレングリコール以外のジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール及びそれらの誘導体から選択される何れか1種又は2種以上を含む、共重合ポリエステルを挙げることができる。
【0059】
中でも、共重合ポリエステルa1及び/又はポリエステルb1と相容し、融点が270℃以下、或いは、非晶性であり、ガラス転移温度が30~120℃である共重合ポリエステルE1が特に好ましい。
このようなE1を選択することにより、ポリエステル層(I層)のガラス転移温度を高くすることができ、耐熱性を高めることができる。
【0060】
ポリエステル層(I層)において、ホモポリエステルC及び共重合ポリエステルE1の合計含有量は、5~50質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
上記共重合ポリエステルE1は、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含まず、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含まないことが好ましい。
【0062】
(好適な実施態様2:ポリエステル組成物β)
上記ポリエステルブレンドの他の好ましい態様として、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオールを含む「共重合ポリエステルa2」と、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含む「共重合ポリエステルb2」と、を含む「ポリエステル組成物β」を挙げることができる。
上記ポリエステル組成物βの最も典型的な例としては、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位としてダイマー酸を含む共重合ポリブチレンテレフタレート(共重合ポリエステルa2)と、ジオール成分から誘導される構成単位としてポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合ポリエステルb2)と、を含むポリエステル組成物を挙げることができる。
【0063】
上記共重合ポリエステルa2は、さらに、1,4-ブタンジオール以外のその他のジオール成分から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0064】
上記共重合ポリエステルb2は、テレフタル酸以外のその他のジカルボン酸成分から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0065】
また、上記共重合ポリエステルb2は、上述のとおり、ポリアルキレングリコールとして、ポリテトラメチレングリコールやポリエチレングリコールを含むことが好ましい。
【0066】
ポリエステル層(I層)において、上記共重合ポリエステルa2と共重合ポリエステルb2の質量割合は、50:50~90:10であることが好ましく、中でも55:45~85:15であることがより好ましく、その中でも60:40~80:20であることがさらに好ましい。
【0067】
また、上記ポリエステル組成物βは、さらに、上記ホモポリエステルC及び/又は「ポリエステルE2」を含むことが好ましい。
なお、ポリエステルE2は、前記共重合ポリエステルa2及び共重合ポリエステルb2以外の共重合ポリエステルである。
上記組成物βは、中でも、寸法安定性及び耐熱性の観点から、ホモポリエステルCを含むことが好ましい。
【0068】
前記ポリエステルE2としては、共重合ポリエステルa2及び共重合ポリエステルb2以外であって、上記ポリエステルE1で例示したものを使用することができる。
中でも、共重合ポリエステルa2及び/又はポリエステルb2と相容し、融点が270℃以下、或いは、非晶性であり、ガラス転移温度が30~120℃である共重合ポリエステルE2が好ましい。
このようなポリエステルE2を選択することにより、ポリエステル層(I層)のガラス転移温度を高くすることができ、耐熱性を高めることができる。
【0069】
なお、上記組成物βを用いた際のポリエステル層(I層)における、該ホモポリエステルC及び共重合ポリエステルE2の含有量の好ましい範囲は、実施形態1と同様である。
【0070】
上記共重合ポリエステルE2は、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含まず、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含まないことが好ましい。
【0071】
(好適な実施態様3:ポリエステル組成物γ)
上記ポリエステルブレンドの特に好ましい態様として、上記「共重合ポリエステルa1」と、上記「共重合ポリエステルb2」と、を含む「ポリエステル組成物γ」を挙げることができる。
上記ポリエステル組成物γの最も典型的な例として、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位としてダイマー酸を含む共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合ポリエステルa1)と、ジオール成分から誘導される構成単位としてポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合ポリエステルb2)と、を含むポリエステル組成物を挙げることができる。
【0072】
(好適な実施態様4:ポリエステル組成物δ)
上記ポリエステルブレンドの特に好ましい態様として、上記「共重合ポリエステルa2」と、上記「共重合ポリエステルb1」と、を含む「ポリエステル組成物δ」を挙げることができる。
上記ポリエステル組成物δの最も典型的な例としては、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位としてダイマー酸を含む共重合ポリブチレンテレフタレート(共重合ポリエステルa2)と、ジオール成分から誘導される構成単位としてポリアルキレングリコールを含む共重合ポリブチレンテレフタレート(共重合ポリエステルb1)と、を含むポリエステル組成物を挙げることができる。
【0073】
なお、上記実施態様3及び4において、上記共重合ポリエステルa1、a2、b1及びb2の具体例及び好ましい態様については、上記実施態様1及び2と同様である。
【0074】
また、上記ポリエステル組成物γは、上記ホモポリエステルC及び/又は「ポリエステルE3」を含むことが好ましい。
なお、ポリエステルE3は、前記共重合ポリエステルa1及び共重合ポリエステルb2以外の共重合ポリエステルである。
【0075】
前記ポリエステルE3としては、共重合ポリエステルa1及び共重合ポリエステルb2以外であって、上記ポリエステルE1で例示したものを使用することができる。
中でも、共重合ポリエステルa1及び/又はポリエステルb2と相容し、融点が270℃以下、或いは、非晶性であり、ガラス転移温度が30~120℃である共重合ポリエステルが好ましい。
このようなポリエステルを選択することにより、ポリエステル層(I層)のガラス転移温度を高くすることができ、耐熱性を高めることができる。
【0076】
また、上記ポリエステル組成物δは、上記ホモポリエステルC及び/又は「ポリエステルE4」を含むことが好ましい。
なお、ポリエステルE4は、前記共重合ポリエステルa2及び共重合ポリエステルb1以外の共重合ポリエステルである。
【0077】
前記ポリエステルE4としては、共重合ポリエステルa2及び共重合ポリエステルb1以外であって、上記ポリエステルE1で例示したものを使用することができる。
中でも、共重合ポリエステルa2及び/又はポリエステルb1と相容し、融点が270℃以下、或いは、非晶性であり、ガラス転移温度が30~120℃である共重合ポリエステルが好ましい。
このようなポリエステルを選択することにより、ポリエステル層(I層)のガラス転移温度を高くすることができ、耐熱性を高めることができる。
【0078】
上記ポリエステル組成物γ及びδは、中でも、寸法安定性及び耐熱性の観点から、ホモポリエステルCを含むことが好ましい。
【0079】
なお、上記ポリエステル組成物γ及びδを用いた際のポリエステル層(I層)における、該ホモポリエステルC及び共重合ポリエステルE3又はE4の含有量の好ましい範囲は、実施形態1と同様である。
【0080】
上記共重合ポリエステルE3及びE4は、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含まず、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含まないことが好ましい。
【0081】
(好適な実施形態5:ポリエステル組成物ε)
上記ポリエステルブレンドの他の好ましい態様として、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含む「共重合ポリエステルD」と、
ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含むホモポリエステルC及び/又は前記共重合ポリエステルD以外の「共重合ポリエステルEE」と、を含む「ポリエステル組成物ε」を挙げることができる。
【0082】
上記共重合ポリエステルDとしては、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、ジオール成分から誘導される構成単位として、1,4-ブタンジオール及びポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエステルd1や、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸を含み、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコール及びポリアルキレングリコールを含む共重合ポリエステルd2を好ましい態様として挙げることができる。
【0083】
上記ポリエステル組成物εは、上記の中でも、寸法安定性及び耐熱性の観点から、ホモポリエステルCを含むことが好ましい。
【0084】
ポリエステル層(I層)において、上記共重合ポリエステルDとホモポリエステルC又は共重合ポリエステルE3との質量割合は、50:50~90:10であることが好ましく、中でも55:45~85:15であることがより好ましく、その中でも60:40~80:20であることがさらに好ましい。
【0085】
前記共重合ポリエステルEEとしては、共重合ポリエステルD以外であって、上記共重合ポリエステルE1で例示したものを使用することができる。
中でも、共重合ポリエステルDと相容し、融点が270℃以下、或いは、非晶性であり、ガラス転移温度が30~120℃である共重合ポリエステルが好ましい。
このような共重合ポリエステルEEを選択することにより、ポリエステル層(I層)のガラス転移温度を高くすることができ、耐熱性を高めることができる。
【0086】
なお、上記ポリエステル組成物εを用いた際のポリエステル層(I層)における、該ホモポリエステルC又は共重合ポリエステルEEの含有量の好ましい範囲は、実施形態1と同様である。
【0087】
上記共重合ポリエステルEEは、ジカルボン酸成分から誘導される構成単位として、ダイマー酸を含まず、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、ポリアルキレングリコールを含まないことが好ましい。
【0088】
(ポリエステルの固有粘度(IV))
本ポリエステル(2種以上のポリエステルを使用する場合にはポリエステル混合物として)の固有粘度(IV)は、0.40dL/g~1.20dL/gであることが好ましく、中でも0.45dL/g以上或いは1.15dL/g以下、その中でも0.48dL/g以上或いは1.10dL/g以下であることがさらに好ましい。
ポリエステルの固有粘度が、かかる範囲内であれば、生産性を悪化させずに成形加工性に優れたポリエステルとすることが可能となる。
【0089】
(本ポリエステルの製造方法)
本ポリエステルの製造方法は特に制限されるものではなく、通常の方法を適用することができる。例えば、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を含むジカルボン酸成分とエチレングリコール、好ましくはジエチレングリコールを含むジオール成分とを、所定割合で攪拌下に混合して原料スラリーとし(「原料スラリー調製工程」)、次いで、該原料スラリーを常圧又は加圧下で加熱して、エステル化反応させてポリエステル低重合体(以下「オリゴマー」と称する場合がある。)とし(「オリゴマー調製工程」)、次いで、得られたオリゴマーにダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体とポリアルキレングリコールを添加し、エステル交換触媒等の存在下に、漸次減圧するとともに、加熱して、溶融重縮合反応させポリエステルを得(「ポリエステル調製工程」)、さらに必要に応じて得られた該ポリエステルを更に固相重縮合反応に供してもよい(「固相重縮合工程」)。
【0090】
なお、ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体やポリアルキレングリコールは、原料スラリーに添加する方法、オリゴマーに添加する方法のいずれの方法も適用することができる。
【0091】
上記エステル交換触媒としては、例えば三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等を挙げることができる。
なお、これらの触媒は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0092】
また、ポリエステルの製造時、エステル交換触媒と共に安定剤を併用することが好ましく、安定剤としては、正リン酸、ポリリン酸、及び、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等の5価のリン化合物、亜リン酸、次亜リン酸、及びジエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3価のリン化合物等を挙げることができる。
中でも、3価のリン化合物は、5価のリン化合物よりも一般に還元性が強く、重縮合触媒として添加した金属化合物が還元されて析出し、異物を発生する原因となる虞があるため、5価のリン化合物の方が好ましい。
【0093】
該溶融重縮合反応における反応圧力は、絶対圧力で0.001kPa~1.33kPaであることがこのましい。
【0094】
また、反応温度としては、220℃~280℃であることが好ましく、中でも230℃以上或いは260℃以下であることがより好ましい。
【0095】
固相重縮合反応は、減圧下または不活性ガス雰囲気下であり、反応温度は180℃~220℃であることが好ましい。
【0096】
固相重縮合反応の反応時間は5時間~100時間であることが好ましい
【0097】
前記溶融重縮合反応条件、固相重縮合反応条件とすることにより所望の固有粘度を有するポリエステルを得ることができる。
【0098】
(その他の成分)
上記ポリエステル層(I層)は、上記ポリエステル以外の「他の樹脂」を含んでいてもよい。
当該「他の樹脂」としては、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0099】
上記ポリエステル層(I層)は、その他にも、応じて更に結晶核剤、酸化防止剤、着色防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、離型剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機及び/又は有機粒子等の各種添加剤を含有することができる。
【0100】
<積層構成>
本ポリエステルフィルムは、上述したように、ポリエステル層(I層)と他の層を備えた積層フィルムであってもよい。
【0101】
例えばポリエステル層(I層)の表裏両側に、他のポリエステル層(II層)、例えば、「ポリエステルF」を主成分樹脂として含有するポリエステル層(II層)を積層してなる構成を備えた積層フィルムを挙げることができる。
【0102】
(ポリエステルF)
当該ポリエステルFは、ポリエステル層(I層)のポリエステルが結晶性の場合は、該ポリエステルの融点よりも高い融点を有するものであることが好ましく、ポリエステル層(I層)のポリエステルが非晶性の場合は、該ポリエステルのガラス転移点よりも高い温度の融点を有するものであることが好ましい。
【0103】
ポリエステルFは、ポリエステル層(I層)のポリエステルが結晶性の場合は、該ポリエステルの融点よりも10~100℃高い、中でも20℃以上或いは90℃以下高い、その中でも40℃以上或いは70℃以下高い融点を有するものであることが好ましく、他方、ポリエステル層(I層)のポリエステルが非晶性の場合は、該ポリエステルのガラス転移点よりも120~260℃高い、中でも140℃以上或いは230℃以下高い、その中でも160℃以上或いは200℃以下高い融点を有するものであることが好ましい。
【0104】
なお、ポリエステル層(I層)の表裏両側に存在するポリエステル層(II層)の主成分となるポリエステルFは、表裏で異なっていてもよいし同一でもよい。
中でも、表裏のポリエステルFの融点が大きく異ならないことが好ましい。
【0105】
具体的には、表裏両側に存在するポリエステル層(II層)の融点の差が80℃以下、中でも60℃以下、その中でも40℃以下であることが好ましい。
ポリエステル層(I層)の表裏両側のポリエステル層Fが同一であると、2種3層の共押出成形が可能となるので、この態様も好ましい。
【0106】
上記ポリエステルFとしては、例えばジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、アルコール成分としてエチレングリコールを含むホモポリエステル又は共重合ポリエステルを好適に用いることができる。
【0107】
ポリエステルFが共重合ポリエステルである場合には、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。
前記共重合ポリエステルにおいて、ジカルボン酸成分に占める「テレフタル酸以外のジカルボン酸成分」の割合は、1~30mol%であるのが好ましく、中でも5mol%以上或いは25mol%以下、その中でも10mol%以上或いは20mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0108】
ポリエステルFが共重合ポリエステルである場合には、エチレングリコール以外のアルコール成分としては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールおよびそれらの誘導体などを挙げることができる。
前記共重合ポリエステルにおいて、アルコール成分に占める「エチレングリコール以外のアルコール成分」の割合は、1~100mol%であるのが好ましく、中でも5mol%以上或いは95mol%以下、その中でも10mol%以上或いは90mol%以下であるのがさらに好ましい。
【0109】
上記ポリエステル層(II層)は、ポリエステル以外の「他の樹脂」を含んでいてもよい。
当該「他の樹脂」としては、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
また、上記ポリエステル層(II層)は、その他にも、応じて更に結晶核剤、酸化防止剤、着色防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、離型剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機及び/又は有機粒子等の各種添加剤を含有することができる。
【0110】
このようなポリエステルFを主成分樹脂として含有するポリエステル層(II層)を積層してなる構成を備えた積層フィルムであれば、ポリエステル層(II層)/ポリエステル層(I層)/ポリエステル層(II層)となるように原料樹脂組成物を共押出などによって積層し、延伸した後、共重合ポリエステル層(I層)の単層からなる場合に比べて高い温度で熱固定処理することができるため、共重合ポリエステル層(I層)の単層では達成することができないレベルに柔軟化することができたり、耐熱性を上げたり、熱収縮をより一層防ぐことができたりする。
【0111】
このような前記積層フィルムにおいて、ポリエステル層(II層)の各層厚みは、ポリエステル層(I層)の厚みの1~20%であるのが好ましい。
ポリエステル層(II層)の各層厚みが、ポリエステル層(I層)の厚みの1%以上であれば、生産性を大きく損なうことなく製膜が可能である。他方、20%以下であれば、要求される柔軟性を十分に確保できるから好ましい。
かかる観点から、ポリエステル層(II層)の各層厚みは、ポリエステル層(I層)の厚みの1~20%であるのが好ましく、中でも3%以上或いは15%以下、その中でも5%以上或いは12%以下であるのがさらに好ましい。
【0112】
なお、ポリエステル層(I層)の表裏両側に存在するポリエステル層(II層)の厚みは、表裏で異なっていてもよいし、同一でもよい。
【0113】
<本ポリエステルフィルムの厚み>
本ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定するものではなく、用途によって適切な厚みを選択することができる。
【0114】
中でも、本ポリエステルフィルムの特徴をより発揮するという観点から、フィルムの全厚みが20μmを超えるのが好ましい。
【0115】
フィルムのコシの強さは厚さの三乗に比例すると言われている。
しかし、本ポリエステルフィルムは、20μmを超える厚みを有していても、コシが弱くてしなやかであるという特徴を有しており、本発明の利益をより一層享受することができる。かかる観点から、本ポリエステルフィルムの全厚みは20μmを超えるのが好ましく、中でも23μm以上、その中でも25μm以上であるのがさらに好ましい。
一方、本ポリエステルフィルムの全厚みの上限は特に限定するものではない。1000μm以下であるのが好ましく、中でも500μm以下、その中でも250μm以下、その中でも100μm以下であるのがさらに好ましい。
【0116】
<本ポリエステルフィルムの物性>
本ポリエステルフィルムは、次の物性を得ることができる。
【0117】
(25℃の貯蔵弾性率)
本ポリエステルフィルムは、25℃の貯蔵弾性率が3300MPa以下であるのが好ましい。
25℃、すなわち常温時の貯蔵弾性率が3300MPa以下であることによって、例えばウェアラブル端末を装着時において、皮膚に十分追随することができる。
かかる観点から、本ポリエステルフィルムは、25℃の貯蔵弾性率が3300MPa以下であるのが好ましく、中でも2500MPa以下、その中でも2000MPa以下であるのがさらに好ましい。
【0118】
他方、当該25℃の貯蔵弾性率は、工程におけるハンドリング性の観点から、300MPa以上であるのが好ましく、中でも500MPa以上、その中でも700MPa以上であるのがさらに好ましい。
なお、25℃の貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載された測定方法によって得られる値である。
【0119】
本ポリエステルフィルムにおいて、25℃の貯蔵弾性率を前記範囲にするには、上述したポリエステルを使用することによって達成することができる。
また、前記の通り、ポリエステル層(I層)の表裏両側に、ポリエステルFを主成分樹脂として含有するポリエステル層(II層)を積層してなる構成を備えた積層フィルムとすることによっても、調整することができる。
さらには、本発明のポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件及びその後の熱固定条件によっても、調整することができる。
【0120】
(120℃の貯蔵弾性率)
本ポリエステルフィルムは、120℃の貯蔵弾性率が10MPa以上であるのが好ましい。
このように高温時の貯蔵弾性率が10MPa以上であることによって、十分な耐熱性を有し、加工時におけるシワの発生を抑制することができる。
かかる観点から、本ポリエステルフィルムは、120℃の貯蔵弾性率が10MPa以上であるのが好ましく、中でも30MPa以上、その中でも80MPa以上であるのがさらに好ましい。
【0121】
他方、本ポリエステルフィルムは、加工時に必要となる熱量を抑制できる観点から、120℃の貯蔵弾性率が500MPa以下であるのが好ましく、中でも400MPa以下、その中でも300MPa以下であるのがさらに好ましい。
なお、120℃の貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載された測定方法によって得られる値である。
【0122】
本ポリエステルフィルムにおいて、120℃の貯蔵弾性率を前記範囲に調整するための方法は、25℃の貯蔵弾性率を調整する方法として、前記した手段と同様の方法を挙げることができる。これらの中でも特に、延伸条件及びその後の熱固定条件を調整する方法が効果的である。
【0123】
(25℃の損失正接(tanδ))
本ポリエステルフィルムは、25℃の損失正接(tanδ)が0.02以上であるのが好ましい。
25℃すなわち常温時の損失正接が0.02以上であることによって、例えばウェアラブル端末を装着時において、皮膚に十分追随することができる。
かかる観点から、本ポリエステルフィルムは、25℃の損失正接が0.05以上であるのが好ましく、中でも0.08以上、その中でも0.10以上であるのがさらに好ましい。
【0124】
他方、当該25℃の損失正接(tanδ)は、工程におけるハンドリング性の観点から、1.5以下であるのが好ましく、中でも1.0以下、その中でも0.5以下であるのがさらに好ましい。
【0125】
本ポリエステルフィルムにおいて、25℃の損失正接を前記範囲に調整するための方法は、25℃の貯蔵弾性率を調整する方法として前記した手段と同様の方法を挙げることができる。
【0126】
(結晶融解エンタルピーΔHm)
本ポリエステルフィルムは、ポリエステル層(I層)のポリエステルが結晶性の場合、当該ポリエステル(ポリエステル組成物)の結晶融解エンタルピーΔHmは3.0J/g以上であるのが好ましく、中でも5.0J/g以上、その中でも7.0J/g以上であるのがさらに好ましい。
ΔHmは結晶化度の指標となるものであり、3.0J/g以上であることにより、十分な耐熱性が得られ、熱収縮性を抑えることができる。
【0127】
(しなやかさ(コシ))
本ポリエステルフィルムは、後述の実施例に記載されているたわみ測定法によって測定される「しなやかさ(コシ)」、すなわち、垂直方向に下がった長さを(a)、水平方向に突き出た長さを(b)とした時、(a)と(b)との比の値((a)/(b))は、0.2以上であることが好ましく、中でも0.5以上、その中でも1.0以上であることがさらに好ましい。
前記(a)/(b)が0.2以上であることによって、フィルムに十分なしなやかさを有することが示唆される。
【0128】
本ポリエステルフィルムにおいて、(a)/(b)を前記範囲に調整するには、先ずはフィルムの厚みを調整することが大切であり、次に、同一のフィルム厚みにおいては、ポリエステル層(I層)のポリエステルに、上述した特定のポリエステルを使用することで達成することができる。
かかる観点から、とりわけ、実施態様1~3の何れかを採用することが特に好ましい。
【0129】
<本ポリエステルフィルムの製造方法>
本ポリエステルフィルムの製造方法の一例として、本ポリエステルフィルムが二軸延伸フィルムの場合の製造方法について説明する。
但し、ここで説明する製造方法に限定するものではない。
【0130】
先ずは、公知の方法により、原料、例えばポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
【0131】
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
【0132】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは3.5~6倍である。
【0133】
そして、引き続き130~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0134】
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
【0135】
前記熱固定処理(「熱処理」とも称する)は、ポリエステル層(I層)の単層からなる場合、かかるポリエステル層(I層)形成用ポリエステルの融点よりも10~70℃低い温度で行うのが好ましい。
【0136】
本ポリエステルフィルムがポリエステル層(I層)とポリエステル層(II層)との積層構成を備える場合、ポリエステル層(I層)及びポリエステル層(II層)を共押出した後、上述のように、一体のフィルムとして、延伸及び熱固定処理を行えばよい。
【0137】
この際の熱固定処理は、ポリエステル層(II層)形成用ポリエステルFの融点よりも低い温度に加熱して熱固定処理するのが好ましい。
さらに、ポリエステル層(I層)形成用ポリエステルが結晶性である場合は、該ポリエステルの融点よりも高い温度で熱固定処理するのが好ましい。
そのような温度で熱固定処理することにより、ポリエステル層(I層)の単層では達成することができないレベルに柔軟化することができる。
これは、ポリエステルFの融点よりも低い温度で熱固定することにより、表層の延伸配向が固定されるため、伸度、強度及び耐熱性(熱収縮性)が良好となる一方、該ポリエステル層(I層)形成用ポリエステルの融点よりも高い温度で熱固定することにより、中間層の延伸配向や歪みが緩和されるため、より一層しなやかなフィルムとすることができるためである。
【0138】
<本ポリエステルフィルムの用途>
本ポリエステルフィルムは、上述したように、常温で柔軟性に優れており、単に柔軟であるだけでなく、コシが殆ど無いという特徴を有している一方、それでいて実用上の十分な耐熱性を発揮することができる。
【0139】
よって、本ポリエステルフィルムは、例えば電池用包装材、とりわけ、表面保護フィルム、画像表示用部材、光学部材、フレキシブルディスプレイ、ウェアラブル端末などの構成部材として好適に用いることができる。
【0140】
本ポリエステルフィルムの用途は前記に限定されるものではなく、例えば各種包装用材料、建材、文房具、自動車部材、その他の構造部材等に用いることができる。
【0141】
<<語句の説明など>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0142】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0143】
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例
【0144】
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明が、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0145】
<評価方法>
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
【0146】
(1)引張貯蔵弾性率E’、正接損失(tanδ)
JIS K 7244に基づき、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置DVA-200を用い、実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)の幅方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度1℃/分で-100℃から200℃まで測定し、得られたデータから、25℃及び120℃での引張貯蔵弾性率E’と、25℃での正接損失(tanδ)を得た。
【0147】
(2)結晶融解エンタルピーΔHm
JIS K7141-2(2006年)に基づき、測定サンプルの示差走査熱量計(DSC)測定を行った。30℃から280℃まで10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に280℃から30℃まで10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から280℃まで10℃/分で再昇温させた。このとき再昇温過程における結晶融解ピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
なお、単層の場合は、ポリエステルフィルムを測定サンプルとし、積層の場合は中間層を測定サンプルとした。
【0148】
(3)ヘーズ
ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて、JIS K7136に準じて、実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)のヘーズを測定した。
【0149】
(4)ヤング率
実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)について、引張試験機((株)インテスコ製、インテスコモデル2001型)を用いて温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において、長さ300mm、巾20mmのポリエステルフィルム(サンプル)を10%/分の歪み速度で引張り、引張応力-ひずみ曲線の初め直線部分を用いて次式によって、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの計算をした。
E=Δσ/Δε
(前記式中、Eはヤング率(GPa)、Δσは直線の2点間の元の平均断面積による応力差(GPa)、Δεは同一2点間の歪み差/初期長さである)
フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)に5点ずつ測定し、それぞれについて平均値を求めた。
【0150】
(5)引張破断強度
実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)について、引張試験機((株)インテスコ製、インテスコモデル2001型)を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において、幅15mmのポリエステルフィルム(サンプル)をチャック間50mmとなるように試験機にセットして、200mm/分の歪み速度で引張り、下記式により、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=F/A
ただし、前記式中、Fは破断時に於ける荷重(N)であり、Aは試験片の元の断面積(mm)である。
フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)に5点ずつ測定し、それぞれについて平均値を求めた。
【0151】
(6)引張破断伸度
実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)について、前記の引張破断強度と同様の試験を行い、下記式により、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの引張破断伸度を求めた。
引張破断伸度(%)=100×(L-L0)/L0
ただし、前記式中、Lは破断時の標点間距離(mm)であり、L0は元の標点間距離(mm)である。
フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)に5点ずつ測定し、それぞれについて平均値を求めた。
【0152】
(7)加熱収縮率
実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)を無張力状態で120℃に保ったオーブン中、5分間処理し、その前後の試料の長さを測定して次式にて、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの加熱収縮率を算出した。
加熱収縮率(%)={(L0-L1)/L0}×100
(前記式中、L0は加熱処理前のサンプル長、L1は加熱処理後のサンプル長)
フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)に5点ずつ測定し、それぞれについて平均値を求めた。
【0153】
(8)しなやかさ(コシ)の評価 (たわみ測定法)
実施例・比較例で得たポリエステルフィルム(サンプル)を23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置した後に、長さ150mm、幅50mmのサイズに切り出して、測定サンプルフィルムを作製した。
図1に示すように、当該測定サンプルフィルムを、23℃の環境下、机の端から長さ50mm外へ突き出すように机の上に載置する共に、机の上の測定サンプルフィルムの上に200gの錘を置いて固定し、机の端から突き出たサンプルの先端側を自重によって下方向へ撓ませた。3分後、机の端から突き出た測定サンプルフィルムの先端部が垂直下方に撓んで垂れ下がった長さ(a)と、当該先端部が机の端から水平方向に突き出た長さ(b)とを測定した。
そして、水平方向に突き出た長さ(b)に対する撓んで垂れ下がった長さ(a)の比率((a)/(b))を計算し、0.2以上であれば「合格(〇)」、0.2未満であれば「不合格(×)」と評価した。
【0154】
(原料)
実施例及び比較例では次の原料を使用した。
【0155】
(1)共重合ポリエステルa1
ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸(炭素数36)を含み、該テレフタル酸の含有量が58.5質量%であり、該ダイマー酸の含有量は17.5質量%であり、該イソフタル酸の含有量が3.5質量%であり、ジオール成分から誘導される構成単位としてエチレングリコールを18.5質量%及びジエチレングリコールを2質量%含む共重合ポリエステルa1(固有粘度(IV)0.68dl/g)を用意した。
【0156】
前記共重合ポリエステルa1は、次のようにして製造した。
【0157】
テレフタル酸、イソフタル酸は重合後のポリエステル中にそれぞれ58.5質量%、3.5質量%となる量、エチレングリコールはテレフタル酸とイソフタル酸の合計量に対しモル比で1.2倍となる量を攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル化反応槽に仕込み、温度250℃、圧力0.90kg/cmにてエステル化反応を4時間行った。次に、温度250℃、常圧下で4時間エステル化反応を行ない、ポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
【0158】
次いで、該オリゴマーを、留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送し、炭素数36の水添ダイマー酸(クローダジャパン製「Pripol1009」)を重合後のポリエステル中に17.5質量%となる量添加し、さらに触媒として、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を添加し、正燐酸のエチレングリコール溶液を添加した。
【0159】
該重縮合反応槽内温度を280℃に保ちながら、2時間かけて圧力を0.13kPaに減圧し、次いで、同圧力にて3時間反応を行い、反応系を常圧に戻し反応を終了した。得られたポリエステルを該重縮合反応槽の底部からストランドとして抜き出し、水中を潜らせた後、カッターで該ストランドをカットすることにより共重合ポリエステルa1のペレットを得た。
【0160】
(2)共重合ポリエステルa1-2
ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸及びダイマー酸(炭素数36)を含み、該テレフタル酸の含有量が51質量%であり、該ダイマー酸の含有量が29質量%であり、ジオール成分から誘導される構成単位としてエチレングリコールを18質量%及びジエチレングリコールを2質量%含む共重合ポリエステルa1-2(固有粘度(IV)0.72dl/g)を用意した。
【0161】
前記共重合ポリエステルa1-2は、ダイマー酸(クローダジャパン製「Pripol1009」)を重合後のポリエステル中に29質量%となる量添加した以外は、共重合ポリエステルa1と同様にして製造した。
【0162】
(3)共重合ポリエステルb1
ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、該テレフタル酸の含有量が47質量%であり、ジオール成分から誘導される構成単位として1,4-ブタンジオール及び数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールを含み、該ブタンジオールの含有量が23質量%であり、該ポリテトラメチレングリコールの含有量が30質量%である共重合ポリエステルb1(固有粘度(IV)1.18dl/g)を用意した。
【0163】
前記共重合ポリエステルb1は、次のようにして製造した。
【0164】
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル交換反応槽に、ジメチルテレフタレート64.1質量部、1,4-ブタンジオール(BG)36.8質量部、フッ素含有量190質量ppmのポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル製、数平均分子量1000)30質量部、触媒としてテトラブチルチタネートを金属チタン換算で、生成するポリマーに対して33ppmとなるようにBG溶液として添加した。
【0165】
次いで、槽内液温を150℃に60分保持した後90分かけて210度まで昇温し、210℃で30分保持した。この間、生成するメタノールを留出させつつ、トータル180分エステル交換反応を行った。
【0166】
エステル交換反応終了の15分前に、酢酸マグネシウム・四水塩をBGに溶解して添加し、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤〔チバ・ガイギー(株)製Irganox1010〕をBGのスラリー状態で加え、引き続き、テトラブチルチタネートをBGの溶液として添加した後、攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた重縮合反応槽に移送し減圧を付加して、重縮合反応を行った。
【0167】
重縮合反応は槽内圧力を常圧から0.4kPaまで85分かけて徐々に減圧し、0.4KPa以下で継続した。反応温度は減圧開始から15分間210℃に保持し、以後、この反応の最高温度240℃まで45分間で昇温し、この温度で1時間保持し、その後最終温度235℃となるようにコントロールした。
【0168】
最終温度は235℃である。所定の撹拌トルク(IV=1.20に相当)に到達した時点で反応を終了した。重縮合反応に要した時間は150分であった。(重縮合反応時間は減圧開始から窒素で復圧までの時間とした)
【0169】
次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いでポリマー抜出しのため加圧状態にした。抜出しの際の口金の熱媒温度を230℃としてポリマーを口金からストランド状に抜き出し、次いで冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングし共重合ポリエステルb1のペレットを得た。
【0170】
(4)ホモポリエステルC1
カルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含むポリエステルであって、固有粘度(IV)が0.82dl/gであるホモポリエステル(ホモPET)C1を用意した。
【0171】
(5)ホモポリエステルC2
カルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ポリエステルであって、固有粘度(IV)が0.64dl/gであるホモポリエステルC2(ホモPET)を用意した。
【0172】
(6)粒子含有ポリエステルC3
カルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ポリエステルであって、固有粘度(IV)が0.70dl/gであり、平均粒径4μmのシリカ粒子を3.5質量%含む、粒子含有ホモポリエステルC3(粒子含有ホモPET)を用意した。
【0173】
(7)粒子含有ポリエステルC4
カルボン酸成分から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、かつ、ジオール成分から誘導される構成単位として、エチレングリコールを含む、ポリエステルであって、固有粘度(IV)が0.62dl/gであり、平均粒径4μmのシリカ粒子を0.6質量%含む、粒子含有ホモポリエステルC4(粒子含有ホモPET)を用意した。
【0174】
[実施例1]
中間層として、共重合ポリエステルa1を50質量%、共重合ポリエステルb1を30質量%及びホモポリエステルC1を20質量%含む中間層形成用ポリエステル組成物のチップを、270℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
【0175】
また、表層として、ホモポリエステルC2を90質量及び粒子含有ポリエステルC3を10質量%含有する表層形成用ポリエステル組成物のチップを、280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
【0176】
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。
【0177】
次いで、得られた未延伸シートを、長手方向(MD)に80℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで幅方向(TD)に120℃で4.6倍に延伸した後、200℃で10秒間熱処理を施し、幅方向(TD)に10%弛緩して、1μm(表層)/23μm(中間層)/1μm(表層)の厚み構成からなる、厚み25μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
【0178】
[実施例2~5及び比較例1~2]
表1に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
なお、実施例5で作製したポリエステルフィルム(サンプル)は、中間層として示した原料で形成された層から成る単層構成の二軸延伸ポリエステルフィルムである。
【0179】
【表1】
【0180】
上記実施例及び比較例の結果並びに発明者がこれまで行ってきた試験結果より、特定のポリエステルを含むポリエステル層(I層)を備えたポリエステルフィルムは、常温で柔軟性に優れており、単に柔軟であるだけでなく、よりしなやかであり、それでいて、伸度及び強度を有しており、さらには実用上十分な耐熱性を有することがわかった。
【0181】
上記結果を踏まえると、さらに、次のような実施形態の場合も、上記実施例と同様の効果を得ることができると考えることができる。
【0182】
先ず、ジカルボン酸から誘導される構成単位として、テレフタル酸を含み、ジオール成分から誘導される構成単位としてエチレングリコール及びポリエチレングリコールを含み、該ポリエチレングリコールの含有量は20質量%である、共重合ポリエステルb1-2を用意する。
【0183】
そして、中間層として、共重合ポリエステルa1を50質量%、共重合ポリエステルb1-2を30質量%及びポリエステルC1を20質量%含む中間層形成用ポリエステル組成物のチップを、270℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込む。
また、表層として、ポリエステルC2を90質量及び粒子含有ポリエステルC3を10質量%含有する表層形成用ポリエステル組成物のチップを280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込む。
【0184】
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得る。
次いで、得られた未延伸シートを、長手方向(MD)に80℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで幅方向(TD)に120℃で4.6倍に延伸した後、200℃で10秒間熱処理を施し、幅方向(TD)に10%弛緩して、1μm(表層)/23μm(中間層)/1μm(表層)の厚み構成からなる厚み25μmの二軸延伸共重合ポリエステルフィルム(サンプル)を得る。
【0185】
なお、前記共重共重合ポリエステルb1-2は、次のようにして製造することができる。
【0186】
テレフタル酸を重合後のポリエステル中に61質量%となる量、エチレングリコールはテレフタル酸に対しモル比で1.2倍となる量を攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル化反応槽に仕込み、温度250℃、圧力0.90kg/cm2にてエステル化反応を4時間行う。
【0187】
次に、温度250℃、常圧下で4時間エステル化反応を行ない、ポリエステル低重合体(オリゴマー)を得る。
【0188】
次いで、該オリゴマーを、留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送し、質量平均分子量が2000であるポリエチレングリコールのエチレングリコール溶液をポリエチレングリコールが重合後のポリエステル中に20質量%となる量添加し、さらに触媒として、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を添加し、正燐酸のエチレングリコール溶液を添加する。
さらに生成するポリマーに対して0.35質量部となる、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔チバ・ガイギー(株)製Irganox1330〕をエチレングリコール溶液で添加する。
また、重合時の発泡を抑えるため信越化学製シリコンオイルKF-54のエチレングリコール溶液を添加する。
【0189】
該重縮合反応槽内温度を280℃に保ちながら、2時間かけて圧力を0.13kPaに減圧し、次いで、同圧力にて3時間反応を行い、反応系を常圧に戻し反応を終了する。得られたポリエステルを該重縮合反応槽の底部からストランドとして抜き出し、水中を潜らせた後、カッターで該ストランドをカットすることにより共重合ポリエステルb1-2のペレットを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
特定のポリエステルを用いて得られる、本発明のポリエステルフィルムは、柔軟性に優れており、単に柔軟であるだけでなく、よりしなやかであり、それでいて、伸度及び強度を有しており、さらには実用上十分な耐熱性を有することから、表面保護フィルム、光学部材、ウェアラブル端末、フレキシブルディスプレイ等の用途に好適に使用することができる。
図1