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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】管腔臓器間バイパス用ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20240220BHJP
【FI】
A61F2/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020064764
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159393
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権 志明
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503928(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230413(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230435(WO,A1)
【文献】特開2015-036043(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するための管腔臓器間バイパス用ステントであって、
細長い筒状の本体部と、
前記本体部の軸方向への位置ずれを防止するためのステント抜止部と、
前記ステント抜止部の位置を特定可能とする着色領域を前記本体部の外周面に形成する着色領域形成部と、
を有し、
前記本体部の外周面において、前記着色領域の辺縁部が、前記ステント抜止部の位置を通るように周方向に沿って形成されていることを特徴とする管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項2】
前記着色領域により特定可能な前記ステント抜止部が、前記本体部における軸方向の一方の端部側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項3】
前記ステント抜止部として、前記本体部における軸方向の一方の端部に設けられた端部フッキング部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記一方の端部を通るように周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項4】
前記端部フッキング部が、
弾性を有する線状の部材により構成され、
前記一方の端部に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、
前記基端部と前記先端部との間の中間部が湾曲しており、
前記先端部および前記中間部の少なくとも一部が、前記外周面よりも径方向外側に配置されることを特徴とする請求項に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項5】
前記ステント抜止部として、前記本体部における軸方向の両端部以外の外周面に設けられた本体フッキング部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記本体フッキング部の位置を通るように周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項6】
前記本体フッキング部が、
弾性を有する線状の部材により構成され、
前記本体部の外周面に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、
前記基端部と前記先端部との間の中間部が湾曲しており、
前記先端部および前記中間部の少なくとも一部が、前記外周面よりも径方向外側に配置されることを特徴とする請求項に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【請求項7】
前記ステント抜止部として、前記本体部の一部分であって、前記本体部の他の部分より外径が大きくなる拡径部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記拡径部の位置を通るように周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管腔臓器間バイパス用ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するための管腔臓器間バイパス用ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、切除不能の悪性胆道狭窄または閉塞症例で、胆道ドレナージを必要とするもののうち、経十二指腸乳頭的アプローチが不可能な場合等において、超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD:endoscopic ultrasound-guided biliary drainage)を施行した報告例がある。EUS-BDは、超音波内視鏡を胃または十二指腸に挿入し、超音波画像をリアルタイムに観察しながら、胃壁または十二指腸壁から穿刺針で胆管または胆嚢を穿刺し、ガイドワイヤを胆管または胆嚢に挿入し、胃壁または十二指腸壁と胆管または胆嚢とを架け渡すようにバイパス用ステントを挿入・留置する手技である。この手技により、体内にステントを埋め込む形で胆管ドレナージが可能となる。
【0003】
EUS-BDに用いられるステントとしては、金属製のステント基材の表面をポリマー製フィルムからなるカバー材で被覆してなるカバードステントが挙げられる。また、特にEUS-BDに好適に用いられるカバードステントとして、マイグレーション等を防止するためのフッキング部を有するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、X線透視下でステントやステントデリバリーシステムの遠位端近傍に設けられたX線不透過マーカーを確認しながら、ステントデリバリーシステムからステントを放出して目標部位にステントを留置することが多いが、近年では、内視鏡カメラによる撮影画像をモニター等で確認しながら、ステントデリバリーシステムからステントを放出する方法も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第WO2019/019459号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイグレーションを防止するためのフッキング部等のステント抜止部を有するステントを留置する際には、管腔臓器の変形に耐えてバイパスが維持されるように、ステントの留置位置において、フッキング部等のステント抜止部を適切な位置に定めて配置する必要がある。しかしながら、内視鏡カメラによる撮影画像を確認しながらステント留置を行う際、内視鏡カメラの撮影画像から、ステントデリバリーシステムに収容されたステント抜止部を確認することが難しい場合があり、ステント抜止部の位置を適切に制御してステントを正確に留置することができないという問題が生じ得る。特に、ステント抜止部の一部または全部が管腔臓器の外側にある状態でステントの留置が行われてしまうと、ステント抜止部がマイグレーション等を防止する機能を十分に果たせなくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、内視鏡カメラによる撮影下において、正確な位置に正確な状態で留置することを可能にする管腔臓器間バイパス用ステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するための管腔臓器間バイパス用ステントであって、
細長い筒状の本体部と、
前記本体部の軸方向への位置ずれを防止するためのステント抜止部と、
前記ステント抜止部の位置を特定可能とする着色領域を前記本体部の外周面に形成する着色領域形成部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、管腔臓器間バイパス用ステントを体内に留置する際に、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面に形成された着色領域を確認することで、管腔臓器間バイパス用ステントに設けられたステント抜止部の位置を特定できるようになる。その結果、ステント抜止部の位置を適切に制御して、管腔臓器間バイパス用ステントを正確な位置に正確な状態で留置できるようになる。
【0010】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記着色領域により特定可能な前記ステント抜止部が、前記本体部における軸方向の一方の端部側に設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば管腔臓器間バイパス用ステントの近位側に設けられているステント抜止部の位置を着色領域によって特定できるようになる。ステントデリバリーシステムから管腔臓器間バイパス用ステントを放出する際には、内視鏡カメラによって管腔臓器の内部が撮影されるが、この撮影画像において着色領域が視認されるか否かを確認することで、ステント抜止部が管腔臓器の内側にあることを確実に確認することができ、ステント抜止部の位置も容易に特定できるようになる。
【0012】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記本体部の外周面において、前記着色領域の辺縁部が、前記ステント抜止部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面にリング状に形成された着色領域の辺縁部を確認することで、ステント抜止部の位置を容易に特定できるようになる。
【0014】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記ステント抜止部として、前記本体部における軸方向の一方の端部に設けられた端部フッキング部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記一方の端部を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面にリング状に形成された着色領域の辺縁部を確認することで、例えば管腔臓器間バイパス用ステントの近位端部に設けられた端部フッキング部の位置を特定できるようになる。また、端部フッキング部が、本体部における一方の端部に設けられているため、端部フッキング部が管腔臓器の内壁等に接触してアンカーとして機能することにより、マイグレーションを効果的に防止できるようになる。
【0016】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記端部フッキング部が、
弾性を有する線状の部材により構成され、
前記一方の端部に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、
前記基端部と前記先端部との間の中間部は湾曲しており、
前記先端部および前記中間部の少なくとも一部が、前記外周面よりも径方向外側に配置されるようになっていてもよい。
【0017】
この構成によれば、弾性を有する端部フッキング部の先端部または中間部が管腔臓器の内壁に当接できるようになり、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。また、端部フッキング部の中間部は湾曲しているので、端部フッキング部により管腔臓器の内壁面が傷付けられてしまう危険性を低減させることができる。
【0018】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記ステント抜止部として、前記本体部における軸方向の両端部以外の外周面に設けられた本体フッキング部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記本体フッキング部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントに形成された着色領域の辺縁部を確認することで、管腔臓器間バイパス用ステントの両端部以外の外周面に設けられた本体フッキング部の位置を特定できるようになる。また、本体フッキング部が、本体部における軸方向の両端部以外の外周面に設けられているため、本体フッキングが管腔臓器の内壁等に接触してアンカーとして機能することにより、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。
【0020】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記本体フッキング部が、
弾性を有する線状の部材により構成され、
前記本体部の外周面に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、
前記基端部と前記先端部との間の中間部は湾曲しており、
前記先端部および前記中間部の少なくとも一部が、前記外周面よりも径方向外側に配置されるようになっていてもよい。
【0021】
この構成によれば、弾性を有する本体フッキング部の先端部または中間部が管腔臓器の内壁に当接できるようになり、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。また、本体フッキング部の中間部は湾曲しているので、本体フッキング部により管腔臓器の内壁面が傷付けられてしまう危険性を低減させることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、前記ステント抜止部として、前記本体部の一部分であって、前記本体部の他の部分より外径が大きくなる拡径部を有し、
前記着色領域の辺縁部が、前記拡径部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントにリング状に形成された着色領域の辺縁部を確認することで、マイグレーション等の防止を目的として設けられた拡径部の位置を特定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。
図2図1のA-A断面図であり、ステントに着色領域形成部を設ける第1の方法を説明する図である。
図3図1のA-A断面図であり、ステントに着色領域形成部を設ける第2の方法を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントを搬送するステントデリバリーシステムの一例を示す外観図である。
図5図4に示すステントデリバリーシステムの遠位端近傍の部分拡大図であり、(a)は縮径させたステントが収容された第1状態を示す図、(b)はアウターシースを移動させてステントを放出した第2状態を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの変形例を示す正面図である。
図7】本発明の第2実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。
図8】本発明の第3実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。
図9】本発明の第4実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図であり、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面における着色領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1~第4実施形態について説明する。なお、本明細書では、術者を基準として、患者の体内側を遠位側とし、術者の手元側を近位側とする。
【0026】
本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するための管腔臓器間バイパス用ステントであり、好ましくはEUS-BDに用いる管腔臓器間バイパス用ステント、すなわち、胃または十二指腸と胆管または胆嚢とをバイパス接続するバイパス用ステントである。
【0027】
本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、細長い筒状の本体部を有しており、体内に留置された場合には、本体部の一方の端部が一方の管腔臓器内に配置され、本体部の他方の端部が他方の管腔臓器内に配置されて、本体部の管腔により管腔臓器間を連通することができる。
【0028】
また、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、本体部の軸方向への位置ずれを防止するためのステント抜止部を有しており、体内に留置された場合には、ステント抜止部が管腔臓器壁に当接して本体部の軸方向への移動を規制することができる。
【0029】
また、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、ステント抜止部の位置を特定可能とする着色領域を本体部の外周面に形成する着色領域形成部を有しており、本体部の外周面に形成されている着色領域によって、ステント抜止部の位置を特定することができる。
【0030】
以下、本発明の第1~第4実施形態では、具体的な構成を有する管腔臓器間バイパス用ステントを例に挙げて説明するが、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントの構成は、本明細書で例として挙げたものに限定されるものではない。なお、本明細書では、管腔臓器間バイパス用ステントを単に「ステント」と省略する場合がある。
【0031】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。
【0032】
本実施形態におけるステント11は、径方向に圧縮力を加えると弾性によって径方向に収縮し、その圧縮力が解除されると径方向に拡張する自己拡張型のカバードステントである。図1は、ステント11が径方向に拡張した状態を示している。
【0033】
図1に示すように、ステント11は、細長い略筒状の本体部12と、本体部12における外周面12dから当該外周面12dの上方に向かって飛び出している本体フッキング部18と、本体部12の両端部のうちの一方である第1端部R(図1において右端)に設けられた複数の端部フッキング部14と、本体フッキング部18および端部フッキング部14の位置を特定可能とする着色領域30を形成する着色領域形成部20とを有する。
【0034】
なお、以下では、略筒状の本体部12の中心軸Cが延びる方向を、ステント11の説明における軸方向D2として説明する。また、本体部12の両端部のうちの一方の端部(図1において右端)を第1端部Rとし、本体部12の両端部のうちの他方の端部(図1において左端)を第2端部Lとして説明する。ステントデリバリーシステム内にステント11を収容する際には、第1端部Rが近位側に配置され、第2端部Lが遠位側に配置される。
【0035】
本体部12は、筒状のフレーム部13と、フレーム部13を被覆する被覆部12aとを有する。フレーム部13は、金属製または樹脂製の線状部材であるストラット13aおよびブリッジ13bにより形成されている。フレーム部13は線材を編み込んで形成されてもよいが、チューブ状若しくはパイプ状の母材にレーザー加工等を行ってストラット13aおよびブリッジ13bを形成した、いわゆるレーザーカットタイプであることが好ましい。フレーム部13を構成するストラット13aおよびブリッジ13bの断面形状は四角形状や円形状とすることができる。
【0036】
フレーム部13は、図1にも示されているように、ジグザグ円環状の複数のストラット13aと、隣接するストラット13a間を接続するブリッジ13bとを有する。ストラット13aは、フレーム部13の周方向に沿って三角波状に連続し、円環状に繋がっている。ただし、フレーム部13が最も収縮している状態(レーザーカット後の状態)においては、ストラット13aは、S字状に蛇行しながら、周方向に繋がっている。
【0037】
図1に示すように、ブリッジ13bは、隣接するストラット13aにおける三角波の頂点または蛇行形状のカーブ部分の一部を、軸方向D2に接続している。このようにして複数のストラット13aが接続されることにより、筒状のフレーム部13が構成されている。隣接する2つのストラット13aを接続するブリッジ13bは、略均等な間隔で配置されるが、隣接する2つのストラット13aを接続するブリッジ13bの位置は、軸方向D2に並んで形成されることはなく、周方向にずれている。
【0038】
本体部12の全長Hは、バイパス接続すべき管腔臓器間の距離に応じて決定されるが、10mm~200mmとすることができ、40mm~120mmとすることが好ましい。また、本体部12の拡張時(外力が働いていないとき)の外径は、バイパス接続すべき管腔臓器の種類や大きさ等に応じて決定されるが、φ2mm~φ40mmとすることができ、φ4mm~φ15mmとすることが好ましく、φ6mm~φ10mmとすることがさらに好ましい。本体部12の収縮時(ステントデリバリーシステム収容時)の外径は、拡張時の外径に対して、数分の1程度である。
【0039】
フレーム部13を構成するストラット13aの線径は、0.05~1mmであることが好ましい。また、ストラット13aの断面が矩形である場合には、ストラット13aの断面における長辺方向の長さが0.06~1mmであって、短辺方向の長さが0.05~0.9mmであることが好ましい。フレーム部13の外径寸法は、上述した本体部12の寸法とほぼ同様である。
【0040】
フレーム部13の材料としては、樹脂または金属が使用される。フレーム部13に使用される樹脂としては、適切な硬度と弾性を有するものを使用することが可能であり、生体適合性樹脂であることが好ましい。フレーム部13の材料として使用される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、フッ素樹脂等が挙げられる。また、フレーム部13に使用される金属としては、ニッケルチタン(Ni-Ti)合金、ステンレス鋼、タンタル、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等が挙げられるが、Ni-Ti合金のような超弾性合金が好ましい。フレーム部13に使用される超弾性合金の具体例としては、49~58重量%NiのNi-Ti合金が挙げられる。
【0041】
フレーム部13は、被覆部12aにより覆われている。被覆部12aは、フレーム部13を保護するとともに、ステント11の表面を平滑にして、ステント11の表面上に老廃物等が付着および堆積することを防ぐ機能を有する。被覆部12aの具体的な構成については、図2および図3を参照しながら後述する。
【0042】
また、図1に示すように、ステント11は、複数の本体フッキング部18および複数の端部フッキング部14を有する。本体フッキング部18および端部フッキング部14は、ステント11の軸方向D2への位置ずれを防止するための機能を有しており、本発明におけるステント抜止部に相当するものである。
【0043】
本体部12における軸方向D2の両端部R、L以外の外周面12dには、複数の本体フッキング部18が設けられている。本体フッキング部18は、外周面12dに接続する基端部18bから中間部18cを経て、自由端である先端部18aまで延びる細長い形状を有する。本体フッキング部18は、本体部12における軸方向D2の両端部R、L以外の外周面12dから外周面12dの上方に向かって飛び出している。すなわち、本体フッキング部18は、基端部18bと、先端部18aと、基端部18bと先端部18aとの間の中間部18cとにより構成されており、先端部18aおよび中間部18cの少なくとも一部が、筒状の本体部12の外周面12dよりも径方向外側に配置されるようになっている。これにより、体内に留置されたステント11は、本体フッキング部18が管腔臓器壁に引っ掛かる(抜け止めされる)ことにより、軸方向D2への移動が規制されるようになる。
【0044】
本体フッキング部18は、例えばフレーム部13と共通のパイプ状の母材から成形されてもよい。一例として、本体フッキング部18の基端部18bは、基端部18bに対して第2端部L側に隣接するフレーム部13のストラット13aに接続しており、ストラット13aから第1端部R側へ突出している。また、本体フッキング部18は、本体部12とは独立して成形されて、レーザー溶接等によりフレーム部13に一体的に固定されてもよい。
【0045】
本体フッキング部18は、基端部18bから中間部18cを経て先端部18aへ向かう長手方向に沿って、第1端部Rに向かって凸となるように膨らんで湾曲する湾曲形状を有する。ただし、ステント11がステントデリバリーシステム内に収容されている際には、本体フッキング部18は軸方向D2に引き伸ばされた状態となる(図5(a)参照)。本体フッキング部18は、ステント11がステントデリバリーシステムから放出された際に、自己の弾性力により外周面12dの径方向外側へ飛び出すように、くせ付けされている。
【0046】
図1に示すステント11には、3つの本体フッキング部18が周方向に均等角度間隔(すなわち、120度間隔)で設けられている。ただし、本体フッキング部18の数は、2本であっても4本以上であってもよく、特に限定されない。
【0047】
図1に示すステント11では、複数の本体フッキング部18の基端部18bが第1端部Rから同じ距離に配置されている。ただし、これに限定されず、複数の本体フッキング部18のうちの2つ以上またはすべてが、第1端部Rから互いに異なる距離に配置されていてもよい。第1端部Rから本体フッキング部18の基端部18bまでの距離Wは、特に限定されないが、本体部12の軸方向の全長Hの1/2以下であることが好ましく、1/4以下であることが更に好ましい。
【0048】
第1端部Rには、複数の端部フッキング部14が設けられている。端部フッキング部14は、第1端部Rに接続する基端部14bから中間部14cを経て、自由端である先端部14aまで延びる細長い形状を有する。端部フッキング部14は、基端部14bを起点として第1端部Rから離れる方向に延びた後、中間部14cが本体部12の径方向外側へ向かって湾曲している。すなわち、端部フッキング部14は、第1端部Rに接続する基端部14bと、先端部14aと、基端部14bと先端部14aとの間の中間部14cとにより構成されており、先端部14aおよび中間部14cの少なくとも一部が、略筒状の本体部12の外周面12dよりも径方向外側に配置されるようになっている。これにより、体内に留置されたステント11は、端部フッキング部14が管腔臓器壁に引っ掛かる(抜け止めされる)ことにより、軸方向D2への移動が規制されるようになる。
【0049】
端部フッキング部14は、例えばフレーム部13と共通のパイプ状の母材から成形されてもよく、本体部12とは独立して成形されて、レーザー溶接等により第1端部Rに位置するフレーム部13に一体的に固定されてもよい。
【0050】
端部フッキング部14は、基端部14bから先端部14aへ向かう長手方向に沿って、第1端部Rよりも軸方向D2の外側(図1において右側)に向かって凸となるように膨らんで湾曲する湾曲形状を有している。ただし、ステント11がステントデリバリーシステム内に収容されている状際には、端部フッキング部14は軸方向D2に引き伸ばされた状態となる(図5(a)参照)。端部フッキング部14は、ステント11がステントデリバリーシステムから放出された際に、自己の弾性力により外周面12dの径方向外側へ飛び出すように、くせ付けされている。
【0051】
図1に示すステント11には、3つの端部フッキング部14が周方向に均等角度間隔(すなわち、120度間隔)で設けられている。ただし、端部フッキング部14の数は、2本であっても4本以上であってもよく、特に限定されない。
【0052】
端部フッキング部14の先端部14aおよび本体フッキング部18の先端部18aには、滑らかな外面を有する略楕円板状の尖端保護部が設けられている。この尖端保護部は、管腔臓器の内壁等に当接した際に該内壁の傷付けを防止する機能を有する。
【0053】
また、図1に示すステント11には、X線不透過材料からなる複数の第1端部マーカー16および複数の第2端部マーカー17が設けられている。第1端部マーカー16は円板状であり、第1端部Rに接続する端部フッキング部14の基端部14b近傍に取り付けられている。また、複数の第2端部マーカー17も円板状であり、本体部12の第2端部Lに取り付けられている。ステント11を体内に留置した際に、X線造影下で第1端部マーカー16および第2端部マーカー17の位置を確認することによって、本体部12の両端部R、Lの位置、すなわちステント11の留置位置を把握することができる。
【0054】
図1に示すステント11では、本体フッキング部18と端部フッキング部14とは、互いの湾曲方向が同一方向である。このようなステント11は、例えば、本体フッキング部18と端部フッキング部14とが両方とも管腔臓器壁の近位側に位置するように留置されることにより、ステント11が管腔臓器から体腔側へ抜け落ちる問題を、本体フッキング部18と端部フッキング部14との2段階で、効果的に防止できる。言い換えると、ステント11の留置の際に、本体フッキング部18を管腔臓器側から管腔臓器の内壁に当接する位置に配置することができ、また、管腔臓器の変形等によって、本体フッキング部18による抜け止めが解かれて、本体フッキング部18が管腔臓器側から体腔へ入り込むように移動した場合であっても、端部フッキング部14が管腔臓器の内壁に接触することで、ステント11の抜け落ちを防止できるようになっている。
【0055】
また、本体部12の中央より第1端部R側の本体部12の外周面12dには、着色領域形成部20が設けられている。具体的には、着色領域形成部20は、本体フッキング部18の基端部18bが外周面12dに接続する位置と、端部フッキング部14の基端部14bが外周面12dに接続する位置(すなわち、第1端部R)との間に存在する外周面12d全体に着色領域30を形成している。着色領域形成部20を設けることで、図1に示すステント11は、本体フッキング部18と端部フッキング部14(第1端部R)との間が着色されており、本体フッキング部18と第2端部Lとの間が着色されていない外観を呈するようになる。
【0056】
着色領域形成部20によって外周面12dに着色領域30が形成されると、同時に、ステント11の外周面12dには、着色領域30とは異なる色を持つ領域40(以下、非着色領域40と記載)が生じることになる。着色領域30の色は、非着色領域40と同一の色でなければ特に限定されないが、非着色領域40とは異なる領域であることが視覚的に容易に識別可能な色であることが好ましい。ステント11を留置する際、体内に搬送したステント11を内視鏡カメラにより撮影すると、その撮影画像に映る非着色領域40は、明度の高い色(白っぽい色)として映ることが多い。このことから、着色領域30の色は、非着色領域40とのコントラストが強くなるとともにハレーションを抑制する明度の低い色であることが好ましく、例えば、黒色とすることが好ましい。
【0057】
隣接する着色領域30と非着色領域40とが異なる色である場合には、着色領域30または非着色領域40に輪郭(エッジ)が存在すること、あるいは、着色領域30と非着色領域40との間に境界が存在することが認知される。本明細書では、着色領域30または非着色領域40の輪郭部分、あるいは、着色領域30と非着色領域40との境界部分を指して、着色領域30の辺縁部と記載する。
【0058】
図1に示すステント11では、着色領域30がリング状に形成されている。着色領域30の辺縁部30dは、本体フッキング部18の基端部18bの位置を通るように周方向に沿って形成されている。着色領域30の辺縁部30pは、端部フッキング部14の基端部14bの位置、すなわち、第1端部Rを通るように周方向に沿って形成されている。
【0059】
着色領域30の辺縁部30dは、本体フッキング部18の基端部18bの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30の辺縁部30dでは、着色領域30とその外側の非着色領域40との間で異なる色に見えるため、着色領域30の辺縁部30dを容易に確認することができ、その結果、本体フッキング部18の軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0060】
なお、図1に示すステント11では、複数の本体フッキング部18の基端部18bが第1端部Rから同じ距離に配置されているが、複数の本体フッキング部18のうちの2つ以上またはすべてが、第1端部Rから互いに異なる距離に配置されている場合もある。このような場合には、例えば、1つまたはいくつかの本体フッキング部18を選択し、選択した本体フッキング部18の位置を特定可能とする着色領域30を形成してもよい。
【0061】
着色領域30の辺縁部30pは、端部フッキング部14の基端部14bの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30の辺縁部30pでは、着色領域30とその外側の本体部12の存在しない空間との間で異なる色に見えるため、着色領域30の辺縁部30pを容易に確認することができ、その結果、端部フッキング部14の軸方向D2の位置(第1端部Rの位置)を容易に特定できるようになる。
【0062】
本体部12の外周面12dに着色領域形成部20を設ける方法は、特に限定されないが、例えば、以下に説明する第1および第2の方法を採用することができる。
【0063】
図2は、図1のA-A断面図(着色領域30における断面図)であり、ステント11に着色領域形成部20を設ける第1の方法を説明する図である。上述したように、フレーム部13は、被覆部12aにより覆われている。第1の方法によれば、図2に示すように、着色領域30における被覆部12aは、コーティング膜12acおよび所望の色に着色された着色樹脂20xにより構成される。また、非着色領域40における被覆部12aは、コーティング膜12acおよび無色透明の非着色樹脂により構成される。
【0064】
図2に示すように、フレーム部13はコーティング膜12acで覆われている。コーティング膜12acは、隣接するストラット13aの間を埋めるように広がっており、フレーム部13の外周面を被覆している。
【0065】
着色領域30では、さらに、着色領域形成部20を構成する着色樹脂20xが、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側を被覆している。着色樹脂20xは、所望の色(例えば、黒色)の顔料で着色した樹脂である。例えば、着色樹脂20xをスプレーコーティングする方法や、顔料で着色した樹脂溶液に浸漬して乾燥させる方法等により、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側に着色樹脂20xを形成することができる。当該第1の方法によれば、着色領域30では、着色樹脂20xが外周面12dを形成する。
【0066】
一方、非着色領域40では、例えば、無色透明の非着色樹脂が、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側を被覆している。すなわち、非着色領域40では、図2に示す着色樹脂20xの代わりに無色透明の非着色樹脂が用いられ、無色透明の非着色樹脂が外周面12dを形成する。
【0067】
本実施形態では、本体フッキング部18の基端部18bの位置を境界として、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第1端部R側に着色領域30が形成され、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第2端部L側に非着色領域40が形成される。当該第1の方法によれば、例えば、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第1端部R側では、所望の色に着色された着色樹脂40を被覆することで着色領域30を形成し、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第2端部L側では、無色透明の非着色樹脂を被覆することで非着色領域40を形成することができる。
【0068】
また、図3は、図1のA-A断面図(着色領域30における断面図)であり、ステント11に着色領域形成部20を設ける第2の方法を説明する図である。第2の方法によれば、着色領域30における被覆部12aは、図3に示すように、コーティング膜12ac、所望の色に着色された着色ポリマーフィルム20yおよび保護層20zにより構成される。また、非着色領域40における被覆部12aは、コーティング膜12ac、無色透明の非着色ポリマーフィルムおよび保護層20zにより構成される。
【0069】
着色領域30では、所望の色(例えば黒色)に着色済みの着色ポリマーフィルム20yを用意し、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側に、例えば1巻き周回するように着色ポリマーフィルム20yを巻きつける。さらに、着色ポリマーフィルム20yの外側に、樹脂をスプレーコーティングするか、あるいは、フィルムを巻きつけることで保護層20zを形成する。当該第2の方法によれば、保護層20zが外周面12dを形成する。
【0070】
一方、非着色領域40では、例えば、無色透明の着色ポリマーフィルムを用意し、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側に、例えば1巻き周回するように非着色ポリマーフィルムを巻きつける。さらに、非着色ポリマーフィルムの外側に、樹脂をスプレーコーティングするか、あるいは、フィルムを巻きつけることで保護層20zを形成する。すなわち、非着色領域40では、図3に示す着色ポリマーフィルム20yの代わりに無色透明の非着色ポリマーフィルムがフレーム部13の外周側に巻きつけられる。
【0071】
本実施形態では、本体フッキング部18の基端部18bの位置を境界として、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第1端部R側に着色領域30が形成され、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第2端部L側に非着色領域40が形成される。当該第2の方法によれば、例えば、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第1端部R側では、所望の色に着色された着色ポリマーフィルム20yを被覆することで着色領域30を形成し、本体フッキング部18の基端部18bの位置より第2端部L側では、無色透明の非着色ポリマーフィルムを被覆することで非着色領域40を形成することができる。
【0072】
上述した第1および第2の方法のいずれにおいても、コーティング膜12acによって覆われたフレーム部13の外周側に形成される層の厚さは特に限定されないが、ステント11の柔軟性および自己拡張性が失われないように薄くすることが好ましい。また、上述した第1および第2の方法では、無色透明の非着色樹脂や非着色ポリマーフィルムを用いて非着色領域40を形成しているが、例えば、無色透明の非着色樹脂や非着色ポリマーフィルムに代えて、着色領域30とは異なる色(例えば、白色)となるように着色された樹脂やポリマーフィルムを用いて、非着色領域40を積極的に着色してもよい。
【0073】
次に、ステント11を搬送するステントデリバリーシステムについて説明する。図4は、ステント11を搬送するステントデリバリーシステム50の一例を示す外観図である。図5は、図4に示すステントデリバリーシステム50の遠位端近傍の部分拡大図であり、図5(a)には縮径させたステント11が収容された第1状態が示されており、図5(b)にはアウターシースを移動させてステント11を放出した第2状態が示されている。なお、図5(a)および図5(b)ではアウターシース66は点線で描かれている。
【0074】
図4に示すように、ステントデリバリーシステム50は、ステント11と、ステント11を体内の所定の位置に搬送する搬送機構52とで構成される。搬送機構52は、操作部60、最外管64、アウターシース66、インナーシャフト68および先端チップ62等を有する。ステントデリバリーシステム50の全長は、ステント11の留置位置や搬送経路等によって異なるが、例えば300~2500mm程度である。
【0075】
図4に示すように、ステント11は、ステントデリバリーシステム50の遠位端近傍に収容されている。ステントデリバリーシステム50の操作者は、図5(a)に示す第1状態でステント11を体内の留置対象位置まで搬送した後、ステントデリバリーシステム50を図5(b)に示す第2状態としてステント11を放出することにより、体内の所定の位置にステント11を留置する。
【0076】
図4に示すように、インナーシャフト68は、ステントデリバリーシステム50の近位端に設けられた操作部60から、ステントデリバリーシステム50の遠位端に設けられた先端チップ62まで、軸方向D1に延びている。図5(a)に示す第1状態では、インナーシャフト68は、アウターシース66および操作部60のハウジング61等の内部に収容されている。
【0077】
インナーシャフト68は、遠位端近傍に、他の部分より外径より小さい小径部68aを有する。小径部68aは、ステント11が縮径された状態で収容される部位である。ステント11を留置する際には、アウターシース66が近位側に移動して、遠位端にある小径部68aが露出するようになっており、これに伴って、ステント11は自己の弾性力により拡径する。ステント11が拡径した後、インナーシャフト68を近位側へ移動させることで、図5(b)に示す第2状態となる。また、インナーシャフト68の内部には、ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤルーメンが形成されている。
【0078】
インナーシャフト68の遠位端には、先端チップ62が設けられており、先端チップ62には、インナーシャフト68のガイドワイヤルーメンに連通する貫通孔が形成されている。先端チップ62は樹脂等で作製されており、管腔臓器の内壁に接触した際に、これを傷つけることを防止できるように、丸みを帯びた外形状を有している。
【0079】
アウターシース66は、図5(a)に示す第1状態から、図5(b)に示す第2状態へ、インナーシャフト68に対して軸方向D1へ相対移動可能である。アウターシース66の近位端は、操作部60におけるハウジング61の内部に収容されている。操作部60は、ハウジング61に取り付けられた操作レバー63の操作に連動して、アウターシース66をインナーシャフト68に対して、軸方向D1の一方である近位側に相対移動させる。これにより、ステントデリバリーシステム50は、アウターシース66がインナーシャフト68の小径部68aおよび収容されたステント11を覆う第1状態(図5(a)参照)から、インナーシャフト68の小径部68aおよび収容されたステント11を露出させる第2状態(図5(b)参照)へ変化する。なお、操作部60の近傍には、アウターシース66の外周をさらに覆う最外管64が設けられている。操作者がアウターシース66を直接に握ると、操作部60によるアウターシース66の移動が妨げられるおそれがあるが、最外管64がアウターシース66を覆うことにより、そのような問題を防止できる。
【0080】
搬送機構52の最外管64およびインナーシャフト68は、例えば、可撓性を有する樹脂製のチューブ等で構成される。アウターシース66も同様に、可撓性を有する樹脂製のチューブ等で構成されるが、アウターシース66を透かしてその内部に収容されているステント11の着色領域30を視認できるようにするため、透明な高分子材料が用いられる。また、アウターシース66に用いられる樹脂製のチューブの内部には、金属の線材が埋め込まれていてもよい。
【0081】
インナーシャフト68における小径部68aの近位側には、ステント11の放出時にステント11を軸方向D1に押すプッシュリング69が設けられていてもよく、プッシュリング69は、X線不透過材料で構成されていてもよい。また、搬送機構52における先端チップ62や操作部60の材料は特に限定されないが、例えば、樹脂を成形または加工したものを用いることができる。
【0082】
以下、ステントデリバリーシステム50を用いて、本実施形態におけるステント11を体内に留置する手順の一例について説明する。
【0083】
本実施形態におけるステント11の留置には、例えば、カメラ付き超音波内視鏡システムが用いられる。この内視鏡は、超音波内視鏡(EUS)の遠位端に、CCD等により構成されたカメラを備えている。カメラによる撮影で取得された撮影画像信号は、内視鏡の内部配線を通じて、ステントデリバリーシステム50の操作者が目視できるモニター等に送られる。操作者は、モニターに映し出される撮影画像を確認しながらステント11の留置位置を定めて、ステント11を放出させることができる。
【0084】
本実施形態におけるステント11を体内に留置する際には、従来の手技と同様に、ガイドワイヤを胆管または胆嚢に挿入し、ガイドワイヤに沿ってステントデリバリーシステム50の遠位端部を移動させることで、アウターシース66が収容されたステント11を覆った第1状態(図5(a)参照)で、ステント11を留置位置まで運ぶ。この際、内視鏡カメラによってステントデリバリーシステム50の遠位端部周辺を撮影し、作業者は、その撮影画像をモニター上で確認しながら、ステント11を放出する位置を調整する。
【0085】
図1に示すように、本実施形態におけるステント11は、本体フッキング部18および端部フッキング部14を有しており、本体フッキング部18と端部フッキング部14との間に着色領域30が形成されている。操作者は、モニターに映し出される撮影画像を確認しながら、例えば、本体フッキング部18の位置を表す着色領域30の辺縁部30dを管腔臓器の内壁の近位側に配置し、その位置に固定した状態でアウターシース66をインナーシャフト68に対して近位側に相対移動させることで、ステント11を拡径させる。このように位置合わせを行った状態でステント11を放出することで、本体フッキング部18が管腔臓器の内壁の近位側に配置され、操作者が所望する正確な位置に、ステント11を留置させることができるようになる。なお、端部フッキング部14を管腔臓器の内壁の近位側に配置することを所望する場合には、操作者は、モニターに映し出される撮影画像を確認しながら、端部フッキング部14の位置を表す着色領域30の辺縁部30pを管腔臓器の内壁の近位側に配置して、ステント11を放出すればよい。
【0086】
図6は、本発明の第1実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの変形例を示す正面図である。なお、図6に示すステント11aの説明に際して、図1に示すステント11と同一機能を有する構成要素については同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。
【0087】
図6に示すステント11aは、図1に示すステント11と比較して、着色領域形成部20a、20bにより形成される着色領域30a、30bの位置が異なっている。図6に示すステント11aでは、着色領域形成部20aは、端部フッキング部14の基端部14bが本体部12の外周面12dに接続する位置(すなわち、第1端部R)と、第1端部Rから所定距離d1だけ離れた位置との間(幅d1の範囲)に存在する外周面12d全体に着色領域30aを形成している。
【0088】
また、図6に示すステント11aでは、着色領域形成部20bは、本体フッキング部18の基端部18bが本体部12の外周面12dに接続する位置と、この位置から第2端部L側に所定距離d2だけ離れた位置との間(幅d2の範囲)に存在する外周面12d全体に着色領域30bを形成している。着色領域形成部20a、20bを設けることで、図1に示すステント11は、端部フッキング部14(第1端部R)の近傍、および、本体フッキング部18の近傍が着色されており、それ以外の領域が着色されていない外観を呈するようになる。図6に示すステント11aでは、2つの着色領域30a、30bがそれぞれリング状に形成されており、隣接する非着色領域40a、40bとの間でコントラストが生じる。
【0089】
着色領域30a、30bおよび非着色領域40a、40bは、図2および図3を参照しながら上述した第1および第2の方法を用いて形成することができる。また、例えば、本体フッキング部18の基端部18bの位置を境界として、この位置より第1端部R側および第2端部L側のそれぞれに無色透明の非着色ポリマーフィルムを巻きつけた後、さらに、着色領域30a、30bを形成すべき位置に所望の色に着色された着色ポリマーフィルム20yを巻きつけることで、着色領域30a、30bおよび非着色領域40a、40bを形成してもよい。
【0090】
着色領域30aの辺縁部30apは、端部フッキング部14の基端部14bの軸方向D2の位置を通るように周方向に沿って形成されており、これにより、基端部14bの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30aの辺縁部30apでは、着色領域30aとその外側の本体部12の存在しない空間との間で異なる色に見えるため、着色領域30aの辺縁部30apを容易に確認することができ、その結果、端部フッキング部14の軸方向D2の位置(第1端部Rの位置)を容易に特定できるようになる。なお、所定距離d1が小さいと着色領域30aの軸方向D2の幅d1が小さくなってしまい、着色領域30aは視認できない状態となる。このことから、所定距離d1は着色領域30aを視認可能とする大きさであることが好ましく、ステント11aの大きさや内視鏡カメラの観察可能範囲等により異なるが、例えば、所定距離d1を1mm以上とすることができる。
【0091】
また、着色領域30bの辺縁部30bpは、本体フッキング部18の基端部18bの軸方向D2の位置を通るように周方向に沿って形成されており、これにより、基端部18bの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30bの辺縁部30bpでは、着色領域30bと非着色領域40aとの間で異なる色に見えるため、着色領域30bの辺縁部30bpを容易に確認することができ、その結果、本体フッキング部18の軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。なお、所定距離d2が小さいと着色領域30bの軸方向D2の幅d2が小さくなってしまい、着色領域30bは視認できない状態となる。このことから、所定距離d2は着色領域30bを視認可能とする大きさであることが好ましく、ステント11aの大きさや内視鏡カメラの観察可能範囲等により異なるが、例えば、所定距離d2を1mm以上とすることができる。
【0092】
上述した第1実施形態によれば、本体フッキング部18および端部フッキング部14の位置を特定可能とする着色領域30、30a、30bを本体部12の外周面12dに形成することで、本体フッキング部18および端部フッキング部14の軸方向D2の位置が容易に特定できるようになり、ステント11、11aを正確な位置に留置できるようになる。特に、着色領域30、30a、30bの辺縁部30p、30d、30ap、30bpにより、本体フッキング部18および端部フッキング部14が外周面12dに接続する軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0093】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントについて説明する。図7は、本発明の第2実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。なお、図7に示すステント111の説明に際して、図1に示すステント11と同一機能を有する構成要素については同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。
【0094】
図7に示すステント111は、図1に示すステント11と比較して、本体フッキング部118の形状が異なっている。図7に示すステント111では、本体フッキング部118は、基端部118bから中間部118cを経て先端部118aへ向かう長手方向に沿って、第2端部Lに向かって凸となるように膨らんでいる。なお、図1に示すステント11の本体フッキング部18と同様、本体フッキング部118は、ステント111の軸方向D2への位置ずれを防止するための機能を有しており、本発明におけるステント抜止部に相当するものである。
【0095】
図7に示すステント111では、着色領域形成部20cは、端部フッキング部14の基端部14bが本体部12の外周面12dに接続する位置(すなわち、第1端部R)と、ステントデリバリーシステム50にステント111が収容された際における本体フッキング部18の先端部118aの位置との間(幅d2の範囲)に存在する外周面12d全体に着色領域30cを形成している。
【0096】
着色領域30cおよび非着色領域40cは、図2および図3を参照しながら上述した第1および第2の方法を用いて形成することができる。ただし、ステントデリバリーシステムから放出された際における本体フッキング部18の径方向外側への飛び出しが抑制されてしまう可能性があるため、本体フッキング部18の基端部18bの位置にポリマーフィルムを巻きつけることは好ましくない。この観点から、例えば、本体フッキング部18の基端部18bの位置を境界として、この位置より第1端部R側に、所望の色に着色された着色ポリマーフィルム20yを巻きつけ、この位置より第2端部L側に、無色透明の非着色ポリマーフィルムを巻きつけた後、さらに、この位置とステントデリバリーシステムに収容された際における本体フッキング部18の先端部118aの位置との間に着色ポリマーフィルム20yを巻きつけることで、着色領域30cおよび非着色領域40cを形成してもよい。
【0097】
着色領域30cの辺縁部30cpは、端部フッキング部14の基端部14bの軸方向D2の位置を通るように周方向に沿って形成されており、これにより、基端部14bの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30cの辺縁部30cpでは、着色領域30cとその外側の本体部12の存在しない空間との間で異なる色に見えるため、着色領域30cの辺縁部30cpを容易に確認することができ、その結果、端部フッキング部14の軸方向D2の位置(第1端部Rの位置)を容易に特定できるようになる。
【0098】
また、着色領域30cの辺縁部30cdは、ステントデリバリーシステムに収容された際における本体フッキング部18の先端部118aの軸方向D2の位置を通るように周方向に沿って形成されており、これにより、ステントデリバリーシステムに収容された際における先端部118aの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域30cの辺縁部30cdでは、着色領域30cと非着色領域40cとの間で異なる色に見えるため、着色領域30cの辺縁部30cdを容易に確認することができ、その結果、本体フッキング部18の先端部118aの軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0099】
図7に示すステント111は、例えば管腔臓器の壁が、本体フッキング部118と端部フッキング部14とによって外側と内側の両側から挟まれるように、体内に留置して使用することが考えられる。このようなステント111は本体フッキング部118と端部フッキング部14とが協働して作用し、ステント111が体腔側へ移動するマイグレーションと、ステント111が管腔臓器側へ移動するマイグレーションの双方を効果的に防止できる。ステント111をこのように使用する場合には、操作者は、端部フッキング部14の位置を表す着色領域30cの辺縁部30cpを管腔臓器の内壁の近位側に配置して、ステント111を放出すればよい。
【0100】
また、図7に示すステント111は、図6に示すステント11aと同様に、本体フッキング部118と端部フッキング部14との両方が管腔臓器の内壁の近位側に配置されるように、体内に留置して使用することもできる。この場合、操作者は、着色領域30cの辺縁部30cdの位置を確認することで、本体フッキング部118の先端部118aの位置を確認して、その先端部118aを管腔臓器の内壁の近位側に配置して、ステント111を放出すればよい。
【0101】
上述した第2実施形態によれば、本体フッキング部118および端部フッキング部14の位置を特定可能とする着色領域30cを本体部12の外周面12dに形成することで、本体フッキング部118および端部フッキング部14の位置を容易に特定できるようになり、ステント111を正確な位置に留置できるようになる。特に、着色領域30cの辺縁部30cpにより、端部フッキング部14が外周面12dに接続する軸方向D2の位置を容易に特定できるようになり、着色領域30cの辺縁部30cdにより、ステントデリバリーシステム50にステント111が収容された状態において、本体フッキング部118の先端部118aの軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0102】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントについて説明する。図8は、本発明の第3実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントの一例を示す正面図である。なお、図8に示すステント211の説明に際して、図6に示すステント11aと同一機能を有する構成要素については同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。
【0103】
図8に示すステント211は、図6に示すステント11aと比較して、本体フッキング部18を有さず、着色領域30bを形成する着色領域形成部20bを有さない点で異なっている。
【0104】
図8に示すステント211には、ステント211の軸方向D2への位置ずれを防止するためのステント抜止部として、端部フッキング部14のみを有しており、本体部212の外周面212dには、着色領域30aが1つのみリング状に形成されている。
【0105】
上述した第3実施形態によれば、端部フッキング部14の位置を特定可能とする着色領域30aを本体部212の外周面212dに形成することで、端部フッキング部14の位置が容易に特定できるようになり、ステント211を正確な位置に留置できるようになる。特に、着色領域30aの辺縁部30apにより、端部フッキング部14の軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0106】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態における管腔臓器間バイパス用ステントについて説明する。図9は、本発明の第4実施形態におけるステントの一例を示す正面図である。図9は、ステント311が径方向に拡張した状態の外形を模式的に示している。
【0107】
図9に示すステント311は、細長い略筒状の本体部312を有する。本体部312は、本体部312の両端部のそれぞれの近傍に配置されている2つの拡径部314、316と、本体部312の軸方向中央部に位置し、2つの拡径部314、316を繋ぐサドル部318とにより構成されている。
【0108】
図9に示すステント311は自己拡張型のカバードステントである。ステント311の本体部312は、拡径時に軸方向の位置に応じて不均一な大きさに拡径し、2つの拡径部314、316が径方向外側へ拡張する拡径寸法は、サドル部318が径方向外側へ拡張する拡径寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0109】
図9に示すステント311を留置する場合、拡径部314、316が管腔臓器の壁を挟み込むように配置される。拡径部314、316は、サドル部318の外周面よりも径方向外側に大きく突出するように変形した本体部312の一部である。体内に留置されたステント311は、拡径部314、316が管腔臓器壁に引っ掛かる(抜け止めされる)ことにより、軸方向への移動が規制されるようになる。拡径部314、316は、ステント311の軸方向への位置ずれを防止するための機能を有しており、本発明におけるステント抜止部に相当するものである。
【0110】
図9に示すステント311では、拡径部314の外周面全体に着色領域形成部320が設けられている。着色領域形成部320は、拡径部314の外周面全体に着色領域330を形成している。
【0111】
着色領域330の辺縁部330p、330dは、拡径部314の両端部それぞれの軸方向D2の位置を通るように周方向に沿って形成されており、これにより、拡径部314の両端部それぞれの軸方向D2の位置を表している。視覚的には、着色領域330の辺縁部330pでは着色領域330と非着色領域340aとの間で異なる色に見えるため、着色領域330の辺縁部330pを容易に確認することができる。また、着色領域330の辺縁部330dでは着色領域330と非着色領域340bとの間で異なる色に見えるため、着色領域330の辺縁部330dを容易に確認することができる。その結果、拡径部314の軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0112】
上述した第4実施形態によれば、拡径部314の位置を特定可能とする着色領域330を本体部312の外周面に形成することで、拡径部314の位置を容易に特定できるようになり、ステント311を正確な位置に留置できるようになる。特に、着色領域330の辺縁部330d、330pにより、拡径部314の軸方向D2の位置を容易に特定できるようになる。
【0113】
以下、本発明に係る作用について説明する。
【0114】
本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するための管腔臓器間バイパス用ステントであって、細長い筒状の本体部と、本体部の軸方向への位置ずれを防止するためのステント抜止部と、ステント抜止部の位置を特定可能とする着色領域を本体部の外周面に形成する着色領域形成部とを有する。
【0115】
この構成によれば、管腔臓器間バイパス用ステントを体内に留置する際に、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面に形成された着色領域を確認することで、管腔臓器間バイパス用ステントに設けられたステント抜止部の位置を特定できるようになる。その結果、ステント抜止部の位置を適正に制御して、管腔臓器間バイパス用ステントを正確な位置に正確な状態で留置できるようになる。
【0116】
なお、ステント抜止部とは、体内の所定の位置に留置された管腔臓器間バイパス用ステントが適切な位置からずれてしまうマイグレーション(移動)を防止するために、管腔臓器間バイパス用ステントに設けられた部材または構造を意味する。上述した第1~第3実施形態における本体フッキング部18、118や端部フッキング部14、上述した第4実施形態における拡径部314、316が、本発明に係るステント抜止部に相当する。
【0117】
また、ステント抜止部の位置とは、本体部に対するステント抜止部の相対的な位置を意味しており、例えば、ステント抜止部が本体部に接続する接続点や、ステントデリバリーシステムに収容された際におけるステント抜止部の位置等である。上述した第1実施形態においては、本体フッキング部18の基端部18bが本体部12と接続する位置や、端部フッキング部14の基端部14bが本体部12と接続する位置が、ステント抜止部の位置に相当する。上述した第2実施形態においては、ステントデリバリーシステム50に収容された際の本体フッキング部118の先端部118aの位置や、端部フッキング部14の基端部14bが本体部12と接続する位置が、ステント抜止部の位置に相当する。上述した第3実施形態においては、端部フッキング部14の基端部14bが本体部212と接続する位置が、ステント抜止部の位置に相当する。また、上述した第4実施形態では、拡径部314、316は、径方向外側に大きく突出する本体部312の一部により構成されており、本体部312において拡径部314を構成する位置が、ステント抜止部の位置に相当する。
【0118】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、着色領域により特定可能なステント抜止部が、本体部における軸方向の一方の端部側に設けられていてもよい。
【0119】
この構成によれば、例えば管腔臓器間バイパス用ステントの近位側に設けられているステント抜止部の位置を着色領域によって特定できるようになる。ステントデリバリーシステムから管腔臓器間バイパス用ステントを放出する際には、内視鏡カメラによって管腔臓器の内部が撮影されるが、この撮影画像において着色領域が視認されるか否かを確認することで、ステント抜止部が管腔臓器の内側にあることを確実に確認することができ、ステント抜止部の位置も容易に特定できるようになる。
【0120】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、本体部の外周面において、着色領域の辺縁部が、ステント抜止部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0121】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面にリング状に形成された着色領域の辺縁部を視認することで、ステント抜止部の位置を容易に特定できるようになる。
【0122】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、ステント抜止部として、本体部における軸方向の一方の端部に設けられた端部フッキング部を有し、着色領域の辺縁部が、一方の端部を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0123】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントの外周面にリング状に形成された着色領域の辺縁部を確認することで、例えば管腔臓器間バイパス用ステントの近位端部に設けられた端部フッキング部の位置を特定できるようになる。また、端部フッキング部が、本体部における一方の端部に設けられているため、端部フッキング部が管腔臓器の内壁等に接触してアンカーとして機能することにより、マイグレーションを効果的に防止できるようになる。
【0124】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、端部フッキング部が、弾性を有する線状の部材により構成され、一方の端部に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、基端部と前記先端部との間の中間部は湾曲しており、先端部および中間部の少なくとも一部が、外周面よりも径方向外側に配置されるようになっていてもよい。
【0125】
この構成によれば、弾性を有する端部フッキング部の先端部または中間部が管腔臓器の内壁に当接できるようになり、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。また、端部フッキング部の中間部は湾曲しているので、端部フッキング部により管腔臓器の内壁面が傷付けられてしまう危険性を低減させることができる。
【0126】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、ステント抜止部として、本体部における軸方向の両端部以外の外周面に設けられた本体フッキング部を有し、着色領域の辺縁部が、本体フッキング部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0127】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントに形成された着色領域の辺縁部を確認することで、管腔臓器間バイパス用ステントの両端部以外の外周面に設けられた本体フッキング部の位置を特定できるようになる。また、本体フッキング部が、本体部における軸方向の両端部以外の外周面に設けられているため、本体フッキングが管腔臓器の内壁等に接触してアンカーとして機能することにより、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。
【0128】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、本体フッキング部が、弾性を有する線状の部材により構成され、本体部の外周面に一体的に接続される基端部と、自由端を有する先端部とを有し、基端部と先端部との間の中間部は湾曲しており、先端部および中間部の少なくとも一部が、外周面よりも径方向外側に配置されるようになっていてもよい。
【0129】
この構成によれば、弾性を有する本体フッキング部の先端部または中間部が管腔臓器の内壁に当接できるようになり、管腔臓器間バイパス用ステントのマイグレーションを効果的に防止できる。また、本体フッキング部の中間部は湾曲しているので、本体フッキング部により管腔臓器の内壁面が傷付けられてしまう危険性を低減させることができる。
【0130】
さらに、本発明に係る管腔臓器間バイパス用ステントは、ステント抜止部として、本体部の一部分であって、本体部の他の部分より外径が大きくなる拡径部を有し、着色領域の辺縁部が、拡径部の位置を通るように周方向に沿って形成されていてもよい。
【0131】
この構成によれば、内視鏡カメラの撮影画像から、管腔臓器間バイパス用ステントにリング状に形成された着色領域の辺縁部を確認することで、マイグレーション等の防止を目的として設けられた拡径部の位置を特定できるようになる。
【0132】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0133】
例えば、上述した第1~第3実施形態において、例えば、第2端部L側に本体フッキング部が設けられていてもよく、第2端部Lに接続する端部フッキング部が設けられていてもよい。この場合、第2端部L側の本体フッキング部や端部フッキング部の位置を特定可能とする着色領域が本体部の外周面に形成されてもよい。また、同様に、上述した第4実施形態における遠位側の拡径部316の位置を特定可能とする着色領域が本体部の外周面に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0134】
11、11a、111、211、311 管腔臓器間バイパス用ステント(ステント)
12、212、312 本体部
12a 被覆部
12ac コーティング膜
12d、212d 外周面
13 フレーム部
13a ストラット
13b ブリッジ
14 端部フッキング部(ステント抜止部)
14a、18a、118a 先端部
14b、18b、118b 基端部
14c、18c、118c 中間部
16 第1端部マーカー
17 第2端部マーカー
18、118 本体フッキング部(ステント抜止部)
20、20a、20b、320 着色領域形成部
20x 着色樹脂
20y 着色ポリマーフィルム
20z 保護層
30p、30d、30ap、30ad、30bp、30bd、30cp、30cd、330d、330p 辺縁部
30、30a、30b、30c、330 着色領域
40、40a、40b、40c、340a、340b 非着色領域
50 ステントデリバリーシステム
52 搬送機構
60 操作部
61 ハウジング
62 先端チップ
63 操作レバー
64 最外管
66 アウターシース
68 インナーシャフト
68a 小径部
69 プッシュリング
314、316 拡径部(ステント抜止部)
318 サドル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9