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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/487 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01P3/487 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020125899
(22)【出願日】2020-07-23
(65)【公開番号】P2022021967
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096828(JP,A)
【文献】特開2017-227560(JP,A)
【文献】特表2018-505417(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0031909(KR,A)
【文献】特許第6748931(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/62
G01P 1/00 - 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材に取り付けられており前記回転部材と一体回転する被検出部材と、
前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、
を備え、
前記センサ部は、第1磁気センサ及び第2磁気センサと、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサを一括して被覆するように設けられたモールド樹脂からなるハウジング部と、を有し、
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部をそれぞれ有し、
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサの前記検出部は、前記磁気検出素子と、前記磁気検出素子を覆う覆い体としてのモールド樹脂部と、を有し、
前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部とは、前記回転部材の回転軸線方向に並んで配置されて互いに離間しており、
前記第1磁気センサの前記検出部が前記第2磁気センサの前記検出部よりも前記被検出部材から近い側に配置されており、
前記ハウジング部は、前記被検出部材と対向する対向面を有
前記第1磁気センサの前記検出部が前記対向面に対して傾くように配置されており、
前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部との最小距離は、0.05mm以上2.00mm以下であり、
前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部の間には、前記ハウジング部の前記モールド樹脂が入り込んでいる
回転検出装置。
【請求項2】
前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部との最小距離は、0.10mm以上1.00mm以下である、
請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部との間に設けられ、前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部との離間状態を保持する保持部材を有
前記保持部材が前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサとともに前記ハウジング部により一括して被覆されている、
請求項1又は2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記保持部材の幅は、前記第1磁気センサの前記検出部及び前記第2磁気センサの前記検出部の幅よりも小さい、
請求項に記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転する被検出部材の回転速度を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、回転部材に取り付けられ、回転部材の周方向に沿って複数の磁極を有する被検出部材と、回転部材を回転可能に支持する固定部材に取り付けられ、前記被検出部材の磁界を検出する検出素子を有する磁気センサと、を備えた回転検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-47636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、車輪の回転速度を測定する回転検出装置においては、磁気センサの故障等が生じても車輪の回転速度が検出できるように、あるいは、より精度よく車輪の回転速度が検出できるように、複数の磁気センサを用いたいという要求がある。
【0006】
複数の磁気センサをハウジング部に収容して使用する場合、ハウジング部全体のサイズが大型化してしまい、例えば、ハウジング部を保持する保持孔に挿入できなくなる、といった不具合が生じるおそれがある。そのため、複数の磁気センサを収容した場合であっても、ハウジング部の大型化を抑制したいという要求があった。
【0007】
そこで、本発明は、複数の磁気センサを備えつつもハウジング部の大型化を抑制することが可能な回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられており前記回転部材と一体回転する被検出部材と、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、前記センサ部は、第1磁気センサ及び第2磁気センサと、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサを一括して被覆するように設けられたモールド樹脂からなるハウジング部と、を有し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部をそれぞれ有し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサの前記検出部は、前記磁気検出素子と、前記磁気検出素子を覆う覆い体としてのモールド樹脂部と、を有し、前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部とは、前記回転軸線方向に並んで配置されて互いに離間しており、前記第1磁気センサの前記検出部が前記第2磁気センサの前記検出部よりも前記被検出部材から近い側に配置されており、前記ハウジング部は、前記被検出部材と対向する対向面を有前記第1磁気センサの前記検出部が前記対向面に対して傾くように配置されており、前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部との最小距離は、0.05mm以上2.00mm以下であり、前記第1磁気センサの前記検出部と前記第2磁気センサの前記検出部の間には、前記ハウジング部の前記モールド樹脂が入り込んでいる回転検出装置を提供する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の磁気センサを備えつつもハウジング部の大型化を抑制することが可能な回転検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
図2】センサ部の斜視図である。
図3】(a)はセンサ部の破断面図、(b)は第1磁気センサと電線の平面図である。
図4】樹脂モールドの際の樹脂の流れを説明する説明図である。
図5】変形例2に係るハウジング部の要部を拡大した破断面図である。
図6】X-X’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
(車輪軸受装置10の構成)
図1は、本実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【0013】
車輪軸受装置10は、円筒状の本体部110、及び車輪が取り付けられるフランジ部111を有する回転部材としての内輪11と、内輪11の本体部110の外周側に配置された外輪12と、内輪11の外周面11aに形成された一対の軌道面11b,11b、及び外輪12の内周面12aに形成された一対の軌道面12b,12bの間に配置され、両軌道面11b,12bを転動する球状の複数の転動体13と、内輪11の外輪12に対する回転速度(すなわち車輪速)を検出する回転検出装置1とを備えている。
【0014】
内輪11の本体部110の中心部には、その回転軸線Oに沿って貫通孔が形成され、この貫通孔の内面には、図示しないドライブシャフトを連結するためのスプライン嵌合部110aが形成されている。また、内輪11の一対の軌道面11b,11bは、周方向延びるように、互いに平行に形成されている。
【0015】
内輪11のフランジ部111は、本体部110の径方向外側に突出して本体部110と一体に設けられている。フランジ部111には、図示しない車輪を取り付けるためのボルトが圧入される複数の貫通孔111aが形成されている。
【0016】
外輪12は、円筒状に形成され、車体に連結されたナックル9に複数のボルト91(図1には1つのみ示す)によって固定されている。ナックル9は、内輪11を回転可能に支持する固定部材の一例である。外輪12の一対の軌道面12b,12bは、内輪11の一対の軌道面11b,11bに対向して周方向延びるように、互いに平行に形成されている。外輪12における内輪11のフランジ部111側の端部には、内輪11との間にシール14が配置されている。
【0017】
ナックル9には、次に説明する回転検出装置1のセンサ部3を保持するための保持孔90が形成されている。保持孔90は、中心軸に直交する断面の形状が円形であり、ナックル9を回転軸線Oに対して交差する方向に貫通している。より詳しくは、保持孔90は、ナックル9を回転軸線Oの径方向に貫通している。センサ部3(ハウジング部31)は、回転軸線Oに対して交差する方向に保持孔90に挿入されている。
【0018】
(回転検出装置1の説明)
図2は、センサ部の斜視図である。また、図3(a)はセンサ部の破断面図、図3(b)は第1磁気センサと電線の平面図である。
【0019】
図1~3に示すように、回転検出装置1は、回転部材としての内輪11に取り付けられており、内輪11の回転軸(回転軸線O)を中心とした周方向に沿って複数の磁極(不図示)が設けられている被検出部材としての磁気エンコーダ2と、内輪11の回転に伴って回転しない固定部材としてのナックル9に取り付けられており、磁気エンコーダ2と対向して配置されているセンサ部3と、を備えている。本実施の形態において、たとえば、回転検出装置1は、被検出部材の回転に伴う磁界の変化を検出し、被検出部材の回転速度を検出するものである。回転検出装置1は、たとえば、アンチロックブレーキシステム(ABS)用に用いられる。
【0020】
磁気エンコーダ2は、回転軸線Oに平行な方向の厚みを有する円環状に形成されている。この磁気エンコーダ2は、内輪11の外周面11aに固定された支持部材112に支持され、内輪11と一体回転するように取り付けられている。また、磁気エンコーダ2は、センサ部3に対向して周方向に沿って交互に配列されたN磁極とS磁極とを有している。
【0021】
センサ部3は、ケーブル4の端部に設けられている。ケーブル4の端部にセンサ部3を設けたものが、センサ付きケーブル100である。本実施の形態では、磁気エンコーダ2とセンサ部3の先端部の側面(後述する対向面314)とが、回転軸線Oに平行な軸方向に対向している。
【0022】
ケーブル4は、2つの磁気センサ30に対応した2対の電線41を有している。各電線41は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなる中心導体41aと、中心導体41aの外周に被覆されており、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる絶縁体41bと、を有している。また、ケーブル4は、2対(4本)の電線41を一括して覆うシース42をさらに有している。
【0023】
ケーブル4の端部においては、シース42から2対の電線41が露出され、さらに電線41の端部において、絶縁体41bから中心導体41aが露出されている。絶縁体41bから露出された中心導体41aは、対応する磁気センサ30の接続端子301に、溶接により電気的に接続されている。本実施の形態では、中心導体41aの素線同士を接合(結合)して中心導体41aの端部に直線状の接合部411を形成した後、当該接合部411を接続端子301の端部に抵抗溶接することで、中心導体41aと接続端子301とを接続した。
【0024】
本実施の形態に係る回転検出装置1では、センサ部3は、2つの磁気センサ30と、2つの磁気センサ30を一括して被覆するように設けられたモールド樹脂(以下、単に樹脂ということもある)からなるハウジング部31と、を有している。
【0025】
磁気センサ30は、磁気エンコーダ2からの磁界を検出する磁気検出素子(不図示)を含む板状の検出部300と、検出部300から延出された一対の接続端子301と、を有している。本実施の形態では、磁気検出素子は、GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子からなる。なお、磁気検出素子としては、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子、ホール素子等を用いることもできる。
【0026】
検出部300は、磁気エンコーダ2からの磁界を検出する磁気検出素子と、磁気検出素子を覆う覆い体としてのモールド樹脂部300aと、を有している。検出部300は、平面視で略長方形(長方形の4つの角部のうち1つが面取りされた形状)の板状に形成されている。検出部300は、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路(不図示)を更に有していてもよい。信号処理回路は、磁気検出素子とともにモールド樹脂部300aに覆われていてもよい。
【0027】
一対の接続端子301は、検出部300の一方の長辺(面取りされた角部に接続されていない側の長辺)から当該長辺と垂直な方向に延出されており、両接続端子301は互いに平行に形成されている。本実施の形態では、両接続端子301は帯状(細長い板状)に形成されており、その先端部(検出部300と反対側の端部)には、対応する電線41の中心導体41a(接合部411)が電気的に接続されている。
【0028】
図示していないが、両接続端子301の間には、ノイズを抑制するための容量素子が接続されており、その容量素子と容量素子と接続されている部分の接続端子301とを覆うように、樹脂モールドにより形成された容量素子保護部302が設けられている。
【0029】
2つの磁気センサ30は、検出部300がセンサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向に重なるように配置されている。以下、2つの磁気センサ30のうち、磁気エンコーダ2側に配置されている磁気センサ30を第1磁気センサ30aと呼称し、磁気エンコーダ2から遠い側に配置されている磁気センサ30を第2磁気センサ30bと呼称する。両磁気センサ30a,30bの配置等の詳細については、後述する。
【0030】
ハウジング部31は、磁気センサ30とケーブル4の端部とを一括して覆う本体部310と、センサ部3をナックル9に固定するためのフランジ部311と、を一体に形成してなる。フランジ部311には、センサ部3をナックル9に固定するボルト92(図1参照)を通すためのボルト穴312が形成されており、ボルト穴312には、当該ボルト穴312の内周面に沿うように、ボルト固定の際にフランジ部311の変形を抑制するための金属からなるカラー313が設けられている。
【0031】
ハウジング部31の本体部310の先端部(ケーブル4の延出側と反対側の端部)における側面には、磁気エンコーダ2と対向する平坦な対向面314が形成されている。センサ部3は、この対向面314を磁気エンコーダ2と対向させた状態(回転軸線Oに平行な軸方向に対向させた状態)で、ナックル9に固定されている。なお、対向面314は、平坦なものに限らず、丸みを帯びたもの(たとえば、半円形状)であってもよい。
【0032】
ハウジング部31としては、例えばPA(ポリアミド)612や、ナイロン66(ナイロンは登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等からなるものを用いることができる。また、ハウジング部31に用いる樹脂として、上記樹脂にガラスフィラーを混入させたものを用いることもできる。
【0033】
(第1磁気センサ30a及び第2磁気センサ30bの配置等)
本実施の形態に係る回転検出装置1では、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とは、回転軸線O方向に並んで(回転軸線O方向に見て重なって)配置されている。また、本実施の形態において、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とは、回転軸線O方向に磁気エンコーダ2の一部と並んで配置されている。さらに、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とは、最小距離が0.05mm以上2.00mm以下となるように回転軸線O方向に離間している。後述するが、本実施の形態では、第1磁気センサ30aの検出部300は、第2磁気センサ30bの検出部300に対して傾いている。そのため、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との最小距離は、たとえば図5に図示されているD1のような距離となる。なお、第1磁気センサ30aの検出部300は、第2磁気センサ30bの検出部300に対して傾いていなくてもよい(つまり、平行であってもよい)。この場合、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との距離は、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とが対向する範囲にわたって一定である。つまり、この場合、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との距離は、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とが対向する範囲にわたって0.05mm以上2.00mm以下である。
【0034】
上述の通り、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とは、回転軸線O方向に並んで配置されている。これにより、冗長化あるいは検出精度の向上のために複数の磁気センサ30を用いた場合であっても、ハウジング部31の大型化を抑制することが可能となる。より詳しくは、ハウジング部31の磁気エンコーダ2側の先端部(本体部310の先端部)の回転軸線O方向に直交する方向における長さ(ハウジング部31の磁気エンコーダ2側の先端部の幅)が長くなることを抑制することが可能となる。
【0035】
また、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とが離間していることにより、図3(a)に示すように、両検出部300の間にハウジング部31を構成するモールド樹脂が入り込むこととなる。これにより、図3(a)に示すように、両検出部300のそれぞれの(断面視における)周方向を当該モールド樹脂が囲むこととなる。これにより、ハウジング部31の両検出部300に対する保持性を向上させることが可能となる。
【0036】
さらに、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との最小距離は、0.05mm以上2.00mm以下である。当該距離を0.05mm以上とすることにより、ハウジング部31を樹脂成型する際に、両検出部300の間にモールド樹脂を入り込ませ易くすることが可能となる。当該距離を0.05mmより小さくすると、ハウジング部31を樹脂成型する際に、両検出部300の間にモールド樹脂が入り込んでいない隙間ができてしまう可能性がある。また、当該距離を2.00mm以下とすることにより、第2磁気センサ30bの検出部300の検出感度の低下を抑制することが可能となる。当該距離を2.00mmより大きくすると、第2磁気センサ30bの検出部300が磁気エンコーダ2から離間しすぎてしまい、検出感度が大きく低下する可能性がある。なお、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との最小距離は、より好ましくは、0.10mm以上1.00mm以下である。これにより、両検出部300の間に樹脂をより入り込ませ易くすることが可能となるとともに、第2磁気センサ30bの検出部300の検出感度の低下をより抑制することが可能となる。
【0037】
本実施の形態に係る回転検出装置1では、磁気エンコーダ2側に配置されている第1磁気センサ30aの検出部300が、対向面314に対して傾くように配置されている。第1磁気センサ30aは、検出部300の短辺方向(接続端子301の延出方向)が、対向面に対して傾くように配置されている。検出部300の長辺方向は、対向面314に対して平行となるようにされる。また、第1磁気センサ30aの検出部300は、接続端子301の延出側ほど対向面314から離れるように配置されている。
【0038】
第1磁気センサ30aの検出部300を、対向面314に対して傾くように配置することにより、検出部300における磁気検出素子の検出部300を、対向面314により近づけることが可能になり、磁気検出素子の検知部Dと磁気エンコーダ2間の間隔をより小さくして、検出感度を向上させることができる。
【0039】
また、第1磁気センサ30aの検出部300を、対向面314に対して傾くように配置することにより、検出部300を対向面314に対して平行に配置した場合と比較して、ハウジング部31の樹脂モールドの際に金型と検出部300との間に樹脂が入り込みやすくなり、成形不良が発生しにくくなる。具体的には、図4に矢印Aで示されるように、ハウジング部31の樹脂モールドの際に、第1磁気センサ30aの検出部300と金型5との間に、検出部300と金型5間の間隔が広い側から狭い側へと(図示右側から左側へと)樹脂が流れ、第1磁気センサ30aの検出部300と金型5との間に樹脂が入り込み易くなるため、成形不良が発生しにくくなる。なお、図4では図示を省略しているが、ハウジング部31の樹脂モールドの際には、両磁気センサ30a,30bを樹脂製のホルダに保持させた状態で金型5にセットするとよい。
【0040】
また、本実施の形態では、容量素子保護部302が接続端子301の対向面314側に突出するように設けられているが、第1磁気センサ30aを傾斜して配置することにより、検出部300を対向面314に近づけつつも、容量素子保護部302がハウジング部31から露出(突出)してしまうことを抑制可能になる。
【0041】
第1磁気センサ30aの検出部300と対向面314との間隔(最小距離)dが小さすぎると、第1磁気センサ30aを傾けても成形不良が発生するおそれが生じるため、間隔dは0.20mm以上とすることが望ましい。本実施の形態では、容量素子保護部302と対向面314との間隔を、上述の間隔dと同等とすることで、容量素子保護部302と金型5間にも樹脂が入り込み易くし、成形不良をより生じにくくした。また、間隔dは、2.00mm以下とすることが望ましい。これにより、第1磁気センサ30aの検出部300の(磁気エンコーダ2から離間することに伴う)検出感度の低下を抑制することが可能となる。間隔dは、より好ましくは、0.40mm以上1.50mm以下である。
【0042】
また、第1磁気センサ30aの検出部300の対向面314に対する角度θが小さすぎると、検出部300と金型5間に樹脂が入り込みにくくなるため、角度θは、3°以上とすることが望ましい。さらにまた、角度θが大きすぎると、磁気検出素子の検知部Dが対向面314から離れてしまい、検出感度が低下するおそれが生じるため、角度θは10°以下とすることが望ましい。角度θは、より好ましくは、4°以上9°以下とすることが望ましい。
【0043】
回転検出装置1では、検出部300に含まれる磁気検出素子は、検出部300の厚さ方向及び接続端子301の延出方向に対して垂直な方向(図3(b)における上下方向、検出部300の長辺方向)の磁界を検出するように構成されている。そのため、検出部300を対向面314に対して傾斜させた(検出部300の短辺方向に傾斜させた)場合であっても、磁気検出素子における磁界の検出方向は対向面314に対して平行に維持される。
【0044】
検出部300は、その厚さ方向における中央よりも対向面314側に、磁気検出素子の検知部Dが位置するように構成されている。これにより、検知部Dをより対向面314に近づけることが可能になり、磁気検出素子の検知部Dと磁気エンコーダ2間の間隔をより小さくして、検出感度を向上させることができる。
【0045】
また、回転検出装置1では、第2磁気センサ30bは、その検出部300が、第1磁気センサ30aの検出部300に対して傾くように配置されている。言い換えれば、第1磁気センサ30aの検出部300は、第2磁気センサ30bの検出部300に対して傾いている。本実施の形態では、第2磁気センサ30bの検出部300の対向面314に対する傾きが、第1磁気センサ30aの検出部300の対向面314に対する傾き(角度θ)よりも小さくなっている。さらに詳細には、本実施の形態では、第2磁気センサ30bの検出部300が、対向面314に対して平行に配置されている。両磁気センサ30a,30bの検出部300同士の間隔は、接続端子301の延出側からセンサ部3の先端側にかけて徐々に広がっている。
【0046】
また、第2磁気センサ30bは、その接続端子301に折り曲げ部301aを有している。本実施の形態では、第2磁気センサ30bの接続端子301をクランク形状に折り曲げて折り曲げ部301aを形成している。これにより、第2磁気センサ30bの検出部300をより対向面314に(第1磁気センサ30aの検出部300側に)近づけつつも、第2磁気センサ30bの容量素子保護部302が第1磁気センサ30aに干渉してしまうことを抑制可能になる。
【0047】
また、第2磁気センサ30bの接続端子301にクランク状の折り曲げ部301aを形成することで、接続端子301の端部(検出部300と反対側の端部)をケーブル4の延出方向に対して平行とすることができる。これにより、電線41の中心導体41aを無理に曲げずに配線することが可能になり、センサ部3内での配線レイアウトが容易になる。本実施の形態では、中心導体41aの端部に直線状の接合部411を設けており、接合端子301から接合部411の一部が突出するように構成されているため、中心導体41aを自由に曲げられる長さが比較的短くなるが、接続端子301の端部をケーブル4の延出方向に対して平行とすることで、中心導体41aを無理なく配線することが可能である。
【0048】
(変形例1)
本実施の形態では、第2磁気センサ30bの検出部300を、第1磁気センサ30aの検出部300に対して傾くように配置したが、これに限らず、第2磁気センサ30bの検出部300が、第1磁気センサ30aの検出部300に対して平行に配置されていてもよい。これにより、第2磁気センサ30bの検出部300をより対向面314により近づけることが可能になり、磁気検出素子の検知部Dと磁気エンコーダ2間の間隔をより小さくして、第2磁気センサ30bの検出感度を向上させることができる。
【0049】
(変形例2)
図5は、変形例2に係るハウジング部の要部を拡大した破断面図である。図6は、X-X’線断面図である。図5は、詳しくは、変形例2に係るハウジング部31の本体部310の先端部における一部の破断面図である。
【0050】
変形例2では、図5及び図6に示すように、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との間に、両検出部300の離間状態を保持する保持部材6が設けられている。保持部材6は、例えば、ハウジング部31を構成する材料と同種の材料であるPA(ポリアミド)612や、ナイロン66(ナイロンは登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)からなるとよい。保持部材6は、第1磁気センサ30a及び第2磁気センサ30bとともにハウジング部31により一括して被覆されている。
【0051】
保持部材6は、両検出部300と接触している。変形例2において、保持部材6は、図5に示すように、断面視において台形状に構成されている。より詳しくは、断面視において、保持部材6は、接続端子301の延出側の上底と、上底より長さが長くセンサ部3の先端側の下底と、上底の一端部と下底の一端部とを接続し対向面314に対して傾く第1脚と、上底の他端部と下底の他端部とを接続し対向面314に対して平行な第2脚と、を有している。第1磁気センサ30aの検出部300は、第1脚と接触している。第2磁気センサ30bの検出部300は、第2脚と接触している。この保持部材6により、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300との最小距離D1は、0.05mm以上2.00mm以下に保持される。
【0052】
保持部材6は、図6に示すように、X-X’断面視において、長方形状である。つまり、保持部材6は、台形柱状の部材である。保持部材6は、図6に示すように、その幅(回転軸線O方向に直交する方向における長さ(図6における左右方向の長さ))が両検出部300の幅よりも小さい。これにより、保持部材6の両脇の空間S1、S2に樹脂が入り込むことが可能となる。つまり、変形例2は、両検出部300の離間状態を保持する保持部材6が設けられつつも、両検出部300の間に樹脂が入り込む構成となっている。この構成により、変形例2においても、両検出部300のそれぞれの周方向を(ハウジング31を構成する)モールド樹脂が囲むこととなる
【0053】
変形例2によれば、ハウジング部31を樹脂成型する際の樹脂圧によって、両検出部300間の距離の変動を抑制することが可能でありつつも、上記実施の形態のように、ハウジング部31の両検出部300に対する保持性を向上させることが可能となる。
【0054】
変形例2では一例として、保持部材6が断面視において台形状に構成されているものを用いたが、第1磁気センサ30aの検出部300と第2磁気センサ30bの検出部300とが平行である場合には、断面視において、長方形状、正方形状、平行四辺形状の保持部材6を用いることも可能である。また、保持部材6は、2対の電線41を保持する電線ホルダ(不図示)と一体に形成することも可能である。この場合、電線ホルダは、保持部材6と同種の材料からなるとよい。さらに、保持部材6は、X-X’断面視において、正方形状であってもよい。
【0055】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0056】
[1]回転部材(11)に取り付けられており前記回転部材(11)と一体回転する被検出部材(2)と、前記被検出部材(2)と対向して配置されているセンサ部(3)と、を備え、前記センサ部(3)は、前記被検出部材(2)からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部(300)を有し、前記検出部(300)が前記回転軸線(O)方向に並んで配置されている2つの磁気センサ(30)と、前記2つの磁気センサ(30)を一括して被覆するように設けられたモールド樹脂からなり、前記被検出部材と対向する対向面(314)を有するハウジング部(31)と、を有し、前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)は、互いに離間しており、前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の最小距離は、0.05mm以上2.00mm以下であり、前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の間には、前記モールド樹脂が入り込んでいる回転検出装置(1)。
【0057】
[2]前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の距離は、0.10mm以上1.00mm以下である、[1]に記載の回転検出装置(1)。
【0058】
[3]前記2つの磁気センサ(30)のうち、前記被検出部材(2)から近い側に配置されている第1磁気センサ(30a)の前記検出部(300)は、前記対向面(314)に対して傾くように配置されている、[1]または[2]に記載の回転検出装置(1)。
【0059】
[4]前記2つの磁気センサ(30)とともに前記ハウジング部(31)により一括して被覆されており、前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の離間状態を保持し前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の間に設けられた保持部材(6)を有する、[1]乃至[3]の何れか1つに記載の回転検出装置(1)。
【0060】
[5]前記保持部材(6)の幅は、前記2つの磁気センサ(30)の前記検出部(300)の幅よりも小さい、[4]に記載の回転検出装置(1)。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0062】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、両磁気センサ30a,30bが、ノイズ抑制用の容量素子及び容量素子保護部302を有する場合について説明したが、容量素子及び容量素子保護部302は省略可能である。
【0063】
また、上記実施の形態では、第1磁気センサ30aの接続端子301を直線状としたが、これに限らず、接続端子301が折り曲げ部を有していてもよい。これにより、接続端子301の端部(検出部300と反対側の端部)をケーブル4の延出方向に対して平行とし、センサ部3内での配線レイアウト性をより高めることが可能になる。
【0064】
さらに、上記実施の形態では、センサ部3の先端部における側面に対向面314が形成されている場合について説明したが、これに限らず、センサ部3の先端面が対向面314であってもよい。この場合、回転軸線Oと平行な方向にケーブル4が延出されることになる。
【0065】
またさらに、磁気センサ30の数は、3つ以上であってもよい。この場合、それぞれ隣り合う検出部300の最小距離を0.05mm以上2.00mm以下すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…回転検出装置
2…磁気エンコーダ(被検出部材)
3…センサ部
30…磁気センサ
30a…第1磁気センサ
30b…第2磁気センサ
300…検出部
301…接続端子
301a…折り曲げ部
31…ハウジング部
314…対向面
4…ケーブル
9…ナックル(固定部材)
11…内輪(回転部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6