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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ウェーハの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240220BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240220BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20240220BHJP
   B08B 1/00 20240101ALI20240220BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 644C
H01L21/304 651B
H01L21/304 651J
B08B3/08 A
B08B3/04 A
B08B1/00
B08B5/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021071902
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166590
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健作
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175062(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124211(WO,A1)
【文献】特開2002-177898(JP,A)
【文献】特開2009-70932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/08
B08B 3/04
B08B 1/00
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨工程に供されたウェーハの洗浄方法であって、
前記研磨工程後、前記ウェーハをオゾン水によって処理するオゾン水処理工程と、
前記オゾン水処理工程後、前記ウェーハをフッ素樹脂系ブラシを用いてブラシ洗浄するブラシ洗浄工程と、
を含み、
前記ブラシ洗浄工程は、HF及び電解質を含んだ溶液を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第1ブラシ洗浄処理と、前記第1ブラシ洗浄処理後、オゾン水を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第2ブラシ洗浄処理とを含むことを特徴とするウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記ブラシ洗浄工程において、前記第1及び第2ブラシ洗浄処理を繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載のウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記オゾン水処理工程において、前記研磨工程に供された前記ウェーハを、オゾン水を用いて、ブラシ洗浄又はスピン洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記ブラシ洗浄工程後に、前記ウェーハをスピン洗浄又はバッチ洗浄する仕上げ洗浄工程を更に含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記第1ブラシ洗浄処理において、前記電解質の濃度が0.05質量%以上である前記溶液を用いることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のウェーハの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウェーハの洗浄フローでは例えば図5に示すように研磨直後のウェーハ面に研磨剤が付着しているウェーハをブラシ洗浄で洗浄する場合、ウェーハをオゾン水処理後に純水またはSC1またはHFでブラシ洗浄を行い、研磨剤を除去した後、スピン洗浄またはバッチ洗浄を行い、表面状態を仕上げる。例えば、特許文献1~5には、ブラシを用いてウェーハ(基板)を洗浄する方法及び洗浄装置が記載されている。
【0003】
また、一般的にブラシの材質はPVAである(例えば特許文献1及び2)。
【0004】
さて、従来、研磨後のブラシ洗浄では、オゾン水による酸化膜形成後、純水またはSC1またはHFでブラシ洗浄をすることが一般的である。
【0005】
しかし、純水ではパーティクルの除去能力が低いことや、SC1は異方性エッチングを伴う薬液であり、ウェーハ面上に突起状の欠陥が発生するという問題や表面粗さが悪化するという問題があった。
【0006】
またHF処理時のブラシ洗浄においては酸性条件下であるため、ゼータ電位からHF溶液でブラシ処理を行なうと異物等は除去されるが異物の再付着やブラシからの溶出した異物が付着し、ウェーハを汚染してしまう問題があった。
【0007】
HFを伴うブラシ洗浄では、HF処理後にはウェーハ表面保護を目的とした、酸化膜再形成のためにオゾン水処理が必要になり、PVAブラシを使用しているとオゾンによりブラシがダメージを受けてしまい、破損してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-92780号公報
【文献】特開2002-96037号公報
【文献】特開2003-77876号公報
【文献】特開2014-3273号公報
【文献】特開2017-175062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的にブラシ洗浄は研磨後のウェーハ洗浄に用いられている。ブラシ洗浄にて研磨直後の研磨剤等を除去し、その後スピン洗浄やバッチ洗浄にて表面品質を仕上げる。
【0010】
しかし、先に述べたように、HF処理時のブラシ洗浄においては、異物の再付着等によるウェーハの汚染が問題であり、洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減することが課題であった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減できるウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、研磨工程に供されたウェーハの洗浄方法であって、
前記研磨工程後、前記ウェーハをオゾン水によって処理するオゾン水処理工程と、
前記オゾン水処理工程後、前記ウェーハをフッ素樹脂系ブラシを用いてブラシ洗浄するブラシ洗浄工程と、
を含み、
前記ブラシ洗浄工程は、HF及び電解質を含んだ溶液を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第1ブラシ洗浄処理と、前記第1ブラシ洗浄処理後、オゾン水を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第2ブラシ洗浄処理とを含むことを特徴とするウェーハの洗浄方法を提供する。
【0013】
本発明のウェーハの洗浄方法によれば、HF及び電解質を含んだ溶液を用いてウェーハをブラシ洗浄する第1ブラシ洗浄処理によって、異物(主に研磨剤)がウェーハに付着することを抑制することができるので、洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減できる。
【0014】
また、ブラシ洗浄工程においてフッ素樹脂系ブラシを用いるので、オゾン水を用いる第2ブラシ洗浄処理中にもブラシ洗浄が可能になり、HFを用いた第1ブラシ洗浄処理及びオゾン水を用いる第2ブラシ洗浄処理を交互に行うことができる。
【0015】
前記ブラシ洗浄工程において、前記第1及び第2ブラシ洗浄処理を繰り返して行うことが好ましい。
【0016】
このようなウェーハの洗浄方法によれば、洗浄後のウェーハ上の欠陥数をさらに低減できる。
【0017】
前記オゾン水処理工程において、前記研磨工程に供された前記ウェーハを、オゾン水を用いて、ブラシ洗浄又はスピン洗浄することができる。
【0018】
HFを用いた第1ブラシ洗浄処理の前に行うオゾン水処理工程では、研磨工程に供されたウェーハに対し、ブラシ洗浄を行っても良いし、スピン洗浄を行っても良い。
【0019】
前記ブラシ洗浄工程後に、前記ウェーハをスピン洗浄又はバッチ洗浄する仕上げ洗浄工程を更に含むことができる。
【0020】
ブラシ洗浄工程後に、例えばこのような仕上げ洗浄工程を行うことができる。
【0021】
前記第1ブラシ洗浄処理において、前記電解質の濃度が0.05質量%以上である前記溶液を用いることが好ましい。
【0022】
前記第1ブラシ洗浄処理において用いる溶液の電解質の濃度を0.05質量%以上とすることにより、異物がウェーハに再付着することをより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明のウェーハの洗浄方法であれば、異物がウェーハに付着することを抑制することができるので、洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のウェーハの洗浄方法の一例を示す概略フロー図である。
図2】比較例のウェーハの洗浄方法の概略フロー図である。
図3】実施例1~7のウェーハの洗浄方法の概略フロー図である。
図4】比較例及び実施例1~7での洗浄後のウェーハ欠陥数評価結果を示すグラフである。
図5】従来のウェーハの洗浄方法の一例を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、ブラシ洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減できるウェーハの洗浄方法の開発が求められていた。
【0026】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ブラシ洗浄においてHF処理中はシリカ等の異物の付着が起きてしまうが、HF溶液に電解質を添加することによってゼータ電位を制御し、異物とウェーハとのゼータ電位の絶対値差を無くすことで付着を抑制できることを見出した。また、ブラシ処理工程においてフッ素樹脂系ブラシを使用することでオゾン水処理中にもブラシ処理が可能になりHF処理とオゾン水処理とを交互に行えるようになることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、研磨工程に供されたウェーハの洗浄方法であって、
前記研磨工程後、前記ウェーハをオゾン水によって処理するオゾン水処理工程と、
前記オゾン水処理工程後、前記ウェーハをフッ素樹脂系ブラシを用いてブラシ洗浄するブラシ洗浄工程と、
を含み、
前記ブラシ洗浄工程は、HF及び電解質を含んだ溶液を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第1ブラシ洗浄処理と、前記第1ブラシ洗浄処理後、オゾン水を用いて前記ウェーハをブラシ洗浄する第2ブラシ洗浄処理とを含むことを特徴とするウェーハの洗浄方法である。
【0028】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明のウェーハの洗浄方法の一例を示す概略フロー図である。
【0030】
本発明のウェーハの洗浄方法は、研磨工程に供されたウェーハに対して行うオゾン水処理工程と、それに続くブラシ洗浄工程とを含む。図1に示す例は、ブラシ洗浄工程の仕上げ洗浄工程を更に含むが、この工程は任意の工程である。
【0031】
以下、各工程を詳細に説明する。
【0032】
(研磨工程)
研磨剤には、特に限定されないが、例えばシリカを使用することができる。例えば、シリカ粒子の一次粒子径が10nm以上35nm以下、シリカ濃度が0.01質量%以上1.0質量%以下のものを使用することで、ブラシ洗浄によって除去が可能である。
【0033】
研磨条件は、特に限定されず、ウェーハの研磨条件として適した条件を適用することができる。
【0034】
(オゾン水処理工程)
オゾン水処理工程では、研磨工程後、ウェーハをオゾン水によって処理する。このオゾン水処理工程では、研磨直後の研磨剤が全面に付着しているウェーハを例えばブラシ洗浄またはスピン洗浄によるオゾン水処理することによって、ウェーハに付着している研磨剤の有機物の分解除去と酸化膜形成を行うことができる。
【0035】
このオゾン水処理工程で用いるオゾン水濃度は、10ppm以上50ppm以下であることが好ましい。洗浄時間は10秒以上60秒以下とすることが好ましい。スピン洗浄を行う場合には、ウェーハの回転数を5rpm以上60rpm以下とすることが好ましい。オゾン水処理工程におけるオゾン水流量は、0.8L/分以上4.0L/分以下とすることが好ましい。
【0036】
オゾン水処理工程は、形成される酸化膜厚が0.5nm以上1.5nm以下となる条件で行うことが好ましい。
【0037】
オゾン水処理工程では、オゾン水による処理を1回行えばよいが、複数回処理を行ってもよい。
【0038】
(ブラシ洗浄工程)
ブラシ洗浄工程では、オゾン水処理工程後、ウェーハをフッ素樹脂系ブラシを用いてブラシ洗浄する。このブラシ洗浄工程は、HF及び電解質を含んだ溶液を用いてウェーハをブラシ洗浄する第1ブラシ洗浄処理と、第1ブラシ洗浄処理後、オゾン水を用いてウェーハをブラシ洗浄する第2ブラシ洗浄処理とを含む。
【0039】
フッ素系樹脂のブラシを使用することによって、オゾン水を用いた洗浄処理中でもブラシ洗浄を行なうことが可能になり、HFを用いる第1ブラシ洗浄処理とオゾン水を用いる第2ブラシ洗浄処理を交互に行なうことができる。よって、本発明のウェーハの洗浄方法では、第1及び第2ブラシ洗浄処理を繰り返して行うことができる。第1及び第2ブラシ洗浄処理を繰り返して行うことにより、洗浄後のウェーハ上の欠陥数をさらに低減することができる。
【0040】
フッ素系樹脂のブラシとしては、例えば、PTFE、PCTFE、PVDF、PVF、PFA、FEP、ETFE及びECTFE等のフッ素樹脂で出来た中空糸を束ねた、または発泡構造のブラシを使用することができる。
【0041】
以下、第1及び第2ブラシ洗浄処理を詳細に説明する。
【0042】
<第1ブラシ洗浄処理>
第1ブラシ洗浄処理では、HF及び電解質を含んだ溶液を用いてウェーハをブラシ洗浄する。
【0043】
ここでは、例えば、純水に、1.0質量%以下の濃度のHF、及び0.05質量%以上の濃度の電解質を添加した溶液を用いてブラシ洗浄で物理洗浄を行う。電解質の添加量の上限は、特に限定されないが、電解質の溶解度やコストを考慮して10質量%以下とすることができる。
【0044】
HF溶液に電解質を添加することによってゼータ電位を制御でき、HFを用いた第1ブラシ洗浄処理中のウェーハへの異物の付着を抑制することが可能になる。その結果、洗浄後のウェーハ上の欠陥数を低減できる。
【0045】
電解質の濃度が0.05質量%以上である溶液を用いることにより、第1ブラシ洗浄処理における異物の付着をより確実に抑制することができる。
【0046】
電解質として、例えば、NaCl、NaClO、KCl、KClO、NaOH、KOH、NHOH、NHCl、NHF、ホルムアミド、ギ酸、酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸等を挙げる事ができる。
【0047】
第1ブラシ洗浄処理時間は、酸化膜が除去されベア面がでないように処理できる時間とすることが好ましい。例えば、洗浄時間は、5秒以上60秒以下とすることが好ましい。HF流量は、例えば0.8L/分以上4.0L/分以下とすることが好ましい。
【0048】
第1ブラシ洗浄処理におけるブラシの回転数は特に限定されないが、例えば、5rpm以上200rpm以下とすることができる。
【0049】
第1ブラシ洗浄処理は、ウェーハを回転させながら行うこともできる。この場合のウェーハのスピン回転数は、例えば、5rpm以上60rpm以下とすることができる。ウェーハの回転方向は特に限定されない。ブラシの回転方向は特に限定されない。例えば、ウェーハのスピン方向をCCW(反時計回り)とし、ブラシの回転方向をCW(時計回り)とすることができる。或いは、どちらも時計回り又は反時計回りとすることもできる。
【0050】
<第2ブラシ洗浄処理>
第2ブラシ洗浄処理では、第1ブラシ洗浄処理後、オゾン水を用いてウェーハをブラシ洗浄する。
【0051】
この第2ブラシ洗浄処理により、ウェーハの表面に保護膜としての酸化膜を形成することができる。
【0052】
この第2ブラシ洗浄処理で用いるオゾン水濃度は、10ppm以上50ppm以下であることが好ましい。洗浄時間は10秒以上180秒以下とすることが好ましい。スピン洗浄を行う場合には、ウェーハの回転数を5以上60rpm以下とすることが好ましい。オゾン水処理工程におけるオゾン水流量は、0.8L/分以上4.0L/分以下とすることが好ましい。
【0053】
第2ブラシ洗浄処理は、形成される酸化膜厚が0.5nm以上1.5nm以下となる条件で行うことが好ましい。
【0054】
第2ブラシ洗浄処理におけるブラシの回転数は特に限定されないが、例えば、5rpm以上200rpm以下とすることができる。
【0055】
第2ブラシ洗浄処理は、ウェーハを回転させながら行うこともできる。この場合のウェーハのスピン回転数は、例えば、5rpm以上60rpm以下とすることができる。ウェーハのスピン方向に対するブラシの回転方向は特に限定されない。
【0056】
第1及び第2洗浄処理は、先に述べたように、繰り返して行うことができる。各回の洗浄条件は、全て同じにしても良いし、互いに異なる条件にしても良い。
【0057】
(仕上げ洗浄工程)
本発明にとって任意の工程である仕上げ洗浄工程は、ブラシ洗浄工程後に、ウェーハをスピン洗浄又はバッチ洗浄する工程である。
【0058】
仕上げ洗浄工程では、例えば、オゾン水による洗浄、純水によるリンス、薬液による洗浄、オゾン水による洗浄及び純水によるリンスをこの順で行うことができるが、この限りではない。
【0059】
各回のオゾン水による洗浄で用いるオゾン水濃度は、例えば、5ppm以上40ppm以下とすることができる。オゾン水による洗浄時間は、例えば、10秒以上60秒以下とすることができる。オゾン水による洗浄をスピン洗浄で行う場合、回転数を例えば5rpm以上60rpm以下とすることができる。オゾン水流量は、例えば、0.8L/分以上4.0L/分以下とすることができる。
【0060】
各回の純水によるリンスをスピン洗浄で行う場合は、純水スピン回転数を、例えば、100rpm以上1500rpm以下とすることができる。純水流量は、例えば、0.8L/分以上4.0L/分以下とすることができる。純水リンス時間は、例えば、5秒以上60秒以下とすることができる。
【0061】
薬液による洗浄をスピン洗浄で行う場合は、薬液スピン回転数を、例えば、100rpm以上1500rpm以下とすることができる。薬液としては、例えば、HF、SC1又はSC2を用いることができる。薬液の濃度は、例えば、0.1質量%以上5.0質量%以下とすることができる。薬液の流量は、例えば、0.8L/分以上4.0L/分以下とすることができる。薬液による洗浄時間は、例えば5秒以上60秒以下とすることができる。
【0062】
薬液としてHF(フッ酸)を用いる場合、ブラシ洗浄後のスピン洗浄またはバッチ洗浄により、例えば、フッ酸処理による酸化膜除去を行った後、オゾン水処理による再酸化膜形成を行うことができる。
【0063】
仕上げ洗浄工程後、ウェーハを乾燥させる工程を含んでも良い。
【0064】
なお、本発明のウェーハの洗浄方法での洗浄対象とするウェーハは特に限定されないが、例えば、半導体シリコン単結晶ウェーハを洗浄対象とすることができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
以下の比較例及び実施例1~7では、以下に説明する手順でウェーハ(直径300mmのP型シリコン単結晶ウェーハ)の洗浄を行った。比較例及び実施例で用いた薬液及び純水の温度は、室温(25℃)とした。洗浄後のウェーハ上の欠陥数は、KLA-Tencor製SP5を用いて、19nm以上の粒径を有する粒子をカウントすることで測定を行った。
【0067】
(比較例)
比較例では、図2に示す洗浄フローに従ってウェーハの洗浄を行った。具体的には、まず、ウェーハを研磨した(研磨工程)。研磨工程の条件を、以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
次いで、研磨後の研磨剤が付着しているウェーハをオゾン水処理工程で、オゾン水処理した。オゾン水処理は、オゾン水を用いたスピン洗浄を行い、その後、オゾン水でブラシ洗浄処理を行った。オゾン水処理工程の条件を、以下の表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
次いで、HF溶液を用いてウェーハをブラシ洗浄した(ブラシ洗浄処理(HF))。ブラシ洗浄処理(HF)は、ブラシ及びウェーハを回転させながら行った。ブラシ洗浄処理(HF)の条件を、以下の表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
次いで、オゾン水を用いてウェーハをブラシ洗浄した(ブラシ洗浄処理(オゾン水))。ブラシ洗浄処理(オゾン水)は、ブラシ及びウェーハを回転させながら行った。ブラシ洗浄処理(オゾン水)の条件を、以下の表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
以上に説明したブラシ洗浄処理(HF)及びその後のブラシ洗浄処理(オゾン水)を、それぞれ表3及び4に記載した条件で3回繰り返し、その後仕上げ洗浄としてスピン洗浄を行った。
【0076】
スピン洗浄では、オゾン水を用いたスピン洗浄、純水によるリンス、薬液を用いたスピン洗浄、オゾン水を用いたスピン洗浄、及び純水によるリンスを、この順序で行った。次いで、スピン洗浄後のウェーハを乾燥させた。スピン洗浄及び乾燥の条件を以下の表5にまとめて示す。
【0077】
【表5】
【0078】
(実施例1~7)
実施例1~7では、図3に示す洗浄フローに従ってウェーハの洗浄を行った。具体的には、実施例1~7では、オゾン水処理工程後に、比較例で行ったブラシ洗浄処理(HF)の代わりに、HF及びNaClを含んだ溶液を用いたブラシ洗浄処理(第1ブラシ洗浄処理(HF+NaCl))を行い、次いで比較例のブラシ洗浄処理(オゾン水)と同じブラシ洗浄処理(第2ブラシ洗浄処理(オゾン水))を行い、この第1及び第2ブラシ洗浄処理を3回繰り返して行ったこと以外は、比較例と同じ条件でウェーハの洗浄を行った。
【0079】
実施例1~7の第1ブラシ洗浄処理の条件を、以下の表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
(評価)
図4に、比較例及び実施例1~7での洗浄後のウェーハ欠陥数評価結果を示す
【0082】
図4から明らかなように、比較例に対して実施例1~7では洗浄後のウェーハ上の欠陥数が低減し、欠陥数が改善した。
【0083】
比較例では、ブラシ洗浄処理(HF)で用いたHF溶液に電解質を添加しなかったので、この処理中に異物がウェーハ上に再付着して、欠陥数が増加したと考えられる。
【0084】
また、実施例1~7では、ブラシ洗浄にフッ素樹脂系のブラシを用いたので、オゾン水処理中もブラシ洗浄を問題なく行うことができた。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5