(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂膜、及び、電子部品
(51)【国際特許分類】
C08G 59/26 20060101AFI20240220BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08G59/26
C08G59/40
(21)【出願番号】P 2021501828
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004164
(87)【国際公開番号】W WO2020175038
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019036029
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】藤村 誠
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-295374(JP,A)
【文献】特開2008-242007(JP,A)
【文献】国際公開第2018/058116(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037584(WO,A1)
【文献】特公昭48-12131(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08G 59/00 - 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン性極性基を有する重合体(A)と、下式(1)で表される架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物と、を含有する樹脂組成物。
【化1】
〔式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基の何れかを示し、m、n、pは0~4の整数、qは0~5の整数をそれぞれ示す。〕
【請求項2】
前記プロトン性極性基を有する重合体(A)が、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体及びプロトン性極性基を有するポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(B)の含有質量が、前記感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量の、0.4倍以上3.1倍以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
界面活性剤を更に含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物(D)及びメチロール基を2つ以上有する化合物の少なくとも一方を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて形成した、樹脂膜。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂膜を備える、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂膜、及び、電子部品に関するものである。特に、本発明は、電子部品に用いられる絶縁膜などの形成に好適に使用し得る樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる樹脂膜、及び、当該樹脂膜を備える電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品には、平坦化膜、保護膜、絶縁膜等として種々の樹脂膜が設けられている。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1では、エポキシ基と反応する極性基を有する重合体、主鎖に脂環構造を有し3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物を含有してなる架橋剤、及び感放射線化合物を含有してなる感放射線組成物が開示されている。特許文献1に記載された感放射線組成物は、電気特性、耐熱形状保持性、耐熱透明性等、及び耐薬品性に優れる樹脂膜を形成することができる。より具体的には、エポキシ基と反応する極性基としては、プロトン性極性基及び非プロトン性極性基が挙げられており、エポキシ基と反応する極性基を有する重合体の骨格としては、環状オレフィン系重合体、鎖状オレフィン系重合体、アクリレート系重合体等が挙げられている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、反り抑制性及びスミア除去性に優れると共に、表面への高ピール強度の導体層の形成が可能な硬化物が得られる樹脂組成物が開示されている。特許文献2に記載された樹脂組成物は、所定の構造を満たすエポキシ樹脂と、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及び活性エステル系硬化剤から選択される一種以上とを含む樹脂組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2005/096100号
【文献】特開2016-79366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような従来の感放射線組成物又は樹脂組成物には、得られる樹脂膜の耐熱性及び透明性を高め、さらに、パターン化樹脂膜を形成した場合におけるパターンのコントラスト明瞭性を高める、という点で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、耐熱性、透明性、及びコントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成可能な、樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜、及び当該樹脂膜を備える高性能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、プロトン性極性基を有する重合体(A)と、所定の架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物とを含有する樹脂組成物によれば、耐熱性及び透明性に優れるとともに、コントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂組成物は、プロトン性極性基を有する重合体(A)と、下式(1)で表される架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】
〔式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基の何れかを示し、m、n、pは0~4の整数、qは0~5の整数をそれぞれ示す。〕
このように、樹脂組成物にプロトン性極性基を有する重合体(A)と、上記所定の構造を満たす架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物とを含有させれば、耐熱性、透明性、コントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成することが可能となる。
【0010】
ここで、本発明の樹脂組成物において、前記プロトン性極性基を有する重合体(A)が、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体及びプロトン性極性基を有するポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む、ことが好ましい。樹脂組成物に環状オレフィン重合体及びプロトン性極性基を有するポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含有させることにより、パターン化樹脂膜を形成した際のコントラスト明瞭性を一層高めることができる。
【0011】
また、本発明の樹脂組成物において、前記架橋剤(B)の含有質量が、前記感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量の、0.4倍以上3.1倍以下であることが好ましい。架橋剤(B)及び感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量が上記所定の関係を満たす範囲内であれば、パターン化樹脂膜を形成した際のコントラスト明瞭性を一層高めることができる。
【0012】
更に、本発明の樹脂組成物は、界面活性剤を更に含有していても良い。樹脂組成物が界面活性剤を含んでいれば、樹脂組成物の塗工性を向上させることができる。
【0013】
更に、本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を更に含有していても良い。樹脂組成物がシランカップリング剤を含んでいれば、基材上に樹脂組成物からなる樹脂膜を形成した場合に、基材と樹脂膜との間の密着性を高めることができる。
【0014】
更にまた、本発明の樹脂組成物は、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の少なくとも一方を更に含有することが好ましい。樹脂組成物に、アルコキシメチルを基2つ以上有する化合物、及びメチロール基を2つ以上有する化合物の少なくとも一方を更に含有させれば、得られる樹脂膜の耐薬品性能を高めることができる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂膜は、上述した何れかの樹脂組成物を用いて形成したことを特徴とする。上述した樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜は、耐熱性及び透明性に優れる。更に、樹脂膜を形成する際にパターニングした場合には、コントラスト明瞭性に優れる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電子部品は、上述した何れかの樹脂組成物からなる樹脂膜を備えることを特徴とする。上述した樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜は、耐熱性及び透明性に優れ、且つ、パターンを有する場合には当該パターンがコントラスト明瞭性に優れるため、当該樹脂膜を備える電子部品は、所期の機能を十分に発揮することができるため、高性能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性、透明性、及び、コントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成可能な、樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜、及び当該樹脂膜を備える高性能な電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は、液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品に備えられうる、平坦化膜、保護膜、絶縁膜等として機能し得る樹脂膜を形成する際に用いることができる。中でも、本発明の樹脂膜は、耐熱性、透明性、及び、コントラスト明瞭性に優れるため、ITO電極を備える電子部品に好適に備えられうる。そして、本発明の電子部品は、本発明の樹脂膜を備えるものである。
【0019】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、プロトン性極性基を有する重合体(A)と、下式(1)で表される架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物と、を含有することを特徴とする。
【化2】
〔式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基の何れかを示し、m、n、pは0~4の整数、qは0~5の整数をそれぞれ示す。〕
さらに、本発明の樹脂組成物は、任意で、界面活性剤、シランカップリング剤、及びアルコキシメチル基を2つ以上有する化合物の少なくとも何れか、並びに、その他の添加剤を更に含有し得る。
【0020】
なお、本発明の樹脂組成物は、プロトン性極性基を有する重合体(A)、上記所定の構造を満たす架橋剤(B)、及び感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物を含有しているので、耐熱性、透明性、及びコントラスト明瞭性に優れる樹脂膜を形成することができる。ここで、本明細書において、樹脂膜が「耐熱性に優れる」とは、樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜が、高温条件下に曝した場合に減量し難い(即ち、加熱減量し難い)という性質を有することを意味する。また、本明細書において、樹脂膜が「コントラスト明瞭性に優れる」とは、樹脂組成物を用いて形成したパターン化樹脂膜において、パターンが明瞭であることを意味する。より具体的には、樹脂組成物よりなる塗膜をパターニングして、パターン化樹脂膜を形成した際に、膜として残留すべき部分の残留率が高く、消失すべき部分の残渣が少ない、ということを意味する。例えば、樹脂組成物がポジ型レジスト組成物として機能し得る樹脂組成物である場合には、樹脂組成物よりなる塗膜を露光し、潜像パターンを形成し、現像した際における、未露光部分の膜の残膜率が充分に高く、且つ、露光部分の膜の残渣が充分に少ない、ということを意味する。
【0021】
<プロトン性極性基を有する重合体(A)>
プロトン性極性基を有する重合体(A)とは、骨格となる構造に対してプロトン性極性基が結合してなる重合体である。「プロトン性極性基」とは、周期律表の第15族又は第16族に属する原子に水素が直接結合している原子を含む基をいう。水素が直接結合する原子は、好ましくは周期律表の第15族又は第16族の第2周期若しくは第3周期に属する原子であり、より好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0022】
このようなプロトン性極性基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基等の酸素原子を有する極性基;第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミド基、第二級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等の硫黄原子を有する極性基;等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有するものが好ましく、より好ましくはカルボキシル基である。
本発明において、プロトン性極性基を有する重合体(A)に結合しているプロトン性極性基の数に特に限定はなく、また、相異なる種類のプロトン性極性基が含まれていてもよい。
【0023】
また、プロトン性極性基を有する重合体(A)の骨格は、特に限定されない。中でも、得られるパターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性を一層高める観点から、骨格としては、(1)主鎖に、環状オレフィン単量体に由来する環状構造(脂環又は芳香環)を有する重合体、及び、(2)ポリアミドイミドが好ましい。なお、繰り返し単位にアミド結合及びイミド結合を有する重合体であっても、主鎖に環状オレフィン単量体に由来する環状構造を有する重合体は、上記(1)に記載した、「主鎖に、環状オレフィン単量体に由来する環状構造(脂環又は芳香環)を有する重合体」に該当するものとする。
【0024】
さらに、得られるパターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性をより一層高める観点から、プロトン性極性基を有する重合体(A)として、骨格が、(1)主鎖に、環状オレフィン単量体に由来する環状構造(脂環又は芳香環)を有する重合体を少なくとも用いること、換言すれば、プロトン性極性基を有する重合体(A)が、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体を少なくとも含むことが好ましい。以下、プロトン性極性基を有する重合体(A)としての、環状オレフィン重合体を「環状オレフィン重合体(A-1)」と称し、プロトン性極性基を有するポリアミドイミド樹脂を、「ポリアミドイミド樹脂(A-2)」と称することがある。なお、プロトン性極性基を有する重合体(A)としては、一種の重合体を単独で用いても良いし、複数種の重合体を組み合わせて用いても良い。より具体的には、プロトン性極性基を有する重合体(A)として、一種若しくは複数種の環状オレフィン重合体(A-1)又は一種若しくは複数種のポリアミドイミド樹脂(A-2)をそれぞれ用いても良いし、一種若しくは複数種の環状オレフィン重合体(A-1)と、一種若しくは複数種のポリアミドイミド樹脂(A-2)とを併用しても良い。中でも、上述のように、プロトン性極性基を有する重合体(A)が環状オレフィン重合体(A-1)を少なくとも含むことが好ましく、プロトン性極性基を有する重合体(A)が環状オレフィン重合体(A-1)であることがより好ましい。
【0025】
<<環状オレフィン重合体(A-1)>>
環状オレフィン重合体(A-1)としては、1又は2以上の環状オレフィン単量体の重合体、又は、1又は2以上の環状オレフィン単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられるが、本発明においては、環状オレフィン重合体を形成(A-1)するための単量体として、少なくともプロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)を用いることが好ましい。
【0026】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、単に「環状オレフィン単量体(a)」とも称することがある。)としては、特に限定されることなく、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、適宜、「単量体(a)」という。)の具体例としては、2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-メチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-カルボキシメチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2,3-ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニル-3-ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、3-メチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、3-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン、4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-メチル-4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4,5-ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-カルボキシメチル-4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、N-(ヒドロキシカルボニルメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルペンチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ジヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ジヒドロキシカルボニルプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルフェネチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルフェネチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-(ヒドロキシカルボニル)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシカルボニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド等のカルボキシル基含有環状オレフィン;2-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-メチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、4-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-メチル-4-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、2-ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-ヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-メチル-2-ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2,3-ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-メチル-2-(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、2-(2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン、3-ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-4,8-ジエン、3-ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-4,8-ジエン、4-ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-ヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4,5-ジヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-メチル-4-(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、N-(ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、等の水酸基含有環状オレフィン等を挙げることができる。中でも、得られる樹脂膜の現像液(特には、アルカリ現像液)に対する溶解性を向上させる観点から、カルボキシル基含有環状オレフィンが好ましく、4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エンが特に好ましい。さらに、このような好ましい環状オレフィン単量体(a)を用いることで、得られる樹脂膜の表面にITO膜を形成した場合に、ITO膜の表面にしわが生じることを抑制する性質(即ち、「ITOしわ抑制性能」)を一層高めることもできる。なお、環状オレフィン単量体(a)としては、一種又は複数種の単量体を用いることができる。
【0027】
環状オレフィン重合体(A-1)中における、環状オレフィン単量体(a)に由来する単位の含有割合は、環状オレフィン重合体(A-1)を構成する全繰り返し単位を100モル%として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましく、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましい。環状オレフィン単量体(a)に由来する単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるパターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性を一層高めることができる。
【0028】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A-1)は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)とを共重合して得られる共重合体であってもよい。このような共重合可能な単量体としては、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)、極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)、及び環状オレフィン以外の単量体(b3)(以下、適宜、「単量体(b1)」、「単量体(b2)」、「単量体(b3)」という。)が挙げられる。ここで単量体(b1)~(b3)は、特性に影響が無い範囲で使用可能である。そして、環状オレフィン重合体(A-1)は、単量体(a)と、単量体(b1)とから構成されることが好ましい。さらに、下記に列挙する単量体(b1)の中でも、N-置換イミド基を有する環状オレフィンである、N-(2-エチルヘキシル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミドを用いることが好ましい。
【0029】
プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)が有する、プロトン性極性基以外の極性基の具体例としては、エステル基(アルコキシカルボニル基及びアリーロキシカルボニル基を総称していう。)、N-置換イミド基、エポキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニルオキシカルボニル基(ジカルボン酸の酸無水物残基)、アルコキシ基、カルボニル基、第三級アミノ基、スルホン基、アクリロイル基等が挙げられる。中でも、プロトン性極性基以外の極性基としては、エステル基、N-置換イミド基及びシアノ基が好ましく、エステル基及びN-置換イミド基がより好ましく、N-置換イミド基が特に好ましい。
【0030】
そして、単量体(b1)の具体例としては、以下のような環状オレフィンが挙げられる。
エステル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、5-アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、9-アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等が挙げられる。
N-置換イミド基を有する環状オレフィンとしては、例えば、N-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-エチルヘキシル)-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-エチルヘキシル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-[(2-エチルブトキシ)エトキシプロピル]-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(エンド-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジイルジカルボニル)アスパラギン酸ジメチル等が挙げられる。
シアノ基を有する環状オレフィンとしては、例えば、9-シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、5-シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等が挙げられる。
ハロゲン原子を有する環状オレフィンとしては、例えば、9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチル-9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等が挙げられる。
これらのプロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(「ノルボルネン」ともいう。)、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[10.2.1.02,1104,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9-メチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチリデン-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデン-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ-5,12-ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、9-フェニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10]ペンタデカ-12-エン等が挙げられる。
これらの極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
環状オレフィン以外の単量体(b3)の具体例としては、鎖状オレフィンが挙げられる。鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
これらの環状オレフィン以外の単量体(b3)は、それぞれ単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
環状オレフィン重合体(A-1)は、環状オレフィン単量体(a)を、所望により単量体(b1)~(b3)から選ばれる1種以上の単量体と共に重合することにより得られる。重合により得られた重合体を更に水素化してもよい。本発明では、水素添加された重合体も、プロトン性極性基を有する環状オレフィン系樹脂に含まれる。
【0034】
環状オレフィン重合体(A-1)は、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン重合体に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入し、所望により水素添加を行なう方法によっても得ることができる。ここで、水素添加は、プロトン性極性基導入前の重合体に対して行なってもよい。
また、環状オレフィン重合体(A-1)は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体に、更にプロトン性極性基を導入する方法によって得てもよい。
【0035】
<<ポリアミドイミド樹脂(A-2)>>
プロトン性極性基を有する重合体(A)としての、「ポリアミドイミド樹脂(A-2)」は、繰り返し単位にアミド結合及びイミド結合を有する重合体(即ち、ポリアミドイミド樹脂)であって、プロトン性極性基を有する重合体である。なお、ポリアミドイミド樹脂(A-2)は、プロトン性極性基を有しないポリアミドイミドに、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入する方法によっても得ることができる。また、ポリアミドイミド樹脂(A-2)は、プロトン性極性基を有するポリアミドイミドに、更にプロトン性極性基を導入する方法によって得てもよい。よって、下記列挙に係る各種ポリアミドイミドのうち、プロトン性極性基を有するものは、そのまま、或いは更に変性してプロトン性極性基を導入して用いることができ、プロトン性極性基を有さないものは、公知の変性剤を利用する等して変性してプロトン性極性基を導入してから、用いることができる。
【0036】
ポリアミドイミド樹脂(A-2)としては、分岐型構造を有するポリアミドイミド及び直鎖型構造を有するポリアミドイミドが挙げられる。中でも、ポリアミドイミドとしては、分岐型構造を有するポリアミドイミドが好ましい。ポリアミドイミド樹脂(A-2)が分岐型構造を有するポリアミドイミドであれば、樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜の現像液に対する溶解性を向上させることができる。
【0037】
分岐型構造を有するポリアミドイミドとしては、例えば、下式(2)で表される構造単位と下式(3)で表される構造単位を有し、且つ、下記構造式(α)、(β)及び(γ)で表される末端構造のいずれか1個以上を有する化合物、下式(4)で表される化合物、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC株式会社製、ユニディックEMG‐793)、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC株式会社製:ユニディックEMG‐1015)、などが挙げられる。
【0038】
【化3】
〔但し、上記式(2)中、R
1は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表す。〕
【0039】
【化4】
〔但し、上記式(3)中、R
1は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表し、R
2は数平均分子量が700~4500の線状炭化水素構造を表す。〕
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【化8】
〔ただし、式(4)中、nは2以上200以下の整数である。〕
【0044】
上記式(4)で表される構造を有する、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体は、例えば、下式(5)で表されるイソホロンジイソシアネートイソシアヌレート体と、無水トリメット酸とを反応させることにより得ることができる。
【化9】
【0045】
かかる反応において、水酸基を2個以上含有する多官能ポリオールを連鎖移動剤として添加して、上記式(4)の一部構造にウレタン構造を有する部位を導入してもよい。ウレタン構造を有する部位を上記式(4)の一部構造に導入することにより、分岐型構造を有するポリアミドイミドの物性をコントロールすることができる。ウレタン構造を有する部位としては、例えば、下式(6)で表される部位が挙げられる。
【0046】
【化10】
〔但し、上記式(6)中、R
1は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表し、R
2は数平均分子量が700~4500の線状炭化水素構造を表す。〕
【0047】
また、直鎖型構造を有するポリアミドイミドとしては、例えば、下式(7)で表される化合物、などが挙げられる。
【0048】
【化11】
〔但し、上記式(7)中、nは2以上400以下の整数である。〕
【0049】
前記上記式(7)で表される化合物は、無水トリメット酸とイソホロンジイソシアネートとを反応させることにより得られる。
【0050】
<架橋剤(B)>
架橋剤(B)は、樹脂膜中に架橋構造を形成することにより、樹脂膜の耐熱性を高めるように作用する化合物である。さらには、架橋剤(B)により、樹脂膜のITOしわ抑制性能をも高め得る。架橋剤(B)は下式(1)で表される化合物である。
【化12】
〔式(1)中、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基の何れかを示し、m、n、pは0~4の整数、qは0~5の整数をそれぞれ示す。〕
【0051】
ここで、Rに含まれうる炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有するアルキル基が挙げられる。この中でも、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また、Rに含まれうる炭素数1~6のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有するアルコキシ基が挙げられる。この中でも、炭素数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
ここで、得られる樹脂膜の耐熱性を一層高める観点から、m,n,p、及びqが全て「0」である、還元すれば、式(1)で表される化合物が置換基を有さないことが好ましい。この場合、上記式(1)において「R」が結合しうる位置に全て水素原子が結合している。
【0052】
さらに、式(1)を満たす架橋剤(B)が、置換基を有さず、且つ、2つのグリシジルエーテル基が所定の位置に結合してなる、下記構造を有する化合物であることが好ましい。かかる化合物は、日本化薬社製、「WHR-991S」として市販されている。
【化13】
【0053】
<<架橋剤(B)の含有量>>
そして、樹脂組成物における、プロトン性極性基を有する重合体(A)100質量部に対する、架橋剤(B)の含有量は、15質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、110質量部以下であることが更に好ましい。プロトン性極性基を有する重合体(A)に対する架橋剤(B)の含有量が上記範囲内であれば、得られるパターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性を一層高めることができる。
【0054】
<感放射線化合物(C)>
感放射線化合物(C)は、放射線が照射されると化学反応を引き起こすことができる化合物である。ここで、放射線としては、特に限定されることなく、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などが挙げられる。そして、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物は、一種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
キノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロクロリド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロリド、及び1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸クロクロリド等が挙げられる。
【0056】
フェノール性水酸基を有する化合物の代表例としては、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等が挙げられる。他のフェノール性水酸基を有する化合物としては、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1,2,2 -テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
【0057】
中でも、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物としては、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド)とのエステル体を好適に用いることができる。
【0058】
なお、本発明の樹脂組成物は、キノンジアジド化合物以外の感放射線化合物を含有していても良い。かかる感放射線化合物としては、例えば、アセトフェノン化合物、トリアリールスルホニウム塩、及び、キノンジアジド化合物以外のアジド化合物を挙げることができる。これらは、一種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
<架橋剤(B)の含有質量と感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量との関係>
本発明の樹脂組成物は、架橋剤(B)の含有質量が、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量の、0.4倍以上であることが好ましく、1.0倍以上であることがより好ましく、3.1倍以下である、ことが好ましい。架橋剤(B)及び感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物の含有質量が上記所定の関係を満たす範囲内であれば、得られるパターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性を一層高めることができる。
【0060】
<アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物>
アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物は、得られる樹脂膜の耐薬品性能を高めるように作用しうる成分である。さらに、かかる効果を一層効率的に発揮する観点から、樹脂組成物が、少なくともアルコキシメチル基を2つ以上有する化合物を含有することが好ましい。
【0061】
<<アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物>>
アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物としては、例えば、2つ以上のアルコキシメチル基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物、アミノ基が2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるメラミン化合物、2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるウレア化合物が挙げられる。
【0062】
2つ以上のアルコキシメチル基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾールなどのジメトキシメチル置換フェノール化合物;3,3’,5,5’-テトラメトキシメチル-4,4’- ジヒドロキシビフェニル(例えば、商品名「TMOM-BP」、本州化学工業社製)、1,1-ビス[3,5-ジ(メトキシメチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-フェニルエタンなどのテトラメトキシメチル置換ビフェニル化合物;4,4’,4”-(エチリデン)トリスフェノール(例えば、商品名「HMOM-TPHAP-GB」、本州化学工業社製)などのヘキサメトキシメチル置換トリフェニル化合物;が挙げられる。
【0063】
アミノ基が2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるメラミン化合物としては、例えば、N,N’-ジメトキシメチルメラミン、N,N’,N”-トリメトキシメチルメラミン、N,N,N’,N”-テトラメトキシメチルメラミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタメトキシメチルメラミン、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサメトキシメチルメラミン(例えば、商品名「ニカラックMW-390LM」、商品名「ニカラックMW-100LM」、何れも三和ケミカル社製)、あるいはこれらの重合体などが挙げられる。
【0064】
2つ以上のアルコキシメチル基で置換されてなるウレア化合物としては、例えば、商品名「ニカラックMX270」、商品名「ニカラックMX280」、商品名「ニカラックMX290」(何れも三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0065】
<<メチロール基を2つ以上有する化合物>>
メチロール基を2つ以上有する化合物としては、例えば、2つ以上のメチロール基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物が挙げられる。
そして、2つ以上のメチロール基が芳香環に直接結合してなるフェノール化合物としては、2,4-ジヒドロキシメチル-6-メチルフェノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4-ターシャリー-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、ビス(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名「DM-BIPC-F」、旭有機材社製)、ビス(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名「DM-BIOC-F」、旭有機材社製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン(商品名「TM-BIP-A」、旭有機材社製)などが挙げられる。
【0066】
上述したアルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の中でも、反応性が高いという点より、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物の一種である、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサメトキシメチルメラミンが好ましい。
【0067】
[アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の含有量]
樹脂組成物がアルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の双方又は何れか一方を含む場合における、これらの合計含有量は、プロトン性極性基を有する重合体(A)100質量部あたり、1質量部以上100質量部以下とすることが好ましい。アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物及びメチロール基を2つ以上有する化合物の合計含有量が上記範囲内であれば、樹脂膜の耐薬品性能を一層高めることができる。
【0068】
<<シランカップリング、及び界面活性剤>>
シランカップリング剤は、本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜と、当該樹脂膜が形成された基材との間の密着性を高めるように機能する。そして、シランカップリング剤としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる(例えば、特開2015‐94910号参照)。より具体的には、シランカップリング剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類を好適に用いることができる。
また、シランカップリング剤の含有量は、通常、プロトン性極性基を有する重合体(A)100質量部あたり、0.01質量部以上5質量部以下である。
【0069】
界面活性剤は、本発明の樹脂組成物の塗工性を向上させることができる。界面活性剤としては、特に限定されることなく、公知のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、メタクリル酸共重合体系界面活性剤、及びアクリル酸共重合体系界面活性剤等を用いることができる(例えば、国際公開第2017/163981号参照)。中でも、界面活性剤としては、オルガノシロキサンポリマー等のシリコーン系界面活性剤を好適に用いることができる。
また、界面活性剤の含有量は、通常、プロトン性極性基を有する重合体(A)100質量部あたり、0.01質量部以上1質量部以下である。
【0070】
なお、シランカップリング剤及び界面活性剤は、それぞれ、一種単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、樹脂組成物に配合するシランカップリング剤及び界面活性剤の量は、任意に調整し得る。
【0071】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、任意で、上記以外のその他の添加剤を含有していても良い。かかるその他の添加剤としては、酸化防止剤、及び上述した架橋剤(B)とは構造の異なる多官能エポキシ化合物等が挙げられる。
【0072】
<<酸化防止剤>>
酸化防止剤は、本発明の樹脂組成物の安定性を高め得る成分である。酸化防止剤としては、特に限定されることなく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤のような、公知の酸化防止剤を用いることができる(例えば、特開2014-149477号参照)。なお、酸化防止剤は、一種単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、樹脂組成物に配合する酸化防止剤の量は、任意に調整し得る。
【0073】
<<架橋剤(B)とは構造の異なる多官能エポキシ化合物>>
架橋剤(B)とは構造の異なる多官能エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエンを骨格とするエポキシ化合物(商品名「HP-7200」、DIC社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル社製)、エポキシ化3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(3-シクロヘキセニルメチル)修飾ε-カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル社製)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル社製)、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021P」、ダイセル社製)、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2081」、ダイセル社製)、1,2:8,9-ジエポキシリモネン(商品名「セロキサイド3000」、ダイセル社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;及び、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jER825」、「jER827」、「jER828」、「jERYL980」、三菱化学社製、商品名「EPICLON840」、「EPICLON850」、DIC社製)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(商品名「jER806」、「jER807」、「jERYL983U」、三菱化学社製、商品名「EPICLON830」、「EPICLON835」、DIC社製)、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「jERYX8000」、「jERYX8034」三菱化学社製、商品名「ST-3000」新日鉄住金社製、商品名「リカレジンHBE-100」新日本理化社製、商品名「エポライト4000」共栄化学社製)、長鎖ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「EXA-4816」、「EXA-4850-150」、「EXA-4850-1000」DIC社製)、EO変性ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「アデカレジンEP-4000L」、「アデカレジンEP-4010L」、ADEKA社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「jER152」、三菱化学社製)、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレンなどのナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名「HP-4032D」、DIC社製)、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル(商品名「アデカレジンEP-4000L」、「アデカレジンEP-4088L」、ADEKA社製)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(商品名「商品名「jER630」、三菱化学社製、商品名「TETRAD-C」、「TETRAD-X」、三菱ガス化学社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR-TMP」、阪本薬品工業社製)、多官能エポキシポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル社製)、(商品名「エポリードPB4700」、ダイセル社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(商品名「SR-GLG」、阪本薬品工業社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR-DGE」、阪本薬品工業社製)、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR-4GL」、阪本薬品工業社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;などを挙げることができる。なお、これらは、一種単独で、或いは複数種を組み合わせて用いることができる。
【0074】
<溶剤>
本発明の樹脂組成物が任意に含有し得る溶剤としては、特に限定されることなく、樹脂組成物の溶剤として公知の溶剤を用いることができる。そのような溶剤としては、例えば、直鎖のケトン類、アルコール類、アルコールエーテル類、エステル類、セロソルブエステル類、プロピレングリコール類、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、飽和γ-ラクトン類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、並びに、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる(例えば、国際公開第2015/033901号参照)。
なお、これらの溶剤は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
そして、樹脂組成物中の溶剤の量は、特に限定されることなく、プロトン性極性基を有する重合体(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、好ましくは10000質量部以下、より好ましくは5000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下である。
【0075】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述した成分を既知の方法により混合し、任意にろ過することで、調製することができる。ここで、混合には、スターラー、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの既知の混合機を用いることができる。また、混合物のろ過には、フィルター等のろ材を用いた一般的なろ過方法を採用することができる。
【0076】
(樹脂膜)
本発明の樹脂膜は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて形成したことを特徴とする。本発明の樹脂膜は、耐熱性、透明性、及びコントラスト明瞭性に優れる。本発明の樹脂膜中において、架橋剤(B)及び任意成分として含有されうるその他の架橋性の化合物が架橋物となっていても良い。
【0077】
<樹脂膜の製造方法>
本発明の樹脂膜は、樹脂膜を形成する基板上に本発明の樹脂組成物を使用して塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)、及び、塗膜を加熱する工程(硬化工程)を含む製造方法により、効率的に製造することができる。さらに、必要に応じて、樹脂膜を形成する際にパターニングを行って、パターン化樹脂膜を得ても良い。また、樹脂膜を形成する基板上への塗膜の配設は、特に限定されることなく、塗布法やフィルム積層法等の既知の方途に従って行うことができる。
【0078】
<<塗膜形成工程>>
ここで、塗布法による塗膜の形成は、樹脂組成物を基板上に塗布した後、加熱乾燥(プリベーク)することにより行うことができる。なお、樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、樹脂組成物に含まれている成分の種類や配合割合に応じて異なるが、加熱温度は、通常、30~150℃、好ましくは60~120℃であり、加熱時間は、通常、0.5~90分間、好ましくは1~60分間、より好ましくは1~30分間である。
【0079】
また、フィルム積層法による塗膜の形成は、樹脂組成物を樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布し、加熱乾燥(プリベーク)することによりBステージフィルムを得た後、次いで、このBステージフィルムを基板上に積層することにより行うことができる。なお、Bステージフィルム形成用基材上への樹脂組成物の塗布及び樹脂組成物の加熱乾燥は、上述した塗布法における樹脂組成物の塗布及び加熱乾燥と同様にして行うことができる。また、積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0080】
基板上に設けた塗膜のパターニングは、例えば、パターニング前の塗膜に放射線を照射して潜像パターンを形成した後、潜像パターンを有する塗膜に現像液を接触させてパターンを顕在化させる方法などの公知のパターニング方法を用いて行うことができる。
【0081】
ここで、放射線としては、感放射線化合物(C)に化学反応を引き起させることにより放射線照射部の現像液に対する溶解性を向上させることができるものであれば特に限定されることなく、任意の放射線を用いることができる。具体的には、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などを用いることができる。なお、これらの放射線は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
また、放射線をパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、縮小投影露光装置を使用し、所望のマスクパターンを介して放射線を照射する方法などの公知の方法を用いることができる。
そして、放射線の照射条件は、使用する放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、放射線の波長は365nm以上436nm以下の範囲内とすることができ、また、照射量は2000mJ/cm2以下とすることができる。
【0082】
また、現像液としては、国際公開第2015/141719号に記載のアルカリ性化合物の水性溶液等の既知のアルカリ現像液を用いることができる。
そして、塗膜に現像液を接触させる方法及び条件としては、特に限定されることなく、例えば、国際公開第2015/141719号に記載の方法及び条件を採用することができる。
【0083】
なお、上述したようにしてパターン形成された塗膜は、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により更に除去してもよい。
【0084】
さらに、必要に応じて、樹脂組成物に含有させた感放射線化合物(C)を失活させるために、ブリーチング工程を実施しても良い。ブリーチング工程では、塗膜全面に対して、任意の放射線を照射することもできる。放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用することができる。さらに、放射線の照射と同時に、または照射後に樹脂膜を加熱してもよい。ブリーチング工程にて、感放射線化合物(C)を失活させることにより、得られる樹脂膜の透明性を一層高めることができる。
【0085】
<<硬化工程>>
硬化工程では、塗膜を加熱(ポストベーク)して硬化させて、樹脂膜を得る。
【0086】
塗膜の加熱は、特に限定されることなく、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。なお、加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。
【0087】
ここで、硬化工程にて塗膜を加熱する際の温度は、100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。本発明の樹脂組成物を使用すれば、塗膜を加熱する際の温度が100℃以上、好ましくは200℃以上と高温である場合にも、良好に成膜することができる。さらに、硬化工程にて塗膜を加熱する際の温度の上限は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましい。
なお、硬化工程にて塗膜を加熱する時間は、塗膜の面積や厚さ、加熱に使用する機器等に応じて適宜選択することができるが、例えば、10~120分間とすることができる。
【0088】
そして、かかる硬化工程を経た樹脂膜は、波長400nmの光の透過率が90%以上であることが好ましい。なお、「透過率」は、実施例に記載した方法に従って測定することができる。
【0089】
(電子部品)
本発明の電子部品は、上述した本発明の樹脂組成物からなる樹脂膜を備える。そして、本発明の電子部品は、耐熱性、透明性、及びコントラスト明瞭性に優れる本発明の樹脂膜を備えているため、高性能である。
【0090】
<電子部品の種類>
本発明の電子部品の種類は、特に限定されない。例えば、本発明の樹脂膜が、耐熱性及び透明性優れ、更に、パターン化樹脂膜とした際のコントラスト明瞭性に優れることから、本発明の電子部品は、ITO電極等の透明電極と本発明の樹脂膜とが積層配置されてなる電子部品でありうる。また、例えば、本発明の樹脂膜は、半導体デバイスに備えられる再配線層の層間絶縁膜であっても良い。
【実施例】
【0091】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例及び比較例において、樹脂膜のITOしわ抑制性能、加熱減量、透過率、現像容易性、及び残膜率は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0092】
<ITOしわ抑制性能>
ガラス基板(コーニング社製、コーニング1737)上に実施例、比較例で得た樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて120℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、塗膜を形成した。形成した塗膜の全面に対して、大気雰囲気下、g線(436nm)、h線(405nm)、及びi線(365nm)の波長の光を発する高圧水銀ランプを用いて、1500mJ/cm2の紫外線を照射し、塗膜に含有される感放射線化合物(C)を失活させるブリーチング工程を実施した。次いで、オーブンを用いて、窒素雰囲気下、30℃から10℃/分で300℃まで昇温後、300℃で60分間加熱するポストベークを行うことで、膜厚2μmの樹脂膜を形成した。この樹脂膜上に、ITO透明電極をスパッタリング装置(芝浦エレテック社製、「i-Miller CFS-4EP-LL」、ステージ温度30℃)により40nmの膜厚で形成した。得られたITO透明電極付きの積層体のガラス基板を1.5cm角に切断して試験片を作製した。作製した試験片のガラス基板側を270℃で加熱したホットプレート上に5分置いた後、室温まで冷却した。次いで、試験片のITO透明電極側表面を光学顕微鏡(100倍)で観察し、しわ部分の面積の、樹脂膜表面の全面積(1.5cm×1.5cm)に対する割合を算出し、以下の基準で評価した。なお、しわ部分の面積は、光学顕微鏡で得られた画像を二値化処理して抽出した。
A:樹脂膜の表面にしわの発生なし。
B:樹脂膜の表面にしわの発生はあるが、しわ部分の面積が樹脂膜表面の全面積の1/2未満。
C:樹脂膜の表面にしわの発生があり、しわ部分の面積が樹脂膜表面の全面積の1/2以上。
<加熱減量>
スパッタリング装置(芝浦エレテック社製、「i-Miller CFS-4EP-LL」)を用いて、アルミニウム薄膜が100nmの膜厚で形成されたシリコンウェハ上に、実施例、比較例で得た樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いてシリコンウェハを120℃で2分間加熱した(塗膜形成工程)。形成した塗膜の全面に対して、大気雰囲気下、g線(436nm)、h線(405nm)、及びi線(365nm)の波長の光を発する高圧水銀ランプを用いて、1500mJ/cm2の紫外線を照射し、塗膜に含有される感放射線化合物(C)を失活させるブリーチング工程を実施した。次いで、窒素雰囲気下、30℃から10℃/分で300℃まで昇温後、300℃で60分間の条件で熱処理させることで樹脂膜を得て、膜厚2μmの樹脂膜を片面に備える積層体を得た(硬化工程)。
得られた積層体を0.5mol/Lの塩酸水溶液に浸漬し、シリコンウェハと樹脂膜の間に位置するアルミニウム薄膜を塩酸水溶液にて溶解させることで樹脂膜をシリコンウェハから剥離した。次いで剥離した樹脂膜を水洗し、乾燥した。乾燥後の樹脂膜を示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツル社製、TG/DTA6200)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で300℃まで到達させ、300℃で1時間保持した際の、300℃到達時の試料の質量W0及び300℃の保持終了時の試料の質量W1をそれぞれ測定して、それらの値から加熱減量の値:(W0-W1)/W0×100(%)を算出し、以下の基準で評価した。加熱減量が少ないほど、樹脂膜が耐熱性に優れることを意味する。
A:300℃における加熱減量が1%未満。
B:300℃における加熱減量が1%以上3%未満。
C:300℃における加熱減量が3%以上。
<光線透過率>
ガラス基板(コーニング社製、コーニング1737)上に実施例、比較例で得た樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて120℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚2μmの塗膜を形成した(塗膜形成工程)。形成した塗膜の全面に対して、大気雰囲気下、g線(436nm)、h線(405nm)、及びi線(365nm)の波長の光を発する高圧水銀ランプを用いて、1500mJ/cm2の紫外線を照射し、塗膜に含有される感放射線化合物(C)を失活させるブリーチング工程を実施した。次いで、オーブンを用いて、窒素雰囲気下、30℃から10℃/分で300℃まで昇温後、300℃で60分間加熱するポストベークを行うことで、樹脂膜とガラス基板とからなる積層体を得た(硬化工程)。
得られた積層体について、分光光度計V‐560(日本分光社製)を用いて波長400nmの光における光線透過率(%)を測定した。
なお、樹脂膜の光線透過率(%)は、樹脂膜が付いていないガラス基板をブランクとして、樹脂膜の厚みを2μmとした場合の換算値で算出し、以下の基準で評価したところ、全ての例で得られた樹脂膜がA評価であった。
A:光線透過率が90%以上。
B:光線透過率が90%未満。
【0093】
<現像容易性>
シリコンウェハ上に、各実施例及び各比較例において作製した感放射線樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレートを用いて120℃で2分間プリベークして、厚さ3μmの樹脂膜を形成した。かかる樹脂膜を試料として、g線(436nm)、h線(405nm)、及びi線(365nm)の波長の光を発する高圧水銀ランプを用い、500mJ/cm2にて、樹脂膜の表面の一部を露光部、他の一部が未露光部となるような態様で、露光を行った。そして、露光後の試料を23℃の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(アルカリ現像液)にて60秒間浸漬した後、超純水で30秒間リンスを行い、現像後の試料の表面状態を目視にて観察した。その結果、全ての例において、樹脂膜の露光部に該当する領域が完全に溶解していることを確認した。なお、現像容易性に欠く樹脂膜では、現像後の試料の表面状態を観察した場合に露光部の樹脂膜の不溶解、あるいは膨潤が発生することがある。このような現象が生じない樹脂膜が、ポジ型の樹脂膜としての現像容易性に優れるものと判断することができる。全ての例において得られた樹脂膜が現像容易性に優れていたことを、表1にて、「A」評価として示す。
【0094】
<残膜率>
上記現像容易性の評価の際に得た、露光後の試料について、未露光部の膜厚(T0)を測定した。また、上記現像容易性の評価の際に得た、現像後の試料について、膜厚(T1)を測定した。膜厚は、接触式の膜厚測定器を用いて測定した。得られた測定値から、下式に従って残膜率(R)を算出した。
残膜率(R)=(現像後の膜厚(T1))/(現像前の膜厚(T0))×100(%)
そして、得られた残膜率(R)の値を以下の基準に従って評価した。残膜率(R)の値が大きい程、現像後に残留すべき膜部分の不所望な溶解が抑制されていることを表す。よって、本項目に従って評価した「残膜率」が高く、且つ、上記項目に従って評価した「現像容易性」が高い場合に、パターン化樹脂膜のコントラスト明瞭性が高いことを意味する。
A:残膜率(R)が85%以上であった。
B:残膜率(R)が70%以上85%未満であった。
C:残膜率(R)が70%未満であった。
【0095】
(合成例1:プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)の合成)
N-置換イミド基を有する環状オレフィンとしてのN-(2-エチルヘキシル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド40モル%、及びプロトン性極性基を有する環状オレフィンとしての4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン60モル%からなる単量体混合物100部、1,5-ヘキサジエン2部、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年 に記載された方法で合成した)0.02部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
そして、得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)としての水添重合体を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A-1)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,150、数平均分子量は4,690、分子量分布は1.52、水素添加率は、99.7%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A-1)の重合体溶液の固形分濃度は34.4質量%であった。
【0096】
(実施例1)
合成例1で得られたプロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)の溶液291部(環状オレフィン重合体(A-1)として100部)、下式を満たす架橋剤(B)としての化合物(日本化薬社製、WHR-991S)30部、感放射線化合物(C)としての、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸クロライド(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド)とのエステル体(2.0モル体)(美源スペシャリティケミカル社製、製品名「TPA520」)35部、界面活性剤としてのオルガノシロキサンポリマー(信越化学社製、製品名「KP?341」)0.1部、シランカップリング剤としてのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER社製、製品名「OFS?6040」)1部、酸化防止剤として、ペンタエリズリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名「Irganox1010FF」、BASF社製)2部、並びに、溶剤としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学社製、製品名「EDM-S」)108部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて形成した塗膜のITOしわ抑制性能、加熱減量、光線透過率、現像容易性、及び残膜率を評価した。結果を表1に示す。
【化14】
【0097】
(実施例2,3,6)
架橋剤(B)の配合量及び溶剤の配合量を表1に示す通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例4)
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A-1)に代えて、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂のプロピレングリコールメチルエーテルアセタート及びn-ブタノール混合溶液229部(DIC社製、ユニディックEMG‐793、カルボキシル基を有する分岐型ポリアミドイミド樹脂(A-2)として100部)を用い、架橋剤(B)及び溶剤の配合量をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例5)
架橋剤(B)の配合量を40部とし、さらに、アルコキシメチル基を2つ以上有する化合物(D)としてN,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサメトキシメチルメラミン(製品名「ニカラックMW-100LM」、三和ケミカル社製)10部を配合し、溶剤の配合量を144部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例1)
架橋剤(B)を配合せず、これに代えて、架橋剤(B)とは構造の異なる多官能エポキシ化合物である、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、製品名「エポリードGT401」)40部を配合し、溶剤の配合量を126部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例2)
架橋剤(B)を配合せず、これに代えて、架橋剤(B)とは構造の異なる多官能エポキシ化合物である、ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、「828EL」)60部を配合し、溶剤の配合量を126部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
表1より、プロトン性極性基を有する重合体(A)と、特定の構造を満たす架橋剤(B)と、感放射線化合物(C)としてのキノンジアジド化合物(TPA520)を含有する実施例1~6の樹脂組成物によれば、耐熱性(加熱減量が少ない)及び透明性に優れる樹脂膜を形成することができたことが分かる。さらに、実施例1~6では、パターン化樹脂膜を形成した際の現像容易性及び残膜率が共に高いレベルで両立可能であったことから、コントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成することができたことが分かる。また、表1より、特定の構造を満たす架橋剤(B)を含有しない樹脂組成物を用いた比較例1~2の場合には、得られる樹脂膜の耐熱性を実施例と同レベルまで高めることができなかったことが分かる。また、比較例1~2では、残膜率の評価がC評価となっており、コントラスト明瞭性に優れるパターン化樹脂膜を形成することができなかったことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の樹脂組成物によれば、耐熱性、透明性、及びコントラスト明瞭性に優れる樹脂膜を形成することができる。
また、本発明によれば、本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜、及び当該樹脂膜を備える高性能な電子部品を提供することができる。