(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置および分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20240220BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L33/56
C08K9/06
(21)【出願番号】P 2021511498
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012985
(87)【国際公開番号】W WO2020203462
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019066737
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-004035(JP,A)
【文献】特開2017-193631(JP,A)
【文献】特開2016-222850(JP,A)
【文献】特開2016-175804(JP,A)
【文献】特開2015-096950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0197631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0147722(US,A1)
【文献】国際公開第2019/026962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
C08K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子
と、前記金属酸化物粒子を分散させる分散媒と、を含む分散液であって、
前記分散液は、
樹脂成分を含まず、
前記金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm
-1以上3800cm
-1の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるように、スペクトルの値を規格化した際に、以下の式(1):
IA/IB≦3.5 (1)
(式中、「IA」は、3500cm
-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100cm
-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す)
を満足する、分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物の硬化物である、封止部材。
【請求項4】
請求項3に記載の封止部材と、前記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置を備える、照明器具または表示装置。
【請求項6】
少なくともシラン化合物と水とを混合し、前記シラン化合物が加水分解された加水分解液を得る第1の工程と、
前記加水分解液と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る第2の工程と、
前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、第1の分散液を得る第3の工程と、
前記第1の分散液中の前記金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理して、第2の分散液を得る第4の工程と、を有し、
前記混合液中における前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、分散液の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程において、前記シラン化合物と前記水とともに、触媒を混合する、請求項6に記載の分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子を含む分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置および分散液の製造方法に関する。
本願は、2019年3月29日に、日本に出願された特願2019-066737号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
小型、長寿命化、低電圧駆動等の長所を有する光源として、発光ダイオード(LED)が広く用いられている。LEDパッケージ中のLEDチップは、一般に、酸素や水分といった外部環境に存在する劣化因子との接触を防止するために、樹脂を含む封止材料で封止されている。したがって、LEDチップにおいて発した光は、封止材料を透過して、外部に向かって出射される。そのため、LEDパッケージから放出される光束を増大させるためには、LEDチップにおいて放出された光を、LEDパッケージ外部に、効率よく取り出すことが重要となる。
【0003】
LEDチップから放出された光の取り出し効率を向上させるための封止材料として、アルケニル基、H-Si基、およびアルコキシ基から選ばれた1以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾された金属酸化物粒子と、マトリックス樹脂組成物とを含有する、光散乱複合体形成用組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この光散乱複合体形成用組成物では、分散粒子径が小さく、かつ屈折率が高い金属酸化物粒子を含む分散液が、シリコーン樹脂に、透明性が比較的維持された状態で、混合されている。これにより、光散乱複合体形成用組成物を硬化して得られる光散乱複合体は、光透過性の低下が抑制されており、かつ、光散乱性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らは、屈折率の高い金属酸化物粒子を封止材料に含有させることにより、得られる封止部材の光散乱性を向上させるのみならず、封止部材の屈折率を向上させることができることを知見した。封止部材の屈折率が向上すると、一般に封止された発光素子からの光の取り出し効率が向上する。このような目的で金属酸化物粒子を封止材料に含有させる場合、屈折率の向上の観点からは、金属酸化物粒子の含有量が大きいほうが有利である。
【0007】
一方、近年、LEDの高寿命化のために、封止材料に用いる封止用樹脂として、耐熱性の高いメチル系シリコーン樹脂の需要が高まっている。メチル系シリコーン樹脂は、従来一般的に使用されていたフェニルシリコーン樹脂等と比較して、メチル基の含有量が大きく、疎水性の度合いが大きい。そのため、特許文献1のように、表面が疎水化された金属酸化物粒子であっても、これをメチル系シリコーン樹脂と混合した時に、金属酸化物粒子同士が凝集して、透明な組成物が得られない、という問題があった。このような問題は、封止材料中の金属酸化物粒子の含有量が大きくなるにつれて顕著になる。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、金属酸化物粒子を含み、メチル系シリコーン樹脂に分散させた際に、金属酸化物粒子の凝集が抑制される分散液、これを含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、この封止部材を有する発光装置、この発光装置を備えた照明器具および表示装置、ならびに分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、シラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子を含む分散液であって、
前記分散液を、真空乾燥により乾燥して得られる、前記金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm-1以上3800cm-1の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるように、スペクトルの値を規格化した際に、以下の式(1):
IA/IB≦3.5(1)
(式中、「IA」は、3500cm-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100cm-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す)
を満足する、分散液を提供する。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の第二の態様は、前記分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる、組成物を提供する。
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第三の態様は、前記組成物の硬化物である、封止部材を提供する。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の第四の態様は、前記封止部材と、前記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置が提供される。
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第五の態様は、前記発光装置を備える、照明器具または表示装置を提供する。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の第六の態様は、少なくともシラン化合物と水とを混合し、前記シラン化合物が加水分解された加水分解液を得る第1の工程と、
前記加水分解液と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る第2の工程と、
前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、第1の分散液を得る第3の工程と、
前記第1の分散液中の前記金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理して、第2の分散液を得る第4の工程と、を有し、
前記混合液中における前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、分散液の製造方法が提供される。
前記第1の工程において、前記シラン化合物と前記水とともに、触媒を混合してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、金属酸化物粒子を含み、メチル系シリコーン樹脂に分散させた際に、金属酸化物粒子の凝集が抑制される、分散液、これを含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、この封止部材を有する発光装置、この発光装置を備えた照明器具および表示装置、ならびに分散液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る発光装置の好ましい一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態の例について詳細に説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、量、数、種類、比率、構成等について、省略、追加、置換、又は変更が可能である。
<1. 本発明者らの着想>
まず、本発明の詳細な説明に先立ち、本発明者らによる本発明に至るまでの着想について説明する。
【0016】
一般に、封止部材の原料となる封止材料(組成物)の製造において、金属酸化物粒子は、表面修飾材料により修飾され、シリコーン樹脂等の樹脂に分散される。しかしながら、メチル系シリコーン樹脂は、従来一般的に使用されていたフェニルシリコーン樹脂等と比較して、メチル基の含有量が大きく、疎水性の度合いが大きい。そのため、上述したように表面修飾材料により金属酸化物粒子を修飾した場合であっても、金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂中に均一に分散することが困難であった。
【0017】
そこで、本発明者らは、問題を解決すべく鋭意検討した結果、単純に表面修飾材料の使用量を増加させても、金属酸化物粒子のメチル系シリコーン樹脂への分散性は大きくは向上しないことを知見した。
【0018】
この結果を受け、本発明者らはさらに検討を行い、金属酸化物粒子の表面における表面修飾材料の修飾状態について着目した。すなわち、仮に多量の表面修飾材料を使用して金属酸化物粒子を修飾した場合であっても、金属酸化物粒子の表面に少量しか表面修飾材料が付着していない場合、金属酸化物粒子の表面は十分には疎水化されない。一方で、たとえ少量の表面修飾材料を使用して金属酸化物粒子を修飾した場合であっても、表面修飾材料の金属酸化物粒子の表面への付着割合が高く、金属酸化物粒子の表面に多量に表面修飾材料が付着している場合は、金属酸化物粒子の表面は十分に疎水化される。
【0019】
そして、本発明者らは、表面修飾材料としてシラン化合物およびシリコーン化合物を用いている場合において、上記したような金属酸化物粒子への表面修飾材料の付着の度合いが、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT-IR)により測定・観察できること、また、後述する方法によりシラン化合物およびシリコーン化合物を金属酸化物粒子の表面に十分に付着させることができること、を見出し、本発明に至った。
【0020】
<2. 分散液>
次に、本実施形態に係る分散液について説明する。本実施形態に係る分散液は、シラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された、金属酸化物粒子を含む。
【0021】
本実施形態においては、前記分散液を、真空乾燥により乾燥して得られる金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm-1以上3800cm-1の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、さらに、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化した際に、以下の式(1)を満足する。
IA/IB≦3.5(1)
(式中、「IA」は、3500cm-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100cm-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す)
【0022】
以上の条件を満足することにより、本実施形態に係る分散液を、メチル系シリコーン樹脂と混合し、金属酸化物粒子をメチル系シリコーン樹脂に分散させた際に、金属酸化物粒子の凝集が抑制される。
この結果、混合物として得られる組成物(樹脂組成物)は、濁りが抑制され、比較的透明になる。
【0023】
詳しく説明すると、フーリエ変換式赤外分光光度計により測定される透過スペクトルのうち、波数1100cm-1の位置は、シロキサン結合(Si-O-Si結合)に帰属し、波数3500cm-1の位置は、シラノール基(Si-OH基)に帰属する。シラン化合物およびシリコーン化合物は、それぞれ、Si-O-Si結合を形成可能なSi-OH基や、Si-OH基を形成可能な基を有する。したがって、3500cm-1におけるスペクトル値(IA)と、1100cm-1におけるスペクトル値(IB)とを比較することにより、シラン化合物およびシリコーン化合物のSi-OHや、Si-OH基を形成可能な基の反応度合いを観察することが可能となる。
【0024】
そして、本発明者らは、IA/IBが3.5以下である場合、シラン化合物およびシリコーン化合物が金属酸化物粒子の表面に十分に付着していることを見出した。これにより、金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂と混合した際においても、凝集することなく、メチル系シリコーン樹脂中に分散することが可能となる。この結果、混合物として得られる組成物は、濁りが抑制され、比較的透明になる。さらには、金属酸化物粒子が含有されていることから、当該組成物を用いて発光素子を封止する封止部材を得た場合、当該封止部材の屈折率は、メチル系シリコーン樹脂単独のものと比較して、向上している。以上により、本実施形態に係る分散液を用いて組成物を得、当該組成物を用いて発光素子を封止した場合、封止部材の高い屈折率および光透過率に起因して、発光装置の明るさが向上する。
【0025】
これに対し、IA/IBが3.5を超える場合、シラン化合物およびシリコーン化合物が金属酸化物粒子の表面に十分には付着しておらず、その結果、金属酸化物粒子のメチル系シリコーン樹脂中の分散性を、優れたものとすることができない。この結果、分散液とメチル系シリコーン樹脂とを混合した際に、金属酸化物粒子の凝集が生じ、得られる組成物に濁りが生じてしまう。IA/IBは、上述したように3.5以下であればよいが、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。2.4以下や、2.3以下であってもよい。
【0026】
また、IA/IBの下限は、IA=0が好ましいため、0である。しかし、シラノール基(Si-OH基)が少量残存していてもメチル系シリコーン樹脂に混合することはできる。このため、IA/IBの下限は、下限値は0であってもよく、0.1であってもよく、0.5であってもよく、1.0であってもよく、1.5であってもよい。下限値は、1.7や、1.9や、2.0であってもよい。
【0027】
なお、金属酸化物粒子のフーリエ変換式赤外分光光度計(FT-IR)による透過スペクトルの測定は、具体的な例を挙げれば、以下のようにして行うことができる。
得られた分散液を、真空乾燥で乾燥する。次いで、乾燥により得られた金属酸化物粒子0.01~0.05gを用いることにより、フーリエ変換式赤外分光光度計(例えば日本分光株式会社製、型番:FT/IR-670 Plus)で測定する。このようにして測定をすることができる。
【0028】
また、上述したような金属酸化物粒子について上記のようなIA/IBの値を達成したという知見は、現在に至るまでない。本発明者らは、後述する方法により、初めてこのような値を達成できることを見出している。
以下、分散液に含まれる各成分について説明する。
【0029】
(2.1 金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子は、後述する封止部材中において、発光素子から放出される光を散乱させる。また、金属酸化物粒子は、その種類によっては、封止部材の屈折率を向上させる。これらにより、金属酸化物粒子は、発光装置において光の明るさの向上に寄与する。
【0030】
本実施形態に係る分散液中に含まれる金属酸化物粒子としては、特に限定されない。本実施形態において、金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化銅粒子、酸化スズ粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化鉛粒子、酸化ビスマス粒子、および酸化ハフニウム粒子ならびにチタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ安定化ジルコニア粒子、カルシア安定化ジルコニア粒子、マグネシア安定化ジルコニア粒子、スカンジア安定化ジルコニア粒子、ハフニア安定化ジルコニア粒子、イッテルビア安定化ジルコニア粒子、セリア安定化ジルコニア粒子、インジア安定化ジルコニア粒子、ストロンチウム安定化ジルコニア粒子、酸化サマリウム安定化ジルコニア粒子、酸化ガドリニウム安定化ジルコニア粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子、およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上が、好適に用いられる。
【0031】
上述した中でも、透明性や封止樹脂(樹脂成分)との相溶性(親和性)を向上させる観点から、分散液は、酸化ジルコニウム粒子および酸化チタン粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、金属酸化物粒子は、封止部材の屈折率を向上させる観点から、屈折率が1.7以上であることが好ましい。
【0032】
金属酸化物粒子は、より好ましくは酸化ジルコニウム粒子および/または酸化チタン粒子であり、特に好ましくは、酸化ジルコニウム粒子である。
【0033】
なお、金属酸化物粒子は、分散液において一次粒子として分散していてもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子として分散していてもよい。通常、金属酸化物粒子は、二次粒子として分散している。
【0034】
分散液における金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、特に限定されないが、例えば10nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上250nm以下であり、より好ましくは30nm以上200nm以下である。必要に応じて、30nm以上80nm以下や、30nm以上100nm以下や、80nm以上180nm以下などであってもよい。金属酸化物粒子の平均分散粒子径が10nm以上であることにより、この分散液を用いて製造される後述する発光装置の光の明るさが向上する。また、金属酸化物粒子の平均分散粒子径が300nm以下であることにより、分散液やこれを用いて製造される、後述する組成物、及び封止部材の光の透過率の低下を抑制することができる。その結果、発光装置の光の明るさが向上する。
【0035】
なお、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、動的光散乱法により得られる散乱強度分布の累積百分率が50%のときの金属酸化物粒子の粒子径D50であることがでる。この値は、動的光散乱式の粒度分布計(例えば、HORIBA社製、型番:SZ-100SP)により測定することができる。測定は、固形分を5質量%に調整した分散液を対象として、光路長10mm×10mmの石英セルを用いて行うことができる。なお本明細書において「固形分」とは、分散液において揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液、例えば1.2gの分散液、を磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、100℃で1時間加熱した時に、揮発せずに残留する成分(金属酸化物粒子や表面修飾材料等)を、固形分とすることができる。
【0036】
なお、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて、測定、算出される。また、本実施形態において、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子の平均分散粒子径として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない金属酸化物粒子とが存在し得る。このため、通常、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0037】
使用する金属酸化物粒子の平均一次粒子径は任意に選択できるが、例えば3nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上170nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。無機粒子の平均一次粒子径は、必要に応じて、5~20nmであってもよく、5~25nmであってもよく、50~120nmや、50~150nmであってもよい。平均一次粒子径が上記範囲であることにより、封止部材の透明性の低下を抑制することができる。この結果、発光装置の光の明るさをより一層向上させることができる。
【0038】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。まず、透過型電子顕微鏡により、分散液から金属酸化物粒子を採取したコロジオン膜を観察し、透過型電子顕微鏡画像を得る。次いで、透過型電子顕微鏡画像中の金属酸化物粒子を所定数、例えば100個を選び出す。そして、これらの金属酸化物粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して求める。
【0039】
ここで金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している金属酸化物粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0040】
また、分散液中の金属酸化物粒子の含有量は、後述する樹脂成分と混合できれば特に限定されない。分散液中の金属酸化物粒子の含有量は任意に選択できるが、例えば1質量%以上70質量%以下、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは7質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。必要に応じて、20質量%以上40質量%以下や、25質量%以上35質量%以下であってもよい。
【0041】
これのような量により、分散液の粘度が過剰に大きくなることを抑制できる。このため、後述する樹脂成分との混合が容易になる。また、樹脂成分と混合後に溶媒(分散媒)量が過剰となることを抑制でき、溶媒の除去が容易となる。本実施形態の分散液中の金属酸化物粒子は、最初にシラン化合物によって表面修飾され、次に、シリコーン化合物によって表面修飾された、金属酸化物粒子であってよい。
【0042】
以上説明した金属酸化物粒子の表面には、以下に説明する表面修飾材料が付着している。この付着により、分散液および当該分散液を用いて製造される分散液中において、安定して金属酸化物粒子が分散する。
【0043】
(2.2 表面修飾材料)
本実施形態に係る分散液は、表面修飾材料を含む。この表面修飾材料は、分散液内において、少なくともその一部が金属酸化物粒子の表面に付着して当該表面を修飾することにより、金属酸化物粒子の凝集を防止する。さらに、前記付着によって、樹脂成分との相溶性を向上させる。
【0044】
ここで、表面修飾材料が金属酸化物粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が金属酸化物粒子に対し、これらの間の相互作用や反応により接触または結合することをいう。接触としては、例えば物理吸着が挙げられる。また、結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る分散液は、表面修飾材料として、少なくともシラン化合物およびシリコーン化合物を含む。すなわち、本実施形態において、金属酸化物粒子は、少なくともシラン化合物およびシリコーン化合物により、表面修飾されている。
【0046】
シラン化合物は、金属酸化物粒子の表面付近に付着しやすい。一方で、シリコーン化合物は、比較的大きな分子量を有しており、主に、分散媒や後述する樹脂成分との親和性の向上に寄与する。このようなシラン化合物とシリコーン化合物とを併用することにより、金属酸化物粒子のメチル系シリコーン樹脂中における分散安定性が向上する。
【0047】
一方、分散液がシラン化合物およびシリコーン化合物のうちいずれか一方を含まない場合、上述したような優れた効果は得られない。例えば、分散液がシラン化合物を含まない場合、シリコーン化合物が金属酸化物粒子の表面に付着しにくく、メチル系シリコーン樹脂中での金属酸化物粒子の分散性が劣るものとなる。一方で、分散液がシリコーン化合物を含まない場合、金属酸化物粒子とメチル系シリコーン樹脂との親和性が十分に大きくならず、メチル系シリコーン樹脂中での金属酸化物粒子の分散性が劣るものとなる。
【0048】
(シラン化合物)
シラン化合物としては任意に選択でき、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびエチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のアルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルケニル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、ジフェニルモノエトキシシラン等のH-Si基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、フェニルトリメトキシシラン等のその他アルコキシ基を含むシラン化合物、ならびにジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン等のH-Si基を含むシラン化合物等が挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アルコキシ基、特にメトキシ基を有するシラン化合物は、金属酸化物粒子に付着しやすいため好ましい。
【0049】
上述した中でも、表面修飾材料は、粘度が低く、後述する分散工程における無機粒子の分散が容易となる観点から、好ましくは、アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物を含む。
このようなアルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は、好ましくは1以上3以下であればよく、アルコキシ基の数は3であることがより好ましい。なお必要に応じて、アルコキシ基の数は1や2であってもよい。アルコキシ基の炭素数は任意に選択できるが、1以上5以下であることが好ましい。前記炭素数は、1以上3以下や、2以上4以下であっても良い。
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルキル基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。なお必要に応じて、アルキル基の数は2や3であってもよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらに好ましくは1以上2以下である。
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基とアルキル基の総数は2以上4以下であることが好ましく、4であることが好ましい。
このような表面修飾材料としてのシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびエチルトリプロポキシシランが例として挙げられ、これらの化合物からなる群から選択される1種または2種以上を好ましく含むことができる。
【0050】
分散液中におけるシラン化合物の含有量は任意に選択でき、特に限定されないが、金属酸化物粒子の量100質量%に対し、例えば50質量%以上500質量%以下、好ましくは70質量%以上400質量%以下、より好ましくは90質量%以300質量%以下である。必要に応じて、80質量%以上350質量%以下、150質量%以上250質量%以下であってもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、シラン化合物を介して十分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。
【0051】
(シリコーン化合物)
シリコーン化合物としては任意に選択でき、例えば、アルコキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンおよびアルコキシ基含有フェニルシリコーン等が挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シリコーン化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。表面修飾が容易であることより、モノマーかオリゴマーを用いることが好ましい。
【0052】
上述した中でも、反応のしやすさと疎水性の高さの観点から、シリコーン化合物は、好ましくはアルコキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンおよびアルコキシ基含有フェニルシリコーンが挙げられる。これら化合物からなる群から選択される1種以上を好ましく使用できる。より好ましくは、シリコーン化合物は、メトキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メトキシ基含有ジメチルシリコーンからなる群から選択される1種以上を含む。
【0053】
分散液中におけるシリコーン化合物の含有量は任意に選択でき、特に限定されない。例えば、金属酸化物粒子の量100質量%に対し、例えば50質量%以上、500質量%以下、好ましくは80質量%以上400質量%以下、より好ましくは100質量%以上300質量%以下である。必要に応じて、50質量%以上200質量%以下、50質量%以上150質量%以下であってもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、十分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、メチル系シリコーン樹脂中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0054】
(その他の化合物)
また、分散液は、表面修飾材料としてシラン化合物およびシリコーン化合物以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸、具体的には、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0055】
(シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量)
金属酸化物粒子に対する表面修飾材料の量、すなわち、シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量は、特に限定されず任意に選択できる。金属酸化物粒子の量に対して、例えば100質量%以上1000質量%以下であり、好ましくは150質量%以上800質量%以下であり、より好ましくは、190質量%以上600質量%以下である。200質量%以上900質量%以下や、250質量%以上850質量%以下であってもよい。表面修飾材料の量が上述した範囲内であると、遊離する表面修飾材料の量を低減しつつ、金属酸化物粒子の分散性を十分に向上させることができる。
【0056】
(2.3 分散媒)
本実施形態に係る分散液は、金属酸化物粒子を分散する分散媒を含むことができる。この分散媒は、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子を分散させることができ、後述する樹脂成分と混合することができるものであれば、特に限定されない。
このような分散媒としては、例えば、疎水性溶媒や、親水性溶媒等の各種有機溶剤が挙げられる。これらの溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
疎水性溶媒の例としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上述した中でも、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、後述するメチル系シリコーン樹脂との相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。
【0058】
このような芳香族炭化水素としては任意に選択でき、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-、m-またはp-キシレン、2-、3-または4-エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
上述した中でも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における分散媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点からは、分散媒は、トルエン、o-、m-またはp-キシレン、ベンゼンからなる群から選択される1種以上が特に好ましく用いられる。
【0060】
また、分散媒における疎水性溶媒の比率は任意に選択できるが、例えば10質量%以上90質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。これにより、分散液と後述する樹脂成分、特にメチル系シリコーン樹脂との混合がより容易となる。必要に応じて、60質量%以上90質量%以下や、65質量%以上85質量%以下や、70質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0061】
親水性溶媒は、例えば、後述する方法に起因して、分散液中に含まれ得る。このような親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて好ましく用いることができる。
【0062】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素数1~4の分岐または直鎖状アルコール化合物およびそのエーテル縮合物が挙げられる。これら溶媒を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級、第2級および第3級アルコールのいずれであってもよい。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価、二価および三価アルコールのいずれであってもよい。より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が、好ましく挙げられる。
【0063】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が、好ましく挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が、好ましく挙げられる。
【0064】
水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒を含む。この場合において、アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素数は、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1以上2以下である。
上述した中でも、メタノールおよびエタノール、特にメタノールは、上記のアルコール系溶媒の効果を十分に発現することができるために好適に用いることができる。
【0065】
また、分散媒における親水性溶媒の比率は、例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下である。下限は必要に応じて選択でき、0質量%以上であってよく、1質量%以上や、3質量%以上であってもよい。
【0066】
本実施形態の分散液中における分散媒の含有量は任意に選択できるが、好ましくは10質量%以上98質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下である。必要に応じて、60質量%以上90質量%以下や、65質量%以上85質量%以下や、70質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0067】
(2.4 その他の成分)
本実施形態に係る分散液は、上述した以外の成分を含んでもよい。例えば、本実施形態に係る分散液は、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態に係る分散液は、後述する方法に起因して含まれ得る成分、例えば、酸、水、アルコール等を含んでもよい。
【0068】
なお、本明細書において、本実施形態に係る分散液は、樹脂成分を含み、硬化により封止部材を形成可能な、本実施形態に係る組成物とは区別される。すなわち、本実施形態に係る分散液は、例え、組成物に関する説明で挙げられる、後述する樹脂成分を含む場合であっても、単純に硬化させた場合に、封止部材を形成可能な程度の量では後述する樹脂成分を含まない。より具体的には、本実施形態に係る分散液における、樹脂成分と金属酸化物粒子との質量比率は、樹脂成分:金属酸化物粒子で、0:100~40:60の範囲にあることが好ましく、0:100~30:70の範囲にあることが好ましく、0:100~20:80の範囲にあることがさらに好ましい。本実施形態に係る分散液は、特に好ましくは後述する樹脂成分を本質的に含まず、最も好ましくは後述する樹脂成分を完全に含まない。
【0069】
本実施形態に係る分散液は、金属酸化物粒子の表面がシラン化合物およびシリコーン化合物により十分に修飾されている。そして、このように修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂との親和性に優れ、メチル系シリコーン樹脂中において比較的均一に分散することができる。したがって、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた場合であっても、白濁等の濁りの発生が抑制される。さらに、金属酸化物粒子を含むメチル系シリコーン樹脂の粘度変化も抑制されている。
【0070】
<3. 分散液の製造方法>
次に、本実施形態に係る分散液の製造方法について説明する。
【0071】
本実施形態に係る分散液の製造方法は、シラン化合物と水とを混合し、前記シラン化合物が加水分解された加水分解液を得る第1の工程と、
前記加水分解液と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る第2の工程と、
前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、第1の分散液を得る第3の工程と、
前記第1の分散液中の前記金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理して、第2の分散液を得る第4の工程と、を有する。
前記混合液中における、前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である。
なお、前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子の合計の含有量は、固形分により評価することもできる。
また、前記シラン化合物と前記無機粒子との合計含有量には、後述するシラン化合物の加水分解で発生するアルコールは含まない。すなわち、前記シラン化合物と前記無機粒子との合計含有量とは、シラン化合物と、加水分解されたシラン化合物と、無機粒子との合計含有量を意味する。なお、上記合計含有量が上記シラン化合物に付着された無機粒子の含有量を含めた値であることは言うまでもない。
【0072】
(3.1 第1の工程)
本工程においては、少なくともシラン化合物と水とを混合し、シラン化合物が加水分解された加水分解液を得る。このように予めシラン化合物の少なくとも一部が加水分解した加水分解液を用いることにより、後述する分散工程(第3の工程)において金属酸化物粒子の表面にシラン化合物が付着しやすくなる。
【0073】
シラン化合物としては、上述したシラン化合物のうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、加水分解液中におけるシラン化合物の含有量は、特に限定されない。加水分解液中から他の成分を除いた残部とすることができるが、加水分解液中におけるシラン化合物の含有量は、例えば60質量%以上99質量%以下、好ましくは70質量%以上97質量%以下、より好ましくは80質量%以上95質量%以下である。必要に応じて、85質量%以上95質量%以下や、87質量%以上93質量%以下であってもよい。
【0074】
なお、本工程において、シラン化合物以外の表面修飾材料を、加水分解液に含有させてもよい。
【0075】
また、本工程において、加水分解液は水を含む。水は、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応の基質となる。
加水分解液中における水の含有量は、特に限定されず、任意に選択できる。例えば、水の含有量は、表面修飾材料の量に対応して適宜設定できる。例えば、加水分解液に添加される水の量は、シラン化合物などの前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mol以上3mol以下、さらに好ましくは、0.7mol以上2mol以下である。これにより、表面修飾材料の加水分解反応を十分に進行させつつ、過剰量の水により製造される分散液において金属酸化物粒子の凝集が生じることをより確実に防止することができる。加水分解液中における水の含有量は、例えば1質量%以上40質量%以下であってもよく、3質量%以上30質量%以下であってもよく、5質量%以上20質量%以下や、8質量%以上13質量%以下であってもよい。
【0076】
あるいは、加水分解液中における水の含有量は、例えば1質量%以上20質量%以下であってもよく、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0077】
また、加水分解液には、シラン化合物および水とともに触媒が添加されてもよい。加水分解液は、表面修飾材料と水と触媒のみを含んでも良い。触媒としては、例えば酸または塩基を用いることができる。
酸は、加水分解液中において、シラン化合物の加水分解反応を触媒する。一方塩基は、加水分解された表面修飾材料と金属酸化物粒子表面の官能基、例えば水酸基やシラノール基との、縮合反応を触媒する。これら反応により、後述する分散工程(第3の工程)において、シラン化合物を初めとしたシラン化合物が金属酸化物粒子に付着しやすくなり、金属酸化物粒子の分散安定性が向上する。
ここで、上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく酸をいい、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質をいう。また、上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく塩基をいい、ここでは、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質をいう。
【0078】
酸としては、シラン化合物の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されず、任意に選択できる。例えば、酸として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸や酢酸、クエン酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。これら酸は、1種を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0079】
塩基としては、シラン化合物の加水分解反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されず任意に選択できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
上述した中でも、触媒としては、酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましく、また、塩酸がより好ましい。
【0081】
加水分解液中における触媒の含有量は、特に限定されず任意に選択できる。例えば10ppm以上1000ppm以下であってよく、好ましくは20ppm以上800ppm以下、より好ましくは30ppm以上600ppm以下である。これによりシラン化合物の加水分解を十分に促進させつつ、シラン化合物の不本意な副反応を抑制することができる。なお必要に応じて、0.1ppm以上100ppm以下や、1ppm以上10ppm以下であってもよい。また例えば、塩酸(1N)を触媒として使用する時、塩酸の量は、加水分解液中100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であってもよく、0.001質量部以上3質量部以下であってもよく、0.005質量部以上1質量部以下であってもよく、0.005質量部以上0.1質量部以下であってもよい。
第1の工程は、シラン化合物と水と触媒のみを混合する工程であってもよい。
【0082】
また、加水分解液は、必要に応じて、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、加水分解液中において、水とシラン化合物の混和を促進させ、表面修飾材料の加水分解反応をより一層促進させることができる。
【0083】
このような親水性溶媒としては、例えば上述した分散液に含まれ得る各種親水性溶媒が挙げられる。
【0084】
上述した中でも、水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒からなる群から選択される1種以上、より好ましくはメタノール、エタノールからなる群から選択される1種以上を含む。親水性溶媒は、アルコール系溶媒のみからなってもよい。
【0085】
また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることができる。この範囲により、加水分解液中における表面修飾材料および水の含有量を十分に大きくすることができる。前記親水性溶媒の含有量は、40質量%以下や、20質量%以下や、10質量%以下や、5質量%以下であってもよい。また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上であることができる。この範囲により、表面修飾材料と水との混和をより一層促進することができ、その結果表面修飾材料の加水分解反応を効率よく進行させることができる。なお、加水分解液中において、加水分解反応由来の化合物を除いて、親水性溶媒が含まれなくてもよい。すなわち、加水分解反応由来の化合物である親水性溶媒のみが含まれてもよい。
【0086】
本実施形態では、シラン化合物としてアルコキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、これが加水分解するため、アルコキシ基由来のアルコール化合物が混合液中に含まれることとなる。加水分解反応は、金属酸化物粒子の吸着水でも進行するため、第1の工程~第4の工程のいずれでも起こりうる。そのため、この場合、アルコール化合物を除去する工程がない限りは、得られる分散液にはアルコール化合物が含まれる。
【0087】
本工程においては、加水分解液を調製後、任意に選択される一定の温度で、所定の時間保持してもよい。これにより、シラン化合物の加水分解をより一層促進させることができる。
この処理において、加水分解液の温度は、特に限定されず任意に選択でき、シラン化合物の種類によって適宜変更できる。例えば5℃以上65℃以下、より好ましくは20℃以上65℃以下、さらに好ましくは30℃以上60℃以下である。必要に応じて、40℃以上75℃以下や、50℃以上70℃以下であっても良い。
【0088】
また、上記温度での保持時間は、特に限定されないが、例えば10分以上180分以下、好ましくは30分以上120分以下である。必要に応じて、15分以上60分以下や、20分以上40分以下であっても良い。
なお、上記の加水分解液の保持において、加水分解液を適宜撹拌してもよい。
【0089】
(3.2 第2の工程)
本工程においては、加水分解液と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る。混合液は、好ましくは、前記加水分解液と前記金属酸化物粒子のみからなる。第2の工程は、前記第1の工程で得られた加水分解液と金属酸化物粒子のみを混合する工程であってよい。
【0090】
なおこの工程では混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であるようにして、混合が行われる。なお混合工程における上記含有量が満足されるように、予め、各材料の量や割合を調整しておいてもよい。
【0091】
このように、本実施形態においては、混合液中のシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が、65質量%以上98質量%以下と、非常に大きい。そして、従来必須であると見做されてきた有機溶媒や、水等の分散媒は、混合液中に含まれない、あるいは従来と比較して非常に少量のみが混合される。あるいは、加水分解により、不可避的なアルコール化合物が、少量含まれる程度である。このような場合であっても、混合液中において分散工程(第3の工程)を経ることにより、金属酸化物粒子の均一な分散が可能であるとともに、シラン化合物の金属酸化物粒子への均一な付着(表面修飾)が達成されることを、本発明者らは見出した。
【0092】
詳しく説明すると、一般に金属酸化物粒子を液相中にて表面修飾材料により表面修飾する場合には、金属酸化物粒子と表面修飾材料のみならず分散媒も混合して混合液を得て、この混合液について分散機を用いて分散処理することが一般的である。なお、このような方法で表面修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂と混合した際に、十分に前記メチル系シリコーン樹脂中に分散できず凝集してしまい、結果、メチル系シリコーン樹脂に白濁等の濁りが生じる問題があった。このような場合、添加される金属酸化物粒子は、所期の性能が十分に発揮されない。
【0093】
分散媒は、通常、混合液の粘度を低くし、金属酸化物粒子を均一に分散させ、表面修飾材料に無機粒子の表面を均一に修飾させることを目的として添加される。従来では、分散媒を用いない場合は、分散液の粘度が上昇する結果、表面修飾材料が金属酸化物粒子の表面に十分に付着しないと考えられていた。本発明者らは、驚くべきことに、このような従来必須であると見做されてきた分散媒を使用しないあるいは少量のみ使用し、金属酸化物粒子を高濃度のシラン化合物中に直接分散させることにより、得られる分散液中において、金属酸化物粒子の均一な分散が達成されるとともに、金属酸化物粒子へのシラン化合物の均一な修飾が可能であることを見出した。
【0094】
シラン化合物は、低分子であり、粘度が比較的小さい。さらに、上述した第1の工程において加水分解されていることにより、金属酸化物粒子への付着性が良好である。このため、シラン化合物は、高濃度の表面修飾材料中での金属酸化物粒子の分散に極めて好適である。
【0095】
シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%未満である場合、上記2成分以外の成分、例えば分散媒が多くなりすぎ、その為、後述する分散工程(第3の工程)においてシラン化合物を十分には金属酸化物粒子の表面に付着させることができない傾向が強い。その結果、金属酸化物粒子表面に水酸基が多く残存してしまい、その後分散によって得られる分散液を、疎水性の材料と混合した際に、金属酸化物粒子が凝集してしまい、疎水性の材料に濁りが生じてしまう。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、65質量%以上であればよいが、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。必要に応じて、80質量%以上や、85質量%以上や、90質量%以上や、92質量%以上であってもよい。
【0096】
これに対し、シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が98質量%を超えると、混合液の粘度が高くなりすぎて、後述する分散工程(第3の工程)において、シラン化合物を十分には金属酸化物粒子の表面に付着させることができない傾向が強い。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、98質量%以下であればよいが、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。必要に応じて、90質量%以下や、85質量%以下や、80質量%以下や、75質量%以下であってもよい。
【0097】
また、上述したように、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下である。このような範囲により、金属酸化物粒子に対するシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にシラン化合物を付着させることができるとともに、混合液の粘度の上昇を抑制することができる。なお、混合液におけるシラン化合物は、16質量%以上88質量%以下であってもよい。
【0098】
一方、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%未満である場合、金属酸化物粒子に対してシラン化合物の量が過剰となり、得られる分散液において過剰のシラン化合物が金属酸化物粒子の凝集を誘発する傾向が強い。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは23質量%以上、さらに好ましくは26質量%以上、特により好ましくは30質量%以上である。
【0099】
また、金属酸化物粒子の含有量が49質量%を超えると、金属酸化物粒子に対してシラン化合物の量が不足し、金属酸化物粒子に十分な量のシラン化合物が付着しない。また、金属酸化物粒子の含有量が多くなりすぎる結果、混合液の粘度が大きくなりすぎ、後述する分散工程(第3の工程)において、金属酸化物粒子を十分に分散できない傾向が強い。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは38質量%以下であり、特に好ましくは36質量%以下である。34質量%以下であっても良い。
【0100】
混合液中における金属酸化物粒子の含有量に対するシラン化合物の含有量の比率は、特に限定されないが、金属酸化物粒子の量に対して、例えば100質量%以上800質量%以下、好ましくは140質量%以上600質量%以下、より好ましくは180質量%以上400質量%以下であり、特に好ましくは200質量%以上270質量%以下である。これにより、金属酸化物粒子に対するシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にシラン化合物を付着させることができる。
【0101】
また、本工程において、混合液にさらに有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒を混合することにより、表面修飾材料の反応性を制御することが可能となり、金属酸化物粒子表面への表面修飾材料の付着の程度を制御することが可能となる。さらに、有機溶媒により、混合液の粘度の調節が可能となる。
【0102】
このような有機溶媒としては上述した本実施形態に係る分散液の分散媒として挙げた有機溶媒が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
混合液中における有機溶媒の含有量は、上述した金属酸化物粒子およびシラン化合物の含有量を満足するものであれば特に限定されない。なお、混合液中に有機溶媒が含まれなくてもよいことはいうまでもない。
混合工程における混合時間や混合温度は任意に選択できるが、例えば室温で混合を行っても良く、材料を一緒にした後は、0~600秒ほど攪拌を行ってもよい。
【0104】
(3.3 第3の工程)
次に、混合液中において金属酸化物粒子を分散して、金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る。本実施形態において、金属酸化物粒子は、加水分解された高濃度のシラン化合物中において分散される。したがって、得られる第1の分散液においては、金属酸化物粒子の表面には比較的均一にシラン化合物が付着しており、かつ、金属酸化物粒子が比較的均一に分散する。
【0105】
金属酸化物粒子の分散は公知の分散方法、例えば、公知の分散機を用いることにより行うことができる。分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。第3の工程は、好ましくは、混合工程で得られた混合物のみを分散処理する工程である。
【0106】
ここで、本工程においては、分散液中における金属酸化物粒子の粒子径(分散粒子径)がほぼ均一となる様に、過剰なエネルギーは付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して分散させることが好ましい。
分散時間は、条件に応じて任意に選択できるが、例えば6~18時間であってもよく、好ましくは8~12時間であり、より好ましくは10~11時間である。ただしこれらのみに限定されない。
分散温度は任意に選択できるが、例えば10~50℃であってもよく、好ましくは20~40℃であり、より好ましくは30~40℃である。ただしこれらのみに限定されない。
なお分散工程が、混合工程と異なる点として、分散が一定時間にわたって連続して行われることを意味してよい。
【0107】
(3.4 第4の工程)
次に、金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理して、第2の分散液を得る。上述したように、第3の工程においては、シラン化合物が金属酸化物粒子の表面に比較的均一に付着している分散液が得られる。したがって、シリコーン化合物は、シラン化合物を介して金属酸化物粒子の表面に比較的均一に付着することができる。
【0108】
本工程においては、まず、第1の分散液とシリコーン化合物とを混合し、処理液を得る。次いで、処理液を、一定の温度で、所定の時間保持してもよい。必要に応じて攪拌を行ってもよい。これら処理により、シリコーン化合物の金属酸化物粒子への付着をより一層促進させることができる。
【0109】
シリコーン化合物としては、上述したシリコーン化合物が挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
シリコーン化合物は、第2の分散液中におけるシリコーン化合物の含有量が金属酸化物粒子に対し、例えば、50質量%以上300質量%以下、好ましくは70質量%以上130質量%以下となるように、第1の分散液に加え、混合することができる。必要に応じて60質量%以上100質量%以下や、65質量%以上85質量%以下であってもよい。このような処理により、金属酸化物粒子の表面に、十分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、メチル系シリコーン樹脂中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0111】
この処理において、保持温度は、特に限定されず、シリコーン化合物の種類によって適宜変更できる。例えば40℃以上130℃以下、好ましくは50℃以上120℃以下である。
【0112】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば1時間以上24時間以下、好ましくは2時間以上20時間以下である。
なお、上記の保持において、第2の分散液を適宜撹拌してもよい。
【0113】
また、本工程においては、複数回シリコーン化合物による処理を行ってもよい。例えば、異なる種類のシリコーン化合物を用い、複数回シリコーン化合物による処理を行うことにより、メチル系シリコーン樹脂の種類に合わせた金属酸化物粒子の表面状態の制御がより容易となる。
なお第4の工程では、第2の分散液は、必要に応じて分散媒、例えば上述したトルエンなどの芳香族炭化水素、を含んでよい。第2の分散液において、分散媒の量は任意に選択でき、例えば、20質量%以上80質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0114】
以上により、金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理し、第2の分散液を得ることができる。この第2の分散液を、本実施形態に係る分散液として得てもよい。必要に応じて、以下の第5の工程等の後処理を行って、本実施形態に係る分散液として得てもよい。
【0115】
(3.5 第5の工程)
本工程においては、第4の工程で得られた第2の分散液と、疎水性溶媒とを混合して、第3の分散液を得る。疎水性溶媒としては、上述した本実施形態に係る分散液に使用する疎水性溶媒を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、疎水性溶媒の混合量は特に限定されず任意に選択でき、得られる本実施形態に係る分散液に含まれる疎水性溶媒の含有量に合わせて適宜設定できる。
以上により、上述したような本実施形態に係る分散液を、第3の分散液として得ることができる。
第3の分散液は、疎水性溶媒として、上述した分散媒、例えば上述したトルエンなどの芳香族炭化水素、を使用してよい。第3の分散液において、疎水性溶媒の量は任意に選択でき、例えば、20質量%以上80質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0116】
本実施形態に係る方法を用いて製造された分散液は、金属酸化物粒子が均一に分散するとともに、金属酸化物粒子の表面がシラン化合物およびシリコーン化合物により、均一かつ十分に修飾されている。そして、このように修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂との親和性に優れ、メチル系シリコーン樹脂中において、比較的均一に分散することができる。したがって、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた場合であっても、白濁等の濁りの発生が抑制される。さらに、金属酸化物粒子を含むメチル系シリコーン樹脂の粘度変化も抑制されている。
【0117】
なお、本実施形態に係る分散液には、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等が混合されてもよい。これらは、必要に応じて、任意の工程において添加されえる。
【0118】
上述のように、本実施形態の分散液は、シラン化合物に金属酸化物粒子を直接分散させる工程を用いることによって、金属酸化物粒子を疎水性材料と混合することができるようになった。本実施形態の分散液では、従来の分散液より、シラン化合物が金属酸化物粒子に多く付着し、かつ、緻密な被覆がなされている、と推測される。しかしながら、前記分散液において金属酸化物粒子の表面が正確にどのような状態になっているのか、またその表面の状態によって、どのようにして分散液が疎水性材料とよりよく混合することができるようになったのかは、詳細には不明である。本実施形態の分散液の特徴を、シラン化合物およびシリコーン化合物によって修飾された金属酸化物粒子の表面の状態により、直接特定することは、難しい。
本発明の分散液は、金属酸化物粒子と、少なくとも一部が金属酸化物粒子に付着した1種以上のシラン化合物および1種以上のシリコーン化合物と、必要に応じて疎水性溶媒とを含む。金属酸化物粒子を疎水性材料と混合できることは、多数の要因の複雑な絡み合いによって、発現していると推察される。これらのことを鑑みると、金属酸化物粒子を疎水性材料と混合することができるようにするための金属酸化物粒子の表面の状態を、文言により一概に説明することは、難しい。本発明者は、後述するように、金属酸化物粒子の好ましい状態を、スペクトルによって特定する方法も見出した。
【0119】
<4. 組成物>
次に、本実施形態に係る組成物について説明する。本実施形態に係る組成物は、上述した分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる組成物である。したがって、本実施形態に係る組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子に加え、樹脂成分、すなわち樹脂および/またはその前駆体を含む。
【0120】
本実施形態に係る組成物は、後述するように硬化させて発光素子の封止部材として用いることができる。本実施形態に係る組成物は、上述した屈折率と透明性の向上に寄与する金属酸化物粒子を含むことにより、封止部材に用いた際に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0121】
さらには、本実施形態に係る組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子を含む。そのため、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂が含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態に係る組成物を封止部材に用いた際に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0122】
本実施形態の組成物における、金属酸化物粒子の含有量は任意に選択できる。透明性の高い組成物を得る観点においては、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。必要に応じて、1質量%以上20質量%以下や、3質量%以上15質量%以下であってもよい。
【0123】
また組成物における、シラン化合物、シリコーン化合物等の表面修飾材料の含有量は、本実施形態に係る分散液における含有量に対応することができる。
【0124】
樹脂成分は、本実施形態に係る組成物における主成分である。樹脂成分は、本実施形態に係る組成物を封止材料として用いた際において、硬化して発光素子を封止する。その結果、発光素子に水分、酸素等の外部環境からの劣化因子が到達することを防止する。また、本実施形態において、樹脂成分より得られる硬化物は、基本的に透明であり、発光素子から放出される光を透過させることができる。
【0125】
このような樹脂成分としては、封止材料として用いることができれば特に限定されない。例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂等の樹脂を1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。特に、耐久性の観点から、シリコーン樹脂、特にメチル系シリコーン樹脂が好ましい。
【0126】
メチル系シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0127】
樹脂成分中に占めるメチル系シリコーン樹脂の割合は、所望の特性により調整すればよく、特に限定されない。例えば100質量%であってもよいし、20質量%以上80質量%以下であってもよく、30質量%以上70質量%以下であってもよく、40質量%以上60質量%以下であってもよい。従来、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子を含有させると、金属酸化物粒子が凝集し、透明性が低下するとともに、屈折率が十分に向上しなかった。これに対し、本実施形態に係る組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子を含む。このため、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂がこのように多量に含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、透明性の低下が抑制される。また、メチル系シリコーン樹脂を採用することが可能となることから、組成物を用いて形成される封止部材の耐久性が向上する。
【0128】
樹脂成分の構造としては、二次元の鎖状の構造であってもよく、三次元網状構造であってもよく、かご型構造であってもよい。
樹脂成分は、封止部材として用いた際に硬化したポリマー状となっていればよい。組成物中において、樹脂成分は、硬化前の状態、すなわち前駆体であってもよい。したがって、組成物中に存在する樹脂成分は、例えば、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0129】
樹脂成分は、付加反応型のものを用いてもよく、縮合反応型のものを用いてもよく、ラジカル重合反応型のものを用いてもよい。
JIS Z 8803:2011に準拠して測定される25℃における樹脂成分の粘度は、例えば、10mPa・s以上100,000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以上10,000mPa・s以下、より好ましくは1,000mPa・s以上7,000mPa・s以下である。
【0130】
また、本実施形態に係る組成物中における樹脂成分の含有量は、他の成分の残部とすることができるが、例えば、10質量%以上70質量%以下である。
本実施形態に係る組成物中における樹脂成分と金属酸化物粒子との質量比率は任意に選択でき、例えば、樹脂成分:金属酸化物粒子で、50:50~90:10の範囲にあることが好ましく、60:40~80:20の範囲にあることがより好ましい。
【0131】
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液由来の分散媒を含んでいてもよく、除去されていてもよい。すなわち、分散液由来の分散媒を完全に除去してもよい。分散媒は、組成物中に1質量%以上10質量%以下程度残存していてもよく、2質量%以上5質量%以下程度残存していてもよい。
【0132】
また、本実施形態に係る組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、発光素子から放出される特定の波長の光を吸収し、所定の波長の光を放出する。すなわち、蛍光体粒子により光の波長の変換ひいては色調の調整が可能となる。
【0133】
蛍光体粒子は、後述するような発光装置に使用できるものであれば、特に限定されず任意に選択でき、発光装置の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。
本実施形態の組成物中における蛍光体粒子の含有量は、所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。
【0134】
また、本実施形態の組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、防腐剤、重合開始剤、重合禁止剤、硬化触媒、光拡散剤等の、一般的に用いられる添加剤が含有されていてもよい。光拡散剤としては、平均粒子径が1~30μmのシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0135】
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合することにより製造することができる。また、混合後、必要に応じて、分散液に含有されていた分散媒をエバポレータ等で除去してもよい。
【0136】
本実施形態に係る組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された金属酸化物粒子を含む。その結果、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂が含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態に係る組成物を用いて、発光装置の光の明るさを向上させる封止部材を形成することができる。
なお上記説明に用いたメチル系シリコーン樹脂としては、例えば、主骨格としてケイ素と酸素が交互に結びついたシロキサン結合を有し、Si原子に結合する官能基の多く、例えば60%以上、好ましくは80%以上、がメチル基であるものを、意味しても良い。ただしこの例のみに限定されない。
【0137】
<5. 封止部材>
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物である。本実施形態に係る封止部材は、通常、発光素子上に配置される封止部材またはその一部として用いられる。
本実施形態に係る封止部材の厚みや形状は、所望の用途や特性に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。
【0138】
本実施形態に係る封止部材は、上述したように本実施形態に係る組成物を硬化することにより製造することができる。組成物の硬化方法は、本実施形態に係る組成物中の樹脂成分の特性に応じて選択することができる。例えば、熱硬化や電子線硬化等が挙げられる。より具体的に述べると、本実施形態の組成物中の樹脂成分を付加反応や重合反応により硬化することにより、本実施形態の封止部材が得られる。
【0139】
封止部材中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、好ましくは10nm以上300nm以下、より好ましくは20nm以上250nm以下、さらに好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0140】
なお、封止部材中の金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材の透過型電子顕微鏡観察(TEM)により測定される、個数分布基準の平均粒子径(メジアン径)である。また、本実施形態における封止部材中の金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材中における金属酸化物粒子の分散粒子径に基づいて測定、及び算出される値である。平均分散粒子径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて測定、及び算出される。また、本実施形態において、封止部材中の金属酸化物粒子の平均粒子径は、後述する表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子の平均粒子径として測定されてもよい。封止部材中には、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない金属酸化物粒子とが存在し得る。このため、通常、封止部材中の金属酸化物粒子の平均粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0141】
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物であるので、屈折率と透明性とに優れている。そのため、本実施形態によれば、発光装置の光の明るさを向上させる取り出し効率に優れる封止部材を得ることができる。
【0142】
<6. 発光装置>
次に、本実施形態に係る発光装置について説明する。本実施形態に係る発光装置は、上述した封止部材と、当該封止部材に封止された発光素子とを備えている。
発光素子としては、例えば発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられる。特に、本実施形態に係る封止部材は、発光ダイオードの封止に適している。
【0143】
以下、発光素子が、チップ上の発光ダイオード、すなわちLEDチップであり、発光装置がLEDパッケージである例を挙げて、本実施形態に係る発光装置を説明する。
図1~4は、それぞれ、本発明の実施形態に係る発光装置の一例を示す模式図(断面図)である。なお、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0144】
図1に示す発光装置(LEDパッケージ)1Aは、凹部21を有する基板2と、基板2の凹部21の底面上に配置される発光素子(LEDチップ)3と、凹部21において発光素子3を覆うように封止する封止部材4Aとを備えている。
封止部材4Aは、上述した本実施形態に係る封止部材により構成されている。したがって、封止部材4A中においては、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されており、この結果、発光装置1Aにおける光の取出し効率が向上している。また、封止部材4A内においては、蛍光体粒子5が分散している。蛍光体粒子5は、発光素子3より出射される光の少なくとも一部の波長を変換する。
【0145】
図2に示す発光装置1Bは、封止部材4Bが2層となっている点で発光装置1Aと異なる。すなわち、封止部材4Bは、発光素子3を直接覆う第1の層41Bと、第1の層41Bを覆う第2の層43Bとを有している。第1の層41Bと第2の層43Bとは、共に本実施形態に係る封止部材である。第1の層41B内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方で、第2の層43Bは、蛍光体粒子5を含まない。発光装置1Bは、封止部材4Bを構成する第1の層41Bおよび第2の層43B内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0146】
図3に示す発光装置1Cも、封止部材4Cの構成が封止部材4Aのものと異なる点で、発光装置1Aと異なっている。封止部材4Cは、発光素子3を直接覆う第1の層41Cと、第1の層41Cを覆う第2の層43Cとを有している。第1の層41Cは、本実施形態に係る封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる他の樹脂等により構成されている。また、第1の層41C内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方で、第2の層43Cは、本実施形態に係る封止部材である。発光装置1Cは、封止部材4Cを構成する第2の層43C内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の取出し効率が向上している。
【0147】
図4に示す発光装置1Dにおいては、封止部材4Dは、発光素子3を直接覆う第1の層41Dと、第1の層41Dを覆う第2の層43Dと、第2の層43Dをさらに覆う第3の層45Dとを有している。第1の層41Dおよび第2の層43Dは、本実施形態に係る封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる他の樹脂等により構成されている。また、第2の層43D内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方で、第3の層45Dは、本実施形態に係る封止部材である。発光装置1Dは、封止部材4Dを構成する第3の層45D内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0148】
なお、本実施形態に係る発光装置は、図示の態様に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る発光装置は、封止部材中に蛍光体粒子を含まなくてもよい。また、本実施形態に係る封止部材は、封止部材中の任意の位置に存在することができる。
【0149】
以上、本実施形態に係る発光装置は、発光素子が本実施形態の封止部材により封止されているため、光の明るさが向上している。
【0150】
なお、本実施形態に係る発光装置は、上述したような本実施形態に係る組成物により発光素子が封止される。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る組成物を用いて発光素子を封止する工程を有する、発光装置の製造方法にも関する。同側面において、上記製造方法は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合して、上記組成物を得る工程を有していてもよい。
【0151】
なお、発光素子の封止は、例えば、ディスペンサー等により、本実施形態に係る組成物を発光素子上に付与し、その後当該組成物を硬化させることにより行うことができる。
【0152】
上述したような本実施形態に係る発光装置は、例えば、照明器具および表示装置に用いることができる。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る発光装置を備える照明器具、または表示装置にも関する。
照明器具としては、例えば、室内灯、室外灯等の一般照明装置、携帯電話やOA機器等の、電子機器のスイッチ部の照明等が挙げられる。
本実施形態に係る照明器具は、本実施形態に係る発光装置を備える。このため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、周囲環境をより明るくすることができる。
【0153】
表示装置の例としては、例えば携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、テレビ、およびこれらの周辺機器等が挙げられる。
本実施形態に係る表示装置は、本実施形態に係る発光装置を備える。このため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、例えばより鮮明かつ明度の高い表示を行うことができる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0155】
[実施例1]
(1. 分散液の作製)
(i)第1の工程
メチルトリメトキシシラン(信越工業化学社製、製品名KBM-13)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを用意した。これらを容器に添加して混合し、加水分解液を得た。次いでこの加水分解液を60℃で30分撹拌し、メチルトリメトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
【0156】
(ii)第2の工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)30質量部、前記加水分解液70質量部を混合して、混合液を得た。混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトエトキシシランの含有量は63.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、93.5質量%であった。
【0157】
(iii)第3の工程
この混合液をビーズミルで10時間、室温で分散処理した。この後、ビーズを除去し、第1の分散液を得た。
第1の分散液の固形分(100℃で1時間加熱した後の残留成分)を測定した結果、固形分の量は70質量%であった。
【0158】
(第1の分散液の粒度分布)
得られた第1の分散液の一部を採取し、固形分が5質量%になるようにメタノールで調整した第1の分散液のD10とD50とD90を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ-100SP)を用いて測定した。その結果、D10は15nmで、D50は65nmで、D90は108nmであった。なお、第1の分散液に含まれる粒子は、基本的にメチルトリエトキシシランが付着した酸化ジルコニウム粒子のみであると考えられる。このことから、測定されたD10、D50、D90は、メチルトリエトキシシランが付着した酸化ジルコニウム粒子のD10、D50およびD90であると考えられた。
【0159】
(iv)第4の工程
第1の分散液39.0質量部と、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製、KR217)8.6質量部と、トルエンを52.4質量部と、を混合して処理液を得た。この処理液を110℃で18時間混合及び攪拌し、第2の分散液を得た。
【0160】
(v)第5の工程
得られた第2の分散液の固形分を測定し、固形分が30質量%となるように、トルエンを添加し、簡単に混合した。その結果、実施例1に係る分散液(第3の分散液)を得た。
【0161】
(2. 分散液の評価)
(i)粒度分布
得られた実施例1に係る分散液の一部を採取し、さらにトルエンを加えて固形分を5質量%に調整した、分散液を用意した。この分散液について、D10とD50とD90を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ-100SP)を用いて測定した。その結果、D10は54nmで、D50は108nmで、D90は213nmであった。なお、分散液に含まれる粒子は、基本的に表面修飾材料(メチルトリエトキシシラン、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン)が付着した酸化ジルコニウム粒子のみであると考えられる。よって、測定されたD10、D50、D90は、表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子のD10、D50およびD90であると考えられた。
【0162】
(ii)FT-IR分析
得られた第3の分散液10gを真空乾燥で2時間乾燥した。次いで、得られた金属酸化物粒子0.01~0.05gを用いて、フーリエ変換式赤外分光光度計(日本分光株式会社製、型番:FT/IR-670 Plus)で、800cm-1以上3800cm-1の波数の範囲の透過スペクトルを測定した。この測定範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化し、これをもとに、3500cm-1の値(IA)と1100cm-1の値(IB)を求めた。この結果、IAは55.2、IBは24.9であり、IA/IBは、2.2であった。当該結果を表1に示す。
【0163】
(3. 組成物の作製)
実施例1に係る分散液5.0gと、メチルフェニルシリコーン(信越化学工業社製、KER-2500-B)3.5gと、を混合した。
次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、実施例1に係る組成物を得た。
得られた実施例1に係る組成物の外観を目視で観察した結果、透明であった。この結果、組成物中において、酸化ジルコニウム粒子は、凝集が抑制され、比較的均一に分散していることが確認できた。
【0164】
(組成物の安定性の評価)
得られた組成物の粘度を、レオメーター(レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、作製直後の粘度は、10Pa・sであった。
この組成物を室温(25℃)で保管し、1ヶ月後の粘度を測定した。その結果、組成物の粘度は50Pa・sであり、増粘はしたものの、実用に耐えられるレベルであった。このことからも、組成物中において酸化ジルコニウム粒子が長期にわたり安定して分散していることが確認できた。
【0165】
(4.LEDパッケージの作製と明るさの評価)
得られた組成物1質量部に、メチルフェニルシリコーン樹脂(信越化学工業社製「KER-2500-A/B」を14質量部加えて、組成物中に表面修飾酸化ジルコニウム粒子が2質量%となるように調整し、混合した。この組成物1質量部に蛍光体粒子(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAG)を0.38質量部混合した組成物(表面修飾酸化ジルコニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38)を、LEDリードフレーム内に300μmの厚みで充填した。その後、室温で3時間保持した。次いで、ゆっくりと組成物を加熱硬化させて封止部材を形成し、白色LEDパッケージを作製した。
【0166】
得られた白色LEDパッケージについて、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより明るさを測定した。この結果、この白色LEDパッケージの明るさは、73.2lmであった。
【0167】
[実施例2]
(1. 分散液の作製)
(i~v)第1から5の工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子に代えて、平均一次粒子径が90nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る分散液(第3の分散液)を得た。第2の工程において得られた混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は63.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、93.5質量%であった。
【0168】
第1の分散液の固形分(100℃で1時間加熱した後の残留成分)を測定した結果、70質量%であった。
(第1の分散液の粒度分布) 実施例1と同様にして、第1の分散液中の無機粒子のD10とD50とD90を測定した。その結果、D10は54nmで、D50は120nmで、D90は223nmであった。D90/D50は、1.86であった。
【0169】
(2. 分散液の評価)
(i)粒度分布
また、実施例2に係る分散液(第3の分散液)中の酸化ジルコニウム粒子の粒度分布を実施例1と同様に評価した結果、D10は95nmで、D50は184nmで、D90は284nmであった。
(ii)FT-IR分析
さらに、実施例2に係る分散液について実施例1と同様に、FT-IR分析を行ったところ、IAは51.6、IBは24.6であり、IA/IBは、2.1であった。
【0170】
(3. 組成物の作製)
得られた実施例2に係る第3の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、実施例2に係る組成物を得た。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0171】
(組成物の安定性の評価)
組成物の粘度を、レオメーター(レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、作製直後の粘度は、10Pa・sであった。
この組成物を室温(25℃)で保管し、1ヶ月後の粘度を測定した。その結果、組成物の粘度は40Pa・sであり、増粘はしたものの、実用に耐えられるレベルであった。
【0172】
[比較例1]
(1. 分散液の作製) 第2の工程において、加水分解液70質量部を用いて、酸化ジルコニウム粒子と混合する替わりに、前記加水分解液20質量部と、イソプロピルアルコール50質量部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、比較例1に係る分散液(固形分30質量%:第3の分散液)を得た。
なお、第1の分散液の固形分(100℃で1時間加熱した後の残留成分)を測定した結果、38質量%であった。
【0173】
(第1の分散液の粒度分布)
実施例1と同様にして、第1の分散液のD10とD50とD90を測定した。その結果、第1の分散液のD10は13nmで、D50は62nmで、D90は95nmであった。
(2. 分散液の評価)
(i)粒度分布
比較例1に係る分散液のD10は52nmで、D50は105nmで、D90は195nmであった。
(ii)FT-IR分析
さらに、比較例1に係る分散液について実施例1と同様に、FT-IR分析を行ったところ、IAは46.6、IBは10.8であり、IA/IBは、4.3であった。
【0174】
(3. 組成物の作製)
得られた比較例1に係る第3の分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去することで比較例1に係る組成物を得た。その結果、比較例1に係る組成物は白濁し、LEDを封止できる組成物を得ることができなかった。
以上の実施例1、2および比較例1における分散液の製造条件、分散液、組成物の評価についてまとめて表1に示す。
【0175】
【0176】
[参考例1]
表面修飾酸化ジルコニウム粒子を含まない白色LEDパッケージを作製し、明るさを測定した。すなわち、実施例1のLEDパッケージの作製において、表面修飾酸化ジルコニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38とする代わりに、樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38とした以外は実施例1と同様にして、参考例の白色LEDパッケージを作製した。
得られた白色パッケージについて、実施例1と同様に測定した結果、この白色LEDパッケージの明るさは、72.5lmであった。
【0177】
以上に示したように、高濃度のシラン化合物中で酸化ジルコニウム粒子を分散処理した実施例1、2においては、メチルフェニルシリコーンと分散液とを混合した場合であっても、酸化ジルコニウム粒子が好適に分散されており、濁りの発生や粘度の過度の上昇が観察されなかった。また実施例1と参考例1に示すように、白色LEDパッケージの明るさを向上できることが確認された。
一方で、比較例1においては、メチルフェニルシリコーンと分散液と混合すると、得られる組成物は、ゲル化した。このため、発光素子を封止するための組成物としては不適切であった。
【0178】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0179】
金属酸化物粒子を含み、メチル系シリコーン樹脂に分散させた際に金属酸化物粒子の分散が抑制されている分散液、これを含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、この封止部材を有する発光装置、この発光装置を備えた照明器具および表示装置、ならびに分散液の製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0180】
1A、1B、1C、1D 発光装置
2 基板
21 凹部
3 発光素子
4A、4B、4C、4D 封止部材
41B、41C、41D 第1の層
43B、43C、43D 第2の層
45D 第3の層
5 蛍光体粒子