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特許7439991凹部充填材キット、その硬化物及び凹部充填法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】凹部充填材キット、その硬化物及び凹部充填法
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/18 20060101AFI20240220BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240220BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240220BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240220BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240220BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C04B26/18 A
C04B22/06 Z
C04B22/14 D
C08F2/44 Z
C08F290/06
E21D11/04 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023515496
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2022018284
(87)【国際公開番号】W WO2022224988
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021073533
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 広平
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066363(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021560(WO,A1)
【文献】特開2019-26789(JP,A)
【文献】国際公開第2021/132139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D11/04-11/12
E04G23/02-23/03
C09K3/10
C08F290/06
C04B26/02-26/28
C04B41/00-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ラジカル重合性樹脂組成物と第2ラジカル重合性樹脂組成物とからなる凹部充填材キットであって、
前記第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)と、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)と、酸性化合物(C)と、第1ラジカル重合開始剤(D-1)とを含有し、
前記第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と、膨張材(J)と、骨材(K)とを含有し、
前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)が、ビニルエステル樹脂を含むことを特徴とする凹部充填材キット。
【請求項2】
前記骨材(K)の含有量は、前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、200質量部~900質量部である請求項1に記載の凹部充填材キット。
【請求項3】
前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)が、ビニルエステル樹脂を含む請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項4】
前記膨張材(J)が生石灰及びカルシウムサルフォアルミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項5】
前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)及び前記第2ラジカル重合開始剤(D-2)が、それぞれ独立して、ヒドロペルオキシドである請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項6】
前記第1ラジカル重合性樹脂組成物が、更に第1金属含有化合物(E-1)と第1チオール化合物(F-1)とを含有し、
前記第2ラジカル重合性樹脂組成物が、更に第2金属含有化合物(E-2)と第2チオール化合物(F-2)とを含有する請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項7】
前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、前記膨張材(J)が0.3質量部~30質量部である請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項8】
前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)が0.1質量部~10質量部であり、
前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、前記第2ラジカル重合開始剤(D-2)が0.1質量部~10質量部である請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項9】
前記第1ラジカル重合性樹脂組成物において、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、前記酸性化合物(C)が1~20質量部である請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項10】
前記酸性化合物(C)が不飽和一塩基酸である請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項11】
前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)が紫外光から可視光領域まで感光性を有する光ラジカル重合開始剤である請求項1又は2に記載の凹部充填材キット。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の凹部充填材キットの硬化物であって、
凹部の表面に、前記第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物である第1硬化物が形成され、前記第1硬化物の表面に前記第2ラジカル重合性樹脂組成物の第2硬化物が形成されていることを特徴とする凹部充填材の硬化物。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の凹部充填材キットを用いて、凹部を充填する凹部充填法であって、
凹部の表面に前記第1ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、下地層を形成する下地層形成工程と、
前記凹部の表面に形成された前記下地層の表面に、前記第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する充填工程と含むことを特徴とする凹部充填法。
【請求項14】
前記凹部がボルトボックスである請求項13に記載の凹部充填法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部充填材キット、その硬化物及び凹部充填法に関する。また、本発明は、地中埋設管路である地下鉄通路、下水管路、電線やガス管などの集合管路等の構築に際し、材料として用いられるセグメントの周縁に開口されたボルト連結用の凹部内、あるいは摩耗・損耗や破損した鉄筋構造物を含む凹部に充填する樹脂モルタルの充填工法に関する。
本願は、2021年4月23日に、日本に出願された特願2021-073533号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
地中埋設管路である地下鉄通路、下水管路、電線やガス管等の集合管路等を構築する場合、縦穴を所定深さまで掘削形成し、所定の横穴を形成するための装置を搬入し、この装置を稼働させて横穴を形成しながら、セグメントを順次連結して所定の径を有する管路を構築している。このセグメントは、管路径が大きいほど又掘削深度の深いもの、地盤が脆弱なほど高強度のものが用いられ、一般的にプレキャストコンクリート、鉄等から作製されているが、この内側周縁に連結用の凹部(ボルトボックス、箱抜き部)が形成され、この凹部が隣接するようにセグメントを配設し、ボルトナットやPC鋼材により接合されている。この凹部とボルトナットは管路の直径の大きさと管路の長さに比例して、莫大な数が存在している。
【0003】
この凹部を露出したままで管路を使用すると、環境中の色々な要素により、ボルトナット部が腐食してしまうので、この凹部にセメントモルタルやエポキシ樹脂モルタル、ポリウレタン樹脂等を充填してボルトナットの腐食を防止し、その結果、接合の強度低下を防止するモルタルの充填工法がなされていた。
しかし、建設当時に実施されたモルタル充填工法は、長年の使用による劣化が進み、建設当時に使用された様々な材料が欠損、あるいは全損(脱落等)している状態となっており、中身のボルトナットが腐食している様子も散見されるようになってきた。
【0004】
腐食したボルトナットをこのまま放置しておくと、連結された管路の接合が弱くなり、セグメント同士の隙間から、地下水などが浸入したり、あるいは管路内を流れる流体が流出したり、と問題が多発するようになる。また、モルタル充填工法で使用された材料が欠損もしくは全損しているボルトボックスは、管路内を流れる流体の抵抗を増大させることにもつながるため、早急な対策が求められている。
また、これらの凹部の補修と同一の問題として、都市部の地下に建設された鉄筋構造物を含む地下鉄道路や下水道管路、電線やガス管路等の集合管路の経年劣化がある。この経年劣化により、集合管路にはひび割れや破損が無数にあり、鉄筋がむき出しとなって、管路への地下水や河川水の染み出し、あるいは管路からの下水の流出など様々な問題を誘発する。そのため、早急な対策を求められる。しかし、鉄筋やコンクリート構造物との接着や、地下構造物特有の問題でもある工事可能時間が限られるなど、既存材料では工事がうまくいかないことの方が多かった。
【0005】
このモルタル充填工法に適用が考えられるものとして、特許文献1に示された急結剤を配合した急結モルタルを手詰め又は吹き付けする急結モルタル工法、特許文献2に示された比重を小さくした軽量モルタルを手詰めする軽量モルタル工法、特許文献3に示された2液硬化・発泡型のウレタン組成物を注入・充填する硬化発泡ウレタン工注などが知られており、また、特許文献4に示されたエポキシ樹脂モルタルを凹部の穴埋めに用いるケースや、特許文献5のようにエポキシ樹脂に水を混ぜ、エマルジョン化して使用するケースなども考えられる。
しかし、どの材料も鉄筋やボルト、およびコンクリート構造物との密着、さらに経時変化による材料の収縮等、全てを同時に解決できる材料ではなく、常に補修箇所が再劣化するなどの問題に悩まされている。
【0006】
一方、樹脂モルタルの充填工法において、ラジカル重合性樹脂組成物が良く使用されている。例えば、一般的な液状のビニルモノマーを用いて重合を行う際、かなり大きな収縮が発生する。この収縮により、凹部充填材にビニルモノマーを用いる場合、強度不足などの問題を発生させる。そのため、重合時に収縮率の小さい樹脂を創り出すことは、工業的に非常に有意義なことである。
【0007】
不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート)等に代表されるラジカル重合性の樹脂組成物も通常硬化時の収縮は発生する。非特許文献1の表1に示されたモノマーである「スチレン」や「メチルメタクリレート」をモノマーとして使用していることが多いため、一般的な配合における不飽和ポリエステル樹脂は8~12%、ビニルエステル樹脂は、8~10%ほどの体積収縮を伴う。
この数値は、一般的なエポキシ樹脂で言われる3~6%の体積収縮と比較しても、かなり大きな数値となる。そのため、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはビニルエステル樹脂の工業用途への使用、あるいはそれ以外の各業界・各用途への進出を阻んできた。
【0008】
この問題を解決する方法として、特許文献6では、ポリスチレンビーズを低収縮材として用いることで、製造の工数低減若しくは製造時間の短縮が図れ、優れた低収縮性、寸法安定性及び表面平滑性を有する低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造できるとしている。
【0009】
また、特許文献7では、不飽和ポリエステル樹脂組成物にA-B型のブロック共重合体を配合することにより、硬化時の収縮が低く、耐熱性に優れた成形体を作製することができる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができるとしている。
【0010】
更に、特許文献8では、不飽和ポリエステル樹脂に対して、A及びBのセグメントからなるA-B型のブロック共重合体(酢酸ビニル-スチレン系)と微粒子ケイ酸を混合することで、常温または中温成形に際して低収縮効果が大きく、かつ高度な耐水性を有する低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第2700609号公報
【文献】特開2001-270765号公報
【文献】特許第3479819号公報
【文献】特開2020-94192号公報
【文献】特開2019-52203号公報
【文献】特開平11-315198号公報
【文献】特許第2794802号公報
【文献】特開平05-222282号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】遠藤剛、重合時の体積収縮は不可避か、高分子、27巻2月号(1978年)第108~111頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来の実情を鑑みてなされたものであり、セメントコンクリート材料、ポリマーセメントモルタル材料、2液硬化・発泡型のウレタン組成物、エポキシ樹脂モルタル材料の各種モルタル充填工法用の材料との初期接着、あるいは凹部に使用されているコンクリート製材料、鋼鉄製材料との初期接着、および樹脂材料の硬化時の収縮に由来した脱落等の施工不良をなくす工法等を提供することができる。
また、従来のラジカル重合性の樹脂組成物において、低収縮率の樹脂を創り出すため、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂の単独配合、もしくは2種以上のブロック共重合体が利用されている。これらは「収縮防止材」として機能していることがほとんどであった。
これらの樹脂組成物は、硬化発熱による熱可塑性樹脂の熱膨張と不飽和ポリエステル樹脂の硬化収縮とを相殺させる考えに立脚しており、用途的にはシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)等の、中温域以上で加熱成形がなされる用途に限定されていることが多かった。
【0014】
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであり、収縮防止材ではなく、膨張材を取り入れることによって、成形方法、使用温度、用途等に限定されることなく、樹脂組成物の硬化時に全体が一定の比率で膨張し、その後、安定することで、収縮率の小さいラジカル重合性樹脂組成物を含む凹部充填材キット、その硬化物、及びそれを用いる凹部充填法を提供することを目的とし、併せて、金属接着用のプライマーを用いることで、凹部に存在する鉄筋構造物やボルトなどとの接着も担保できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は以下の[1]~[14]で示される。
[1] 第1ラジカル重合性樹脂組成物と第2ラジカル重合性樹脂組成物とからなる凹部充填材キットであって、
前記第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)と、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)と、酸性化合物(C)と、第1ラジカル重合開始剤(D-1)とを含有し、
前記第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と、膨張材(J)と、骨材(K)とを含有することを特徴とする凹部充填材キット。
[2] 前記骨材(K)の含有量は、前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、200質量部~900質量部である[1]に記載の凹部充填材キット。
[3] 前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)が、それぞれ独立して、ビニルエステル樹脂を含む[1]又は[2]に記載の凹部充填材キット。
[4] 前記膨張材(J)が生石灰及びカルシウムサルフォアルミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]~[3]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[5] 前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)及び前記第2ラジカル重合開始剤(D-2)が、それぞれ独立して、ヒドロペルオキシドである[1]~[4]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[6] 前記第1ラジカル重合性樹脂組成物が、更に第1金属含有化合物(E-1)と第1チオール化合物(F-1)とを含有し、
前記第2ラジカル重合性樹脂組成物が、更に第2金属含有化合物(E-2)と第2チオール化合物(F-2)とを含有する[1]~[5]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[7] 前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、前記膨張材(J)が0.3質量部~30質量部である[1]~[6]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[8] 前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)が0.1質量部~10質量部であり、
前記第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、前記第2ラジカル重合開始剤(D-2)が0.1質量部~10質量部である[1]~[7]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[9] 前記第1ラジカル重合性樹脂組成物において、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、前記酸性化合物(C)が1~20質量部である[1]~[8]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[10] 前記酸性化合物(C)が不飽和一塩基酸である[1]~[9]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[11] 前記第1ラジカル重合開始剤(D-1)が紫外光から可視光領域まで感光性を有する光ラジカル重合開始剤である[1]~[10]のいずれかに記載の凹部充填材キット。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の凹部充填材キットの硬化物であって、凹部の表面に、前記第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物である第1硬化物が形成され、前記第1硬化物の表面に前記第2ラジカル重合性樹脂組成物の第2硬化物が形成されていることを特徴とする凹部充填材キットの硬化物。
[13] [1]~[11]のいずれかに記載の凹部充填材キットを用いて、凹部を充填する凹部充填法であって、
凹部の表面に前記第1ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、下地層を形成する下地層形成工程と、
前記凹部の表面に形成された前記下地層の表面に、前記第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する充填工程と含むことを特徴とする凹部充填法。
[14] 前記凹部がボルトボックスである[13]に記載の凹部充填法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンクリート下地や鋼鉄製の治具(ボルト)や鉄筋構造物などとの初期接着、有機系の樹脂材料の硬化時の収縮に由来した脱落、および管路運用時のボックス内部を流れる流体による腐食、摩耗や、車や鉄道などの振動、風圧等から躯体そのものを守ることができ、管路そのものの長期間の運用が可能となる。
本発明によれば、第1ラジカル重合性樹脂組成物としては、酸性化合物の添加をもって、コンクリート下地はもちろん、鋼鉄製の治具や鉄筋構造物などとの初期接着を達成することができる。また、本発明の一実施形態によれば、第1ラジカル重合性樹脂組成物としては、金属石鹸と特定構造を持つチオールの錯体効果と、酸性化合物の添加をもって、コンクリート下地はもちろん、鋼鉄製の治具や鉄筋構造物などとの初期接着を達成することができる。第2ラジカル重合性樹脂組成物としては、硬化時の液状成分の自由体積の減少により硬化収縮を引き起こすラジカル重合性の樹脂組成物に対して、膨張材を適量加えることによって、成形方法、使用温度、用途等に限定されることなく、樹脂組成物の硬化時に全体が一定の比率で膨張し、その後、安定することで、収縮率の小さいラジカル重合性樹脂組成物を有する凹部充填材キット、及びその硬化物を提供することができる。
また、これらを組み合わせた凹部充填法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】供試体の作製方法を示す図である。(a)打設前、(b)打設中、(c)養生中。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
[凹部充填材キット]
本実施形態の凹部充填材キットは、基本的に第1ラジカル重合性樹脂組成物と第2ラジカル重合性樹脂組成物とからなる。ただし、他の部材、組成物などが含まれてもよい。前記第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)と、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)と、酸性化合物(C)と、第1ラジカル重合開始剤(D-1)とを含有する。前記第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と、膨張材(J)と、骨材(K)とを含有する。前記第2ラジカル重合性樹脂組成物が遊離水を含まないことは好ましい。充填されるべき凹部において、前記第1ラジカル重合性樹脂組成物と第2前記第2ラジカル重合性樹脂組成物とはそれぞれ独立に配置されている。
本実施形態の凹部充填材キットが、前記第1ラジカル重合性樹脂組成物と第2前記第2ラジカル重合性樹脂組成物とを有することの意味は、凹部の充填(修復)箇所に対して、両ラジカル重合性組成物がそれぞれ独立に配置されていることである。両ラジカル重合性組成物を混合して、1つの凹部充填材混合物として使用する意味ではない。また、「それぞれ独立に配置されている」意味は、使用する前に、お互いに混合することがない意味である。例えば、それぞれの入れ物に保存する形態、又は、混合されない構造を有する1つの入れ物に保存する形態などが挙げられる。
【0019】
(第1ラジカル重合性樹脂組成物)
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)と、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)と、酸性化合物(C)と、第1ラジカル重合開始剤(D-1)とを含有する。本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて第1金属含有化合物(E-1)、第1チオール化合物(F-1)、第1重合禁止剤(H-1)、第1硬化遅延剤(I-1)等を含有しても良い。
【0020】
<第1ラジカル重合性化合物(A-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性化合物(A-1)は、後述の第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)及び酸性化合物(C)を含まず、分子内にエチレン性不飽和基を1または複数個有し、ラジカルによって重合反応が進行する樹脂あるいは多量体化合物を指す。
本実施形態の第1ラジカル重合性化合物(A-1)は、後述の本実施形態の第2ラジカル重合性化合物(A-2)に記載されているラジカル重合性化合物又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1ラジカル重合性化合物(A-1)は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と同じ種類のラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、第1ラジカル重合性化合物(A-1)は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と同じラジカル重合性化合物を用いることがより好ましい。
第1ラジカル重合性化合物(A-1)は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と異なるラジカル重合性化合物を用いてもよい。
例えば、第1ラジカル重合性化合物(A-1)としては、ビニルエステル樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選択される一種以上を用いることが好ましく、ビニルエステル樹脂を用いることがより好ましい。
【0021】
<第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)は、後述の酸性化合物(C)を含まず、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体であれば、特に制限はない。好ましくは、ビニル基、アリル基又は(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。
本実施形態の第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)は、後述の本実施形態の第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)に記載されているラジカル重合性不飽和単量体又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)は、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と同じ種類のラジカル重合性不飽和単量体を用いることが好ましく、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)は、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と同じラジカル重合性不飽和単量体を用いることがより好ましい。
第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)は、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と異なるラジカル重合性不飽和単量体を用いてもよい。
例えば、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)としては、汎用性の観点からスチレンを用いることが好ましく、臭気低減や環境への負担軽減の観点からは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体が好ましく、環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、ジシクロペンタニルメタクリレートがさらにより好ましい。第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)を使用することにより、第1ラジカル重合性樹脂組成物の粘度を下げ、作業性を向上することができる。また、硬化物の硬度、強度、耐薬品性、耐水性等を向上させることができる。そのような観点から、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の含有量は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)100質量部に対して、10~250質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、80~150質量部であることがさらに好ましい。第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の含有量が10質量部以上であると、第1ラジカル重合性樹脂組成物が十分に低粘度化し、凹部充填箇所への含侵性も向上する。第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の含有量が250質量部以下であると、十分な塗膜強度が得られ、耐薬品性や耐水性等が向上する。
【0022】
<酸性化合物(C)>
本実施形態において使用される酸性化合物(C)としては、酸性を示す化合物であれば特に限定されない。酸性化合物(C)としては、カルボキシ基を有する有機酸が好ましく、更にはエチレン性不飽和結合とカルボキシ基を有する化合物が更に好ましく、第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化性の観点から不飽和一塩基酸が特に好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等の不飽和一塩基酸、酢酸、プロピオン酸等の飽和一塩基酸、ジシクロペンタジエンと多価カルボン酸化合物(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)との反応物が挙げられる。第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化性の観点からは、不飽和一塩基酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0023】
酸性化合物(C)の使用量は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5~25質量部、より好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。酸性化合物(C)の使用量が0.5質量部以上であると、被着体に対して十分な接着力が得られる。25質量部以下であると、十分な効果強度が得られ、被着体への接着に悪影響を及ぼさない。
【0024】
<第1ラジカル重合開始剤(D-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合開始剤(D-1)は、後述の本実施形態の第2ラジカル重合開始剤(D-2)に記載されているラジカル重合開始剤又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1ラジカル重合開始剤(D-1)は、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と同じ種類のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、第1ラジカル重合開始剤(D-1)は、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と同じラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。
第1ラジカル重合開始剤(D-1)は、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と異なるラジカル重合開始剤を用いてもよい。
第1ラジカル重合開始剤(D-1)の含有量は、前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。第1ラジカル重合開始剤(D-1)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化物表面のタックが無く十分な硬化性が期待できる。第1ラジカル重合開始剤(D-1)の含有量が10質量部以下であると、硬化物の物性に悪影響を及ぼすこともない。
【0025】
<第1金属含有化合物(E-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤として第1金属含有化合物(E-1)を含有してもよい。第1金属含有化合物(E-1)は、後述の本実施形態の第2金属含有化合物(E-2)に記載されている金属含有化合物又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1金属含有化合物(E-1)は、第2金属含有化合物(E-2)と同じ種類の金属含有化合物を用いることが好ましく、第1金属含有化合物(E-1)は、第2金属含有化合物(E-2)と同じラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。
第1金属含有化合物(E-1)は、第2金属含有化合物(E-2)と異なる金属含有化合物を用いてもよい。
第1金属含有化合物(E-1)の含有量は、前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部、より好ましくは0.001~3質量部、さらに好ましくは0.005~1質量部である。第1金属含有化合物(E-1)の含有量が0.0001質量部以上であると、速やかに硬化が進行する。第1金属含有化合物(E-1)の含有量が5質量部以下であると、硬化物の物性に悪影響を及ぼすこともない。
【0026】
<第1チオール化合物(F-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤として第1チオール化合物(F-1)を含有してもよい。また、前記第1金属含有化合物(E-1)と併用して用いることにより、第1チオール化合物(F-1)が前記第1金属含有化合物(E-1)の金属の近傍に配位し、水による金属の失活を防ぐ機能も期待できる。第1チオール化合物(F-1)は、後述の本実施形態の第2チオール化合物(F-2)に記載されているチオール化合物又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1チオール化合物(F-1)は、第2チオール化合物(F-2)と同じ種類のチオール化合物を用いることが好ましく、第1チオール化合物(F-1)は、第2チオール化合物(F-2)と同じチオール化合物を用いることがより好ましい。
第1チオール化合物(F-1)は、第2チオール化合物(F-2)と異なるチオール化合物を用いてもよい。
第1チオール化合物(F-1)の含有量は、前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~7質量部、さらに好ましくは0.1~5質量部である第1チオール化合物(F-1)の含有量が0.01質量部以上であると、速やかに硬化が進行する。第1チオール化合物(F-1)の含有量が10質量部以下であると、硬化物の物性に悪影響を及ぼすこともない。
【0027】
<第1硬化促進剤(G-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化性を向上させることを目的として、第1金属含有化合物(E-1)及び第1チオール化合物(F-1)以外の第1硬化促進剤(G-1)を含んでもよい。本実施形態の第1硬化促進剤(G-1)は、後述の本実施形態の第2硬化促進剤(G-2)に記載されている硬化促進剤又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1硬化促進剤(G-1)は、第2硬化促進剤(G-2)と同じ種類の硬化促進剤を用いることが好ましく、第1硬化促進剤(G-1)は、第2硬化促進剤(G-2)と同じ硬化促進剤を用いることがより好ましい。
第1硬化促進剤(G-1)は、第2硬化促進剤(G-2)と異なる硬化促進剤を用いてもよい。
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物が第1硬化促進剤(G-1)を含有する場合、その量は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0028】
<第1重合禁止剤(H-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)の過度の重合を抑える観点、反応速度をコントロールする観点から、重合禁止剤を含んでも良い。本実施形態の第1重合禁止剤(H-1)は、後述の本実施形態の第2重合禁止剤(H-2)に記載されている重合禁止剤又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1重合禁止剤(H-1)は、第2重合禁止剤(H-2)と同じ種類の重合禁止剤を用いることが好ましく、第1重合禁止剤(H-1)は、第2重合禁止剤(H-2)と同じ重合禁止剤を用いることがより好ましい。
第1重合禁止剤(H-1)は、第2重合禁止剤(H-2)と異なる重合禁止剤を用いてもよい。
第1ラジカル重合性樹脂組成物が第1重合禁止剤(H-1)を含有する場合、その量は第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~10質量部、より好ましくは各々0.001~3質量部、さらに好ましくは各々0.01~1質量部である。
【0029】
<第1硬化遅延剤(I-1)>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)の硬化を遅らせる目的で、硬化遅延剤を含んでもよい。本実施形態の第1硬化遅延剤(I-1)は、後述の本実施形態の第2硬化遅延剤(I-2)に記載されている硬化遅延剤又はそれらの好ましい例を用いることができる。第1硬化遅延剤(I-1)は、第2硬化遅延剤(I-2)と同じ種類の硬化遅延剤を用いることが好ましく、第1硬化遅延剤(I-1)は、第2硬化遅延剤(I-2)と同じ硬化遅延剤を用いることがより好ましい。
第1硬化遅延剤(I-1)は、第2硬化遅延剤(I-2)と異なる硬化遅延剤を用いてもよい。
第1ラジカル重合性樹脂組成物が第1硬化遅延剤(I-1)を含有する場合、その量は第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~10質量部、より好ましくは各々0.001~5質量部、さらに好ましくは各々0.05~3質量部である。
【0030】
<その他の成分>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化体の強度発現性や耐酸性状に特段の支障を及ぼさない限り、前記成分以外の成分を含有してもよい。含有可能な成分としては、例えば、硫酸カルシウムやポゾラン物質等の水硬性無機物質の他、例えば凝結調整、硬化促進、硬化遅延、増粘、保水、消泡、撥水、防水等の性状を付与できる混和剤、金属や高分子や炭素等の材質からなる繊維、顔料、増量材、発泡材、ゼオライト等の粘土鉱物等の混和材を挙げることができる。また、含有可能な成分としては、カップリング剤、可塑剤、陰イオン固定化成分、溶剤、ポリイソシアナト化合物、界面活性剤、湿潤分散剤、ワックス、揺変剤等が挙げられる。
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物に用いることができる上記その他成分は、後述の本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物に用いることができるその他成分として記載されているものやそれらの好ましい例を用いることができる。第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物の双方で同様のその他成分を用いる場合には、同じ種類の化合物を用いることが好ましく、同じ化合物を用いることがより好ましい。
第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物の双方で同様のその他成分を用いる場合に異なる化合物を用いても良い。
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物に用いることができる。上記その他成分としては、第2ラジカル重合性樹脂組成物の項目に例示する化合物の他に、以下に例示するものも使用できる。また、添加目的が第2ラジカル重合性樹脂組成物と異なる成分についても以下に補足する。
【0031】
〔カップリング剤〕
カップリング剤としては、後述の第2ラジカル重合性樹脂組成物に含まれてもよいカップリング剤を用いることができる。カップリング剤の含有量としては、前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部である。
【0032】
〔陰イオン固定化成分〕
陰イオン固定化成分としては、後述の第2ラジカル重合性樹脂組成物に含まれてもよい陰イオン固定化成分を用いることができる。特に凹部充填箇所に鉄筋等が露出している場合、これらの金属腐蝕、特に塩分による金属腐食の影響を低減することができる。
【0033】
〔第1揺変剤〕
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物は、更に第1揺変剤を含んでも良い。本実施形態で用いられる第1揺変剤としては、公知のものが使用できる。また、本実施形態で用いられる第1揺変剤は、後述の第2ラジカル重合性樹脂組成物に含まれてもよい第2揺変剤を用いることができる。本実施形態で用いられる第1揺変剤としては例えば無機系ではシリカパウダー(アエロジルタイプ)、マイカパウダー、炭酸カルシウムパウダー、短繊維アスベストなどがあり、有機系では水素化ひまし油などがある。好ましくはシリカパウダー系揺変剤である。また、揺変助剤等を併用して使用しても良い。本実施形態で用いられる第1揺変剤の使用量は、前記第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。第1揺変剤の使用量が0.1以上であれば十分な揺変性が得られ、20質量部以下であれば、第1ラジカル重合性樹脂組成物として十分な硬化性が得られ、被着体への接着力が向上する。
【0034】
<第1ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、第1ラジカル重合性樹脂組成物は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)に、必要に応じて第1金属含有化合物(E-1)を混合し、そして酸性化合物(C)を混合し、さらに第1ラジカル重合開始剤(D-1)を配合して混合することによって製造することができる。
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法の一実施態様は、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)に、必要に応じて第1金属含有化合物(E-1)を混合し、混合物(1-i)を得る工程(1-S1)と、前記混合物(1-i)に酸性化合物(C)を混合し、混合物(1-ii)を得る工程(1-S2)と、前記混合物(1-ii)に第1ラジカル重合開始剤(D-1)を混合する第1ラジカル重合性樹脂組成物(硬化性プライマー)を得る工程(1-S3)とを有する。
【0035】
前記混合物(i)を得る工程(1-S1)(単に「工程(1-S1)」とも言うことがある)において、第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)に、第1金属含有化合物(E-1)を混合する以外に、必要に応じて、さらに、第1チオール化合物(F-1)や、第1重合禁止剤(H-1)や、第1硬化遅延剤(I-1)や、第1揺変剤や、陰イオン固定化成分などを混合してもよい。
第1ラジカル重合性樹脂組成物を得る工程(1-S3)(単に「工程(1-S3)」とも言うことがある)の後、得られた第1ラジカル重合性樹脂組成物に、必要に応じて、さらに、繊維などを混合してもよい。
【0036】
(第2ラジカル重合性樹脂組成物)
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)と、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)と、第2ラジカル重合開始剤(D-2)と、膨張材(J)と、骨材(K)とを含有する。第2ラジカル重合性樹脂組成物が遊離水を含まないことは好ましい。本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて第2金属含有化合物(E-2)、第2チオール化合物(F-2)、第2重合禁止剤(H-2)、第2硬化遅延剤(I-2)、繊維(L)等を含有しても良い。
【0037】
<第2ラジカル重合性化合物(A-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)を用いる。なお、本実施形態において、第2ラジカル重合性化合物(A-2)は、後述の第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)を含まず、分子内にエチレン性不飽和基を1または複数個有し、ラジカルによって重合反応が進行する樹脂あるいは多量体化合物を指す。
第2ラジカル重合性化合物(A-2)としては、ビニルエステル樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。中でもビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、ビニルエステル樹脂がより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0038】
〔ビニルエステル樹脂〕
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂に対して不飽和一塩基酸を反応させて得られたものを用いることができる。
【0039】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数種を組み合わせても良い。合成後のビニルエステル樹脂の粘度を低減させる観点からは、脂肪族型エポキシ樹脂のみを用いるか、ビスフェノール型エポキシ樹脂と脂肪族型エポキシ樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0040】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、ビスフェノールAのグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェノールとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0041】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタンとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、アラルキルフェノールとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0042】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0043】
脂肪族型エポキシ樹脂としては、脂環式型エポキシ樹脂、脂環式ジオールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
脂環式型エポキシ樹脂としては、例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等が挙げられる。
脂環式ジオールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンテニルジアルコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシテルペンジグリシジルエーテルなどの炭素数3~20(好ましくは炭素数6~12、より好ましくは炭素数7~10)の脂環式ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。これらのうち、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX-216L」がある。
【0045】
脂肪族ジオールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの炭素数2~20(好ましくは炭素数4~12、より好ましくは炭素数4~8、特に好ましくは炭素数4~6)の脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。これらのうち、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX-212L」、阪本薬品工業株式会社の「SR-16H」や「SR-16HL」、四日市合成株式会社の「エポゴーセー(登録商標)HD」などがある。また、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX-214L」がある。
【0046】
ポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレン)グリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0047】
脂肪族型エポキシ樹脂の好ましい例としては、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレン)グリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。その中でも、数平均分子量が150~1000であるものがより好ましい。
【0048】
前記エポキシ樹脂は、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステルであってもよい。また、前記エポキシ樹脂としては、前記エポキシ樹脂とジイソシアネートとを反応して得られるオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂の具体例としては、旭化成エポキシ製アラルダイト(登録商標)AER4152等が挙げられる。
【0049】
前記不飽和一塩基酸は公知のものが使用でき、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等を挙げることができる。また、1個のヒドロキシ基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と多塩基酸無水物との反応物を使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸」の一方又は両方を意味し、また、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基及びメタクリロイル基」の一方又は両方を意味する。
前記多塩基酸は、前記エポキシ樹脂の分子量を増大させるために使用するものであり公知のものを使用できる。例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、エチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリエチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、プロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリプロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ドデカン二酸、トリデカン二酸、オクタデカン二酸、1,16-(6-エチルヘキサデカン)ジカルボン酸、1,12-(6-エチルドデカン)ジカルボン酸、カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(商品名Hycar CTBN)等を挙げることができる。
【0050】
〔不飽和ポリエステル樹脂〕
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和二塩基酸、及び必要に応じて飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分と、多価アルコール成分とをエステル化反応させて得られたものを用いることができる。
前記不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記飽和二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、ズベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸等の脂肪族二塩基酸、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、ダイマー酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、及びこれらのジアルキルエステル等の芳香族二塩基酸、ハロゲン化飽和二塩基酸等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
前記多価アルコールに特に制限はないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコ-ル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-シクロヘキサングリコール、1,3-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,6-デカリングリコール、2,7-デカリングリコール等の二価アルコール;
水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等に代表される2価フェノールとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドとの付加物等の二価アルコール;
1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0052】
不飽和ポリエステルは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、ジシクロペンタジエン系化合物により変性したものを用いてもよい。ジシクロペンタジエン系化合物による変性方法については、例えば、ジシクロペンタジエンとマレイン酸付加生成物(シデカノールモノマレート)を得た後、これを一塩基酸として用いてジシクロペンタジエン骨格を導入する方法等の公知の方法が挙げられる。
本実施形態で使用するビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂には、アリル基またはベンジル基などの酸化重合(空気硬化)基を導入することができる。導入方法に特に制限はないが、例えば、酸化重合基含有ポリマーの添加や、水酸基とアリルエーテル基とを有する化合物の縮合、アリルグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルアリルエーテルに水酸基とアリルエーテル基を有する化合物と酸無水物との反応物を付加させる方法等が挙げられる。
なお、本実施形態での酸化重合(空気硬化)とは、例えばアリルエーテル基などに見られる、エーテル結合と二重結合との間にあるメチレン結合の酸化によるパーオキシドの生成と分解に伴う架橋を指す。
【0053】
〔ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及び(メタ)アクリレート樹脂〕
本実施形態におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の両末端の水酸基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、イソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンの両末端の水酸基又はイソシアナト基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、水酸基、イソシアナト基、カルボキシ基及びエポキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有するポリ(メタ)アクリル樹脂や、前記置換基を有する単量体と(メタ)アクリレートとの重合体の置換基に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
【0054】
第2ラジカル重合性化合物(A-2)は、樹脂等を合成したときに使用した触媒や重合禁止剤が残留していてもよい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体等の3級窒素を含有する化合物;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等のアミン塩;トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン等が挙げられる。
第2ラジカル重合性化合物(A-2)に触媒又は重合禁止剤が残留する場合、その量は、それぞれ、好ましくは0.001~2質量%である。
【0055】
〔第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)〕
前記第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)は、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体であれば、特に制限はないが、ビニル基、アリル基又は(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。また、不飽和一塩基酸であってもよい。
ビニル基を有する単量体の具体例としては、スチレン、p-クロロスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、tert-ブチルスチレン、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PTMGのジメタアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロイルエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAEO変性(n=2)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性(n=3)ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0057】
更に、多官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
更に、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)として、以下のような化合物を使用することもできる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリルメタクリレート、ビニルベンジルブチルエーテル、ビニルベンジルヘキシルエーテル、ビニルベンジルオクチルエーテル、ビニルベンジル(2-エチルヘキシル)エーテル、ビニルベンジル(β-メトキシメチル)エーテル、ビニルベンジル(n-ブトキシプロピル)エーテル、ビニルベンジルシクロヘキシルエーテル、ビニルベンジル(β-フェノキシエチル)エーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルオキシエチルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルメチルエーテル、ジビニルベンジルエーテル、(メタ)アクリル酸、を挙げることができる。
これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、汎用性の観点からスチレンを用いることが好ましく、臭気低減や環境への負担軽減の観点からは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体が好ましく、環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0059】
第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)は、本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の粘度を下げ、硬度、強度、耐薬品性、及び耐水性等を向上させるために用いることができる。硬化物の劣化や環境汚染を防止する観点から、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の含有量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の総量に対し、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物中の第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計の含有量は、好ましくは5~99.9質量%であり、より好ましくは10~80質量%、更に好ましくは15~60質量%、より更に好ましくは18~40質量%である。第2ラジカル重合性樹脂組成物中の第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計の含有量が前記範囲内であると、硬化物の硬度がより一層向上する。
【0061】
<第2ラジカル重合開始剤(D-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化剤として第2ラジカル重合開始剤(D-2)を含有する。第2ラジカル重合開始剤(D-2)としては、熱ラジカル重合開始剤(D-21)および光ラジカル重合開始剤(D-22)が挙げられる。中でも、熱ラジカル重合開始剤(D-21)が好ましい。
熱ラジカル重合開始剤(D-21)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系、tert-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系、クメンヒドロペルオキシド(CHP:Cumene Hydroperoxide)、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド系(RCOOH、Hydroperoxide)、ジクミルパーオキサイド等ジアルキルパーオキサイド系、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の有機過酸化物が挙げられる。中でも、ヒドロペルオキシド系ラジカル重合開始剤(RCOOH)(単に、ヒドロペルオキシドともいう)が好ましく、日油株式会社製パークミル(登録商標)H-80等のクメンヒドロペルオキシド(CHP)、日油株式会社製パークミル(登録商標)P等のジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドがより好ましい。
【0062】
光ラジカル重合開始剤(D-22)としては、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等のベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系等が挙げられる。
【0063】
紫外光から可視光領域まで感光性を有する光ラジカル重合開始剤(D-22)としては、アセトフェノン系、ベンジルケタール系、(ビス)アシルホスフィンオキサイド系をはじめとする公知の開始剤が挙げられ、具体的には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)とビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名イルガキュア-1700(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製);1-ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン(商品名:イルガキュアー184、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)とビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名イルガキュアー1800(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)、50%/50%の割合で混合された商品名イルガキュアー1850(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製);ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名:イルガキュアー819、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名Lucirin TPO、BASF(株)製);2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)と2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名Lucirin TPO、BASF(株)製)を50%/50%の割合で混合された商品名Darocur4265などがある。
【0064】
可視光領域に感光性を有する光ラジカル重合開始剤(D-22)としては、カンファーキノン、ベンジルトリメチルベンゾイルジフェニルホスフィノキサイド、メチルチオキサントン、ジシクロペンタジエチルチタニウム-ジ(ペンタフルオロフェニル)等が挙げられる。
これらの第2ラジカル重合開始剤(D-2)は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。熱硬化及び光硬化のうち主となる方の反応を補助する目的でもう一方の反応を取り入れても良く、熱ラジカル重合開始剤(D-21)と光ラジカル重合開始剤(D-22)を必要に応じて併用してもよい。
【0065】
また、成形条件に応じて、有機過酸化物/色素系、ジフェニルヨード塩/色素系、イミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリルビイミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素、ヘキサアリルビイミダゾール/ラジカル発生剤等の複合形態で用いることもできる。
【0066】
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が第2ラジカル重合開始剤(D-2)を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、更に好ましくは0.3~6質量部であり、最も好ましくは0.5~5質量部である。
【0067】
<第2金属含有化合物(E-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化促進剤として金属石鹸(E-21)及びβ-ジケトン骨格を有する金属錯体(E-22)から選ばれる1種以上の第2金属含有化合物(E-2)を用いることができる。なお、本実施形態における金属石鹸(E-21)は、長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸以外の有機酸と、カリウム及びナトリウム以外の金属元素との塩をいう。また、本実施形態におけるβ-ジケトン骨格を有する金属錯体(E-22)は、2つのカルボニル基の間に炭素原子が1つある構造を有する化合物が金属元素に対して配位した錯体をいう。
【0068】
第2ラジカル重合性樹脂組成物中の第2金属含有化合物(E-2)の金属成分換算による含有量は、前述する第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部であり、より好ましくは0.001~4質量部、更に好ましくは0.005~3質量部である。第2金属含有化合物(E-2)の金属成分換算による含有量が前記範囲内であると速やかに硬化が進行する。
【0069】
〔金属石鹸(E-21)〕
金属石鹸(E-21)における長鎖脂肪酸に特に制限はないが、例えば、炭素原子数6~30の脂肪酸が好ましい。具体的には、ヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸等のオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、ナフテン酸等の鎖状又は環状の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が好ましい。
また、ロジン酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂酸、トール油酸等も挙げられる。
【0070】
また、金属石鹸(E-21)における長鎖脂肪酸以外の有機酸に特に制限はないが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エノール基を有する弱酸の化合物であって有機溶剤に溶けるものが好ましい。
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸;クエン酸、胆汁酸、糖酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシケイ皮酸、及び葉酸等のヒドロキシ酸;アラニン、アルギニン等のアミノ酸;安息香酸、フタル酸等の芳香族酸等が挙げられる。
また、ヒドロキシ基、エノール基を有する化合物としては、例えば、アスコルビン酸、α酸、イミド酸、エリソルビン酸、クロコン酸、コウジ酸、スクアリン酸、スルフィン酸、タイコ酸、デヒドロ酢酸、デルタ酸、尿酸、ヒドロキサム酸、フミン酸、フルボ酸、ホスホン酸等が挙げられる。
これらの中でも、長鎖脂肪酸が好ましく、炭素原子数6~16の鎖状若しくは環状の飽和脂肪酸、又は炭素原子数6~16の不飽和脂肪酸がより好ましく、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、及びナフテン酸が更に好ましく、2-エチルヘキサン酸、及びナフテン酸がより更に好ましい。
【0071】
金属石鹸(E-21)を構成する金属元素としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等の第1~2族の金属元素(但し、カリウム、ナトリウムは除く)、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛等の第3~12族の金属元素、アルミニウム、インジウム、錫、鉛等の第13~14族の金属元素、ネオジム、セリウム等の希土類の金属元素、ビスマス等が挙げられる。
本実施形態においては、第2~12族の金属元素が好ましく、ジルコニウム、バリウム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、チタン、ビスマス、カルシウム、鉛、錫及び亜鉛がより好ましく、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、チタン、ビスマス、カルシウム、鉛、錫及び亜鉛が更に好ましく、ジルコニウム、マンガン、コバルト、ビスマス、及びカルシウムがより更に好ましい。
【0072】
具体的な金属石鹸(E-21)としては、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ビスマス、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、オクチル酸鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸鉛、及びナフテン酸錫が好ましく、中でもオクチル酸ジルコニウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ビスマス、オクチル酸カルシウム、オクチル酸鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸鉛、及びナフテン酸錫がより好ましい。その中でも、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルトが特に好ましい。オクチル酸コバルトの具体例としては、東栄化工株式会社製ヘキソエートコバルト(製品全量中のコバルトの含有量8質量%、分子量345.34)が挙げられる。また、オクチル酸マンガンの具体例としては、東栄化工株式会社製、ヘキソエートマンガン(製品全量中のマンガンの含有量8質量%、分子量341.35)が挙げられる。
【0073】
〔β-ジケトン骨格を有する金属錯体(E-22)〕
β-ジケトン骨格を有する金属錯体(E-22)(以下、「金属錯体(E-22)」ともいう。金属錯体(E-22)としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン等と金属とが錯形成したものが挙げられ、これらの金属錯体(E-22)も前記金属石鹸(E-21)と同様の機能を発現する。
金属錯体(E-22)を構成する金属元素としては、前記金属石鹸(E-21)と同様の金属元素が挙げられる。
【0074】
具体的な金属錯体(E-22)としては、ジルコニウムアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、鉄アセチルアセトネート、及びアセト酢酸エチルエステルコバルトが好ましく、中でもジルコニウムアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)がより好ましい。
【0075】
<第2チオール化合物(F-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、2級チオール化合物(F-21)及び3級チオール化合物(F-22)から選ばれる1種以上の第2チオール化合物(F-2)を含有してもよい。本実施形態において第2チオール化合物(F-2)は、硬化促進剤としての機能を有すると共に、第2金属含有化合物(E-2)の金属の近傍に配位し、水による金属の失活を防ぐ機能も有していると推測される。
本実施形態に用いる第2チオール化合物(F-2)は、分子中に2級又は3級炭素原子に結合するメルカプト基(以下、それぞれを「2級メルカプト基」、「3級メルカプト基」と称することもある)を1個以上有する化合物であれば特に制限はないが、分子中に2級又は3級メルカプト基を2個以上有する化合物である多官能チオールが好ましく、中でも、分子中に2級又は3級メルカプト基を2個有する化合物である2官能チオールが好ましい。また、2級チオール化合物(F-21)の方が、3級チオール化合物(F-22)よりも好ましい。
なお、ここでいう「多官能チオール」とは、官能基であるメルカプト基が2個以上であるチオール化合物を意味し、また、「2官能チオール」とは、官能基であるメルカプト基が2個であるチオール化合物を意味する。
【0076】
分子中に2級又は3級メルカプト基を2個以上有する化合物に特に制限はないが、例えば、下記式(Q)で表される構造を少なくとも1個有し、下記式(Q)で表される構造中のメルカプト基を含めて、分子中に2級又は3級メルカプト基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0077】
【化1】
【0078】
(式(Q)中、Rは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~18の芳香族基であり、Rは炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~18の芳香族基であり、*は任意の有機基に連結していることを示す。aは0~2の整数である。)
【0079】
〔2級チオール化合物(F-21)〕
前記式(Q)で表される構造を有する第2チオール化合物(F-2)が、2級チオール化合物(F-21)である場合、その具体例としては、3-メルカプト酪酸、3-メルカプトフタル酸ジ(1-メルカプトエチル)、フタル酸ジ(2-メルカプトプロピル)、フタル酸ジ(3-メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4-メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトバレレート)、水素化ビスフェノールAビス(3-メルカプトブチレート)、ビスフェノールAジヒドロキシエチルエーテル-3-メルカプトブチレート、4,4’-(9-フルオレニリデン)ビス(2-フェノキシエチル(3―メルカプトブチレート))、エチレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、オクタンジオールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、トリス-2-(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)エチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0080】
2級チオール化合物(F-21)のうち、分子中に2級メルカプト基を2個以上有する化合物の市販品としては、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)PE1)、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシエチル)]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)NR1)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製、TEMB)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製、TPMB)等が挙げられ、これらの1種以上を用いることが好ましい。中でも、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)BD1)が好ましい。
【0081】
〔3級チオール化合物(F-22)〕
前記式(Q)で表される構造を有する第2チオール化合物(F-2)が、3級チオール化合物(F-22)である場合、その具体例としては、フタル酸ジ(2-メルカプトイソブチル)、エチレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(2-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトイソブチレート)、フタル酸ジ(3-メルカプト-3-メチルブチル)、エチレングリコールビス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプト-3-メチルブチレート)等が挙げられる。
【0082】
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物中の第2チオール化合物(F-2)の合計量は、前述する第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~7質量部、更に好ましくは0.1~5質量部、より更に好ましくは0.2~4質量部である。第2チオール化合物(F-2)の量が0.01質量部以上であると硬化機能を十分に得ることができ、10質量部以下であると速やかに硬化が進行する。
【0083】
また、第2金属含有化合物(E-2)の金属成分に対する第2チオール化合物(F-2)の合計モル比[(F-2)/(E-2)]は、0.1~15が好ましく、0.5~15がより好ましく、1~12がさらに好ましく、1.5~10がより更に好ましく、3~9がより更に好ましい。モル比[(F-2)/(E-2)]が0.1以上であると、第2金属含有化合物(E-2)の金属の近傍に第2チオール化合物(F-2)を十分に配位させることができ、また、モル比を15以下とすることで、製造コストと効果とのバランスが向上する。
【0084】
第2チオール化合物(F-2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2級チオール化合物(F-21)と3級チオール化合物(F-22)を併用する場合には、両者のモル比[(F-21)/(F-22)]は、0.001~1000が好ましく、1~10がより好ましい。モル比[(F-21)/(F-22)]が前記範囲内であると、第2ラジカル重合性樹脂組成物中で、第2金属含有化合物(E-2)と第2チオール化合物(F-2)が安定し、副生成物として第2チオール化合物(F-2)同士の結合によるジスルフィド化合物が発生することもない。第2金属含有化合物(E-2)と第2チオール化合物(F-2)とを安定した状態で、該第2ラジカル重合性樹脂組成物を保存する観点からは、2級チオール化合物(F-21)又は3級チオール化合物(F-22)を単独で用いることが好ましい。
【0085】
<第2硬化促進剤(G-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化性を向上させることを目的として、第2金属含有化合物(E-2)及び第2チオール化合物(F-2)以外の第2硬化促進剤(G-2)を含んでもよい。
第2金属含有化合物(E-2)及び第2チオール化合物(F-2)以外の第2硬化促進剤(G-2)としては、アミン類が挙げられ、具体的には、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4-(N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N-置換アニリン、N,N-置換-p-トルイジン、4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類等を使用できる。
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が第2硬化促進剤(G-2)を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0086】
<第2重合禁止剤(H-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)の過度の重合を抑える観点、反応速度をコントロールする観点から、第2重合禁止剤(H-2)を含んでもよい。
第2重合禁止剤(H-2)としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール等の公知のものが挙げられる。 第2ラジカル重合性樹脂組成物が第2重合禁止剤(H-2)を含有する場合、その量は第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~10質量部であり、より好ましくは各々0.001~3質量部であり、さらに好ましくは0.01~1質量部である。
【0087】
<第2硬化遅延剤(I-2)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)の硬化を遅らせる目的で、第2硬化遅延剤(I-2)を含んでもよい。第2硬化遅延剤(I-2)としては、フリーラジカル系硬化遅延剤が挙げられ、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4H-TEMPO)、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4-Oxo-TEMPO)等のTEMPO誘導体が挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4H-TEMPO)がコスト面、扱いやすさの点から好ましい。
第2ラジカル重合性樹脂組成物が第2硬化遅延剤(I-2)を含有する場合、その量は第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001~10質量部であり、より好ましくは各々0.001~5質量部であり、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0088】
<膨張材(J)>
本実施形態に用いられる膨張材(J)は、コンクリート用膨張材として一般に使用されている日本工業規格JIS A 6202「コンクリート用膨張材」の規格を満足する膨張材であれば、何れの膨張材を用いてもよい。具体的には水和反応により、水酸化カルシウムやエトリンガイトを生成するものであればよい。例えば、生石灰及びカルシウムサルフォアルミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む膨張材(J)が好ましい。より好ましい膨張材としては、(1)生石灰を有効成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、(2)カルシウムサルフォアルミネートを有効成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、(3)生石灰-エトリンガイト複合系膨張材などが挙げられる。
【0089】
生石灰系膨張材の具体例としては、例えば、太平洋マテリアル製の太平洋ハイパーエクスパン-K、太平洋ハイパーエクスパン-M、太平洋エクスパン-K、太平洋エクスパン-M、N-EXなどが挙げられる。
エトリンガイト系膨張材の具体例としては、デンカ製のデンカCSA #10、デンカCSA #20などが挙げられる。
生石灰-エトリンガイト複合系膨張材の具体例としては、デンカ製のデンカパワーCSA タイプS、デンカパワーCSA タイプR、デンカパワーCSA タイプTなどが挙げられる。
【0090】
本実施形態の膨張材(J)の含有量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.3~30質量部、より好ましくは0.5~25質量部、更に好ましくは1~20質量部、最も好ましくは1~16質量部である。膨張材(J)の含有量が30質量部以下であれば、第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させた際に、膨張率が樹脂の伸び量を超えてしまうことがない。逆に0.3質量部以上であれば、第2ラジカル重合性化合物(A-2)に対する膨張性能が発現しない、ということがない。また、これらの膨張材(J)は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0091】
<セメント>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物はセメントを実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」の意味は、第2ラジカル重合性樹脂組成物に対して、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含む意味である。
ここで、セメントとしては、ポルトランドセメント、その他の混合セメント、超速硬系セメント等が挙げられる。ポルトランドセメントとしては、低熱、中庸熱、普通、早強、超早強、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。また、混合セメントとしては、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等が挙げられる。
【0092】
<骨材(K)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、骨材(K)を含む。該骨材(K)が結合水を含む場合、骨材(K)の結合水の水含有率は、特に限定されないが、例えば、0.10質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましく、0.30質量%以上であることが更に好ましく、0.40質量%以上であることが最も好ましい。また、骨材(K)の結合水の水含有率は、5.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが最も好ましい。骨材(K)の結合水の水含有量は、特に限定されないが、例えば、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることが更に好ましく、1.5質量部以上であることが最も好ましい。また、骨材(K)の結合水の水含有量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることが更に好ましく、2.0質量部以下であることが最も好ましい。
骨材(K)としては、特に限定されず、モルタルやコンクリートで使用されるものを用いることができる。骨材としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、砕石、砂岩、寒水石、大理石、石英、石灰石、硅砂、硅石、川砂などが挙げられる。また、軽量化の観点から、焼結頁岩、珪酸系バルーン、非珪酸系バルーンパーライトなどの軽量骨材も用いることができる。
【0093】
炭酸カルシウムは、塗膜中にあって透明で被塗面 (基板表面)を隠さない体質顔料として機能し、凹部の充填性、塗料コストの低減などの働きを有している。この炭酸カルシウムとして、上市されているものとしては、例えば、TM-2(有恒鉱業(株)製)があげられる。
炭酸カルシウムは、特定の粒度分布を有し、分散性に優れ、多孔質でもあるため、骨材自体の比重を低下させてダレにくくさせたり、成膜性を向上させることができる。
【0094】
珪酸系バルーンとしては、シラスバルーン、パーライト、ガラス(シリカ)パル一ン、フライアッシュバルーン等が挙げられる。非珪酸系バルーンとして、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の組成物における骨材(K)の含有量は、特に限定されないが、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは200質量部~900質量部、より好ましくは250質量部~800質量部、さらに好ましくは300~500質量部である。特に、骨材の含有量が200質量部以上であれば、実用的な流動性を確保することができる。また、骨材の含有量が900質量部以下であれば、コテ付着量が少なくなり、作業性の低下を防止することができる。
【0096】
<繊維(L)>
本実施形態のラジカル重合性組成物は、必要に応じ、繊維を含有してもよい。本実施形態で用いうる繊維の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、セルロース繊維、スチール繊維等の金属繊維、アルミナ繊維等のセラミック繊維等が挙げられる。中でも例えば、揺変剤としてポリオレフィン繊維を用いることができる。揺変剤(チクソトロピー性付与剤)とは、揺変性を付与する目的で配合されるものである。
【0097】
ポリオレフィン繊維として現在市販されているものとしては、ポリエチレン系としてケミベスト(登録商標)FDSS-2(平均繊維長0.6mm)、ケミベスト(登録商標)FDSS-5(平均繊維長0.1mm)、ケミベスト(登録商標)FDSS-25(平均繊維長0.6mm、親水性化品)、ケミベスト(登録商標)FDSS-50(平均繊維長0.1mm、親水性化品)等の商標名の製品(何れも三井石油化学工業(株)製)がある。
【0098】
炭素繊維は特に限定されず、既知の炭素繊維のいずれのものでも使用することができる。その例として、ポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等を挙げることができる。炭素繊維は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用してよい。安価なコストと良好な機械的特性の観点から、PAN系炭素繊維を使用することが好ましい。そのような炭素繊維は、市販品として入手可能である。炭素繊維として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用してもよい。
【0099】
炭素繊維の直径は、好ましくは3~15μm、より好ましくは5~10μmである。炭素繊維の長さは、通常5~100mmである。本実施形態では、炭素繊維を、10.0mm~100.0mm、更には12.5mm~50.0mmにカットして使用してよい。
【0100】
これらの繊維は、例えば、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、およびこれらの複合構造物等から選ばれる繊維構造体、二軸メッシュ、三軸メッシュの形態で使用することが好ましい。例えば、前記繊維構造体にラジカル重合性組成物を含浸し、場合によっては予備重合してプリプレグ化して使用できる。
メッシュとしては、例えば、二軸メッシュ、三軸メッシュが使用される。二軸メッシュの正方形の一辺の長さ(目合)及び三軸メッシュの正三角形の一辺の長さ(目合)は、それぞれ5mm以上が好ましく、10~20mmがより好ましい。二軸メッシュ又は三軸メッシュを使用することにより軽量で経済性、施工性、耐久性に優れたコンクリート剥落防止用硬化性材料を得ることができる。
これらの繊維は、コンクリート剥落防止性、FRP防水性などの塗膜性能を補強したり、FRP成形品を製造したりする場合に使用することが好ましい。
コンクリート剥落防止等の用途では、繊維の中でも透明性に優れるガラス繊維やセルロース繊維等が、下地の劣化状態を外側から目視で検査できるという点から好ましい。
【0101】
このような繊維の含有量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、0.3~200質量部であることが好ましく、0.5~100質量部であることがより好ましく、1.0~50質量部であることが更に好ましい。
【0102】
<減水剤(M)>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて、減水性状を付与できる使用可能な減水剤(M)を含んでも良い。減水剤としては、液体状又は粉末状の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等のコンクリートに用いられる減水剤として公知のものを制限なく適用できる。

ポリカルボン酸系の減水剤は、前述した膨潤性を有するアルミノシリケートの添加に伴うコンクリートの流動性の低下を抑制することができ、流動性を良好に維持して作業性を向上させる観点からも好適である。
ナフタレンスルホン酸系の減水剤は、分散能が高く、減水効果が高いため、作業性を向上させる観点から好適である。
【0103】
減水剤は、第2ラジカル重合性樹脂組成物中、0.1~3.0質量%含まれると好ましい。
【0104】
<その他の成分>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、硬化体の強度発現性や耐酸性状に特段の支障を及ぼさない限り、前記成分以外の成分を含有してもよい。含有可能な成分としては、例えば、硫酸カルシウムやポゾラン物質等の水硬性無機物質の他、例えば凝結調整、硬化促進、硬化遅延、増粘、保水、消泡、撥水、防水等の性状を付与できるモルタル又はコンクリートに使用可能な混和剤、金属や高分子や炭素等の材質からなる繊維、顔料、増量材、発泡材、ゼオライト等の粘土鉱物等のモルタル又はコンクリートに使用可能な混和材を挙げることができる。また、含有可能な成分としては、カップリング剤、可塑剤、陰イオン固定化成分、溶剤、ポリイソシアナト化合物、界面活性剤、湿潤分散剤、ワックス、揺変剤等が挙げられる。
【0105】
〔カップリング剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、加工性を向上させることを目的として、また基材への密着性を向上させること等を目的として、カップリング剤を使用してもよい。カップリング剤としては、公知のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
このようなカップリング剤としては、例えば、R-Si(ORで表される第2シランカップリング剤を挙げることができる。なお、Rとしては、例えば、アミノプロピル基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基、ビニル基等が挙げられ、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
第2ラジカル重合性樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部である。
【0106】
〔可塑剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、必要に応じて可塑剤を配合することができる。可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。
中でも、該ラジカル重合性組成物の粘度及び該組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できることから、数平均分子量500~15000の重合体である高分子可塑剤を添加することが好ましい。また、当該高分子可塑剤は、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できるため好適である。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
上記高分子可塑剤の数平均分子量は、より好ましくは800~10000であり、さらに好ましくは1000~8000である。数平均分子量が500以上であると熱や降雨および水の影響による可塑剤の継時的な流出を抑制し、初期物性を長期にわたり維持することができる。また、数平均分子量が15000以下であれば粘度上昇を抑制して十分な作業性を確保することができる。
【0107】
〔陰イオン固定化成分〕
また、塩化物イオンなどの陰イオンを固定化するために、ハイドロタルサイト類、あるいはハイドロカルマイト類を用いることもできる。
これらのハイドロタルサイト類としては、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式(R)
【0108】
・Mg・AlCO(OH)xr+2y+3z-2・mHO (R)
【0109】
(式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を、xは0~6の数を、yは0~6の数、zは0.1~4の数を、rはMの価数を、mは0~100の結晶水の数である)で表される塩基性炭酸塩を挙げることができる。
また、ハイドロカルマイト類としては、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式(S)、(T)
【0110】
3CaO・Al・CaX・kHO (S)
【0111】
(Xは1価の陰イオン,k≦20)
【0112】
3CaO・Al・CaY・kHO (T)
【0113】
(Yは2価の陰イオン,k≦20)
で表されるものを挙げることができる。
【0114】
また、このカルマイト類には、製造段階で鉄筋の腐食抑制の効果があるとされる亜硝酸イオン(NO )を担持させているが、担持できる陰イオンの例として、硝酸イオン(NO )、水酸化物イオン(OH)、シュウ酸イオン(CHCOO)、炭酸イオン(CO )、硫酸イオン(SO 2-)などがある。
【0115】
これらのハイドロタルサイト類、あるいはハイドロカルマイト類は、単体で使用しても良いが、ペースト内に混ぜ込むことで使用することができる。
ペーストに混合させた場合は、水和反応時に共存する水酸化物イオン(OH)がカルマイトの特徴である陰イオン交換反応に様々な影響を与えることが想定される。目的とした塩化物イオンとの交換反応を保持する観点において、亜硝酸イオンを担持させたハイドロカルマイト類が良い。
【0116】
〔溶剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物には、必要に応じて溶剤を配合することができる。配合できる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
【0117】
〔ポリイソシアナト化合物〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物はポリイソシアナト化合物を含んでもよい。ポリイソシアナト化合物は第2ラジカル重合性化合物(A-2)の水酸基と反応して硬化塗膜を形成する。
前記ポリイソシアナト化合物は、分子中にイソシアナト基を2個以上含有するものであって、該イソシアナト基はブロック剤等でブロック化されていてもよい。
ブロック剤でブロック化されていないポリイソシアナト化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等のポリイソシアネート、及びこれらの各ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂若しくは水等との付加物、上記したジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートが好ましい。
これらのポリイソシアナト化合物は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
第2ラジカル重合性樹脂組成物がポリイソシアナト化合物を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~50質量部、より好ましくは1~30質量部、更に好ましくは2~20質量部である。
【0119】
ブロック化ポリイソシアナト化合物は、上記ポリイソシアナト化合物のイソシアナト基をブロック化剤でブロック化したものである。
ブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系;ε-カプロラクタム;δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等ラクタム系;メタノール、エタノール、n-又はiso-プロピルアルコール、n-、iso-又はtert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等オキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等のブロック化剤が挙げられる。前記ポリイソシアネートと前記ブロック化剤とを混合することによって容易にポリイソシアネートのイソシアナト基をブロック化することができる。
【0120】
ポリイソシアナト化合物がブロック化されていないポリイソシアナト化合物である場合、本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物中の第2ラジカル重合性化合物(A-2)とポリイソシアナト化合物とを混合すると両者の反応が起こるため、使用前までは第2ラジカル重合性化合物(A-2)とポリイソシアナト化合物とを分離しておき、使用時に両者を混合することが好ましい。
なお、第2ラジカル重合性化合物(A-2)とポリイソシアナト化合物を反応させるため、硬化触媒を用いることができる。好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2-エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒等を挙げることができる。
第2ラジカル重合性樹脂組成物が前記硬化触媒量を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~5質量部、より好ましくは0.05~4質量部である。
【0121】
〔界面活性剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、界面活性剤を含有しても良い。
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの界面活性剤の中でも陰イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0122】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ステアリン酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸塩;ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊高分子系等が挙げられる。
【0123】
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタンモノラウリレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
これらの中では、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。また、非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophil Balance)は、5~15が好ましく、6~12より好ましい。
【0124】
第2ラジカル重合性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~7質量部、更に好ましくは0.1~5質量部である。
【0125】
〔湿潤分散剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、例えば、湿潤又は水没した被修復箇所に対する浸透性を向上させるために湿潤分散剤を含んでいてもよい。
湿潤分散剤としては、フッ素系湿潤分散剤及びシリコーン系湿潤分散剤が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素系の湿潤分散剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F176、メガファック(登録商標)R08(大日本インキ化学工業株式会社製)、PF656、PF6320(OMNOVA社製)、トロイゾルS-366(トロイケミカル株式会社製)、フロラードFC430(スリーエム ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
シリコーン系湿潤分散剤の市販品としては、BYK(登録商標)-322、BYK(登録商標)-377、BYK(登録商標)-UV3570、BYK(登録商標)-330、BYK(登録商標)-302、BYK(登録商標)-UV3500,BYK-306(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0126】
また、シリコーン系湿潤分散剤は、下記式(U)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0127】
【化2】
【0128】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1~12の芳香環を含んでもよい炭化水素基、又は-(CHO(CO)(CHCH(CH)O)R’を示し、nは1~200の整数、R’は炭素原子数が1~12のアルキル基を示し、p及びqはそれぞれ整数であり、かつ、q/p=0~10を満たす。)
なお、前記式(U)で表される化合物を含むシリコーン系湿潤分散剤の市販品としては、BYK(登録商標)-302及びBYK(登録商標)-322(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が湿潤分散剤を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対し、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.01~2質量部である。
【0129】
〔ワックス〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、ワックスを含んでいてもよい。
ワックスとしては、パラフィンワックス類、及び極性ワックス類が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラフィンワックス類としては、各種融点を有する公知のものを使用することができる。また、極性ワックス類としては、構造中に極性基及び非極性基を合わせ持つものを用いることができ、具体的には、NPS(登録商標)-8070、NPS(登録商標)-9125(日本精蝋株式会社製)、エマノーン(登録商標)3199、エマノーン(登録商標)3299(花王株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物がワックスを含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05~4質量部、より好ましくは0.1~2.0質量部である。
【0130】
〔第2揺変剤〕
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、垂直面や天井面での作業性確保のための粘度調整等を目的として第2揺変剤を使用してもよい。
第2揺変剤としては、無機系揺変剤及び有機系揺変剤を挙げることができ、有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系、及びこれらを併用した複合系が挙げられ、具体的には、DISPARLON(登録商標)6900-20X(楠本化成株式会社)等が挙げられる。
また、無機系揺変剤としては、シリカやベントナイト系が挙げられ、疎水性のものとして、レオロシール(登録商標)PM-20L(株式会社トクヤマ製の気相法シリカ)、アエロジル(登録商標)AEROSIL R-106(日本アエロジル株式会社)等が挙げられ、親水性のものとして、アエロジル(登録商標)AEROSIL-200(日本アエロジル株式会社)等が挙げられる。揺変性をより向上させる観点から、親水性の焼成シリカに、揺変性改質剤であるBYK(登録商標)-R605やBYK(登録商標)-R606(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を添加したものも好適に用いることができる。本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が、第2揺変剤を含有する場合、その量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、好ましくは、0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部が好ましい。
【0131】
<水>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物は、実用レベルの強度が得られる観点から、水を実質的に含まない。すなわち、第2ラジカル重合性樹脂組成物を調製する際に、水を組成物の構成成分として添加しない。例えば、第2ラジカル重合性樹脂組成物の含水量は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)の合計100質量部に対して、0.25質量部未満であることが好ましく、0.20質量部以下であることがより好ましく、0.15質量部以下であることがさらに好ましく、0.10質量部以下であることが最も好ましい。
【0132】
<第2ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、第2ラジカル重合性樹脂組成物は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)に、必要に応じて第2金属含有化合物(E-2)を混合し、さらに第2ラジカル重合開始剤(D-2)、骨材(K)、及び膨張材(J)を配合して混合することによって製造することができる。第2ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法において、水を添加する工程を含まないことが好ましい。水を添加すると、第2ラジカル重合性樹脂組成物に遊離水を含むようになり、第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物の圧縮強度が悪化される。ただし、骨材(K)等の原材料に含まれている結合水は、添加された遊離水と違って、硬化物の圧縮強度に影響することが少ない。
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法の一実施態様は、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)に、必要に応じて第2金属含有化合物(E-2)を混合し、混合物(2-i)を得る工程(2-S1)と、得られた混合物(2-i)に第2ラジカル重合開始剤(D-2)を混合し、混合物(2-ii)を得る工程(2-S2)と、得られた混合物(2-ii)に骨材(K)及び膨張材(J)を混合し、第2ラジカル重合性樹脂組成物を得る工程(2-S3)とを有する。
【0133】
前記混合物(2-i)を得る工程(2-S1)(単に「工程(2-S1)」とも言うことがある)において、第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)に、第2金属含有化合物(E-2)を混合する以外に、必要に応じて、さらに、第2重合禁止剤(H-2)や、第2硬化遅延剤(I-2)や、第2チオール化合物(F-2)などを混合してもよい。
第2ラジカル重合性樹脂組成物を得る工程(2-S3)(単に「工程(2-S3)」とも言うことがある)において、混合物(2-ii)を得る工程(2-S2)(単に「工程(2-S2)」とも言うことがある)で得られた混合物(2-ii)に、膨張材(J)及び骨材(K)を混合する以外に、必要に応じて、さらに、繊維(L)や、減水剤(M)などを混合してもよい。骨材(K)の具体例としては、例えば、9号珪砂、炭酸カルシウムTM-2、パーライトFL-0号、ハードライトB-04、遠州5.5号珪砂、N50珪砂、N40珪砂、N90珪砂、などを用いることができる。
【0134】
このようにして製造される第2ラジカル重合性樹脂組成物は、常温硬化が可能であり、作業性、早期強度発現性及び硬化性に優れている。膨張材(J)を有するので、硬化時の収縮率が小さく、条件によっては硬化物の膨張率を0より大きくすることができる。
【0135】
[凹部充填材キットの硬化物]
本実施形態の凹部充填材キットの硬化物は、前記第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物である第1硬化物と前記第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物である第2硬化物とを有する。凹部の表面に前記第1硬化物が形成され、前記第1硬化物の表面に前記第2硬化物が形成されるように、前記凹部に凹部充填材キットの硬化物が形成される。
【0136】
<第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物>
本実施形態の第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物は、上記の第1ラジカル重合性樹脂組成物を硬化することによって得られる。
【0137】
「第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化方法」
例えば、第1ラジカル重合性樹脂組成物が熱ラジカル重合開始剤を含有する場合、後述の第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化方法と同じ方法も用いることができる。
【0138】
<第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物は、上記の第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化することによって得られる。
【0139】
「第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化方法」
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が熱ラジカル重合開始剤(D-21)を含有する場合には、本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化方法の一例としては、本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物を基材の表面に塗布し、室温で硬化させる硬化方法が挙げられる。例えば、本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物を、無機構造物の凹部充填材として用いる。本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が膨張材(J)を含むことより、得られた硬化物は、一定の時間を経過しても、従来のように大きく収縮しない。
基材の材料としては、コンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、レンガ、木材、金属の他、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の熱硬化性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0140】
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物が光ラジカル重合開始剤(D-22)を含有する場合には、光硬化のタイミングとしては、第2ラジカル重合性樹脂組成物を基材に塗布した後に光硬化させる方法や、第2ラジカル重合性樹脂組成物を予め予備重合(Bステージ化あるいはプリプレグ化ともいう)したシートを作製し、そのシートを基材に張り付けてから光硬化させる方法などがある。
【0141】
光源としては、光ラジカル重合開始剤(D-22)の感光波長域に分光分布を有する光源であれば良く、例えば、太陽光、紫外線ランプ、近赤外ランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、メタルハライドランプ、LEDなどを使用することができる。また、2種以上の光ラジカル重合開始剤(D-22)を併用し、光源に波長カットフィルターを使用したり、LEDの特定波長を利用したりして、予備重合と本重合に必要な波長を使い分けることもできる。予備重合に使用する波長は、エネルギーレベルの低い長波長が望ましく、特に近赤外光を使用すると重合度を制御しやすい。本実施形態においては、紫外光(紫外線)とは280~380nm、可視光(可視線)とは380~780nm、近赤外光(近赤外線)とは780~1200nmの波長領域の光線を指す。予備重合に必要なランプの照射時間は、光源の有効波長域、出力、照射距離、組成物の厚さ等が影響するため一概に規定できないが、例えば0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上照射すれば良い。
【0142】
[凹部充填法(凹部へのモルタル充填工法)]
本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法は、充填が必要とされる土木工事、建築工事において広く用いることができる。また、凹部を構成する素材としては、コンクリート製部材と、金属製部材と、樹脂製部材のいずれか1つ以上を含む構造物であればよい。また、凹部は、材料の収縮を考えた際、10cm角の立方体が最も適当であるため、例示しているにすぎず、その形状は、立方体であっても、直方体であっても、球状であっても、円錐体であっても良い。
【0143】
本実施形態に係る凹部が発生する構造物として、材質を問わなく、例えば、トンネル、マンホール、水路、管路、ガードレール、標識、アンカーボルト、ロックボルト、鉄筋構造物などが挙げられる。あるいは、過去に補修した部分における再補修箇所で、セメントコンクリートでの補修箇所、ポリマーセメントモルタルでの補修箇所、エポキシ樹脂モルタルやウレタン樹脂での補修箇所、鉄板補強部などが挙げられる。
【0144】
本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法のその他の一実施形態は、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、下地層を形成する下地層形成工程と、前記凹部の表面に形成された前記下地層の表面に、第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する充填工程とを有する。
【0145】
本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法のその他の一実施形態は、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物を一部あるいは全部に塗布する工程と、第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化する工程と、を有する。
【0146】
本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法の一実施形態は、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物を一部あるいは全部に塗布する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物を硬化し、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物層を形成する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物層を有する凹部に、第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する工程と、第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化する工程と、を有してもよい。
【0147】
また、本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法のその他の一実施形態は、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物を一部あるいは全部に塗布する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物を乾燥若しくは半硬化し、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物層若しくは半硬化層を形成する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物層若しくは半硬化層を有する凹部に、第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化する工程と、を有してもよい。
【0148】
また、本実施形態の凹部充填法、あるいは凹部へのモルタル充填工法のその他の一実施形態は、凹部の表面に第1ラジカル重合性樹脂組成物を一部あるいは全部に塗布する工程と、第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する工程と、第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物を硬化する工程と、を有してもよい。
【0149】
前記凹部が、例えば、ボルトボックスである場合、上記凹部充填法でボルトボックス充填を行ることができる。
例えば、ボルトボックス充填法は、ボルトボックスの表面に前記第1ラジカル重合性樹脂組成物を塗布し、下地層を形成する下地層形成工程と、前記ボルトボックスの表面に形成された前記下地層の表面に、前記第2ラジカル重合性樹脂組成物を充填する充填工程とを有してもよい。
【実施例
【0150】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0151】
実施例及び比較例における各第1ラジカル重合性樹脂組成物及び第2ラジカル重合性樹脂組成物の製造に用いた原料は以下のとおりである。
【0152】
<第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)>
(合成例1)
[ラジカル重合性化合物(A-i)の合成及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)との混合]
撹拌機、還流冷却管、気体導入管及び温度計を備えた容量1Lの4つ口セパラブルフラスコに、SR-16H(阪本薬品工業社製 1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;エポキシ当量157)386.3g、メチルハイドロキノン0.30g、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(「セイクオールTDMP」、精工化学株式会社製)を1.80g入れて110℃まで昇温した。メタクリル酸211.6gを約30分かけて滴下した後、130℃に昇温し、酸価が20mg/KOHgとなるまで、約4時間反応させて、ラジカル重合性化合物(A-i)であるビニルエステル樹脂を合成した。
次いで、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)としてジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(「FA-512MT」、日立化成株式会社製)400.0gを加えることで、25℃での粘度が250mPa・s、ラジカル重合性化合物(A-i)成分比率が60質量%のノンスチレン型の混合物1000.0gを得た。
【0153】
[ラジカル重合性化合物(A-ii)]
ビニルエステル樹脂として、リポキシ(登録商標)R-806(昭和電工株式会社製、第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)としてスチレン含有量45質量%)を用いた。
【0154】
<第1ラジカル重合開始剤(D-1)>
熱ラジカル重合開始剤(D-i)として、パークミル(登録商標)H-80(クメンヒドロペルオキシド(CHP)、日油株式会社製)を用いた。
熱ラジカル重合開始剤(D-ii)として、パーメック(登録商標)N(メチルエチルケトンパーオキサイド、日油株式会社製)を用いた。
熱ラジカル重合開始剤(D-iii)として、パークミル(登録商標)P(ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、日油株式会社製)を用いた。
【0155】
<第1金属含有化合物(E-1)>
金属石鹸(E-i)としてオクチル酸マンガン(東栄化工株式会社製、ヘキソエートマンガン、製品全量中のマンガンの含有量6質量%、分子量341.35)を用いた。
金属石鹸(E-ii)としてオクチル酸コバルト(東栄化工株式会社製、ヘキソエートコバルト、製品全量中のコバルトの含有量8質量%、分子量345.34)を用いた。
【0156】
<第1チオール化合物(F-1)>
2級チオール化合物(F-i)として、2官能2級チオールである、昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)BD1(1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、分子量299.43)を用いた。
【0157】
<第1重合禁止剤H-1>
重合禁止剤(H-i)として、ターシャリーブチルカテコール(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0158】
<第1硬化遅延剤(I-1)>
第1硬化遅延剤(I-i)として、4-H-TEMPO(伯東株式会社製、ポリストップ7300P、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル フリーラジカル)を用いた。
【0159】
<第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)>
(合成例2)
[ラジカル重合性化合物(A-iii)の合成及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)との混合]
撹拌機、還流冷却管、気体導入管及び温度計のついた容量1Lの四つ口セパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「エポミック(登録商標)R140P」、三井化学株式会社製;エポキシ当量188)179.0g、デナコールEX-212(ナガセケムテックス株式会社製 1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;エポキシ当量150)214.2g、メチルハイドロキノンを0.30g、DMP-30(東京化成工業社製:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)1.80gを添加し、110℃まで昇温した。110℃まで昇温後、メタクリル酸(三菱レイヨン株式会社製)204.7gを約30分かけて滴下後、130℃に昇温し、酸価が14mg/KOHgとなるまで、約4時間反応させて、ラジカル重合性化合物(A-iii)であるビニルエステル樹脂を合成した。
次いで、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)として、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ-ト(日立化成株式会社製、FA-512MT)を300.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社製、FA-513M)を100.0g加えることで、25℃での粘度が280mPa・s、ラジカル重合性化合物(A-iii)成分比率が60質量%のノンスチレン型の混合物1000.0gを得た。
【0160】
[ラジカル重合性化合物(A-iv)]
不飽和ポリエステル樹脂として、リゴラック(登録商標)SR-110N(昭和電工株式会社、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)としてスチレン含有量40質量%)を用いた。
【0161】
(合成例3)
[ラジカル重合性化合物(A-v)の合成及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)との混合]
撹拌機、還流冷却管、気体導入管及び温度計のついた容量1Lの四つ口セパラブルフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT 東ソー株式会社製)170.44g、アデカポリエーテルP-400(ポリエーテルジオール 株式会社ADEKA製)136.35g、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT 東京化成工業株式会社製):0.11g、ジブチル錫ジラウレート(共同薬品株式会社製 KS-1260):0.02g添加し、60℃で3時間反応させた。次いで、その反応物に2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA 日本触媒株式会社製)93.08gを30分かけて滴下しながら撹拌し、滴下終了後約3時間反応させて、ラジカル重合性化合物(A-v)であるウレタンメタクリレート樹脂を合成した。
次いで、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)として、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ-ト(日立化成株式会社製、FA-512MT):600.0gを加えることで、25℃での粘度が420mPa・sのラジカル重合性化合物(A-v)成分比率が40質量%のノンスチレン型の混合物1000.0gを得た。
【0162】
(合成例4)
[ラジカル重合性化合物(A-vi)の合成及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)との混合]
撹拌機、還流冷却管、気体導入管及び温度計のついた容量1Lの四つ口セパラブルフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT 東ソー株式会社製)140.95g、アクトコールD-1000(ポリプロピレングリコール 三井化学株式会社製)281.91g、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT 東京化成工業株式会社製):0.15g、ジオクチル錫ジラウレート(日東化成株式会社製 ネオスタンU-810):0.03g添加し、70℃で2時間反応させた。次いで、その反応物に2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA 日本触媒株式会社製)76.96gを30分間かけて滴下しながら撹拌し、滴下終了後約3時間反応させて、ラジカル重合性化合物(A-vi)であるウレタンメタクリレート樹脂を合成した。
次いで、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)として、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO 共栄社化学株式会社製):150.0g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ-ト(FA-512MT、日立化成株式会社製):350.0gを加えることで、25℃での粘度が570mPa・sのラジカル重合性化合物(A-vi)成分比率が50質量%のノンスチレン型の混合物1000.0gを得た。
【0163】
(合成例5)
[ラジカル重合性化合物(A-vii)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)との混合]
撹拌機、還流冷却管、気体導入管及び温度計のついた容量1Lの四つ口セパラブルフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT 東ソー株式会社製)135.72g、アデカポリエーテルP-400(ポリエーテルジオール 株式会社ADEKA製)54.28g、アクトコールD-1000(ポリプロピレングリコール 三井化学株式会社製)135.72g、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT 東京化成工業株式会社製):0.15g、ジオクチル錫ジラウレート(日東化成株式会社製 ネオスタンU-810):0.03g添加し、70℃で2時間反応させた。次いで、その反応物に2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA 日本触媒株式会社製)74.10gを30分間かけて滴下しながら撹拌し、滴下終了後約3時間反応させて、ラジカル重合性化合物(A-vii)であるウレタンメタクリレート樹脂を合成した。
次いで、第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)として、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL 共栄社化学株式会社製):150.0g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ-ト(FA-512MT、日立化成株式会社製):450.0gを加えることで、25℃での粘度が320mPa・sのラジカル重合性化合物(A-vii)成分比率が40質量%のノンスチレン型の混合物1000.0gを得た。
【0164】
<第2ラジカル重合開始剤(D-2)>
熱ラジカル重合開始剤(D-i)として、パークミル(登録商標)H-80(クメンヒドロペルオキシド(CHP)、日油株式会社製)を用いた。
熱ラジカル重合開始剤(D-ii)として、パーメック(登録商標)N(メチルエチルケトンパーオキサイド、日油株式会社製)を用いた。
熱ラジカル重合開始剤(D-iii)として、パークミル(登録商標)P(ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、日油株式会社製)を用いた。
【0165】
<第2金属含有化合物(E-2)>
金属石鹸(E-i)としてオクチル酸マンガン(東栄化工株式会社製、ヘキソエートマンガン、製品全量中のマンガンの含有量6質量%、分子量341.35)を用いた。
金属石鹸(E-ii)としてオクチル酸コバルト(東栄化工株式会社製、ヘキソエートコバルト、製品全量中のコバルトの含有量8質量%、分子量345.34)を用いた。
【0166】
<第2チオール化合物(F-2)>
2級チオール化合物(F-i)として、2官能2級チオールである、昭和電工株式会社製、カレンズMT(登録商標)BD1(1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、分子量299.43)を用いた。
【0167】
<第2重合禁止剤(H-2)>
重合禁止剤(H-i)として、ターシャリーブチルカテコール(東京化成工業株式会社製)を用いた。
重合禁止剤(H-ii)として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0168】
<第2硬化遅延剤(I-2)>
第2硬化遅延剤(I-i)として、4-H-TEMPO(伯東株式会社製、ポリストップ7300P、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル フリーラジカル)を用いた。
【0169】
<膨張材(J)>
膨張材(J-i)として、デンカパワーCSA タイプS(生石灰-エトリンガイト複合系膨張材、デンカ製)を用いた。
膨張材(J-ii)として、N-EX(生石灰系膨張材、太平洋マテリアル株式会社製)を用いた。
【0170】
<骨材(K)>
9号珪砂
炭酸カルシウム TM-2
パーライト FL-0号
ハードライト B-04
遠州5.5号珪砂
N50 珪砂
N40 珪砂
【0171】
<繊維(L)>
ケミベスト(登録商標)FDSS-5(三井化学ファイン(株)製、ポリオレフィン製の多分岐繊維)
【0172】
(実施例1~6、比較例1~2)
「第1ラジカル重合性樹脂組成物の調整」
(1)樹脂調整工程(1-S1):
第1ラジカル重合性化合物(A-1)及び第1ラジカル重合性不飽和単量体(B-1)の混合物に、表1に示した配合量において、第1金属含有化合物(E-1)、第1チオール化合物(F-1)、第1重合禁止剤(H-1)、第1硬化遅延剤(I-1)をよく混合し、混合物(1-i)を調製した。
(2)酸性化合物混合工程(1-S2):
工程(1-S1)で得られた混合物(1-i)に、表1に示した配合量において、酸性化合物(C)を混合することでを混合し、混合物(1-ii)を調製した。
(3)硬化剤混合工程(1-S3):
工程(1-S2)で得られた混合物(1-ii)に、表1に示した配合量において、第1ラジカル重合開始剤(D-1)を混合し、第1ラジカル重合性樹脂組成物(硬化性プライマー)を調製した。
【0173】
表1に示す実施例1~6、比較例1~2の各原料の配合量で、上記方法で得られた第1ラジカル重合性樹脂組成物PC-1~PC-6、cPC-1~cPC-2では、下記方法にしたがって各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
「第2ラジカル重合性樹脂組成物の調整」
(1)樹脂調整工程(2-S1):
第2ラジカル重合性化合物(A-2)及び第2ラジカル重合性不飽和単量体(B-2)に、表1に示した配合量において、第2金属含有化合物(E-2)、第2チオール化合物(F-2)、第2重合禁止剤(H-2)、第2硬化遅延剤(I-2)をよく混合し、混合物(2-i)を調製した。
(2)硬化剤混合工程(2-S2):
工程(2-S1)で得られた混合物(2-i)に、表1に示した配合量において、第2ラジカル重合開始剤(D-2)を混合し、混合物(2-ii)を調製した。
(3)骨材混合工程(2-S3):
工程(2-S2)で得られた混合物(2-ii)に、表1に示した各成分及び配合量において、膨張材(J)、骨材(K)、繊維(L)をよく混合し、本実施例の第2ラジカル重合性樹脂組成物を得た。
【0176】
各工程での混合条件は以下のとおりである。
攪拌機:HOMOGENIZING DISPER Model 2.5(プライミクス社製)
攪拌回転速度:1000~5000rpm
温度:25℃
【0177】
表2に示す実施例7~16、比較例3~4の各原料の配合量で、上記方法で得られた第2ラジカル重合性樹脂組成物RC-1~RC-10、cRC-1~cRC-2では、下記方法にしたがって各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0178】
【表2】
【0179】
<硬化性試験(ゲル化時間、硬化時間、及び硬化温度の測定)>
表1に記載された実施例1~6、および比較例1~2の第1ラジカル重合性樹脂組成物PC-1~PC-6、cPC-1~cPC-2を25℃の条件下で試験管(外径18mm、長さ165mm)に底から100mmまで入れ、熱電対を用いて温度を測定した。
ラジカル重合性樹脂組成物の温度が25℃から30℃になるまでにかかった時間をゲル化時間とした。また、25℃からラジカル重合性樹脂組成物が最高発熱温度に到達するまでの時間を硬化時間、最高発熱温度を硬化温度と定義し、JIS K 6901:2008に準じて測定した。
なお、ラジカル重合性樹脂組成物は、測定前の段階で予め25℃に調整されている。結果を表1に示す。
【0180】
<付着強さ試験>
300mm×300mm×5mmのステンレス板(SUS304)の上面に、実施例1~6と比較例1~2で得られた第1ラジカル重合性樹脂組成物(硬化性プライマー)を刷毛で150g/m塗布し、温度25℃、湿度50%にて1日間養生し、その後付着強さ試験を行った。付着強さ試験は、Elcometer社製106プルオフ式付着性試験機を用いて各試験体の付着強さ試験を行い、3つの試験体の平均値を結果として示した。付着強さ試験は、躯体への接着性の観点から、付着強度1.0N/mm以上を「〇」、付着強度1.0N/mm未満を「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0181】
<粘度測定>
樹脂粘度はE型粘度計 RE85U(東機産業株式会社製)、コーンプレート1°34’×R24(標準)を用いて25℃、50rpmにて測定した。結果を表1に示す。
【0182】
<圧縮強度試験>
表2に記載された実施例7~16、および比較例3~4の第2ラジカル重合性樹脂組成物(樹脂モルタル組成物)RC-1~RC-10、cRC-1~cRC-2それぞれについて、下記方法にしたがって圧縮強度値の評価を行った。結果を表2に示す。
圧縮強度試験用の供試体は、JIS A 1132:2020に準拠して作製した。 また、供試体の寸法は直径50mmで、高さ100mmとし、供試体作製用に用いた型は鋼鉄製の型を用いた。試験の装置は島津コンクリート圧縮強度試験機「CCM-1000kNI」(島津製作所製)を用いて、各供試体を作製してから、養生6時間、1日、3日、7日に試験を実施した。
【0183】
<硬化収縮の測定方法>
本実施形態の第2ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物に対して、硬化後の収縮・膨張率(変化率:負数が収縮率、正数が膨張率である)を、日本規格JIS A 1129-3(ダイヤルゲージ法)に準拠して測定した。成形体(硬化物)の作製方法は、日本規格JIS A 1129の付属書Aを参照にして成形を行った。型枠は日本規格JIS R 5201に規定する40×40×160mmの供試体用の型枠を使用した。硬化物の供試体は、JIS R 5201の10に規定する強さ試験用の供試体の作り方によって成形し、成形後は型枠のまま、温度23℃±2℃、湿度50%の室内で静置(養生)し、成形後約24時間で脱型した。そして、JIS A 1129-3の3に示された器具を用いて、JIS A 1129-3の4.3に示された条件で測定をスタートした(時間を0とする)。
【0184】
変化量(負数:収縮量、正数:膨張量)=経過時の長辺長さ ― スタート時(0時)の長辺長さ(160mm) (1)
【0185】
変化率(負数:収縮率、正数:膨張率)=変化量/スタート時(0時)の長辺長さ(160mm) (2)
【0186】
結果を表2に示す。
【0187】
<第1ラジカル重合性化合物と第2ラジカル重合性組成物の組合せ>
以下、第1ラジカル重合性化合物と第2ラジカル重合性組成物の組み合わせた試験方法と結果について記載する。
【0188】
(実施例17~23、比較例5~6)
<5面拘束試験について>
5面拘束試験に使用するコンクリート製の型は、近江化学商事株式会社(アールデ)のゼロキューブL(10cm×10cm×高さ9cm)を用いた。なお、園芸用の植木鉢に使用する鉢なので、底面に直径2cm程度の穴があいている。
下記に示す単純な5面拘束試験を実施する場合は、適当なコンクリートの板を使って、底の穴をふさいでから使用する。
【0189】
得られた第1ラジカル重合性樹脂組成物(プライマー組成物)PC-1、PC-2、PC-4、PC-6、cPC-1と、第2ラジカル重合性樹脂組成物(樹脂モルタル組成物)RC-1、RC-2,RC-7,RC-8,RC-9,RC-10,cRC-1を用いた。まず、上記コンクリート製の方の内壁に第1ラジカル重合性樹脂組成物を塗布量0.3kg/mで塗布した。次いで、第2ラジカル重合性樹脂組成物を隙間なく詰めて、25℃、24時間養生し、試験体を作製した。下記評価基準に従って、試験体を評価した。次に、乾湿繰り返し試験として、乾燥条件(温度15℃、湿度60%を4日間)と湿潤条件(温度60℃、湿度90%を3日間)を1サイクルとして、30サイクル繰り返した後の試験体を、下記評価基準に従って、評価した。同様にして、温冷繰り返し試験として、水没条件(温度25℃、水中養生を18時間)と冷却条件(温度-20℃を3時間)と加熱条件(温度50℃を3時間)を1サイクルとして、30サイクル繰り返した後の試験体を、下記評価基準に従って、評価した。
表3に示す各実施例17~23及び比較例5~6の組み合わせについて、上記方法にしたがって、5面拘束試験の評価を行った。評価基準を以下に示す。
なお、ひび割れと剥がれは目視で確認し、浮きは打音検査を実施し、音の高低で判断する。(浮いている場合、打音時に高音になる。)
【0190】
○:樹脂モルタルが密着した5面に対して接着した状態が続き、コンクリート製構造物側にひび割れ、浮きがないこと。また、樹脂モルタルとプライマーの側に剥がれが見られないこと
△:樹脂モルタルが密着した5面に対して接着した状態が続いているが、コンクリート製構造物側の1面にひび割れや浮きが見られること
×:5面拘束(接着)のうち、2面以上でひび割れ、浮きが見られること。また、1面以上で剥がれが見られること
【0191】
結果を表3に示す。
【0192】
【表3】
【0193】
(鉄筋引抜き試験)
「供試体の作製方法」
図1に示すように、JSTM C 2101T(引抜き試験による鉄筋とコンクリートとの付着強度試験方法)に準じて、一辺が10cmの型枠(2)を準備した。前記第1ラジカル重合性の組成物(硬化性プライマー)(3a)を塗布した異形鉄筋(1)D16を型枠(2)内に配置した。その状態で、前記第2ラジカル重合性組成物(4a)を型枠(2)内に隙間なく詰めた。
養生24時間後に型枠(2)を除去し、供試体を得た。得られた供試体について、下記の評価方法、評価基準に従って鉄筋引き抜き試験を行った。同様にして、乾湿繰り返し試験として、乾燥条件(温度15℃、湿度60%を4日間)と湿潤条件(温度60℃、湿度90%を3日間)を1サイクルとして、30サイクル繰り返した後の供試体についても、鉄筋引き抜き試験を行った。また、温冷繰り返し試験として、水没条件(温度25℃、水中養生を18時間)と冷却条件(温度-20℃を3時間)と加熱条件(温度50℃を3時間)を1サイクルとして、30サイクル繰り返した後の供試体についても、鉄筋引き抜き試験を行った。
【0194】
「試験装置」
株式会社前川試験機製作所のアムスラー万能試験機(MRタイプ)を用いて測定を実施した。
【0195】
「試験方法」
JSTM C 2101Tにより引張荷重を測定し、付着応力度を以下の式(3)により算定した。なお、付着応力度の算定に用いる引張荷重は、自由端のすべり量が0.002D(Dは鉄筋径)の時の測定値を採用した。
【0196】
γ=P/(4πD)×α (3)
【0197】
γ:付着応力度(N/mm
P:引張荷重(N)
D:鉄筋の直径(公称直径;D16の場合、16mm)
α:コンクリートの圧縮強度に対する補正計数(30/σc)
σc:同時に作製した円柱供試体の圧縮強度(N/mm
【0198】
「試験結果の評価方法」
JSTM C 2101Tの合格値とされている鉄筋のすべり量0.002D(=0.032mm)の際の付着応力度 2.0N/mm以上を〇とした。2.0N/mm未満は×とした。また、最大付着応力度は数値で示した。結果を表3に示す。
【0199】
なお、上記穴埋め工法では、ボルトボックスの穴埋め材として記述したが、応用として、ボックスカルバートや水路などのコンクリート構造物等の欠損部の補修用工法にも適用できる。
【符号の説明】
【0200】
1…鉄筋
2…型枠
3a…第1ラジカル重合性組成物
3b…第1ラジカル重合性組成物の硬化物
4a…第2ラジカル重合性組成物
4b…第2ラジカル重合性組成物の硬化物
5…容器
図1