(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】水性ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/40 20060101AFI20240220BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240220BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240220BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20240220BHJP
C09D 9/00 20060101ALI20240220BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240220BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240220BHJP
【FI】
B32B27/40
C08G18/42 008
C09D5/02
C09D5/20
C09D9/00
C09D175/06
C08J7/04 Z
(21)【出願番号】P 2023577805
(86)(22)【出願日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2023014561
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2022080590
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】若原 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】沖野 浩平
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115018(JP,A)
【文献】特開2017-14307(JP,A)
【文献】特開2018-104535(JP,A)
【文献】特開2015-218191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材A上に、水性ウレタン樹脂組成物が塗工されてなるプライマー層を有し、さらに前記プライマー層上に印刷インキ組成物が印刷されてなる印刷層を有する、積層体であって、
前記水性ウレタン樹脂組成物が、ウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)
を含有し、
前記ウレタン樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸(a1-1)を原料モノマーとして含む芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物からなり、
前記ウレタン樹脂(A)における前記芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度が、1mmol/g以上であり、
前記ウレタン樹脂(A)におけるエステル結合基濃度が、1mmol/g以上であり、
前記ウレタン樹脂(A)の酸価が8~45mgKOH/gである、
積層体。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート(a2)が、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の
積層体。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)の1g中に含有される前記ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーの質量を、前記ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーのNCO当量重量で除した値が、1.0~6.0mmol/gである、請求項1に記載の
積層体。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、10,000以上である、請求項1に記載の
積層体。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が、0~110℃である、請求項1に記載の
積層体。
【請求項6】
前記水性ウレタン樹脂組成物が、架橋剤を含有する、
請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材A上への前記水性ウレタン樹脂組成物の塗工方法が、前記基材Aの延伸工程途中に前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、その後さらに延伸工程を行うインラインコーティング法であるか、又は前記基材の延伸工程の後に、前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布し乾燥することで前記プライマー層を形成するオフラインコーティング法である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
電子機材、建材、繊維・皮革、家電製品、乗り物、家具、オフィス用品、遊具、スポーツ用品あるいはその部品の成型物として、または包装材料として用いる、
請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1に記載の積層体に対して、前記印刷層の前記基材Aが配置されている面とは反対側の面に、基材Bを配置し、前記基材Aと前記プライマー層と前記印刷層と前記基材Bとが積層してなる積層体。
【請求項10】
請求項1に記載の積層体に対して、アルカリ溶液で処理することにより前記プライマー層とともに印刷層を基材Aから脱離して得られるリサイクル基材Aの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の積層体に対して、アルカリ溶液で処理することにより前記プライマー層とともに印刷層及び/又は基材Bを基材Aから脱離して得られるリサイクル基材Aの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材から脱離可能なプライマー層を形成するための水性ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年海洋に廃棄・投棄されたプラスチックが海水中で分解されて微細化(マイクロプラスチック化)することに起因した海洋プラスチック問題が顕在化している。このマイクロプラスチックは海洋生物の体内に入り込み、濃縮され、食物連鎖を通して海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている。この海洋プラスチック問題を改善する方法の一つがリサイクルである。軟包材やプラスチックボトルなどの資源のリサイクル率を向上させることは、プラスチックが海洋へと混入するのを防ぐことにつながる。しかし、現在のリサイクルでは、プラスチック基材に印刷された印刷層が再生工程において脱離せず、プラスチックに混入することによって色相の悪化や物性の低下を引き起こし、再生プラスチックの価値を低下させているという課題が存在する。リサイクル工程でプラスチック基材から印刷層の脱離を可能としこの課題を解決することができれば、再生プラスチックの価値が向上し、新規リサイクル業者の参入や自治体の分別回収の整備につながる。これにより、リサイクル率が向上することで、海洋プラスチック問題が改善すると考えられる。そのためリサイクル工程において基材から印刷層を脱離できる方法の開発が求められている。
例えば、基材上に設けられたプライマー層が脱離可能であれば、プライマー層の上に形成された印刷層も取り除くことができる。したがって、基材から脱離可能な脱離用プライマー層の形成材料の開発も求められている。
ところで、プラスチック基材に対して広く使用される皮膜形成用材料は、作業者の健康や環境に対する影響を考慮し、トルエンフリー、メチルエチルケトン(MEK)フリーのものに代替が進んでいるため、上記課題を解決する材料もこのことを考慮して開発を進める必要がある。
【0003】
従来技術では、熱収縮性PETフィルムに対して印刷したスチレン-アクリル酸樹脂、フェノール樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂をビヒクルとして含む皮膜をアルカリ水で脱離する方法が開示されている(特許文献1)。また同様に熱収縮性PETフィルムに対してスチレン-マレイン酸樹脂、ロジン-マレイン酸樹脂、アクリル酸共重合系樹脂を含有したコート層を印刷層の間に配置し、そのコート層をアルカリ水で脱離する方法が開示されている(特許文献2及び特許文献3)。しかしながらこれら技術は特定の基材に対する特性しか担保されておらず、また容易な脱離法の提供という観点からは十分なものとはいえなかった。ポリオレフィンを含む汎用的なプラスチック基材に対して、簡便な方法で皮膜を脱離し、プラスチック基材から印刷層を容易に取り除くことができる、プラスチック基材のリサイクル方法を提供するには、検討の余地があった。
一方バインダー樹脂として酸価を有するウレタン樹脂を使用したアルカリ水脱離用有機溶剤系印刷インキも開示されている(特許文献4、特許文献5、及び特許文献6)。しかし、皮膜が脱離可能な材料として汎用的に使用するには、検討の余地があった。
【0004】
また、脱離可能なプライマー層に水性組成物を用いる方法が開示されている(特許文献7)。しかし、特許文献7では、プライマー層の剥離性は強アルカリかつ低温でも脱離が可能であると記載されており、即ち、特許文献7に記載の水性組成物を用いた場合には、日常生活において洗剤などの強アルカリ性の物質が印刷物に付着するなどの通常使用条件下においてもプライマー層である塗膜が剥離するという問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3822738号公報
【文献】特許第4653913号公報
【文献】特許第4451071号公報
【文献】特許第6638802号公報
【文献】特許第6631964号公報
【文献】特開2020-169280号公報
【文献】特許第6388131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述した海洋プラスチック問題と作業者の健康や環境に対する問題を同時に解決するために、汎用プラスチック基材に対して、簡便な方法でプライマー層を脱離し、プラスチック基材から印刷層を容易に取り除くことができるとともに、通常使用される温度条件下では、強アルカリ性の物質によりプライマー層は剥離されない、プライマー層を形成するための材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、脱離可能なプライマー層を形成する材料として、特定の水性ウレタン樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] ウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有する水性ウレタン樹脂組成物であって、
前記ウレタン樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸(a1-1)を原料モノマーとして含む芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物からなり、
前記ウレタン樹脂(A)における前記芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度が、1mmol/g以上であり、
前記ウレタン樹脂(A)におけるエステル結合基濃度が、1mmol/g以上であり、
前記ウレタン樹脂(A)の酸価が8~45mgKOH/gである、水性ウレタン樹脂組成物。
[2] 前記ポリイソシアネート(a2)が、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン樹脂(A)の1g中に含有される前記ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーの質量を、前記ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーのNCO当量重量で除した値が、1.0~6.0mmol/gである、[1]又は[2]に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
[4] 前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、10,000以上である、[1]又は[2]に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
[5] 前記ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が、0~110℃である、[1]又は[2]に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
[6] 基材A上に、[1]~[5]のいずれかに記載の水性ウレタン樹脂組成物が塗工されてなるプライマー層を有し、さらに前記プライマー層上に印刷インキ組成物が印刷されてなる印刷層を有する、積層体。
[7] 前記水性ウレタン樹脂組成物が、架橋剤を含有する、[6]に記載の積層体。
[8] 前記基材A上への前記水性ウレタン樹脂組成物の塗工方法が、前記基材Aの延伸工程途中に前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、その後さらに延伸工程を行うインラインコーティング法であるか、又は前記基材の延伸工程の後に、前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布し乾燥することで前記プライマー層を形成するオフラインコーティング法である [6]に記載の積層体。
[9] 電子機材、建材、繊維・皮革、家電製品、乗り物、家具、オフィス用品、遊具、スポーツ用品あるいはそれらの部品の成型物として、または包装材料として用いる、[6]に記載の積層体。
[10] [6]に記載の積層体に対して、前記印刷層の前記基材Aが配置されている面とは反対側の面に、基材Bを配置し、前記基材Aと前記プライマー層と前記印刷層と前記基材Bとが積層してなる積層体。
[11] [6]に記載の積層体に対して、アルカリ溶液で処理することにより前記プライマー層とともに印刷層を基材Aから脱離して得られるリサイクル基材Aの製造方法。
[12] [10]に記載の積層体に対して、アルカリ溶液で処理することにより前記プライマー層とともに印刷層及び/又は基材Bを基材Aから脱離して得られるリサイクル基材Aの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、汎用プラスチック基材に対して、簡便な方法でプライマー層を脱離し、プラスチック基材から印刷層を容易に取り除くことができるとともに、通常使用される温度条件下では、強アルカリ性の物質によりプライマー層は剥離されない、プライマー層を形成するための材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0011】
(水性ウレタン樹脂組成物)
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有する。
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、芳香族ジカルボン酸(a1-1)を原料モノマーとして含む芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と、必要に応じて鎖伸長剤等とを反応させて得られるウレタン樹脂(A)が、水性媒体(B)中に分散したものである。
ウレタン樹脂(A)における芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度は、1mmol/g以上である。
ウレタン樹脂(A)におけるエステル結合基濃度は、1mmol/g以上である。
ウレタン樹脂(A)の酸価は、8~45mgKOH/gである。
【0012】
<ウレタン樹脂(A)>
ウレタン樹脂(A)は、ウレタン結合(-NHCOO-)を有する高分子化合物の総称であり、本発明では、芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応(架橋・硬化反応)させて得られる反応物からなる。
ウレタン樹脂(A)は、芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)の他に、さらにその他のポリオール(a3)を含有してもよく、芳香族ポリエステルポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)、及びその他のポリオール(a3)との反応物であってもよい。
【0013】
<<芳香族ポリエステルポリオール(a1)>>
芳香族ポリエステルポリオール(a1)は、例えば、芳香族ジカルボン酸(a1-1)と、ポリオール(a1-2)とをエステル化反応させることによって製造することができる。
【0014】
芳香族ポリエステルポリオール(a1)を製造する際に使用することができる芳香族ジカルボン酸(a1-1)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-P,P’-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸やそれらの酸無水物又はエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸やそれらのエステル形成性誘導体、5-スルホイソフタル酸等のスルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸やそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0015】
また、かかる芳香族ジカルボン酸(a1-1)の他に、脂肪族カルボン酸や脂環族カルボン酸を併用することができる。例えばコハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、それらの無水物あるいはエステル形成性誘導体が挙げられる。これらは単独使用でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
ポリオール(a1-2)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール等を使用することができる。
【0017】
具体的には、芳香族ジカルボン酸(a1-1)と、ポリオール(a1-2)とを、必要に応じて触媒の存在下、窒素等の不活性気体で置換した反応容器中で常圧または減圧下で反応することができる。反応は、100℃~300℃の範囲で行うことが好ましい。
【0018】
触媒としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩や、亜鉛、マンガン、コバルト、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、ジルコニウム等を含む化合物等を使用することができる。なかでも、エステル交換反応や重縮合反応等に有効なテトラアルキルチタネートや蓚酸スズを使用することが好ましい。
【0019】
ウレタン樹脂(A)を製造する際には、芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とともに、その他のポリオール(a3)等を組み合わせ使用することもできる。
【0020】
その他のポリオール(a3)としては、上記ポリオール(a1-2)と同様なポリオールを使用することができ、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール等の比較的低分子量のポリオールを使用することができる。
【0021】
<<ポリイソシアネート(a2)>>
ポリオール(a1)と反応しウレタン樹脂(A)を形成するポリイソシアネート(a2)としては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの群から選ばれる1種以上を使用することが、得られるプライマー層の基材密着性および脱墨性向上等の観点からより好ましい。
【0022】
ウレタン樹脂(A)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と、上記ポリイソシアネート(a2)と、必要に応じて上記ポリオール(a3)と、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって製造することができる。上記有機溶剤を使用した場合には、上記ウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に分散等する際に、必要に応じて上記有機溶剤を蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0024】
ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な鎖伸長剤は、ウレタン樹脂(A)の分子量を大きくし、得られるフィルム等の耐久性を向上することを目的として使用することができる。
ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0025】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジッド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0026】
その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を使用することができる。
【0027】
鎖伸長剤は、上記芳香族ポリエステルポリオール(a1)と上記ポリイソシアネート(a2)とを反応させる際、または、反応後に使用することができる。また、ウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に分散させ水性化する際に、鎖伸長剤を使用することもできる。
【0028】
<<ウレタン樹脂(A)の特性>>
ウレタン樹脂(A)における芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度は、1mmol/g以上である。
係る芳香環濃度は、ウレタン樹脂(A)1g中に含有されている芳香環のモル数を計算することにより求められる。
具体的な計算方法は、後述する。
該芳香環濃度は、得られるプライマー層の基材密着性および脱墨性向上等の観点から、1.5mmol/g以上であることが好ましく、2mmol/g以上であることがより好ましく、プライマー層の良好な造膜性等の観点から、6mmol/g以下であることが好ましく、5mmol/g以下であることがより好ましい。
【0029】
ウレタン樹脂(A)におけるエステル結合基濃度は、1mmol/g以上である。
係るエステル結合基濃度は、ウレタン樹脂(A)1g中に含有されているエステル結合基のモル数を計算することにより求められる。
具体的な計算方法は、後述する。
該エステル結合基濃度は、得られるプライマー層の基材密着性および脱墨性向上等の観点から、2mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、プライマー層の良好な耐ブロッキング性等の観点から、9mmol/g以下であることが好ましく、7mmol/g以下であることがより好ましい。
【0030】
ウレタン樹脂(A)の酸価は、8~45mgKOH/gである。
酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JISK0070に従って行った値である。
酸価が8mgKOH/g以上であれば、水分散安定性を向上することができ、15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/以上がより好ましい。酸価が45mgKOH/g以下であれば、ポリエステル基材との密着性を良好に担保することができ、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/以下がより好ましい。
【0031】
ウレタン樹脂(A)の1g中に含有されるポリイソシアネート(a2)の原料モノマーの質量を、ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーのNCO当量重量で除した値は、1.0~6.0mmol/gであることが好ましい。
係る値が1.0mmol/g以上であれば、得られるプライマー層の基材密着性および脱墨性を向上することができ、1.5mmol/g以上であることがより好ましく、1.8mmol/g以上であることがより好ましい。6.0mmol/g以下であれば、プライマー層の造膜性を担保することができ、5.0mmol/g以下であることがより好ましく、4.0mmol/g以下であることがより好ましい。
【0032】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましい。基材に対する耐ブロッキング性、樹脂の耐加水分解安定性等の観点から、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。また、水分散時の低粘度化、生産性等の観点から、80,000以下が好ましく、60,000以下がより好ましい。
【0033】
本発明において、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgelG5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgelG2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成する。
【0034】
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-500」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンA-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-1」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-2」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-4」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-10」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-20」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-40」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-80」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-128」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-288」
東ソー株式会社製「TSKgel標準ポリスチレンF-550」
【0035】
ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度は、0~110℃であることが好ましい。
【0036】
<水性媒体(B)>
ウレタン樹脂(A)の溶媒となる水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。
水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
本発明では、水のみを用いてもよく、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いてもよく、水と混和する有機溶剤のみを用いてもよい。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0037】
ウレタン樹脂(A)を水性媒体(B)中に水分散する際に、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用することができる。
【0038】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、水性ウレタン樹脂組成物の全量に対してウレタン樹脂(A)を5質量%~50質量%の範囲で含有することが好ましく、10質量%~25質量%の範囲で含有することがより好ましい。また、水性媒体(B)は、ウレタン樹脂組成物の全量に対して、50質量%~95質量%の範囲で含有することが好ましく、75質量%~90質量%の範囲で含有することがより好ましい。
【0039】
<その他の添加剤>
本発明の水性ウレタン樹脂組成物には、必要に応じて造膜助剤や架橋剤、硬化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料、等の各種の添加剤等を使用することができる。
【0040】
添加剤のうち乳化剤やレベリング剤は、得られるフィルム等の耐久性の低下を引き起こす場合があるため、フィルム等に高耐久性が求められる場合には、水性ウレタン樹脂組成物の全量に対して5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0041】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物には、耐久性に優れたフィルム等を形成するうえで、各種架橋剤を組み合わせ使用することができる。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤、アミノ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シランカップリング剤系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリジン系架橋剤等を使用することができる。
架橋剤は、ウレタン樹脂(A)の全量に対して、基材への密着性向上、脱墨性向上等の観点から、30質量%以下の範囲で使用することが好ましく、20質量%以下の範囲で使用することがより好ましい。また、架橋剤は、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を塗工等する直前に混合し、使用することが好ましい。
【0042】
(プライマー層)
本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて、基材上に該水性ウレタン樹脂組成物を塗工することによりプライマー層を形成することができる。
後述するように、該プライマー層の上には、印刷インキ組成物からなる印刷層を形成することができる。
該プライマー層は、アルカリ溶液での処理により容易に脱離することができる。
プライマー層が基材から容易に剥離されることで、プライマー層の上に形成された印刷層も基材から容易に取り除くことができる。尚、プライマー層の脱離方法についての詳しい説明は後述する。
【0043】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式を用いて基材上に塗工することができる。既知の印刷方式としては、上述したグラビア印刷、フレキソ印刷の他には、例えば、T-ダイコーター、リップコーター、ナイフコーター、カーテン、インクジェット、バーコーター、ロールコーター、スプレーコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ワイヤーバーコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、ダイスロットコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。
印刷する際は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等の各種の印刷方式に適した粘度及び濃度にまで、水性溶液、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール系有機溶剤と水を混合した希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0044】
また、基材上への水性ウレタン樹脂組成物の塗工方法としては、基材の延伸工程(例えば、二軸延伸工程)途中に水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、その後さらに延伸工程を行うインラインコーティング法であるか、又は基材の延伸工程(例えば、二軸延伸工程)の後に、水性ウレタン樹脂組成物を塗布し乾燥することでプライマー層を形成するオフラインコーティング法を用いることによっても行うことができる。
【0045】
(積層体)
また、本発明は、上記本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層を有する積層体を提供する。
本発明の積層体は、基材上に、上記本発明の水性ウレタン樹脂組成物が塗工されてなるプライマー層を有し、さらに該プライマー層上に印刷インキ組成物が印刷されてなる印刷層を有する。
【0046】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層を有する積層体の実施形態としては、限定されるわけではないが、例えば、下記(1-A)態様が好ましく挙げられる。
・(1-A)基材A-プライマー層-印刷層
【0047】
また、本発明の積層体は、上記(1-A)態様のように、印刷層が積層体表面に形成された表刷りタイプの構造からなる積層体だけでなく、印刷層の上にさらに塗膜(各種層又はフィルム)が形成されたラミネートタイプの構造からなる積層体も対象とする。
つまり、本発明の積層体は、印刷層に対して、基材(例えば、基材Aとする)が配置されている面とは反対側の面に、他の基材(例えば、基材Bとする)を配置し、基材Aとプライマー層と印刷層と基材Bとを積層するラミネートタイプの構造の積層体も対象とする。
ラミネートタイプの構造からなる積層体として、例えば、以下に記載の態様の積層体を挙げることができる。
尚、下記ラミネートタイプの構造を記載した例示において、基材フィルム1は本発明でいう基材Aに対応している。ただし、基材フィルム1がない態様の場合、シーラントフィルムや金属蒸着未延伸フィルムや透明蒸着延伸フィルム等の各フィルムが本発明でいう基材Aに対応する場合がある。また、基材フィルム2は本発明でいう基材Bに対応している。基材フィルム2がない態様の場合、シーラントフィルムや金属蒸着未延伸フィルムや透明蒸着延伸フィルム等の各フィルムが本発明でいう基材Bに対応する。基材Bは、積層体において、基材Aとは反対面の表面に形成されたフィルムを示す場合が多いが、場合によっては、表面に配されたフィルムに限らず、層間に基材Bが存在する場合もあり、また、積層体中に複数の基材Bが設けられる場合もある。
【0048】
基材Aに対応するフィルム上にプライマー層を塗工する態様である。
・(1-1)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
・(1-2)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着未延伸フィルム
・(1-3)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム
・(1-4)透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
・(1-5)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/シーラントフィルム
・(1-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
・(1-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
・(1-8)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/シーラントフィルム
・(1-9)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/金属層/接着層3/シーラントフィルム
・(1-10)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/基材フィルム2/接着層3/シーラントフィルム
【0049】
上記(1-1)~(1-10)の態様のうち、中間層に位置するフィルムの両面にプライマー層を塗工してもよい。
・(2-5)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層2/シーラントフィルム
・(2-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/金属蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/シーラントフィルム
・(2-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/シーラントフィルム
・(2-9)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層2/金属層/接着層3/シーラントフィルム
・(2-10)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層3/シーラントフィルム
【0050】
上記(1-1)~(1-10)、(2-5)~(2-7)、及び(2-9)~(2-10)の態様に対して、基材Bに対応するフィルム(基材Aとは反対面の表面に位置するフィルム)にプライマー層を塗工してもよい。
・(3-1)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/金属蒸着未延伸フィルム
・(3-3)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/金属蒸着延伸フィルム
・(3-4)透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-5)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-8)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-9)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/金属層/接着層3/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-10)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/基材フィルム2/接着層3/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2-5)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/金属蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2-9)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層2/金属層/接着層3/プライマー層/シーラントフィルム
・(3-2-10)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/プライマー層/基材フィルム2/プライマー層/接着層3/プライマー層/シーラントフィルム
【0051】
上記態様のうち、蒸着フィルム(透明/金属、延伸/未延伸は問わない)の印刷層側に面のプライマー層を削除した態様であってもよい。蒸着層はアルカリ溶液で溶解する場合もあり、蒸着フィルムの片方の面に形成されたプライマー層を削除することができる。尚、下記(4-3-4)の態様については、蒸着フィルムの一方の面は積層体の表面に位置しているため、他方の内側に面したプライマー層を削除している。
・(4-2-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/シーラントフィルム
・(4-2-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/シーラントフィルム
・(4-3-4)透明蒸着延伸フィルム/印刷層/接着層1/プライマー層/シーラントフィルム
・(4-3-2-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
・(4-3-2-7)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/プライマー層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
【0052】
ラミネートタイプの構造からなる積層体として、押出ラミネートにより、印刷層の上にさらに塗膜(各種層又はフィルム)が形成されたラミネートタイプの構造としてもよい。
つまり、本発明の積層体は、印刷層に対して、基材(例えば、基材Aとする)が配置されている面とは反対側の面に、押出ラミネート層を配置し、基材Aとプライマー層と印刷層と押出ラミネート層とを積層するラミネートタイプの構造の積層体も対象とする。
押出ラミネートタイプの構造からなる積層体として、例えば、以下に記載の態様の積層体を挙げることができる。
尚、下記ラミネートタイプの構造を記載した例示において、基材フィルム1は本発明でいう基材Aに対応している。
【0053】
・(5-1)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネート用アンカー層/押出ラミネート層
・(5-2)基材フィルム1/印刷層/プライマー層/押出ラミナート用アンカー層/押出ラミネート層
・(5-3)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/プライマー層/押出ラミナート用アンカー層/押出ラミネート層
【0054】
上記(5-2)及び(5-3)の態様の場合、押出ラミネート層を回収し、印刷層が付着していない樹脂として再利用可能である。(5-3)の態様は、基材フィルム1及び押出ラミネート層の両方を回収し、印刷層が付着していない樹脂として再利用可能である。
上記(5-1)~(5-3)は、印刷層の上に「押出ラミネート用アンカー層」を設ける構成としたが、「押出ラミネート用アンカー層」を設けずに「印刷層」の上に直接「押出ラミネート層」を設けてもよい。
【0055】
上記(5-1)~(5-3)の構成の他に、押出ラミネート層の基材フィルム1が設けられる面とは反対側の面に、シーラント層等の他の層を配置してもよい。他の層の構成は、下記(5-1-1)~(5-1-6)に限定されるものではなく、必要とされる特性に応じて適宜設計可能である。
以下は、上記(5-1)の構成において他の層を設けた構成の例である。上記(5-2)、(5-3)においても同様の構成が可能である。
・(5-1-1)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/接着層1/シーラントフィルム
・(5-1-2)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/接着層1/金属層/接着層2/シーラントフィルム
・(5-1-3)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/プライマー層/接着層1/シーラントフィルム
・(5-1-4)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/プライマー層/接着層1/金属層/接着層2/シーラントフィルム
・(5-1-5)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/プライマー層/接着層1/プライマー層/シーラントフィルム
・(5-1-6)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/押出ラミネートアンカー層/押出ラミネート層/プライマー層/接着層1/金属層/接着層2/プライマー層/シーラントフィルム
【0056】
上記各態様の積層体を製造するにあたり、基材フィルム1、基材フィルム2、金属蒸着延伸フィルム、及び透明蒸着延伸フィルムの各フィルム上にプライマー層を形成する場合には、上記(プライマー層)の欄でも説明した通り、フィルムの延伸工程途中に水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、その後さらに延伸工程を行うインラインコーティング法によりプライマー層を形成してもよいし、フィルムの延伸工程の後に、水性ウレタン樹脂組成物を塗布し乾燥することでプライマー層を形成するオフラインコーティング法によりプライマー層を形成してもよい。
【0057】
積層体の構造として、上記各態様を挙げたが、これに限定されない。
上記印刷層としては、例えば、印刷インキにより形成された印刷層をいう。印刷層としては、例えば、着色剤として有色顔料あるいは白色顔料を用い、該着色剤を含有する印刷インキにより形成された印刷層が挙げられる。
印刷層の印刷方式は特に限定されず、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等の各種の印刷方式により印刷層を形成可能である。印刷インキは各種印刷方式に応じたインキを用いることができ、溶剤系のインキであっても水性インキであってもよい。また、UV硬化型やEB硬化型のインキを用いてもよい。
【0058】
上記基材フィルム1としては、OPPフィルム(ポリプロピレンフィルム、例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ナイロンフィルム等が挙げられる。基材フィルム1としてガスバリア性や、印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。コーティングが施された基材フィルム1の市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。
上記シーラントフィルムとしては、CPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPEフィルム(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルム)等が挙げられる。
上記金属蒸着未延伸フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルムを用いることができる。
上記金属蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。
上記透明蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。
上記金属層としては、アルミニウム箔等が挙げられる。
基材フィルム2としては、ナイロンフィルム等が挙げられる。
【0059】
上記接着層は、公知のフィルムラミネート用の接着剤を適宜使用することができる。また、押出しラミネーションにより積層する場合は、公知の押出しラミネーション用のアンカーコート剤を接着補助剤として適宜使用することができる。これらの接着剤やアンカーコート剤としてガスバリア性を有する材料を使用すると、特にバリア性に優れる積層体を得ることができる。
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m2(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m2/day/atm以下、または水蒸気バリア性が120g/m2/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
上記押出ラミネート層としては、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のポリオレフィン系樹脂が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。
上記押出ラミネート用アンカー層としては、各種の公知のアンカーコート剤が用いられる。例えば、イソシアネート系やアミン重合体系の材料が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。また、「押出ラミネート用アンカー層」を、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成してもよい。本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて「押出ラミネート用アンカー層」を形成することにより、押出ラミネート層との密着性を向上させると共に、剥離処理の際は押出ラミネート層の剥離性を向上させることができる。
【0060】
<積層体の用途>
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、電子機材、建材、繊維・皮革、家電製品、車や飛行機等の乗り物、家具、オフィス用品、遊具、スポーツ用品あるいはそれらの部品の成型物等の印刷層を含む上刷層を持つ成型物における基材の表面処理剤(プライマーコート剤)として好適に使用することができる。
従って、本発明の水性ウレタン樹脂組成物で形成されたプライマー層を有する積層体は、電子機材、建材、繊維・皮革、家電製品、車や飛行機等の乗り物、家具、オフィス用品、遊具、スポーツ用品あるいはそれらの部品の成型物等の各成型物に適用することができる。
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物で形成されたプライマー層を有する積層体は、包装材料(より具体的には、多層包装材料)に適用することもできる。
多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
包装材料として使用する場合、例えば、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして、本発明の積層体から形成される包装材料を使用した製品が製造される。包装材料の用途は特に限定されないが、例えば、食品、医薬品、サニタリー、コスメ、電子材料、建築材料、工業材料等の包装材料として好適に使用できる。
【0061】
<積層体の特性>
本発明の水性ウレタン樹脂組成物で形成されたプライマー層は、基材との密着性も良好であり、本発明の積層体は、基材と印刷層との密着性に優れている。
また、本発明の積層体は、アルカリ溶液を用いることにより簡便な方法でプライマー層を脱離することができ、基材と印刷層とを容易に剥離することができる。ただし、本発明の積層体は、通常使用される温度条件下では、アルカリ溶液を適用してもプライマー層は剥離されない。したがって、通常使用される温度条件下では、たとえたまたまアルカリ溶液が付着することがあっても、剥離を気にせず安心して使用することができる。
本発明の水性ウレタン樹脂組成物で形成されたプライマー層を有する積層体は、上記(1-A)態様のような表刷りタイプの構造からなる積層体だけでなく、上記(1-1)~(4-3-2-7)態様のようなラミネートタイプの構造からなる積層体に対しても、アルカリ溶液の適用によりプライマー層を容易に脱離することができ、基材と印刷層とを容易に剥離することができる。
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物が上述したような架橋剤を含有している場合、架橋剤を含有する水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層は、膜強度に優れており良好な成膜性を示すが、一方、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層は、架橋剤を含有していても、本発明の目的とする高い剥離性能を維持することができる。つまり、架橋剤を用いて製造された本発明の積層体は、成膜性、及び脱離性の両面で優れたものとすることができる。
【0062】
(基材Aからのプライマー層の脱離方法)
基材からプライマー層を脱離(除去)するには、アルカリ溶液中に浸漬して行う。本発明におけるプライマー層を除去するために使用するアルカリ水溶液では、使用するアルカリ性物質は特に制限は無く、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア等が挙げられる。
好ましくはNaOHあるいはKOHである。アルカリ水溶液の製造方法としては、NaOH、KOH、アンモニア等を水に均一に溶解または分散させ、指定の濃度あるいはpHに適宜調整すればよい。
【0063】
<上記(1-A)態様の積層体の場合のプライマー層の脱離方法>
通常、プライマー層の除去条件としては、10℃以上100℃以下で、pH11以上あるいは濃度0.5~3.0質量%のアルカリ水溶液に、30分浸漬し、水洗・乾燥したときにプライマー層の90%以上を除去する方法が挙げられる。pHとして好ましくは11.0以上、より好ましくは13.0以上である。濃度では0.5~3.0質量%水溶液のものが好ましく、より好ましくは1.0~2.5質量%水溶液である。浸漬温度は100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。一方で、意図せずにアルカリ性物質が積層体に付着した際に、プライマー層の脱離、ひいては印刷層の除去が引き起こされないためには、低温においてはプライマーが脱離されないことが必要である。そのため、浸漬温度は、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。浸漬時間としては60分以内、より好ましくは30分以内、更に好ましくは20分以内である。その後水洗・乾燥したときのプライマー層の除去率は好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上である。
【0064】
<上記(1-1)態様等のラミネートタイプの積層体の場合のプライマー層の脱離方法>
上記(1-1)態様等の積層体の場合、プライマー層はプラスチックフィルムに挟まれており、アルカリ水溶液がプライマー層に到達するために相当時間を要する。したがって、浸漬時間は(1-A)態様より長く必要となるが、短時間で脱ラミネーションが進行するものがより好ましい。浸漬時間としては、24時間以内が好ましく、より好ましくは12時間以内、更に好ましくは6時間以内である。
【0065】
上述したように、積層体をアルカリ溶液に浸漬することにより、プライマー層を脱離することができる。
つまり、本発明により、積層体に対してアルカリ溶液で処理しプライマー層とともに印刷層を基材Aから脱離して、リサイクルされた基材Aを得ることができる。
また、積層体がラミネートタイプの構造からなる積層体であっても同様であり、本発明により、積層体に対してアルカリ溶液で処理しプライマー層とともに印刷層及び/又は基材Bを基材Aから脱離して、リサイクルされた基材A、あるいは、リサイクルされた基材A及びリサイクルされた基材Bやシーラントフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0067】
<芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度(mmol/g)>
ウレタン樹脂1g中に含有する芳香環のモル数を計算する。芳香族ポリエステルポリオールの合成に用いた原料及びその配合量に基づいて算出することができる。
ウレタン樹脂1g中に含有する芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマーの質量を、芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマーの分子量で除することで求める。
【0068】
<エステル結合基濃度(mmol/g)>
ウレタン樹脂1g中に含有するエステル結合基のモル数を計算する。芳香族ポリエステルポリオールの合成に用いた原料及びその配合量に基づいて算出することができる。
まず、芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のエステル結合基濃度を、下式(I)により算出する。係る式(I)は、エステル形成による脱水を考慮した式である。
【0069】
【数1】
式(I)中、aは、芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のカルボン酸のモル数を表す。
芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のエステル結合基濃度を求めたら、次に、芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のエステル結合基濃度とウレタン樹脂1g中に占める芳香族ポリエステルポリオール(a1)の割合の積を求め、ウレタン樹脂1g中のエステル結合基濃度を算出する。
【0070】
<酸価(mgKOH/g)>
ウレタン樹脂1g中に含有するCOOH基を、水酸化カリウム法により滴定した場合に要するKOHのmg数で求める。
【0071】
<ウレタン+ウレア官能基濃度(mmol/g)>
ウレタン樹脂1g中に含有されるポリイソシアネート(a2)の原料モノマーの質量を、ポリイソシアネート(a2)の原料モノマーのNCO当量重量で除し求める。
【0072】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量を測定する。
【0073】
<ガラス転移温度(℃)>
示差走査熱量計により、ガラス転移温度を測定する。
【0074】
<ポリオール 水酸基価>
JISK1557-1に記載の方法に準拠し測定する。
【0075】
(ポリオール)
実施例及び比較例で使用したポリオール1~7の組成及び物性を下記表1に示す。
表1において、
TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、AAはアジピン酸、EGはエチレングリコール、DEGはジエチレングリコール、14BGは1,4-ブチレングリコールを示す。
例えば、表1のポリオール2は、テレフタル酸を0.32g、イソフタル酸を0.32g、エチレングリコールを0.13g、ジエチレングリコールを0.23gの割合で混合し反応させて芳香族ポリエステルポリオールを作製したことを示している。
【0076】
【0077】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂1は、次のようにして合成した。
撹拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール2を0.74gと、イソホロンジイソシアネートを0.20gと、2,2’-ジメチロールプロピオン酸を0.06gとの割合で仕込み、窒素気流下に75℃で8時間反応させ、ウレタン樹脂1を得た。
ウレタン樹脂1の組成及び物性を下記表2に示す。
【0078】
ウレタン樹脂1の組成を下記表2又は下記表3に示すように変えた他は同様の方法により、ウレタン樹脂2~9を作製した。
ポリウレタン樹脂2~9の組成及び物性を表2及び表3に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
表1に記載の芳香環濃度は、以下の様にして求めた。
ウレタン樹脂1を例に説明する。
まず、ポリオール2の1g中における芳香環濃度を算出する。
・芳香環を含有する芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマーの質量比率/そのモノマーの分子量、を求める。
芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマーが複数ある場合は、その和を求める。
・{0.32(ポリオール2のテレフタル酸含有率)/166(テレフタル酸の分子量)+0.32(ポリオール2のイソフタル酸含有率)/166(イソフタル酸の分子量)}×1000=3.8mmol/g
【0082】
次に、芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中の芳香環濃度とウレタン樹脂1g中に占める芳香族ポリエステルポリオール(a1)の割合の積を求め、ウレタン樹脂1g中の芳香環濃度を算出する。
・3.84(ポリオール2の芳香環濃度)×0.74(ウレタン樹脂1のポリオール2の含有量)=2.8mmol/g
【0083】
表1に記載のエステル結合基濃度は、以下の様にして求めた。
ウレタン樹脂1を例に説明する。
まず、ポリオール2の1g中におけるエステル結合基濃度を算出する。
芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のカルボン酸のモル数をaとすると、aは、以下の様にして求められる。
・a={0.32(ポリオール2のテレフタル酸含有率)/166(テレフタル酸の分子量)+0.32(ポリオール2のイソフタル酸含有率)/166(イソフタル酸の分子量)}×2(芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー中カルボン酸は2つ含まれている)=0.00771
次に、求めたaを上記式(I)に代入する。
・{a/(1-a×18(脱水する水の量))}×1000=8.9mmol/g
【0084】
次に、芳香族ポリエステルポリオール(a1)1g中のエステル結合基濃度とウレタン樹脂1g中に占める芳香族ポリエステルポリオール(a1)の割合の積を求め、ウレタン樹脂1g中のエステル結合基濃度を算出する。
・8.9(ポリオール2のエステル結合基濃度)×0.74(ウレタン樹脂1のポリオール2の含有量)=6.6mmol/g
【0085】
表1に記載のウレタン+ウレア官能基濃度は、以下の様にして求めた。
ウレタン樹脂1を例に説明する。
・0.2(ウレタン樹脂1中のイソホロンジイソシアネートの含有量)÷111.15(イソホロンジイソシアネートのNCO当量重量)=1.8mmol/g
ここで、イソホロンジイソシアネートのNCO当量重量は、イソホロンジイソシアネートの分子量÷2で求められ、222.3÷2=111.15である。
【0086】
((1-A)タイプの積層体)
下記に記載の表刷りタイプの構造からなる積層体を作製した。
・(1-A)基材A-プライマー層-印刷層
【0087】
実施例1で使用した積層体1は以下のようにして作製した。
基材フィルム1として、OPP基材フィルム(フタムラ化学株式会社製「FOR 20μm」)を使用した。
プライマー層として、ウレタン樹脂1を使用し、水性ウレタン樹脂組成物には、架橋剤を含有させた。
架橋剤を含むプライマー層は、次のように作製した。ウレタン樹脂1を用い、該ウレタン樹脂100部に対し、日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV-02」を9部混合し、その後イソプロピルアルコール(IPA)で固形分10%に希釈した。
上記で得られた水性ウレタン樹脂組成物を、版深度22μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した基材フィルム1上に印刷を行った。その後、100℃で10分間、乾燥させ、その後、室温で1日以上放置した。
インキ層は、次のように作製した。ラミネート用インキ「フィナート(DIC社製)」をインキと同一比率の混合有機溶剤で希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、版深度22μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、印刷を行った。
得られた積層体1を40℃で5日間エージングした。
積層体1の構成を下記表4に示す。
【0088】
積層体1の構成を下記表4、下記表5、又は下記表6に示すように変えた他は同様の方法により、積層体2~21を作製した。
積層体2~21の構成を表4~表6に示す。
【0089】
積層体1の構成を下記表7、又は下記表8に示すように変えた他は同様の方法により、比較積層体1~14を作製した。
比較積層体1~14の構成を表7~表8に示す。
【0090】
表4~8において、PU樹脂とは、ポリウレタン樹脂を示す。基材フィルム1が、PETである場合は、該基材フィルムは、東洋紡株式会社製「E5102 12μm」を示す。PP(ポリプロピレン)である場合は、該基材フィルムは、フタムラ化学製「FOR 20μm」を示す。
OPEである場合は、該基材フィルムは、一軸延伸ポリエチレンフィルム(膜厚25μm、密度0.92g/m2、融点125℃)を示す。
架橋剤が「BU3100」とは、Covestro社製の「Bayhydur Ultra 3100」を示す。
「BU3100」の架橋剤を含むプライマー層は、ウレタン樹脂100部に対し、Covestro社製「Bayhydur Ultra 3100」を3部混合し、その後、水で固形分10%に希釈した。
プライマー層が架橋剤を含まない場合、該プライマー層は、ウレタン樹脂に対し、イソプロピルアルコール(IPA)で固形分10%に希釈した水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成した。該水性ウレタン樹脂組成物をグラビア印刷機を用いて塗布し、プライマー層を形成する方法は、積層体1の作製で上述したとおりである。
比較例12~14で使用した各フィルムは、それぞれ次のとおりである。透明蒸着フィルム1は、大日本印刷株式会社製のアルミナ蒸着透明PETフィルムIB-PET-PUB(厚み12μm)であり、透明蒸着フィルム2は、三菱ケミカル株式会社製のシリカ蒸着透明PETフィルム テックバリア TX-R(厚み12μm)であり、金属蒸着フィルムは、凸版印刷株式会社製の酸化アルミニウム蒸着透明PETフィルム GL-ARH(厚み12μm)であった。
【0091】
((1-1)タイプの積層体)
下記に記載のラミネート構造を有する積層体を作製した。
・(1-1)基材フィルム1/プライマー層/印刷層/接着層/シーラントフィルム
【0092】
実施例1で使用した積層体1’は以下のようにして作製した。
基材フィルム1として、OPP基材フィルム(フタムラ化学株式会社製「FOR 20μm」)を使用した。
プライマー層として、ウレタン樹脂1を使用し、水性ウレタン樹脂組成物には、架橋剤を含有させた。
架橋剤を含むプライマー層は、次のように作製した。ウレタン樹脂1を用い、該ウレタン樹脂100部に対し、日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV-02」を9部混合し、その後イソプロピルアルコール(IPA)で固形分10%に希釈した。
上記で得られた水性ウレタン樹脂組成物を、版深度22μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した基材フィルム1上に印刷を行った。その後、100℃で10分間、乾燥させ、その後、室温で1日以上放置した。
インキ層は、次のように作製した。ラミネート用インキ「フィナート(DIC社製)」をインキと同一比率の混合有機溶剤で希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、版深度22μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、印刷を行った。
上記のようにして得られた基材フィルム1、プライマー層、及び印刷層が積層された印刷物に対し、エーテル系接着剤のドライラミネート接着剤「ディックドライLX-760A/KP-70(DIC製)」を使用し、ドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によってシーラントフィルムを積層させ、実施例1の積層体1’を得た。
ここで、シーラントフィルムは、東洋紡株式会社製「パイレンフィルムCT P1128 30μm」を使用した。
得られた積層体1’を40℃で5日間エージングした。
積層体1’の構成を下記表4に示す。
【0093】
積層体1’の構成を下記表4、下記表5、又は下記表6に示すように変えた他は同様の方法により、積層体2’~20’を作製した。
積層体2’~20’の構成を表4~表6に示す。
【0094】
積層体1’の構成を下記表7、又は下記表8に示すように変えた他は同様の方法により、比較積層体1’~11’を作製した。
比較積層体1’~11’の構成を表7~表8に示す。
【0095】
表4~8において、PU樹脂とは、ポリウレタン樹脂を示す。基材フィルム1が、PETである場合は、該基材フィルムは、東洋紡株式会社製「E5102 12μm」を示す。PP(ポリプロピレン)である場合は、該基材フィルムは、フタムラ化学製「FOR 20μm」を示す。
OPEである場合は、該基材フィルムは、一軸延伸ポリエチレンフィルム(膜厚25μm、密度0.92g/m2、融点125℃)を示す。
架橋剤が「BU3100」とは、Covestro社製の「Bayhydur Ultra 3100」を示す。
「BU3100」の架橋剤を含むプライマー層は、ウレタン樹脂100部に対し、Covestro社製「Bayhydur Ultra 3100」を3部混合し、その後、水で固形分10%に希釈した。
プライマー層が架橋剤を含まない場合、該プライマー層は、ウレタン樹脂に対し、イソプロピルアルコール(IPA)で固形分10%に希釈した水性ウレタン樹脂組成物を用いて形成した。該水性ウレタン樹脂組成物をグラビア印刷機を用いて塗布し、プライマー層を形成する方法は、積層体1’の作製で上述したとおりである。
【0096】
(実施例1)
積層体1に対して、以下に示す剥離性の試験を行った。
【0097】
<剥離性の評価>
<<アルカリ溶液>>
下記各条件で剥離試験を実施し、各条件下における剥離のしやすさを比較した。
・水酸化ナトリウム1質量%、界面活性剤なし
液温は試験条件に合わせて、各85℃、55℃、25℃に設定した。
【0098】
<<剥離試験条件>>
印刷物を20mm×20mmのサイズにカットした試験片を溶液に浸漬してスターラーで撹拌した。
撹拌後に剥離状態を確認した後、指で印刷物を擦り、擦ることで塗膜が剥離するかも確認した。
上記の条件におけるインキ塗膜の剥離性を下記評価基準に従い評価した。
【0099】
[評価基準]
5: 5分以内の撹拌でインキ塗膜の剥離を確認。擦ると完全に脱離
4: 15分の撹拌でインキ塗膜の剥離を確認。擦ると完全に脱離
3: 15分の撹拌でインキ塗膜の剥離を未確認。擦ると完全に脱離
2: 60分の撹拌でインキ塗膜の剥離を未確認。擦ると部分的に脱離
1: 60分の撹拌でインキ塗膜の剥離を未確認。擦っても脱離を未確認
尚、上記評価結果については、実用上4以上の水準であることが好ましいが、3においてもリサイクルに貢献可能な水準であるため、3以上の水準を合格水準であると判断することができる。
【0100】
積層体1’に対して、以下に示す脱ラミネーション性の試験を行った。
【0101】
<脱ラミネーション性の評価>
<<アルカリ溶液>>
下記各条件で剥離試験を実施し、各条件下における剥離のしやすさを比較した。
・水酸化ナトリウム1質量%、界面活性剤なし
液温は85℃に設定した。
【0102】
<<脱ラミネーション試験条件>>
ラミネーション物(複層フィルム)を10mm×10mmのサイズにカットした試験片を溶液に浸漬してスターラーで撹拌した。
複層フィルムから基材が脱ラミネーションしているかを確認した。
ここで脱ラミネーションとは複層体のうち、特定のフィルムが完全に分離されている状態と定義する。
上記の条件におけるインキ塗膜の剥離性を下記評価基準に従い評価した。
【0103】
[評価基準]
4: 5時間未満の撹拌で複層フィルムから基材が脱ラミネーション
3: 10時間以内の撹拌で複層フィルムから基材が脱ラミネーション
2: 10時間の撹拌でフィルムが浮き上がる等の兆候が確認でき、24時間の撹拌で複層フィルムから基材が脱ラミネーション
1: 10時間の撹拌で処理前と外観変化なし
尚、上記評価結果については、実用上3以上であることが好ましいが、2においてもリサイクルに貢献可能な水準であると判断することができる。
【0104】
積層体1に対する剥離性の評価結果、及び積層体1’に対する脱ラミネーション性の評価結果を、表4に示す。
【0105】
(実施例2~21、及び比較例1~14)
実施例1の積層体1及び積層体1’を、それぞれ積層体2~21、もしくは比較積層体1~14、又は積層体2’~20’、もしくは比較積層体1’~11’に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離性、及び脱ラミネーション性の試験を行った。
評価結果を表4~表8に示す。但し、比較例12(比較積層体12)~比較例14(比較積層体14)については、通常の温度条件下でもアルカリ溶液による剥離が生じ、本発明の目的を達成することができなかったため、脱ラミネーション性の試験は行わなかった。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
上記実施例の結果から明らかなように、本発明の水性ウレタン樹脂組成物で形成されたプライマー層を有する積層体は、85℃及び55℃の温度条件下で、アルカリ溶液を用いることにより容易にプライマー層を脱離することができた。一方、25℃の温度条件下では、アルカリ溶液によりプライマー層は脱離されなかった。
また、本発明の積層体は、複数の層が積層されてなるラミネートタイプの構造を有していても、アルカリ溶液によりプライマー層を脱離することができた。
【要約】
汎用プラスチック基材に対して、簡便な方法でプライマー層を脱離し、プラスチック基材から印刷層を容易に取り除くことができるとともに、通常使用される温度条件下では、強アルカリ性の物質によりプライマー層は剥離されない、プライマー層を形成するための材料を提供する。
ウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有する水性ウレタン樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸(a1-1)を原料モノマーとして含む芳香族ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物からなり、前記ウレタン樹脂(A)における前記芳香族ジカルボン酸(a1-1)の原料モノマー由来の芳香環濃度が、1mmol/g以上であり、前記ウレタン樹脂(A)におけるエステル結合基濃度が、1mmol/g以上であり、前記ウレタン樹脂(A)の酸価が8~45mgKOH/gである、水性ウレタン樹脂組成物である。