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特許7440217ガス分配システムおよびそれを備える反応器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ガス分配システムおよびそれを備える反応器システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/02 20060101AFI20240220BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B01J4/02 A
C23C16/455
H01L21/205
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019097464
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2019209322
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】15/997,445
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ソンティ・スリーラム
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウェイ・スー
(72)【発明者】
【氏名】ロック・ビン・トラン
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-022420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182689(US,A1)
【文献】米国特許第05653807(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0031500(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267299(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0029496(US,A1)
【文献】特開2007-214406(JP,A)
【文献】特表2006-516304(JP,A)
【文献】特開2009-283715(JP,A)
【文献】特開2013-084857(JP,A)
【文献】特開平06-163425(JP,A)
【文献】特開平07-058044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/02
C23C 16/44-16/54
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/302
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分配システムであって、
第一のガス供給ラインと、
前記第一のガス供給ラインに連結する第一のガスマニホールドであって、前記第一のガスマニホールドは複数の第一のガス出口を備える、第一のガスマニホールドと、
複数の第一のガス流量センサーであって、前記複数の第一のガス流量センサーのうちの少なくとも一つは、前記複数の第一のガス出口のそれぞれに連結する、複数の第一のガス流量センサーと、
複数の第一のガスバルブであって、前記複数の第一のガスバルブのうちの少なくとも一つは、前記複数の第一のガス流量センサーのそれぞれの出口に連結する、複数の第一のガスバルブと、
前記複数の第一のガスバルブのそれぞれに選択的に連結する第一のガス圧力制御ベントラインと、
第二のガス供給ラインと、
前記第二のガス供給ラインに連結する第二のガスマニホールドであって、前記第二のガスマニホールドは複数の第二のガス出口を備える、第二のガスマニホールドと、
複数の第二のガス流量センサーであって、前記複数の第二のガス流量センサーのうちの少なくとも一つは、前記複数の第二のガス出口のそれぞれに連結する、複数の第二のガス流量センサーと、
複数の第二のガスバルブであって、前記複数の第二のガスバルブのうちの少なくとも一つは、前記複数の第二のガス流量センサーのそれぞれの出口に連結する、複数の第二のガスバルブと、
前記複数の第二のガスバルブのそれぞれに選択的に連結する第二のガス圧力制御ベントラインと、
前記第一のガス圧力制御ベントライン内の圧力を測定するように構成された第一の圧力変換器と、
前記第二のガス圧力制御ベントライン内の圧力を測定するように構成された第二の圧力変換器と、
前記第一のガス圧力制御ベントラインに連結する真空源と、
前記第一のガス供給ラインを介して前記第一のガスマニホールドに第一のガスを供給するため、または前記第二のガス供給ラインを介して前記第二のガスマニホールドに第二のガスを供給するための前記ガス分配システムの動作中に、前記第一および第二の圧力変換器によって測定された前記第一および第二のガス圧力制御ベントライン内の圧力を、反応チャンバー内の反応チャンバー圧力の±10%以内に維持するよう前記第一のガス圧力制御ベントライン及び前記第二のガス圧力制御ベントラインを操作するようにプログラムされた制御装置と、を備える、ガス分配システム。
【請求項2】
複数の第一のガス選択バルブを更に備え、前記複数の第一のガス選択バルブのそれぞれの入口は、前記複数の第一のガスバルブのうちの一つの出口に連結し、前記複数の第一のガス選択バルブのそれぞれの出口は、前記第一のガス圧力制御ベントラインの入口に連結している、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項3】
前記複数の第一のガス選択バルブのそれぞれの前記出口は、前記反応チャンバーへ選択的に連結する、請求項2に記載のガス分配システム。
【請求項4】
複数の第二のガス選択バルブを更に備え、前記複数の第二のガス選択バルブのそれぞれの入口は、前記複数の第二のガスバルブのうちの一つの出口に連結し、前記複数の第二のガス選択バルブのそれぞれの出口は、前記第二のガス圧力制御ベントラインの入口に連結している、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項5】
前記複数の第二のガス選択バルブのそれぞれの前記出口は、前記反応チャンバーへ選択に連結する、請求項4に記載のガス分配システム。
【請求項6】
前記複数の第二のガスバルブは、比例弁を含む、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項7】
前記複数の第二のガスバルブは、電磁弁を含む、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項8】
フランジを更に備える、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項9】
前記複数の第一のガスバルブおよび前記複数の第二のガスバルブは、前記フランジ内に形成されるガスフランジチャネルに流体連結する、請求項8に記載のガス分配システム。
【請求項10】
前記複数の第一のガスバルブに、および前記複数の第二のガスバルブに連結する比例積分微分制御装置を更に備える、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項11】
複数の第二のガス隔離バルブを更に備え、前記複数の第二のガス隔離バルブの各々は前記複数の第二のガス流量センサーの一つの入口に連結する、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項12】
前記複数の第一のガスバルブは、比例弁を含む、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項13】
前記複数の第一のガスバルブは、電磁弁を含む、請求項1に記載のガス分配システム。
【請求項14】
請求項に記載の前記ガス分配システムを備える、反応器システム。
【請求項15】
前記複数の第一のガスバルブに連結する前記反応チャンバーを更に備える、請求項14に記載の反応器システム。
【請求項16】
前記反応チャンバー圧力が、前記第一のガス圧力制御ベントライン内の圧力とほぼ同じである、請求項15に記載の反応器システム。
【請求項17】
前記反応チャンバー圧力が、前記第二のガス圧力制御ベントライン内の圧力とほぼ同じである、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項18】
前記制御装置は、前記第一のガスが前記第一のガス圧力制御ベントラインに連続的に流れるように、または前記反応チャンバーに連続的に流れるように、前記ガス分配システムの動作中に前記複数の第一のガスバルブおよび前記複数の第一のガス選択バルブを操作するようにさらにプログラムされている、請求項16に記載の反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね気相反応器およびシステムに関する。より具体的には、本開示は、気相反応器用のガス分配システム、ガス分配システムを備える反応器システム、ならびにガス分配システムおよび反応器システムを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気相反応器、例えば化学気相堆積(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、原子層堆積(ALD)などを、基材表面上の材料の堆積およびエッチングを含む様々な用途に使用することができる。例えば、気相反応器を用いて、基材上に層を堆積および/またはエッチングして、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイデバイス、光起電力デバイス、微小電気機械システム(MEMS)などを形成することができる。
【0003】
典型的な気相反応器システムは、反応チャンバーを備える反応器と、反応チャンバーに流体連結する一つまたは複数の前駆体ガス源と、反応チャンバーに流体連結する一つまたは複数のキャリアガス源および/もしくはパージガス源と、ガス(例えば、前駆体ガスおよび/またはキャリアガスもしくはパージガス)を反応チャンバーに搬送するためのガス分配システムと、反応チャンバーに流体連結する排気源と、を備える反応器を備える。
【0004】
一般的に、基材の表面全域で均一な膜特性(例えば、膜厚さおよび抵抗率)を有すること、および/または任意の所望の変動を制御することが望ましい。均一なまたは制御可能な膜特性を達成することを試みるために様々なガス分配システムが開発されてきた。例えば、反応チャンバー内に配置される複数のポート(例えば5つ)またはノズルを備えるガス分配システムは、基材表面全域で膜特性の均一性を高めるために開発されてきた。このような例では、各チャネルへの流量をニードルバルブを用いて調整することができる。この技術はいくつかの用途にはうまく機能するが、このようなシステムは、特に基材の縁部またはその近傍で、膜特性の所望の均一性および/または制御性に適切に対処できない可能性がある。加えて、ニードルバルブの使用は、例えばバルブ部品の機械的摩耗のために、望ましくない粒子を発生させる可能性がある。更に、一つまたは複数の前駆物質の流れは、特にガスを切り替える場合に比較的不安定になる可能性がある。
【0005】
基材表面上に形成される形体のサイズが小さくなるにつれて、膜特性、例えば膜厚および抵抗率を制御することがますます重要になっている。更に、膜特性を独立して調整すること、例えば気相反応器を用いて堆積させた層、例えばこのような反応器を用いて成長させたエピタキシャル層の膜厚均一性および/または抵抗率を独立して調整すること、が望ましい場合がある。したがって、改良されたガス分配システム、改良されたガス分配システムを備える反応器システム、ならびにガス分配システムおよび反応器システムを用いる方法が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の様々な実施形態は、ガス分配システム、ガス分配システムを備える反応器システム、ならびにガス分配システムおよび反応器システムを使用する方法に関する。本開示の様々な実施形態が従来のガス分配システムおよび反応器システムの欠点に対処する方法を、以下で更に詳細に論じるが、概ね本開示の様々な実施形態は、改善した制御のガス流量をガス分配システムの個々のチャネルへ供給することができるガス分配システムを提供し、ガス分配システムの一つまたは複数のチャネルへのガスの流量および/もしくは流量比を動的にフィードバックし、ならびに/または、ガス分配システムの各チャネル内のガスの流量および/もしくは流量比の安定性を改善する。更に、例示的なシステムおよび方法により、反応チャンバーおよび/または基材表面に供給される反応物質を微調整することができる。更に、例示的なガス分配システムは、膜特性、例えば膜厚、膜厚均一性、および膜抵抗率を独立して調整することができる。
【0007】
本開示の例示的実施形態では、ガス分配システムは、第一のガス供給ラインと;
第一のガス供給ラインに連結する第一のガスマニホールドであって、第一のガスマニホールドは複数の第一のガス出口を備える、第一のガスマニホールドと;複数の第一のガス流量センサーであって、複数の第一のガス流量センサーのうちの少なくとも一つは、複数の第一のガス出口のそれぞれに連結する、複数の第一のガス流量センサーと;複数の第一のガスバルブであって、複数の第一のガスバルブのうちの少なくとも一つは、複数の第一のガス流量センサーのそれぞれの出口に連結する、複数の第一のガスバルブと;複数の第一のガスバルブのそれぞれに選択的に連結する第一のガス圧力制御ベントラインと;を備える。例示的なガス分配システムはまた、第二のガス供給ラインと;第二のガス供給ラインに連結する第二のガスマニホールドであって、第二のガスマニホールドは複数の第二のガス出口を備える、第二のガスマニホールドと;複数の第二のガス流量センサーであって、複数の第二のガス流量センサーのうちの少なくとも一つは、複数の第二のガス出口のそれぞれに連結する、複数の第二のガス流量センサーと;複数の第二のガスバルブであって、複数の第二のガスバルブのうちの少なくとも一つは、複数の第二のガス流量センサーのそれぞれの出口に連結する、複数の第二のガスバルブと;複数の第一のガスバルブのそれぞれに選択的に連結する第二のガス圧力制御ベントラインと;を備えることができる。本開示によるガス分配システムは、第一および第二のガスラインに関して説明したように、三つ以上のガスラインおよび対応する構成要素を同様に備えることができる。実施形態の例示的な期待によれば、ガス分配システムは複数の第一および/または第二のガス選択バルブを備えることができ、複数の第一および/または第二のガス選択バルブのそれぞれの入口は、第一または第二のガスバルブの出口にそれぞれ連結し、複数の第一および/または第二のガス選択バルブのそれぞれの出口は、それぞれ、第一または第二のガス圧力制御ベントラインの入口に連結している。第一および/または第二のガス選択バルブはまた、反応チャンバーに選択的に連結することができる。この構成により、ガス(例えば、前駆体ガス)間で迅速に切り替えることができ、反応チャンバー内へおよび基材表面へガスの流れを容易に制御することができる。本明細書に記載の流量制御装置を使用すると、ガス分配システムの(以下により詳細に説明する)一つまたは複数のチャネルへのガス流量を独立して制御することができ、そしてこれにより、このようなシステムを用いて堆積させる膜の様々な特性および/または反応チャンバー内の反応物質の濃度プロファイルを微調整することができる。
【0008】
本開示の更なる例示的実施形態では、気相反応器システムは、本明細書に記載されるように一つまたは複数のガス分配システムを備える。例示的なシステムはまた、反応チャンバーに連結する排気(例えば、真空)源と、一つまたは複数の第一のガスチャネルに流体連結する第一のガス源と、一つまたは複数の第二のガスチャネルに流体連結する第二のガス源と、を備えることができる。システムは追加のガスおよび/または排気源を備えることができる。
【0009】
本開示のなお更なる例示的実施形態では、基材の表面に気相反応物質を供給する方法は、気相反応器システムを提供する工程と、本明細書に記載のガス分配システムを提供する工程と、反応チャンバー内に基材を供給する工程と、第一のガス源からの第一のガスと第二のガス源からの第二のガスとに基材をさらす工程と、を含む。例示的な方法は、一つまたは複数の第一のガスチャネルに連結する一つまたは複数のバルブを操作すること、および/または一つまたは複数の第二のガスチャネルに連結する一つまたは複数の制御バルブを操作することを更に含むことができる。例示的な方法はまた、例えば、膜特性、例えば、基材の縁部領域を含む基材の表面全域での膜厚、膜厚均一性、および膜抵抗率などを(例えば、独立して)調整するために、第一のガス源からの第一のガスおよび第二のガス供給源からの第二のガスのうちの一つまたは複数を非対称に設定する工程を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の例示的な実施形態のより完全な理解は、以下の例示的な図面に関連して考慮される場合、発明を実施するための形態および特許請求の範囲を参照することによって得られることができる。
【0011】
図1図1は、本開示の少なくとも一つの例示的な実施形態による反応器システムである。
図2図2は、本開示の少なくとも一つの例示的な実施形態によるガス分配システムの概略図である。
図3図3は、本開示の少なくとも一つの例示的実施形態によるガス分配システムの図である。
図4図4は、本開示の少なくとも一つの例示的実施形態によるガス分配システムの図である。
図5図5は、本開示の少なくとも一つの例示的実施形態によるガス分配システムの図である。
図6図6は、本開示の少なくとも一つの実施形態によるコントローラおよびドライバーである。
図7図7は、本開示の少なくとも一つの実施形態によるコントローラおよびドライバーである。
図8図8は、本開示の少なくとも一つの実施形態によるコントローラおよびドライバーである。
【0012】
図面の要素は、簡潔かつ明瞭にするために例示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されよう。例えば、図面中のいくつかの要素の寸法は、本開示の例示の実施形態の理解の向上に役立てるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に提供される例示的な実施形態の説明は、単なる例示であり、また説明のみを目的として意図しており、下記の説明は本開示または特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。更に、記載された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態も、記載された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態をも排除することを意図していない。
【0014】
本開示は、概ね、ガス分配システム、ガス分配システムを備える反応器システム、ならびにガス分配システムおよび反応器システムを使用する方法に関する。本明細書に記載のガス分配システムおよびガス分配システムを備える反応器システムを用いて、基材、例えば半導体ウェーハを気相反応器内で処理することができる。例として、本明細書に記載のシステムを用いて、基材の表面上にエピタキシャル層(例えば、二成分および/またはドープされた半導体層)を形成または成長させることができる。
【0015】
本明細書で使用する場合、「基材」は、その上に材料を堆積することができる表面を有する任意の材料を指す。基材は、バルク材料、例えばシリコン(例えば、単結晶シリコン)を含んでもよく、またはバルク材料の上を覆う一つまたは複数の層を備えてもよい。更に、基材は様々な形態、例えば溝、ビア、ラインおよび基材の層の少なくとも一部の中またはその上に形成されるようなもの、を含み得る。
【0016】
以下により詳細に記載されるように、本明細書に記載の例示的なガス分配システムの使用は、反応チャンバーの様々な入口位置へ(例えば、下記により詳細に説明するフランジ内の複数の入口の位置へ)ガス流量を独立して計量および制御することができるので、有利である。そして、ガスおよび流量を独立して制御することにより、ガス分配システムを備える反応器システムを用いて形成される膜の膜特性を独立して調整することができる。例えば、例示的なガス分配システムを用いて、例えば基材上にエピタキシャル形成される層の抵抗率および膜厚(または厚さ均一性)を独立して調整することができる。追加的または代替的に、例示的なガス分配システムを用いて、そのシステムがなければ反応器システムの反応チャンバー内で起こるガス流の変動、欠乏速度の変動、オートドーピング、またはそれらの組み合わせを補償することができる。例えば、様々なガスを独立して制御することにより、そのような制御がなければ一つまたは複数の膜特性に不均一性を引き起こす可能性があるエッジ効果および/または基材の回転を補償することができる。更に、例示的なガス分配システムは、各ガスチャネル内のガス流量をリアルタイムにフィードバックすることができる。例示的なガス分配システムは、任意の所望の数のガスチャネルに拡張可能である。更に、本開示の例示的なガス分配システムは、比較的高いガス流量(例えば、各チャネルを通る2SLMを超える窒素)に使用することができ、および/または必要に応じて比較的高い(例えば、大気圧に近い)圧力で作動することができる。更に、例示的なガス分配システムは、反応器に供給されるガスを切り替える場合でも、比較的安定した流量を供給することができる。更に、以下により詳細に説明するように、例示的なシステムは、ガスが反応チャンバーに入る場合に供給ライン内の大量のガスに関連するメモリー効果を低減することができる。本明細書に記載されるシステムおよび方法のこれらおよび他の特徴は、例えばその特徴がなければ供給ラインのデッドボリューム内の残留ガスに起因して形成する可能性がある欠陥を最小限にしながら、基材上に高品質の界面層を堆積するのに特に有用であることができる。
【0017】
ここで図を参照すると、図1は例示的な反応器システム100を示す。反応器システム100を、様々な用途、例えば化学気相堆積(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、原子層堆積(ALD)、クリーンプロセス、エッチングプロセス等に使用することができる。例示的な実施形態は、エピタキシャル反応器システムに関連して以下に記載されるが、実施形態および本発明は、特に明記しない限り、それに限定されない。
【0018】
例示の例では、反応器システム100は、任意の基材ハンドリングシステム102、反応チャンバー104、ガス分配システム106、および必要に応じて反応チャンバー104と基材ハンドリングシステム102との間に配置される壁108を備える。システム100はまた、第一のガス源112、第二のガス源114、および排気源110を備え得る。二つのガス源112、114が例示されているが、反応器システム100は任意の好適な数のガス源を備え得る。ガス源112、114は、例えば、前駆体ガス、例えば、トリクロロシラン、ジクロロシラン、シラン、ジシラン、およびトリシラン;ドーパント源、例えばAs、P、C、GeおよびBを含むガス;ならびに、ガスとキャリアガス例えば水素、窒素、アルゴン等との混合物を含む、ガスの混合物;を含むことができる。追加的または代替的に、第一のガス源112および第二のガス源114のうちの一つは、エッチング剤、例えば塩化水素を含むことができる。例として、例示的な反応器システムは、少なくとも二つの前駆体ガス源と、必要に応じて一つまたは複数のキャリアおよび/またはパージガス源とを含むことができる。反応器システム100は、任意の好適な数の反応チャンバー104および基材ハンドリングシステム102を備え得る。例として、反応器システム100の反応チャンバー104は、クロスフローコールドウォールエピタキシャル反応チャンバーを備える。例示的な反応器システムはASM製のシステムとして入手可能な水平流反応器を備える。
【0019】
反応器システム100の作動中に、基材(図示せず)、例えば半導体ウェーハが、例えば基材ハンドリングシステム102から反応チャンバー104へ搬送される。基材が反応チャンバー104に搬送されると、ガス源112、114、例えば、前駆体、ドーパント、キャリアガス、および/またはパージガスから一つまたは複数のガスが、ガス分配システム106を介して反応チャンバー104の中に導入される。以下により詳細に説明するように、ガス分配システム106を用いて、基材処理中に第一のガス源112および第二のガス源114から一つまたは複数のガスのガス流量を計測し制御することができる。
【0020】
本開示の例示的実施形態による、ガス分配106として使用するのに好適なガス分配システム200を、図2は概略的に例示し、図3図5はより詳しく例示する。ガス分配システム200は、第一のガス源112に連結する第一のガス供給ライン202と、第二のガス源114に連結する第二のガス供給ライン204とを備える。ガス分配システム200のガスラインおよび構成要素に言及する場合、用語「連結する」は、流体連結することを指し、そして特に断りがない限り、ラインまたは構成要素は直接流体連結する必要はないが、むしろガス分配システム200は他の介在要素、例えばバルブ、メーター等を備えることができる。
【0021】
引き続き図2図5を参照すると、ガス分配システム200は、第一のガス供給ライン202に連結する第一のガスマニホールド206と、第二のガス供給ライン204に連結する第二のガスマニホールド208とを備える。第一のガスマニホールド206は、複数の第一のガス出口210~218を含む。同様に、第二のガスマニホールド208は、複数の第二のガス出口220~228を含む。第一のガスマニホールド206および第二のガスマニホールド208は、一つまたは複数のガスライン(例えば、第一および第二のガスライン202、204)からガスを受け取り、そのガスを一つまたは複数のチャネルであって、それぞれが第一のガス出口208~218および第二のガス出口220~228にそれぞれ部分的に画定される、チャネルに分配するように構成される。例示の例では、各第一および各第二のガス流のそれぞれは五つのガス流路に分けられている。第一のガス出口208~218および第二のガス出口220~228のうちの各五つが例示されているが、本開示によるガス分配システムは、それぞれのガスのチャネルの数に対応する任意の好適な数の第一、第二、および/または他のガス出口を備えることができる。
【0022】
ガス分配システム200は、第一および第二のガス出口210~228に連結する複数の流量センサー230~248を含む。例示の例では、各第一および第二のガス出口210~228は単一の流量センサー230~248に連結している。しかし、場合によっては、流量センサーに連結していないいくつかのガス出口を有すること、および/または二つ以上の流量センサーに連結するいくつかのガス出口を有することが望ましい場合がある。流量センサー230~248を用いて、各チャネルのリアルタイムの流量情報および/または流量の履歴情報を、例えばグラフィカルユーザーインターフェースを用いて、ユーザに提供することができる。追加的にまたは代替的に、流量センサー230~248を制御装置(例えば制御装置318)に、ならびに第一のガスバルブ250~258に、および第二のガスバルブ260~268に連結して、バルブを通るガスの流量を制御することができる。流量センサー230~248はバルブ250~268の上流に例示されているが、追加的または代替的にバルブ250~268の下流に配置することができる。例示的な流量センサー230~248は質量流量計である。各ガスチャネルに流量センサーを配置することによって、各チャネルを通るガスの流量を、ガス組成に関係なく、独立して測定および制御することができる。
【0023】
第一のガスバルブ250~258および第二のガスバルブ260~268は、ガスの流れを計測するための任意の好適な装置を備えることができる。本開示の様々な実施形態では、第一のガスバルブ250~258および第二のガスバルブ260~268は、それぞれ比例弁、例えば電磁弁、例えばBrooks Instrumentsから入手可能なそれらを備える。図3および図5に例示のように、ガス分配システム200は、例えば各チャンネルへの流入量を制御するために、第一のガスバルブ250~258および第二のガスバルブ260~268のそれぞれを操作するように複数のドライバー334~354を所望の位置に備えることができる。本開示の更なる例示的実施形態では、ガス分配システム200は、複数の第一のガス選択バルブ270~278および290~298と、複数の第二のガス選択バルブ280~288および300~308と、を備える。第一のガス選択バルブ270~278および290~298と、第二のガス選択バルブ280~288および300~308を用いて、第一のガス源112からのガスの流れ(例えば、各ガスチャネルを通るガスの総流量)を、ベントライン310、例えば圧力制御されたベントラインと反応チャンバー314との間で切り替えることができる。同様に、第二のガス選択バルブ280~288および300~308を用いて、第二のガス源114からのガスの流れ(例えば、各ガスチャネルを通るガスの総流量)を、ベントライン312(例えば圧力制御されたベントライン)と反応チャンバー314との間で切り替えることができる。言い換えれば、供給源112および114からのガスを連続的に流し、圧力制御されたベントライン310、312と反応チャンバー314との間で切り替えることができる。例えば、第一のガスを第一のガス源112から反応チャンバー314に流す前に、第一のガス選択バルブ270~278を開き、および第一のガス選択バルブ290~298を閉じて、第一のガスを第一のガス源112から、一つまたは複数、例えば各第一のガスチャネルを通って第一のガス圧力制御ベントライン310へ流すことができる。同様に、第二のガスを第二のガス源114から反応チャンバー314に流す前に、第二のガス選択バルブ280~288を開き、および第二のガス選択バルブ300~308を閉じて、第二のガスを第二のガス源114から、一つまたは複数、例えば各第二のガスチャネルを通って第二のガス圧力制御ベントライン312へ流すことができる。本開示の様々な実施形態では、第一のガス圧力制御ベントライン310内および/または第二のガス圧力制御ベントライン312内の圧力を、反応チャンバー314内の圧力の約(例えば、±10パーセント、±5パーセント、±2.5パーセント、または±1パーセント以内)に維持することができる。これにより、ガスを切り替える場合に(例えば、前駆体間で、および/または前駆体ガスとパージガスとの間で切り替える場合に)、ガスの安定した流量(例えば、より少ないメモリー効果、滑らかな移行、および、そのようなものがなければ起こるかもしれない圧力ゆらぎによる影響の低減)が可能になる。圧力変換器320、322を用いて、第一のガス圧力制御ベントライン310および第二のガス圧力制御ベントライン312内の圧力をそれぞれ測定することができる。背圧制御バルブ326、328を圧力変換器320、322に連結して、第一のガス圧力制御ベントライン310および第二のガス圧力制御ベントライン312内の圧力を制御することができる。同様に、圧力変換器324を用いて、反応チャンバー314内の圧力を測定することができ、また制御可能なバルブ328を使用して反応チャンバー314内の圧力を制御することができる。更に、圧力変換器324によって測定される圧力を用いて、第一のガス圧力制御ベントライン310および第二のガス圧力制御ベントライン312の圧力設定値として、コントローラ318に設定値を提供することができる。特に明記しない限り、本明細書に記載の制御可能なバルブはすべて、比例弁、例えば電磁弁とすることができる。
【0024】
第一のガス選択バルブ270~278および290~298ならびに第二のガス選択バルブ280~288および300~308は、フランジ316を介して反応チャンバー314に連結することができる。第一および第二のガス選択バルブ270~308をフランジ316上の表面に取り付ける、または追加のライン(例えば、管)および好適なコネクタを用いて選択バルブをフランジ316に連結することができる。例示的なフランジ316は、それぞれのガスが反応チャンバー内に出るまでチャネルを維持するためのフランジガスチャネルを備える。フランジ316として使用するのに好適な例示的なフランジは、2014年3月18日に出願された、「GAS DISTRIBUTION SYSTEM, REACTOR INCLUDING THE SYSTEM, AND METHODS OF USING THE SAME(ガス分配システム、そのシステムを備える反応器、およびその使用方法)」と題する米国特許出願第14/218,690号に開示され、その内容は、本開示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
ガス分配システム200は、感湿ラインを導入するための湿度サンプリングパネル332を必要に応じて備えることができる。湿度サンプリングパネルは、例えば、一つまたは複数の圧力変換器、空気圧バルブ、および/またはリストリクターを備えることができる。例示の例では、ガス分配システム200はまた、例えば、処理中に特定のチャネルを通ってガスを流さないことが望ましい、またはシステムのメンテナンスを可能にすることが望ましい、のいずれかの場合に処理中に、一つまたは複数のチャネルへのガス隔離を可能にするための隔離弁402~420を備える。例示的なガス分配システム200はまた、第一のガスおよび第二のガスにそれぞれ関連するチャネルの通気を可能にするための安全弁422、424を備えることができる。追加的または代替的に、チャネルおよび/または反応チャンバー314を容易にパージするために、ガス分配システム200は不活性ガス(例えば、窒素)、入口バルブ426、およびチャネルパージバルブ502~520を備えることができる。
【0026】
反応チャンバー314を、例えば石英で形成することができる。切り替えおよび/または基材処理中の反応チャンバー314(ならびに第一および第二のガスベントライン)内の例示的な作動圧力は、約5Torr~約500Torrの範囲とすることができる。例として、圧力は、約2mTorr~約780mTorrの範囲とすることができる。
【0027】
制御装置318を、本明細書で説明されている様々な機能および/または工程を実行するように構成することができる。制御装置318は、様々な機能を実行するために一つまたは複数のマイクロプロセッサ、メモリー素子、および/またはスイッチング素子を備えることができる。単一ユニットとして例示されているが、制御装置318は代わりに複数の装置を備えることができる。例として、制御装置を用いて、第一のガス源112および第二のガス源114からのガスの流れを制御することができる。特に、制御装置318は、各チャネルにおいて(例えば、第一のガス源112または第二のガス源114からの)それぞれのガスの総流量の所望の比率を供給するように構成され得る。追加的または代替的に、ガス流を反応チャンバーに導入する場合に制御装置318を用いてガス流量を安定させることができる。本開示の様々な例では、制御装置318は比例積分微分(PID)制御装置を備え、これにより、第一のガスバルブ250~258および第二のガスバルブ260~268を備える、本明細書に記載の様々な制御可能なバルブの閉ループ制御が可能になる。PID閉ループ制御を用いると、システム200は、一つまたは複数の(例えば全ての)ガスチャネル内の流れを設定値に動的に調整する、および/またはガス源を切り替える場合に反応チャンバー314に安定した、特に初期のガス流量を供給することができる。例として、PID制御を用いて、各制御バルブに対する初期設定値を選択することができる。制御可能なバルブに結合する各流量センサーからの流量フィードバックおよびそれからの出力は、次に、PID制御装置と関連して使用されて、制御バルブの各々の所望の設定値(即ち、流量)を制御することができる。
【0028】
上記のように、本明細書に記載のバルブは電磁弁を含むことができる。電磁弁は印加電圧に関してヒステリシスを示すことが知られている。これを補償するために、本開示の様々な例によれば、制御装置318は、バルブを完全に開くために十分な電圧を印加し、そしてその電圧を所望の流量に対する所望のレベルに設定するように構成される。これはまた、バルブ設定のドリフトを軽減するのに役立つ。
【0029】
図6は、制御装置318に連結することができ、またはその一部を形成することができる例示的な回路600を示す。回路600を用いて、チャネル内のガスの流量を制御するために使用される各バルブ(例えば、各バルブ250~268)を制御することができる。回路600は、第一の電源602、第二の電源604、およびバルブに結合するドライバー606を備える。例示の例では、ドライバー606は、電源604からの信号または質量流量計からの読み取り値に基づく信号(入力610として示す)を変換し、その信号を制御バルブ608への比例電圧に変換する。より具体的には、電源604を用いてバルブ608を完全に開くかまたは完全に閉じるように命令することができ、電源602を用いてそれを行うのに十分な電圧を供給することができる。図7および図8は、いくつかの電気的アーキテクチャをより詳細に示し、バルブ250~268の各々に対する各ドライバーへの電力供給入力を例示する。
【0030】
本開示の例示的な実施形態が本明細書に記載されているが、本開示はそれに限定されないことを理解されたい。例えば、ガス分配システムおよび反応器システムは様々な特定の構成に関連して説明されているが、本開示は必ずしもこれらの例に限定されない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載のシステムおよび方法の様々な変更、変形、および改良を行うことができる。
【0031】
本開示の主題は、本明細書に開示される様々なシステム、構成要素、および構成、ならびに他の特徴、機能、動作、および/または特性のすべての新規かつ非自明な組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびにその任意のおよびすべての均等物を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8