IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20240220BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20240220BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240220BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/075 501
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 F
H05K3/28 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019151547
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021032991
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
(72)【発明者】
【氏名】福島 智美
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨンジョン
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/075
G03F 7/004
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1種又は2種以上のポリベンゾオキサゾール前駆体、
(B)1種又は2種以上の光酸発生剤、
(C)1種又は2種以上の窒素原子を含むシランカップリング剤及び
(D)1種又は2種以上の、アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であ密着性向上剤
を含み、
(C)と(D)の質量割合((C)の質量:(D)の質量)が、1:0.2~1:10である、ポジ型感光性樹脂組成物であって、
ここで、(C)が、アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子とが、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基で結合しているアミノ基含有アルコキシシランのみからなり、
(D)が、数平均分子量(Mn)が200以上、20,000以下を有する高分子系密着性向上剤のみからなり、かつ該高分子系密着性向上剤がCASNo.1788896-49-0及びCASNo.2255343-54-3から選ばれる、
ポジ型感光性樹脂組成物
【請求項2】
さらに、(E)架橋剤を含む、請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)100質量部に対し、
(B)が0.5質量部以上40質量部以下であり、
(C)が0.1質量部以上10質量部以下であり、かつ
(D)が0.1質量部以上10質量部以下である
請求項1又は2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載のポジ型感光性樹脂組成物を、フィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有するドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項記載のポジ型感光性樹脂組成物又は請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られる硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を有する電子部品。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項記載のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法であって、(A)及び(B)を溶媒中で撹拌しつつ、(C)を添加し、次いで(D)を添加するか、あるいは、(D)を添加し、次いで(C)を添加する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、及びプリント配線板や半導体素子等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品における表面保護膜、層間絶縁膜等の形成にアルカリ性水溶液で現像可能なポジ型感光性樹脂組成物を使用することが知られている。このような組成物として、耐熱性及び電気絶縁性に優れた硬化物を与えるポリベンゾオキサゾール(以下「PBO」ともいう。)前駆体を、ナフトキノンジアジド化合物等の光酸発生剤と組み合わせた組成物が着目されている。
【0003】
ポジ型感光性樹脂組成物に対しては、シリコンウェハーや基板等に対する密着性はもちろん、パターニング性が要求される。このような要求に応えるべく、感光性樹脂組成物の研究開発がなされている。
【0004】
特許文献1では、メラミン系架橋剤と特定のシランカップリング剤とを共に配合することにより、密着性とともに、未露光部の残膜率に優れるポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
特許文献2では、特定のアゾール化合物を配合することにより、密着性と現像性の両性能において優れるポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
特許文献3では、銅との密着性の向上を図るため、1013hPa、25℃の条件下で液体でありかつ沸点が210℃以上の化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2018/056013号
【文献】特開2019-20522号公報
【文献】国際公開2017/217293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に記載されたポジ型感光性樹脂組成物では、ポジ型感光性樹脂組成物からなる硬化物の柔軟性(伸び)が十分ではなく、例えば、該感光性樹脂組成物を用いてシリコンウェハー上に絶縁膜を形成した場合、シリコンウェハーと絶縁膜との間に生じる歪み(反り)によって、絶縁膜に割れや剥れが生じるといった問題があった。そのため、このような絶縁膜には歪み(反り)に耐え得る良好な柔軟性(伸び)が求められるようになっている。
【0007】
そこで、本発明は、密着性及びパターニング性に優れ、良好な柔軟性(伸び)を有する硬化物を与えることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ポリベンゾオキサゾール前駆体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂組成物に、窒素原子を含むシランカップリング剤とアミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤とを組み合わせることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、
(B)光酸発生剤、
(C)窒素原子を含むシランカップリング剤及び
(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤
を含むポジ型感光性樹脂組成物。
[2]さらに、(E)架橋剤を含む、[1]のポジ型感光性樹脂組成物。
[3](A)100質量部に対し、
(B)が0.5質量部以上40質量部以下であり、
(C)が0.1質量部以上10質量部以下であり、かつ
(D)が0.1質量部以上10質量部以下である
[1]又は[2]のポジ型感光性樹脂組成物。
[4](C)と(D)の質量割合((C)の質量:(D)の質量)が、1:0.2~1:10である、[1]~[3]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
[5](C)がアミノ基含有アルコキシシランである、[1]~[4]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物を、フィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有するドライフィルム。
[7][1]~[5]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物又は[6]のドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られる硬化物。
[8][7]の硬化物を有する電子部品。
[9][1]~[5]のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物の製造方法であって、(A)及び(B)を溶媒中で撹拌しつつ、(C)を添加し、次いで(D)を添加するか、あるいは、(D)を添加し、次いで(C)を添加する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、密着性及びパターニング性に優れ、良好な柔軟性(伸び)を有する硬化物を与えることができるポジ型感光性樹脂組成物が提供される。また、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物又は該ドライフィルムの樹脂層を硬化して得られる硬化物、該硬化物を有するプリント配線板や半導体素子等の電子部品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)光酸発生剤、(C)窒素原子を含むシランカップリング剤及び(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤を含む。
【0012】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、閉環反応によりベンゾオキサゾール骨格を形成する樹脂であれば、特に限定されない。式(1):
【化1】
(式中、
Xは、4価の有機基であり、
Yは、2価の有機基であり、
nは、1以上の整数であり、好ましくは10以上50以下の整数であり、より好ましくは20以上40以下の整数である。)
で示される繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミド酸が好ましい。4価の有機基であるXは、隣接するアミド結合(-NHCO-)と閉環反応によってベンゾオキサゾール骨格を形成可能な基であることができる。
【0013】
このようなポリヒドロキシアミド酸は、アミン成分としてジヒドロキシジアミン類、酸成分としてジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸ジハライド類を用いて、これらを反応させて得ることができる。ジカルボン酸ジハライド類に代えて、活性エステル型ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物等も使用することができる。
【0014】
ジヒドロキシジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0015】
ジカルボン酸ジハライド等におけるジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
【0016】
式(1)中、Xが示す4価の有機基は、上記ジヒドロキシジアミン類に対応する4価の芳香族基であることができ、ジヒドロキシジアミン類から、2つの-OH基と2つのアミノ基を除いた構造に相当する。Xに隣接する-OHとアミド結合(-NHCO-)の窒素原子とは、Xに含まれるベンゼン環のオルト位に位置するように結合することができる。4価の芳香族基の炭素原子数は、6以上30以下が好ましく、6以上24以下がより好ましい。芳香族基は、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を含有していてもよい。
【0017】
Xとしては、例えば、以下の基が挙げられるが、これらに限定されず、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基であることができる。
【化2】
【0018】
中でも下記の基が好ましい。
【化3】
【0019】
式(1)中、Yが示す2価の有機基は、上記ジカルボン酸に対応する2価の脂肪族基又は芳香族基であることができ、ジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた構造に相当する。Yは、芳香族基が好ましく、Yに隣接するアミド結合(-NHCO-)の炭素原子が、Y中のベンゼン環に結合していることがより好ましい。2価の芳香族基の炭素原子数は、6以上30以下が好ましく、6以上24以下がより好ましい。芳香族基は、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を含有していてもよい。
【0020】
Yとしては、例えば、以下の基が挙げられるが、これらに限定されず、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基であることができる。
【化4】
(式中、
Aは、単結合、-CH-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-NHCO-、-C(CF-又は-C(CH-を示す。)
【0021】
Yは、中でも下記の基が好ましい。
【化5】
【0022】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、式(1)で示される繰り返し構造を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。また、式(1)で示される繰り返し構造以外の構造を含んでいてもよく、そのような構造としては、例えば、ポリアミド酸の繰り返し構造が挙げられる。
【0023】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は、5,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましく、また、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。本明細書において、数平均分子量は、(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上が好ましく、16,000以上がより好ましく、また、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
Mw/Mnは1以上が好ましく、また、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0024】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)光酸発生剤
光酸発生剤は、光エネルギーを吸収することにより酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0026】
光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましい。中でもナフトキノンジアジド化合物が好ましい。ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599)等が挙げられる。
【0027】
光酸発生剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(C)窒素原子を含むシランカップリング剤
窒素原子を含むシランカップリング剤としては、アミノ基含有アルコキシシラン、ウレア基含有アルコキシシラン、ウレイド基含有アルコキシシラン、イソシアネート基含有アルコキシシラン、イソシアヌレート基含有アルコキシシラン等が挙げられる。
【0029】
アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基は、非置換又は置換であり、置換の場合、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等により、モノ置換又はジ置換されたアミノ基が挙げられる。アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等は、ヒドロキシ基等によって置換されていてもよく、アミノ基で置換されていてもよい。
【0030】
アルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル等であり、プロピルが好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6以上15以下のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等であり、フェニルが好ましい。
ヘテロアリール基におけるヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、チエニル、インドリル、フラニル、オキシラニル等が挙げられ、チエニルが好ましい。
【0031】
アリール基で置換されたアミノ基としては、例えば、式(2):
【化6】
(式中、
31~R35は、独立して、水素原子又は有機基(例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上15以下のアリール基等)であり、好ましくは水素原子である。)で示される基が挙げられる。
【0032】
アミノ基含有アルコキシシランは、アミノ基を2つ以上有していてもよく、その場合、2つ以上のアミノ基は同一であっても、異なっていてもよい。
【0033】
アミノ基含有アルコキシシランにおけるシリル基は、ジアルコキシアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられ、中でもトリアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられ、メトキシ、エトキシが好ましい。シリル基が複数のアルコキシ基を有する場合、それらは、同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0034】
アミノ基含有アルコキシシランは、シリル基を2つ以上有していてもよく、その場合、2つのシリル基は同一であっても、異なっていてもよい。アミノ基含有アルコキシシラン中のシリル基は好ましくは1つである。
【0035】
アミノ基含有アルコキシシランは、アミノ基の窒素原子とシリル基のケイ素原子とが、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基で結合しているアミノ基含有アルコキシシランが好ましい。炭化水素基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましい。炭化水素基としては、アルキレン基が挙げられ、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0036】
アミノ基含有アルコキシシランとしては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
ウレア基含有アルコキシシランとしては、N,N-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア等が挙げられる。
【0038】
ウレイド基含有アルコキシシランとしては、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
イソシアネート基含有アルコキシシランとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
イソシアヌレート基含有アルコキシシランとしては、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0041】
密着性とパターニング性の両立の点から、アミノ基含有アルコキシシランが好ましく、中でも、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0042】
窒素原子を含むシランカップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤
密着性向上剤は、アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下を有する。金属への密着性と硬化膜特性向上の点から、アミン価は30mgKOH/g以上が好ましく、また、70mgKOH/g以下が好ましい。
【0044】
密着性向上剤は高分子系の密着性向上剤であることが好ましく、硬化膜の物性改質の点から、数平均分子量(Mn)は200以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、また、50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましい。
【0045】
密着性向上剤は水酸基を含むことができる。
【0046】
密着性向上剤としては、ビックケミー・ジャパン社製BYK-4512(CASNo.1788896-49-0)、BYK-4513(CASNo.225543-54-3)等が挙げられる。
【0047】
アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、(B)光酸発生剤を1質量部以上40質量部以下で含むことができる。パターニング性向上の点から、7質量部以上が好ましく、また、感度低下の抑制の点から、20質量部以下が好ましい。
【0049】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、(C)窒素原子を含むシランカップリング剤を0.1質量部以上10質量部以下で含むことができる。基材への密着性付与の点から、0.5質量部以上が好ましく、また、現像残り防止の点から、10質量部以下が好ましい。
【0050】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤を0.1質量部以上10質量部以下で含むことができる。密着性付与と膜物性向上の点から、3質量部以上が好ましく、また、熱特性低下の抑制の点から、7質量部以下が好ましい。
【0051】
(C)窒素原子を含むシランカップリング剤及び(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤の質量割合は、シリコン基板と金属への密着性の両立の点から、(C)の質量:(D)の質量が、1:0.2~1:10が好ましく、1:0.5~1:6がより好ましい。
【0052】
(E)架橋剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤は、加熱により架橋又は重合し得る剤である。架橋剤は、塗布、露光、現像後に加熱処理する工程において、ポリベンゾオキサゾール前駆体又はポリベンゾオキサゾールと反応して架橋するか、架橋剤自体が重合することで、未露光部の残膜率を高くするとともに、露光部の現像残りを防止し、パターニング性を向上させることができる。
【0053】
架橋剤は、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基又はビニルエーテル基を有する化合物が好ましく、これらの基がベンゼン環に結合している化合物、N位がメチロール基及びアルコキシメチル基から選ばれる基で置換されたメラミン樹脂又は尿素樹脂等がより好ましい。
【0054】
架橋剤としては、例えば、以下が挙げられる。
【化7】
【0055】
パターニング性向上と耐薬品性の向上の点から、メラミン構造を有する架橋剤、が好ましい。
【0056】
架橋剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
架橋剤を用いる場合、架橋剤は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、また、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0058】
(F)溶媒
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶媒を含有してもよい。溶媒は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)光酸発生剤、(C)窒素原子を含むシランカップリング剤及び(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤、ならびに場合により配合される任意成分を溶解するものであれば、特に限定されない。
【0059】
例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。溶解性と作業性の点から、γ-ブチロラクトンが好ましい。
【0060】
溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
溶媒を用いる場合、塗布する膜厚、粘度等に応じて、溶媒の量を選択することができるが、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、150質量部以上がより好ましく、また、9000質量部以下が好ましく、700質量部以下がより好ましい。
【0062】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を含有してもよい。例えば、t-ブチルカテコール類を含有することができ、これにより、現像残さ(スカム)を少なくすることができる。また、(C)以外のシランカップリング剤、(D)以外の密着性向上剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子(ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状ケイ酸塩等の無機微粒子等)、着色剤、繊維等を含有することができる。
【0063】
<ポジ型感光性樹脂組成物の製造方法>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)光酸発生剤、(C)窒素原子を含むシランカップリング剤及び(D)アミン価20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である密着性向上剤、並びに場合により(E)架橋剤、(F)溶媒及びその他の任意成分を混合することにより製造することができるが、(C)と(D)が直接、接するとゲル化を生じさせ得るため、製造工程において、(C)と(D)とは接しないようにすることが好ましい。例えば、(C)と(D)は、混合系に同時に供給しないことが好ましく、例えば、撹拌下で、(C)を先に添加してから、(D)を添加するか、あるいは(D)を先に添加してから、(C)を添加することができる。このような供給の仕方をすることにより、ゲル化を抑制して、ポジ型感光性樹脂組成物に適切な塗布性を付与することができる。(C)及び(D)の供給の仕方以外は、特に限定されず、それぞれ任意の順序で配合することができる。(F)溶媒を使用する場合、各成分をあらかじめ(F)溶媒に溶解してから、混合してもよい。
【0064】
ポジ型感光性樹脂組成物の粘度は、20mPa・s以上が好ましく、200mPa・s以上がより好ましく、また、50Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以下がより好ましい。本明細書において、粘度は、コーンプレート型粘度計により、25℃で測定した数値である。
【0065】
<ドライフィルム>
本発明のドライフィルムは、本発明のポジ型感光性樹脂組成物をフィルムに塗布後、乾燥させて得られる樹脂層を有する。本発明のドライフィルムは、樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
塗布の方法は、特に限定されず、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等を用いて、行うことができる。塗布厚は、塗布の方法、粘度等によって選択することができるが、乾燥後の樹脂層の膜厚にして100μm以下となる塗布厚が好ましく、5μm以上50μm以下となる塗布厚がより好ましい。
ポジ型感光性樹脂組成物を塗布するフィルム(キャリアフィルム)は、特に限定されず、熱可塑性フィルムを使用することができ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。フィルムの厚さは、2μm以上150μm以下とすることができる。
乾燥の方法は、特に限定されず、乾燥温度は、70℃以上140℃以下とすることができる。樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
乾燥させて得られる樹脂層の上に、カバーフィルムを積層することが好ましい。カバーフィルムはフィルム(キャリアフィルム)と同じ材料であっても、異なる材料であってもよいが、樹脂層との接着力がフィルム(キャリアフィルム)よりも小さいものが好ましい。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等も好適に使用することができる。
【0066】
<硬化物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物又はドライフィルムの樹脂層を硬化して、硬化物を得ることができる。硬化物からなるパターン膜は、以下のようにして製造することができる。
ステップ1:
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥するか、又はドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより塗膜を得る。ポジ型感光性樹脂組成物の基材上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等が挙げられる。塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。塗膜の乾燥は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが好ましく、具体的には、自然乾燥、送風乾燥又は加熱乾燥を70℃以上140℃以下で1分以上30分以下の条件で行うことが挙げられ、ホットプレート上で1分以上20分以下で乾燥を行うことが好ましい。真空乾燥も可能であり、この場合、室温(25℃)で20分以上1時間以下の条件で行うことが挙げられる。
基材は、特に限定されず、シリコンウェハー等の半導体基材、配線基板、樹脂又は金属からなる基材等が挙げられる。
【0067】
ステップ2:
上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介するか、又は直接露光する。露光に用いる光線は、(B)光酸発生剤を活性化させ、酸を発生させることができる波長の光線とし、具体的には、最大波長が350nm以上410nm以下の範囲にある光線が挙げられる。増感剤を用いて、光感度を調整してもよい。
露光装置は、特に限定されず、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等が挙げられる。
【0068】
ステップ3:
露光後、塗膜を加熱して、未露光部の(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の一部を閉環してもよい。この場合、閉環率を30%程度とすることが好ましく、例えば10%以上40%以下である。加熱時間及び加熱温度は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体や(B)光酸発生剤の種類、塗布厚等によって、適宜選択することができる。
【0069】
ステップ4:
次いで、塗膜を現像液で処理し、塗膜の露光部分を除去して、パターン膜(未硬化)を形成することができる。
現像方法は、特に限定されず、公知のフォトレジストの現像方法を用いることができ、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等が挙げられる。
現像液は、特に限定されず、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液が挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤を添加してもよい。
その後、パターン膜(未硬化)をリンス液によって洗浄してもよい。リンス液は、特に限定されず、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ステップ5:
次いで、パターン膜(未硬化)を加熱して硬化させ、硬化物からなるパターン膜を得る。加熱により、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環させ、ポリベンゾオキサゾールに変換すればよい。加熱条件は、ポリベンゾオキサゾール前駆体が閉環可能な条件とすることができ、例えば、不活性ガス中、150℃以上350℃以下で5分以上120分以下の加熱を行うことが挙げられる。加熱温度は、200℃以上300℃以下が好ましい。加熱装置は、特に限定されず、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンが挙げられる。加熱する際の雰囲気(気体)は、空気中であってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス中であってもよい。
【0071】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されず、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等が挙げられる。特に、ポリベンゾオキサゾールの耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる分野に好適に使用することができ、例えば、塗料又は印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体素子の被覆膜、電子部品、層間絶縁膜、ソルダーレジスト等のプリント配線板の被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の材料が挙げられる。
【0072】
中でも、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を、パターン形成材料(レジスト)として用いることができる。形成したパターン膜(硬化物)は、ポリベンゾオキサゾールを含む永久膜として耐熱性、絶縁性の付与に貢献し、例えばカラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体素子の被覆膜、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイ膜等のプリント配線板の被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材、電子部材等に好適に用いることができる。
【実施例
【0073】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0074】
<ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成>
実施例で使用したポリベンゾオキサゾール前駆体は、以下のようにして合成した。
撹拌機、温度計を備えた0.5Lのフラスコ中にN-メチルピロリドン212gを仕込み、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシアミドフェニル)ヘキサフルオロプロパン28.00g(76.5mmol)を撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド25.00g(83.2mmol)を固体のまま5gずつ30分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。その後、室温で5時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。回収した析出物をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。その後、析出した固体を回収し、減圧乾燥してカルボキシル基末端を有する、下記の繰り返し構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は12,900、重量平均分子量(Mw)は29,300、Mw/Mnは2.28であった。
【化8】
【0075】
<実施例1、2、4~8、比較例1~3>
表1に示す量(各成分の量は質量部表示である。以下も同様である。)で、ポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤、場合により架橋剤、溶媒を、100g遮光容器に投入し、室温で10分撹拌した。次いで、表1に示す量で、密着性向上剤を添加した。その後、撹拌を5分継続した。密着性向上剤の添加後、撹拌下に、表1に示す量で、カップリング剤を添加、10分攪拌し、ワニスを得た。
【0076】
<実施例3>
表1に示す量で、ポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤、架橋剤、溶媒を、100g遮光容器に投入し、室温で10分撹拌した。次いで、表1に示す量で、カップリング剤を添加した。その後、撹拌を5分継続した。カップリング剤の添加後、撹拌下に、表1に示す量で、密着性向上剤を添加、10分攪拌し、ワニスを得た。
【0077】
<参考例>
表1に示す量で、ポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤、架橋剤、溶媒、カップリング剤、密着性向上剤を同時に投入し、撹拌してワニスを得た。
【0078】
実施例で使用したポリベンゾオキサゾール前駆体以外の成分は、以下のとおりである。
【0079】
光酸発生剤:
【化9】
(三宝化学研究所社製、TKF-428)
【0080】
シランカップリング剤1:
【化10】
(信越化学工業社製、KBE-903)
シランカップリング剤2:
【化11】
(信越化学工業社製、KBM-573)
シランカップリング剤3(比較剤):
【化12】
(信越化学工業社製、KBE-403)
【0081】
密着性向上剤:
ビックケミー・ジャパン社製、BYK-4512
アミン価 56mgKOH/g
(不揮発分:60%。溶剤:メトキシプロピルアセテート。表1中の量は、溶剤を含む。)
【0082】
架橋剤1:
【化13】
(旭有機材社製、TM-BIP-A)
架橋剤2:
【化14】
(三和ケミカル社製、MW-390)
架橋剤3:
【化15】
(DIC社製、HP-4032D)
【0083】
溶媒:γ-ブチロラクトン
【0084】
各実施例のワニスについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<ゲル化及び保存安定性>
得られたワニスを4℃で14日間保持した。保存前と14日経過後の粘度を、コーンプレート型粘度計(TPE-100、東機産業社製、回転数50rpm、25℃)を用いて測定し、粘度増加率を算出した。結果を表1に示す。
◎:粘度増加率が5%未満
○:粘度増加率が5%以上10%未満
△:粘度増加率が10%以上15%未満
×:粘度増加率が15%以上又はゲル化により測定不可。
【0085】
<密着性>
得られたワニスを、スピンコーターを用いてシリコン基板又は銅板上に8μmの膜厚で塗布した。ホットプレートで120℃3分乾燥し、乾燥塗膜を得た。
得られた乾燥塗膜に対し、カッターナイフにて1×1(mm)サイズの正方形を縦横10列ずつ計100個の碁盤目を形成した。このサンプルに対しプレッシャークッカー(PCT)試験(条件:温度121℃、湿度100%の条件下50時間連続処理)を施した後、テープで碁盤目を剥がした。剥がれた碁盤目の数を数えることで密着性を評価した。
【0086】
<感度>
得られたワニスを、スピンコーターを用いてシリコン基板上に8μmの膜厚で塗布した。ホットプレートで110℃3分乾燥し、乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜に高圧水銀ランプを用い、パターン(L/S=10μm/10μm)が刻まれたマスクを介して、ブロード光を照射した。露光後2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液にて60秒現像し、水でリンスし、ポジ型パターン膜を得た。ポジ型パターン膜を電子顕微鏡(SEM「JSM-6010」)で観察した。露光量を変化させて実験を行い、露光部をスカム(現像残渣)なくパターニングできる最少露光量を感度(mJ/cm)とし評価した。
【0087】
<残膜率>
上記感度評価と同様の方法にて得られたポジ型パターン膜の未露光部の膜厚を測定し、現像前の膜厚との比をとって未露光部残膜率を求め、下記基準で評価した。
残膜率(%)=(現像後の未露光部膜厚(μm)/現像前の未露光部膜厚(μm))×100
◎:未露光部残膜率が95%以上
○:未露光部残膜率が95%未満90%以上
△:未露光部残膜率が90%未満80%以上
×:未露光部残膜率が80%未満または剥がれが生じて確認できなかったもの
【0088】
<伸び率>
得られたワニスを、スピンコーターを用いてアルミニウムをスパッタリングしたシリコン基板上に40μmの膜厚で塗布した。ホットプレートで110℃3分乾燥し、その後、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、CLH-21CD-S)中、窒素雰囲気下、110℃で10分加熱した後、150℃で30分間保持、220℃で60分加熱して膜厚約30μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜を10%塩酸に浸し、基板から剥離した後、小型卓上試験機(島津製作所社製、EZ-SX)を用いて、引張試験より破断伸びを求め、以下の基準で評価した。
◎:破断伸びが40%以上
○:破断伸びが40%未満35%以上
×:破断伸びが35%未満
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1~8は、いずれも、シリコン基板及び銅板の両方への密着性に優れ、良好な残膜性及び感度に示されるようにパターニング性に優れるとともに、伸びにおいても優れていた。実施例6~8より、架橋剤を添加することにより、残膜率が一層向上することがわかる。一方、(C)を欠く比較例1は、シリコン基板に対する密着性が得られず、残膜率も劣っていた。(D)を欠く比較例2は、銅板への密着性が得られず、シリコン基板への密着性も実施例には及ばず、伸び率も劣っていた。(C)以外のシランカップリング剤を使用した比較例3は、シリコン基板及び銅板への密着性が得られず、感度に劣る上、未露光部が剥がれて残膜率が確認できなかった。比較例3は、伸び率についても実施例に及ばなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、密着性及びパターニング性に優れ、良好な伸びを有する硬化物を与えることができるため、産業上有用性が高い。