(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20240220BHJP
H03F 3/38 20060101ALI20240220BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/38
H03F3/68
(21)【出願番号】P 2019224539
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0289568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0288336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047896(US,A1)
【文献】特表2012-502581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0294331(US,A1)
【文献】米国特許第08120422(US,B1)
【文献】米国特許第07834685(US,B1)
【文献】米国特許第08179195(US,B1)
【文献】特表2005-502253(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106505957(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された少なくとも3つの増幅器である第1乃至第3のオートゼロ増幅器を備え、
前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれは、
入力信号を増幅する第1の相互コンダクタンス増幅器及び第2の相互コンダクタンス増幅器と、
前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の入力信号を無信号状態としたときに前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の双方の出力を入力する一つの第3の相互コンダクタンス増幅器と、
前記第3の相互コンダクタンス増幅器の入力において前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正電圧を保持するサンプリング容量と、を有し、
前記入力信号を前記第1の相互コンダクタンス増幅器及び前記第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第1の増幅経路に接続される第1の入力経路及び第1の出力経路と、
前記入力信号を前記第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第2の増幅経路に接続される前記第1の入力経路とは別に設けられた第2の入力経路及び前記第1の出力経路とは別に設けられた第2の出力経路と、
前記第1の入力経路及び前記第1の出力経路と、前記第2の入力経路及び前記第2の出力経路との経路切り替えを行うスイッチと、を備え、
前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のうち、
一つのオートゼロ増幅器が前記サンプリング容量により前記校正電圧を保持する校正モードとなり、
他の一つのオートゼロ増幅器が前記入力信号を前記第1の増幅経路において前記第1の相互コンダクタンス増幅器及び前記第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路1モードとなり、
さらに他の一つのオートゼロ増幅器が前記入力信号を前記第2の増幅経路において前記第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路2モードとなるように、これら複数の動作モードを前記スイッチにより切り替えるアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有
し、
前記スイッチは、オン時にスイッチ入力端に入力された信号をスイッチ出力端に出力し、オフ時にスイッチ入力端に入力された信号をスイッチ出力端に出力しない第1乃至第8のスイッチを有し、
前記第1の相互コンダクタンス増幅器は、前記第1のスイッチ乃至前記第3のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、
前記第2の相互コンダクタンス増幅器は、前記第4のスイッチ及び前記第5のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、
前記サンプリング容量は、前記第6のスイッチのスイッチ出力端に接続され、
前記第3の相互コンダクタンス増幅器は、前記第6のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、
前記第1乃至前記第3のオートゼロ増幅器のそれぞれは、
前記入力信号として差動信号が入力される第1の入力端子及び第2の入力端子と、
前記入力される差動信号が無信号状態となる同相入力端子と、
前記第8のスイッチのスイッチ出力端に接続された第1の出力端子と、
前記第7のスイッチのスイッチ出力端に接続された第2の出力端子と、をさらに備え、
前記第1の入力端子が前記第1のスイッチ及び前記第4のスイッチのスイッチ入力端に接続され、
前記第2の入力端子が前記第3のスイッチのスイッチ入力端に接続され、
前記同相入力端子が前記第2のスイッチ及び前記第5のスイッチのスイッチ入力端に接続され、
前記第6のスイッチ乃至前記第8のスイッチのスイッチ入力端が前記第1の相互コンダクタンス増幅器乃至前記第3の相互コンダクタンス増幅器の出力に接続され、
前記校正モードにおいては、前記第2のスイッチ、前記第5のスイッチ、及び前記第6のスイッチがオンとなるとともに、前記第1のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチ、前記第7のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオフとなり、
前記経路1モードにおいては、前記第1のスイッチ、前記第4のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオンとなるとともに、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第5のスイッチ、前記第6のスイッチ、及び前記第7のスイッチがオフとなり、
前記経路2モードにおいては、前記第3のスイッチ、前記第5のスイッチ、及び前記第7のスイッチがオンとなるとともに、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第4のスイッチ、前記第6のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオフとなる、
増幅装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の増幅装置であって、
前記第1の入力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第1の入力端子が接続され、
前記第2の入力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第2の入力端子が接続され、
前記第1の出力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第1の出力端子が接続され、
前記第2の出力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第2の出力端子が接続された、増幅装置。
【請求項3】
請求項1又は
2に記載の増幅装置であって、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記動作モードの組み合わせとして、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであるフェイズ1と、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記校正モードであるフェイズ2と、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであるフェイズ3と、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであるフェイズ4と、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記校正モードであるフェイズ5と、
前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであるフェイズ6と、を有し、複数のフェイズを時系列に切り替える、増幅装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の増幅装置であって、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ1乃至前記フェイズ6を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置。
【請求項5】
請求項
3に記載の増幅装置であって、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ1、前記フェイズ3、及び前記フェイズ5を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置。
【請求項6】
請求項
3に記載の増幅装置であって、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ4、前記フェイズ6、及び前記フェイズ2を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置。
【請求項7】
請求項
1~6のうちのいずれか一項に記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、
入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、
前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、
前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1の増幅器と前記第2のチョッパ変調器との間に入出力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するノイズリダクションループ回路と、を備え、
前記ノイズリダクションループ回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、
前記ノイズリダクションループ回路の差動入力信号を増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置。
【請求項8】
請求項
1~6のうちのいずれか一項に記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、
入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、
前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、
前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するオートコレクションフィードバック回路と、を備え、
前記オートコレクションフィードバック回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、
前記オートコレクションフィードバック回路の差動入力信号を増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調する第3のチョッパ変調器と、
前記第3のチョッパ変調器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置。
【請求項9】
請求項
1~6のうちのいずれか一項に記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、
入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、
前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、
前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するリップルリダクションループ回路と、を備え、
前記リップルリダクションループ回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、
前記リップルリダクションループ回路の入力の高周波雑音成分を取り出すカップリング容量と、
前記カップリング容量の出力の差動電流信号を差動電圧信号に変換する抵抗と、
前記抵抗によって変換された差動電圧信号を増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調する第3のチョッパ変調器と、
前記第3のチョッパ変調器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、
前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置。
【請求項10】
請求項
7~9のいずれか一項に記載の増幅装置であって、
前記第1乃至第4の増幅器は、相互コンダクタンス増幅器を含む、増幅装置。
【請求項11】
請求項
7~9のいずれか一項に記載の増幅装置であって、
前記第2の増幅器は、
入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第1の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第1の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路1モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅する主経路の増幅器であり、
前記第2の増幅器の位相補償を行う位相補償回路を備え、
前記第3の増幅器は、
入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第2の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第2の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路2モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅するフィードバックループの増幅器である、増幅装置。
【請求項12】
請求項
7~9のいずれか一項に記載の増幅装置であって、
前記第2の増幅器は、
入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第2の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第2の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路2モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅する主経路の増幅器であり、
前記第2の増幅器の位相補償を行う位相補償回路を備え、
前記第3の増幅器は、
入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第1の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第1の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路1モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅するフィードバックループの増幅器である、増幅装置。
【請求項13】
請求項
7~9のいずれか一項に記載の増幅装置であって、
前記フィルタ回路は、増幅器と容量とを有して構成される積分回路を含み、前記第3の増幅器の出力の低周波信号成分を増幅し、高周波信号成分を低減する、増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器は、センサ信号等の増幅に広く用いられているが、いくつかの応用例では、増幅器内部のオフセット成分及び低周波雑音成分が非常に小さいことを要求される。従来の増幅器では、オフセット成分及び低周波雑音成分がその要求を満たすことができないため、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法が多く存在している。
【0003】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の一例として、チョッパ安定化増幅器が存在している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器を用いて入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分のみが高周波帯域に変調するように構成することで、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。
【0004】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の他の例として、オートゼロ増幅器が存在している。オートゼロ増幅器は、内蔵している校正回路によって増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。一般にオートゼロ増幅器は、スイッチによって入出力を切り替え、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。そのため、一つのオートゼロ増幅器だけでは、校正モードの時に信号を増幅することができない。そこで、例えば非特許文献1に開示されているように、二つのオートゼロ増幅器を用意し、一方のオートゼロ増幅器が校正モードの時、もう片方が増幅モードとなり信号を増幅するように構成されたPing-Pongオートゼロ増幅器が採用されている。
【0005】
以上のように、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の例として、チョッパ安定化増幅器とオートゼロ増幅器とが存在する。しかし、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が高周波帯域に変調され、それがリップルノイズとなり、リップルノイズによる高周波雑音成分が生じる課題がある。また、オートゼロ増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減するような信号を校正回路がサンプリングする必要があるため、サンプリングの際に生じるエイリアシング雑音が発生し、エイリアシング雑音による低周波雑音成分が生じる課題がある。このため、これらの課題を改善するための手法がいくつか存在している。
【0006】
一例として、特許文献1に開示されているように、チョッパ安定化増幅器とPing-Pongオートゼロ増幅器の動作を組み合わせた手法が存在する。この手法では、チョッパ変調器によって高周波帯域に変調される入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分をフィードバック回路によって大きく低減し、高周波雑音成分を低減させることができる。更に、上記のフィードバック回路を用いてオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法において、複数のPing-Pongオートゼロ増幅器を用いてより高精度な増幅器を実現することも可能である。この場合、フィードバック回路の初段増幅器と、フィードバック回路を用いてオフセット成分及び低周波雑音成分を低減した増幅器の2段目の増幅器とを、Ping-Pongオートゼロ増幅器により構成する。
【0007】
しかしながら、上記のような複数のPing-Pongオートゼロ増幅器を用いた構成では、4つのオートゼロ増幅器が必要となり、回路面積及び消費電力を増加させてしまう課題がある。
【0008】
複数のオートゼロ増幅器を用いた他の例として、例えば非特許文献2に開示されているように、並列する2つの増幅経路を3つのオートゼロ増幅器を用いてオートゼロ動作させる手法が存在する。しかし、非特許文献2では、2つの増幅経路の相互コンダクタンス値が同じになってしまうため、設計の自由度が下がってしまう課題をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ion E. Opris and Gregory T.A. Kovacs, “A Rail-to-Rail Ping-Pong Op-Amp”, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 31, no 9, pp. 1320-1324, Sep. 1996.
【文献】Saket Sakunia, Frerik Witte, Michiel Pertijs and Kofi Makinwa, “A Ping-Pong-Pang Current-Feedback Instrumentation Amplifier with 0.04% Gain Error”, IEEE Symposium on VLSI Circuits Digest of Technical Papers, pp. 60-61, Jun. 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、増幅回路において、複数のオートゼロ増幅器を用いてより高精度な増幅器を実現しようとすると、回路面積及び消費電力が増加してしまう課題が生じる。また、特許文献1に開示された手法において、フィードバック回路の初段増幅器と、メインの増幅経路の2段目の増幅器とをオートゼロ増幅器により構成する場合、それぞれの増幅経路において適宜相互コンダクタンス値を設定する必要がある。このため、非特許文献2に開示された手法のような並列する2つの増幅経路においてオートゼロ増幅器を切り替える構成を適用することができない。したがって、フィードバック回路を有する複数の増幅経路において、オートゼロ増幅器を用いた高精度化と、回路面積及び消費電力の低減とが求められる。
【0012】
本発明は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減するとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能な増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、並列に接続された少なくとも3つの増幅器である第1乃至第3のオートゼロ増幅器を備え、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれは、入力信号を増幅する第1の相互コンダクタンス増幅器及び第2の相互コンダクタンス増幅器と、前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の入力信号を無信号状態としたときに前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の双方の出力を入力する一つの第3の相互コンダクタンス増幅器と、前記第3の相互コンダクタンス増幅器の入力において前記第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正電圧を保持するサンプリング容量と、を有し、前記入力信号を前記第1の相互コンダクタンス増幅器及び前記第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第1の増幅経路に接続される第1の入力経路及び第1の出力経路と、前記入力信号を前記第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第2の増幅経路に接続される前記第1の入力経路とは別に設けられた第
2の入力経路及び前記第1の出力経路とは別に設けられた第2の出力経路と、前記第1の入力経路及び前記第1の出力経路と、前記第2の入力経路及び前記第2の出力経路との経路切り替えを行うスイッチと、を備え、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のうち、一つのオートゼロ増幅器が前記サンプリング容量により前記校正電圧を保持する校正モードとなり、他の一つのオートゼロ増幅器が前記入力信号を前記第1の増幅経路において前記第1の相互コンダクタンス増幅器及び前記第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路1モードとなり、さらに他の一つのオートゼロ増幅器が前記入力信号を前記第2の増幅経路において前記第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路2モードとなるように、これら複数の動作モードを前記スイッチにより切り替えるアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、前記スイッチは、オン時にスイッチ入力端に入力された信号をスイッチ出力端に出力し、オフ時にスイッチ入力端に入力された信号をスイッチ出力端に出力しない第1乃至第8のスイッチを有し、前記第1の相互コンダクタンス増幅器は、前記第1のスイッチ乃至前記第3のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、前記第2の相互コンダクタンス増幅器は、前記第4のスイッチ及び前記第5のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、前記サンプリング容量は、前記第6のスイッチのスイッチ出力端に接続され、前記第3の相互コンダクタンス増幅器は、前記第6のスイッチのスイッチ出力端に入力が接続され、前記第1乃至前記第3のオートゼロ増幅器のそれぞれは、前記入力信号として差動信号が入力される第1の入力端子及び第2の入力端子と、前記入力される差動信号が無信号状態となる同相入力端子と、前記第8のスイッチのスイッチ出力端に接続された第1の出力端子と、前記第7のスイッチのスイッチ出力端に接続された第2の出力端子と、をさらに備え、前記第1の入力端子が前記第1のスイッチ及び前記第4のスイッチのスイッチ入力端に接続され、前記第2の入力端子が前記第3のスイッチのスイッチ入力端に接続され、前記同相入力端子が前記第2のスイッチ及び前記第5のスイッチのスイッチ入力端に接続され、前記第6のスイッチ乃至前記第8のスイッチのスイッチ入力端が前記第1の相互コンダクタンス増幅器乃至前記第3の相互コンダクタンス増幅器の出力に接続され、前記校正モードにおいては、前記第2のスイッチ、前記第5のスイッチ、及び前記第6のスイッチがオンとなるとともに、前記第1のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチ、前記第7のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオフとなり、前記経路1モードにおいては、前記第1のスイッチ、前記第4のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオンとなるとともに、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第5のスイッチ、前記第6のスイッチ、及び前記第7のスイッチがオフとなり、前記経路2モードにおいては、前記第3のスイッチ、前記第5のスイッチ、及び前記第7のスイッチがオンとなるとともに、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第4のスイッチ、前記第6のスイッチ、及び前記第8のスイッチがオフとなる、増幅装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第1の入力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第1の入力端子が接続され、前記第2の入力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第2の入力端子が接続され、前記第1の出力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第1の出力端子が接続され、前記第2の出力経路が、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器のそれぞれの前記第2の出力端子が接続された、増幅装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記動作モードの組み合わせとして、前記第1のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであるフェイズ1と、前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記校正モードであるフェイズ2と、前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであるフェイズ3と、前記第1のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであるフェイズ4と、前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記校正モードであるフェイズ5と、前記第1のオートゼロ増幅器が前記経路2モードであり、前記第2のオートゼロ増幅器が前記校正モードであり、前記第3のオートゼロ増幅器が前記経路1モードであるフェイズ6と、を有し、複数のフェイズを時系列に切り替える、増幅装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ1乃至前記フェイズ6を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ1、前記フェイズ3、及び前記フェイズ5を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器は、前記フェイズ4、前記フェイズ6、及び前記フェイズ2を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックによって前記複数のフェイズを切り替える、増幅装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記いずれかに記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1の増幅器と前記第2のチョッパ変調器との間に入出力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するノイズリダクションループ回路と、を備え、前記ノイズリダクションループ回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、前記ノイズリダクションループ回路の差動入力信号を増幅する第3の増幅器と、前記第3の増幅器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置を提供する。
【0021】
また、本発明は、上記いずれかに記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1の増幅器の出力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するオートコレクションフィードバック回路と、を備え、前記オートコレクションフィードバック回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、前記オートコレクションフィードバック回路の差動入力信号を増幅する第3の増幅器と、前記第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調する第3のチョッパ変調器と、前記第3のチョッパ変調器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置を提供する。
【0022】
また、本発明は、上記いずれかに記載のアンプシェアリングオートゼロ増幅器を有し、入力される差動信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1の増幅器の出力に出力が接続され、前記第2のチョッパ変調器の出力に入力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するリップルリダクションループ回路と、を備え、前記リップルリダクションループ回路は、入出力が負帰還構成となるよう接続され、前記リップルリダクションループ回路の入力の高周波雑音成分を取り出すカップリング容量と、前記カップリング容量の出力の差動電流信号を差動電圧信号に変換する抵抗と、前記抵抗によって変換された差動電圧信号を増幅する第3の増幅器と、前記第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調する第3のチョッパ変調器と、前記第3のチョッパ変調器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において、前記第1乃至第3のオートゼロ増幅器の動作モードの切り替えによって前記第2の増幅器と前記第3の増幅器とを切り替えて機能させる、増幅装置を提供する。
【0023】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第1乃至第4の増幅器は、相互コンダクタンス増幅器を含む、増幅装置を提供する。
【0024】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第2の増幅器は、入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第1の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第1の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路1モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅する主経路の増幅器であり、前記第2の増幅器の位相補償を行う位相補償回路を備え、前記第3の増幅器は、入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第2の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第2の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路2モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅するフィードバックループの増幅器である、増幅装置を提供する。
【0025】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記第2の増幅器は、入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第2の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第2の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路2モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅する主経路の増幅器であり、前記第2の増幅器の位相補償を行う位相補償回路を備え、前記第3の増幅器は、入力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の前記第1の入力経路に接続され、出力が前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器の第1の出力経路に接続され、入力信号を前記アンプシェアリングオートゼロ増幅器において前記経路1モードとなった前記第1乃至第3のいずれかのオートゼロ増幅器が増幅するフィードバックループの増幅器である、増幅装置を提供する。
【0026】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記フィルタ回路は、増幅器と容量とを有して構成される積分回路を含み、前記第3の増幅器の出力の低周波信号成分を増幅し、高周波信号成分を低減する、増幅装置を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減するとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能な増幅装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、校正モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。
【
図3】第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、経路1モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。
【
図4】第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、経路2モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第1例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第2例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第3例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図9】第2の実施形態の増幅回路におけるアンプシェアリングオートゼロ増幅器を模式的に示した機能説明図である。
【
図10】第2の実施形態の増幅回路の構成をより具体的に示した図である。
【
図11】第3の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図12】第4の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図13】第5の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図14】第6の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図15】第7の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図16】チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
【
図17】
図16の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【
図18】ノイズリダクションループ回路を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
【
図19】
図18の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【
図20】
図18の増幅回路において出力段の増幅器にPing-Pongオートゼロ増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
【
図21】
図20の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る増幅装置を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
(本実施形態の内容に至る経緯)
本実施形態に至る経緯を説明するために、チョッパ変調器及びオートゼロ増幅器(Autozeroing Amplifier)を用いたチョッパ安定化増幅器を含む増幅装置の構成例を用いる。
【0031】
図16は、チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
図16では基本的なチョッパ安定化増幅器の構成を示している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器1001、増幅器1002、チョッパ変調器1003を備える。
図16の構成において、増幅器1002にはオフセット成分(Voffset)及び低周波雑音成分(1/f noise)が発生する。そこで、チョッパ変調器1001によって低周波帯域の信号成分を増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が少ない高周波帯域に変調し、増幅器1002にて増幅した後、チョッパ変調器1003によって高周波帯域の信号成分を低周波帯域に復調する。これにより、チョッパ安定化増幅器の全体のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。しかし、チョッパ変調器1003によって高周波帯域に変調されたオフセット成分及び低周波雑音成分はリップルノイズとなり、高周波雑音成分が発生する課題が生じる。
【0032】
図17は、
図16の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図17では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図17において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器1001及びチョッパ変調器1003のチョッパ周波数をfchとする。信号成分は、一度チョッパ変調器1001によって高周波帯域に変調された後に、増幅器1002にて増幅され、増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が加算される。その後、チョッパ変調器1003を通すことにより信号成分は復調され、オフセット成分及び低周波雑音成分は高周波帯域に変調される。
【0033】
このように、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調することによってリップルノイズが発生してしまうため、低雑音化を図るためには、リップルノイズの原因となるオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する必要がある。オフセット成分及び低周波雑音成分を低減するため、発明者は、以下に示すようなノイズリダクションループ(Noise Reduction Loop)回路を有する増幅回路を見出した。
【0034】
図18は、ノイズリダクションループ回路を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
図18の増幅回路は、差動入力の入力端より入力される入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器102とを備える。また、増幅回路は、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器103と、チョッパ変調器103にて復調された信号成分を増幅する増幅器120とを備える。増幅器120の出力が増幅回路の出力端となり、出力信号Voutが出力される。また、増幅回路は、相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に、相互コンダクタンス増幅器102の出力に負帰還構成となるように入出力が接続されたノイズリダクションループ回路110を備える。
【0035】
ノイズリダクションループ回路110は、高周波帯域に変調された信号成分を増幅する相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分を、チョッパ変調器103が高周波帯域に変調する前にフィードバックして低減する回路である。この構成により、ノイズリダクションループ回路110は、チョッパ変調器103の出力に発生するリップルノイズを低減する機能を有する。本明細書では、このような雑音低減機能を有する負帰還ループのフィードバック回路をノイズリダクションループ回路と呼ぶことにする。
【0036】
ノイズリダクションループ回路110は、ノイズリダクションループ回路110の入力を増幅するPing-Pongオートゼロ増幅器111と、Ping-Pongオートゼロ増幅器111の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路112(Filter)と、フィルタ回路112の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器113とを有する構成である。
【0037】
ノイズリダクションループ回路110の入力段において、オートゼロ増幅器としてPing-Pongオートゼロ増幅器111を用いることで、ノイズリダクションループ回路110の入力信号をオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を少なくして増幅する。Ping-Pongオートゼロ増幅器111の出力は、フィルタ回路112によって高周波帯域が低減されることによって、ノイズリダクションループ回路110が増幅回路のチョッパ変調器101によって高周波帯域に変調された入力信号の増幅に与える影響を低減する。フィルタ回路112の出力は、相互コンダクタンス増幅器113によって増幅されノイズリダクションループ回路110の出力部に出力される。
【0038】
図19は、
図18の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図19では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図19において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器101及びチョッパ変調器103のチョッパ周波数をfchとする。
【0039】
信号成分は、一度チョッパ変調器101によって高周波帯域に変調された後に、相互コンダクタンス増幅器102にて増幅される。このとき、相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分が加算されるが、このオフセット成分及び低周波雑音成分は、図中の破線→実線で示すように、ノイズリダクションループ回路110によって低減される。その後、チョッパ変調器103を通すことにより信号成分は復調され、低減されたオフセット成分及び低周波雑音成分は高周波帯域に変調される。そして、復調された信号成分は増幅器120にて増幅されて出力される。このように、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調することによってリップルノイズが発生してしまうが、ノイズリダクションループ回路110を用いることで、リップルノイズの原因となるオフセット成分及び低周波雑音成分を低減することができる。このため、増幅器120の出力において、増幅回路の出力として最終的に出力されるリップルノイズが低減される。
【0040】
ここで、増幅回路のさらなる高精度化を図るため、
図18の増幅回路の構成を一部変更し、チョッパ変調器103の後段に設ける出力段の増幅器120においてPing-Pongオートゼロ増幅器を用いることも可能である。
【0041】
図20は、
図18の増幅回路において出力段の増幅器にPing-Pongオートゼロ増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
図20の増幅回路は、ノイズリダクションループ回路110において2つのオートゼロ増幅回路210、220によるPing-Pongオートゼロ増幅器111を有するとともに、チョッパ変調器103の後段の二段目の増幅器120において、2つのオートゼロ増幅回路410、420によるPing-Pongオートゼロ増幅器124を備える。このように二段目の増幅器120にPing-Pongオートゼロ増幅器124を用いることにより、出力段のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減してより高精度な増幅が可能になる。
【0042】
図21は、
図20の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
図21において、CHOP及びCHOP ̄はチョッパ変調器101、103を駆動する動作クロックとしての相補チョッピングクロック信号の動作波形を示している。ここで、オーバーライン付きのCHOP ̄は、CHOPの反転信号を表すものである。また、φ1、φ3はオートゼロ増幅回路210、220、410、420のスイッチΦ1、Φ3に、φ2、φ4はオートゼロ増幅回路210、220、410、420のスイッチΦ2、Φ4にそれぞれ対応し、各スイッチΦ1~Φ4を駆動する動作クロックに関するクロック信号の動作波形を示している。ここでは、スイッチΦ1~Φ4を駆動する動作クロックのクロック信号φ1~φ4の周波数は、相補チョッピングクロック信号CHOP及びCHOP ̄の周波数、すなわちチョッパ変調器101、103のチョッパ周波数fchよりも低い周波数に設定する。
【0043】
オートゼロ増幅回路210、220は、所定の動作クロックのクロック信号φ1、φ2によってスイッチΦ1及びΦ2を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。また、オートゼロ増幅回路410、420は、所定の動作クロックのクロック信号φ3、φ4によってスイッチΦ3及びΦ4を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。オートゼロ増幅回路210が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路220は増幅モードで動作し、オートゼロ増幅回路220が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路210は増幅モードで動作する。また、オートゼロ増幅回路410が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路420は増幅モードで動作し、オートゼロ増幅回路420が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路410は増幅モードで動作する。
【0044】
図20の増幅回路は、2つのPing-Pongオートゼロ増幅器を備えており、それぞれに2つずつ合計4つのオートゼロ増幅器が必要となる。このため、回路面積及び消費電力を増加させてしまう。また、増幅回路全体の設計の自由度を上げるため、2つのPing-Pongオートゼロ増幅器は、それぞれ異なる相互コンダクタンス値で設計可能とする必要がある。
【0045】
上記の課題を鑑み、本実施形態では、オフセット成分及び低周波雑音成分の低減と、回路面積及び消費電力の低減とを図ることが可能な増幅装置の構成例を以下に示す。
【0046】
本実施形態では、チョッパ変調器及びオートゼロ増幅器を用いたチョッパ安定化増幅器を含む増幅装置の構成例を例示する。
【0047】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。本実施形態に係る増幅装置は、複数のオートゼロ増幅器を含むアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を備える。本明細書では、複数のオートゼロ増幅器の動作を切り替えて複数の入力経路及び複数の出力経路に接続し、オートゼロ増幅器をシェアリング(アンプシェアリング)して機能させる増幅回路をアンプシェアリングオートゼロ増幅器と呼ぶことにする。
【0048】
増幅回路は、複数の入力経路として、差動信号が入力される2つの入力経路である入力経路1(第1の入力経路)及び入力経路2(第2の入力経路)を有し、複数の出力経路として、2つの出力経路である出力経路1(第1の出力経路)及び出力経路2(第2の出力経路)を有する。ここで、入力経路1の第1の入力端子から入力される信号を増幅して出力経路1の第1の出力端子より出力する経路を第1の増幅経路(経路1)、入力経路2の第2の入力端子から入力される信号を増幅して出力経路2の第2の出力端子より出力する経路を第2の増幅経路(経路2)と称することにする。アンプシェアリングオートゼロ増幅器500は、複数のオートゼロ増幅器として、ここでは並列に接続された3つのオートゼロ増幅器510、オートゼロ増幅器520、オートゼロ増幅器530を備える。なお、複数のオートゼロ増幅器として3つ以上のオートゼロ増幅器を備えていてもよい。
【0049】
第1の実施形態の増幅回路は、それぞれのオートゼロ増幅器510、520、530において、オン時にスイッチ入力端に入力された差動信号をスイッチ出力端に出力し、オフ時にスイッチ入力端に入力された差動信号をスイッチ出力端に出力しない機能を有する第1乃至第8のスイッチΦ1,1~Φ1,8、Φ2,1~Φ2,8、Φ3,1~Φ3,8を備える。また、増幅回路は、入力される差動信号が無信号状態となる同相入力端子(コモン入力端子)Vcmを備える。同相入力端子Vcmは、差動信号に対して入力ゼロとなるようなバイアス電圧が印加される端子である。
【0050】
第1のオートゼロ増幅器510は、第1の相互コンダクタンス増幅器511、第2の相互コンダクタンス増幅器512、第3の相互コンダクタンス増幅器513、サンプリング容量C51を有する。第2のオートゼロ増幅器520は、第1の相互コンダクタンス増幅器521、第2の相互コンダクタンス増幅器522、第3の相互コンダクタンス増幅器523、サンプリング容量C52を有する。第3のオートゼロ増幅器530は、第1の相互コンダクタンス増幅器531、第2の相互コンダクタンス増幅器532、第3の相互コンダクタンス増幅器533、サンプリング容量C53を有する。
【0051】
入力経路1は、第1のスイッチΦ1,1、Φ2,1、Φ3,1の入力と、第4のスイッチΦ1,4、Φ2,4、Φ3,4の入力とに接続され、入力経路2は、第3のスイッチΦ1,3、Φ2,3、Φ3,3の入力に接続される。また、同相入力端子Vcmは、第2のスイッチΦ1,2、Φ2,2、Φ3,2の入力と、第5のスイッチΦ1,5、Φ2,5、Φ3,5の入力とに接続される。
【0052】
それぞれのオートゼロ増幅器510、520、530において、第1の相互コンダクタンス増幅器511、521、531の入力は、それぞれ、第1のスイッチΦ1,1、Φ2,1、Φ3,1の出力と、第2のスイッチΦ1,2、Φ2,2、Φ3,2の出力と、第3のスイッチΦ1,3、Φ2,3、Φ3,3の出力とに接続される。また、第2の相互コンダクタンス増幅器512、522、532の入力は、それぞれ、第4のスイッチΦ1,4、Φ2,4、Φ3,4の出力と、第5のスイッチΦ1,5、Φ2,5、Φ3,5の出力とに接続される。また、第3の相互コンダクタンス増幅器513、523、533の入力は、それぞれ、第6のスイッチΦ1,6、Φ2,6、Φ3,6の出力に接続される。この第3の相互コンダクタンス増幅器513、523、533の入力には、サンプリング容量C51、C52、C53が接続される。
【0053】
また、第1の相互コンダクタンス増幅器511、521、531、第2の相互コンダクタンス増幅器512、522、532、及び第3の相互コンダクタンス増幅器513、523、533の出力は互いに接続され、この出力部が第6のスイッチΦ1,6、Φ2,6、Φ3,6の入力と、第7のスイッチΦ1,7、Φ2,7、Φ3,7の入力と、第8のスイッチΦ1,8、Φ2,8、Φ3,8の入力とに接続される。第8のスイッチΦ1,8、Φ2,8、Φ3,8の出力は出力経路1に接続され、第7のスイッチΦ1,7、Φ2,7、Φ3,7の出力は出力経路2に接続される。
【0054】
オートゼロ増幅器510、520、530は、それぞれ、第1乃至第8のスイッチΦ1,1~Φ1,8、Φ2,1~Φ2,8、Φ3,1~Φ3,8をオンオフして切り替えることにより、増幅器の入力経路及び出力経路を切り替える機能を有する。例えば、オートゼロ増幅器510、520、530のそれぞれの第1乃至第8のスイッチをオンオフ制御する制御部を備える。オートゼロ増幅器510、520、530は、第1乃至第8のスイッチのオンオフによって複数の動作モードを切り替えて動作可能である。オートゼロ増幅器510、520、530は、複数の動作モードとして、増幅器の校正を行う校正モード、第1の増幅経路(経路1)の増幅を行う第1の増幅モードである経路1モード、第2の増幅経路(経路2)の増幅を行う第2の増幅モードである経路2モードを有する。
【0055】
次に、本実施形態のオートゼロ増幅器510、520、530における各動作モードについて説明する。以下の説明では、3つのオートゼロ増幅器510、520、530を代表して、第1のオートゼロ増幅器510における動作を説明する。他の第2のオートゼロ増幅器520、第3のオートゼロ増幅器530についても同様である。
【0056】
図2は、第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、校正モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。オートゼロ増幅器510は、校正モードにおいて、第1乃至第8のスイッチΦ1,1~Φ1,8が
図2に示す接続状態となる。
【0057】
校正モードでは、第2のスイッチΦ1,2、第5のスイッチΦ1,5、及び第6のスイッチΦ1,6がオン、第1のスイッチΦ1,1、第3のスイッチΦ1,3、第4のスイッチΦ1,4、第7のスイッチΦ1,7、及び第8のスイッチΦ1,8がオフとなる。これにより、第1の相互コンダクタンス増幅器511及び第2の相互コンダクタンス増幅器512が同相入力端子Vcmに接続される。校正モードでは、オートゼロ増幅器510の校正を行い、第1の相互コンダクタンス増幅器511及び第2の相互コンダクタンス増幅器512のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正電圧を、第3の相互コンダクタンス増幅器513の入力のサンプリング容量C51に貯めて保持(サンプリング)する。
【0058】
図3は、第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、経路1モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。オートゼロ増幅器510は、経路1モードにおいて、第1乃至第8のスイッチΦ1,1~Φ1,8が
図3に示す接続状態となる。
【0059】
経路1モードでは、第1のスイッチΦ1,1、第4のスイッチΦ1,4、及び第8のスイッチΦ1,8がオン、第2のスイッチΦ1,2、第3のスイッチΦ1,3、第5のスイッチΦ1,5、第6のスイッチΦ1,6、及び第7のスイッチΦ1,7がオフとなる。これにより、第1の相互コンダクタンス増幅器511及び第2の相互コンダクタンス増幅器512が入力経路1に接続される。経路1モードでは、校正モードによって校正電圧が保持され、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された第1の相互コンダクタンス増幅器511及び第2の相互コンダクタンス増幅器512によって、入力経路1に入力される差動信号を増幅し、出力経路1に出力する。この場合、増幅器の相互コンダクタンス値(gm値)は、相互コンダクタンス増幅器511のgm値(Gm1)と第2の相互コンダクタンス増幅器512のgm値(Gm2)とを足し合わせた値(Gm1+Gm2)となる。
【0060】
図4は、第1の実施形態におけるオートゼロ増幅器の動作例として、経路2モードにおけるスイッチの接続状態を示す図である。オートゼロ増幅器510は、経路2モードにおいて、第1乃至第8のスイッチΦ1,1~Φ1,8が
図4に示す接続状態となる。
【0061】
経路2モードでは、第3のスイッチΦ1,3、第5のスイッチΦ1,5、及び第7のスイッチΦ1,7がオン、第1のスイッチΦ1,1、第2のスイッチΦ1,2、第4のスイッチΦ1,4、第6のスイッチΦ1,6、及び第8のスイッチΦ1,8がオフとなる。これにより、第1の相互コンダクタンス増幅器511が入力経路2に接続される。第2の相互コンダクタンス増幅器512は同相入力端子Vcmに接続される。経路2モードでは、校正モードによって校正電圧が保持され、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された第1の相互コンダクタンス増幅器511によって、入力経路2に入力される差動信号を増幅し、出力経路2に出力する。この場合、増幅器の相互コンダクタンス値(gm値)は、相互コンダクタンス増幅器511のgm値(Gm1)のみとなる。
【0062】
オートゼロ増幅器510、520、530は、複数の増幅器の内一つが経路1モードの時、他の一つが経路2モードとなり、残る一つが校正モードとなるように動作モードを切り替える機能を有する。これらのオートゼロ増幅器510、520、530によって、3つのオートゼロ増幅器を切り替えて動作させるアンプシェアリングオートゼロ増幅器500が構成される。アンプシェアリングオートゼロ増幅器500は、各オートゼロ増幅器の動作モードを時系列に切り替えて、2つの経路の増幅とオートゼロ増幅器の校正とを交互に行い、アンプシェアリングを実現する機能を有する。このとき、それぞれの動作モードの経路においてgm値を異なる値に設定可能である。なお、第2の相互コンダクタンス増幅器512のgm値をゼロ(Gm2=0)とし、経路1モード(第1の増幅経路)と経路2モード(第2の増幅経路)のgm値を等しく設定することも可能である。
【0063】
アンプシェアリングオートゼロ増幅器500は、各オートゼロ増幅器の動作モードの組合せとして、複数のフェイズを有し、各フェイズを時系列に切り替える。以下に、フェイズ1~フェイズ6の6つのフェイズを例示する。
【0064】
フェイズ1は、オートゼロ増幅器510が校正モードであり、オートゼロ増幅器520が経路2モードであり、オートゼロ増幅器530が経路1モードであるようなフェイズである。フェイズ2は、オートゼロ増幅器510が経路1モードであり、オートゼロ増幅器520が経路2モードであり、オートゼロ増幅器530が校正モードであるようなフェイズである。フェイズ3は、オートゼロ増幅器510が経路1モードであり、オートゼロ増幅器520が校正モードであり、オートゼロ増幅器530が経路2モードであるようなフェイズである。
【0065】
フェイズ4は、オートゼロ増幅器510が校正モードであり、オートゼロ増幅器520が経路1モードであり、オートゼロ増幅器530が経路2モードであるようなフェイズである。フェイズ5は、オートゼロ増幅器510が経路2モードであり、オートゼロ増幅器520が経路1モードであり、オートゼロ増幅器530が校正モードであるようなフェイズである。フェイズ6は、オートゼロ増幅器510が経路2モードであり、オートゼロ増幅器520が校正モードであり、オートゼロ増幅器530が経路1モードであるようなフェイズである。
【0066】
図5は、第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第1例を示す図である。
【0067】
第1例は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、上記のフェイズ1乃至フェイズ6を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックの一例である。この場合、動作モード切り替えの1周期を6つの区間に分割し、各オートゼロ増幅器において1区間分の校正モード、2区間分の経路1モード、1区間分の校正モード、2区間分の経路2モードを順に切り替える動作となる。この第1例は、校正モードの直後に経路1モード又は経路2モードとなり、校正して直ぐに増幅器として使用するため、校正モードにおいてサンプリングされる校正電圧の誤差を低減でき、オートゼロ増幅器をより高精度に動作させることができる。
【0068】
図6は、第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第2例を示す図である。
【0069】
第2例は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、上記のフェイズ1、フェイズ3、フェイズ5を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックの一例である。この場合、動作モード切り替えの1周期を3つの区間に分割し、各オートゼロ増幅器において1区間分の校正モード、1区間分の経路1モード、1区間分の経路2モードを順に切り替える動作となる。この第2例は、スイッチ駆動クロックを単純化でき、各スイッチをオンオフ制御する制御部の構成を簡単にできる。また、校正モードの区間を長くとることができるため、校正モード時にサンプリング容量にチャージする電荷量を大きくでき、ノイズの低減を図ることができる。
【0070】
図7は、第1の実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の第3例を示す図である。
【0071】
第3例は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、上記のフェイズ4、フェイズ6、フェイズ2を順に切り替える周期的なスイッチ駆動クロックの一例である。この場合、動作モード切り替えの1周期を3つの区間に分割し、各オートゼロ増幅器において1区間分の校正モード、1区間分の経路2モード、1区間分の経路1モードを順に切り替える動作となる。この第3例は、第2例と同様、スイッチ駆動クロックを単純にでき、校正モードの区間を長くとることができるため、制御部の構成の簡素化及びノイズの低減を図ることができる。
【0072】
上述した
図20の増幅回路の構成例のように、Ping-Pongオートゼロ増幅器を2つ用いる構成では、オートゼロ増幅器が4つ必要となる。これに対し、本実施形態では、オートゼロ増幅器が3つで済むため、増幅回路の回路面積及び消費電力の低減を実現できる。また、本実施形態では、2つの経路を3つのオートゼロ増幅器によって高精度に増幅する際に、2つの経路の相互コンダクタンス値を別々の値に設計できるという利点がある。本実施形態では、入力経路1から出力経路1にかけての相互コンダクタンス値は第1の相互コンダクタンス増幅器の相互コンダクタンス値と第2の相互コンダクタンス増幅器の相互コンダクタンス値とを加算した値となり、入力経路2から出力経路2にかけての相互コンダクタンス値は第1の相互コンダクタンス増幅器の相互コンダクタンス値となる。これにより、増幅装置において、増幅回路全体の設計の自由度を向上でき、増幅回路について柔軟な設計が可能となる。
【0073】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第2の実施形態は、前述した第1の実施形態のアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を、ノイズリダクションループ回路を用いた増幅回路の構成に適用した例である。
【0074】
第2の実施形態の増幅回路は、入力端より入力される差動入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器(第1の増幅器)102と、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器103とを備える。また、増幅回路は、相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に入出力が接続されたノイズリダクションループ回路110を備える。ノイズリダクションループ回路110は、入出力が負帰還構成となるように接続され、相互コンダクタンス増幅器102の出力を負帰還して相互コンダクタンス増幅器102において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。
【0075】
本実施形態の増幅回路は、チョッパ変調器103にて復調された主経路の信号成分を増幅する第2の増幅器と、ノイズリダクションループ回路110の入力を増幅する第3の増幅器とをそれぞれオートゼロ増幅器によって構成し、これら2つのオートゼロ増幅器の動作を実現するアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を備える。
【0076】
ノイズリダクションループ回路110は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第3の増幅器と、第3の増幅器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路(Filter)112と、フィルタ回路112の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器113とを有する構成である。
【0077】
また、増幅回路は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第2の増幅器の後段に、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備え、増幅器121の出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。
【0078】
また、増幅回路には、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131が設けられる。また、チョッパ変調器101の入力と増幅器121の入力との間にフィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器122が接続される。増幅回路の安定性の更なる向上を図るために、フィードフォワード構成となるように相互コンダクタンス増幅器122の出力を増幅器121の入力に接続する。これらの位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131と相互コンダクタンス増幅器122によるフィードフォワードアンプとによって、位相補償回路が構成される。
【0079】
アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0080】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0081】
図9は、第2の実施形態の増幅回路におけるアンプシェアリングオートゼロ増幅器を模式的に示した機能説明図である。
【0082】
アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、3つのオートゼロ増幅器510、520、530が時系列で互いに動作モードを切り替えながら動作し、アンプシェアリングによって2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器の機能を実現する。経路1モードのオートゼロ増幅器AZ1は、第2の増幅器としてチョッパ変調器103にて復調された主経路の信号を増幅する。経路1モードのオートゼロ増幅器AZ1は、相互コンダクタンス値(gm値)が2つの相互コンダクタンス増幅器のgm値を足し合わせた値(Gm1+Gm2)となる。経路2モードのオートゼロ増幅器AZ2は、第3の増幅器としてノイズリダクションループ回路110に入力されるフィードバックループの信号を増幅する。経路2モードのオートゼロ増幅器AZ2は、相互コンダクタンス値(gm値)が1つの相互コンダクタンス増幅器のgm値(Gm1)となる。校正モードのオートゼロ増幅器AZ3は、相互コンダクタンス増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する電圧をサンプリング容量に保持し、増幅動作時のオフセット成分及び低周波雑音成分がゼロになるように増幅器を校正する。
【0083】
図10は、第2の実施形態の増幅回路の構成をより具体的に示した図である。
図10では、
図8に示した第2の実施形態の増幅回路において、
図1に示した第1の実施形態のアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を備えた構成を示している。
【0084】
ノイズリダクションループ回路110のフィルタ回路112は、容量C31、C32、C33と、相互コンダクタンス増幅器301とを有する積分回路によって構成される。この積分回路により、ノイズリダクションループにおける低周波信号成分を増幅し、高周波信号成分を低減する。そして、フィルタ回路112の出力を相互コンダクタンス増幅器113にて増幅してフィードバックする。このように、フィルタ回路112によって、高周波信号成分を低減して主経路の相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分をフィードバックできる。
【0085】
第2の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させ、ノイズリダクションループ回路を有する増幅回路を構成する。これにより、ノイズリダクションループ回路の入力のオフセットを低減し、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させ、高精度かつ低雑音化を図ることができるとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。また、フィードバックループにおいて、チョッパ変調器を有しておらず、フィルタ回路にノッチフィルタ等を設ける必要が無く、回路構成を簡略化できる。
【0086】
また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定できるため、増幅回路の主経路とノイズリダクションループとにアンプシェアリングオートゼロ増幅器を適用可能であり、増幅装置の回路設計の自由度を向上できる。第2の実施形態では、増幅回路のノイズリダクションループにおいて主経路よりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。この場合、ノイズリダクションループの通過帯域を狭くでき、フィルタ回路の容量の値を小さくできる。これにより、増幅回路の小型化を図ることができる。
【0087】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、入力経路及び出力経路を入れ替えた構成例である。ここでは、第2の実施形態と異なる部分を主に説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0088】
第3の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0089】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0090】
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様、ノイズリダクションループ回路を有する増幅回路において、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させることにより、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させるともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定でき、増幅回路の主経路においてノイズリダクションループよりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。
【0091】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第4の実施形態は、前述した第1の実施形態のアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を、オートコレクションフィードバック(Auto Correction Feedback)回路を用いた増幅回路の構成に適用した例である。
【0092】
第4の実施形態の増幅回路は、入力端より入力される差動入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器(第1の増幅器)102と、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器104とを備える。また、増幅回路は、相互コンダクタンス増幅器102の出力端に出力が接続され、チョッパ変調器104の出力端に入力が接続されたオートコレクションフィードバック回路610を備える。オートコレクションフィードバック回路610は、入出力が負帰還構成となるように接続され、相互コンダクタンス増幅器102の出力を負帰還して相互コンダクタンス増幅器102において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。
【0093】
本実施形態の増幅回路は、チョッパ変調器104にて復調された主経路の信号成分を増幅する第2の増幅器と、オートコレクションフィードバック回路610の入力を増幅する第3の増幅器とをそれぞれオートゼロ増幅器によって構成し、これら2つのオートゼロ増幅器の動作を実現するアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を備える。
【0094】
オートコレクションフィードバック回路610は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第3の増幅器と、第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調するチョッパ変調器615と、チョッパ変調器615の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路612と、フィルタ回路612の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器613とを有する構成である。
【0095】
オートコレクションフィードバック回路610において、第3の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減するため、チョッパ変調器615の後段のフィルタ回路612として、ローパスフィルタとスイッチドキャパシタ型のノッチフィルタとが設けられる。チョッパ変調器615の出力の高周波信号成分をノッチフィルタによって除去することにより、利得低下を抑制しつつフィードバックループの入力のオフセットを低減できる。なお、オートコレクションフィードバック回路610において第3の増幅器をオートゼロ増幅器とすることにより、ノッチフィルタを無くすことも可能である。この場合、ノッチフィルタの周波数特性を考慮しなくて良くなるため、オートコレクションフィードバック回路610の安定性設計が容易になる。
【0096】
また、増幅回路は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第2の増幅器の後段に、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備え、増幅器121の出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。
【0097】
また、増幅回路には、第2の実施形態と同様、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131と、チョッパ変調器101の入力と増幅器121の入力との間に接続されフィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器122とが設けられる。これらの位相補償容量及びフィードフォワードアンプによって位相補償回路が構成される。
【0098】
アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0099】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0100】
第4の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させ、オートコレクションフィードバック回路を有する増幅回路を構成する。これにより、オートコレクションフィードバック回路の入力のオフセットを低減し、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させ、高精度かつ低雑音化を図ることができるとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。
【0101】
また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定できるため、増幅回路の主経路とオートコレクションフィードバックループとにアンプシェアリングオートゼロ増幅器を適用可能であり、増幅装置の回路設計の自由度を向上できる。第4の実施形態では、増幅回路のオートコレクションフィードバックループにおいて主経路よりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。
【0102】
(第5の実施形態)
図13は、第5の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例であり、入力経路及び出力経路を入れ替えた構成例である。ここでは、第4の実施形態と異なる部分を主に説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0103】
第5の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0104】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0105】
第5の実施形態では、第4の実施形態と同様、オートコレクションフィードバック回路を有する増幅回路において、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させることにより、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させるともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定でき、増幅回路の主経路においてオートコレクションフィードバックループよりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。
【0106】
(第6の実施形態)
図14は、第6の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第6の実施形態は、前述した第1の実施形態のアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を、リップルリダクションループ(Ripple Reduction Loop)回路を用いた増幅回路の構成に適用した例である。
【0107】
第6の実施形態の増幅回路は、入力端より入力される差動入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器(第1の増幅器)102と、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器104とを備える。また、増幅回路は、相互コンダクタンス増幅器102の出力端に出力が接続され、チョッパ変調器104の出力端に入力が接続されたリップルリダクションループ回路620を備える。リップルリダクションループ回路620は、入出力が負帰還構成となるように接続され、相互コンダクタンス増幅器102の出力を負帰還して相互コンダクタンス増幅器102において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。
【0108】
本実施形態の増幅回路は、チョッパ変調器104にて復調された主経路の信号成分を増幅する第2の増幅器と、リップルリダクションループ回路620の入力を増幅する第3の増幅器とをそれぞれオートゼロ増幅器によって構成し、これら2つのオートゼロ増幅器の動作を実現するアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を備える。
【0109】
リップルリダクションループ回路620は、リップルリダクションループ回路620の入力の高周波雑音成分を取り出すカップリング容量C61と、カップリング容量C61の出力の差動電流信号を差動電圧信号に変換する抵抗R61と、抵抗R61によって変換された差動電圧信号を増幅するアンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第3の増幅器と、第3の増幅器の出力の高周波雑音成分を直流成分及び低周波雑音成分に復調するチョッパ変調器625と、チョッパ変調器625の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路622と、フィルタ回路622の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器623とを有する構成である。
【0110】
リップルリダクションループ回路620において、第3の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減するため、フィードバックループの入力段にカップリング容量C61が設けられる。また、チョッパ変調器625での変調後の相互コンダクタンス増幅器623にて発生するオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減するため、第3の増幅器としてオートゼロ増幅器が用いられる。オートゼロ増幅器によって、フィードバックループのリップル成分及びオフセット成分を低減でき、増幅回路におけるオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を削減できる。
【0111】
また、増幅回路は、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500による第2の増幅器の後段に、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備え、増幅器121の出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。
【0112】
また、増幅回路には、第2及び第4の実施形態と同様、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131と、チョッパ変調器101の入力と増幅器121の入力との間に接続されフィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器122とが設けられる。これらの位相補償容量及びフィードフォワードアンプによって位相補償回路が構成される。
【0113】
アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0114】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0115】
第6の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させ、リップルリダクションループ回路を有する増幅回路を構成する。これにより、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させ、高精度かつ低雑音化を図ることができるとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。
【0116】
また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定できるため、増幅回路の主経路とリップルリダクションループとにアンプシェアリングオートゼロ増幅器を適用可能であり、増幅装置の回路設計の自由度を向上できる。第6の実施形態では、増幅回路のリップルリダクションループにおいて主経路よりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。
【0117】
(第7の実施形態)
図15は、第7の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第7の実施形態は、第6の実施形態の変形例であり、入力経路及び出力経路を入れ替えた構成例である。ここでは、第6の実施形態と異なる部分を主に説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0118】
第7の実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500において、第2の増幅器は、入力が入力経路2に接続され、出力が出力経路2に接続され、第2の増幅経路(経路2)の増幅器となる。すなわち、第2の増幅器は、入力経路2からの差動入力信号を、経路2モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路2より出力する。
【0119】
また、第3の増幅器は、入力が入力経路1に接続され、出力が出力経路1に接続され、第1の増幅経路(経路1)の増幅器となる。すなわち、第3の増幅器は、入力経路1からの差動入力信号を、経路1モードとなったアンプシェアリングオートゼロ増幅器500内部のオートゼロ増幅器510又はオートゼロ増幅器520又はオートゼロ増幅器530により増幅し、出力信号を出力経路1より出力する。
【0120】
第7の実施形態では、第6の実施形態と同様、リップルリダクションループ回路を有する増幅回路において、アンプシェアリングオートゼロ増幅器を用いて2系統のPing-Pongオートゼロ増幅器を機能させることにより、増幅回路のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させるともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる。また、複数の経路において異なる相互コンダクタンス値を設定でき、増幅回路の主経路においてリップルリダクションループよりも小さい相互コンダクタンス値を設定可能である。
【0121】
本実施形態では、並列に接続された少なくとも3つの増幅器である第1乃至第3のオートゼロ増幅器510、520、530を備えるアンプシェアリングオートゼロ増幅器500を有する。オートゼロ増幅器510、520、530のそれぞれは、入力信号を増幅する第1の相互コンダクタンス増幅器511、521、531及び第2の相互コンダクタンス増幅器512、522、532と、第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の入力信号を無信号状態としたときに第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器の出力を入力する第3の相互コンダクタンス増幅器513、523、533と、第3の相互コンダクタンス増幅器の入力において第1及び第2の相互コンダクタンス増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正電圧を保持するサンプリング容量C51、C52、C53と、を有する。また、入力される差動信号を第1の相互コンダクタンス増幅器及び第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第1の増幅経路に接続される第1の入力経路(入力経路1)及び第1の出力経路(出力経路1)と、入力される差動信号を第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する第2の増幅経路に接続される第2の入力経路(入力経路2)及び第2の出力経路(出力経路2)と、第1の入力経路及び第1の出力経路と、第2の入力経路及び第2の出力経路との経路切り替えを行うスイッチΦ1,1~Φ1,8、Φ2,1~Φ2,8、Φ3,1~Φ3,8と、を備える。アンプシェアリングオートゼロ増幅器500は、第1乃至第3のオートゼロ増幅器510、520、530のうち、一つのオートゼロ増幅器がサンプリング容量により校正電圧を保持する校正モードとなり、他の一つのオートゼロ増幅器が入力信号を第1の増幅経路において第1の相互コンダクタンス増幅器及び第2の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路1モードとなり、さらに他の一つのオートゼロ増幅器が入力信号を第2の増幅経路において第1の相互コンダクタンス増幅器によって増幅する経路2モードとなるように、これら複数の動作モードをスイッチにより切り替える。これにより、3つのオートゼロ増幅器によって2つのPing-Pongオートゼロ増幅器の機能を実現でき、増幅回路の回路面積及び消費電力の低減を図ることができる。また、2つの経路を3つのオートゼロ増幅器によって高精度に増幅する際に、2つの経路の相互コンダクタンス値を別々の値に設計可能である。このため、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減可能であるとともに、増幅回路全体の設計の自由度を向上できる。
【0122】
また、本実施形態では、アンプシェアリングオートゼロ増幅器500を、ノイズリダクションループ回路110、オートコレクションフィードバック回路610、リップルリダクションループ回路620のいずれかにおいて、主経路の第2の増幅器とフィードバックループの第3の増幅器とに適用して構成する。これにより、オートゼロ増幅器による増幅回路によって相互コンダクタンス増幅器102の出力のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減し、増幅装置の出力に本来現れるリップルノイズの発生を抑制できる。このため、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できるとともに、増幅回路の回路面積及び消費電力を低減でき、小型化及び省電力化を図ることができる。よって、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減する各種の増幅装置を実現できる。
【0123】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減するとともに、回路面積及び消費電力を低減させることが可能となる効果を有し、例えばセンサ信号等を増幅する増幅回路、計装アンプ等の増幅装置に有用である。
【符号の説明】
【0125】
101、103、104、615、625:チョッパ変調器
102、113、122、123、511、512、513、521、522、523、531、532、533、613、623:相互コンダクタンス増幅器
110:ノイズリダクションループ回路
112、612:フィルタ回路
121:増幅器
500:アンプシェアリングオートゼロ増幅器
510、520、530:オートゼロ増幅器
610:オートコレクションフィードバック回路
620:リップルリダクションループ回路
C31、C32、C33:容量
C51、C52、C53:サンプリング容量
C61:カップリング容量
C111、C112、C121、C122、C131:位相補償容量
Φ1,1~Φ1,8、Φ2,1~Φ2,8、Φ3,1~Φ3,8:スイッチ