IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清食品ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7440321調理麺及びその製造方法並びに調理麺の食感劣化抑制方法。
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】調理麺及びその製造方法並びに調理麺の食感劣化抑制方法。
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240220BHJP
【FI】
A23L7/109 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020059227
(22)【出願日】2020-03-28
(65)【公開番号】P2021153531
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278448(JP,A)
【文献】米国特許第05945144(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0088939(KR,A)
【文献】特開平08-242793(JP,A)
【文献】特開2021-153532(JP,A)
【文献】特開2021-029209(JP,A)
【文献】特開2021-153574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.5~2.0重量%含むことを特徴とするチルド調理麺(ただし、120℃以上で加熱処理されたチルド調理麺を除く)。
【請求項2】
前記チルド調理麺が中華麺であることを特徴とする請求項記載のチルド調理麺。
【請求項3】
主原料粉と、前記主原料粉の重量に対して0.5~2.0重量%のリン酸一水素カルシウムの水和物と、を粉体混合した粉体に、練り水を加えてミキサーで混捏し、麺生地を作製する工程と、
製した前記麺生地を製麺し生麺を作製する工程と、
製した前記生麺を加熱調理する工程と、
加熱調理した前記生麺を冷却する工程と、含むことを特徴とするチルド調理麺の製造方法(ただし、120℃以上で加熱処理されたチルド調理麺を除く)。
【請求項4】
前記チルド調理麺が中華麺であることを特徴とする請求項記載のチルド調理麺の製造方法。
【請求項5】
主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.5~2.0重量%含むことを特徴とするチルド調理麺の食感劣化抑制方法(ただし、120℃以上で加熱処理されたチルド調理麺を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理麺の低温保存による食感劣化の抑制方法に関する。
【0002】
従来、焼きそばなどの蒸しめんやうどん、そば、ラーメン、冷やし中華、パスタなどの茹でめんなど、加熱調理された調理麺が多数上市されている。これらの麺は、加熱後喫食するものもあれば、そのまま喫食するものもあり、これらの多くが、10℃以下のチルド帯で保存され、数日~1カ月程度の賞味期限を有する。
【0003】
これらの調理麺は、低温で長時間保存されると、水分の均質化による食感の変化とは別に、α化した澱粉が老化したような、瑞々しさに欠け、表面がごわごわとし、芯に粘りのないような硬脆い食感が出るようになる。このような食感は、特に焼きそばやラーメン、冷やし中華などの中華麺類に目立つ傾向がある。
【0004】
調理麺の老化防止を目的とした先行技術文検討しては、特許文献1~3の技術が知られている。特許文献1には、タピオカ澱粉を含む乾麺を浸漬して水分を上げた後に茹でることを特徴とする冷蔵又は冷凍保存用の茹で麺について記載されている。また、特許文献2には、加工タピオカ澱粉を含む原料から製造された生麺を浸漬液15分以上浸漬することと、浸漬させた生麺類を加熱調理することを含む調理済み麺類の製造方法が記載されている。また、特許文献3には、麺生地にレシチンと酸剤を含有することを特徴とする茹で麺類が記載されている。
【0005】
これらの技術は、麺線内部の糊化を促進することや麺のpHを低下させることにより麺の老化を抑える技術である。
【0006】
また、カルシウム塩を麺に使用する技術として、特許文献4の技術が知られている。特許文献4には、生中華麺が本来有する「腰」の強い独特の粘りと歯ごたえがより一層向上し、長期保存性を兼ね備えた麺類を提供する技術として、麺類の製造方法であって、下記の工程、すなわち、(1) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉に、必要に応じてアルカリ剤、食塩等を加えて水とを混練し、外層用の麺生地を調製し、(2) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉、アルギン酸および/またはアルギン酸塩、アルカリ剤、必要に応じて食塩等を加えて、水とを混練し、中性乃至弱アルカリ性のpHを呈する内層用麺生地を調製し、(3) 前記内層用生地と外層用生地をロール圧延等の常法により各々麺帯とし、これらを更に複合圧延することにより、外層/内層/外層からなる麺帯とし、常法により麺線として、(4) 前記麺線をα化処理と同時、又はα化処理後に酸液処理して、麺線pHを酸性域に調整し、次いで、(5) 前記酸処理した麺線を包装密封した後、加熱殺菌処理する工程、からなる三層生麺類の製造方法において、前記の内層用麺生地の調製時の混練時において、カルシウム及び/又はカルシウム塩を添加することを特徴とする三層生麺類の製造方法が記載されている。
【0007】
この技術に関しては、アルギン酸とカルシウム塩を反応させてアルギン酸カルシウムを作製することにより、麺の食感の劣化を抑制する技術であり、アルギン酸が含有していることが必要である。また、カルシウム塩の一例としてリン酸一水素カルシウムが記載されているが、リン酸一水素カルシウムの水和物の使用や、リン酸一水素カルシウムの水和物による食感の劣化抑制効果については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-73213号公報
【文献】特開2015-195764号公報
【文献】特開2012-105561号公報
【文献】特開平6-209731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低温保存における経時的な食感劣化が抑制された調理麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、生中華麺について鋭意研究していたところ、偶然にも本発明を見出し本発明に至った。
【0011】
すなわち、リン酸一水素カルシウムの水和物を含むことを特徴とする調理麺である。
【0012】
また、本発明に係る調理麺は、主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.5~2重量%含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る調理麺は、中華麺が好ましい。
【0014】
また、本発明に係る調理麺の製造方法は、主原料粉にリン酸一水素カルシウムの水和物を添加し粉体混合した粉体に、練り水を加えてミキサーで混捏し、麺生地を作製する工程と、作製した麺生地を製麺し生麺を作製する工程と、作製した生麺を加熱調理する工程と、含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る調理麺の製造方法は、主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.5~2重量%添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、低温保存における経時的な食感劣化が抑制された調理麺を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。また、本発明に係る調理麺は、蒸しや茹でなどの加熱処理がされた麺を指す。尚、本発明に係る調理麺は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、うどん、そば、焼きそば、ラーメン、冷やし中華、パスタ等が挙げられる。特に本発明の効果は、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのかんすいを含むアルカリ性の麺で効果があり、焼きそば、ラーメン、冷やし中華に用いられる中華麺が好ましい。
【0018】
1.麺原料配合
本発明に係る調理麺には、通常の調理麺の原料が使用できる。すなわち、主原料粉としては、小麦粉並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の各種澱粉が挙げられ、単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉、及び架橋澱粉等の加工澱粉を使用することもできる。
【0019】
本発明では、これら主原料粉に対して調理麺の製造において一般に使用されている食塩、かんすいなどのアルカリ剤、各種増粘剤、グルテン、卵白、麺質改良剤、食用油脂、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。調理麺の経時的な食感の劣化は、麺のpHが高い程起きやすく、本発明のリン酸一水素カルシウムの水和物による食感の劣化抑制効果は、かんすいを含む、ラーメン、焼きそば、冷やし中華などに使用する中華麺で特に効果が得られやすい。
【0020】
かんすいとしては、中華麺独特の風味を付与し、腰のある食感を出すために、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩を使用することが好ましく、主原料粉に対して0.3~2重量%添加することが好ましい。また、麺のpHを高くして保存性を向上させるためにかん水に加えて焼成カルシウムなどのアルカリ剤を添加することもできる。
【0021】
また、本発明においては、リン酸一水素カルシウムの水和物を添加する。リン酸一水素カルシウムの水和物は、水にほとんど溶解しないため、主原料粉と一緒に粉体混合して麺に添加することが好ましい。リン酸一水素カルシウムは、無水物と水和物(二水和物)とが存在するが、原因は不明だが、無水物には変色や食感変化といった経時的な劣化に対して抑制効果はなく、水和物のみに抑制効果がある。また、同様なリン酸カルシウム塩を検討した結果、低温保存による経時的な食感の劣化を抑えられず、リン酸一水素カルシウムの水和物が、食感や風味への影響が少なく、経時的な変色や食感劣化を抑える上で最も効果的であった。
【0022】
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量としては、主原料粉に対して、0.5~2重量%が好ましい。主原料粉に対して0.5重量%未満であると低温保存による経時的な食感の劣化を抑える効果が弱く、2重量%よりも多くなると麺の食感に影響がある。
【0023】
2.混捏工程
本発明に係る麺生地(ドウ)の作製方法は、常法に従って行えばよい。すなわち、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で、主原料粉とリン酸一水素カルシウムの水和物を含む粉体と炭酸ナトリウム又は/及び炭酸カリウムを溶解した練り水とが均一に混ざるように混捏すればよく、そぼろ状のドウを作製すればよい。
【0024】
3.製麺工程
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウをロールにより粗麺帯とした後、複合等により麺帯化し、さらにロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロールにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。麺帯を作製してから麺線を作製する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯又は押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。
【0025】
5.加熱工程
作製した麺線を容易に喫食できるように蒸し処理または茹で処理により麺線をα化し、予め調理しておく。蒸し処理としては、例えば、飽和蒸気を噴出させた蒸気庫内に麺線2~15分程度通過されることでα化する方法が挙げられる。また、シャワーや浸漬などの水分補給工程を組み合わせることもできる。茹で処理としては、90℃以上のお湯となるように調整された茹で槽に麺線を30秒~10分程度浸漬させることでα化する方法が挙げられる。
【0026】
6.その他工程
(蒸しめん)
加熱工程でα化した麺線は、各調理麺の製造方法に従って調理麺を作製する。調理麺が蒸しめんである場合は、蒸し処理した麺線を必要により水冷した後、所定の長さにカットし、所定の計量ごとにポリエチレンやポリプロピレン製の包装フィルムに入れ、ほぐれ用の油を添加し、密封し、必要により60~100℃で10~50分間加熱殺菌した後、冷却して蒸しめんとすることができる。
【0027】
(茹でめん)
加熱工程で茹で処理し、α化した麺線を水洗する。水洗することにより、表面のぬめりをとり、麺線を冷却し、引き締める。水洗する方法としては、4~20℃程度の水槽にα化した麺線を浸漬させる方法が挙げられる。このとき、水槽を複数槽用意し、段階的に麺線を水洗冷却することができる。また、水槽中にエアを噴出させることにより、麺線を動かしながら水洗、冷却できる。ラーメンなどの麺は、水洗した麺線に、ほぐれ剤を付着させて喫食用の容器に入れるかポリエチレンやポリプロピレン製の袋に入れ密封し、必要により60~100℃で10~50分間加熱殺菌した後、冷却して茹でめんとすることができる。
【0028】
うどんやそばなどの麺の場合は、必要により水洗した麺線を酸浸漬することもできる。酸液に浸漬することで麺線のpHを6以下とし、保存中の細菌の増殖を抑制する。酸液に使用する原料としては、酢酸、乳酸及びクエン酸などの有機酸、ピルビン酸、リン酸、スルホン酸などの酸、並びにこれらの酸の塩が挙げられ、これらの原料を使用して、麺線のpHが6以下となるように酸液の濃度、pH、浸漬時間を調整すればよい。酸浸漬した麺線を所定重量ずつ、ポリエチレンやポリプロピレン等の包装フィルムに入れ、ほぐれ剤を添加し、密封包装し、必要により60~100℃で10~50分間加熱殺菌した後、冷却して茹でめんとすることができる。
【0029】
却した調理麺は、包装した液体スープや薬味等を添付してさらに容器や袋に包装して調理麺製品とすることができる。
【0030】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0031】
(実施例1)
中力粉750g、ヒドロキシプロピルリン酸架橋タピオカ澱粉250からなる主原料粉1Kgに卵白粉10g、グルテン50g、焼成カルシウム2.5g、リン酸一水素カルシウムの水和物5gを粉体混合し、食塩7.5g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)12g、白子たんぱく製剤5g、クチナシ色素4gを水380gに溶解した練り水を加え、常圧ミキサーにて4分間混合後、真空ミキサーで8分間混捏し、ドウを作製した。
【0032】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、20分熟成した後、ロール圧延にて1.35mmまで麺帯を圧延し、20番角のロール切刃にて麺帯を切断し、25cmとなるようにカットして麺線とした。
【0033】
次いでカットした麺線80gを沸騰水中で2分30秒茹で処理し、10℃以下の水に30秒間浸漬して水洗した後、さらに10℃以下の水に30秒間浸漬し水洗冷却した。水洗冷却した麺を液切りし、大豆食物繊維5重量%のほぐし液を麺140gに対して10g添加し、ポリエチレン製の袋に入れ密封し、75℃の蒸気殺菌庫で30分間殺菌し、粗熱を取った後、4℃の冷蔵庫で冷却し、茹でめんサンプル(冷やし中華)を作製した。
【0034】
(実施例2)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を10gとする以外は、実施例1の方法に従って茹でめんサンプルを作製した。
【0035】
(実施例3)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を20gとする以外は、実施例1の方法に従って、茹でめんサンプルを作製した。
【0036】
(比較例1)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を添加しない以外は、実施例1の方法に従って、茹でめんサンプルを作製した。
【0037】
(比較例2)
リン酸一水素カルシウムの代わりにリン酸三カルシウムとする以外は、実施例2の方法に従って、茹でめんサンプルを作製した。
【0038】
(比較例3)
リン酸一水素カルシウムの代わりにリン酸一水素カルシウムの無水物とする以外は、実施例2の方法に従って、茹でめんサンプルを作製した。
【0039】
各試験区の作製した茹でめんサンプルを4℃保存1日目と4℃保存30日目のサンプルを喫食し、評価を行った。試験サンプルの官能評価については、5人のベテランパネラーによって行い、各茹で麺サンプルを冷やし中華用の液体スープ40gで解して喫食し、評価を行った。
【0040】
食感の官能評価については、4℃保存1日目のサンプルは、風味、食感について行い、比較例1のサンプルを基準とし、比較例1と同等のものを◎、やや劣るが概ね良好なものを○、劣るものを△、著しく劣るものを×として評価した。4℃保存30日目のサンプルは、食感について行い、比較例1の4℃保存30日目のサンプルを基準として、同等以上に劣化しているものを×、比較例1より劣化していないが不十分なものを△、比較例1よりも劣化が抑えられ良好なものを○、比較例1よりも明らかに劣化が抑えられ非常に良好なものを◎とした。
【0041】
評価結果を下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~3及び比較例1で示すようにリン酸一水素カルシウムの水和物を添加することで、低温保存による経時的な食感の劣化が抑制された。添加量に関しては、リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を増やすにつれ、風味がやや弱くなる傾向があり、また食感も一定以上添加すると柔らかくなる傾向が認められることから、主原料粉の重量に対して0.5~2重量%の範囲が好ましいと考える。
【0044】
実施例2、比較例2及び比較例3で示すように、同様のリン酸カルシウム類であるリン酸三カルシウム及びリン酸一水素カルシウムの無水物を添加した結果、他のリン酸カルシウム類には、経時的な食感の劣化を抑制する効果はないか、弱くリン酸一水素カルシウムの水和物特有の効果であることがわかった。
【0045】
(実施例4)
準強力粉1Kgからなる主原料粉にリン酸一水素カルシウムの水和物5gを粉体混合し、食塩8g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)5g、グリシン3.5g、白子たんぱく1g、クチナシ色素1gを水370gに溶解した練り水を加え、常圧ミキサーにて15分間混捏し、ドウを作製した。
【0046】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、20分熟成した後、ロール圧延にて1.5mmまで麺帯を圧延し、20番丸のロール切刃にて麺帯を切断して麺線とした。
【0047】
作製した麺線を飽和蒸気の流量が250kg/hとなるように調整した蒸気庫内で、水分を麺線1m当たり4Lとなるようにスプレーしながら5分間蒸し処理した。
【0048】
蒸し処理した麺線を20℃以下の水槽に15秒浸漬し、冷却した後、25cmとなるようにカットし、ポリエチレン製の袋に150gとなるように入れ、ほぐれ用の油を3g添加し、密封した。密封した麺を75℃の蒸気殺菌庫に30分間入れ、加熱殺菌し、粗熱を取った後、4℃の冷蔵庫で冷却し、蒸しめんサンプル(焼きそば)を作製した。
【0049】
(比較例4)
リン酸一水素カルシウムの水和物を添加しない以外は、実施例4の方法に従って蒸しめんサンプルを作製した。
【0050】
各試験区で作製した蒸しめんサンプルを茹でめんサンプルと同様に5人のベテランパネラーにより4℃保存1日目と4℃保存30日目のサンプルを喫食し、評価を行った。試験サンプルの官能評価については、油の引いたフライパンを加熱し、各試験区で作製した蒸しめんサンプルを入れ、水を60g添加してほぐしながら中火で1分加熱し、水がなくなったところで、焼そば用の粉末ソース10gを入れ、中火で1分加熱して喫食し、評価を行った。評価については、茹でめんと同様に比較例4を基準として行った。評価結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
蒸しめんにおいても、リン酸一水素カルシウムの水和物を添加することによって、低温で長期保存した時の食感の劣化が抑えられた。