IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特許-酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品 図1
  • 特許-酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品 図2
  • 特許-酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品 図3
  • 特許-酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/363 20060101AFI20240220BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240220BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240220BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L21/363
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L29/78 627F
H10B12/00 671Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020135777
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032215
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】原田 学
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】半那 拓
(72)【発明者】
【氏名】上野 充
(72)【発明者】
【氏名】小林 大士
(72)【発明者】
【氏名】種田 智
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244945(WO,A1)
【文献】特開2013-080929(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093506(WO,A1)
【文献】特開2013-070010(JP,A)
【文献】特開2004-241296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0168331(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199880(US,A1)
【文献】特開昭62-202415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/363
H01L 21/336
H01L 29/786
H10B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
In、Ge、及びSnを下地に向けて放出することが可能な成膜源を真空容器内に設け、前記真空容器内に酸素を含むプラズマを形成し、
前記下地に5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含む膜を形成する
酸化物半導体膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載された酸化物半導体膜の形成方法において、
前記プラズマは、前記真空容器内に供給される酸素を含むガスによって形成され、酸素の流量が全ガス流量の20%以上30%以下である
酸化物半導体膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された酸化物半導体膜の形成方法において、
前記膜を大気雰囲気下で350℃、30分間の第1加熱処理を行った場合と、前記膜を水素を含むガス雰囲気下で350℃、30分の第2加熱処理を行った場合、前記膜の前記第1加熱処理後の移動度に対する前記膜の前記第2加熱処理後の移動度の割合が90%以上100%以下である
酸化物半導体膜の形成方法。
【請求項4】
ゲート電極と、
5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含む酸化物半導体膜で構成された活性層と、
前記ゲート電極と前記活性層との間に配置されたゲート絶縁膜と、
前記活性層に電気的に接続された不純物拡散領域と
を具備する電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載された電子部品において、
前記不純物拡散領域に電気的に接続されたキャパシタをさらに具備する
電子部品。
【請求項6】
請求項4または5に記載された電子部品において、
前記活性層は、非晶質である
電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の電子部品の微細加工が進行する中、ゲートリーク電流の増加、オン抵抗の増加などが顕在化してくる。
【0003】
このような状況の中、酸化物半導体層をチャネル層とする酸化物半導体トランジスタが注目されている(例えば、特許文献1参照)。チャネル層を酸化物半導体層とすることにより、オフ動作時のチャネルリーク電流が抑えられ、オン抵抗の増加が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-169490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸化物半導体層においては、上記の特性が抑えられたとしても、酸化物半導体層を形成した後のウェーハプロセスによって酸化物半導体層に熱負荷がかけられたり、あるいは、加熱処理時に特定の雰囲気ガスに晒されたりすると、その特性が変化するものがある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、加熱処理を施しても、所望の特性を維持する酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る酸化物半導体膜の形成方法では、In、Ge、及びSnを下地に向けて放出することが可能な成膜源を真空容器内に設け、上記真空容器内に酸素を含むプラズマが形成される。
上記下地に5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含む膜が形成される。
【0008】
このような酸化物半導体膜の形成方法によれば、酸化物半導体膜に加熱処理が施されても、酸化物半導体膜は、所望の特性を維持する。
【0009】
上記の酸化物半導体膜の形成方法においては、上記プラズマは、上記真空容器内に供給される酸素を含むガスによって形成され、酸素の流量が全ガス流量の20%以上30%以下であってもよい。
【0010】
このような酸化物半導体膜の形成方法によれば、酸素流量が上記流量に調整されるため、酸化物半導体膜が所望の特性を維持する。
【0011】
上記の酸化物半導体膜の形成方法においては、上記膜を大気雰囲気下で350℃、30分間の第1加熱処理を行った場合と、上記膜を水素を含むガス雰囲気下で350℃、30分の第2加熱処理を行った場合、上記膜の上記第1加熱処理後の移動度に対する上記膜の上記第2加熱処理後の移動度の割合が90%以上100%以下であってもよい。
【0012】
このような酸化物半導体膜の形成方法によれば、酸化物半導体膜の第1加熱処理後の移動度に対する膜の上記第2加熱処理後の移動度の割合が90%以上100%以下であるため、酸化物半導体膜が所望の特性を維持する。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子部品は、ゲート電極と、活性層と、ゲート絶縁膜と、不純物拡散領域とを具備する。
上記活性層は、5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含む酸化物半導体膜で構成される。
上記ゲート絶縁膜は、上記ゲート電極と上記活性層との間に配置される。
上記不純物拡散領域は、上記活性層に電気的に接続される。
【0014】
このような電子部品によれば、酸化物半導体膜に加熱処理が施されても、酸化物半導体膜は、所望の特性を維持する。
【0015】
上記の電子部品においては、上記不純物拡散領域に電気的に接続されたキャパシタをさらに具備してもよい。
【0016】
このような電子部品によれば、酸化物半導体膜が所望の特性を維持した状態で、キャパシタが有効に機能する。
【0017】
上記の電子部品においては、上記活性層は、非晶質でもよい。
【0018】
このような電子部品によれば、活性層が優れたエッチング加工性を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、加熱処理を施しても、所望の特性を維持する酸化物半導体膜の形成方法及び電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の電子部品の一例を表す模式的断面図である。
図2】活性層を形成する成膜装置の一例を示す模式図である。
図3】活性層を形成する別の成膜装置の例を示す模式図である。
図4】活性層のX線回折結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0022】
本実施形態で提示される酸化物半導体膜の形成方法を説明する前に、酸化物半導体膜が適用されるデバイスの一例について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の電子部品の一例を表す模式的断面図である。
【0024】
図1には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)として機能する半導体素子の要部が例示されている。図1では、メモリ部とスイッチング素子を示し、メモリ部及びスイッチング素子の周辺回路の記載を省略している。
【0025】
電子部品1は、ゲート電極11、12と、活性層20と、ゲート絶縁膜15、16と、不純物拡散領域30、31、32と、キャパシタ41、42とを具備する。活性層20は、酸化物半導体膜で構成される。活性層20は、非晶質層である。ゲート絶縁膜15は、ゲート電極11と活性層20との間に設けられる。ゲート絶縁膜16は、ゲート電極12と活性層20との間に設けられる。不純物拡散領域30、31、32のそれぞれは、活性層20に電気的に接続される。キャパシタ41は、不純物拡散領域31に電気的に接続される。キャパシタ42は、不純物拡散領域32に電気的に接続される。
【0026】
活性層20は、図示しない半導体基板の表面に設けられる。半導体基板は、所定濃度の不純物を含有する半導体基材(例えば、Si基板)で構成される。活性層20は、InGeSnで表される酸化物半導体で構成される。例えば、at%を原子分率とした場合、活性層20は、5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素(O)を含む膜によって構成されている。In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの濃度の組み合わせは、In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの原子分率を足し合わせた合計が100at%になるように、In、Ge、Sn、及びOの原子分率が組み合わされる。
【0027】
このような活性層20であれば、活性層20が形成された後のウェーハプロセスによって活性層20に熱負荷がかけられたり、加熱処理時に水素ガス等の還元性のガスに晒されたりしても、活性層20の移動度の変化及びシート抵抗率の変化が抑えられる。
【0028】
活性層20の表面には、ソース・ドレイン領域として機能する不純物拡散領域30、31、32が設けられている。また、活性層20の表面には、素子分離領域25、26が設けられる。素子分離領域25から素子分離領域26に向かう方向(Y軸方向)において、不純物拡散領域31、不純物拡散領域30、不純物拡散領域32がこの順に並んでいる。例えば、中央に配置された不純物拡散領域30がソース領域、不純物拡散領域30の両側に配置された不純物拡散領域31、32がドレイン領域として機能する。
【0029】
また、活性層20上には、ゲート絶縁膜15、16が設けられている。ゲート絶縁膜15上にはゲート電極11が設けられ、ゲート絶縁膜16上にはゲート電極12が設けられている。ゲート電極11は、ゲート絶縁膜15を介して活性層20に対向している。ゲート電極12は、ゲート絶縁膜16を介して活性層20に対向している。ゲート電極11、12は、Y軸方向に並ぶ。
【0030】
不純物拡散領域30の一部は、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極11と対向する。また、不純物拡散領域30の該一部と反対側の不純物拡散領域30の一部は、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極11と対向している。不純物拡散領域31の一部は、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極11と対向している。不純物拡散領域30の一部は、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極11と対向している。また、ゲート電極11、12のそれぞれの上には、絶縁膜17が設けられている。ゲート電極11、12のそれぞれの側壁には、絶縁物で構成された側壁膜18が設けられている。
【0031】
電子部品1において、ゲート電極11、ゲート絶縁膜15、活性層20、及び不純物拡散領域30、31によってMOSトランジスタが構成され、ゲート電極12、ゲート絶縁膜16、活性層20、及び不純物拡散領域30、32によって別のMOSトランジスタが構成される。これら2つのMOSトランジスタは、素子分離領域25、26によって、素子分離領域25、26によって囲まれた活性層20外の領域から絶縁分離されている。これらのMOSトランジスタは、選択用スイッチング素子として機能する。
【0032】
また、電子部品1には、一例として、シリンダ型のキャパシタ41、42が設けられている。キャパシタ41、42は、Y軸方向に並ぶ。キャパシタ41は、コンタクトプラグ51を介して、不純物拡散領域31に電気的に接続される。キャパシタ42は、コンタクトプラグ52を介して、不純物拡散領域32に電気的に接続される。コンタクトプラグ51、52のそれぞれは、Z軸方向に延在する。
【0033】
キャパシタ41は、下部電極410と、上部電極412と、下部電極410と上部電極412との間に設けられた絶縁層411とを有する。キャパシタ42は、下部電極420と、上部電極422と、下部電極420と上部電極422との間に設けられた絶縁層421とを有する。下部電極、上部電極、及び下部電極と上部電極とに挟まれた絶縁層により、データを蓄積するキャパシタが構成される。
【0034】
また、電子部品1においては、コンタクトプラグ50の下端が不純物拡散領域31に電気的に接続されている。コンタクトプラグ50は、Z軸方向に延在する。また、コンタクトプラグ50の上端は、配線55(Bit LineまたはDigit Line)に電気的に接続される。
【0035】
キャパシタ41、42、コンタクトプラグ50、51、52、及び配線55は、絶縁層60内に設けられる。絶縁層60の上方には図示しない層間配線、層間絶縁膜、コンタクトプラグ等がさらに設けられている。絶縁層60は、単層に限らず、複数の絶縁層が積層されたものでもよい。電子部品1において、キャパシタ及びMOSトランジスタのそれぞれの数については、図示した例に限らない。
【0036】
図2は、活性層を形成する成膜装置の一例を示す模式図である。
【0037】
図2には、多元スパッタリング装置が例示されている。成膜装置200Aは、真空容器201と、ターゲット(スパッタリングターゲット)202I、202G、202Sと、電源203と、ステージ204と、圧力計205と、ガス供給系206、208と、ガス流量計207、209と、排気系230と、制御装置210とを具備する。ステージ204上には、ウェーハ状の基板220が設置されている。基板220は、シリコン等の半導体材を含む。ターゲット202I、202G、202Sのそれぞれの周辺には、防着板211が設けられている。
【0038】
真空容器201は、排気系230によって減圧雰囲気を維持する。真空容器201は、ターゲット202I、202G、202S、ステージ204、及び基板220等を収容する。真空容器201には、真空容器201内の圧力を計測する圧力計205が取り付けられる。また、真空容器201には、放電ガス(例えば、Ar)を供給するガス供給系206が取り付けられる。ガス供給系206から真空容器201内に供給されるガス流量は、ガス流量計207で調整される。さらに、真空容器201には、酸素を供給するガス供給系208が取り付けられる。ガス供給系208から真空容器201内に供給されるガス流量は、ガス流量計209で調整される。
【0039】
ターゲット202I、202G、202Sは、成膜装置200Aの成膜源である。成膜源は、In、Ge、及びSnを下地である基板220に向けて放出することできる。ターゲット202Iは、例えば、In焼結体で構成されている。ターゲット202Gは、例えば、GeO焼結体で構成されている。ターゲット202Sは、例えば、SnO焼結体で構成されている。また、ターゲット202Iは、Inで構成され、ターゲット202Gは、Geで構成され、ターゲット202Sは、Snで構成されてもよい。
【0040】
電源203は、ターゲット202I、202G、202Sのそれぞれに独立して放電電力を供給することができる。電源203としては、RF、VHF等の高周波電源が適用される。真空容器201内に、Ar/Oガスが供給されて、ターゲット202I、202G、202Sに電源203から放電電力が供給されると、ターゲット202I、202G、202Sのスパッタリング面の近傍にArとOとが活性化したプラズマが形成される。
【0041】
これにより、ターゲット202Iからは、InとOとが放出され、ターゲット202Gからは、GeとOとが放出され、ターゲット202Sからは、SnとOとが放出される。さらに、プラズマ中のOが基板220に入射することによって、基板220に、In、Ge、Sn、及びOを含む活性層20が形成される。
【0042】
ステージ204は、ターゲット202I、202G、202Sに対向する。ステージ204は、基板220を支持する。ステージ204には、温調機構が設けられている。ステージ204には、必要に応じてバイアス電位を印加することができる。
【0043】
制御装置210は、成膜装置200Aを制御する。例えば、制御装置210は、電源203の電力、ガス流量計207、209の開度、ステージ204に印加されるバイアス電位、ステージ204の温度等を制御する。圧力計205で計測された圧力は、制御装置210に送られる。
【0044】
制御装置210が成膜条件を変更することにより、基板220上に形成される膜中の元素濃度比を変えることができる。例えば、ターゲット202I、202G、202Sのそれぞれに投入する電力を個別に調整することにより、ターゲット202Iから放出されるIn及びOの相対量が調整され、ターゲット202Gから放出されるGe及びOの放出量が調整され、ターゲット202Sから放出されるSn及びOの放出量が調整される。
【0045】
成膜中の真空容器201内の圧力は。例えば、制御装置210がガス流量計207の開度を調整したり、排気系230に設けられたバルブの開度を調整したりすることで、所定値に維持される。
【0046】
図3は、活性層を形成する別の成膜装置の例を示す模式図である。
【0047】
成膜装置の成膜源は、多元ターゲットに限ることなく、成膜装置200Bのように、1つのターゲット202を用いてもよい。この場合、ターゲット202は、In、Ge、Sn、及びOを含む。
【0048】
例えば、ターゲット202は、InGeSnで表される酸化物半導体で構成される。例えば、ターゲット202は、5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素(O)を含む材料によって構成されている。In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの濃度の組み合わせは、In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの原子分率を足し合わせた合計が100at%になるように、In、Ge、Sn、及びOの原子分率が組み合わされる。
【0049】
成膜装置200Aによって活性層20を形成する方法では、真空容器201内において成膜源と下地である基板との間に酸素を含むプラズマが形成される。これにより、成膜源からIn、Ge及びSn、またはIn、Ge、Sn、及びOが基板に向けて放出され、プラズマ中の酸素が膜に取り込まれて、基板に酸化物半導体膜が形成される。酸化物半導体膜は、5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含む。In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの濃度の組み合わせは、In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの原子分率を足し合わせた合計が100at%になるように、In、Ge、Sn、及びOの原子分率が組み合わされる。
【0050】
ここで、プラズマは、Ar等の不活性ガスに酸素が含まれるガスによって形成される。真空容器201内に供給される酸素の流量は、全ガス流量の20%以上30%以下に調整される。酸化物半導体膜におけるIn、Ge、Snの含有率は、同じでもよい。
【0051】
以下、具体的な活性層20の成膜条件と、活性層20の具体的な組成と、活性層20の特性評価について説明する。活性層20としては、In-Ge-Sn-O系の7種のサンプル(sampleA~sampleG)を準備した。各サンプルの膜厚は、80nmで、SiO膜(100nm)付のSi基板上に形成した。表1にsampleA~sampleGの成膜条件を示す。
【0052】
表1における流量の単位sccmは、standard cc/min(1013hPa)の略である。表1には、酸素の流量について、全ガス流量における率(%)が示されている。各スパッタリングターゲットの直径は、440mmである。電源203は、13.56MHzのRF電源である。ステージ204の温度は、100℃に設定される。成膜時の圧力は、0.05Pa以上1.5Pa以下である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、各ターゲットに投入する電力を個別に調整することで、目的値に応じた組成を持つ酸化物半導体膜が形成される。
【0055】
sampleA~sampleGにおいて、活性層20である膜を大気雰囲気下で350℃、30分間の加熱処理を行った後の場合と、水素を含むガス雰囲気下で350℃、30分の加熱処理を行った後の場合とに分けて、それぞれのサンプルにおける、移動度(cm/Vs)、キャリア密度(cm-3)、及びシート抵抗(Ω/square)をホール測定器(ECOPIA HMS-5000、Vander Pauw方法)で測定した。前者の加熱処理を第1加熱処理とし、後者の加熱処理を第2加熱処理とする。
【0056】
ここで、水素を含むガスとは、窒素と水素とを含む混合ガス中に、水素の流量が全流量の2%となるように調整されたガスである。このようなガスを用いる根拠として、活性層20を形成した後の別の層形成でのCVD工程、還元性ガス雰囲気でのアニール工程等を想定している。いずれの工程において、水素雰囲気でのアニール処理がなされる。
【0057】
本実施形態では、活性層20の特性が安定しているか否かの指標として、第1加熱処理後の移動度(A)に対する第2加熱処理後の移動度(B)の割合(B/A(%))を導入する。この割合が100%に漸近するほど、第1加熱処理の後の移動度と第2加熱処理の後の移動度との差が小さいこと意味する。換言すれば、この割合が100%に近いということは、第1加熱処理及び第2加熱処理という、異なる条件での加熱処理が活性層20に施されたとしても、活性層20がそれぞれの加熱処理に対する耐性がより高いことを意味する。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に、B/A値の結果を示す。表2において、「a」は、極めて良好であることを意味し、「b」は、良好であることを意味し、「f」は、良好でないことを意味する。表2に示すように、sampleA、B、Fでは、B/A値が90%より低くなり、sampleE、Gでは、B/A値が150%を超えた。特に、sampleE、Gでは、In、Snのいずれかの含有率が他の元素の2倍となることが元素分析で判明しており、sampleE、Gでは、B/A値が100%に漸近しなかった。
【0060】
これに対し、sampleA、B、C、D、Fでは、B/A値が80%以上100%以下の範囲に収まり、第1加熱処理及び第2加熱処理での移動度の差が小さくなることが分かった。特に、sampleC、Dでは、B/A値が90%以上100%以下の範囲に収まり、第1加熱処理及び第2加熱処理での移動度の差がより小さくなることが分かった。また、sampleC、Dにおいては、第1加熱処理の後のシート抵抗と第2加熱処理の後のシート抵抗との差について、その差が一桁ほどの差に収まった。
【0061】
このように、sampleC、Dのように、スパッタリング時、Ar/Oガスにおける酸素の流量を全ガス流量の20%以上30%以下に調整し、InとGeとSnとの含有率の比を目的値に設定することで、第1及び第2加熱処理を施した後においても優れた特性を維持する活性層20が形成できることが分かった。
【0062】
特に、移動度の変化及びシート抵抗の変化が抑制された活性層であれば、電子部品1がオフ状態となっても活性層でのリーク電流がより抑えられることになる。これにより、電子部品1は、キャパシタからの電荷の漏れが抑制された信頼性の高いDRAM素子として機能する。
【0063】
表3に、sampleA~Gに、In、Ge、Sn、及びOの組成比の測定結果を示す。組成分析手段は、例えば、X線電子分光法(XPS)に従い、In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの信号線から濃度を測定した。なお、表3には、酸素の流量が全ガス流量における率(%)で示されている。
【0064】
【表3】
【0065】
これにより、sampleA、B、C、D、Fの評価結果(aまたはb)と、その濃度が示すように、19.8at%以上24.1at%以下のIn、8.7at%以上13.3at%以下のGe、8.9at%以上11.1at%以下のSn、及び56.6at%以上58.0at%以下の酸素を含むIn-Ge-Sn-O系のサンプルにおいて、B/A値が80%以上100%以下の範囲に収まり、第1加熱処理及び第2加熱処理での移動度の差が小さくなることが分かった。
【0066】
さらに追試によって、5.0at%以上25.0at%以下のIn、8.0at%以上40.0at%以下のGe、5.0at%以上12.0at%以下のSn、及び50.0at%以上60.0at%以下の酸素を含むIn-Ge-Sn-O系のサンプルにおいて、B/A値が100±20%以下の範囲に収まり、第1加熱処理及び第2加熱処理での移動度の差が採用可能な程度であることが分かった。
【0067】
特に、sampleC、Dの評価結果(a)と、その濃度が示すように、22.5at%以上23.1at%以下のIn、8.8at%以上9.0at%以下のGe、10.6at%以上11.1at%以下のSn、及び57.2at%以上58.0at%以下の酸素を含むIn-Ge-Sn-O系のサンプルにおいて、B/A値が90%以上100%以下の範囲に収まり、第1加熱処理及び第2加熱処理での移動度の差がより小さくなることが分かった。
【0068】
なお、B/A値が80%以上100%以下の範囲、より好ましくはB/A値が90%以上100%以下の範囲に収まるサンプルでは、In、Ge、Sn、及びOのそれぞれの濃度の組み合わせがIn、Ge、Sn、及びOのそれぞれの原子分率を足し合わせた合計が100at%になるように、In、Ge、Sn、及びOの原子分率が組み合わされる。
【0069】
ここで、比較例のサンプルとして、In-Ga-Zn-O系の5種のサンプル(refA~refE)と、In-Ga-Sn-O系のサンプルrefFと、In-Zn-Sn-O系のサンプルrefGとを準備した。表4にrefA~refGの成膜条件を示す。
【0070】
【表4】
【0071】
また、表5にrefA~refGにおける移動度(cm/Vs)、キャリア密度(cm-3)、及びシート抵抗(Ω/square)の測定結果を示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示すように、In-Ga-Zn-O系のサンプルrefA~refEでは、refAのB/A値が150%近くになり、refBのB/A値は200%を超えた。また、refC~refEでは、第1加熱処理後の移動が計測できず、B/A値が求まらない結果になった。また、refA~refEの中には、移動度以外の一部評価項目の測定ができないものがあった。
【0074】
In-Ga-Sn-O系のサンプルrefFにおいては、B/A値が200%を超えた。また、In-Zn-Sn-O系のサンプルrefGにおいては、B/A値が150%を超えた。
【0075】
このように、活性層20を構成する酸化物半導体の3元金属元素の組み合わせとしては、In、Ga、Zn、Ge、及びSnの中からIn、Ge、及びSnを選択することが適正であることが分かった。
【0076】
図4は、活性層のX線回折結果を示す図である。
【0077】
図4には、例えば、sampleDに係る成膜直後(as depo)、第1加熱処理後、及び第2加熱処理後のX線回折結果が示されている。X線回折測定は、θ-2θ法に従った。図4に示すように、成膜直後、第1加熱処理後、及び第2加熱処理後のいずれのX線回折において結晶性を示すピークが観測されなかった。
【0078】
活性層20が加熱処理後において非晶質状態を維持することから、活性層20はウェーハプロセスにおいて、エッチング加工性に優れた膜であることが分かった。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…電子部品
11、12…ゲート電極
15、16…ゲート絶縁膜
17…絶縁膜
18…側壁膜
20…活性層
25…素子分離領域
26…素子分離領域
30、31、32…不純物拡散領域
41、42…キャパシタ
50、51、52…コンタクトプラグ
55…配線
60…絶縁層
200A、200B…成膜装置
201…真空容器
202、202I、202S、202G…ターゲット
203…電源
204…ステージ
205…圧力計
206、208…ガス供給系
207、209…ガス流量計
210…制御装置
211…防着板
220…基板
230…排気系
410、420…下部電極
411、421…絶縁層
412、422…上部電極
図1
図2
図3
図4