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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20240221BHJP
【FI】
H01L33/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022009471
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108377
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山上 勇也
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0256694(US,A1)
【文献】米国特許第09105823(US,B2)
【文献】特表2018-525821(JP,A)
【文献】特表2016-531422(JP,A)
【文献】特開2012-169366(JP,A)
【文献】特開2013-229581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0042289(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n側半導体層と、活性層と、p側半導体層とをこの順に有する半導体積層体を準備する工程であって、前記半導体積層体の積層方向において前記n側半導体層、前記活性層、及び前記p側半導体層を含む第1領域と、平面視において前記第1領域の周囲に位置し、前記積層方向において前記活性層及び前記p側半導体層を含まず前記n側半導体層を含む第2領域とを有する前記半導体積層体を準備する工程と、
前記第1領域の前記n側半導体層の表面に複数の第1部分を有するマスクを形成する工程と、
前記マスクから露出した前記半導体積層体を除去する工程であって、前記第2領域の前記n側半導体層を除去することで前記半導体積層体を複数の半導体部に分離する分離溝を形成するとともに、前記第1領域の前記n側半導体層のうち前記第1部分の周囲を除去することで前記第1領域の前記n側半導体層に複数の凸部を形成しつつ、前記第1部分を除去する工程と、を備える発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1領域の前記n側半導体層のうち前記第1部分の周囲を除去する深さは、前記分離溝の深さ以上である請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記半導体積層体を準備する工程において、平面視において前記第1領域に囲まれ、前記積層方向において前記活性層及び前記p側半導体層を含まず前記n側半導体層を含む第3領域をさらに有し、前記第3領域の前記n側半導体層における前記p側半導体層側に位置する第1面にn側電極を有する前記半導体積層体を準備し、
前記マスクを形成する工程において、前記第3領域の前記第1面とは反対側に位置する第2面を覆う第2部分をさらに有する前記マスクを形成する、請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体積層体を準備する工程は、
基板と、前記n側半導体層と、前記活性層と、前記p側半導体層とをこの順に有するウェハを準備する工程と、
前記p側半導体層側から、前記p側半導体層、前記活性層、及び、前記n側半導体層を除去することで、前記第1領域、前記第2領域、及び、前記第3領域を形成する工程と、
前記第3領域を形成することで露出した前記第1面に、前記n側電極を形成する工程と、
前記基板を除去し、前記第1領域の前記n側半導体層の前記表面、前記第2領域の前記n側半導体層の前記表面、及び、前記第3領域の前記第2面を前記基板から露出させる工程と、を備える、請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体積層体を準備する工程において、前記積層方向における前記第2領域の厚さが、前記積層方向における前記第1領域の厚さの80%以下である前記半導体積層体を準備する、請求項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1部分は、平面視における形状が円である請求項1~5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光取り出し面を粗面化する工程を有する発光素子の製造方法において、製造工程の簡略化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-66704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、工程が簡略化された発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、n側半導体層と、活性層と、p側半導体層とをこの順に有する半導体積層体を準備する工程であって、前記半導体積層体の積層方向において前記n側半導体層、前記活性層、及び前記p側半導体層を含む第1領域と、平面視において前記第1領域の周囲に位置し、前記積層方向において前記活性層及び前記p側半導体層を含まず前記n側半導体層を含む第2領域とを有する前記半導体積層体を準備する工程と、前記第1領域の前記n側半導体層の表面に複数の第1部分を有するマスクを形成する工程と、前記マスクから露出した前記半導体積層体を除去する工程であって、前記第2領域の前記n側半導体層を除去することで前記半導体積層体を複数の半導体部に分離する分離溝を形成するとともに、前記第1領域の前記n側半導体層のうち前記第1部分の周囲を除去することで前記第1領域の前記n側半導体層に複数の凸部を形成しつつ、前記第1部分を除去する工程と、を備える。
本発明の一態様によれば、発光素子は、n側半導体層と、活性層と、p側半導体層とをこの順に有する半導体積層体であって、前記半導体積層体の積層方向において前記n側半導体層、前記活性層、及び前記p側半導体層を含む第1領域と、平面視において前記第1領域の周囲に位置し、前記積層方向において前記活性層及び前記p側半導体層を含まず前記n側半導体層を含む第2領域とを有する前記半導体積層体を備え、前記第1領域において、前記n側半導体層は、前記p側半導体層が設けられた側と反対の側に複数の凸部を含み、前記積層方向における前記凸部の高さは、前記積層方向における前記第2領域の前記n側半導体層の厚さより大きい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、工程が簡略化された発光素子の製造方法及び発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図2】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図3】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための平面図である。
図4】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図5】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図6】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図7】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図8】実施形態のマスクの第1部分の一例を示す平面図である。
図9】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図10】実施形態の発光素子の断面図である。
図11】実施形態の発光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。
【0010】
本実施形態の発光素子の製造方法は、図6に示す半導体積層体10を準備する工程を有する。
【0011】
半導体積層体10を準備する工程は、図1に示すウェハWを準備する工程を有する。ウェハWは、第1基板101と、n側半導体層11と、活性層12と、p側半導体層13とをこの順に有する。
【0012】
ウェハWを準備する工程は、第1基板101の上方に、n側半導体層11と、活性層12と、p側半導体層13とを有する半導体積層体10を形成する工程を有する。n側半導体層11は、例えば、下地層103を介して第1基板101の上方に形成することができる。活性層12は、n側半導体層11の上方に形成される。p側半導体層13は、活性層12の上方に形成される。
【0013】
半導体積層体10は、窒化物半導体からなる。窒化物半導体は、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。半導体積層体10は、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、第1基板101の上方に形成することができる。
【0014】
第1基板101は、半導体積層体10を成長させるための基板である。第1基板101の材料として、例えば、サファイア、シリコン、SiC、GaNなどを用いることができる。
【0015】
n側半導体層11は、例えば、n型不純物を含むn型層である。p側半導体層13は、例えば、p型不純物を含むp型層である。
【0016】
活性層12は、可視光または紫外光を発する。活性層12は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有することができる。
【0017】
半導体積層体10を準備する工程において、図2及び図3に示すように、第1領域10a、第2領域10b、及び第3領域10cを有する半導体積層体10が準備される。図2は、図3のII-II線における断面図である。図1に示すウェハWにおけるp側半導体層13側から、p側半導体層13、活性層12、及びn側半導体層11を除去することで、第1領域10a、第2領域10b、及び第3領域10cが形成される。例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により、p側半導体層13、活性層12、及びn側半導体層11側を除去することができる。
【0018】
第1領域10aは、半導体積層体10の積層方向において、n側半導体層11、活性層12、及びp側半導体層13を含む。半導体積層体10の積層方向は、n側半導体層11からp側半導体層13に最短距離で向かう方向である。第1領域10aにおいて、p側半導体層13の表面13aが露出している。
【0019】
第2領域10bは、半導体積層体10の積層方向において、活性層12及びp側半導体層13を含まずn側半導体層11を含む。第2領域10bは、図3に示すように、平面視において第1領域10aの周囲に位置する。第2領域10bを形成することで、n側半導体層11におけるp側半導体層13側に位置する第3面11bが、活性層12及びp側半導体層13から露出する。
【0020】
第3領域10cは、半導体積層体10の積層方向において、活性層12及びp側半導体層13を含まずn側半導体層11を含む。図3に示すように、例えば、複数の第3領域10cが形成される。それぞれの第3領域10cは、平面視において第1領域10aに囲まれている。第3領域10cを形成することで、n側半導体層11におけるp側半導体層13側に位置する第1面11aが、活性層12及びp側半導体層13から露出する。
【0021】
半導体積層体10を準備する工程において、図4に示すように、n側電極23、第1p側電極21、第2p側電極22、導電部材24、第1絶縁膜31、第2絶縁膜32、及び第3絶縁膜33が形成された半導体積層体10を準備することができる。
【0022】
第1p側電極21は、p側半導体層13の表面13aに配置される。第1p側電極21は、p側半導体層13の表面13aに接し、p側半導体層13と電気的に接続される。第1p側電極21は、活性層12が発する光に対して高い反射性を有することが好ましい。第1p側電極21として、例えば、銀(Ag)及びアルミニウム(Al)の少なくともいずれかを含む金属層を用いることができる。第1p側電極21は、例えば、スパッタ法によって形成することができる。
【0023】
第1絶縁膜31は、p側半導体層13の表面13a及び第1p側電極21を覆う。第1絶縁膜31として、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。第1絶縁膜31を形成することで、第1p側電極21の近傍に水分が侵入することによるマイグレーションの発生を低減させることができる。第1絶縁膜31は、CVD法によって形成することができる。なお、第1絶縁膜31を設けずに、後述する第2絶縁膜32をp側半導体層13の表面13a及び第1p側電極21を覆うように設けてもよい。
【0024】
第2絶縁膜32は、第1絶縁膜31を覆う。また、第2絶縁膜32は、第2領域10bにおいて露出するn側半導体層11の第3面11b、及び第3領域10cにおいて露出するn側半導体層11の第1面11aを覆う。また、第2絶縁膜32は、第1領域10aに位置するn側半導体層11の側面、活性層12の側面、及びp側半導体層13の側面を覆う。第2絶縁膜32として、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。第2絶縁膜32は、例えば、第1絶縁膜31と同様の方法で形成することができる。
【0025】
第1p側電極21上の第1絶縁膜31及び第2絶縁膜32には、第1p側電極21を第1絶縁膜31及び第2絶縁膜32から露出させる第1p側開口部が形成される。第2p側電極22は、第2絶縁膜32上に配置されるとともに、第1p側開口部に配置される。第2p側電極22は、第1p側開口部において、第1p側電極21と電気的に接続される。第2p側電極22として、例えば、アルミニウム及び銅(Cu)の少なくともいずれかを含む金属層を用いることができる。
【0026】
導電部材24は、n側半導体層11の第3面11b上の第2絶縁膜32上に配置される。導電部材24は、第2p側電極22と同じ材料、且つ同じ工程で形成することができる。なお、第2基板102を導電性の材料とした場合、導電部材24の形成、後述する第3n側開口の形成、及び、後述するn側パッド電極26の形成を省略することができる。その場合、第2基板102とn側半導体層11とが、接合部材104とn側電極23とを介して、電気的に接続される。
【0027】
第3絶縁膜33は、第2p側電極22及び導電部材24を覆う。第3絶縁膜33として、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。第3絶縁膜33は、例えば、第1絶縁膜31と同様の方法で形成することができる。
【0028】
第3領域10cに位置する第2絶縁膜32及び第3絶縁膜33には、n側半導体層11の第1面11aを第2絶縁膜32及び第3絶縁膜33から露出させる第1n側開口部が形成される。n側電極23は、第3絶縁膜33上に配置されるとともに、第1n側開口部に配置される。n側電極23は、第1n側開口部において、n側半導体層11の第1面11aに接し、n側半導体層11と電気的に接続される。n側電極23として、例えば、アルミニウム及び銅の少なくともいずれかを含む金属層を用いることができる。n側電極23は、例えば、スパッタ法によって形成することができる。
【0029】
また、導電部材24上の第3絶縁膜33には、導電部材24を第3絶縁膜33から露出させる第2n側開口部が形成される。n側電極23は、第2n側開口部に配置され、導電部材24と電気的に接続される。
【0030】
半導体積層体10を準備する工程において、図5に示すように、n側電極23の側に第2基板102を配置することができる。第2基板102として、例えば、シリコン基板を用いることができる。n側電極23は、接合部材104を介して第2基板102と接合される。接合部材104として、例えば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)などを含む金属層を用いることができる。
【0031】
半導体積層体10を準備する工程において、第2基板102を配置した後に、第1基板101を除去することができる。第1基板101としてサファイア基板を用いた場合、第1基板101を、例えば、レーザーリフトオフ法により除去することができる。下地層103は、第1基板101の除去の際に併せて除去することができる。第1基板101を除去した後、露出したn側半導体層11の表面を研磨してもよい。n側半導体層11の表面を研磨することでn側半導体層11の表面の平坦性が向上し、後述するマスク50をn側半導体層11の表面に形成しやすくなる。n側半導体層11の表面は、例えば、CMP(chemical mechanical polishing)法などで行うことができる。
【0032】
第1基板101及び下地層103を除去することで、図6に示すように、第1領域10aのn側半導体層11の表面11c、及び第2領域10bのn側半導体層11の表面11dが第1基板101から露出する。さらに、第3領域10cの第1面11aとは反対側に位置する第2面11eが第1基板101から露出する。
【0033】
このようにして半導体積層体10を準備することができる。本実施形態の発光素子の製造方法は、半導体積層体10を準備した後、図7に示すように、マスク50を形成する工程を有する。マスク50は、第1領域10aのn側半導体層11の表面11cに配置される複数の第1部分51を有する。
【0034】
図8に示すように、第1部分51は、平面視における形状を円とすることができる。第1部分51の平面視における最大幅は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上3μm以下がより好ましい。隣り合う第1部分51の間の最小間隔は、0.75μm以上5μm以下が好ましい。第1部分51の平面視における形状は、円に限らず、四角や六角などの多角であってもよい。
【0035】
マスク50は、第3領域10cの第2面11eを覆う第2部分52を有する。第2部分52は、第2面11eの全面を覆う。第2部分52は、第3領域10cの第2面11eから、第1領域10aの表面11cの一部まで延び、表面11cの一部も覆っている。
【0036】
マスク50は、第2領域10bのn側半導体層11の表面11dの一部を覆う第3部分53を有する。第3部分53は、第2領域10bの表面11dから、第1領域10aの表面11cの一部まで延び、表面11cの一部も覆っている。
【0037】
マスク50の材料として、例えば、レジストを用いることができる。レジストをn側半導体層11の表面11cの全面、第2面11eの全面、及び表面11dの全面に形成した後、レジストに対する露光及び現像により、第1部分51、第2部分52、及び第3部分53を含むパターンに加工される。
【0038】
本実施形態の発光素子の製造方法は、マスク50から露出した半導体積層体10を除去する工程を有する。半導体積層体10を除去する工程において、第2領域10bのn側半導体層11を除去することで、図9に示すように、半導体積層体10を複数の半導体部100に分離する分離溝90を形成する。図9には、分離溝90によって他の半導体部と分離された1つの半導体部100を示す。第2領域10bのn側半導体層11を除去することで、第2絶縁膜32が露出する。また、半導体積層体10を除去する工程において、第1領域10aのn側半導体層11のうちマスク50の第1部分51の周囲を除去することで、第1領域10aのn側半導体層11に複数の凸部11fを形成しつつ、マスク50の第1部分51を除去する。マスク50の第1部分51の平面視における形状が円の場合、凸部11fは円錐形状になる。
【0039】
活性層12の上方に位置するn側半導体層11の第1領域10aに複数の凸部11fが形成されることで、活性層12の上方に位置するn側半導体層11の面が粗面化され、活性層12からの光取り出し効率を向上させることができる。活性層12の上方に位置するn側半導体層11の面は主な光取り出し面である。本実施形態の発光素子の製造方法によれば、半導体積層体10の複数の半導体部100への分離と、光の主な取り出し面の粗面化とを1つの工程で行うことができるので工程を簡略化することができる。半導体積層体10を除去する工程において、例えば、塩素(Cl)を含むガスを用いたドライエッチングにより、窒化ガリウムを含む半導体積層体10を除去することができる。
【0040】
ドライエッチングにより半導体積層体10を除去することで、マスク50の第1部分51のサイズが小さくても、第1部分51の周囲のn側半導体層11を精度良く除去して確実に粗面が形成されやすい。
【0041】
半導体積層体10を除去する際に、マスク50の第1部分51も徐々に厚さ方向及び平面方向にエッチングされ、第1部分51の厚さ方向及び平面方向のサイズが小さくなる、または第1部分51は消失する。このようにマスク50の第1部分51が除去されることにより、凸部11fが、活性層12側に位置する下部から先端部(上部)に向かって徐々に細くなるように形成される。凸部11fがこのような形状になることで、凸部11fの上面の平坦面の面積が少なくなるため、光取り出し面から活性層12の方向に反射される光を減少させることができ、光取り出し効率が向上する。半導体積層体10を除去するときのエッチング条件において、半導体積層体10のエッチングレートに対して、マスク50のエッチングレートは、例えば0.5倍以上3倍以下であり、好ましくは、0.8倍以上1.5倍以下である。マスク50のエッチングレートをこのような範囲にすることで、凸部11fの形状を先端部に向かって徐々に細くなるように形成しやすくなる。
【0042】
本実施形態の発光素子の製造方法によれば、第1領域10aのn側半導体層11のうちマスク50の第1部分51の周囲を除去する深さは、分離溝90の深さ以上となる。これにより、活性層12の上方に粗面が形成されるとともに、活性層12の上方のn側半導体層11が薄くなるので、光取り出し効率をより向上させやすい。
【0043】
半導体積層体10を除去する工程において、第3領域10cの第2面11eはマスク50の第2部分52に覆われているので、第3領域10cのn側半導体層11はエッチングされにくい。これにより、n側電極23が接続する第1面11a上のn側半導体層11の厚さが保たれるため、順方向電圧の上昇を低減することができる。
【0044】
また、半導体積層体10を除去する工程において、第2領域10bの表面11dの一部はマスク50の第3部分53に覆われているので、第2領域10bのn側半導体層11の一部は、第2領域10bに残る。
【0045】
図2に示すp側半導体層13、活性層12、及びn側半導体層11を除去する工程において、半導体積層体10の積層方向におけるn側半導体層11の第2領域10bの厚さt2が、半導体積層体10の積層方向におけるn側半導体層11の第1領域10aの厚さt1の80%以下であるようにすることが好ましい。これにより、マスク50を用いて半導体積層体10を除去する工程において、第2領域10bの一部を除去することで形成される分離溝90によって半導体積層体10を複数の半導体部100に確実に分離しつつ、マスク50の第1部分51の周囲のn側半導体層11を除去する際のエッチングが活性層12に到達しにくくできる。
【0046】
マスク50を用いて半導体積層体10を除去する工程の後、図10に示すように、保護膜60、p側パッド電極25、及びn側パッド電極26を形成する。保護膜60は、n側半導体層11の表面11d、凸部11f、第2面11e、側面、及び第2絶縁膜32を覆う。保護膜60として、例えば、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を用いることができる。保護膜60は、例えば、第1絶縁膜31と同様の方法で形成することができる。保護膜60を形成した後、半導体積層体10が配置されていない領域における第2p側電極22上の保護膜60の一部及び第2絶縁膜32の一部を除去し、第2p側電極22を露出させる第2p側開口部を形成する。また、半導体積層体10が配置されていない領域における導電部材24上の保護膜60の一部及び第2絶縁膜32の一部を除去し、導電部材24を露出させる第3n側開口部を形成する。そして、第2p側開口部にp側パッド電極25を配置し、第3n側開口部にn側パッド電極26を配置する。p側パッド電極25は第2p側電極22と電気的に接続され、n側パッド電極26は導電部材24を介してn側電極23と電気的に接続される。n側パッド電極26及びp側パッド電極25は、例えば、スパッタ法によって形成することができる。
【0047】
この後、平面視において隣り合う半導体部100の間の領域に位置する第2基板102及び接合部材104を少なくとも除去することで、本実施形態の発光素子1が得られる。平面視において隣り合う半導体部100の間の領域に位置する第2基板102及び接合部材104は、例えば、レーザ光を照射することで除去することができる。図11は、発光素子1の平面図である。図10は、図11のX-X線における断面図である。
【0048】
発光素子1のn側半導体層11は、第1領域10aにおいて、p側半導体層13が設けられた側と反対の側に複数の凸部11fを含む。半導体積層体10の積層方向における凸部11fの高さhは、第2領域10bのn側半導体層11の半導体積層体10の積層方向における厚さtより大きい。これにより、凸部11fの高さhを第2領域10bのn側半導体層11の厚さtよりも小さくする場合に比べて、光取り出し効率を向上させることができる。第2領域10bのn側半導体層11の厚さtは、第3面11bと表面11dとの間の最短距離を表す。凸部11fの高さhは、凸部11fに隣接する凹部の底部と凸部11fの先端部との間の半導体積層体10の積層方向における距離を表す。
【0049】
n側電極23が接続する第3領域10cの第2面11eは凸部を含まない。すなわち、第3領域10cには粗面が形成されないため、第3領域10cの厚さが保たれているため、順方向電圧の上昇を低減することができる。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0051】
1…発光素子、10…半導体積層体、10a…第1領域、10b…第2領域、10c…第3領域、11…n側半導体層、11a…第1面、11e…第2面、11f…凸部、12…活性層、13…p側半導体層、21…第1p側電極、22…第2p側電極、23…n側電極、50…マスク、51…第1部分、52…第2部分、90…分離溝、100…半導体部、101…第1基板、102…第2基板、W…ウェハ
図1
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図11