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特許7440862カルボン酸エステル合成用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】カルボン酸エステル合成用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/12 20060101AFI20240221BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20240221BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20240221BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
B01J31/12 Z
C07C67/03
C07C69/653
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036987
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137722
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】石原 一彰
(72)【発明者】
【氏名】波多野 学
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-233035(JP,A)
【文献】特開2018-135285(JP,A)
【文献】特表2016-501271(JP,A)
【文献】特開2002-201159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 67/03
C07C 69/653
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得るためのカルボン酸エステル合成用触媒であって、
Mg(OEt) またはMg(Ot-Bu) で表されるマグネシウムアルコキシドからなる、カルボン酸エステル合成用触媒。
【請求項2】
Mg(OEt) またはMg(Ot-Bu) で表されるマグネシウムアルコキシドの存在下に、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得る、カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
反応温度は-20℃~100℃である、請求項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸エステル合成用触媒およびカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルは、医薬品、香料、化成品等の様々な分野に用いられている。カルボン酸エステルの製造方法としては、例えば、メチルエステルとアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得る方法が用いられる。エステル交換反応には、触媒が用いられている。エステル交換反応の触媒としては、例えば、フェノール性水酸基の少なくとも1つのオルト位に置換基を有するフェノール類の有機オニウム塩を含むものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。また、一般式Mg(OR)(ただし、ORはアルコキシ基である。)で表されるマグネシウムアルコキシドの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルと、2-メチル-2-ヒドロキシ-1-プロピルアルコールおよび/または3-メチル-3-ヒドロキシ-1-ブチルアルコールをエステル交換反応させることにより、2-メチル-2-ヒドロキシ-1-プロピル(メタ)アクリレートおよび/または3-メチル-3-ヒドロキシ-1-ブチル(メタ)アクリレートを製造できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-203171号公報
【文献】特開2018-135285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルコキシ基の炭素原子数が8以上のマグネシウムアルコキシドを用いて、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを製造した場合、マイケル付加や原料のモノマーの重合等の副反応が多く、目的とするカルボン酸エステルの選択率が低く、選択性に劣るという課題があることが判明した。なお、ここで選択率とは、生成物の全体量のうち、目的生成物の占める割合のことである。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応において、マイケル付加や原料のモノマーの重合等の副反応を抑制し、目的とするカルボン酸エステルの選択性に優れるカルボン酸エステル合成用触媒およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1](メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得るためのカルボン酸エステル合成用触媒であって、Mg(OEt) またはMg(Ot-Bu) で表されるマグネシウムアルコキシドからなる、カルボン酸エステル合成用触媒
[2]Mg(OEt) またはMg(Ot-Bu) で表されるマグネシウムアルコキシドの存在下に、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得る、カルボン酸エステルの製造方法。
]反応温度は-20℃~100℃である、[]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応において、マイケル付加や原料のモノマーの重合等の副反応を抑制し、目的とするカルボン酸エステルの選択性に優れることができるカルボン酸エステル合成用触媒およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカルボン酸エステル合成用触媒およびカルボン酸エステルの製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0009】
[カルボン酸エステル合成用触媒]
本実施形態に係るカルボン酸エステル合成用触媒は、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得るためのカルボン酸エステル合成用触媒であって、一般式Mg(OR)(ただし、ORは炭素原子数8未満のアルコキシ基である。)で表されるマグネシウムアルコキシドからなる。Mg(OR)のRは、同一でもよいし、異なっていてもよいが、容易に入手可能な観点から、同一であることが好ましい。
【0010】
炭素原子数8未満のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトシキ基、tert-ブトシキ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、へプチルオキシ基等が挙げられる。なかでも、アルコキシ基としては、高い反応選択性の観点から、炭素原子数6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数4以下のアルコキシ基がより好ましい。一方、同様に高い反応選択性の観点からアルコキシ基は炭素原子数1以上のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数2以上のアルコキシ基がさらに好ましい。特に好ましいアルコキシ基としては、エトキシ基またはtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0011】
以上の理由により、マグネシウムアルコキシドとしては、触媒活性に優れる点から、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))またはマグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))が好ましい。
【0012】
本実施形態に係るカルボン酸エステル合成用触媒によれば、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応において、マイケル付加や原料のモノマーの重合等の副反応を抑制し、目的とするカルボン酸エステルの選択性に優れる。この詳細なメカニズムは明らかではないが、マグネシウムアルコキシドが単量体、二量体、もしくは三量体以上の多量体を組織的に形成した状態で、メタクリル酸エステルのカルボニルを活性化すると同時に、アルコールを活性化することができるためだと考えられる。特に炭素原子数8未満のアルコキシ基では、反応系中で単量体や二量体の存在比が多いため、活性化されるメタクリル酸エステルとアルコールが近傍に位置することにより、副反応を低減しつつ、触媒活性が向上すると考えられる。
【0013】
[カルボン酸エステル合成用触媒の製造方法]
マグネシウムアルコキシドは、例えば、活性化した金属マグネシウムに、所望のマグネシウムアルコキシドが有するアルコキシ基に対応するアルコールを過剰に加えることにより得られる。また、マグネシウムアルコキシドは、マグネシウムメトキシド(Mg(OMe))に、対応するアルコールを加え、副生するメタノールを留去することによっても得られる。
【0014】
[カルボン酸エステルの製造方法]
本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法は、一般式Mg(OR)(ただし、ORは炭素原子数8未満のアルコキシ基である。)で表されるマグネシウムアルコキシドの存在下に、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得る方法である。
【0015】
以下、本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法の詳細を説明するが、本実施形態は、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応によりカルボン酸エステルを製造できる限りにおいて、どのような手順で(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとを反応させてもよい。
まず、フラスコ等の反応容器に、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Å、一般式Mg(OR)で表されるマグネシウムアルコキシド、および(メタ)アクリル酸エステルを所定量加え、その混合物を室温(25℃)で1分~5分撹拌した後、1価のアルコールを加えて懸濁液を得る。
次いで、その懸濁液を所定の反応温度で30分~96時間撹拌して、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応を行った後、その懸濁液を精製し、カルボン酸エステルを得る。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はないが、エステル部分の炭素数が1以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、なかでも、エステル部分の炭素数が6以下の(メタ)アクリル酸エステルであることがさらに好ましく、エステル部分の炭素数が2以下の(メタ)アクリル酸エステルであることが特に好ましく、なかでもメタクリル酸メチル、またはアクリル酸メチル等が最も好ましい。
【0017】
1価のアルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコールまたは第3級アルコールが挙げられる。第1級アルコールとしては、特段の制限はないが、エステル交換反応により生成するアルコールと分離しやすくするために、炭素数2以上の第1級アルコールであることが好ましく、一方、目的とするカルボン酸エステルの精製負荷を低減させるために、炭素数30以下の第1級アルコールであることが好ましい。このような第1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オール、ウンデカン-1-オール、ドデカン-1-オール、トリデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール、ペンタデカン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、ヘプタデカン-1-オール、オクタデカン-1-オール、ノナデカン-1-オール、イコサン-1-オール、ヘネイコサン-1-オール、ドコサン-1-オール、トリコサン-1-オール、テトラコサン-1-オール、ペンタコサン-1-オール、ヘキサコサン-1-オール、ヘプタコサン-1-オール、オクタコサン-1-オール、ノナコサン-1-オール、トリアコンタン-1-オール、ポリコサノール、2-メチル:2-メチルプロパン-1-オール、3-メチル:3-メチルブタン-1-オール等が挙げられる。これらのなかでも、第1級アルコールは、炭素数3以上の第1級アルコールであることがより好ましく、炭素数4以上の第1級アルコールであることが特に好ましく、一方、炭素数20以下の第1級アルコールであることがより好ましく、炭素数10以下の第1級アルコールであることが特に好ましい。
【0018】
第2級アルコールとしては、特段の制限はないが、炭素数3以上の第2級アルコールであることが好ましく、炭素数4以上の第2級アルコールであることがより好ましく、炭素数5以上の第2級アルコールであることが特に好ましく、一方、目的とするカルボン酸エステルの精製負荷を低減させるために、炭素数30以下の第2級アルコールであることが好ましく、炭素数25以下の第2級アルコールであることがより好ましく、炭素数20以下の第2級アルコールであることが特に好ましい。このような第2級アルコールとしては、例えば、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、シクロヘキサノール、ヘプタン-2-オール、2-メチル:2-メチルブタン-1-オール等が挙げられる。
第3級アルコールとしては、特段の制限はないが、炭素数4以上の第3級アルコールであることが好ましく、一方、目的とするカルボン酸エステルの精製負荷を低減させるために、炭素数30以下の第3級アルコールであることが好ましく、炭素数25以下の第3級アルコールであることがより好ましく、炭素数20以下の第3級アルコールであることが特に好ましい。このような第3級アルコールとしては、1-アダマンタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
【0019】
下記式(1)に、メタクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応に関する化学式を示す。下記式(2)に、アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応に関する化学式を示す。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
上記式(1)および(2)中、R1およびR3は、それぞれ、炭素原子数1以上のアルキル基である。なかでも、R1およびR3は、それぞれ、炭素数1以上のアルキル基であることが好ましく、一方、10以下のアルキル基であることが好ましく、6以下のアルキル基であることがさらに好ましく、2以下のアルキル基であることが特に好ましい。
上記式(1)および(2)中、R2はアルキル基を表す。なかでも、R2-OHが第1級アルコールの場合、R2は炭素数2以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数3以上のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数4以上のアルキル基であることが特に好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0023】
R2-OHが第2級アルコールの場合、R2は炭素数3以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数4以上のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数5以上のアルキル基であることが特に好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数25以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0024】
R2-OHが第3級アルコールの場合、R2は炭素数4以上のアルキル基であることが好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数25以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとの配合比、言い換えれば、1価のアルコールに対する(メタ)アクリル酸エステルのモル比は、特段の制限はないが、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、一方、30以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとの配合比が2以上であれば、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応が効率よく進行しやすくなる。一方、当該配合比が、30以下であることにより生産性高く目的物を得ることができる。(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールは、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応温度は、-20℃以上100℃以下であることが好ましく、なかでも10℃以上であることがより好ましく、一方、80℃以下であることがより好ましい。反応温度が-20℃以上であれば、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとでエステル交換反応が効率よく進行しやすくなる。反応温度が100℃以下であれば、加温によるエネルギーの消費量を抑制することができる。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応は溶媒中で行ってもよいし、無溶媒で行ってもよい。ただし、生産性および溶媒回収の負荷を考慮すると、無溶媒で行うことが好ましい。なお、無溶媒とは、アルコールに対する溶媒量が30質量%以下であることを意味するものとする。
【0028】
一方、溶媒を使用する場合、溶媒としては、特段の制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、メチル-tert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
1価アルコールに対するマグネシウムアルコキシドのモル比は、特段の制限はないが、エステル交換反応を効率よく促進させるために0.001以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることが特に好ましく、一方、反応後の精製負荷を低減させるために0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。
マグネシウムアルコキシドは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、その合計量が上記範囲となることが好ましい。なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、該マグネシウムアルコキシド以外の触媒を併用してもよい。
【0030】
反応系中には、上記以外の他の化合物が存在していてもよい。例えば、重合を抑制するために重合禁止剤を使用してもよい。なお、重合禁止剤は、特段の制限はなく、公知の重合禁止剤が挙げられる。
【0031】
上記の懸濁液の精製方法としては、特に限定されないが、シリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)を用いて精製する方法、洗浄、濾過、蒸留等が挙げられ、それらの精製方法は、特に制限されず、公知の方法で行えばよい。
【0032】
本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法によれば、(メタ)アクリル酸エステルと1価のアルコールとのエステル交換反応において、マイケル付加や原料のモノマーの重合等の副反応を抑制し、目的とするカルボン酸エステルの選択性に優れる。
【実施例
【0033】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))11.4mg(0.1mol)、メタクリル酸メチル1.49mL(14mmol)、重合禁止剤としてジメチルジチオカルバミン酸銅(II)1.2mg(0.004mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.2mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で3分間撹拌した後、ベンジルアルコール(以下、「BnOH」と略すこともある。)0.206mL(2mmol)を加えて懸濁液を得た。ベンジルアルコールに対するMg(OEt)の添加量は、モル比で5mol%であった。
次いで、その懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌した。
次いで、懸濁液をシリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)で精製し、実施例1の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,3H)、5.20(s,2H)、5.59(s,1H)、6.16(s,1H)、7.30-7.40(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5、66.5、125.9、128.1(2C)、128.2、128.6(2C)、136.2、136.3、167.3。
IR(neat)3034、2957、1719、1637、1454、1319、1294、1159cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1113 [M+H] 177.0916、found 177.0912。
上記の測定データから、下記式(3)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。なお、下記式(4)にメタクリル酸メチルとベンジルアルコールのエステル交換反応によりベンジルメタクリレートを合成する反応式を示す。
また、生成物の全体量のうち、目的生成物であるベンジルメタクリレートの占める割合から、ベンジルメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は40%、選択率は100%であった。なお、目的生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで副生生物と分離した後、電子天秤で、目的生成物の重量を直接計量することにより、選択率を算出した。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
[実施例2]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用い、懸濁液を室温(25℃)で2分撹拌したこと以外は実施例1と同様の方法によりベンジルメタクリレートを得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,3H)、5.20(s,2H)、5.59(s,1H)、6.16(s,1H)、7.30-7.40(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5、66.5、125.9、128.1(2C)、128.2、128.6(2C)、136.2、136.3、167.3。
IR(neat)3034、2957、1719、1637、1454、1319、1294、1159cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1113 [M+H] 177.0916、found 177.0912。
上記の測定データから、上記式(3)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。なお、ベンジルメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は95%、選択率は100%であった。
【0038】
[比較例1]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてカリウムt-ブトキシド(以下、「KOt-Bu」と略すこともある。)を用い、懸濁液を室温(25℃)で30分撹拌したこと以外は実施例1と同様の方法により反応を行った。
しかしながら、反応開始間もなく、メタクリル酸メチルが重合してしまい、メタクリル酸メチルとベンジルアルコールとのエステル交換反応が起こらなかった。すなわち、ベンジルメタクリレートの収率は0%であった。したがって、選択率は評価なしとなった。
【0039】
実施例1、実施例2、比較例1で用いた触媒、エステルおよびアルコールと、実施例1、実施例2、比較例1における触媒量、反応温度、反応時間および選択率とを表1に示す。なお、表1において、触媒のモル比とは、ベンジルアルコールに対する触媒の添加量をモル比で表したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1の結果から、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))は、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。実施例2の結果から、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))は、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。一方、比較例1の結果から、カリウムt-ブトキシドは、選択性に劣ることが分かった。
【0042】
[実施例3]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))11.4mg(0.1mol)、アクリル酸メチル1.26mL(14mmol)、重合禁止剤としてジメチルジチオカルバミン酸銅(II)1.2mg(0.004mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.2mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で3分間撹拌した後、ベンジルアルコール0.206mL(2mmol)を加えて懸濁液を得た。ベンジルアルコールに対するMg(OEt)の添加量は、モル比で5mol%であった。
次いで、その懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌した。
次いで、懸濁液をシリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)で精製し、実施例3の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.19(s,2H)、5.84(dd,J=10.4,1.6Hz,1H)、6.16(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.44(dd,J=17.2,1.4Hz,1H)、7.31-7.41(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):66.4、128.3(2C)、128.4(2C)、128.7(2C)、131.2、135.9、166.1。
IR(neat)3034、2954、1953、1725、1634、1455、1406、1295、1269、1186、1049cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1010 [M] 162.0681、found 162.0680。
上記の測定データから、下記式(5)で表されるベンジルアクリレートが得られていることが確認された。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は92%、選択率は100%であった。
【0043】
【化5】
【0044】
[実施例4]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用い、懸濁液の撹拌時間(反応時間)を30分としたこと以外は実施例3と同様の方法により、ベンジルアクリレートを得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.19(s,2H)、5.84(dd,J=10.4,1.6Hz,1H)、6.16(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.44(dd,J=17.2,1.4Hz,1H)、7.31-7.41(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):66.4、128.3(2C)、128.4(2C)、128.7(2C)、131.2、135.9、166.1。
IR(neat)3034、2954、1953、1725、1634、1455、1406、1295、1269、1186、1049cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1010 [M] 162.0681、found 162.0680。
上記の測定データから、上記式(5)で表されるベンジルアクリレートが得られていることが確認された。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は99%、選択率は100%であった。
【0045】
[比較例2]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてナトリウムメトキシド(NaOMe)を用い、懸濁液の撹拌時間(反応時間)を30分としたこと以外は実施例3と同様の方法によりベンジルアクリレートを得た。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は43%、選択率は46%であった。
【0046】
[比較例3]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてカリウムt-ブトキシド(KOt-Bu)を用い、懸濁液の撹拌時間(反応時間)を30分としたこと以外は実施例3と同様の方法によりベンジルアクリレートを得た。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は20%、選択率は25%であった。
【0047】
[比較例4]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてジイソプロポキシカルシウム(以下、「Ca(i-OPr)」と略すこともある。)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法によりベンジルアクリレートを得た。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は57%、選択率は82%であった。
【0048】
[比較例5]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒として鉄エトキシド(以下、「Fe(OEt)」と略すこともある。)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法により反応を行った。
しかしながら、アクリル酸メチルとベンジルアルコールとのエステル交換反応が起こらなかった。すなわち、ベンジルアクリレートの収率は0%であった。したがって、選択率は評価なしとなった。
【0049】
[比較例6]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒として亜鉛メトキシド(以下、「Zn(OMe)」と略すこともある。)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法により反応を行った。
しかしながら、アクリル酸メチルとベンジルアルコールとのエステル交換反応が起こらなかった。すなわち、ベンジルアクリレートの収率は0%であった。したがって、選択率は評価なしとなった。
【0050】
「比較例7」
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてチタンn-ブトキシド(以下、「Ti(On-Bu)」と略すこともある。)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法により反応を行った。
しかしながら、アクリル酸メチルとベンジルアルコールとのエステル交換反応が起こらなかった。すなわち、ベンジルアクリレートの収率は0%であった。したがって、選択率は評価なしとなった。
【0051】
[比較例8]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、触媒としてランタンイソプロポキシド(以下、「La(i-OPr)」と略すこともある。)を用いたこと以外は実施例3と同様の方法によりベンジルアクリレートを得た。なお、ベンジルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は65%、選択率は65%であった。
【0052】
実施例3、実施例4、比較例3~比較例8で用いた触媒、エステルおよびアルコールと、実施例3、実施例4、比較例3~比較例8における触媒量、反応温度、反応時間および選択率とを表2に示す。なお、表2において、触媒のモル比とは、ベンジルアルコールに対する触媒の添加量をモル比で表したものである。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例3の結果から、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))は、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。実施例4の結果から、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))は、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。さらに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))は、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))よりも短時間でベンジルアクリレートの合成を完了できることが分かった。一方、比較例2の結果から、ナトリウムメトキシドは、副生成物が生成するため、選択性に劣ることが分かった。比較例3の結果から、カリウムt-ブトキシドは、選択性に劣ることが分かった。比較例4の結果から、ジイソプロポキシカルシウムは、選択性に劣ることが分かった。比較例5の結果から、鉄エトキシドは、選択性に劣ることが分かった。比較例6の結果から、亜鉛メトキシドは、選択性に劣ることが分かった。比較例7の結果から、チタンn-ブトキシドは、選択性に劣ることが分かった。比較例8の結果から、ランタンイソプロポキシドは、選択性に劣ることが分かった。
【0055】
[実施例5]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))11.4mg(0.1mol)、メタクリル酸メチル4.23mL(40mmol)、重合禁止剤としてジメチルジチオカルバミン酸銅(II)1.2mg(0.004mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.2mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で3分間撹拌した後、ベンジルアルコール0.206mL(2mmol)を加えて懸濁液を得た。ベンジルアルコールに対するMg(OEt)の添加量は、モル比で5mol%であった。
次いで、その懸濁液を100℃で3時間撹拌した。
次いで、懸濁液をシリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)で精製し、実施例3の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの分析結果は実施例1と同様の結果が得られた。
測定データから、上記式(1)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。
なお、ベンジルメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は89%、選択率は100%であった。
【0056】
[実施例6]
(カルボン酸エステルの製造)
マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例5と同様にして、実施例6の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの分析結果は実施例1と同様の結果が得られた。
測定データから、上記式(1)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。
なお、ベンジルメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は88%、選択率は100%であった。
【0057】
実施例5、実施例6で用いた触媒、エステルおよびアルコールと、実施例5、実施例6における触媒量、反応温度、反応時間および選択率とを表3に示す。なお、表3において、触媒のモル比とは、ベンジルアルコールに対する触媒の添加量をモル比で表したものである。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例5および実施例6の結果から、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))およびマグネシウムエトキシド(Mg(OEt))は、反応温度が100℃の場合であっても、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。
【0060】
[実施例7]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりにシクロヘキサノール(以下、「ROH-1」と略すこともある。)0.212mL(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.20-1.61(m,6H)、1.67-1.80(m,2H)、1.80-1.91(m,2H)、1.94(s,3H)、4.76-4.92(m,1H)、5.53(t,J=1.5Hz,1H)、6.09(d,J=0.6Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.3、23.5(2C)、25.4、31.4(2C)、72.5、124.8、136.9、166.8。
IR(neat)2936、2858、1717、1450、1169、1016cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1016NaO [M+Na] 191.1048、found 191.1047。
上記の測定データから、下記式(6)で表されるシクロヘキシルメタクリレートが得られていることが確認された。なお、シクロヘキシルメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は99%、選択率は100%であった。
【0061】
【化6】
【0062】
[実施例8]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりにシクロヘキサノール(ROH-1)0.212mL(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例8の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IR、およびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.20-1.61(m,6H)、1.74(m,2H)、1.88(m,2H)、4.83(m,1H)、5.79(dd,J=10.8,1.4Hz,1H)、6.11(dd,J=17.2,10.5Hz,1H)、6.38(dd,J=17.6,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):23.8(2C)、25.5、31.7(2C)、72.8、129.3、130.2、165.8。
IR(neat)2938、2859、1721、1637、1451、1405、1295、1275、1196、1053cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C15 [M+H] 155.1072、found 155.1066。
上記の測定データから、下記式(7)で表されるシクロヘキシルアクリレートが得られていることが確認された。なお、シクロヘキシルアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は99%、選択率は100%であった。
【0063】
【化7】
【0064】
[実施例9]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに1,6-ヘキサンジオール(以下、「ROH-2」と略すこともある。)0.236g(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.42-1.46(m,4H)、1.67-1.74(m,4H)、1.95(s,6H)、4.13-4.17(m,4H)、5.54-5.56(m,2H)、6.09-6.10(m,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.4(2C)、25.8(2C)、28.6(2C)、64.7(2C)、125.3(2C)、136.5(2C)、167.6(2C)。
IR(neat)2939、2861、1719、1637、1454、1321、1297、1166cm-1
HRMS(DART+) calcd for C14H23O4 [M+H] 255.1596、found 255.1597。
上記の測定データから、下記式(8)で表されるヘキサン-1,6-ジイルビス(2-メチルアクリレート)が得られていることが確認された。なお、ヘキサン-1,6-ジイルビス(2-メチルアクリレート)の収率および選択率を算出したところ、収率は80%、選択率は100%であった。
【0065】
【化8】
【0066】
[実施例10]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに1,6-ヘキサンジオール(ROH-2)0.236g(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例10の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.41-1.44(m,4H)、1.66-1.73(m,4H)、4.16(t,J=6.4Hz,4H)、5.82(dd,J=10.1,1.4Hz,2H)、6.12(dd,J=17.4,10.5Hz,2H)、6.40(dd,J=17.4,1.4Hz,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):25.7(2C)、28.6(2C)、64.6(2C)、128.6(2C)、130.7(2C)、166.4(2C)。
IR(neat)2941、2862、1718、1636、1620、1467、1409、1274、1197cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1219 [M+H] 227.1283、found 227.1284。
上記の測定データから、下記式(9)で表されるヘキサン-1,6-ジイルジアクリレート(3r)が得られていることが確認された。なお、ヘキサン-1,6-ジイルジアクリレート(3r)の収率および選択率を算出したところ、収率は99%、選択率は100%であった。
【0067】
【化9】
【0068】
[実施例11]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに、下記式(10)で表されるトリエチレングリコール(以下、「ROH-3」と略すこともある。)0.300g(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.95(s,6H)、3.68(s,4H)、3.74-3.77(m,4H)、4.29-4.32(m,4H)、5.57-5.59(m,2H)、6.13-6.14(m,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.4(2C)、63.9(2C)、69.3(2C)、70.7(2C)、125.9(2C)、136.2(2C)、167.5(2C)。
IR(neat)2955、2874、1719、1637、1454、1319、1297、1171、1043cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1423 [M+H] 287.1495、found 287.1495。
上記の測定データから、下記式(11)で表されるトリエチレングリコールジメタクリレートが得られていることが確認された。なお、トリエチレングリコールジメタクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は96%、選択率は100%であった。
【0069】
【化10】
【0070】
【化11】
【0071】
[実施例12]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに、トリエチレングリコール(ROH-3)0.300g(2mmol)を用い、マグネシウムエトキシド(Mg(OEt))の代わりに、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例12の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):3.68(s,4H)、3.74-3.76(m,4H)、4.31-4.33(m,4H)、5.84(dd,J=10.6,1.4Hz,2H)、6.16(dd,J=17.4,10.6Hz,2H)、6.43(dd,J=17.4,1.4Hz,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):63.8(2C)、69.3(2C)、70.7(2C)、128.4(2C)、131.2(2C)、166.3(2C)。
IR(neat)2952、2875、1725、1636、1619、1454、1409、1352、1298、1197、1131、1067cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1219 [M+H] 259.1182、found 259.1189。
上記の測定データから、下記式(12)で表されるトリエチレングリコールジアクリレートが得られていることが確認された。なお、トリエチレングリコールジアクリレートの収率および選択率を算出したところ、収率は92%、選択率は100%であった。
【0072】
【化12】
【0073】
実施例7~実施例12で用いた触媒、エステルおよびアルコールと、実施例7~実施例12における触媒量、反応温度、反応時間および選択率とを表4に示す。なお、表4において、触媒のモル比とは、アクリル酸メチルに対する触媒の添加量をモル比で表したものである。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例7~実施例12の結果から、マグネシウムt-ブトキシド(Mg(Ot-Bu))は、副生成物が生成しないため、選択性に優れることが分かった。