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特許7441005偏光膜形成用組成物、偏光膜、偏光板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】偏光膜形成用組成物、偏光膜、偏光板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240221BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019010970
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019139222
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018018715
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕太
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 真芳
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198804(JP,A)
【文献】特開2017-197630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素、および少なくとも2種の有機溶剤を含む偏光膜形成用組成物であって
前記有機溶剤が、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含み、
前記有機溶剤Aがケトン系溶剤または芳香族系溶剤であり、
前記有機溶剤Bがグリコール系溶剤、アミド系溶剤およびγ-ブチロラクトンからなる群より選択され、
前記偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対する有機溶剤Aの含有量が70~90質量部であり、有機溶剤Bの含有量が10~30質量部である、偏光膜形成用組成物。
【請求項2】
有機溶剤Aの沸点が前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも0℃以上50℃以下高く、有機溶剤Bの沸点が前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて150℃以下高い、請求項1に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項3】
さらに重合開始剤を含む、請求項1または2に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項4】
有機溶剤Bがグリコール系溶剤およびアミド系溶剤からなる群より選択される、請求項1~3のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項5】
偏光膜形成用組成物の固形分が5~40質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項6】
前記固形分における重合性液晶化合物の割合が40~99.9質量%である、請求項5に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項7】
前記固形分における二色性色素の割合が1~20質量%である、請求項5または6に記載の偏光膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物の硬化物であって、重合性液晶化合物および/またはその重合体がスメクチック液晶状態で配向している偏光膜。
【請求項9】
X線回折測定においてブラッグピークが得られる、請求項8に記載の偏光膜。
【請求項10】
請求項8または9に記載の偏光膜、基材および配向膜を備えてなる偏光板。
【請求項11】
請求項1~7のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度以上まで加熱乾燥した後に降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック液晶相に相転移させること、および、
前記スメクチック液晶相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させて偏光膜を形成すること
を含む、偏光板の製造方法。
【請求項12】
偏光膜形成用組成物の塗膜を光配向膜上に形成する、請求項11に記載の偏光板の製造方法であって、前記光配向膜を、
光により配向規制力を生じるポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物から塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を乾燥除去し、乾燥塗膜を得ること、および、
前記乾燥塗膜に偏光紫外線を照射すること、
を含む方法により形成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜形成用組成物、偏光膜、偏光板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光板は、フラットパネル表示装置(FPD)において、液晶セルや有機EL表示素子等の画像表示素子に貼合されて用いられている。このような偏光板として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性を示す化合物を吸着配向させた偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して、トリアセチルセルロースフィルム等の保護層を積層した構成を有する偏光板が広く用いられている。
【0003】
近年、フラットパネル表示装置に対する薄型化の要求に伴い、その構成要素の1つである偏光板や偏光膜に対してもさらなる薄型化が要求されており、このような要求に対して種々の偏光板や偏光膜が提案されている。例えば、特許文献1には、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物から形成される重合体と二色性色素とを含む偏光子が開示されている。また、特許文献2にはスメクチック相を示す重合性液晶化合物と二色性色素を溶剤に溶解し、ウェットコーティング法により偏光膜を形成可能な重合性液晶組成物が開示されている。さらに、特許文献3には複数の二色性色素とスメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物とを含み、可視光全域で偏光性能を示すような薄型偏光膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4719156号公報
【文献】特開2012-083734号公報
【文献】特開2013-210624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示されるような偏光板や偏光膜(偏光子)は、一般に、重合性液晶化合物と二色性色素を溶剤とともに含む偏光膜形成用組成物を、基材フィルム等のフィルム上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液晶状態に相転移させる工程を経て作製される。本発明者等は、かかる工程において、重合性液晶化合物が液晶状態へ相転移する前に塗膜から溶剤が揮発してしまうと、重合性液晶化合物が微結晶として析出しやすくなることを見出した。このような微結晶が析出してしまうと、その後加熱乾燥を行っても重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を得ることが難しく、得られる偏光膜にドット抜けや配向欠陥を生じる原因となる。このような微結晶の析出は、一般的なネマチック液晶と比較してスメクチック液晶が結晶により近い構造を有することに起因すると考えられ、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物から形成される偏光膜において特に問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、ドット抜けおよび配向欠陥がなく、かつ、高い配向秩序度を有する偏光膜を形成し得る偏光膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素、および少なくとも2種の有機溶剤を含み、前記有機溶剤が、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含む偏光膜形成用組成物。
[2]偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対する有機溶剤Aの含有量が51~99質量部であり、有機溶剤Bの含有量が1~49質量部である、前記[1]に記載の偏光膜形成用組成物。
[3]有機溶剤Aの沸点が前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも0℃以上50℃以下高く、有機溶剤Bの沸点が前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて150℃以下高い、前記[1]または[2]に記載の偏光膜形成用組成物。
[4]さらに重合開始剤を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[5]有機溶剤Aがケトン系溶剤または芳香族系溶剤である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[6]有機溶剤Bがグリコール系溶剤、ケトン系溶剤およびアミド系溶剤からなる群より選択される、前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[7]偏光膜形成用組成物の固形分が5~40質量%である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物。
[8]前記固形分における重合性液晶化合物の割合が40~99.9質量%である、前記[7]に記載の偏光膜形成用組成物。
[9]前記固形分における二色性色素の割合が1~20質量%である、前記[7]または[8]に記載の偏光膜形成用組成物。
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物の硬化物であって、重合性液晶化合物および/またはその重合体がスメクチック液晶状態で配向している偏光膜。
[11]X線回折測定においてブラッグピークが得られる、前記[10]に記載の偏光膜。
[12]前記[10]または[11]に記載の偏光膜、基材および配向膜を備えてなる偏光板。
[13]前記[1]~[9]のいずれかに記載の偏光膜形成用組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度以上まで加熱乾燥した後に降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック液晶相に相転移させること、および、
前記スメクチック液晶相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させて偏光膜を形成すること
を含む、偏光板の製造方法。
[14]偏光膜形成用組成物の塗膜を光配向膜上に形成する、前記[13]に記載の偏光板の製造方法であって、前記光配向膜を、
光により配向規制力を生じるポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物から塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を乾燥除去し、乾燥塗膜を得ること、および、
前記乾燥塗膜に偏光紫外線を照射すること、
を含む方法により形成する、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドット抜けおよび配向欠陥がなく、かつ、高い配向秩序度を有する偏光膜を形成し得る偏光膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0010】
<偏光膜形成用組成物>
本発明の偏光膜形成用組成物は、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)を含む。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態はスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)を示すことがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0011】
重合性液晶化合物(A)としては、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。
重合性液晶化合物(A)としては、例えば、式(A1)で表される化合物および該化合物の重合体(以下、該化合物および該重合体を総称して、「重合性液晶化合物(A1)」ともいう)が挙げられる。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (A1)
[式(A1)中、
、XおよびXは、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X、XおよびXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
およびYは、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
は、水素原子または重合性基を表わす。
は、重合性基を表わす。
およびWは、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
およびVは、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。]
【0012】
重合性液晶化合物(A1)において、X、XおよびXは、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X、XおよびXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。特に、XおよびXは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。また、YおよびYが同一構造である場合、X、XおよびXのうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X、XおよびXのうち少なくとも1つが異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0013】
およびYは、互いに独立して、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-、-CR=N-または-CO-NR-が好ましい。RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Yは、-CHCH-、-COO-または単結合であることがより好ましく、Yは、-CHCH-またはCHO-であることがより好ましい。また、X、XおよびXが全て同一構造である場合、YおよびYが互いに異なる構造であることが好ましい。YおよびYが互いに異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0014】
は、重合性基である。Uは、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。UおよびUがともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。Uで示される重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。
【0015】
およびVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。VおよびVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0016】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0017】
およびWは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-またはOCOO-が好ましく、好ましくは単結合または-O-である。
【0018】
重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A1)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
重合性液晶化合物(A1)は、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0026】
本発明の偏光膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、偏光膜形成用組成物における全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上の重合性液晶化合物が重合性化合物(A)であり、全て(100質量%)が重合性液晶化合物(A)であってもよい。
【0027】
本発明の偏光膜形成用組成物における重合性液晶化合物の含有量は、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99.9質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。本明細書において、固形分とは、偏光膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0028】
本発明の偏光膜形成用組成物は二色性色素を含む。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0030】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
-(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、KおよびKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。Kは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0031】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0032】
およびKにおけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NHである。)等が挙げられる。
【0033】
化合物(I)の中でも、式(I-1)~式(I-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化6】
[式(I-1)~(I-8)中、
~B30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0034】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化7】
[式(I-9)中、
~Rは、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0035】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-10)中、
~R15は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0036】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-11)中、
16~R23は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0037】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-12)中、
およびDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化11】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化12】
[式(2-13)中、
およびDは、互いに独立に、式(1-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化13】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0038】
本発明の偏光膜形成用組成物における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~15質量%である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる。
【0039】
本発明の偏光膜形成用組成物は、少なくとも2種の有機溶剤を含む。該2種の有機溶剤としては、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤A、および、前記重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bが少なくとも含まれる。本発明の偏光膜形成用組成物は上記沸点の異なる少なくとも2種の有機溶剤を含むことにより、偏光膜形成用組成物の塗膜を加熱乾燥して重合性液晶化合物を液晶状態に相転移させる工程(以下、「加熱乾燥工程」ともいう)の前には溶剤が揮発しにくいが、加熱乾燥工程においては溶剤が乾燥除去されやすく、配向欠陥やドット抜けを生じ難い、偏光性能に優れる偏光膜を得ることができる。本発明の偏光膜形成用組成物が2種以上の重合性液晶化合物を含む場合、有機溶剤AおよびBは、それぞれ、該偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物の混合状態でのアイソトロピック相転移温度に基づき選択される。
【0040】
有機溶剤Aは、通常、重合性液晶化合物および二色性色素を溶解し、塗膜中において重合性液晶化合物と二色性色素の良好な混合包摂状態を生じやすくするとともに、偏光膜形成用組成物の固形分濃度および粘度を調整する働きをする。特に、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高い傾向にあり、偏光膜形成用組成物に有機溶剤Aを含むことにより該組成物の取扱性が良好になり、結果として偏光膜の形成がしやすくなる。偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前に塗膜から有機溶剤が揮発することを抑制するために、有機溶剤Aの沸点は、偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高く、好ましくは0℃以上50℃以下高く、より好ましくは10℃以上50℃以下高く、より好ましくは20℃以上40℃以下高い。有機溶剤Aの沸点が、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃を超えて低いと加熱乾燥工程前に有機溶剤が揮発しやすく、重合性液晶化合物の微結晶が析出しやすくなる。また、有機溶剤Aの沸点が重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高いと、加熱乾燥工程前の溶剤の揮発は抑制できるが、加熱乾燥工程において溶剤が揮発し難くなって配向欠陥を生じやすく、また、溶剤除去のために加熱温度を高くしなければならず基材等のフィルムに損傷を生じやすくなる。同時に、加熱乾燥工程後に残存する溶剤量を低減することができるため、残存溶剤に起因する配向欠陥の発生を抑制することができる。有機溶剤Aは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
有機溶剤Bは高沸点溶剤であり、加熱乾燥工程前の塗膜において保湿効果をもたらす働きを有する。加熱乾燥工程前における塗膜からの揮発を抑制する観点から、有機溶剤Bの沸点は、偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高く、好ましくは55℃以上高く、好ましくは150℃以下高く、より好ましくは60℃以上150℃以下高く、さらに好ましくは60℃以上120℃以下高い。重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも前記範囲において高い沸点を有する有機溶剤Bを含むことにより、加熱乾燥工程前の塗膜から有機溶剤が揮発するのを効果的に抑制することができ、塗膜中で重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を保持することができる。これにより、得られる偏光膜にドット抜けが生じるのを効果的に抑制することができる。有機溶剤Bは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
有機溶剤Aの沸点と有機溶剤Bの沸点との差は、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。有機溶剤AとBの沸点が上記関係にあると、偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前における重合性液晶化合物の微結晶の発生抑制効果と、加熱乾燥工程における溶剤の除去容易性の効果とのバランスを取りやすく、得られる偏光膜にドット抜けや配向欠陥を生じ難い。
【0043】
有機溶剤AおよびBは、それぞれ、用いる重合性液晶化合物および二色性色素等に応じて、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度に基づき、重合性液晶化合物および二色性色素を溶解可能な公知の有機溶剤から適宜選択できる。有機溶剤としては、例えば、以下の溶剤が挙げられる:
メチルイソブチルケトン(116℃)、シクロヘキサノン(156℃)、シクロペンタノン(131℃)、メチルアミルケトン(151℃)、イソホロン(215℃)、γ-ブチロラクトン(GBL)(204℃)等のケトン系溶剤;
キシレン(144℃)、メシチレン(165℃)、クメン(152℃)、エチルベンゼン(136℃)、アニソール(154℃)、アニリン(184℃)、ベンズアルデヒド(178℃)、ベンジルアルコール(205℃)、安息香酸メチル(199℃)、安息香酸エチル(213℃)、安息香酸プロピル(230℃)、安息香酸ブチル(250℃)、ニトロベンゼン(211℃)、テトラリン(207℃)等の芳香族系溶剤;
オクタン(125℃)、ノナン(151℃)、デカン(174℃)、ウンデカン(196℃)、ドデカン(216℃)等の長鎖炭化水素系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、エチレングリコール-n-プロピルエーテル(151℃)、エチレングリコール-i-プロピルエーテル(141℃)、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(171℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(176℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(212℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120℃)、プロピレングリコールジメチルエーテル(120℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)、プロピレングリコールジメチルエーテル(97℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(215℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(276℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(245℃)等のグリコール系溶剤;
酢酸プロピル(102℃)、酢酸ブチル(126℃)、酢酸アミル(149℃)、乳酸エチル(155℃)、メチルメトキシプロピオネート(143℃)、エチルエトキシプロピオネート(170℃)、イソアミルプロピオネート(156℃)、イソアミルイソブチレート(179℃)、酪酸エチル(121℃)、酪酸プロピル(143℃)、酪酸ブチル(165℃)、エチレンカーボネート(244℃)、プロピレンカーボネート(242℃)等のエステル系溶剤;
N,N-ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(165℃)、N-メチルピロリドン(202℃)、γ-ブチロラクタム(245℃)等のアミド系溶剤;および
クロロベンゼン(131℃)、1,1,2,2,-テトラクロロエタン(147℃)等のハロゲン系溶剤。
【0044】
有機溶剤Aとしては、重合性液晶化合物および二色性色素に対する溶解性が高いものを選択することがより有利である。本発明の好適な一実施態様において、有機溶剤Aはケトン系溶剤または芳香族系溶剤であり、より好ましくは芳香族系溶剤である。また、有機溶剤Bとしては、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度に対する沸点が高く、かつ、重合性液晶化合物および二色性色素に対する溶解性が高いものを選択することがより有利である。本発明の好適な一実施態様において、有機溶剤Bは、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤およびアミド系溶剤からなる群より選択され、より好ましくは沸点150℃以上のグリコール系溶剤、ケトン系溶剤およびアミド系溶剤である。
【0045】
本発明の偏光膜形成用組成物における有機溶剤Aの含有量は、偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対して、好ましくは51~99質量部であり、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上であり、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。また、有機溶剤Bの含有量は、偏光膜形成用組成物に含まれる全有機溶剤100質量部に対して、好ましくは1~49質量部であり、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。有機溶剤AおよびBをそれぞれ上記含有量の範囲内で含むと、加熱乾燥工程前の塗膜においては溶剤の揮発を抑えることにより、重合性液晶化合物と二色性色素との良好な混合包摂状態を得ることができ、かつ、加熱乾燥工程においては、必要以上の加熱を必要とせず、重合性液晶化合物の相転移温度付近の温度下でも溶剤を十分に除去することが可能となり、残存溶剤に起因する配向欠陥を抑制し、偏光性能に優れる偏光膜を得ることができる。有機溶剤Aおよび/または有機溶剤Bが2種以上を含む場合、上記含有量は有機溶剤Aおよび/または有機溶剤Bそれぞれの合計量を意味する。本発明の効果を損なわない限り、本発明の偏光膜形成用組成物は、有機溶剤AおよびB以外の有機溶剤を含んでもよい。
【0046】
本発明の偏光膜形成用組成物は、その固形分が5~40質量%となるような量で有機溶剤を含むことが好ましい。言い換えると、本発明の偏光膜形成用組成物における有機溶剤の含有量(有機溶剤AおよびB、並びに、含む場合はそれ以外の有機溶剤の合計量)は、偏光膜形成用組成物の総質量に対して60~95質量%であることが好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲であると、加熱乾燥前の塗膜においては溶剤の揮発を抑えることができ、加熱乾燥工程においては必要以上の加熱をすることなく溶剤を乾燥除去し易く、残留溶剤の量を低減することができる。これにより、偏光性能に優れた偏光膜を得ることができる。
【0047】
本発明の偏光膜形成用組成物は重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等が挙げられる。
【0049】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0051】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0052】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0054】
重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、“イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、“イルガキュア(登録商標)184”、“イルガキュア(登録商標)651”、“イルガキュア(登録商標)819”、“イルガキュア(登録商標)250”、“イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));“セイクオール(登録商標)BZ”、“セイクオール(登録商標)Z”、“セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));“カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));“カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);“アデカオプトマーSP-152”、“アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);“TAZ-A”、“TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);および“TAZ-104”(三和ケミカル社)等が挙げられる。
【0055】
偏光膜形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0056】
偏光膜形成用組成物が光重合開始剤を含有する場合、光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0057】
本発明の偏光膜形成用組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0058】
また、本発明の偏光膜形成用組成物はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、偏光膜形成用組成物の流動性を調整し、該偏光膜形成用組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)等が挙げられる。
【0060】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))等が挙げられる。
【0061】
本発明の偏光膜形成用組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光膜を得られる傾向がある。
【0062】
偏光膜形成用組成物の重合反応をより安定的に進行させるために、該組成物には適量の重合禁止剤を含有してもよく、これにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
【0063】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0064】
偏光膜形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物の種類およびその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0065】
偏光膜形成用組成物は、光重合開始剤、レベリング剤、光増感剤、および重合禁止剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。偏光膜形成用組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、偏光膜形成用組成物の固形分に対して、0質量%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%を超えて10質量%以下である。
【0066】
本発明の偏光膜形成用組成物の固形分は、好ましくは5~40質量%である。偏光膜形成用組成物の固形分濃度が上記下限値以上であると、偏光膜形成用組成物の塗膜の加熱乾燥工程前に溶剤が揮発して重合性液晶化合物の微結晶が析出するのを防ぎ、偏光膜におけるドット抜けの発生を抑制することができる。また、固形分が上記上限値以下であると、加熱乾燥工程において有機溶剤を除去しやすく、得られる偏光膜に配向欠陥配を生じ難い。さらに、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、固形分濃度を上記範囲とすることにより塗布がしやすくなり、結果として偏光膜の形成がしやすくなるという利点もある。本発明において、偏光膜形成用組成物の固形分は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。固形分濃度は、主に有機溶剤や重合性液晶化合物の配合量により調整することができる。
【0067】
本発明の偏光膜形成用組成物は、通常、重合性液晶化合物、二色性色素および有機溶剤、並びに必要に応じて上述の添加剤を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0068】
本発明の偏光膜形成用組成物は、ドット抜けや配向欠陥が生じ難く、配向秩序度の高い偏光膜を得ることができる。したがって、本発明は、本発明の偏光膜形成用組成物を硬化させてなる偏光膜(すなわち、偏光膜形成用組成物の硬化物)も包含する。本発明の偏光膜において、これを形成する重合性液晶化合物および/またはその重合体はスメクチック液晶状態で配向していることが好ましい。スメクチック液晶状態で配向することにより、本発明の偏光膜は高い配向秩序度を示す。
【0069】
配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。本発明の偏光膜形成用組成物から形成される偏光膜は、X線回折測定においてブラッグピークを示すことが好ましく、また、重合性液晶化合物および/またはその重合体が光を吸収する方向に分子配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光膜が好ましい。
【0070】
本発明の偏光膜は、例えば、後述する本発明の偏光板の製造方法における偏光膜の形成方法に従い製造することができる。
【0071】
本発明は、本発明の偏光膜を備えてなる偏光板も対象とする。本発明の一実施態様において、本発明の偏光板は、本発明の偏光膜に加えて基材および配向膜を含み、特に基材および光配向膜を含むことが好ましい。
【0072】
本発明の偏光板は、例えば、本発明の偏光膜形成用組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のネマチック-アイソトロピック相転移温度以上まで加熱乾燥した後に降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック液晶相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および、
前記スメクチック液晶相(スメクチック液晶状態)を保持したまま重合性液晶化合物を重合させて偏光膜を形成すること
を含む方法により製造することができる。
【0073】
偏光膜形成用組成物の塗膜の形成は、例えば、基材上や後述する配向膜上などに偏光膜形成用組成物を塗布することにより行うことができる。また、本発明の偏光板が位相差フィルム等を含む場合にはその上に偏光膜形成用組成物を直接塗布してもよい。
【0074】
基材は通常、透明基材である。基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば偏光膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0075】
基材の厚みは、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常5~300μmであり、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~100μmである。
【0076】
偏光膜形成用組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0077】
次いで、偏光膜形成用組成物から得られた塗膜を、前記偏光膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度以上まで加熱し、溶剤を乾燥除去させると同時に重合性液晶化合物を液体相に相転移させる。その後、降温して該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。
【0078】
塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等のフィルムの材質などを考慮して、適宜決定し得る。有機溶剤を十分に除去しながら、重合性液晶化合物を十分にアイソトロピック状態とするため、加熱温度は、好ましくは重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも1℃以上高い、より好ましくは5℃以上高い、さらに好ましくは7℃以上高い温度である。加熱温度の上限は特に限定されないが、加熱による塗膜や基材等への損傷を避けるため、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0079】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、有機溶剤の種類、沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、0.5~10分であり、好ましくは1~5分である。
【0080】
重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度以上への加熱を行う前に、膜形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶剤を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。該乾燥工程を設けることにより、重合性液晶化合物の配向性を向上させることができる。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、有機溶剤の種類、沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物の微結晶の析出を抑制する観点から、通常、30~150℃であり、好ましくは50~130℃である。乾燥時間は、乾燥温度や用いる有機溶剤の種類等に応じて適宜決定し得るが、通常、0.1~5分であり、好ましくは0.1~3分である。
【0081】
次いで、上記加熱乾燥により得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、偏光膜形成用組成物の硬化膜が偏光膜として形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することにより、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0082】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0083】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0084】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0085】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmである。
【0086】
偏光膜形成用組成物の塗膜は配向膜上に形成されることが好ましい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、偏光膜形成用組成物に含まれる有機溶剤により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光により配向規制力を生じるポリマーと溶剤とを含む組成物から形成される光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、静電気や異物が発生し難く光学フィルムとしての品位に優れるという観点から、光配向膜が好ましい。
【0087】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことにより得られる。溶剤としては、偏光膜形成用組成物に用い得る有機溶剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0089】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0090】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0091】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、偏光膜形成用組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0092】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0093】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。
【0094】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることにより基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0095】
光配向膜は、通常、光反応性基を有し、光による配向規制力を生じるポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材等のフィルム上に塗布して塗膜を形成して得られた塗膜から溶剤を乾燥除去し、次いで、得られた乾燥塗膜に偏光紫外線を照射することにより形成できる。光配向膜は、照射する偏光紫外線の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0096】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0097】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0098】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0099】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光膜形成用組成物において用い得る有機溶剤として先に例示したものと同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0100】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜決定できるが、光配向膜形成用組成物の総質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0101】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0102】
溶剤を乾燥除去する際の温度は、用いる溶剤の種類やその量等に応じて適宜決定し得るが、通常30~150℃であり、好ましくは60~130℃である。乾燥除去する際の時間は、通常0.1~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0103】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに、偏光紫外線を照射する形式でも、基材側から偏光紫外線を照射し、偏光紫外線を透過させて照射する形式でもよい。当該偏光紫外線は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光紫外線の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲の紫外線が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光紫外線を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0104】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0105】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0106】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0107】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10~200nm、特に好ましい50~150nmの範囲である。
【0108】
本発明の偏光板の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは25~100μmである。
【0109】
本発明の偏光膜および偏光板は偏光性能に優れるため、種々の表示装置に好適に用いることができる。表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられ、特に有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。本発明の偏光板を粘着剤または接着剤を介して表示装置の表面に貼合することにより、本発明の偏光板を含む表示装置を得ることができる。
【実施例
【0110】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
【0111】
<光配向膜形成用組成物の調製>
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・光配向性ポリマー:
【化14】
2部
・溶剤:
o-キシレン 98部
【0112】
<光配向膜基材の調製>
基材として100mm×100mmのトリアセチルセルロースフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタ(株)製)を用い、膜表面にコロナ処理を施した後に、上記光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜を形成して光配向膜付きフィルムを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJである条件で行った。このようにして光配向膜付きフィルムを準備した。
【0113】
<偏光膜形成用組成物の調製>
1.比較例1
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することにより、偏光膜形成用組成物(1)を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。
【0114】
・重合性液晶化合物(混合物):
【化15】
(4-6)75部
【化16】
(4-8)25部
・二色性色素:
【化17】
2.5部
【化18】
2.5部
【化19】
2.5部
・重合開始剤:
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 6部
・レベリング剤:
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:
トルエン 400部
【0115】
<相転移温度の測定>
(1)配向膜の形成
偏光膜形成用組成物(1)中の重合性液晶化合物の相転移温度を以下の方法に従い測定した。ガラス基材上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚み100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
【0116】
(2)相転移温度の測定
重合性液晶化合物(4-6)75質量部、重合性液晶化合物(4-8)25質量部をクロロホルム400質量部に加えて80℃で1時間撹拌することにより均一に混合した混合組成物を得た。得られた組成物を前記配向膜付きガラス基材上にスピンコート法により塗布し、130℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥することにより溶剤であるクロロホルムを除去した。その後、得られた塗布膜を速やかに室温まで冷却して、重合性液晶化合物の乾燥被膜を得た。この乾燥被膜をホットプレート上で再び130℃まで昇温後、5℃/分の速度で23℃まで降温時において、偏光顕微鏡で観察をすることにより相転移温度を測定した。その結果、111.6℃でネマチック液晶相に相転移し、109.2℃でスメクチックA相に相転移し、93.9℃でスメクチックB相へ相転移し、23℃になるまでスメクチックB相を維持することを確認した。上記過程においてアイソトロピック相転移温度は111.6℃であることを確認した。
【0117】
<偏光膜の作製方法>
(1)光配向膜の形成
基材としてトリアセチルセルロースフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタ(株)製)を用い、膜表面にコロナ処理を施した後に、上記光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜形成して光配向膜付きフィルムを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJである条件で行った。
【0118】
(2)偏光膜の形成
上記で得た光配向膜付きフィルム上に、偏光膜形成用組成物(1)をバーコート法(#9 30mm/s)により塗布した。塗布した膜を23℃室温にて30秒間静置した後に、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより十分に溶剤を除去し、かつ、重合性液晶化合物をアイソトロピック液晶相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜(1)を形成した。この偏光膜(1)の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.3μmであった。かくして得られたものは、偏光膜と基材とを含む偏光子(偏光膜積層体)である。この偏光膜(1)に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて同様にX線回折測定を行った結果、2θ=20.2°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.17°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0119】
<ドット抜けの評価>
このようにして得られた偏光膜(1)を200倍の顕微鏡にて透過観察したところ、全面に約200~800μm程度の円状の色抜けが観察された。また、200倍の偏光顕微鏡クロスニコル下にて偏光膜の吸収軸(分子配向方向)を45°となるように観察したところ、光抜けを生じることから重合性液晶化合物自体は配向していることが確認された。上記観察結果から、液晶ドメイン中に二色性色素が包摂されていない領域(ドット抜け)を生じていることを確認した。
【0120】
<ドット抜け評価基準>
○:目視で確認されず、上記顕微鏡観察においても確認されなかった。
△:目視では確認されないが、上記顕微鏡観察においては確認された。
×:目視で確認され、上記顕微鏡観察においても確認された。
【0121】
<偏光度Py、単体透過率Tyの測定>
以下のようにして、比較例1の偏光膜積層体の偏光度Pyおよび単体透過率Tyを測定した。波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(Ta1)および吸収軸方向の透過率(Tb2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーのリファレンス側に光量を50%カットするメッシュを設置した。
【0122】
下記式(式1)ならびに(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出した。その結果、Ty=42.5%でありPy=97.6%と高度に配向したスメクチック液晶由来の高い性能を示した(この値は吸収二色性比で48に相当する)。
単体透過率Ty(%)= (Ta1+Tb2)/2 (式1)
偏光度Py(%) = (Ta1-Tb2)/(Ta1+Tb2)×100 (式2)
【0123】
2.比較例2~5、実施例1~16
溶剤を表1に示す組成に変えた以外は比較例1と同様にして偏光膜形成用組成物(2)~(21)を作製し、比較例1と同様にして偏光膜(2)~(21)を作製した。得られた偏光膜のドット抜け、偏光度Pyおよび単体透過率Tyを比較例1と同様にして測定した。評価結果を表2に示す。
【0124】
3.実施例17
重合性液晶化合物を以下の重合性液晶化合物に変えた以外は比較例1と同様にして偏光膜形成用組成物(22)を作製し、比較例1と同様にして偏光膜(22)を作製した。なお、比較例1と同様にして、実施例17で用いた重合性液晶化合物の相転移温度を測定したところ、105.6℃でネマチック液晶相に相転移し、102.1℃でスメクチックA相に相転移し、85.4℃でスメクチックB相へ相転移し、23℃になるまでスメクチックB相を維持することを確認した。上記過程においてアイソトロピック相転移温度は105.6℃であることを確認した。得られた偏光膜のドット抜け、偏光度Pyおよび単体透過率Tyを比較例1と同様にして測定した。評価結果を表2に示す。
【0125】
【化20】
(4-22)75重量部
【化21】
(4-25)25重量部
【0126】
4.参考例
重合性液晶化合物をネマチック液晶であるPario Color LC242(BASF社製)に変えた以外は比較例1と同様にして偏光膜形成用組成物(23)を作製し、比較例1と同様にして偏光膜(23)を作製した。得られた偏光膜のドット抜け、偏光度Pyおよび単体透過率Tyを比較例1と同様にして測定した。なお、LC242のアイソトロピック相転移温度は118.0℃である。評価結果を表2に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
本発明によれば、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも-20℃以上50℃以下高い沸点を有する有機溶剤Aと、重合性液晶化合物のアイソトロピック相転移温度よりも50℃を超えて高い沸点を有する有機溶剤Bとを含む偏光膜形成用組成物から形成した偏光膜は、ドット抜けが無く、かつ、偏光性能が高いことがわかる。