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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】含浸複合油脂性菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20240221BHJP
   A23G 1/54 20060101ALI20240221BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240221BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G1/54
A23L5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019506243
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2018010103
(87)【国際公開番号】W WO2018168975
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2017053041
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】土舘 恭子
(72)【発明者】
【氏名】▲とく▼永 正道
(72)【発明者】
【氏名】大谷 友里江
(72)【発明者】
【氏名】川畑 翔太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紫
(72)【発明者】
【氏名】上野 博久
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】加藤 友也
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052638(WO,A1)
【文献】特開平9-308431(JP,A)
【文献】特開2004-254529(JP,A)
【文献】特開2002-354988(JP,A)
【文献】特開2003-339328(JP,A)
【文献】特開2003-174850(JP,A)
【文献】特開平5-103635(JP,A)
【文献】Journal of the Faculty of Applied Biological Science, Hiroshima University,1979年,18,225-231
【文献】日本物理学会誌,2016年,71(11),767-770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G1/00-1/54
A23L5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に、油脂性菓子生地に埋没させた多孔質固形食品を準備する工程と、
チャンバー内の油脂性菓子生地に多孔質固形食品を埋没させた状態で油脂性菓子生地に超音波を5秒~40秒照射しながらチャンバー内の圧力を上昇させる工程と、
を有する、含浸複合油脂性菓子の製造方法であって、
チャンバー内の圧力を上昇させる工程の前のチャンバー内の圧力を低下させる工程において、油脂性菓子生地に超音波を照射しない、
含浸複合油脂性菓子の製造方法
【請求項2】
前記チャンバー内の圧力を低下させる工程を、チャンバー内に、油脂性菓子生地に埋没させた多孔質固形食品を準備する工程の後、チャンバー内の圧力を上昇させる工程の前に含む、請求項1に記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
【請求項3】
油脂性菓子生地の無脂乳固形分が、15質量%以上である、請求項1又は2に記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
【請求項4】
照射する超音波の周波数が、28kHz以上40kHz以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸複合油脂性菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含気泡食材に油脂性菓子生地を含浸させる技術は知られている。特許文献1には、クルトンとチョコレ-トを混合し、減圧装置内に入れ、減圧装置内を減圧し気泡を排出させた後、常圧に戻しチョコレ-トを浸透させ、振動ふるい機にかけ余分なチョコレ-トを除去し冷却固化させることにより製造することを特徴とするチョコレ-ト浸透クルトンが開示されている。特許文献2には、焼き菓子等の含気泡食材と、チョコレート等の油脂性菓子を組み合わせた複合油脂性菓子が開示されている。しかしながら、同様の含浸方法でホワイトチョコレート生地を焼菓子に含浸させようとしても、油分のみが含浸し、凝集した白色の乳固形分が焼き菓子の表面に止まり、均一な生地組成のまま焼き菓子の内部まで十分に含浸させることができなかった。特許文献3には、この課題を解決する方法として、ホワイトチョコレート生地が固形食品に含浸したホワイトチョコレート含浸食品であって、ホワイトチョコレート生地の無脂乳固形分が15質量%以上であり、かつ、ホワイトチョコレート生地中固形分粒子のメディアン径が6μm以下であることを特徴とする、ホワイトチョコレート含浸食品が開示されている。しかし、特許文献3に記載の方法は、チョコレート生地にメディアン径を調整する等の特殊な加工を施す必要があるため汎用性に乏しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-308431号公報
【文献】WO97/47207
【文献】WO2011/125451
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、油脂性菓子生地を多孔質固形食品に含浸させるための新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、油脂性菓子生地を多孔質固形食品に含浸させるための新規な製造方法を見出した。すなわち、
(1)チャンバー内に、油脂性菓子生地に埋没させた多孔質固形食品を準備する工程と、チャンバー内の油脂性菓子生地に多孔質固形食品を埋没させた状態で油脂性菓子生地に超音波を照射しながらチャンバー内の圧力を上昇させる工程と、を有する、含浸複合油脂性菓子の製造方法。
(2)チャンバー内に、油脂性菓子生地に埋没させた多孔質固形食品を準備する工程の後、チャンバー内の圧力を上昇させる工程の前に、チャンバー内の圧力を低下させる工程をさらに含む、(1)に記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
(3)チャンバー内の圧力を低下させる工程において、油脂性菓子生地に超音波を照射しない、(2)に記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
(4)油脂性菓子生地の無脂乳固形分が、15質量%以上である、(1)から(3)のいずれかに記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
(5)照射する超音波の周波数が、28kHz以上40kHz以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の含浸複合油脂性菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、従来の方法では多孔質固形食品に油脂性菓子生地を含浸させることが困難な場合でも、油脂性菓子生地にメディアン径を調整する等の特殊な加工を施すことなく、均一な生地組成で多孔質固形食品に含浸させることができた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0008】
本発明の実施形態における油脂性菓子は、日本国公正取引委員会認定のルールである「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」に定めるチョコレート、準チョコレートの他、それらに属しないファットクリームやナッツペースト等であってもよい。また、本発明の実施形態における油脂性菓子は、ホワイトチョコレート、またはホワイトチョコレート類似菓子であってもよい。本明細書においてホワイトチョコレート類似菓子とは、ホワイトチョコレートのココアバターを一部ココアバター以外の植物油脂に置き換えたものであり、20~45質量%の植物油脂および10~40質量%の糖類を含む油脂性菓子を意味する。
【0009】
本発明の実施形態における油脂性菓子は、従来知られている方法により製造されているものでよい。油脂性菓子中の無脂乳固形分は、特に限定されないが、例えば、15~40質量%、18~35質量%、または20~30質量%であってよい。油脂性菓子中の油分は、特に限定されないが、例えば、30~50質量%、32~48質量%、または35~45質量%であってよい。油脂性菓子中の水分は、特に限定されないが、例えば、0~5質量%、0.3~3質量%、または0.5~2質量%であってよい。
【0010】
本発明の実施形態において、油脂性菓子の固形分粒子メディアン径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型番SALD-2200)で測定された固形分粒子分布における積算値が50%となる粒子径をさす。油脂性菓子生地中固形分粒子のメディアン径は、特に限定されないが、例えば、6μm~50μm、8μm~40μm、または10μm~30μmであってよい。
【0011】
本発明の実施形態において、油脂性菓子生地の粘度は、B型粘度計を用い、生地温度が35℃の時にNo.6ローター、4rpmで測定した値を用いる。本発明の実施形態における方法は、油脂性菓子生地の粘度の高低に関わらず有効であるが、油脂性菓子生地の粘度は、例えば、5000~100000Pa・s、20000~100000mPa・s、25000~80000mPa・s、または30000~50000mPa・sであってよい。
【0012】
従来であれば含浸が困難な条件である、油脂性菓子中の無脂乳固形分が15質量%以上および/または、油脂性菓子の油分が45質量%以下および/または、油脂性菓子生地中固形分粒子のメディアン径が6μmより大きい場合に本発明がより効果を奏する。
【0013】
本発明の実施形態における多孔質固形食品は、内部に多孔質の空隙を有するものであればよく、例えば、焼成菓子であってよく、より具体的には、例えば、クッキー、ビスケット、コーンパフ、スポンジケーキ、クルトンなどであってよい。多孔質固形食品の空隙サイズは、例えば、50~1500μm、100~1000μm、または200~700μmであってよい。多孔質固形食品の空隙率は、例えば、50~98%、60~95%、または70~90%であってよい。
【0014】
本発明の実施形態において、油脂性菓子生地を多孔質固形食品に含浸する方法は、減圧法または加圧法を用いることができる。一定圧での毛細管現象を利用した浸漬法に比べて工程が短時間であり、超音波を照射する時間を短くすることができることで油脂性菓子生地の過熱による焦げなどの変質や、テンパー油脂を用いたチョコレート生地を油脂性菓子生地として使用した場合に必要な種結晶の融解による製品のブルーミング等の不具合を回避することができるからである。
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(チャンバー内に、油脂性菓子生地に埋没させた多孔質固形食品を準備する工程)
まず多孔質固形食品を油脂性菓子生地槽に埋没させる。この時、多孔質固形食品が油脂性菓子生地槽から露出しない様にすることが好ましい。多孔質固形食品の一部に油脂性菓子生地で覆われていない部分があると、含浸工程で空気が優先的に多孔質固形食品内に戻ってしまうので、油脂性菓子生地を十分に多孔質固形食品内に行き渡らせることができるようにするためである。多孔質固形食品が埋没した油脂性菓子生地槽を減圧チャンバーに投入して密閉する。
【0017】
(チャンバー内の圧力を低下させる工程)
次の圧力を上昇させる工程に移る前に、チャンバー内の圧力を低下させて、多孔質固形食品内部を脱気する工程を含むことが好ましい。この工程においては、油脂性菓子生地に超音波は照射しないことが好ましい。チャンバー内の圧力は、例えば、0.006~0.090MPaに低下させてもよく、0.01~0.05MPaに低下させてもよい。また、チャンバー内の圧力を低下させる時間は、例えば、1秒~120秒であってよく、10秒~60秒であってよい。
【0018】
(チャンバー内の油脂性菓子生地に多孔質固形食品を埋没させた状態で油脂性菓子生地に超音波を照射しながらチャンバー内の圧力を上昇させる工程)
次に、槽内の油脂性菓子生地に超音波を照射しながらチャンバー内の圧力を上昇させ、多孔質固形食品内に油脂性菓子生地を浸透させる。チャンバー内の圧力が大気圧以上である場合には、例えば、0.2以上0.6MPa以下に加圧してもよい。本工程の前にチャンバー内の圧力を低下させる工程を含む場合には、圧力を大気圧まで上昇させてもよく、必要に応じてさらにチャンバー内の圧力を大気圧より高くまで加圧してもよい。例えば、大気圧以上0.6MPa以下に加圧してもよい。
【0019】
本発明の実施形態における超音波とは、人の耳に感じない振動数で、一般的には20kHz以上の音波を指す。油脂性菓子生地に照射する超音波の周波数は、例えば、20kHz以上200kHz以下であってよく、25kHz以上80kHz以下であることが好ましく、28kHz以上40kHz以下であることがより好ましい。上記周波数であると、多孔質固形食品内に油脂性菓子生地が浸透しやすくなるため、好ましい。
【0020】
油脂性菓子生地を多孔質固形食品に含浸する際に超音波を照射する方法は、いずれの方法を用いてもよい。例えば、超音波発生機構付きウォーターバスを用いてもよいし、棒状の超音波ホモジナイザーを油脂性菓子生地槽に投入して超音波を発生させてもよい。
【0021】
油脂性菓子生地が多孔質固形食品内に浸透する時、つまりチャンバー内の圧力が昇圧している時に油脂性菓子生地に超音波を照射する。超音波を照射する時間が長くなると、油脂性菓子生地の温度が上昇する。特にテンパリングを要する油脂性菓子生地を使用しているときは、過度の温度上昇でテンパリングが崩れてしまい、油脂性菓子生地が多孔質固形食品内に適切に浸透したとしても、その後冷却固化、保存をした時にブルームが発生する可能性があるため、超音波を照射する時間は必要最低限であることが好ましい。油脂性菓子生地に超音波を照射する時間は、例えば、5秒~40秒であってよく、10秒~30秒であることが好ましく、15秒~25秒であることがより好ましい。
【実施例
【0022】
(製造例1)
全脂粉乳33質量部、砂糖35質量部、ココアバター21.5質量部、植物油脂10質量部、レシチン0.5質量部、乳化剤(型番:SYグリスターCRS75、第一薬品工業製)0.1質量部を常法に従って混合し、レファイナーで粉砕し、無脂乳固形分が23質量%であり、油分が40質量%であるホワイトチョコレート生地を得た。得られたホワイトチョコレートに含まれる固形分粒子のメディアン径は10μmであった。
【0023】
(製造例2)
鶏卵64質量部、砂糖48質量部、植物油脂35質量部、乳化剤1質量部、水52質量部をよく混合攪拌し、これに薄力粉72質量部、ココアパウダー10質量部、脱脂粉乳5質量部、ベーキングパウダー0.01質量部を加えてホイップさせて生地を泡立てながら混合した。これを金属製の型に流し込み、オーブンで190℃、9分焼成後、さらに100℃で15分乾燥して、35mm×15mm×10mmの焼成菓子を得た。1個あたりの焼成菓子の質量は0.85gであった。製造した焼成菓子の空隙サイズは、平均300μm、空隙率は約85.6%であった。
【0024】
(実施例1)
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に35℃に調温した前記ホワイトチョコレート生地を投入した。この時のホワイトチョコレート生地の粘度は38750mPa・sであった。続いて焼成菓子を、ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没した。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0025】
減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧しそのまま25秒間維持した。次にウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0026】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却し、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は4.21gであった。ウォーターバス内のチョコレート生地の温度は37℃であった。
【0027】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で浸透していた。
【0028】
(実施例2)
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に35℃に調温した前記ホワイトチョコレート生地を投入した。続いて焼成菓子を、ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没した。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0029】
ウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧し、25秒間維持した。次にそのまま超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0030】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は4.30gであった。ウォーターバス内のホワイトチョコレート生地の温度は44.6℃であった。
【0031】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で浸透していた。
【0032】
(比較例1)
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に35℃に調温した前記ホワイトチョコレート生地を投入した。続いて焼成菓子を、ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没させた。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0033】
ウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧して25秒間維持した。超音波を停止した後徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0034】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去しようとしたところ、油分が抜けたとみられるホワイトチョコレートの硬い膜が焼成菓子表面に形成されていたため、それも取り除いた上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は2.63gであった。
【0035】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部まではホワイトチョコレートが到達していなかった。この含浸ホワイトチョコレート菓子を食したところ、最初はホワイトチョコレートの様な食感を有するが、中心部は焼成菓子そのものの食感であった。ホワイトチョコレートと焼成菓子との一体感がなく、全体的に軽い食感で好ましくない品質であった。
【0036】
(比較例2)
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に35℃に調温した前記ホワイトチョコレート生地を投入した。続いて焼成菓子を、ホワイトチョコレート上面から露出しないよう埋没した。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0037】
減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧し、25秒間維持した。その後徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0038】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去しようとしたところ、油分が抜けたとみられるホワイトチョコレートの硬い膜が焼成菓子表面に形成されていたため、それも取り除いた上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は2.88gであった。
【0039】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部まではホワイトチョコレートが到達していなかった。この含浸ホワイトチョコレート菓子を食したところ、最初はホワイトチョコレートの様な食感を有するが、中心部は焼成菓子そのものの食感であった。ホワイトチョコレートと焼成菓子との一体感がなく、全体的に軽い食感で好ましくない品質であった。
【0040】
(実施例3)
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:W-170-ST、本多電子製)を用いて、減圧解放時に40kHzの超音波を発生させる以外は実施例1と同じ方法で、含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は3.78gであった。
【0041】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で浸透していた。
【0042】
上記の結果を表1に示す。総合評価は、5名の熟練パネリストに各チョコレート菓子を食させ、以下のA~Dの基準で評価させた官能試験の結果である。
A:全体的に均一で非常に好ましい食感を有する
B:全体的に均一で好ましい食感を有する
C:部分的に不均一で好ましくない食感を有する
D:全体的に不均一で非常に好ましくない食感を有する
【表1】
【0043】
(比較試験例)
添加する乳化剤(型番:SYグリスターCRS75)の量が異なる以外は比較例2と同様の方法で含浸チョコレート菓子を製造した。
【0044】
乳化剤によって粘度を極度に低下させたホワイトチョコレート生地を使用しても、油分が減少したとみられるホワイトチョコレートの硬い膜が焼成菓子表面に形成されていた。また得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を確認したところ、いずれの試験区でも、焼成菓子の中心部まではホワイトチョコレートが到達していなかった。これらの含浸ホワイトチョコレート菓子を食したところ、最初はホワイトチョコレートの様な食感を有するが、中心部は焼成菓子そのものの食感であった。ホワイトチョコレートと焼成菓子との一体感がなく、全体的に軽い食感で好ましくない品質であった。
【0045】
上記の結果を表2に示す。総合評価は、表1と同様に熟練パネラーにより官能試験を行った結果である。
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例4)
製造例1で得たホワイトチョコレート生地100質量部を約32℃に調温した後、1,3-ジステアリル-2-オレイルグリセロールからなるシード剤(商品名:チョコシードA、不二製油製)0.3質量部を添加、攪拌し含浸用ホワイトチョコレート生地を調製し、超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に前記含浸用ホワイトチョコレート生地を投入した。続いて製造例2で得た焼成菓子を、含浸用ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没した。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0048】
減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧しそのまま25秒間維持した。次にウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0049】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は4.05gであった。ウォーターバス内のホワイトチョコレート生地の温度は32.4℃であった。
【0050】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で浸透していた。
【0051】
再び焼成菓子をウォーターバス内の含浸用ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没させ、さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0052】
減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧しそのまま25秒間維持した。次にウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0053】
ウォーターバスから菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個当たりの質量は3.93gであった。ウォーターバス内のホワイトチョコレート生地の温度は33.8℃であった。
【0054】
(比較例8)
製造例1で得たホワイトチョコレート生地100質量部を約32℃に調温した後、1,3-ジステアリル-2-オレイルグリセロールからなるシード剤(商品名:チョコシードA、不二製油製)0.3質量部を添加、攪拌し含浸用ホワイトチョコレート生地を調製した。
【0055】
超音波発生機構付きウォーターバス(型番:AU-12C、アイワ医科工業製)に前記含浸用ホワイトチョコレート生地を投入した。続いて製造例2で得た焼成菓子を、含浸用ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没した。さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0056】
ウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧し、25秒間維持した。次にそのまま超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0057】
ウォーターバスから焼成菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個あたりの質量は3.98gであった。ウォーターバス内のホワイトチョコレート生地の温度は36.1℃であった。
【0058】
得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の断面を観察したところ、焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で浸透していた。
【0059】
再び焼成菓子をウォーターバス内の含浸用ホワイトチョコレート生地表面から露出しないよう埋没させ、さらにウォーターバスを減圧チャンバーに投入した。
【0060】
ウォーターバス内に28kHzの超音波を発生させながら減圧チャンバー内の圧力を0.009MPaまで減圧し、25秒間維持した。次にそのまま超音波を発生させながら徐々に減圧を開放し、20秒でチャンバー内の圧力を大気圧まで戻した。
【0061】
ウォーターバスから菓子を取り出し、表面の余剰ホワイトチョコレート生地を除去した上で冷却、ホワイトチョコレートを固化し含浸ホワイトチョコレート菓子を得た。得られた含浸ホワイトチョコレート菓子の1個当たりの質量は4.00gであった。ウォーターバス内のホワイトチョコレート生地の温度は39.0℃であった。
【0062】
実施例4、比較例8で得られたそれぞれの含浸ホワイトチョコレート菓子を20℃で14日間保管した。実施例4で得られた1回目、2回目の含浸ホワイトチョコレート菓子のいずれも焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で含浸していた。これらの含浸ホワイトチョコレート菓子を食したところ、焼成菓子とホワイトチョコレートに一体感があって口どけも良く、好ましい品質であった。比較例8の1回目、2回目の含浸ホワイトチョコレート菓子は焼成菓子の中心部までホワイトチョコレートが均一な生地組成で含浸していたものの、表面にはブルーム現象が見られた。またこれらの含浸ホワイトチョコレート菓子を食したところ、ホワイトチョコレートがぼそぼそした食感で焼成菓子との一体感もなく、好ましくない品質であった。
【0063】
上記の結果を表3に示す。総合評価は、表1と同様に熟練パネラーにより官能試験を行った結果である。
【0064】
【表3】