(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ガスボンベ
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240221BHJP
F17C 13/12 20060101ALI20240221BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20240221BHJP
G01K 11/12 20210101ALI20240221BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C13/12 301A
F17C13/04 301D
G01K11/12 A
(21)【出願番号】P 2020102403
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 直弥
(72)【発明者】
【氏名】長尾 重幸
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/038353(WO,A1)
【文献】実開昭56-084980(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0330843(US,A1)
【文献】特開平09-015064(JP,A)
【文献】特開2014-145536(JP,A)
【文献】実開昭63-102520(JP,U)
【文献】特開2009-036525(JP,A)
【文献】特開2001-066196(JP,A)
【文献】特開2018-205222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F17C 13/12
F17C 13/04
G01K 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶栓を有し、
不可逆的に変色する示温材が、少なくとも
前記可溶栓に貼付されたガスボンベ。
【請求項2】
前記可溶栓、および前記可溶栓が取り付けられる取付部に跨って、前記示温材が貼付される、請求項
1に記載のガスボンベ。
【請求項3】
前記示温材は、前記可溶栓に3枚貼付され、
それぞれの前記示温材の変色温度は、40℃、50℃、および60℃である、請求項
1または
2に記載のガスボンベ。
【請求項4】
前記示温材は、所定の温度環境下に配置される時間に応じて、色の濃度が変化する、請求項1~
3のいずれか1項に記載のガスボンベ。
【請求項5】
前記示温材に隣り合うようにQRコード(登録商標)が配される、請求項1~
4のいずれか1項に記載のガスボンベ。
【請求項6】
可溶栓を有し、
不可逆的に変色する示温材が、前記可溶栓、および前記可溶栓が取り付けられる取付部に跨って貼付される、ガスボンベ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、示温材が貼付されたガスボンベに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プロパンガスやフロンガス等のガスボンベには、保管温度が異常に高くなった場合に、内部の高圧ガスを逃がして爆発を防ぐための安全装置として可溶栓が取り付けられている(例えば下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可溶栓は、一般的に60℃程度の外気温で溶解し、高圧となったガスボンベ内部のガスを噴出させる構造になっているが、この溶解温度に満たない40℃程度の外気温でも可溶栓が劣化し、ガスボンベの内圧に起因して徐々にガスが漏洩するケースが存在する。昨今においては、これまで涼しかった地域においても夏季の気温が40℃を超える状況になっており、ガスボンベを適正温度以下に保つことが難しくなっている。しかしながら、ガスボンベ及び可溶栓が過去にどのような環境下に保管されていたのかの温度履歴を示すものはなく、可溶栓の劣化具合を図る指標もなかった。そのため、過去に適正温度以上で保管されたことで劣化した可溶栓が取り付けられたガスボンベが流通しており、ガスの漏洩事故が起こっていた。
【0005】
したがって、ガスボンベが過去にどのような温度環境下で保管されていたかを把握して、可溶栓の劣化具合を推定可能にすることが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、過去にどのような温度環境下で保管されていたかを把握することのできるガスボンベを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係るガスボンベは、可溶栓を有し、不可逆的に変色する示温材が、少なくとも前記可溶栓に貼付されたガスボンベである。
【発明の効果】
【0008】
上述のガスボンベによれば、ガスボンベの保管環境が所定の温度(例えば40℃)以上になった場合、示温材が変色して、所定の温度を下回っても変色した状態を維持するために、過去にどのような温度環境下に保管されていたかを把握することができる。また、これによって可溶栓の劣化具合を推定可能にすることで、劣化具合に応じて保管場所や方法の変更や可溶栓の交換を行うことができ、ガスの漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るガスボンベを示す正面図である。
【
図2】本実施形態に係るガスボンベのキャップ内部の構成を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係るガスボンベの可溶栓を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は、第2示温材が可溶栓の正面に貼付されている様子を示す拡大図であって、
図4(B)は、第2示温材が可溶栓の側面に貼付されている様子を示す拡大図である。
【
図5】
図5(A)は、保管する前の状態における第1示温材または第2示温材を示す図であって、
図5(B)は、50℃以上60℃未満の温度環境下において保管した後における第1示温材または第2示温材を示す図である。
【
図6】可溶栓および取付部に跨って第3示温材が貼付される様子を示す側面図である。
【
図7】キャップに第4示温材が貼付される様子を示す正面図である。
【
図8】第1示温材または第2示温材の隣にQRコード(登録商標)が配された様子を示す図である。
【
図9】第1示温材または第2示温材の隣にシリアルナンバーが配された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るガスボンベ1を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係るガスボンベ1のキャップ20内部の構成を示す正面図である。
図3は、本実施形態に係るガスボンベ1の可溶栓50を示す断面図である。
図4(A)は、第2示温材60が可溶栓50の正面に貼付されている様子を示す拡大図であって、
図4(B)は、第2示温材が可溶栓の側面に貼付されている様子を示す拡大図である。
図5(A)は、保管する前の状態における第1示温材40または第2示温材60を示す図であって、
図5(B)は、50℃以上60℃未満の温度環境下において保管した後における第1示温材40または第2示温材60を示す図である。
【0012】
本実施形態に係るガスボンベ1は、
図1~
図4に示すように、ガスが保管される本体部10と、本体部10の上方に取り付け可能に配置されるキャップ20と、キャップ20の内部に設けられる二口バルブ30と、本体部10に貼付された第1示温材(示温材に相当)40と、二口バルブ30の取付部90に取り付けられる可溶栓50と、可溶栓50に貼付された第2示温材(示温材に相当)60と、を有する。
【0013】
二口バルブ30は、液側バルブ31と、気体側バルブ32と、を有する。ガスを高圧状態で液化して回収するときには、液側バルブ31によって回収する。またガスを気体のまま回収するときには、気体側バルブ32によって回収する。なお、本実施形態に係るガスボンベ1は、二口バルブ30である必要はなく液側バルブ31のみを備えたものであってもよい。
【0014】
第1示温材40は、
図1に示すように、本体部10に貼付される。第1示温材40が本体部10に貼付される場所は特に限定されないが、人の目線の高さに近い場所に貼付されることが好ましい。
【0015】
第1示温材40としては公知のものを用いることができ、例えば、サーモラベル(登録商標)(商品名:日油技研工業社製)や加熱積算ラベル(商品名:日油技研工業社製)を用いることができる。第1示温材40の最下面の粘着剤層が本体部10に貼付される。
【0016】
本実施形態において、第1示温材40は、本体部10に3枚貼付される。本実施形態において、3枚の第1示温材40は、それぞれ40℃、50℃、および60℃が変色温度となっている。
【0017】
第1示温材40は、所定の温度環境下によって変色するものが用いられるが、より好ましくは、所定の温度環境下に配置される時間に応じて、色の濃度が変化することが好ましい。例えば、第1示温材40が黒色に変色する場合、所定の温度環境下に配置される時間に応じて、白、グレー、黒の順に徐々に濃度が変化する。このような第1示温材40によれば、色の濃度によってどの程度の時間、所定の温度環境下に配置されていたかを把握することができる。
【0018】
可溶栓50は、
図2に示すように、二口バルブ30の外表面に設けられる取付部90に取り付けられる。可溶栓50は、
図3に示すように、外周に雄ネジ51aが形成される外周部材51と、外周部材51の内周に配置される内周部材52と、を有する。
【0019】
外周部材51は、例えば、青銅、黄銅、または砲金などによって形成される。また、内周部材52は、例えば、融点の低い鉛やスズによって形成される。
【0020】
このように構成された可溶栓50において、ガスボンベ1の保管温度が60℃以上になったときに、融点の低い内周部材52が溶解して穴が開くことで、本体部10内のガスを逃がして爆発を防ぐことができる。したがって、ガスボンベ1を保管する際は、保管温度が60℃を超えないように調整する必要があるが、可溶栓50は40℃程度で劣化し本体部10内のガスが漏れる恐れがあるため、保管温度は40℃を超えないよう調整することが好ましい。
【0021】
第2示温材60は、第1示温材40と同一のものを用いることができる。第2示温材60は、
図2、
図4に示すように、可溶栓50に3枚貼付される。第2示温材60は、可溶栓50の外周部材51の頭部に貼付される。なお、第2示温材60が可溶栓50に貼付される場所は特に限定されず、
図4(A)に示すように可溶栓50の正面でも良く、
図4(B)に示すように側面でも良い。3つの第2示温材60は、それぞれ40℃、50℃、および60℃が変色温度となっている。
【0022】
また、第2示温材60は、第1示温材40と同様に、所定の温度環境下に配置される時間に応じて、色の濃度が変化することが好ましい。このような第2示温材60によれば、色の濃度によってどの程度の時間、所定の温度環境下に配置されていたかを把握することができる。
【0023】
上記のように構成されたガスボンベ1が、50℃以上60℃未満の環境下に配置された場合、
図5に示すように、40℃および50℃の変色温度を備える第1示温材40および第2示温材60は変色する。一旦変色した第1示温材40および第2示温材60は、40℃以下の温度になったとしても、不可逆であるため、変色状態が維持される。したがって、ガスボンベ1が過去にどのような温度環境下で保管されていたかを可視化して把握することができる。
【0024】
また、第1示温材40および第2示温材60を用いて可視化できるため、40℃の温度環境になる前に、温度環境を冷房等によってコントロールしたり、ガスボンベ1をより低温の場所へ移動させたりすることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るガスボンベ1は、不可逆的に変色する第1示温材40および第2示温材60が貼付されたガスボンベ1である。このように構成されたガスボンベ1によれば、保管場所が所定の温度(例えば40℃)以上になった場合、第1示温材40および第2示温材60が変色して、変色した状態を維持するために、過去にどのような温度環境下で保管されていたかを把握することができる。また、これによって可溶栓の劣化具合を推定可能にすることで、劣化具合に応じて保管場所や方法の変更や可溶栓の交換を行うことができ、ガスの漏洩を防ぐことができる。
【0026】
また、ガスボンベ1は、可溶栓50を有し、可溶栓50に第2示温材60が貼付される。このように構成されたガスボンベ1によれば、第2示温材60によって可溶栓50の温度履歴を把握することができる。よって可溶栓50の状態をより正確に推定することができる。
【0027】
また、第1示温材40および第2示温材60は、所定の温度環境下に配置される時間に応じて、色の濃度が変化する。このように構成されたガスボンベ1によれば、色の濃度によってどの程度の時間、所定の温度環境下に配置されていたかを把握することができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、第2示温材60は、可溶栓50の外周部材51の頭部に貼付された。しかしながら、例えば第3示温材(示温材に相当)70は、
図6に示すように、可溶栓50、および可溶栓50が取り付けられる取付部90に跨って貼付されていてもよい。この構成によれば、ガスボンベ1の保管者が意図せず可溶栓50を取付部90から取り外すことを好適に防止することができる。
【0030】
また、上述した実施形態では、ガスボンベ1は、本体部10に貼付される第1示温材40および可溶栓50に貼付される第2示温材60を有していた。しかしながら、ガスボンベは、本体部10に貼付される第1示温材40および可溶栓50に貼付される第2示温材60のどちらか一方を有する構成であってもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、ガスボンベ1は、本体部10に貼付される第1示温材40および可溶栓50に貼付される第2示温材60を有していた。しかしながら、
図7に示すように、キャップ20に第4示温材(示温材に相当)80が貼付される構成であってもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、第1示温材40および第2示温材60は、変色温度が40℃、50℃、60℃の10℃刻みで貼付された。しかしながら、これに限定されず、ガスボンベ内に貯蔵される高圧ガスおよび可溶栓の溶解温度等の特性に応じて対応する温度範囲の示温材が貼付されてもよい。
【0033】
また、
図8に示すように、第1示温材40または第2示温材60に隣り合うようにQRコード(登録商標)が配されていてもよい。QRコード(登録商標)は、第1示温材40または第2示温材60と一体化されていることが好ましい。QRコード(登録商標)に含まれる情報としては、例えば、示温材の情報(ロッドナンバー、取扱説明書情報のダウンロード)、ガスボンベ情報(フロン充填会社でのガスボンベ管理データの入手)、ガス取り扱い情報(安全データシート、製造規格書等のデータのダウンロード)、可溶栓情報(ロッドナンバー、取扱説明書情報のダウンロード)、ボンベ取り扱い情報(販売代理店情報)、その他(関連法規関係情報)等である。
【0034】
このようにQRコード(登録商標)が配されることによって、必要な情報を迅速に取得することができる。さらに、ガスボンベ情報から、容易にフロン充填会社でのボンベ管理データの入手でき、容易に可溶栓の劣化具合を推定できる。また、QRコード(登録商標)が第1示温材40または第2示温材60と一体化されていることによって、第1示温材40または第2示温材60の改ざん防止が可能となる。
【0035】
また、
図9に示すように、第1示温材40または第2示温材60に隣り合うようにシリアルナンバーが配されていてもよい。また、シリアルナンバーは、第1示温材40または第2示温材60と一体化されていることが好ましい。
【0036】
このようにシリアルナンバーが配されることによって、第1示温材40または第2示温材60の改ざん防止が可能となり、信頼性が向上する。
【0037】
さらに、第1示温材40または第2示温材60に隣り合うように、QRコード(登録商標)およびシリアルナンバーが配されていてもよい。この構成によれば、QRコード(登録商標)の利用により、シリアルナンバーとボンベの識別番号の紐づけが可能となり、信頼性を向上させることができるとともに、多様な情報をリンクさせることが可能となる。
【0038】
また、第1示温材40または第2示温材60に隣り合うように配される対象物としては、上述のQRコード(登録商標)やシリアルナンバーに限定されず、バーコードやその他の方法によって、改ざん防止やガスボンベの情報を確認できる手段であればよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ガスボンベ、
40 第1示温材、
50 可溶栓、
60 第2示温材、
90 取付部。