(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】超音波洗浄機及び自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240221BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01N35/10 F
G01N1/00 101N
(21)【出願番号】P 2020163148
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 陽介
(72)【発明者】
【氏名】越智 学
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】野中 昂平
【審査官】野口 聖彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002740(WO,A1)
【文献】特開昭60-042635(JP,A)
【文献】特開2018-100871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 1/00
B08B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料又は試薬を吸引するノズルを洗浄する洗浄槽と、圧電素子をフロントマスとバックマスとで挟み込んだ超音波振動子と、を有し、
前記超音波振動子の先端に設置される前記フロントマスの先端には、対向する、上板と下板との振動板を形成し、前記ノズルを、前記上板と前記下板との間の領域で、超音波洗浄
し、
前記上板の共振周波数と前記下板の共振周波数との間に、前記超音波振動子の駆動周波数が設定されることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項2】
請求項1に記載する超音波洗浄機であって、
前記超音波振動子が水平に近い角度で設置され、前記振動板の超音波照射面と前記洗浄槽に満たされる洗浄液の液面との角度が平行に近く設置されることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項3】
請求項1に記載する超音波洗浄機であって、
前記上板と下板との振動板は、長さ又は厚さが異なることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項4】
請求項1に記載する超音波洗浄機であって、
前記上板と下板との振動板は、逆位相で振動する周波数で駆動することを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項5】
請求項4に記載する超音波洗浄機であって、
前記超音波振動子の駆動周波数は、前記超音波振動子が伸縮したときの変位が最大となる共振周波数であることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項6】
請求項1に記載する超音波洗浄機であって、
前記上板又は前記下板は、厚さが部分的に厚い形状であることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項7】
請求項1に記載する超音波洗浄機であって、
前記上板の共振周波数と前記下板の共振周波数との周波数の差は、10kHz以内であることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項8】
請求項4に記載する超音波洗浄機であって、
前記上板又は前記下板は、前記ノズルを挿入する位置付近の振幅が最大となることを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項9】
請求項4に記載する超音波洗浄機であって、
前記振動板は、その幅が、前記振動板が設置される前記フロントマスの基部の幅よりも広いことを特徴とする超音波洗浄機。
【請求項10】
請求項1に記載する超音波洗浄機を有すること特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項10に記載する自動分析装置であって、
前記ノズルを、前記上板と前記下板との間の領域で、超音波洗浄する際、前記ノズルの高さを変えて超音波洗浄することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルと試薬とを混ぜ合わせることにより、サンプルの成分を分析する自動分析装置に関し、特に、サンプルを分注するノズルを洗浄する超音波洗浄機及び自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、同一ノズルを繰り返し使用し、サンプルを分注するため、別のサンプルを吸引する前には、ノズルの先端を水流で洗い流すノズル洗浄を行う必要がある。
【0003】
しかし、高スループット性能を有する自動分析装置は、高速にサンプルを分注するため、ノズル洗浄に十分な時間を使用することができない。
【0004】
このため、ノズルの先端にサンプルの成分由来の汚れが蓄積することがあり、ノズルの先端に汚れが蓄積すると、分注量のばらつきや、前のサンプルを次のサンプルに持ち込むキャリーオーバが発生する恐れがあり、分析精度が悪化する恐れがある。
【0005】
こうした技術分野における背景技術として、WO2017/002740号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、BLT(ボルト締めランジュバン型振動子)の超音波振動を拡大する振動部を、洗浄槽の内部の側面側に有し、BLTを駆動することにより、洗浄槽の内部に供給される洗浄液に対して、超音波振動によるキャビテーションをノズルの周囲にムラなく発生させ、効果的にノズル洗浄を行う超音波洗浄機が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、超音波洗浄機では、音圧が高い領域で、キャビテーション(液中に発生する圧力差により、泡の発生と消滅とが起きる現象)の強度が強くなり、洗浄効果が高くなる。
【0008】
音圧を高くするためには、超音波を照射(超音波振動を発生)する振動面の振動を増幅する方法や複数の振動面から同領域に超音波を照射する方法などがある。特に、複数の振動面から超音波を照射する方法の場合に、音圧を高くするためには、同位相で超音波を照射する必要がある。
【0009】
特許文献1には、BLTの超音波振動を使用し、超音波振動によるキャビテーションを発生させ、ノズル洗浄を行う超音波洗浄機が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1には、音圧を高くするために、複数の振動面から超音波を照射し、同位相で超音波を照射する超音波洗浄機は、記載されていない。
【0011】
そこで、本発明は、複数の振動面から超音波を照射し、同位相で超音波を照射し、超音波振動によるキャビテーションをノズルの周囲に効果的に発生させ、洗浄効果が高い超音波洗浄機及び自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明の超音波洗浄機は、サンプル又は試薬を吸引するノズルを洗浄する洗浄槽と、圧電素子をフロントマスとバックマスとで挟み込んだ超音波振動子と、を有し、超音波振動子の先端に設置されるフロントマスの先端には、対向する、上板と下板との振動板を形成し、ノズルを、上板と下板との間の領域で、超音波洗浄し、上板の共振周波数と下板の共振周波数との間に、超音波振動子の駆動周波数が設定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、本発明の超音波洗浄機を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の振動面から超音波を照射し、同位相で超音波を照射し、超音波振動によるキャビテーションをノズルの周囲に効果的に発生させ、洗浄効果が高い超音波洗浄機及び自動分析装置を提供することができる。
【0015】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に記載する超音波洗浄機26を有する自動分析装置10を説明する説明図である。
【
図2A】実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する上面図である。
【
図2B】実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する斜視図である。
【
図2C】実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する断面図である。
【
図2D】実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する超音波振動子201の先端の拡大図である。
【
図3A】実施例1に記載するフロントマス204の先端(2枚の振動板)が振動したときの振動方向(a)と音圧分布(b)とを説明する説明図である。
【
図3B】比較例に記載するフロントマス204の先端(2枚の振動板)が振動したときの振動方向(a)と音圧分布(b)とを説明する説明図である。
【
図4】超音波振動子201と2枚の振動板との周波数応答を説明する説明図であり、(a)は超音波振動子201の共振周波数が最も大きい場合、(b)は超音波振動子201の共振周波数が最も小さい場合、(c)は実施例1に記載する超音波振動子201の共振周波数と2枚の振動板の共振周波数との関係、を示すものである。
【
図5A】実施例2に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図5B】実施例3に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図5C】実施例4に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図5D】実施例5に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図5E】実施例6に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図5F】実施例7に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【
図6】実施例8に記載する超音波洗浄機26を説明する説明図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は上面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を使用し、本発明の実施例を説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0018】
先ず、実施例1に記載する超音波洗浄機26を有する自動分析装置10を説明する。
【0019】
図1は、実施例1に記載する超音波洗浄機26を有する自動分析装置10を説明する説明図である。
【0020】
自動分析装置10は、サンプル(試料)と試薬とを混ぜ合わせることにより、サンプルの成分を分析する。自動分析装置10は、複数の試薬容器11を搭載する試薬ディスク12と、試薬とサンプルとを混ぜ合わせ、反応させる反応ディスク13と、試薬の吸引や吐出を行う試薬用分注機構14と、サンプルの吸引や吐出を行うサンプル用分注機構15と、を有する。
【0021】
試薬用分注機構14は、試薬を分注する試薬用ノズル21を有する。
【0022】
サンプル用分注機構15は、サンプルを分注するサンプル用ノズル22を有する。
【0023】
そして、実施例1では、自動分析装置10は、サンプル用ノズル22の先端を超音波洗浄する超音波洗浄機26を有する。なお、自動分析装置10は、試薬用ノズル21の先端を超音波洗浄する超音波洗浄機を有してもよい。
【0024】
つまり、自動分析装置10は、同一のサンプル用ノズル22を繰り返し使用し、サンプルを分注するため、超音波洗浄機26は、一般的には、別のサンプルを吸引する前に、サンプル用ノズル22の先端を水流で洗い流すノズル洗浄を行う。
【0025】
自動分析装置10に投入されるサンプルは、サンプル容器(試験管や採血管)23に入れられた状態で、サンプルラック24に搭載され、搬送される。サンプルラック24には、複数のサンプル容器23が搭載される。なお、このサンプルは、血清や全血などの血液由来のものや尿などである。
【0026】
また、サンプル用分注機構15は、サンプル用ノズル22を、サンプル容器23からサンプルの吸引を行う吸引位置、セル25にサンプルの吐出を行う吐出位置、及び、サンプル用ノズル22の先端を洗浄する超音波洗浄機26が設置される超音波洗浄位置、サンプル用ノズル22の先端を水流で洗い流すための洗浄槽(図示せず)が設置される洗浄位置、へ移動(動作)させる。
【0027】
なお、セル25は、反応ディスク13の周方向に複数個に分割して設置される。
【0028】
更に、サンプル用分注機構15は、吸引位置、吐出位置、及び、洗浄位置で、サンプル容器23、セル25、又は、超音波洗浄機26(洗浄槽)の高さに合わせて、サンプル用ノズル22を下降(動作)させる。
【0029】
このような動作を行うため、サンプル用分注機構15は、サンプル用ノズル22を各位置(吸引位置、吐出位置、及び、洗浄位置)へ回転移動させ、各位置で上下移動させる。なお、サンプル用分注機構15の制御は、駆動制御部(図示せず)で行う。
【0030】
また、自動分析装置10は、測定部(図示せず)を有する。そして、自動分析装置10は、セル25に収容された、サンプルと試薬とを混ぜ合わせた混合液を、測定部で分析(測光)する。つまり、自動分析装置10は、サンプルの所定の成分の濃度などを分析し、サンプルの成分を分析する。なお、測定部は、例えば、光源と光度計とを有し、光度計は、例えば、吸光光度計又は散乱光度計である。
【0031】
超音波洗浄機26は、サンプルと接触したサンプル用ノズル22の先端を超音波洗浄する。
【0032】
サンプル用ノズル22の先端を超音波洗浄するタイミングは、サンプル用分注機構15がサンプルを吐出した直後、サンプル用分注機構15が一定回数の分注を終了した後、1日の最初や最後の自動分析装置10のメンテナンス時間、又は、自動分析装置10の休止中などである。なお、超音波洗浄機26の制御は、駆動制御部(図示せず)で行う。
【0033】
また、自動分析装置10は、高スループット性能が要求される場合がある。高速にサンプルを分注するためには、分析処理中は、数秒程度の短時間で、サンプルの吸引、吐出、洗浄を行う必要がある。このため、ノズル洗浄に十分な時間を使用することができない場合がある。つまり、この1サイクルの動作(サンプルの吸引、吐出、洗浄)中に、超音波洗浄を行うと、スループット性能が低下する恐れがある。
【0034】
そこで、分析の種類に応じて、超音波洗浄を行うことが好ましい。一種類のサンプルに対して、複数の分析装置で分析を行う場合(例えば、先ず低感度の分析を行い、次に高感度の分析を行う場合)がある。そして、こうした場合には、高感度の分析を行うサンプルには、超音波洗浄を行い、低感度の分析のみを行う場合には、超音波洗浄を行わず、全体のスループット性能を向上させるシーケンスを使用する。
【0035】
このように、分析処理中に、或る測定部で分析されるサンプルが、別の測定部で分析される場合あって、特に、前の分析におけるサンプルの成分の持ち越しが、後の分析に大きく影響する場合に、超音波洗浄を行う。これにより、全体のスループット性能を向上させることができる。なお、この場合、1回の洗浄時間は数秒程度である。
【0036】
また、分析処理中以外のタイミングであっても、緊急の分析要求に対応するため、自動分析装置10は短時間で分析可能な状態に遷移する必要があり、1分以上の長時間のノズル洗浄は行えない。
【0037】
このように、自動分析装置10は、短時間で、効率良く、ノズル洗浄を行う超音波洗浄機26が要求される。つまり、自動分析装置10は、超音波振動によるキャビテーションをサンプル用ノズル22の周囲に効果的に発生させ、洗浄効果が高い超音波洗浄機26が要求される。
【0038】
次に、実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する。
【0039】
図2A、
図2B、
図2C、
図2Dは、実施例1に記載する超音波洗浄機26を説明する説明図であり、
図2Aは超音波洗浄機26の上面図、
図2Bは超音波洗浄機26の斜視図、
図2Cは超音波洗浄機26の断面図(
図2AのA-A断面)、
図2Dは超音波振動子201の先端(フロントマス204)の拡大図、である。
【0040】
超音波洗浄機26は、超音波振動子201と、サンプルを吸引するサンプル用ノズル22の先端を洗浄する洗浄槽202が一体形成されるベース203と、を有する。
【0041】
超音波振動子201は、フロントマス(洗浄ヘッド)204と、複数の圧電素子205(例えば、圧電セラミックス)と、複数の電極206と、バックマス207と、を有する。
【0042】
また、フロントマス204には、超音波振動子201をベース203に固定するフランジ209が設置される。超音波振動子201を設置したフランジ209を、ベース203に設置されるスリットに差し込むことにより、超音波振動子201のX方向及びY方向の位置を固定する。
【0043】
また、フロントマス204の先端(後述する振動板の上板221及び振動板の下板222)には、サンプル用ノズル22の先端を挿入する孔(洗浄孔)210が形成される。そして、サンプル用ノズル22を、洗浄孔210に向けて下降し、洗浄槽202の内部に溜められた洗浄液に、浸漬する。
【0044】
なお、実施例1では、超音波振動子201は、洗浄槽202に満たされた洗浄液の液面(洗浄槽202の液面)に対して、水平に近い角度で(又は、水平に)設置され、振動板の超音波照射面と洗浄槽202の液面との角度が平行に近く(又は、平行に)設置される。
【0045】
超音波振動子201は、一般的なBLT(ボルト締めランジュバン型振動子)と同様に、フロントマス204とバックマス207とにより、圧電素子205と電極206とを挟み込み、ボルト208によりボルト締めして、固定する。
図2C参照。
【0046】
また、洗浄槽202には、流路211が形成される。流路211は、自動分析装置10に設置される洗浄液のタンク(図示せず)やシリンジポンプ(図示せず)と連通する流路と接続する。これにより、洗浄槽202への洗浄液の供給や洗浄槽202からの洗浄液の回収を行う。
図2C参照。
【0047】
なお、洗浄槽202の外側に洗浄液を受ける溝を形成し、洗浄槽202に洗浄液を供給し、洗浄液をあふれさせて、洗浄液を回収することもできる。
【0048】
そして、実施例1に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端には、逆位相で振動(逆位相で振動する周波数で駆動)し、上板221と下板222との対向する2枚の振動板が形成される。
図2D参照。
【0049】
なお、洗浄槽202の内部に溜められた洗浄液の液位は、少なくとも上板221と同程度の高さ、又は、それ以上の高さが好ましい。つまり、上板221と下板222との間の空間に、洗浄液が満たされる状態となる必要がある。
【0050】
また、洗浄槽202の内部のサイズ(大きさ及び深さ)は、洗浄槽202がフロントマス204と接触せず、フロントマス204の先端に形成される2枚の振動板である上板221と下板222とが、洗浄液に浸漬可能であればよい。
【0051】
更に、実施例1では、2枚の振動板である上板221と下板222との形状を変える。特に、実施例1では、上板221の一部(根元部)に、厚さを変えた部分(厚さが部分的に厚い部分(形状):肉厚部)を形成し、上板221と下板222との質量差で、上板221と下板222との剛性を変える。
【0052】
なお、肉厚部は、上板221又は下板222のいずれかに形成され、また、振動板の根元部又は先端部に形成される。
【0053】
つまり、実施例1では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との重さを変える。特に、実施例1では、下板222の重さを上板221の重さよりも軽くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の重さを上板221の重さよりも重くしてもよい。
【0054】
なお、上板221と下板222とは、例えば、幅4mm、長手方向長さ11mm、厚さ1mm、上板221の根元部の厚さ2.5mmであり、上板221と下板222との間の距離2mm、洗浄孔210の直径3mm、上板221と下板222との間の根元部の長手方向長さ3mmである。
【0055】
また、上板221と下板222との距離が近いほど音圧を高める効果がある。このため、上板221と下板222との距離は最大でも10mm程度であることが好ましい。サンプル用ノズル22とサンプルとが接触する範囲は、数ミリ程度であり、十分にサンプル用ノズル22を洗浄することができる。
【0056】
また、サンプル用ノズル22は、サンプル用分注機構15により、上下移動することができる。このため、上板221と下板222との間の領域に対して、サンプル用ノズル22を上下させ、広い範囲を洗浄することもできる。例えば、先ず、サンプル用ノズル22の先端部分の数ミリを洗浄し、サンプル用ノズル22を数ミリ下降し、次の数ミリを洗浄し、また、サンプル用ノズル22を数ミリ降下し、次の数ミリを洗浄する。この動作を繰り返すことにより、広い範囲を洗浄することができる。なお、サンプル用ノズル22を最初に深く挿入し、サンプル用ノズル22を上昇させながら洗浄することもできる。サンプル用ノズル22の移動方向や移動距離によらず洗浄することができる。
【0057】
このように、実施例1に記載する自動分析装置10は、サンプル用ノズル22を、上板221と下板222との間の領域で、超音波洗浄する際、サンプル用ノズル22の高さを変えて超音波洗浄する。
【0058】
なお、実施例1では、上板221と下板222とが同じ材料(密度)を使用し、上板221の質量と下板222の質量とを変えるために、長さ、厚さ、量(突起部や肉厚部を形成)を変える。また、上板221の質量と下板222の質量とを変えるために、上板221と下板222とを、同一形状とし、異なる材料(密度)で形成してもよい。
【0059】
また、長さ、厚さ、量(突起部や肉厚部を形成)を組み合わせて変えてもよい。例えば、上板221と下板222との厚さと長さとを変えてもよい。また、厚さと長さとが異なる形状において、上板221と下板222との幅を広げてもよい。また、洗浄孔210を、孔ではなく、先端まで切り開く形状でもよい。
【0060】
実施例1では、上板221と下板222との剛性を変えることにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。
【0061】
上板221と下板222とを逆位相で振動させることにより、上板221と下板222との間の領域(中空部)に、音圧が集中(増幅)する領域を発生させることができる。つまり、上板221と下板222とを逆位相で振動させることにより、中空部に、同位相で超音波を照射することができ、同位相で超音波を照射することより、音圧が集中する領域を発生させることができる。
【0062】
このように、実施例1によれば、複数の振動面(2面)から、同位相で超音波を照射することにより、音圧が集中する領域(音圧を高める領域)を発生させることができる。
【0063】
そして、音圧が集中する領域に、サンプル用ノズル22の先端を挿入することにより、良好な洗浄効果を得ることができる。
【0064】
このように、実施例1に記載する超音波洗浄機26は、超音波振動子201を有し、超音波振動子201の先端には、洗浄ヘッド(フロントマス204)が設置され、洗浄ヘッド(フロントマス204)の先端(端部)には、振動板となり、剛性が異なる、上板221と下板222とを有する。なお、振動板の材料としては、例えば、アルカリ性洗剤に対応可能な耐薬品性のSUS材などが使用される。
【0065】
そして、上板221と下板222との長さ、厚さ、質量を変えることにより、上板221と下板222との剛性を変える。
【0066】
このように、実施例1によれば、超音波振動によるキャビテーションをサンプル用ノズル22の周囲に効果的に発生させ、サンプル用ノズル22の先端に付着した汚れを効果的に洗浄する、洗浄効果が高い超音波洗浄機26を有する自動分析装置10を提供することができる。
【0067】
ここで、フロントマス204の先端(2枚の振動板)が振動したときの振動方向(a)と音圧分布(b)とを説明する。
【0068】
図3Aは、実施例1に記載するフロントマス204の先端(2枚の振動板)が振動したときの振動方向(a)と音圧分布(b)とを説明する説明図である。
【0069】
図3Bは、比較例に記載するフロントマス204の先端(2枚の振動板)が振動したときの振動方向(a)と音圧分布(b)とを説明する説明図である。
【0070】
フロントマス204の先端に形成される2枚の振動板である上板221と下板222とは、フロントマス204が加振されることにより、逆位相か、同位相か、で振動する。
【0071】
図3A(a)は、逆位相で振動したときの上板221と下板222との変形形状を示し、
図3B(a)は、同位相で振動したときの上板221と下板222との変形形状を示す。
【0072】
図3A(a)に示すように、逆位相では、上板221と下板222とは逆方向に振動する。このため、上板221が下向き(-Z方向)に変形するときに、下板222は上向き(+Z方向)に変形し、上板221が上向き(+Z方向)に変形するときに、下板222は下向き(-Z方向)に変形する。
【0073】
一方、
図3B(a)に示すように、同位相では、上板221と下板222とは同方向に振動する。このため、上板221が上向き(+Z方向)に変形するときに、下板222も上向き(+Z方向)に変形し、上板221が下向き(-Z方向)に変形するときに、下板222も下向き(-Z方向)に変形する。
【0074】
また、
図3A(b)は、上板221と下板222とが逆位相に振動したときに発生する超音波の位相(音圧分布)を示し、
図3B(b)は、上板221と下板222とが同位相に振動したときに発生する超音波の位相(音圧分布)を示す。
【0075】
図3A(b)に示すように、上板221と下板222とが逆位相で振動する周波数で駆動すると、上板221と下板222との間の領域(中空部)に発生する超音波振動は同位相となり、音圧を強める方向に作用する。
【0076】
一方、
図3B(b)に示すように、上板221と下板222とが同位相で振動する周波数で駆動すると、上板221と下板222との間の領域(中空部)に発生する超音波振動は逆位相となり、音圧を弱める方向(超音波同士が打ち消す(音圧を打ち消す)方向)に作用する。
【0077】
このように、実施例1によれば、上板221と下板222とを逆位相で振動させ、中空部に、同位相で超音波を照射することにより、中空部に、音圧が集中する領域(音圧が高まる(強まる)領域)を発生させることができ、超音波振動によるキャビテーションを、サンプル用ノズル22の周囲に効果的に発生させることができる。
【0078】
なお、実施例1では、振動板の中央付近にある洗浄孔210のある領域で音圧を高めるため、振動板が2次の振動モード(中央付近の変位が大きい)を使用する。
【0079】
また、振動板が1次の振動モード(先端側の変位が大きい)を使用することもできる。この場合、変位の大きい先端側に音圧を高める領域が発生するため、サンプル用ノズル22を挿入する洗浄孔210を、振動板の先端側に形成することが好ましい。
【0080】
但し、超音波洗浄で使用する20kHz以上の帯域で1次の振動モードを励起するためには、振動板の長さを短くするか、又は、振動板の厚さを厚くするかして、剛性を上げる必要がある。この場合、振動板の長さを短くすると超音波が照射される領域が狭くなり、また、振動板の厚さを厚くすると洗浄槽202の深さが深くなる。
【0081】
そこで、洗浄孔210を振動板の中央付近に形成し、振動板の中央付近の変位が最大となる2次の振動モードを使用し、振動板の中央付近で、上板221と下板222との振動が逆位相に近い状態となることが好ましい。
【0082】
つまり上板221と下板222とは、サンプル用ノズル22が挿入される位置(洗浄孔210が形成される位置)付近の振幅が最大となることが好ましい。
【0083】
次に、超音波振動子201と2枚の振動板(上板221及び下板222)との周波数応答を説明する。
【0084】
図4は、超音波振動子201と2枚の振動板との周波数応答を説明する説明図であり、(a)は超音波振動子201の共振周波数が最も大きい場合、(b)は超音波振動子201の共振周波数が最も小さい場合、(c)は実施例1に記載する超音波振動子201の共振周波数と2枚の振動板の共振周波数との関係、を示すものである。
【0085】
超音波振動子201は、圧電素子205がX方向に大きく伸縮する共振周波数f1(401)を有する。共振周波数f1(401)は、超音波振動子201のX方向の長さや、フロントマス204とバックマス207と圧電素子205との音速によって決定される。
【0086】
また、上板221と下板222とが、
図3のように、Z方向に大きく変形する上板221の共振周波数f2(402)と下板222の共振周波数f3(403)とは、それぞれ、上板221の厚さや長さなどの剛性や下板222の厚さや長さなどの剛性によって決定される。
【0087】
なお、超音波振動子201が伸縮する共振周波数f1(401)は、上板221の形状及び下板222の形状を変えた場合でも、数kHz程度しか変化しない。
【0088】
f1、f2、f3の共振周波数の設定パターンには、
図4(a)に示すようにf2、f3、f1の順、
図4(b)に示すようにf1、f2、f3の順、
図4(c)に示すようにf2、f1、f3の順、がある。なお、f2とf3との順は逆でもよい。
【0089】
つまり、
図4(a)は、f1よりもf2とf3とが低い場合、
図4(b)は、f1よりもf2とf3とが高い場合、
図4(c)は、f1がf2とf3との間にある場合である。
【0090】
このような共振周波数の設定パターンにおいて、超音波振動子201の駆動周波数(超音波振動子201を駆動させる周波数)をf1付近とした場合には、上板221と下板222とを逆位相で振動させる条件は、
図4(c)に示す、f1(駆動周波数)がf2とf3との間にある場合のみである。つまり、振動板の変形が大きくなる或る共振周波数(f2又はf3)と、振動板の変形が大きくなる別の共振周波数(f3又はf2)との間に、駆動周波数(共振周波数f1)を有する。
【0091】
なお、上板221と上板222との剛性差は、長さの差、厚さの差、部分的な厚さの変化(突起部や肉厚部)を調整することにより、設計することができる。つまり、f2(402)とf3(403)との周波数差を設定することができる。
【0092】
このように、上板221の共振周波数f2と下板222の共振周波数f3とを、超音波振動子201が伸縮する共振周波数f1の前後に設定し、駆動周波数を共振周波数f1にすることにより、上板221と下板222との振動位相を逆位相とする。そして、逆位相で振動する2枚の振動板の間に、同位相の超音波を発生し、音圧を高め、良好な洗浄効果を得る。
【0093】
更に、逆位相の振動で、上板221と下板222との振幅を増幅するためには、f2とf3とがf1に近いことが好ましく、f2とf3とがそれぞれf1から約5kHz以内にあることが好ましい。例えば、f1が40kHzの場合は、f2が35kHz、f3が45kHzのように設定する。なお、f2とf3とは逆でもよい。
【0094】
つまり、駆動周波数(f1付近)をf2とf3との間に設定し、f2とf3とをf1に近く(f2とf3とがそれぞれf1から約5kHz以内)設定することが好ましい。このように、f2とf3との周波数の差は、10kHz以内であることが好ましい。
【0095】
このように、駆動周波数を設定することにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができ、上板221と下板222との両方の振幅を増幅することができる。
【0096】
なお、駆動周波数をf1付近以外の周波数帯とする場合であっても、上板221と下板222とが逆位相で振動する条件はある。但し、この場合、駆動周波数をf1付近の周波数帯とする場合と比較して、上板221又は下板222の振幅が低下する恐れがある。このため、駆動周波数をf1付近の周波数帯とすることが好ましい。
【0097】
なお、駆動周波数をf1付近以外の周波数帯とする場合であっても、上板221と下板222とが逆位相で振動する限りは、音圧が集中する領域を発生させることができる。
【0098】
このように、超音波振動子201には、3つの特徴のある共振周波数があり、1つは超音波振動子201の軸方向の伸縮によって振幅が増幅される周波数(振動子伸縮周波数と呼称)であり、残り2つは上板221と下板222とのそれぞれの面に対して垂直方向の振幅が増幅される周波数(上板周波数と下板周波数と呼称)である。
【0099】
実施例1によれば、超音波振動子201は、上板周波数と下板周波数との間に振動子伸縮周波数を設定し、ノズル洗浄時は、超音波振動子201を振動子伸縮周波数で駆動することにより、2枚の振動板を逆位相で振動させることができる。
【0100】
また、自動分析装置10は、超音波洗浄機26を駆動するための駆動制御部(図示せず)を有する。駆動制御部は、超音波振動子201に、例えば、20kHz以上の正弦波電圧を入力することにより、振動板(上板221及び下板222)を超音波振動させる。
【0101】
そして、上板221と下板222との振動位相は、約180度反転した逆位相であり、超音波洗浄機26は、2枚の振動板の間の領域に、キャビテーションを発生させ、サンプル用ノズル22を洗浄する。
【0102】
そして、駆動制御部は、超音波振動子201の共振周波数f1を自動的に追従する自動追従機能を有し、駆動周波数を共振周波数f1に設定する。一般的に、超音波振動子201の共振周波数は、Q値(先鋭度)が高く、駆動周波数が共振周波数f1からずれると、超音波振動子201の振幅が低下する恐れがある。このため、駆動周波数を、インピーダンスが最も低い(駆動電流が高くなる)共振周波数f1に設定することが好ましい。つまり、駆動周波数は、超音波振動子201が伸縮したときの変位が最大となる共振周波数であることが好ましい。
【0103】
また、実施例1では、設計や製造が容易である2枚の振動板を使用する。なお、3枚以上の振動板を使用することもできる。対向する振動板の振動が逆位相とし、振動板の間の領域にサンプル用ノズル22を挿入することにより、サンプル用ノズル22を洗浄することができる。
【0104】
なお、自動分析装置10において、超音波洗浄機26の設置位置は、自動分析装置10のいずれの場所でもよく、超音波洗浄機26が、洗浄位置に移動する場合やノズル洗浄時のみに設置される場合であってもよい。
【0105】
また、実施例1では、洗浄対象とするノズルは、サンプル用ノズル22である。なお、洗浄対象とするノズルは、サンプル用ノズル22に限定するものではなく、試薬用ノズル21もあってもよい。
【実施例2】
【0106】
次に、実施例2に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0107】
図5Aは、実施例2に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0108】
実施例2に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板は、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0109】
つまり、実施例2では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との厚さを変える。特に、実施例2では、下板222の厚さを上板221の厚さよりも厚くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の厚さを上板221の厚さよりも薄くしてもよい。
【実施例3】
【0110】
次に、実施例3に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0111】
図5Bは、実施例3に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0112】
実施例3に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板も、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0113】
つまり、実施例3では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との長さを変える。特に、実施例3では、下板222の長さを上板221の長さよりも短くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の長さを上板221の長さよりも長くしてもよい。
【実施例4】
【0114】
次に、実施例4に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0115】
図5Cは、実施例4に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0116】
実施例4に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板も、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0117】
つまり、実施例4では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との重さを変える。特に、実施例4では、下板222の重さを上板221の重さよりも軽くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の重さを上板221の重さよりも重くしてもよい。
【0118】
特に、実施例4では、上板221の一部(先端部)に、厚さを変えた部分(厚さを厚くした部分:突起部)を形成し、上板221と下板222との剛性を変える。
【実施例5】
【0119】
次に、実施例5に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0120】
図5Dは、実施例5に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0121】
実施例5に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板も、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0122】
つまり、実施例5では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との重さを変える。特に、実施例5では、下板222の重さを上板221の重さよりも重くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の重さを上板221の重さよりも軽くしてもよい。
【0123】
特に、実施例5では、下板222の一部(根元部)に、厚さを変えた部分(厚さを厚くした部分:肉厚部)を形成し、上板221と下板222との剛性を変える。
【実施例6】
【0124】
次に、実施例6に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0125】
図5Eは、実施例6に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0126】
実施例6に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板も、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0127】
つまり、実施例6では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との重さを変えると共に、上板221と下板222との幅を、実施例1と比較して、広くする。特に、実施例6では、実施例1と同様に、上板221の重さを下板222の重さよりも重くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、上板221の重さを下板222の重さよりも軽くしてもよい。
【0128】
特に、実施例6では、上板221と下板222との幅を広くし、上板221の一部(根元部)に、厚さを変えた部分(厚さを厚くした部分:肉厚部)を形成し、上板221と下板222との剛性を変える。
【0129】
なお、上板221と下板222との幅は、例えば、6mm(実施例1では4mm)である。他の部分は、実施例1と同様である。
【0130】
このように、実施例6では、振動板の幅(上板221と下板222との幅)は、振動板が設置されるフロントマス204の基部の幅よりも、広いことが好ましい。
【0131】
また、逆位相による音圧集中効果は、上板221と下板222との面積が大きいほど、超音波の照射面積が増加するため好ましい。
【実施例7】
【0132】
次に、実施例7に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する。
【0133】
図5Fは、実施例7に記載する超音波振動子201の先端形状を説明する説明図である。
【0134】
実施例7に記載する超音波振動子201の先端に設置されるフロントマス204の先端に形成される、上板221と下板222との2枚の振動板も、実施例1に記載する2枚の振動板と比較して、その形状が相違する。他の部分は、実施例1と同様である。
【0135】
つまり、実施例7では、上板221と下板222との剛性を変えるため、上板221と下板222との厚さを変えると共に、サンプル用ノズル22を挿入する洗浄孔210を先端まで切り開く。特に、実施例7では、実施例2と同様に、下板222の厚さを上板221の厚さよりも厚くする。これにより、上板221と下板222とを逆位相で振動させることができる。なお、下板222の厚さを上板221の厚さよりも薄くしてもよい。
【実施例8】
【0136】
次に、実施例8に記載する超音波洗浄機26を説明する。
【0137】
図6は、実施例8に記載する超音波洗浄機26を説明する説明図であり、(a)は超音波洗浄機26の斜視図、(b)は超音波洗浄機26の断面図((c)のB-B断面)、(c)は超音波洗浄機26の上面図、である。
【0138】
実施例8に記載する超音波洗浄機26は、実施例1に記載する超音波洗浄機26と比較して、フロントマス204の形状とフロントマス204の設置方向とが相違する。
【0139】
実施例1では、超音波振動子201は、洗浄槽202の液面に対して、水平に近い角度で設置される。一方、実施例8では、超音波振動子201は、洗浄槽202の液面に対して、垂直に近い角度で(又は、垂直に)設置される。
【0140】
つまり、実施例8では、フロントマス204の本体に対して、フロントマス204の先端に形成される2枚の振動板である上板221と下板222が、直交するように、設置される。
【0141】
また、実施例8では、2枚の振動板が、フロントマス204の本体に対して、左右に(2箇所に)設置される。そして、2箇所に設置される2枚の振動板が、洗浄槽202の内部に溜められた洗浄液に、浸漬する。
【0142】
超音波振動子201は、実施例1と同様に、フランジ209を、ベース(図示せず)に設置されるスリットに差し込むことにより、固定する。
【0143】
フロントマス204は、上板221と下板222とを各2つ、計4つの振動板を有する。そして、上板221aと下板222a、及び、上板221bと下板222bがペアとなり、それぞれが、音圧を高める領域を形成する。上板221aと下板222a、及び、上板221bと下板222bは、実施例1と同様に、逆位相で振動する周波数で駆動する。
【0144】
また、上板221aと下板222a、及び、上板221bと下板222bを、超音波振動子201の中心軸(Z軸)に対して、対称に構成することにより、超音波振動子201のZ軸方向の振動による振動板の変形は、上板221aと下板222aとの振動と上板221bと下板222bとの振動とが同程度となる。
【0145】
サンプル用ノズル22の洗浄時は、2つある洗浄孔210aと洗浄孔210bとのいずれかにサンプル用ノズル22を挿入する。2本のサンプル用ノズル22を同時に洗浄することもできる。
【0146】
なお、実施例8では、2ペアの振動板(2つの洗浄孔210aと洗浄孔210b)を使用する。実施例1と同様に、1ペアの振動板(1つの洗浄孔210)を使用してもよい。例えば、上板221bと下板222bとを除去した、一方の振動板がない形状である。
【0147】
また、2ペアの振動板を設置し、1ペアの振動板を使用する場合には、一方の振動板を、板状(例えば、洗浄孔210bを塞ぐ)にした形状や、一方の振動板を、ブロック状(上板221bと下板222bと間の領域を塞ぐ)にした形状がある。
【0148】
また、実施例8において、振動板のペア数やフロントマス204の本体の設置角度を変えることもできる。
【0149】
このように、実施例8においても、複数の振動面から超音波を照射し、同位相で超音波を照射し、超音波振動によるキャビテーションをサンプル用ノズル22の周囲に効果的に発生させることができる。
【0150】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0151】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0152】
10・・・自動分析装置
11・・・試薬容器
12・・・試薬ディスク
13・・・反応ディスク
14・・・試薬用分注機構
15・・・サンプル用分注機構
21・・・試薬用ノズル
22・・・サンプル用ノズル
23・・・サンプル容器
24・・・サンプルラック
25・・・セル
26・・・超音波洗浄機
201・・・超音波振動子
202・・・洗浄槽
203・・・ベース
204・・・フロントマス
205・・・圧電素子
206・・・電極
207・・・バックマス
208・・・ボルト
209・・・フランジ
210、210a、210b・・・洗浄孔
211・・・流路
221、221a、221b・・・上板
222、222a、222b・・・下板
401・・・共振周波数f1
402・・・共振周波数f2
403・・・共振周波数f3