(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H01L21/66 N
(21)【出願番号】P 2023012882
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2017161604の分割
【原出願日】2017-08-24
【審査請求日】2023-01-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発/次世代省エネパワーデバイス用大口径高耐圧・低欠陥GaNエピタキシャルウエハの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角嶋 邦之
(72)【発明者】
【氏名】星井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】若林 整
(72)【発明者】
【氏名】筒井 一生
(72)【発明者】
【氏名】岩井 洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 大貴
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-164547(JP,A)
【文献】特開平05-102274(JP,A)
【文献】特開昭62-132336(JP,A)
【文献】特開平11-126911(JP,A)
【文献】特開平11-154696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流経路となる半導体層を備え、
前記半導体層の、電流印加直後の電荷量と定常状態の電荷量を用いて求められる電気的欠陥の濃度の最大値が1.0×10
19cm
-3以下であり、
前記
電流印加直後の電荷量が、前記半導体層に電圧を印加して測定された電流の値から算出される、前記半導体層から放出された電荷量である、
半導体素子。
【請求項2】
電流印加により前記半導体層に蓄積された正味の電荷量を用いて求められる前記半導体層中の前記欠陥の面密度が、前記半導体層の前記電流印加時の低電位側の面から離れるにつれて増加する領域において、二段階の傾きをもって増加する、
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記半導体層のバンドギャップが2.5eV以上である、
請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記半導体層が単一の組成を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ等の半導体素子において、半導体層中の不純物や欠陥等により形成される欠陥準位(トラップ準位)に電子や正孔がトラップされると、リーク電流の発生や閾値電圧の変動が引き起こされる。このため、信頼性の高い半導体素子を製造するためには、半導体層の電気的欠陥(原子欠損や残留不純物による欠陥)の濃度を知ることが重要である。電気的欠陥の濃度は、キャリア濃度と欠陥準位にトラップされた電荷の濃度との合計にほぼ等しい。
【0003】
従来、半導体層中のキャリア濃度プロファイルをCVカーブ(キャパシタ容量とゲート電圧の関係を示す曲線)プロファイルから読み取る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】O. Ambacher, et al., “Two-dimensional electron gases induced by spontaneous and piezoelectric polarization charges in N- and Ga-face AlGaN/GaN heterostructures,” Journal of Applied Physics 85, 3222, 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CVカーブプロファイルから読み取る方法では、深いトラップ準位にトラップされた電子や正孔の濃度を調べることは難しい。このため、深いトラップ準位を有するワイドバンドギャップ半導体の電気的欠陥濃度の評価は困難である。
【0006】
本発明の目的は、深い欠陥準位を有するワイドバンドギャップ半導体にも適用可能な半導体層の電気的欠陥濃度評価方法により評価することのできる、電気的欠陥濃度の少ない半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、以下の半導体素子を提供する。
【0008】
[1]電流経路となる半導体層を備え、前記半導体層の、電流印加直後の電荷量と定常状態の電荷量を用いて求められる電気的欠陥の濃度の最大値が1.0×1019cm-3以下であり、前記電流印加直後の電荷量が、前記半導体層に電圧を印加して測定された電流の値から算出される、前記半導体層から放出された電荷量である、半導体素子。
[2]電流印加により前記半導体層に蓄積された正味の電荷量を用いて求められる前記半導体層中の前記欠陥の面密度が、前記半導体層の前記電流印加時の低電位側の面から離れるにつれて増加する領域において、二段階の傾きをもって増加する、上記[1]に記載の半導体素子。
[3]前記半導体層のバンドギャップが2.5eV以上である、上記[1]又は[2]に記載の半導体素子。
[4]前記半導体層が単一の組成を有する、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の半導体素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、深い欠陥準位を有するワイドバンドギャップ半導体にも適用可能な半導体層の電気的欠陥濃度評価方法により評価することのできる、電気的欠陥濃度の少ない半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る半導体層の電気的欠陥濃度評価方法による評価に適した半導体素子の一例の垂直断面図である。
【
図2】
図2(a)~(d)は、印加電圧が10~40Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。
【
図3】
図3(a)~(d)は、印加電圧が50~80Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。
【
図4】
図4(a)~(d)は、印加電圧が90~120Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)~(d)は、印加電圧が130~160Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)~(d)は、印加電圧が170~200Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、Q
capとQ
TOTALを印加電圧ごとにプロットしたグラフである。
【
図8】
図8は、空乏層の厚さzと印加電圧Vの関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、定常状態におけるエピタキシャル層中の電気的欠陥濃度ρと位置zとの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、エピタキシャル層に蓄積された正味の電荷量Q
netと印加電圧Vとの関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、GaN層中の欠陥の面密度と位置zとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(半導体素子1)
図1は、本実施の形態に係る半導体層の電気的欠陥濃度評価方法による評価に適した半導体素子の一例である半導体素子1の垂直断面図である。
【0012】
半導体素子1は、Si等の半導体からなる基板10と、基板10上にバッファ層11を介して形成されたGaN等からなる窒化物半導体層12と、窒化物半導体層12に接続されたTi/Al/Ni/Au等の複数の金属からなる積層構造を有する電極13とを有する。窒化物半導体層12は、例えば、C(炭素)等の不純物が添加されたGaN膜からなる不純物添加窒化物半導体層12aと、不純物添加窒化物半導体層12a上の不純物が添加されていないGaN等の膜からなるアンドープ窒化物半導体層12bを有する。
【0013】
バッファ層11、不純物添加窒化物半導体層12a、及びアンドープ窒化物半導体層12bの材料及び厚さは、任意に定めることができるが、後述する半導体の電気的欠陥濃度評価方法においては、一例として、窒化物半導体層12、不純物添加窒化物半導体層12a、及びアンドープ窒化物半導体層12bは、それぞれ、GaN層12、C-GaN層12a、アンドープGaN層12bとした。また、バッファ層11、C-GaN層12a、アンドープGaN層12bの厚さは、それぞれ3.5μm、730nm、570nmとした。また、電極13も任意の形状を有し得るが、同様に、一例として、半径が560μm、面積が1mm2の円形の電極とした。
【0014】
(半導体の電気的欠陥濃度評価方法)
基板10と電極13の間には、直流可変電源14により電圧を印加することができる。そして、電流計15aにより基板10を流れる電流(基板電流)を、電流計15bにより電極13を流れる電流(電極電流)を測定することができる。
【0015】
図2(a)~(d)、
図3(a)~(d)、
図4(a)~(d)、
図5(a)~(d)、
図6(a)~(d)は、印加電圧が10~200Vであるときの、基板電流及び電極電流の時間変化を示すグラフである。なお、基板電流の値には-1を掛けている。
【0016】
印加電圧が90V以上のときには、電極電流が逆流しているが、これはバッファ層11のトラップ準位から放出された電子に対して窒化物半導体層12のトラップ準位から放出された電子が過剰になり、窒化物半導体層12中にウェルができて窒化物半導体層12の電位が高くなることで電子が電極13から供給されることによると考えられる。
【0017】
本実施の形態では、半導体層の一部である例えばGaN層からなる窒化物半導体層12中の電気的欠陥の濃度を求める。本実施の形態によれば、深い欠陥準位から放出される電荷の濃度を求めることができるため、深い欠陥準位を有するワイドバンドギャップ半導体の電気的欠陥濃度を求めることも可能である。
以下、この半導体素子1を用いて2種類の電気的欠陥濃度評価方法について説明する。なお、以下の説明において、各部の電荷や電気容量は、単位面積当たりのものとする。
【0018】
(第1の方法)
第1の方法は、電流計15aにより測定される基板電流から半導体層の電気的欠陥の濃度を求める方法である。
【0019】
半導体素子1をキャパシタとみなすと、バッファ層11及びGaN層12の全領域が空乏化した理想的なキャパシタであるときの電気容量Ccapは、次の式1で表される。
【0020】
【0021】
ここで、ε0は真空の誘電率、εGはGaN層12の比誘電率、εbはバッファ層11の比誘電率、dGはGaN層12の厚さ、dbはバッファ層11の厚さである。このように、本実施の形態に係る半導体層の電気的欠陥濃度評価方法は、誘電率の異なる複数の半導体層を含む半導体素子に対しても適用することができる。
【0022】
半導体素子1においては、εG、εbがそれぞれ9.5、8.5であり、dG、dbがそれぞれ1.3μm、3.5μmであり、キャパシタの面積に相当する電極13の面積が1mm2であることから、Ccapが16pFであることが求まる。
【0023】
また、バッファ層11及びGaN層12中に形成される空乏層に溜まる電荷Qtotalは、次の式2で表される。
【0024】
【0025】
ここで、Qcapは半導体素子1がバッファ層11及びGaN層12(以下、エピタキシャル層と呼ぶ)の全領域が空乏化した理想的なキャパシタであるときに溜まる電荷であり、Qdepは半導体素子1のエピタキシャル層から放出される電荷である。
【0026】
このうち、Qcapは次の式3で表されるように、基板電流Isubをキャパシタに電荷が溜まるまでの時間(0~0+)で積分することにより求めることができるが、キャパシタに電荷が溜まるまでの時間はナノ秒オーダーであるため、通常の測定環境(測定装置の時間分解能がμ秒オーダー)ではQcapを算出できる基板電流Isubを測定することができない。
【0027】
【0028】
一方で、Qcapは次の式4で表されるように、Ccapと印加電圧Vの積で表される。上述のように、Ccapは式1から求めることができ、半導体素子1では16pFである。このため、例えば、印加電圧Vが70VのときのQcapは1.12x10-9Cと求められる。
【0029】
【0030】
Qdepは次の式5で表されるように、基板電流Isubをキャパシタに電荷が溜まった後(定常状態)の時間(0+~∞)で積分することにより求めることができる。
【0031】
【0032】
式5から、例えば、半導体素子1の印加電圧Vが70VのときのQ
depは、10秒までの基板電流I
subの積分値を使って1.73×10
-10Cと求められる。印加電圧Vが70VのときのI
subは、
図3(c)に示されている。
【0033】
式4から求められたQcapと、式5から求められたQdepから、式2を用いて、Qtotalが求められる。
【0034】
図7は、式4から求められたQ
capと、式2、式4、式5から求められたQ
totalを印加電圧ごとにプロットしたグラフである。各印加電圧におけるQ
totalとQ
capとの差であるQ
depは、エピタキシャル層の空乏化による電気容量の増加によって生じるものである。
【0035】
次の式6を用いて、定常状態における空乏層の電気容量であるCdepを求めることができる。
【0036】
【0037】
また、空乏層の厚さzがバッファ層11の厚さdbよりも大きい場合、Cdepは、次の式7で表される。
【0038】
【0039】
式7から空乏層の厚さzが算出される。例えば、半導体素子1の印加電圧Vが70Vのときのzは4.07μmであることが算出される。この場合、バッファ層11の厚さが3.5μmであることから、バッファ層11は全領域が空乏化されており、GaN層12はバッファ層11側の厚さ0.57μmの領域が空乏化されていることになる。
【0040】
図8は、空乏層の厚さz(基板10とバッファ層11の界面を基準とする空乏層の上端の位置)と印加電圧Vの関係を示すグラフである。印加電圧Vが5Vのときにバッファ層11の全領域が空乏化している。
【0041】
なお、GaN層12の比誘電率εGとバッファ層11の比誘電率εbが等しいとみなせる場合(εGε0=εbε0=ε)、上述の式を簡略化することができる。この場合、式1と式4より、Ccap、Qcapはそれぞれε/d、εV/dと表される。そして、式2、式5、式6、及び式7より、Cdepはε/zと表される。その結果、次の式8が成り立つ。
【0042】
【0043】
次の式9は、定常状態におけるエピタキシャル層中の電気的欠陥濃度ρと印加電圧Vの関係を示す式である。xは基板10とバッファ層11の界面を原点とする厚さ方向の距離であり、ρはxの関数である。
【0044】
【0045】
式9、及び後述する式10、11のεは、バッファ層11とGaN層12からなるエピタキシャル層の比誘電率であり、空乏層の厚さzの関数として表される。式7をこのεを用いて表すと、次の式10のようになる。
【0046】
【0047】
式9をzで一階微分すると、次の式11が得られる。
【0048】
【0049】
そして、式10を変形すると次の式12が得られる。
【0050】
【0051】
式12から、基板10とバッファ層11の界面を基準とする位置(基板10とバッファ層11の界面からの距離)zにおけるエピタキシャル層中の電気的欠陥濃度ρを導出することができる。
【0052】
図9は、式12から求められた定常状態におけるGaN層12中の電気的欠陥濃度ρと、位置zとの関係を示すグラフである。
【0053】
例えば、GaN層12を高電子移動度トランジスタ(HEMT)の電流経路となる層に用いる場合、上述のように電流印加直後の電荷量と定常状態の電荷量を用いて求められたGaN層12の電気的欠陥濃度の最大値は1.0×1019cm-3以下であることが好ましく、2.0×1018cm-3以下であることがより好ましい。なお、HEMTにおいては、GaN層12の上にAlGaN層が形成され、GaN層12のAlGaN層との界面から数nmの深さの領域が電流経路となる。
【0054】
(第2の方法)
第2の方法は、電流計15aにより測定される基板電流と電流計15bにより測定される電極電流の差から半導体層の電気的欠陥の濃度を求める方法である。
【0055】
次の式13に示されるように、基板電流Isubと電極電流Ieleの差を時間で積分することにより、キャパシタとしての半導体素子1のエピタキシャル層に蓄積された正味の電荷量Qnetを求めることができる。
【0056】
【0057】
図10は、式13により求められたエピタキシャル層に蓄積された正味の電荷量Q
netと印加電圧Vとの関係を示すグラフである。
図10の印加電圧Vの増加とともに正味の電荷量Q
netが減少する領域は、電極電流が逆流している領域である。
【0058】
図10の印加電圧Vの増加とともに正味の電荷量Q
netが減少する領域(印加電圧Vが20V以下の領域)においては、正味の電荷量Q
netは欠陥の面密度に等しいと仮定することができる。そして、上記第1の方法により求められる、印加電圧Vの各電圧における空乏層の厚さzを用いて、
図10の正味の電荷量Q
netと印加電圧Vとの関係を欠陥の面密度と位置zとの関係に変換することができる。
【実施例】
【0059】
図11は、GaN層12中の欠陥の面密度と、位置zとの関係を示すグラフである。
実施例において、
図1に示された構造を有する半導体素子1を、電気的欠陥濃度評価方法の試料として用いた。半導体素子1は、(111)面を主面とするSiからなる基板10と、基板10上にバッファ層11を介して形成されたGaN層12と、GaN層12に接続されたTi/Al/Ni/Au積層構造を有する電極13とを有する。GaN層12は、C(炭素)が添加されたGaN膜からなるC-GaN層12aと、C-GaN層12a上の不純物が添加されていないGaN膜からなるアンドープGaN層12bを有する。バッファ層11、C-GaN層12a、及びアンドープGaN層12bの厚さは、それぞれ3.5μm、730nm、570nmであった。また、電極13は、半径が560μm、面積が1mm
2の円形の電極であった。
【0060】
図11の切片の値、すなわちバッファ層11とGaN層12の界面(z=3.5μm)における欠陥の面密度の値は、5.6×10
10cm
-2である。厚さ3.5μmのバッファ層11内に欠陥が一様に分布していると仮定すると、バッファ層11内の電気的欠陥濃度は5.6×10
10cm
-2/3.5μm=1.4×10
16cm
-3と求められる。この電気的欠陥濃度は、上記第1の方法により求められる電気的欠陥濃度とほぼ等しい。
【0061】
GaN層12内の電気的欠陥濃度は、
図11の線の傾きから求められる。すなわち、GaN層12内のある領域における面密度の微小変化量を距離の微小変化量で除することにより、その領域における電気的欠陥濃度を求めることができる。
【0062】
図11によれば、電流印加時の低電位側の面であるバッファ層11との界面から離れるにつれて欠陥の面密度が増加する領域(位置zがおよそ3.5~3.9μmの領域)において、欠陥の面密度が二段階の傾きをもって増加している。
【0063】
この欠陥の面密度の増加の傾きが異なる2つの領域における電気的欠陥濃度は、3.7×1014cm-3(位置zがおよそ3.5~3.8μmの領域)、2.0×1015cm-3(位置zがおよそ3.8~3.9μmの領域)と求められる。3.7×1014cm-3は、上記第1の方法により求められる電気的欠陥濃度と同等であり、バッファ層11に近い領域の電気的欠陥濃度を示していると考えられる。また、2.0×1015cm-3は、C-GaN層12aとアンドープGaN層12bとの界面又はアンドープGaN層12bの電気的欠陥濃度を示していると考えられる。
【0064】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態の半導体の電気的欠陥濃度評価方法によれば、深い欠陥準位にトラップされた電荷の濃度を調べることができる。このため、上記実施の形態の半導体の電気的欠陥濃度評価方法は、深い欠陥準位を有するワイドバンドギャップ半導体、例えばバンドギャップが2.5eV以上の半導体層の電気的欠陥濃度評価方法として特に有用である。
【0065】
上記実施の形態の半導体の電気的欠陥濃度評価方法により評価した半導体層を含む半導体テンプレートを用いることにより、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。特に、ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワートランジスタ等のパワーデバイスの製造に有用である。
【0066】
なお、上述のように、本発明の半導体層の電気的欠陥濃度評価方法の評価対象となる半導体素子の構造は半導体素子1の構造に限定されない。例えば、基板は導電性基板であれば特に限定されないし、絶縁性基板を用いる場合であっても、絶縁性基板上に導電性の層を介して評価対象となる半導体層を形成すればよい。この場合、基板電流の代わりに、絶縁性基板上の導電性の層の電流を測定する。また、半導体層の層構成や組成も特に限定されない。また、電極はオーミック電極であれば特に限定されない。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0068】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体素子
10 基板
11 バッファ層
12 GaN層
12a C-GaN層
12b アンドープGaN層
13 電極