(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】駆動装置、ロボット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/12 20060101AFI20240222BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20240222BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20240222BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240222BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20240222BHJP
【FI】
F16H57/12 A
F16H57/12 E
F16H1/28
B25J17/00 E
H02K7/116
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2020038517
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】泉川 友宏
(72)【発明者】
【氏名】見上 康臣
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102927207(CN,A)
【文献】特開2011-231842(JP,A)
【文献】特開2018-204690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/12
F16H 1/28
B25J 17/00
H02K 7/116
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのモータによって同一の出力軸を回転させる駆動装置において、
3K型の2つの遊星歯車機構の可動内歯車を前記出力軸に連結するとともに、前記2つの遊星歯車機構の2つの太陽歯車に前記2つのモータから駆動を伝えるようにし
、
前記2つの遊星歯車機構の少なくとも一方の可動内歯車の前記出力軸に対する連結はある角度θだけ可動な連結としたことを特徴とする駆動装置
。
【請求項2】
上記2つのモータによりバックラッシ低減可能な制御を行う制御手段を有することを特徴とする請求項
1に記載の駆動装置。
【請求項3】
2つのモータによって同一の出力軸を回転させる駆動装置において、
3K型の2つの遊星歯車機構の可動内歯車を前記出力軸に連結するとともに、前記2つの遊星歯車機構の2つの太陽歯車に前記2つのモータから駆動を伝えるようにし、
上記2つのモータによりバックラッシ低減可能な制御を行う制御手段と
上記2つのモータから各モータに対応する遊星歯車までの駆動伝達経路内それぞれに、作動・不作動切り替え可能なブレーキと、
上記出力軸の回転角度を検出する角度センサとを備えたことを特徴とす
る駆動装置。
【請求項4】
前記2つの遊星歯車機構の少なくとも一方の可動内歯車の前記出力軸に対する連結はある角度θだけ可動な連結であることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
上記2つのモータと上記太陽歯車との間に減速機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の駆動装置。
【請求項6】
モータから出力軸に回転力を伝達するための第一動力伝達系及び第二動力伝達系を有する、2つのモータによるバックラッシ低減機構を持つ駆動装置において、
第一および第二モータ、複数の第一および第二遊星歯車、一つの固定内歯車、第一および第二可動内歯車、第一および第二遊星キャリア、第一太陽歯車とそれに結合された第一入力歯車、第二太陽歯車とそれに結合された第二入力歯車、からなる遊星歯車機構で、
第一遊星歯車は第一遊星キャリアに回転自在に支持された状態で複数存在し、第一太陽歯車、第一可動内歯車および固定内歯車と噛み合うように配置され、
第二遊星歯車は第二遊星キャリアに回転自在に支持された状態で複数存在し、第二太陽歯車、第二可動内歯車および固定内歯車と噛み合うように配置され、
第一可動内歯車と第二可動内歯車とは出力軸と結合され、
第一モータにより第一入力歯車、第二モータにより第二入力歯車が駆動可能な状態で配置され、
第一可動内歯車は出力軸と結合され、第二可動内歯車は第一可動内歯車に対して角度θだけ可動可能なように出力軸と結合され、
ていることを特徴とする駆動装置
。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか一に記載の駆動装置と、前記駆動装置によって駆動される駆動対象とを備えたロボット。
【請求項8】
請求項1乃至
6の何れか一に記載の駆動装置と、前記駆動装置によって駆動される駆動対象とを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、ロボット及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックラッシを抑えるなどの狙いから2つのモータによって同一の出力軸を回転させる駆動装置、ロボット及び画像形成装置が知られている。たとえば、特許文献1には、各モータから出力軸までの各駆動伝達系それぞれを複数の外歯歯車で構成した減速機構を有する駆動機構でバックラッシを抑えたり、駆動対象の駆動トルクを向上させたりするとともに小型を図った駆動装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、バックラッシを抑えるなどの狙いから2つのモータによって同一の出力軸を回転させる駆動装置では、駆動伝達系路上で出力軸に近い歯車について、耐摩耗や強度の点からさらなる信頼性の向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、2つのモータによって同一の出力軸を回転させる駆動装置において、3K型の2つの遊星歯車機構の可動内歯車を前記出力軸に連結するとともに、前記2つの遊星歯車機構の2つの太陽歯車に前記2つのモータから駆動を伝えるようにし、前記2つの遊星歯車機構の少なくとも一方の可動内歯車の前記出力軸に対する連結はある角度θだけ可動な連結としたたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、駆動伝達系路上で出力軸に近い歯車の耐摩耗や強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】2モータドライブによる3K型遊星機構を用いたバックラッシ低減機構の具体例の説明図。
【
図3】2モータドライブによる3K型遊星機構のバックラッシ低減原理の説明図。
【
図4】バックラッシゼロで回転動作させている状態の説明図。
【
図5】特許文献1に記載の制御基板210の構成図。
【
図6】位置・速度制御部213によるオフセット制御の具体例を表すグラフ。
【
図9】第一遊星キャリア及び第二遊星キャリアH’の斜視図。
【
図10】ブレーキ機構140の一例の部分の拡大図。
【
図11】実施形態1や実施形態2の駆動装置100の変形例の説明図。
【
図12】本実施形態3に係るロボットであるマニピュレータ装置700の概略構成を示す図。
【
図13】同マニピュレータ装置700の部分拡大図。
【
図14】実施形態4に係る画像形成装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔実施形態1〕
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は実施形態1に係る駆動装置100の説明図で、
図1(a)は駆動装置100のスケルトン図、
図1(b)は駆動装置100を構成する3K型遊星歯車機構のスケルトン図である。この駆動装置100は、3K型の2つの遊星歯車機構の可動内歯車を出力軸に連結するとともに、2つの遊星歯車機構の2つの太陽歯車に2つのモータから駆動を伝えるようにしたものである。2つのモータから出力軸に対し互いに逆向きの回転トルクを与えてモータから出力軸までの動力伝達系のバックラッシを低減するものである。
【0008】
遊星歯車機構は、入力軸、出力軸、機構全体の運動を規制する固定軸(補助軸)の3本の基本軸からなり、これら基本軸は同軸上に配置される。基本軸となる太陽歯車(太陽外歯歯車、太陽内歯車を含む。以下、太陽外歯歯車を単に太陽歯車といい、太陽内歯車を内歯車という。)の軸をK、遊星キャリア軸をH、遊星歯車軸をVで表すと、遊星歯車機構は、2K-H型、3K型、K-H-V型に分類される。
図1(a)は2つの3K型遊星歯車機構を実線と破線でそれぞれ現わしている。
【0009】
一般的なK型遊星歯車機構は
図1(b)のスケルトン図に現されるものである。太陽歯車、複数の遊星歯車、遊星キャリア、固定内歯車、及び、可動内歯車を備える。遊星歯車は互いに歯数が異なる歯車が一体化されたもので、一方が固定内歯車に噛み合い他方が可動内歯車に噛み合う。
図1(b)には各歯車の歯数Z1などを示している。以下、この歯数を歯車の符号に用いる。図中、Hで示すのは遊星歯車のキャリア(遊星キャリア)である。
【0010】
図1(b)では、固定内歯車Z2を固定し、太陽歯車Z1にモータの駆動(角速度ω1)を入力し、可動内歯車Z3を出力(角速度ω3)としている。この時の減速比は数式1で示される。3K型は2K-H型に比べて一段で高減速比が得られ小型化できる。
【数1】
【0011】
この
図1(b)の機構は、太陽歯車Z1と固定内歯車Z2間の噛み合いにおける歯の隙間(バックラッシ)と遊星歯車の一方の歯車Z12と可動内歯車Z3間の噛み合いによる歯の隙間(バックラッシ)の影響が、出力ギヤとなる可動内歯車Z3のバックラッシを発生させる原因となる。ギヤの加工ばらつきが生じる場合、それぞれの歯の隙間をゼロにすることはできない。加工精度を高めて、バックラッシを小さくすることは可能だがゼロは難しい。したがって、バックラッシをゼロにすることは理論上難しいと言える。
【0012】
図1(a)に示す実施形態に係る駆動装置100は、
図1(b)に示すモデルに対して、
図1(a)に破線で示す、2つ目のK型遊星歯車機構(伝達系)となる次の歯車を追加で備えている。二系統の動力伝達系の構成要素を区別するため第一動力伝達系の構成要素の名称の最初に「第一」を付し、第二動力伝達系の構成要素の名称の最初に「第二」を付す。追加で備えるのは、第二太陽歯車Z1’、第二A歯車Z11’と第二B歯車Z12’とを一体にした複数の第二遊星歯車、第二可動内歯車Z3’である。第二太陽歯車Z1’は第一太陽歯車Z1に対して回転可能に取り付けられている。さらに第二A歯車Z11’と第二B歯車Z12’を一体にした第二遊星歯車および第一A歯車Z11と第一B歯車Z12を一体化した第一遊星歯車それぞれを遊星運動可能に保持する第二遊星キャリアH’および第一遊星キャリアHは互いに回転可能に取り付けられている。
【0013】
また、第二A歯車Z11’および第一A歯車Z11は一つの固定内歯車Z2にかみ合っている。第二可動内歯車Z3’は出力軸となる第一可動内歯車Z3に対して結合されている。この結合は、ある角度θ°以下の範囲で回転自在な結合であることが好ましい。たとえば、設定したθ°に到達すると、第二可動内歯車Z3’の一部が第一可動内歯車Z3に回転方向で接触するように構成する。
【0014】
実線で示した第一動力伝達系に第1モータを、破線で示した第二動力伝達系に第2モータを取り付け制御することで、出力部となる可動内歯車Z3においてバックラッシをゼロにすることが可能となる。この
図1(a)の駆動系における減速比の算出式は数1をそのまま適用できる。
【0015】
図2には、2モータドライブによる3K型遊星機構を用いたバックラッシ低減機構の具体例を備えた駆動装置100の断面図である。この駆動装置100は、第一及び第二モータの回転力を複数段のギヤおよび3K型遊星歯車機構によって減速し、出力フランジ109(「出力回転体」の一例)から出力することにより、出力フランジ109に取り付けられた駆動対象を駆動する装置である。
【0016】
ハウジング121の出力側面には、出力フランジ109が露出している。出力フランジ109は、駆動対象に結合され、第一モータ及び第二モータから動力によって回転することにより、駆動対象を駆動する。出力フランジ109は、ハウジング121に固設されたベアリング132により、ハウジング121に対して回転自在に支持されている。
【0017】
出力フランジ109と同軸上にセンターシャフト107が設けられている。センターシャフト107は出力フランジ109に固設されたベアリング135と、出力フランジ109とは反対側のハウジング121に固設されたベアリング136とによって両端が回転自在に支持されている。
【0018】
センターシャフト107は中空円筒形状であり、センサパイプ106が筒内を貫通して設けられている。センサパイプ106の出力フランジ109側の端部は、出力フランジ109の中心に形成された貫通孔に圧入されている。これにより、センサパイプ106は、出力フランジ109と等速で回転する。一方、センサパイプ106の反対側の端部は、ハウジングの底板122に形成された開口部を貫通して露出している。この端部に、センサパイプ106の回転角(すなわち、出力フランジ109の回転角)を検出するためのリング型磁石106Aが固設されている。
【0019】
センターシャフト107の出力フランジ109とは反対側の部分には、第一モータと第二モータが結合されて用いられる。図中仮想線(二点鎖線)で第一モータの出力軸101A、出力軸に固設された第一モータピニオンギヤ101C、第二モータの出力軸151A及び出力軸に固設された第二モータピニオンギヤ151Cを示す。
【0020】
センターシャフト107のモータが結合される側の部分には、第二太陽歯車Z1’および第二入力ギヤ358が例えば圧入やねじ止めなどにより固定され一体で回転する。第一太陽歯車Z1と第一入力ギヤ308は一体となっており、センターシャフト107に回転自在に支持されている。これにより、第一モータピニオンギヤ101Cと第一入力ギヤ308とがかみ合い第一入力ギヤ308と第一太陽歯車Z1は等速で回転する。同様に、第二モータピニオンギヤ151Cと第二入力ギヤ358とがかみ合い第二入力ギヤ358と第二太陽歯車Z1’は等速で回転する。第一入力ギヤ308や第二入力ギヤ358が第一入力歯車や第二入力歯車に相当する。
【0021】
第一太陽歯車Z1と第二太陽歯車Z1’の2つの入力は、第一太陽歯車Z1と第二太陽歯車Z1’それぞれにかみ合う複数の第一遊星歯車Z11-Z12及び第二遊星歯車Z11’-Z12’を介して伝達される。第一太陽歯車Z1、第一遊星キャリアH、第一遊星キャリアピン112、第一遊星歯車Z11-Z12、固定内歯車Z2、第一可動内歯車Z3とで1つの3K遊星歯車機構を構成している。同様に第二太陽歯車Z1’、第二遊星キャリアH’、第二遊星キャリアピン117、第二遊星歯車Z11’-Z12’、固定内歯車Z2、第二可動内歯車Z3’でもう一つの3K遊星歯車機構を構成している。
【0022】
第一遊星キャリアHはセンターシャフト107上に固設されたベアリング135により回転自在に支持されている。第一遊星キャリアHには複数の第一遊星キャリアピン112が固設されている。第一遊星キャリアピン112には第一遊星歯車Z11-Z12が回転自在に支持されている。例として第一遊星歯車Z11-Z12は歯数の異なる段付き形状をしているが、段付き形状を有していなくてもよい。第一遊星歯車Z11-Z12の第一A歯車Z11には第一太陽歯車Z1と同軸上にありハウジング121に固設された固定内歯車Z2、および第一太陽歯車Z1がかみ合っており、第一B歯車Z12には第一可動内歯車Z3がかみ合っている。第一遊星歯車Z11-Z12が固定内歯車Z2を支点に遊星運動を行うことで、第一可動内歯車Z3へ動力を伝える。
【0023】
同様に、第二遊星キャリアH’はセンターシャフト107上に固設されたベアリング137により回転自在に支持されている。第二遊星キャリアH’には複数の第二遊星キャリアピン117が固設されている。第二遊星キャリアピン117には第二遊星歯車Z11’-Z12’が回転自在に支持されている。例として第二遊星歯車Z11’-Z12’は歯数の異なる段付き形状をしているが、段付き形状を有していなくてもよい。第二A歯車Z11’には第二太陽歯車Z1’と同軸上にありハウジング121に固設された固定内歯車Z2、および第二太陽歯車Z1’がかみ合っており、第二B歯車Z12’には第二可動内歯車Z3’がかみ合っている。第二遊星歯車Z11’-Z12’が固定内歯車Z2を支点に遊星運動を行うことで、第二可動内歯車Z3’へ動力を伝える。第一遊星歯車Z11-Z12や第二遊星歯車Z11’-Z12’の数は、少なくともそれぞれ1個以上あればよい。
【0024】
第一可動内歯車Z3は例えば連結ピン109Aなどを介して出力フランジ109に固設されている。例えば出力フランジ109には連結ピン109Aの一端が固定され、連結ピン109Aの他端に第一可動内歯車Z3が固定されている。また第二可動内歯車Z3’は出力フランジ109および第一可動内歯車Z3に回転自在に保持され、かつ、ある設定した角度まで回転すると第一可動内歯車Z3へ接触する。例えば
図2(a)のA-A断面である
図2(b)に示すように、第二可動内歯車Z3’に第一可動内歯車Z3と出力フランジ109を連結する連結ピン109Aを貫通させる保持孔113を形成する。
【0025】
この保持孔113を回転方向の長孔形状にしておき、ある角度θ°の範囲で第一可動内歯車及び出力フランジ109に対し、第二可動内歯車Z3’が回転できるようにする。第一可動内歯車Z3と第二可動内歯車Z3’の少なくとも一方の回転より、このθ°回転すると、第一可動内歯車Z3と第二可動内歯車Z3’は接触したのと同じ状態となる。この状態でINPUT1を回転させた場合、第一可動内歯車Z3が回転する(トルクが伝わる)。またINPUT2を回転させた場合、第二可動内歯車Z3’が回転する(トルクが伝わる)。
【0026】
図3は2モータドライブによる3K型遊星機構のバックラッシ低減原理の説明図である。
図3(a)は第二可動内歯車Z3’の保持孔113の拡大図、
図3(b)はトルク伝達の説明図であり、バックラッシゼロでホールド停止動作をさせている状態に対応する。
【0027】
図3(a)に示すように、INPUT1およびINPUT2でそれぞれ逆向き同じトルクN1およびN2を掛けると、θだけ移動したのち第一可動内歯車Z3と第二可動内歯車Z3’は回転することなくホールド状態となる。またINPUT1およびINPUT2における途中のバックラッシ成分は、
図3(b)に示すようにない状態となる。つまり、トルクの伝達する向きに歯がかみ合っているため、トルクの伝達方向には遊びは生じない。INPUT1およびINPUT2では、互いに逆方向にトルクを加えているため、INPUT1の回転方向を基準とした際INPUT2はその逆回転方向の遊びがなくなる。そのため、どちらの回転方向の遊びもなくすことができるため、バックラッシがない状態となる。
【0028】
図4はバックラッシゼロで回転動作させている状態の説明図である。
図4(a)は第二可動内歯車Z3’の保持孔113の拡大図、
図4(b)はトルク伝達の説明図である。バックラッシを消したまま回転させたい場合は、INPUT1によるトルクN1とINPUT2によるトルクN2の釣り合いを崩すことで回転させる。例えば
図4(b)に示すように、INPUT1によるトルクN1が作用する方向に回転させるためには、INPUT1のトルクN1を増大させるか、INPUT2のトルクN2を減少させるかする。これにより、トルクの釣り合いが崩れ第一可動内歯車Z3と第二可動内歯車Z3’は共に回転する。
【0029】
同様に、INPUT2によるトルクN2が作用する方向に回転させるためには、INPUT2のトルクN2を増大させるか、INPUT1のトルクN1を減少させる。これにより、トルクの釣り合いが崩れ第一可動内歯車Z3と第二可動内歯車Z3’が共に回転する。
図4(b)に示す回転状態での各ギヤに生じるトルクを見ても、
図3(b)と同様に第一可動内歯車Z3および第二可動内歯車Z3’のバックラッシを打ち消す方向にトルクが加わっているため、バックラッシは生じない。この時の回転トルクは回転トルクN=N1-N2となる。
【0030】
そして、協調動作(バックラッシは消さない)として、INPUT1およびINPUT2を同方向に回すと、第一可動内歯車Z3および第二可動内歯車Z3’は各トルクN1、N2を合わせた回転トルクを得る(N=N1+N2)。この動作は、バックラッシが存在する通常の3K型遊星ギヤと同様の駆動状態となる。第一モータと、第二モータを協調させて動作させることで、たとえば第1、第2モータの動力がそれぞれ20Wであるとすれば、出力軸において40W程の動力を得ることができる。
【0031】
図3のホールド状態を成立させたり、
図3のCW方向回転状態、あるいは、
図3とは逆のCCW方向回転状態を実現したりするように第一モータや第二モータを制御する制御部の構成やその制御の仕方の具体例としては特許文献1に記載の制御基板210やオフセット制御の具体例を用いることができる。
【0032】
図5は特許文献1に記載の制御基板210の構成図である。制御基板210は、位置・速度制御部213、ドライバ223、およびドライバ224を備えている。第一モータ101は、エンコーダ101Bを有している。エンコーダ101Bは、第一モータ101の出力軸101Aに設けられており、第一モータ101のエンコーダ信号enc1を出力する。エンコーダ信号enc1は、制御基板210の位置・速度制御部213に供給され、位置・速度制御部213によって第一モータ101の位置および速度のPID(Proportional Integral Differential)制御に用いられる。
【0033】
第二モータ151は、エンコーダ151Bを有している。エンコーダ151Bは、第二モータ151の出力軸151Aに設けられており、第二モータ151のエンコーダ信号enc2を出力する。エンコーダ信号enc2は、制御基板210の位置・速度制御部213に供給され、位置・速度制御部213によって第二モータ151の位置および速度のPID制御に用いられる。第一モータ101と第二モータ151が各モータ9A,9Bに対応する。
【0034】
位置・速度制御部213は、上位コントローラから入力される位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、エンコーダ101Bから出力される第一モータ101のエンコーダ信号enc1とに基づき、第一モータ101のPID制御を行う。ドライバ223は、入力された電圧指令値drvoutに応じて、第一モータ101の駆動信号(DCモータ、DCブラシレスモータ等、モータ形態に合わせた駆動信号)を生成し、当該駆動信号を第一モータ101へ出力する。
【0035】
また、位置・速度制御部213は、上位コントローラから入力される位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、エンコーダ151Bから出力される第二モータ151のエンコーダ信号enc2とに基づき、第二モータ151のPID制御を行う。ドライバ224は、入力された電圧指令値drvoutに応じて、第二モータ151の駆動信号(DCモータ、DCブラシレスモータ等、モータ形態に合わせた駆動信号)を生成し、当該駆動信号を第二モータ151へ出力する。
【0036】
位置・速度制御部213は、第一モータ101および第二モータ151の各々の電圧指令値を制御するオフセット制御を行うことで、これら2つのモータ101,151と出力フランジ109との間のバックラッシを解消しつつ、これら2つのモータ101,151を駆動することができる。
【0037】
図6は、位置・速度制御部213によるオフセット制御の具体例を表すグラフである。横軸は、オフセット制御による制御前の入力電圧指令値drvinを表しており、縦軸は、オフセット制御による制御後の出力電圧指令値drvoutを表している。また、実線は、第一モータ101の電圧指令値を表しており、点線は、第二モータ151の電圧指令値を表している。
【0038】
まず、位置・速度制御部213は、図中Aに示すように、第一モータ101に対して、出力フランジ109を駆動方向とは逆方向に駆動させるオフセット電圧offsetが加わるように、第一モータ101の電圧指令値(オフセット電圧指令値)を出力する。その状態で、位置・速度制御部213は、第二モータ151に対して、オフセット電圧offsetの絶対値と同値の電圧が加わりつつ、出力フランジ109を駆動方向に駆動させる駆動電圧が徐々に加わるように、第二モータ151の電圧指令値を制御する。これにより、出力フランジ109に対し、2つのモータ101,151の双方から互いに逆方向の駆動力が加えられるため、出力フランジ109と2つのモータ101,151との間のバックラッシが解消されることとなる。
【0039】
次に、位置・速度制御部213は、図中Bに示すように、駆動電圧drvlimitにおいて、第二モータ151の出力が限界値に達すると、第二モータ151に駆動電圧drvlimitが印加された状態を維持するように、第二モータ151の電圧指令値を制御する。その状態で、位置・速度制御部213は、第一モータ101に対して、出力フランジ109を駆動方向に駆動させる駆動電圧が徐々に加わるように、第一モータ101の電圧指令値を制御する。これにより、出力フランジ109に対し、2つのモータ101,151の双方から互いに同方向の駆動力が加えられるため、出力フランジ109の駆動トルクを高めることができる。つまり、駆動対象の駆動トルクを向上させることができる。このとき、図中Aで第二モータ151の駆動電圧を上昇させるときと同じ上昇率で、第一モータ101の駆動電圧を上昇させるようにするとよい。
【0040】
そして、位置・速度制御部213は、図中Cに示すように、駆動電圧drvlimitにおいて、2つのモータ101,151の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,151の双方に対して、駆動電圧drvlimitが印加された状態を維持するように、これら2つのモータ101,151の各々の電圧指令値を制御する。
【0041】
なお、
図6の例において、図中A'~C'は、図中A~Cと逆方向に各モータを駆動する例を表しており、図中A~Cと対称的である。
【0042】
バックラッシを無くす方法としては、次のようにしてもよい。たとえば第一モータ101を正転させ出力フランジ109を回転させる。このとき、第二モータ151は出力ギヤにブレーキをかけながら回転させる(プリロードトルク)。これにより、出力ギヤの正転/逆転方向の遊びを消すことが出来る。
【0043】
以上、実施形態1の駆動装置100においては、出力軸(出力フランジ109)に近いギヤほど大きなトルクを伝えるためギヤの歯面に加わる力が大きくなる。遊星歯車機構とすることで、第一モータ101からの伝達トルクを複数の第一遊星歯車で分散し、同様に第二モータ151の伝達トルクを複数の第二遊星歯車で分散する。このように各遊星歯車に伝達トルクを分散することができるので歯面に加わる力を小さくでき、これにより信頼性が向上する。
【0044】
また、この駆動装置100において、出力軸(出力フランジ109)の回転速度は、2つのモータ101,151の回転速度に対し、必要に応じて設ける駆動伝達系内のギヤと、3K型遊星歯車機構によって減速されたものとなる。したがって、これらの歯車の歯数を調整して、減速比を調整することにより、出力軸(出力フランジ109)2の回転速度を、所望の回転速度まで減速させることができる。3K型遊星歯車機構を用いることから、2K-H型を基本とした遊星歯車機構を用いる場合に比し減速比を大きくでき、小型化が図れる。
【0045】
なお、3K型遊星歯車機構を構成する歯車やモータ軸のギヤや必要に応じて設ける駆動伝達系の歯車にハスバ歯車を用いて構成すれば、振動や騒音を軽減できる。
【0046】
以上、本実施形態の駆動装置100は、出力フランジ109に固定された(又は一体)第一可動内歯車Z3と、その第一可動内歯車Z3に対して連結された第二可動内歯車Z3’と、一つの固定内歯車Z2と、同一円周上に配置された二系統の動力伝達系を構成する第一遊星歯車および第二遊星歯車と、それぞれ同軸上に配置された二系統の動力伝達系を構成する動力伝達系における二系統の第一太陽歯車Z1および第二太陽歯車Z1’により構成させている。第一遊星歯車Z11-Z12は第一太陽歯車Z1を中心に遊星運動可能なように回転自在に保持されている。また第二遊星歯車は、第二太陽歯車Z1’を中心に遊星運動可能なように回転自在に保持されている。第一太陽歯車Z1にかみ合う第一遊星歯車は、第一可動内歯車Z3と固定内歯車Z2とにかみ合う。また第二太陽歯車Z1’にかみ合う第二遊星歯車は第二可動内歯車Z3’と固定内歯車Z2とにかみ合う。第一太陽歯車Z1には第一モータによる入力が、第二太陽歯車Z1’には第二モータによる入力がそれぞれ入力され、第一可動内歯車Z3および第二可動内歯車Z3’を駆動する。よって、駆動伝達系路上で出力軸に近い歯車の耐摩耗や強度を向上させることができる。
【0047】
そして、第二可動内歯車Z3’は、第一可動内歯車Z3に対して設定角度θ°だけ回転自在に、つまり、回転方向で遊びを持たせて連結している。第一動力伝達系と第二動力伝達系とに、バックラッシを消すための逆向きのトルクをかけてはじめた後、第一動力伝達系と第二動力伝達系それぞれの中で歯車のバックラッシがなくなっていき、最終的に第二可動内歯車Z3’の保持孔113部分と、連結ピン109Aとが接触する。よって、第二可動内歯車Z3’と第一可動内歯車Z3とを回転方向に遊びなく連結した場合と異なり、第一動力伝達系と第二動力伝達系のうち、バックラッシが無くなるのが比較的遅い方の系内の歯車同士が逆向きのトルクで移動されて衝突してしまうことによる歯面の変形を防止できる。保持孔113部分と、連結ピン109Aとは、逆向きのトルクで移動されて衝突することになるが、連結ピン109Aと保持孔113という比較的変形につよい形状を採用できるので、変形しにくく、変形したとしても、動力伝達上の不具合も少ない。また、駆動装置の組み立てにあたり、この回転方向の遊びの箇所で分離している部分同士の組み付け箇所として利用できるので、組み立て性を向上させることもできる。
【0048】
〔実施形態2〕
次に本発明の他の実施形態(実施形態2)に係る駆動装置100について説明する。
図7は、実施形態2に係る駆動装置の斜視図である。部部的に断面を現している。この駆動装置100は
図2を用いて説明した駆動装置100に2つのモータ101,151を結合したものである。駆動装置100は、ハウジング121および2つのモータ101,151を備える。内部に複数段のギヤ等の各種構成部品が収容するハウジング入力側である底板122に第一モータ101及び第二モータ151が結合されている。
【0049】
図8はハウジング内の構造を示す断面図である。センサパイプ106のケーシングの底板122から突出した部分に設けられたリング型磁石106Aに対向する基板118上の位置に角度センサのホールIC119を設けている。これらで磁気式エンコーダを構成し、ホールIC119でセンサパイプ106の回転に伴う永久磁石のS極とN極との切り替わりを検知することで、センサパイプ106の回転角(すなわち、出力フランジ109の回転角)を検出できる。
【0050】
また、この駆動装置100にはブレーキ機構140が設けられている。例えばブレーキ軸へメカニカルなブレーキ機構140(例えば無励磁動作ブレーキ)を各モータ101、151について配置することで、駆動対象(例えば、ロボットの関節等)において電源を落とした際の姿勢保持を行うことが可能となる。この具体例は後に説明する。
【0051】
図9は第一遊星キャリア及び第二遊星キャリアH’による第一遊星歯車及び第二遊星歯車の支持構造を示す斜視図である。複数の第一遊星歯車および一つの第一遊星キャリアと、複数の第二遊星歯車および一つの第二遊星キャリアH’は、互いに干渉しないように配置され、かつ干渉しない範囲で互いに回転方向へ移動可能である。
【0052】
図10はブレーキ機構140の一例の部分の拡大図である。このブレーキ機構140は、モータ軸の後端に設けられている。駆動装置100は、複数のギヤを用いて駆動伝達系を構成しているため、各モータ101、151の回転力を出力フランジ109に伝達する際の伝達効率が比較的高く(約90%)、一方で、出力フランジ109の回転力も、モータ101に伝わり易いという特性を有している。
【0053】
このため、例えば、本実施形態の駆動装置100をロボットアームに取り付けた場合、モータ101、151の駆動を停止しモータ101、151がロボットアームの回転軸の回転を保持していない状態にすると、ロボットアーム自体の自重がモーメントとして出力フランジ109に伝達される。このモーメントにより、ロボットアームは、重力とバランスが取れる釣り合いの位置まで、自動的に降下する。
【0054】
そこで、本実施形態の駆動装置100は、ブレーキ機構140により、駆動伝達系の回転を機械的に制動することにより、モータ101、151がロボットアームの回転軸の回転を保持していない状態であっても、ロボットアームが自動的に降下してしまうといった事態を回避可能としている。このブレーキ機構140が作動・不作動切り替え可能なブレーキに相当する。
【0055】
図10に示すように、ブレーキ機構140は、ブレーキカバー141、ロータハブ142、ブレーキ本体143、ネジ144、ロータ145、アーマチャ146、プレート147、およびコイル148を有して構成されている。
【0056】
モータ軸の後端102は、その一部が前ハウジング121の前面から、ブレーキカバー141の内部へと突出している。図示の例では、モータ軸の後端102の外周面には、Oリング102Aが取り付けられている。Oリング102Aは、ベアリング131の内側に密着することにより、第一ファーストピニオン軸とベアリング131との間からの、グリスの漏出を防ぐことができる。
【0057】
ブレーキカバー141の内部において、モータ軸の後端102の端には、ロータハブ142が取り付けられている。ロータハブ142は、ピンまたはDカットによりモータ軸の後端102とともに回転する構造となっており、抜け止めのネジ144によってモータ軸の後端102の端に固定されている。
【0058】
ロータハブ142は、ブレーキ本体143の内部のロータ145と噛み合うように正方形になっている。モータ軸の後端102が回転すると、その回転はロータハブ142を介して、ブレーキ本体143の内部のロータ145に伝わり、ロータ145が回転するようになっている。
【0059】
制動時には、図示を省略するバネからの付勢力により、アーマチャ146が下方に押し下げられる。これにより、ロータ145が、アーマチャ146とプレート147との間に挟みこまれ、その際に生じる摩擦力により、当該ロータ145の回転に制動がかけられる。
【0060】
一方、非制動時には、コイル148が通電され、これによってコイル148とアーマチャ146との間に生じる上記付勢力よりも大きい磁気吸引力により、アーマチャ146が上方に引き寄せられる。これにより、ロータ145は、上記摩擦力から開放され、回転自在な状態となる。
【0061】
駆動装置100は、回転力を発生させる第一および第二モータ、モータが発生した回転力を減速して所望の回転数およびトルクを出力フランジ109から得るための動力伝達系がハウジングに対して一体的に設けられている。ハウジングは、ハウジング上側とハウジング下側ケースとがネジで締結されることにより、箱型の形状となる。これにより、駆動装置は、トルク発生時の捩り剛性を高めることができ、よって、歯車同士の噛み合い精度の低下を抑制し、歯車の回転負荷を抑制することができる。
【0062】
また、駆動装置は、モータ、動力伝達系、センサ系、コントローラ系を、ハウジングに一体化してモジュール化したことにより、例えば、ロボットアーム内に駆動装置を設置する場合、ハウジングをロボットの構造体に取り付け、ロボット側の回転軸と駆動装置の出力軸とを固定するだけで、駆動装置の設置が完了することができる。このため、駆動装置は、メンテナンスの際の着脱容易性が、極めて高いものであるといえる。
【0063】
このように構成された駆動装置100において、出力フランジ109の回転速度は、モータの回転速度に対し、2つのギヤ(モータピニオンギヤ、入力ギヤ)と、3K遊星減速機構とによって、減速されたものとなる。したがって、これらの歯車の歯数を調整したり、入力ギヤと太陽歯車といった多段ギヤを追加したりすることにより、減速比を調整することにより、出力フランジ109の回転速度を、所望の回転速度まで減速させることができる。とくに、歯数変更の制約が大きい3K遊星減速機構の構成はそのままに、モータピニオンギヤと入力ギヤを変えることで簡単にギヤ比を変えることが可能となる。
【0064】
出力フランジ109の回転力は、当該回転力を利用する装置に伝えられる。例えば、出力フランジ109の回転力を、ロボットアームの回転に使用する場合、出力フランジ109を、ロボットアームの関節の回転軸と接続することで、ロボットアームを回転させることが可能となる。この際、出力フランジ109の表面から突出したピンを、ロボットアームの関節の回転軸にはめ込むことで、当該回転軸の位置合わせおよび滑り止めが可能となる。
【0065】
上位のコントローラは、モータの内部に設けられたエンコーダ(回転角検知センサ)によって検知された駆動軸の回転角から、ロボットアームの動作角度を算出することが可能である。すなわち、上位のコントローラは、エンコーダの出力値に基づいて、駆動軸の回転角を制御することにより、ロボットアームの動作角度を、所望の角度とすることができる。
【0066】
この実施形態のように、2つのモータと、2つの3K型遊星歯車機構と、2つのモータによりバックラッシ低減可能な制御を行う制御手段と、2つのモータから各モータに対応する遊星歯車までの駆動伝達経路内それぞれに、作動・不作動切り替え可能なブレーキと、キャリアの回転角度を検出する角度センサとを一体に備えるので、駆動装置を搭載する例えばロボットなどの装置の設計工数を低減できる。又保守の際にユニット一体で交換可能なため保守性が向上する。
【0067】
図11は実施形態1や実施形態2の駆動装置100の変形例の説明図である。この変形例では、第二可動内歯車Z3’の連結ピン109Aを保持する保持孔113内で連結ピン109Aが一方に寄るように付勢する付勢機構を設けている。図示の例では、
図11(a)に示すように第二可動内歯車Z3’に付勢手段として圧縮スプリング400Aを収容する貫通孔400が形成されている。
図11(a)におけるB-B断面を示す
図11(b)に示すように、第一可動内歯車Z3の貫通孔400に対応する箇所に収容用の凹部401が形成されている。これら貫通孔400及び収容用の凹部401に圧縮スプリング400Aが収容されている。
図11(b)の状態は
図11(a)に対応し、
図11(c)は、
図11(a)に対し連結ピン109Aが反時計回りに移動するように第一可動内歯車Z3が回転されて保持孔113の長手方向の他方の縁に連結ピン109Aが接触した状態に対応する。このような付勢手段を設けることにより、駆動装置はロボットハンドなどに用いた場合にコンプライアンス性を持たせることができる。
【0068】
保持孔113内で連結ピン109Aが一方に寄るように付勢する付勢機構は図示の例に限らず、種々の機構を採用できる。また、一方に寄るのではなく、長孔の長手方向の中央の位置をとるように付勢する機構を用いてもよい。
【0069】
〔実施形態3〕
次に本発明の駆動装置を備えたロボットの実施形態(実施形態3)について説明する。
図12は、本実施形態3に係るロボットであるマニピュレータ装置700の概略構成を示す図である。このマニピュレータ装置700は、2つの関節部を備えた2自由度のマニピュレータ装置であり、回転ステージ上に取り付けるなどして使用される。第一アーム701と第二アーム702とを有し、第二アーム702の先端にエンドエフェクタとしてピッキングハンド703を備えている。第一アーム701の基端は台座704の上部に固定された支持体705の上端に回転可能に取り付けられている。両者の取付部で第一関節部706を構成している。この第一アーム701の先端に第二アーム702の基端が回転可能に取り付けられ、両者の取り付け部で第二関節部707を構成している。
【0070】
図13(a)は第一関節部706を構成する部分の断面図である。第一アーム701の本体であるアーム本体701Aを駆動対象とする駆動装置として、実施形態2に係る駆動装置100を支持体705に固定して用いている。アーム本体701Aは、一体化された回転軸部材701Bを介しベアリング705Aで支持体705に回動可能に取り付けられる。駆動装置100は、出力フランジ109の回転軸が、アーム本体701Aの回転軸730Lと一致するように、支持体705の内部に配置される。駆動装置100は支持体705の内面に対して複数の固定ネジ731によって固定される。
【0071】
図13(b)は
図13(a)に○で囲ったA部の拡大断面図である。出力フランジ109は、複数の固定ネジ732によって、アーム本体701Aの内面の回転軸部材701Bに固定される。具体的には、出力フランジ109の中央に設けられた凹部が、アーム本体701Aの回転軸部材701B内面に形成された凸部に嵌め込まれ、その回転中心が位置決めされる。そして、出力フランジ109の表面から突出したピン109Bを、アーム本体701Aの回転軸部材701B内面に形成された凹部にはめ込むことで、出力フランジ109の回転角度の位置決めおよび滑り止めがなされる。これにより、出力フランジ109が回転すると、当該出力フランジ109に固定されたアーム本体701Aが回転することとなる。
【0072】
出力フランジ109はセンサパイプ106により中空形状となっている。出力フランジ109に固定されるアーム回転軸部材701Bおよびアーム本体701Aにも位置を対応させた中空部を設けている。これにより、
図14に示すようにハーネス740を通すことが可能となる。
【0073】
駆動装置100によるアーム本体701Aの駆動制御でも制御手段の構成やその制御の仕方の具体例としては、
図5及び
図6を用いて説明した制御基板210やオフセット制御を用いることができる。アーム本体701Aの回転方向および回転量(回転角度)の制御は、上位のコントローラからモータの回転方向および回転量(回転角度)を制御する。これにより、アーム本体701Aの回転をブレーキ機構によって制動可能としつつ、上位のコントローラから第一及び第二のモータ101,151を制御することにより、アーム本体701Aの回転を制御することができる。また、上位のコントローラからブレーキ機構を制御することにより、アーム本体701Aの回転を制動することができる。
【0074】
なお、
図13を用いて説明した以上の第一関節部706の構成は、第二関節部707にも適用できる。すなわち、第一アーム701に駆動装置100を取り付け、この出力フランジ109を第二アーム702に固定して駆動対象として第二アーム702を駆動するようにできる。
【0075】
また、
図13にロボットアームの関節部分を示すように、このような関節部分を備えたロボットであれば、
図12にロボットに限らず、産業用ロボットや家庭用ロボット等など、ロボットアームを備える様々な用途のロボットが対象となり得る。
【0076】
〔実施形態4〕
次に本発明の駆動装置を備えた画像形成装置の実施形態(実施形態4)について説明する。
図14は実施形態4に係る画像形成装置の概略構成図である。原稿Dは、原稿搬送部810によって、図中の矢印方向に搬送(給送)されて、原稿読込部802上を通過し、原稿読込部802で画像情報が光学的に読み取られる。読み取られた画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、露光部803(書込部)から作像部804の感光体ドラム805上に照射される。作像部804において、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム805上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。形成された画像は、給送装置852から搬送経路Kなどを通って搬送されてきたシートP上に転写部807で転写される。転写工程後のシートPは、定着装置820でトナー像が定着され、排紙トレイ831上に積載される。
【0077】
装置801の本体には複数の給送装置812、813が設けられている。これらはほぼ同様の構成となっている。給送装置813には、載置部843(昇降板)、載置部843に載置されたシートPを給送するための給送手段としての給送装置852、等が設置されている。
【0078】
このように構成された画像形成装置801は、バックラッシの影響を避けた位置決め制御や駆動対象の駆動トルク向上させる制御などが必要な駆動箇所(例えば、給紙搬送、原稿搬送、感光体ドラム805の回転駆動等)の少なくとも一箇所について実施形態2の駆動装置を備えている。これによれば、正確な位置決め制御を行うことができる。
【0079】
なお、以上の3K型遊星歯車機構における遊星歯車は歯数が高い異なる歯車を一体化したものだったが、これに代え、3K型の不思議遊星歯車機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
9A :モータ
9B :モータ
100 :駆動装置
101 :第一モータ
101A :出力軸
101B :エンコーダ
101C :第一モータピニオンギヤ
102 :後端
102A :Oリング
106 :センサパイプ
106A :リング型磁石
107 :センターシャフト
109 :出力フランジ
109A :連結ピン
109B :ピン
112 :第一遊星キャリアピン
113 :保持孔
117 :第二遊星キャリアピン
118 :基板
119 :ホールIC
121 :ハウジング
122 :底板
131 :ベアリング
132 :ベアリング
135 :ベアリング
136 :ベアリング
137 :ベアリング
140 :ブレーキ機構
141 :ブレーキカバー
142 :ロータハブ
143 :ブレーキ本体
144 :ネジ
145 :ロータ
146 :アーマチャ
147 :プレート
148 :コイル
151 :第二モータ
151A :出力軸
151B :エンコーダ
151C :第二モータピニオンギヤ
210 :制御基板
213 :速度制御部
223 :ドライバ
224 :ドライバ
308 :第一入力ギヤ
358 :第二入力ギヤ
400 :貫通孔
400A :圧縮スプリング
401 :凹部
700 :マニピュレータ装置
701 :第一アーム
701A :アーム本体
701B :アーム回転軸部材
702 :第二アーム
703 :ピッキングハンド
704 :台座
705 :支持体
705A :ベアリング
706 :第一関節部
707 :第二関節部
730L :回転軸
731 :固定ネジ
732 :固定ネジ
740 :ハーネス
801 :画像形成装置
802 :原稿読込部
803 :露光部
804 :作像部
805 :感光体ドラム
807 :転写部
810 :原稿搬送部
812 :給送装置
813 :給送装置
820 :定着装置
831 :排紙トレイ
843 :載置部
852 :給送装置
D :原稿
H :第一遊星キャリア
H' :第二遊星キャリア
K :搬送経路
L :露光光
N1 :トルク
N2 :トルク
P :シート
Z1 :第一太陽歯車
Z1' :第二太陽歯車
Z11 :第一A歯車
Z11' :第二A歯車
Z11-Z12 :第一遊星歯車
Z12 :第一B歯車
Z12' :第二B歯車
Z3 :第一可動内歯車
Z3' :第二可動内歯車
drvin :入力電圧指令値
enc1 :エンコーダ信号
enc2 :エンコーダ信号
vtgt :速度目標値
xtgt :位置目標値
ω1 :角速度
ω2 :角速度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】