(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】プレミックスモルタル包装物、及び、モルタル組成物の施工方法
(51)【国際特許分類】
C04B 16/02 20060101AFI20240222BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20240222BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240222BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20240222BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20240222BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20240222BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C04B16/02 Z
B28C7/04
B65D33/00 Z
B65D65/46
B65D81/32 A
C04B16/06 B
C04B16/06 Z
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2020052981
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】関 友則
(72)【発明者】
【氏名】小松 桃子
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-531043(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109562(WO,A1)
【文献】特開2002-193655(JP,A)
【文献】特開2007-269537(JP,A)
【文献】特開2003-277119(JP,A)
【文献】特開平01-308858(JP,A)
【文献】特開平09-099428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0067250(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0293728(US,A1)
【文献】国際公開第95/011861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C04B 103/00-111/94
B28C 1/00-7/04
B65D 33/00,65/46,81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維が含まれていないプレミックスモルタルが袋に収納されたプレミックスモルタル包装物であって、
さらに、水溶性バインダで繊維が膠着された繊維シートが前記袋に収納され、
前記繊維シートにおける繊維の含有量が、前記プレミックスモルタルの全質量に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下であり
、
前記繊維シートの厚みが、65μm以上200μm以下であ
り、
前記繊維が、植物繊維であり、
前記水溶性バインダが、ポリビニルアルコールである、プレミックスモルタル包装物。
【請求項2】
繊維が含まれていないプレミックスモルタルが袋に収納されたプレミックスモルタル包装物であって、
前記袋が、水溶性バインダで繊維が膠着された繊維シートから構成され、
前記繊維シートにおける繊維の含有量が、前記プレミックスモルタルの全質量に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下であり
、
前記繊維シートの厚みが、65μm以上200μm以下であ
り、
前記繊維が、植物繊維であり、
前記水溶性バインダが、ポリビニルアルコールである、プレミックスモルタル包装物。
【請求項3】
前記繊維の長さが、0.8mm以上15mm以下である、請求項1又は2に記載のプレミックスモルタル包装物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組成物を施工する方法であって、
前記プレミックスモルタルと、前記繊維シートと、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工する、モルタル組成物の施工方法。
【請求項5】
前記プレミックスモルタルに対する前記水の質量比が、15以上100以下である、請求項4に記載のモルタル組成物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント、細骨材等の粉体材料を混合したプレミックスモルタルは、数十kg毎に袋詰めされ、プレミックスモルタル包装物として施工現場へ搬送される。プレミックスモルタルを収納する袋としては、例えば、クラフト紙とポリエチレン等の樹脂フィルムとを積層させた多層袋、ポリエチレン等の樹脂でラミネートした紙製の袋、麻袋等が知られている。このようなプレミックスモルタル包装物は施工現場で開封され、その後、プレミックスモルタルに所定量の水を加えて混練することにより、モルタル組成物を得ることができる。
【0003】
従来、モルタル硬化物の強度を向上させる観点から、プレミックスモルタルには繊維が混入されている(例えば、特許文献1及び2)。繊維としては、分散性の観点から、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維が好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-159205号公報
【文献】特開2018-135236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、モルタル硬化物の強度をより向上させることが求められている。一般的に、モルタル硬化物の強度は、プレミックスモルタル中の繊維の含有量が大きいほど向上する。しかしながら、繊維の含有量が大きいと、セメント、細骨材等の粉体材料と共に繊維を混合する際、繊維がミキサーの羽根に絡まってファイバーボールを形成するため、得られるモルタル硬化物中に繊維を均一に分散させることが困難であった。このため、プレミックスモルタルに多量の繊維を混入することができなかった。一方で、施工現場においてプレミックスモルタルに水を加えて混練する際、繊維を追加投入することも考えられるが、作業性の点から好ましくない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、プレミックスモルタル中でのファイバーボールの形成を抑制し、かつ、高強度なモルタル硬化物を作業性良く得ることが可能なプレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタルが袋に収納され、さらに、水溶性バインダで繊維が膠着された繊維シートが前記袋に収納され、前記繊維シートにおける繊維の含有量が、前記プレミックスモルタルの全質量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下である。
【0008】
前記プレミックスモルタル包装物では、繊維シートがプレミックスモルタルと共に袋に収納されている。そのため、施工現場において開封後、プレミックスモルタル及び繊維シートに所定量の水を加えて混練すると、繊維シートが水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、繊維が均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0009】
さらに、前記プレミックスモルタル包装物は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。
【0010】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタルが袋に収納され、前記袋が、水溶性バインダで繊維が膠着された繊維シートから構成され、前記繊維シートにおける繊維の含有量が、前記プレミックスモルタルの全質量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下である。
【0011】
前記プレミックスモルタル包装物では、プレミックスモルタルが袋に収納され、袋が繊維シートから構成されている。そのため、施工現場において開封することなく、プレミックスモルタル及び袋(繊維シート)に所定量の水を加えて混練すると、袋(繊維シート)が水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、繊維が均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0012】
さらに、前記プレミックスモルタル包装物は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。
【0013】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記繊維の長さが、0.8mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0014】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、より強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0015】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記繊維シートの水に対する溶解温度が、1℃以上45℃以下であることが好ましい。
【0016】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、繊維シートを充分に溶解させることができるため、繊維がより均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。
【0017】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記繊維シートの厚みが、65μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0018】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、繊維シートを充分に溶解させることができるため、繊維がより均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、繊維シートが破れにくく、かつ、容易に成型することができる。
【0019】
本発明に係るモルタル組成物の施工方法は、上述のプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組成物を施工する方法であって、前記プレミックスモルタルと、前記繊維シートと、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工する。
【0020】
前記モルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタル及び繊維シートに所定量の水を加えて混練すると、繊維シートが水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、モルタル硬化物中の繊維を均一に分散させることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、モルタル硬化物の強度を向上させることができる。
【0021】
さらに、前記プレミックスモルタル包装物は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性に優れる。
【0022】
本発明に係るモルタル組成物の施工方法は、前記プレミックスモルタルに対する前記水の質量比が、15以上100以下であることが好ましい。
【0023】
前記モルタル組成物の施工方法は、斯かる構成により、繊維シートを充分に溶解させることができるため、モルタル硬化物中の繊維をより均一に分散させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プレミックスモルタル中でのファイバーボールの形成を抑制し、かつ、高強度なモルタル硬化物を作業性良く得ることが可能なプレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例における繊維の含有量と曲げ強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物、及び、モルタル組成物の施工方法について説明する。
【0027】
[プレミックスモルタル包装物]
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物では、プレミックスモルタル及び繊維シートが袋に収納されている。
【0028】
<プレミックスモルタル>
プレミックスモルタルは、少なくともセメント及び細骨材を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
(セメント)
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント等の公知のセメントを用いることができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
セメントの含有量は、プレミックスモルタルの質量1t当たり、200kg以上600kg以下であることが好ましく、300kg以上500kg以下であることがより好ましい。なお、セメントが2種以上含まれる場合、前記含有量は、セメントの合計含有量である。
【0031】
(細骨材)
細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂等が挙げられる。なお、細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
細骨材の含有量は、プレミックスモルタルの質量1t当たり、400kg以上800kg以下であることが好ましく、500kg以上700kg以下であることがより好ましい。なお、細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は、細骨材の合計含有量である。
【0033】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、混和材、混和剤、着色剤等が挙げられる。
【0034】
混和材としては、特に限定されるものではなく、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
混和剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、AE剤、AE減水剤、増粘剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
プレミックスモルタルは、ミキサー等を用いて、セメントと、細骨材と、必要に応じてその他の添加剤とを攪拌混合することにより得られる。攪拌混合時間は、特に限定されるものではなく、例えば、2分以上5分以下とすればよい。
【0037】
<繊維シート>
繊維シートとは、水溶性バインダで繊維が膠着されたシートを意味する。繊維シートの厚みは、65μm以上200μm以下であることが好ましく、袋として用いた場合の破袋耐性の観点から、170μm以上200μm以下であることがより好ましい。繊維シートの大きさは、特に限定されるものではなく、例えば、3400cm2以上5300cm2以下とすることができる。
【0038】
繊維シートの水に対する溶解温度は、1℃以上45℃以下であることが好ましく、5℃以上35℃以下であることがより好ましい。
【0039】
(繊維)
繊維としては、例えば、パルプ等の植物繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の有機繊維;鋼繊維;ガラス繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらの中でも、分散性を良好にする観点から、植物繊維又は有機繊維を用いることが好ましい。パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、合成繊維パルプ等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。なお、繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
繊維の長さは、0.8mm以上15mm以下であることが好ましく、1mm以上12mm以下であることがより好ましい。
【0041】
繊維シートにおける繊維の含有量は、プレミックスモルタルの全質量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、1.0質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。なお、繊維が2種以上含まれる場合、前記含有量は、繊維の合計含有量である。繊維シートにおける繊維の含有量は、例えば、繊維シートの大きさ、厚さ、枚数等を変えることにより調整することができる。
【0042】
(水溶性バインダ)
水溶性バインダとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、にかわ、でんぷん糊等が挙げられる。これらの中でも、水に対する易溶性の観点から、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。なお、水溶性バインダは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
繊維シートにおける水溶性バインダの含有量は、プレミックスモルタルの全質量に対して、0.15質量%以上0.48質量%以下であることが好ましく、0.27質量%以上0.48質量%以下であることがより好ましい。なお、水溶性バインダが2種以上含まれる場合、前記含有量は、水溶性バインダの合計含有量である。
【0044】
繊維シートは、例えば、分散液(水等)に分散させた繊維をシート状に成型し、プレス脱水又は半乾燥させた後、水溶性バインダを噴霧又は塗工して乾燥させることにより得られる。繊維シートの市販品としては、例えば、120MDP、A6015(いずれも日本製紙パピリア社製)等の水溶紙が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、繊維シートがプレミックスモルタルと共に袋に収納されている。そのため、施工現場において開封後、プレミックスモルタル及び繊維シートに所定量の水を加えて混練すると、繊維シートが水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、繊維が均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0046】
さらに、前記プレミックスモルタル包装物は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。
【0047】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、繊維の長さが0.8mm以上15mm以下であることにより、より強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0048】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、繊維シートの水に対する溶解温度が1℃以上45℃以下であることにより、繊維シートを充分に溶解させることができるため、繊維がより均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。
【0049】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、繊維シートの厚みが65μm以上200μm以下であることにより、繊維シートを充分に溶解させることができるため、繊維がより均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、繊維シートが破れにくく、かつ、容易に成型することができる。
【0050】
[モルタル組成物の施工方法]
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組成物を施工する方法であって、前記プレミックスモルタルと、前記繊維シートと、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工する。
【0051】
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。なお、水は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
プレミックスモルタルに対する水の質量比は、15以上100以下であることが好ましく、15以上50以下であることがより好ましい。
【0053】
混練時間は、特に限定されるものではなく、例えば、2分以上5分以下とすればよい。
【0054】
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタル及び繊維シートに所定量の水を加えて混練すると、繊維シートが水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、モルタル硬化物中の繊維を均一に分散させることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、モルタル硬化物の強度を向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性に優れる。
【0056】
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタルに対する水の質量比が15以上100以下であることにより、繊維シートを充分に溶解させることができるため、モルタル硬化物中の繊維をより均一に分散させることができる。
【0057】
[その他の実施形態]
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタル及び繊維シートが袋に収納されているが、当該構成に限定されるものではなく、プレミックスモルタルが袋に収納され、該袋が繊維シートから構成されていてもよい。
【0058】
繊維シートから構成される袋は、例えば、繊維シートを3重に重ね合わせ、その状態で所定の寸法に折り畳み、水溶性接着剤で接着することにより作製することができる。水溶性接着剤としては、例えば、でんぷん糊等を用いることができる。
【0059】
斯かる構成により、施工現場において開封することなく、プレミックスモルタル及び袋(繊維シート)に所定量の水を加えて混練すると、袋(繊維シート)が水に溶解し、残った繊維がプレミックスモルタル中に分散する。このように、プレミックスモルタルを混練する際に繊維を分散させることにより、プレミックスモルタル中でファイバーボールが形成されることを抑制する。その結果、繊維が均一に分散されたモルタル硬化物を得ることができる。また、ファイバーボールの形成が抑制されることで、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、強度の高いモルタル硬化物を得ることができる。
【0060】
さらに、このようなプレミックスモルタル包装物は、0.1質量%以上4.0質量%以下の多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
<試験1>
(プレミックスモルタル包装物の作製)
実施例1~3では、袋にプレミックスモルタル及び繊維シートが収納されたプレミックスモルタル包装物を作製した。プレミックスモルタルとしては、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)と6号珪砂(日瓢鉱業社製)とを混合したものを用いた。ここで、プレミックスモルタルは、600kgの6号珪砂→400kgの普通ポルトランドセメントの順で連続的にミキサー(OMKミキサー,混合容量 1m3,三扇機工社製)に投入後、3分間の攪拌混合を行うことにより得た。また、繊維シートは、表1に示す種類及び含有量の繊維を水溶液に分散させてシート状に成型し、プレス脱水させた後、紙漉き用粘剤(ポリエチレンオキサイド及びポリアクリルアミドの希釈溶液、サンエス社製)を塗工して乾燥させることにより得た。なお、繊維シートの厚みは、195μmであった。また、繊維シートの大きさは、繊維の含有量に応じて調整した。繊維シートの大きさを表1に示す。
【0063】
比較例1~3では、プレミックスモルタルを作製する際、600kgの6号珪砂→400kgの普通ポルトランドセメント→各繊維の順でミキサーに投入したこと以外は、実施例1~3と同様の方法でプレミックスモルタル包装物を作製した。比較例4では、繊維をミキサーに投入しなかったこと以外は、比較例1~3と同様の方法でプレミックスモルタル包装物を作製した。
【0064】
各繊維の詳細を以下に示す。
木材パルプ:N-BKP 針葉樹晒しクラフトパルプ,繊維長 3~5mm,モーリ社製
非木材パルプ:バガス(砂糖キビ由来パルプ),繊維長 0.8~2.8mm,モーリ社製
合成繊維:ビニロン繊維 REC15×12,繊維長 9~15mm,クラレ社製
【0065】
(ファイバーボール形成の有無)
プレミックスモルタルを作製する際、ファイバーボールが形成されたかどうかについて目視で観察を行い、下記基準に基づき評価を行った。結果を表1に示す。
N:ファイバーボールの形成が認められなかった。
L:少量のファイバーボールが形成された。
C:著しい量のファイバーボールが形成された。
【0066】
(曲げ強度の測定)
JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)2016 に規定する試験方法により、JIS R 5201に規定する40×40×160mmの角柱供試体を製作し、材齢28日における曲げ強度を測定した。なお、練り鉢にはプレミックスモルタル及び繊維シートを入れて練り混ぜた。また、機械練りには、ホバートミキサ(N-50型,ホバート・ジャパン社製)を用いた。結果を表1及び
図1に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
表1,表2及び
図1の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例1~3のプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタル中にファイバーボールの形成が認められなかった。また、実施例1~3のプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタル中に繊維を混入させた比較例1~3のプレミックスモルタル包装物、及び、繊維を混入させていない比較例4のプレミックスモルタル包装物と比較して、多量の繊維をプレミックスモルタル中に分散させることができるため、モルタル硬化物の強度を向上させることができる。
【0070】
また、実施例1~3のプレミックスモルタル包装物は、モルタル硬化物の強度を向上させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。
【0071】
<試験2>
(プレミックスモルタル包装物の作製)
実施例4~7では、プレミックスモルタルを収納する袋を繊維シートから作製したこと以外は、実施例1と同様にプレミックスモルタル包装物を作製した。袋は、繊維シートを3重に重ね合わせ、その状態で所定の寸法に折り畳み、でんぷん糊で接着することにより作製される。なお、繊維シートの大きさは、繊維の含有量に応じて調整した。繊維シートの大きさを表3に示す。
【0072】
ファイバーボール形成の有無は、試験1と同様に評価した。また、曲げ強度の測定は、所定量の水にプレミックスモルタル包装物を投入後、ハンドミキサ(TL13型,友定建機社製)で練り混ぜたこと以外は、試験1と同様に行った。結果を表3及び
図1に示す。
【0073】
【0074】
表3及び
図1の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例4~7のプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタル中にファイバーボールの形成が認められなかった。また、実施例4~7のプレミックスモルタル包装物は、実施例1~3におけるモルタル硬化物と同様の強度を有することから、従来のモルタル硬化物と比較して強度を向上させることができる。
【0075】
また、実施例4~7のプレミックスモルタル包装物は、繊維シートにおける繊維の含有量を大きくすることによりモルタル硬化物の強度を向上させることができるため、混練の際に繊維を追加投入する必要がなく、作業性良くモルタル硬化物を得ることができる。