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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240222BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20240222BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240222BHJP
   G03G 21/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
G03G21/00 512
G03G21/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020073354
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021107910
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019148048
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020008540
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小菅 明朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大介
(72)【発明者】
【氏名】赤津 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-101654(JP,A)
【文献】特開2009-122558(JP,A)
【文献】特開平05-223513(JP,A)
【文献】特開2013-156537(JP,A)
【文献】特開2014-238462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0044195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部材と、
感光体を除電する除電手段とを備え、
前記感光体の特性値と、前記除電手段により除電した後の前記帯電部材に流れる電流値とに基づいて、前記帯電部材による帯電後の前記感光体の表面電位を予測し、予測した感光体の表面電位に基づいて、前記帯電部材に印加する帯電バイアスを制御する画像形成装置において、
前記除電手段は、光と放電とで前記感光体の表面を除電するものであり、
前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを繰り返し実施して前記感光体の特性値を取得する動作と、前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを1度だけ実施して前記感光体の帯電電位を予測する動作とを実行可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部材と、
感光体を除電する除電手段とを備え、
前記感光体の特性値と、前記除電手段により除電した後の前記帯電部材に流れる電流値とに基づいて、前記帯電部材による帯電後の前記感光体の表面電位を予測し、予測した感光体の表面電位に基づいて、前記帯電部材に印加する帯電バイアスを制御する画像形成装置において、
前記除電手段は、光と放電とで前記感光体の表面を除電するものであり、
光と放電とで前記感光体の表面を除電した後の感光体を帯電するときに前記帯電部材に流れる電流値と、光のみで前記感光体の表面を除電した後の感光体を前記帯電部材により帯電するときに前記帯電部材に流れる電流値と、前記感光体の特性値とに基づいて、光のみで前記感光体の表面を除電した後の感光体の残留電位を予測し、予測した感光体の残留電位に基づいて、作像条件を調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
光と放電による感光体に対する除電動作は、感光体2周以上行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを繰り返し実施して前記感光体の特性値を取得する動作と、前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを1度だけ実施して前記感光体の帯電電位を予測する動作とを実行可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1または4に記載の画像形成装置において、
前記感光体の特性値を取得する動作は、光と放電で除電した後の感光体を帯電するときに前記帯電部材に流れる電流値を計測する動作を、前記帯電部材に印加する帯電バイアスを変更して複数回実施する動作であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1、4または5に記載の画像形成装置において、
前記感光体の特性値を取得する動作は、特定の条件を満たす場合に実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記特定の条件は、前記感光体の帯電電位を予測する動作よりも発生頻度が少ない条件であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の画像形成装置において、
前記特定の条件を満たす場合とは、感光体が交換された場合であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の画像形成装置において、
前記特定の条件を満たす場合とは、使用する環境が所定量以上変化した場合であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項6または7に記載の画像形成装置において、
前記特定の条件を満たす場合とは、前記感光体が所定量以上使用された場合であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項6または7に記載の画像形成装置において、
前記特定の条件を満たす場合とは、前記帯電部材に流れる電流値を検知する電流検知手段を備え、前記帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源を交換した場合であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記感光体の特性値は、帯電電流の変化量に対する帯電電位の変化量であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源を備え、
前記帯電用電源は直流と交流とを発生できるものであり、
前記除電手段の放電による前記感光体の表面の除電は、前記帯電用電源の交流バイアスを前記帯電部材に印加することで行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体と、感光体を帯電させる帯電部材と、感光体を除電する除電手段とを備え、感光体の特性値と、除電手段により除電した後の帯電部材に流れる電流値とに基づいて、帯電部材による帯電後の感光体の表面電位を予測し、予測した感光体の表面電位に基づいて、感光体を帯電する帯電部材に印加する帯電バイアスを制御する画像形成装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、感光体の帯電時間、感光体の回転時間などから求められた感光体の特性値としての感光体の膜厚と、除電手段により除電された感光体の領域に対して流れる帯電電流における直流成分とに基づいて、帯電部材による帯電後の感光体の表面電位を計算するものが記載されている。感光体の表面の移動方向において一次転写部の下流側、且つ、クリーニング部の上流側に、除電手段としての除電露光装置を設け、光で感光体表面を除電している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感光体の表面電位を精度よく予測できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部材と、感光体を除電する除電手段とを備え、前記感光体の特性値と、前記除電手段により除電した後の前記帯電部材に流れる電流値とに基づいて、前記帯電部材による帯電後の前記感光体の表面電位を予測し、予測した感光体の表面電位に基づいて、前記帯電部材に印加する帯電バイアスを制御する画像形成装置において、前記除電手段は、光と放電とで前記感光体の表面を除電するものであり、前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを繰り返し実施して前記感光体の特性値を取得する動作と、前記除電手段による除電と前記帯電部材による帯電のサイクルを1度だけ実施して前記感光体の帯電電位を予測する動作とを実行可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、感光体の表面電位を精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】フルカラー複写機の全体構成図。
図2】画像形成ユニットの概略構成図。
図3】帯電ローラの構成例の説明図。
図4】感光体の構成例の説明図。
図5】フルカラー複写機の電気回路の一部を示すブロック図。
図6】DC帯電電流値の取得動作のタイミングチャート。
図7】DC帯電電流取得動作中の除電ランプ通過後、帯電ローラ通過前の感光体電位と、帯電ローラ通過後の感光体電位と、DC帯電電流との関係を示した図。
図8】感光体特性を取得する動作のタイミングチャート。
図9】横軸に検知した帯電電流[μA]、縦軸に印加した帯電DCバイアス×α[V]をプロットしたグラフ。
図10】帯電電位の予測のみを行うDC帯電電流値の取得動作のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を画像形成装置としてのタンデム中間転写方式のフルカラー複写機に適用した実施形態について説明する。
図1はフルカラー複写機の全体構成図である。このフルカラー複写機は装置本体100、本体を載せる給紙テーブル200、複写装置本体上に取り付けるスキャナ300、スキャナ上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400、等から構成されている。
【0009】
本体中央には、Y、C、M、Bkの4つの画像形成ユニット18Y、18C、18M、18Bkを横に並べて配置してタンデム画像形成装置20が構成されている。タンデム画像形成装置の各画像形成ユニットは、それぞれY、C、M、Bkの各色トナー像が形成される感光体40Y、40C、40M、40Bkを有している。
【0010】
タンデム画像形成装置の上方には、露光装置21が設けられている。露光装置は、各色毎に用意されたレーザダイオード(LD)方式の4つの光源と、6面のポリゴンミラーとポリゴンモータから構成される1組のポリゴンスキャナと、各光源の光路に配置されたfθレンズ、長尺WTL等のレンズやミラーから構成されている。各色の画像情報に応じてLDから射出されたレーザ光はポリゴンスキャナにより偏向走査され各色の感光体に照射される。
【0011】
タンデム画像形成装置の下方には、無端ベルト状の中間転写ベルト10が設置されている。中間転写ベルトは、3つの支持ローラ14・15・16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能であり、支持ローラ14は中間転写ベルトを回転駆動する駆動ローラである。また、第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間には、各色の感光体から中間転写ベルトにトナー像を転写する一次転写手段として一次転写ローラ82Y、C、M、Bkが中間転写ベルトを間に挟んで各感光体に対向するように設けられている。
【0012】
第3の支持ローラ16の下流には、画像転写後に中間転写ベルト上に残留する残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置17を設けられている。中間転写ベルトの材質としてはポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料をシームレスベルトに成型し使用することができる。これらの材料はそのまま用いたり、カーボンブラック等の導電材により抵抗調整したりすることが可能である。また、これらの樹脂を基層として、スプレーやディッピング等の方法により表層を形成し、積層構造にしても良い。
【0013】
中間転写ベルトの下方には、2次転写装置22を備える。2次転写装置は、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写ベルトを介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写ベルト上の画像を転写材に転写する。2次転写ベルトとしては中間転写ベルトと同様の材料を用いることができる。
【0014】
2次転写装置の横には、転写材上の画像を定着する定着装置25を設ける。定着装置は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。上述した2次転写装置には、画像転写後の転写材をこの定着装置へと搬送するシート搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置として、転写ローラや転写チャージャを配置してもよく、そのような場合は、この転写材搬送機能を別途備える必要がある。
【0015】
なお、2次転写装置および定着装置の下方に、上述したタンデム画像形成装置と平行に、転写材を反転排紙したり、転写材の両面に画像を形成するために転写材を反転して再給紙したりするシート反転装置28を備えている。
【0016】
このフルカラー複写機を用いてコピー動作をおこなうときは、ADFの原稿台30上に原稿をセットする。または、ADFを開いてスキャナのコンタクトガラス32上に原稿をセットし、ADFを閉じて原稿を押さえる。そして、操作表示部515(図5参照)のスタートスイッチを押すと、ADFに原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス上へと移動した後キャナを駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。一方、コンタクトガラス上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナを駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。
【0017】
そして、第1走行体で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体に向け、第2走行体のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。その後、操作部でのモード設定、あるいは操作部で自動モード選択が設定されている場合には原稿の読み取り結果に従い、フルカラーモードまたは白黒モードで画像形成動作を開始する。
【0018】
フルカラーモードが選択された場合には、各感光体が図1で反時計回り方向にそれぞれ回転する。そして、その各感光体の表面が帯電装置である帯電ローラにより一様に帯電される。そして、各色の感光体には露光装置から各色の画像に対応するレーザ光がそれぞれ照射され、各色の画像データに対応した潜像がそれぞれ形成される。各潜像は感光体が回転することにより各色の現像装置60Y、C、M、Bkで各色のトナーが現像される。各色のトナー像は中間転写ベルトの搬送とともに、中間転写ベルト上に順次転写されて中間転写ベルト上にフルカラー画像を形成する。転写後の感光体は除電ランプにより光除電され、クリーニング手段により転写残のトナーが除去される。
【0019】
一方、給紙テーブル給紙ローラ42の1つを選択回転し、給紙テーブル43に多段に備える給紙カセット44の1つから転写材を送り出す。次に、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して本体内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。または、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上の転写材を送り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラに突き当てて止める。そして、中間転写ベルト上のフルカラー画像にタイミングを合わせてレジストローラを回転し、中間転写ベルトと2次転写装置との間に転写材を送り込み、2次転写装置で転写して転写材上にトナー像を転写する。
【0020】
トナー像が転写された転写材は、2次転写装置で搬送されて定着装置へと送り込まれ、定着装置で熱と圧力とを加えて転写材に定着された後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。または、切換爪で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと再給紙され、裏面にも画像を記録した後、排出ローラで排紙トレイ上に排出される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0021】
所定枚数の画像形成が終了した後には作像後処理を行ってから感光体の回転を停止する。作像後処理では帯電バイアス、転写バイアスをオフした状態で感光体を1周以上回転させ、その際に除電手段により感光体表面の電荷を除電して、感光体が除電したまま放置されて感光体が劣化することを防止する。
【0022】
白黒モードが選択された場合には、支持ローラ15が下方に移動し、中間転写ベルトを感光体Y、C、Mから離間させる。Bkの感光体のみが図1の反時計回り方向に回転し、Bk感光体の表面が帯電ローラにより一様に帯電され、Bkの画像に対応するレーザ光が照射され、潜像が形成され、Bkのトナーにより現像されてトナー像となる。このトナー像は中間転写ベルト上に転写される。この際、Bk以外の3色の感光体、現像装置は停止しており、感光体や現像剤の不要な消耗を防止する。
【0023】
一方、給紙カセットから転写材が給紙され、レジストローラにより、中間転写ベルト上に形成されているトナー像と一致するタイミングで搬送される。トナー像が転写された転写材は、フルカラー画像の場合と同様に定着装置で定着され、指定されたモードに応じた排紙系を通って処理される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0024】
画像形成ユニットの構成を図2に示す。像担持体である感光体40の周りには、露光装置からの露光光76を通過させるための開口が設けられている。感光体を均一に帯電する帯電部材としての帯電ローラ70、感光体に形成された静電潜像を現像する現像装置60、トナー像が転写された後の感光体の表面を除電する除電ランプ72、転写残トナーをクリーニングするためのブラシローラ73とクリーニングブレード75が配置されている。
【0025】
その下流に配置されたブラシローラ74には固形の潤滑剤78が当接しており、ブラシローラで削り取った潤滑剤を塗布ブレード80で感光体に塗布する。固形の潤滑剤の例としては、ステアリン酸亜鉛、パルチミン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩や、カルナウバワックスのような天然ワックスや、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂を用いることができる。また、必要に応じてその他の材料を混合することもできる。固形の潤滑剤は潤滑剤粒子を溶融固化させたり、圧縮成形することで作製することができる。
【0026】
ブラシローラや、ポリウレタンゴムからなるクリーニングブレードにより感光体から掻き取られたトナーは、トナー搬送コイル79により回収され、廃トナー収納部に搬送するように構成されている。
【0027】
この実施例では転写後に除電された感光体をクリーニングするように構成されているが、転写後にクリーニングされた感光体を除電するように構成してもよい。
【0028】
図3に本実施形態で使用可能な帯電ローラ70の構成を示した。帯電ローラ70は導電性支持体である芯金101と、樹脂層102と、ギャップ保持部材103から構成される。芯金はステンレス等の金属が用いられる。芯金が細すぎると樹脂層102の切削加工時や、感光体40に加圧されたときのたわみの影響が無視できなくなり、必要なギャップ精度が得られにくい。また、芯金101が太すぎる場合には帯電ローラ70が大型化したり、質量が重くなったりする問題があるため、芯金の直径としては6~10[mm]程度が望ましい。
【0029】
帯電ローラ70の樹脂層は10~10[Ωcm]の体積抵抗を持つ材料が好ましい。抵抗が低すぎると感光体40にピンホール等の欠陥があった場合に帯電バイアスのリークが発生しやすく、抵抗が高すぎると放電が十分に発生せず均一な帯電電位を得ることができない。基材となる樹脂に導電性材料を配合することで所望の体積抵抗を得ることができる。基材樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。これらの基材樹脂は、成形性が良いので容易に成形加工することができる。
【0030】
導電性材料としては四級アンモニウム塩基を有する高分子化合物のようなイオン導電性材料が好ましい。四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンの例としては、四級アンモニウム塩基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンーエチルアクリレート共重合、エチレンーメチルアクリレート共重合、エチレン-酢酸ビニル共重合、エチレン-プロピレン共重合、エチレン-ヘキセン共重合等のポリオレフィンである。本実施の形態においては、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンについて例示したが、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン以外の高分子化合物であっても構わない。
【0031】
前記のイオン導電性材料は、二軸混練機、ニーダー等の手段を用いることにより、前記の基材樹脂に均一に配合される。配合された材料を芯金上に射出成形、あるいは押出成形にすることにより、容易にローラ形状に成型することができる。イオン導電性材料と基材樹脂の配合量は基材樹脂100重量部に対してイオン導電性材料30~80重量部が望ましい。帯電ローラ70の樹脂層の厚さとしては0.5~3[mm]が望ましい。樹脂層が薄すぎると成型が困難である上に強度の面でも問題がある。樹脂層が厚すぎると帯電ローラ70が大型化するうえに樹脂層の実際の抵抗が大きくなるため帯電効率が低下してしまう。
【0032】
樹脂層102を成形した後、樹脂102層の両端にあらかじめ成形しておいたギャップ保持部材103を圧入や接着、あるいはその両方を併用して、芯金101に固定する。このようにして、樹脂層102とギャップ保持部材103を一体化してから、切削や研削等の加工を行って帯電ローラ70の外径を整えることで樹脂層102とギャップ保持部材103のフレの位相を揃えることができ、帯電ギャップの変動を低減することができる。
【0033】
ギャップ保持部材103の材質としては樹脂層102の基材と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。ただし、感光層にギャップ保持部材103を当接させるので感光層が損傷するのを防止するために、樹脂層102より硬度の低いグレードを用いることが望ましい。また、摺動性に優れ感光層に損傷を与えにくい樹脂材料として、ポリアセタール、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の樹脂を用いることもできる。
【0034】
また、樹脂層102やギャップ保持部材103にはコーティング等により、トナー等が付着しにくい表層を数10[μm]程度の厚さで形成することもできる。ギャップ保持部材を感光体の画像領域外に付き当てることで、帯電ローラの樹脂層と感光体との間にギャップを形成する。帯電ローラは芯金の端部に取り付けられたギヤが感光体フランジに形成されたギヤとかみ合っており、感光体駆動モータにより感光体が回転すると帯電ローラも連れ回り方向に回転する。樹脂層と感光体が接触することがないので、帯電ローラとして硬い樹脂材料と有機感光体を使用した場合でも画像領域の感光層に傷が付いたりすることはない。また、ギャップが広がりすぎると異常放電が発生し均一に帯電できなくなるため、最大ギャップは100[μm]程度以下に抑える必要がある。このような感光体と帯電ローラ間にギャップを設けた帯電ローラを使用する場合には、帯電バイアスとしてDC電圧にAC電圧を重畳することが望ましい。
【0035】
樹脂層102、ギャップ保持部材を樹脂材料で構成しているので、加工が容易で高精度の帯電ローラを製造することができる。また、帯電ローラにはローラ表面をクリーニングするためのクリーニングローラ77が当接している。このクリーニングローラは金属製の芯金上にメラミンフォームを取り付けたローラであり、帯電ローラに自重で当接しており帯電ローラの回転にともない連れ回り回転しながら帯電ローラ表面に付着したトナー等の汚れを除去する。クリーニングローラは帯電ローラに常時接触させておいても良いが、クリーニングローラの接離機構を備えて、普段は離間させておき必要に応じて定期的に帯電ローラに当接させて間欠的に帯電ローラ表面をクリーニングするように構成することもできる。なお、以上の帯電ローラ70はギャップ保持部材103を備え、感光体40の表面と帯電ローラ70の樹脂層102とを近接させるものであるが、これらを接触させる帯電ローラ70を用いることもできる。
【0036】
各現像装置は構成が同一のものであり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置であり、各色の現像装置内にはトナーとキャリアからなる二成分現像剤が収容されている。
【0037】
現像装置は感光体に対向した現像ローラ61、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー62、63、トナー濃度センサ64、等から構成される。現像ローラは外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。トナー濃度センサの出力に応じて、トナー補給装置より必要量のトナーが補給される。
【0038】
トナーは結着樹脂、着色剤、電荷制御剤を主成分とし、必要に応じて、他の添加剤が加えられて構成されている。結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、等を用いることができる。トナーに使用される着色材(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)としては、トナー用として公知のものが使用できる。着色材の量は結着樹脂100重量部に対して0.1から15重量部が適当である。
【0039】
電荷制御剤の具体例としては、ニグロシン染料、含クロム錯体、4級アンモニウム塩などが用いられ、これらはトナー粒子の極性により使い分けされる。荷電制御剤量は、結着樹脂100重量部に対して0.1~10重量部である。
【0040】
トナー粒子には流動性付与剤を添加しておくのが有利である。流動性付与剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物の微粒子及びそれら微粒子をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等によって表面処理したものや、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマー微粒子、などが用いられる。これら流動性付与剤の粒径は0.01~3[μm]の範囲のものが使用される。これら流動性付与剤の添加量は、トナー粒子100重量部に対して0.1~7.0重量部の範囲が好ましい。
【0041】
キャリアは芯材それ自体からなるか、芯材上に被覆層を設けたものが一般に使用される。本実施形態において用いることのできる樹脂被覆キャリアの芯材としては、フェライト、マグネタイトである。この芯物質の粒径は20~60[μm]程度が適当である。
【0042】
キャリア被覆層形成に使用される材料としては、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルケトンがある。被覆層の形成法としては、従来と同様、キャリア芯材粒子の表面に噴霧法、浸漬法等の手段で樹脂を塗布すればよい。
【0043】
図4に本実施形態で使用可能な感光体40の構成を示した。本実施形態で使用する感光体40の一例としては導電性支持体201上に構成された感光層である電荷発生層203、電荷輸送層204からなる積層型有機感光体が挙げられる。導電性支持体201は、体積抵抗1010[Ωcm]以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の管材を切削、研磨等で表面処理したものからなる。電荷発生層203は、電荷発生材料を主成分とする層である。
【0044】
電荷発生材料には、無機又は有機材料が用いられ、代表的なものとしては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン-テルル合金、セレン-ヒ素合金、アモルファスシリコン等が挙げられる。これら電荷発生材料は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0045】
電荷発生層203は、電荷発生材料を適宜バインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2-ブタノン、ジクロルエタン等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を塗布することにより形成できる。
電荷発生層の塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法等により行うことができる。
【0046】
適宜用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン、アクリル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。バインダー樹脂の量は、重量基準で電荷発生材料1部に対して0~2部が適当である。
【0047】
電荷発生層203の膜厚は、通常は0.01~5[μm]、好ましくは0.1~2[μm]である。電荷輸送層は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
【0048】
電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロキサントン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、2,6,8-トリニトロ-4H-インデノ〔1,2-b〕チオフェン-4オン、1,3,7-トリニトロジベンゾチオフェン-5,5-ジオキサイド等の電子受容性物質が挙げられる。
【0049】
これらの電子輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9-(p-ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1-ビス-(4-ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α-フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0050】
電荷輸送材料と共に電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル、シリコーン、エポキシ、メラミン、ウレタン、フェノール、アルキッド等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0051】
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2-ブタノン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0052】
電荷輸送層204の厚さは、10~40[μm]の範囲で所望の感光体特性に応じて適宜選択すればよい。
【0053】
本実施形態の感光体40には、導電性支持体201と感光層との間に下引き層202を形成することもできる。下引き層202は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン、アルキッド-メラミン、エポキシ等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、下引き層202には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を加えてもよい。この下引き層202は、上記の感光層と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層202として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル-ゲル法等により形成した金属酸化物層を用いることも有用である。この他に、下引き層202には、Alを陽極酸化したものにより形成したもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、Ce0等の無機物を真空薄膜作製法により形成したものも有効である。下引き層202の膜厚は、0~5[μm]が適当である。
【0055】
本実施形態の感光体40には、感光層の保護及び耐久性の向上を目的に、図4(b)に示すように、感光層の上に保護層205を形成することもできる。この保護層205はバインダー樹脂に耐摩耗性を向上する目的でアルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の金属酸化物微粒子が添加された構成である。バインダー樹脂としては、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、オレフィン-ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル、フェノール、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ等の樹脂が挙げられる。
【0056】
保護層205に添加される金属酸化物微粒子の量は、重量基準で通常は、5~30%である。金属酸化物微粒子の量が5%未満では、摩耗が大きく耐摩耗性を向上する効果が小さく耐久性に劣り、30%を越えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度低下が無視できなくなるので望ましくない。保護層205の形成法としては、スプレー法等通常の塗布法が採用される。保護層205の厚さは、1~10[μm]、好ましくは3~8[μm]程度が適当である。保護層205の膜厚が薄すぎると耐久性に劣り、保護層205の膜厚を厚くしすぎると感光体製造時の生産性が低下するだけでなく、経時での残留電位の上昇が大きくなってしまう。保護層205に添加する金属酸化物粒子の粒径としては0.1~0.8[μm]が適当である。金属酸化物微粒子の粒径が大きすぎる場合には保護層表面の凹凸が大きくなりクリーニング性が低下する上、露光光が保護層で散乱されやすく解像力が低下し画像品質が劣る。金属酸化物微粒子の粒径が小さすぎると耐摩耗性に劣る。
【0057】
さらに保護層205には、基材樹脂への金属酸化物微粒子の分散性を向上させるために分散助剤を添加することができる。添加される分散助剤は塗料等に使用されるものが適宜利用できその量は重量基準で通常は含有する金属酸化物微粒子の量に対して0.5~4%、好ましくは、1~2%である。また、保護層205に電荷輸送材料を添加することで、保護層中の電荷の移動を促進することができる。保護層に添加する電荷輸送材料としては電荷輸送層と同じ材料を用いることができる。
【0058】
図5は、実施形態に係るフルカラー複写機の電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、メイン制御部500は、フルカラー複写機の各機器の駆動制御を司るものであり、CPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)などを有している。そして、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、各種の機器の駆動を制御したり、所定の演算処理を実行したりする。
【0059】
メイン制御部500には、プロセスモータ510、現像バイアス電源511、転写バイアス電源512、レジストクラッチ513などが接続されている。また、操作表示部515、帯電ローラ70に電圧を印加する帯電用電源516、除電ランプ72の電源517、光書込制御部518、画像情報受信部519なども接続されている。
【0060】
画像情報受信部519は、スキャナ300から送られてくる画像情報を受信して、メイン制御部500や光書込制御部518に送るものである。光書込制御部518は、画像情報受信部519から送られてくる画像情報に基づいて露光装置21の駆動を制御することで、感光体40の表面を光走査する。
【0061】
プロセスモータ510は、感光体40、現像装置60、各種ローラなどの駆動源になっているモータである。プロセスモータ510の回転駆動力は、レジストクラッチ513を介してレジストローラ49に伝えられる。メイン制御部500が所定のタイミングでレジストクラッチ513をオンにすることにより、プロセスモータ510の回転駆動力をレジストローラ49に繋ぐ。
【0062】
現像バイアス電源511は、現像ローラ61に、トナーと同極性であり、その絶対値が潜像電位Vの絶対値よりも大きく且つ感光体40の地肌部の帯電電位Vよりも小さい現像バイアスを印加する。例えば、感光体地肌部電位=-600[V]、静電潜像電位=-30[V]という条件にて、-550[V]の現像バイアスを印加する。メイン制御部500は、現像バイアス電源511に対して出力命令信号を送ることで、所定のタイミングで現像バイアス電源11から現像バイアスを出力させる。
【0063】
また、メイン制御部500は、所定のタイミングで転写バイアス電源512に対して出力命令信号を送ることで、転写バイアス電源512から転写バイアスを出力させる。転写バイアスは、転写ローラ82や搬送ベルトユニット等から構成される転写装置と、感光体40とが対向する転写部にて、中間転写ベルト10と感光体40の静電潜像との間に転写電界を形成するための電圧である。
【0064】
操作表示部515は、タッチパネルやテンキーなどを具備しており、タッチパネルに画像を表示したり、タッチパネルやテンキーなどによって入力された情報をメイン制御部500に送ったりするものである。
【0065】
帯電用電源516は、帯電ローラ70に直流DCに交流ACを重畳した帯電バイアスを印加するとともに、帯電ローラ70に流れる帯電電流のDC成分(以下、DC帯電電流という)を検知する。このために、帯電用電源516には帯電中の電流を検知する電流検知回路516aが設けられ、その出力がメイン制御部500に送られる。これに代え、あるいはこれに加え、感光体40のベースに流れる電流を検出する電流測定回路を設けてその出力をメイン制御部500に送るようにすることもできる。なお、電流検知回路516aは帯電用電源516内に内蔵させてもよい。
【0066】
メイン制御部500は、後述するように、感光体の帯電電位を予測する予測装置として機能する。また、メイン制御部500は、帯電用電源516を制御して、帯電ローラに印加する帯電バイアスを制御する制御装置として機能する。
【0067】
上述した感光体40の感光層の膜厚は下引き層202が3~5[μm]、電荷発生層203が0.1~1.0[μm]、電荷輸送層204が25~40[μm]、保護層205が3~5[μm]程度が一般的である。感光体40は製造上どうしても数μmの膜厚ばらつきが生じて静電容量に差が出る。また、最外層はクリーニングブレード等との摩擦により摩耗するため、長期間使用した場合には感光層の摩耗のために静電容量が変化する。また、感光体の疲労で、感光体内のトラップ解消のためにより多くの電流が必要になる。この影響でも、狙いの帯電電位を得るための帯電バイアスが異なるものとなる。
【0068】
そこで、本実施形態では、感光体の表面電位を予測し、予測した感光体表面電位に基づいて狙いの帯電電位を得るための帯電DCバイアスを算出する。以下、感光体表面電位の予測値算出について説明する。
【0069】
[感光体の表面電位を予測するためのDC帯電電流値の取得]
図6は、DC帯電電流値の取得動作のタイミングチャートである。まず、メイン制御部500は、感光体40を回転させるとともに除電ランプ72を点灯させる。感光体40が所定の回転速度に達したら、帯電用電源516から帯電ローラ70に帯電ACバイアスを印加する。これにより感光体40は、除電ランプ72の除電光と、帯電ローラ70の放電とで除電される。すなわち、本実施形態では、除電ランプ72と、帯電ローラ70とが、除電手段として機能する。
【0070】
感光体40を2周以上回転させて感光体全面を除電したら、帯電用電源516から所定の帯電DCバイアス(例えば-700[V])を感光体40が1周するまで帯電ローラ70に印加してこの時のDC帯電電流を検知する。画像形成装置には転写装置があるが、感光体電位とDC帯電電流との関係を乱す原因となるためDC帯電電流を検知する際には転写バイアスは印加しない。この検知したDC帯電電流は、メモリに記憶される。
【0071】
さらに、感光体をもう一周させて、感光体2周時のDC帯電電流を検知する。感光体2周時のDC帯電電流値と、1周時のDC帯電電流値とから、除電ランプ72の除電光のみでは除電されずに残留する感光体の残留電位を求めることができる。
【0072】
[DC帯電電流取得動作中の帯電前後の感光体電位と検知電流の関係]
図7は、DC帯電電流取得動作中の除電ランプ72通過後、帯電ローラ70通過前の感光体電位(帯電前電位)と、帯電ローラ70通過後の感光体電位(帯電後電位)と、DC帯電電流との関係を示した図である。図7では、疲労が進んだ感光体を用いたときの各関係を示している。
図7に示すように、除電1周目では除電ランプの光による除電後の感光体電位(帯電前電位)は、0[V]以上であり、残留電位がある状態となっている。帯電ACを帯電ローラ70に印加して放電による除電後の感光体電位(帯電後電位)は、より0[V]に近づいている。帯電ACの放電による除電動作の役割は、上述したように感光体内のホールの移動を促進することであるので、帯電DCバイアスは印加せず(0[V])、DC電流検知回路は感光体を帯電させる極性側の電流を検知するように構成されているのでDC帯電電流(検知電流)は0[μA]で、測定されない。
【0073】
帯電電位を予測する動作のときは転写バイアスをオフしているため、除電1周目の帯電後電位のまま除電ランプ72を通過する。この除電2周目のときも除電ランプ72から光が感光体表面に照射されるが、この除電ランプ72の光による除電では、ほとんど感光体表面が除電されず、除電ランプ通過後の帯電前電位は、ほぼ、除電1周目の帯電後電位である。そして、感光体表面が、帯電ローラ70を通過するときに、再度、帯電ACを受けることで、放電によりさらに除電され、帯電ローラ70通過後の感光体の表面電位(帯電後電位)はさらに0[V]に近づく。ここでも、帯電DCバイアスは印加せず(0[V])、DC帯電電流(検知電流)は0[μA]で、測定されない。
【0074】
図7では疲労が進んで感光体を用いた場合であるが、感光体が比較的新しいうちには1周目の帯電ACの放電による除電で感光体の電位がほぼ0[V]になる場合もある。従って、感光体が比較的新しいうちは、除電動作の感光体の周回を1周とし、所定期間感光体が使用されたら、除電動作の感光体の周回を2周としてもよい。これにより、感光体使用初期の帯電電位を予測する動作の短縮化を図ることができる。感光体の疲労状況を正確に予測することは困難なため、感光体使用初期から、除電動作の感光体の周回を2周としてもよい。
【0075】
本実施形態では、除電光による除電と帯電ACバイアスの放電による除電とを組み合わせて感光体を除電している。これは、除電光だけによる除電では感光体40に残留電位が残ってしまう上に、その残留電位が使用環境や感光体40の疲労状態により変動してしまうからである。除電光による除電と帯電ACバイアスの放電による除電とを組み合わせることで、使用環境や感光体の疲労状態にかかわらず、除電後の感光体電位をほぼ0[V]にすることができる。このように、除電動作後、すなわちDC帯電電流を検知する前の感光体電位が0[V]になっているので、検知した帯電電流に後述する感光体の特性値としての静電容量係数をかけることで感光体の帯電電位を予測する精度を高めることができる。
【0076】
これは除電光だけの除電では感光体40の帯電電位が低下してくると感光層にかかる電界が小さくなってCGLで発生したホールが移動できなくなる。これに対して、除電光と帯電ACバイアスを併用することで帯電ACバイアスの電界でホールが移動できるうえに放電により感光体表面の電荷を除電できるためと考えられる。
【0077】
除電光と帯電ACバイアスを併用して除電する場合でも、高頻度で感光体40が使用されて残留電位が上昇した状態や、ホールの移動速度が低下する低温環境など、感光体の使用条件では感光体1周のみでは0[V]に除電しきれない場合がある。そのため、本実施形態では、帯電ACの印加から感光体40を2周以上回転させて感光体全面を除電している。これにより、感光体の使用条件によらず感光体を良好に0[V]に除電することができる。また、低温環境下で、かつ、高頻度で感光体使用された場合など、さらに除電がし難い使用条件では、感光体の除電を3周以上にして、通常時の除電動作よりも感光体の周回数を増加してもよい。
【0078】
感光体の除電動作が終了したら、引き続きDC帯電電流検知動作に移行する。感光体1周目におけるDC帯電電流検知動作の帯電ローラ通過前の帯電前電位は、ほぼ0[V]になっている。帯電ローラ70に帯電ACバイアスに加えて帯電DCバイアスが印加されることで感光体が帯電する。図6に示す例では、帯電DCバイアスとして-700[V]を帯電ローラ70に印加しており、感光体は-650[V]程度に帯電された。このとき感光体を0[V]から-650[V]に帯電させるために必要な電荷量がDC帯電電流として電流検知回路516aで測定され、この図6に示す例では-65[μA]程度のDC帯電電流が測定された。この感光体の帯電電位とDC帯電電流の関係は使用する感光体の特性(疲労度や摩耗)や画像形成装置のプロセス速度等により変化するものである。
【0079】
DC帯電電流検知動作のときは、帯電ACバイアスは除電のためではなく帯電のために使用しているため、感光体は、除電ランプ72の除電光のみで除電されることになる。そのため、検知2周目の除電ランプ72除電後、帯電ローラ通過前の感光体の表面は、所定(図7の例では、30[V])の残留電位となっている。そのため、検知動作2周目においては、残留電位がある状態で、感光体表面が帯電ローラ70を通過することになる。
【0080】
検知動作2周目の帯電ローラ通過後の感光体の帯電電位(帯電後電位)は1周目と変わらないが検知されるDC帯電電流は1周目よりも小さくなる。これは1周目は0[V]から帯電しているのに対して、2周目は残留電位から帯電しているためである。したがって、1周目と2周目の検知電流の差から感光体の残留電位の情報を得ることができる。
帯電DCバイアスとして-700[V]が印加された場合に感光体が-650[V]程度に帯電される。この図7に示す例では、感光体を-30[V]から-650[V]に帯電させるために必要な電荷量が2周目のDC帯電電流として測定され-62[μA]程度のDC帯電電流が測定される。
【0081】
しかしながら、単にDC帯電電流値を検知しただけではDC帯電電流値を感光体の電位に変換することができない。従来、感光体40の膜厚を、例えば、感光体の帯電時間、感光体の回転時間などから予測して感光体40の静電容量に対応した係数を、検知したDC帯電電流値に掛け合わせて、感光体の表面電位を予測するという方法が知られている。しかし、たとえ新品の感光体であっても公差内の膜厚ばらつきをもっている上に、画像形成装置内で使用されて摩耗した感光体の膜厚を予測することは困難である。そのため、従来の方法では得られる感光体電位の予測精度が低いものとなってしまう。そこで本実施形態では実機内で感光体の特性値を取得し、取得した感光体の特性値と検知したDC帯電電流とから感光体電位を予測する。
【0082】
[感光体特性の取得]
図8は、感光体特性を取得する動作のタイミングチャートである。まず、感光体40を回転させるとともに除電ランプ72を点灯させる。感光体40が所定の回転速度に達したら、帯電用電源516から帯電ACバイアスを帯電ローラ70印加して除電光と放電とで感光体40を除電する。帯電ACの印加から感光体40を1周以上回転させて感光体全面を除電したら、帯電用電源516から所定の帯電DCバイアスを感光体40が1周するまで印加してこの時のDC帯電電流を電流検知回路516aで検知する。この除電と帯電のサイクルを、帯電用電源516から印加する上記帯電DCバイアスの値を変化させて繰り返す。本実施形態では帯電DCバイアスを-400[V]、-500[V]、-600[V]、-700[V]、-800[V]と5段階の電圧を用いている。画像形成装置には転写装置があるが、感光体電位と帯電電流の関係を乱す原因となるためDC帯電電流を検知する際には転写バイアスは印加しない。
【0083】
感光体特性の取得には、残留電位の情報は不要のため動作時間を短縮する目的で、感光体特性を取得する動作におけるDC帯電電流検知は、感光体1周としている。また、DC帯電電流検知前の感光体除電も感光体2周以上としてもいいし、動作時間短縮のために感光体1周としてもよい。これは、この動作で取得する感光体特性は後述するように、DC帯電電流の変化量に対する表面電位の変化量(静電容量係数という)に相当するものである。残留電位は短期間に大きく変化することはないため多少残留電位が残っている状態でも上記変化量の算出には影響がないためである。
【0084】
[感光体特性(静電容量係数)の算出]
図9は横軸に検知した帯電電流[μA]、縦軸に印加した帯電DCバイアス×α[V]をプロットしたものである。横軸には、帯電DCバイアスに-400[V]印加した時の帯電電流をI400であらわしている。
実際の感光体40の帯電電位を知ることはできないが帯電DCバイアスが-a[V]、-b[V]としたときの感光体40の帯電電位の差は、下記(式1)で表すことができる。
感光体の帯電電位の差=-(a-b)×α[V] (式1)
【0085】
上記αは、0.9~1.0程度の値を取り、感光体40や帯電ローラ70の特性で決まり、予め実験で求めておくことができる。したがって、図9のプロットしたときの傾きを求めると、DC帯電電流の変化量に対する感光体の帯電電位の変化量を知ることができる。
【0086】
この傾き(DC帯電電流の変化量に対する感光体電位の変化量)を静電容量係数[V/μA]と呼ぶことにする。この静電容量係数は感光体の静電容量の逆数に比例した値となるので感光層の膜厚が薄いほうが小さな値となる。この静電容量係数が、感光層の膜厚のばらつきや長期間使用した場合の感光層の摩耗による静電容量の変化を反映したものとなり、感光体特性を表すものといえる。また、感光体の疲労で、感光体内のトラップ解消のためにより多くの電流が必要になる。この影響でも、帯電電流の変化量に対する帯電電位の変化量である静電容量係数が異なるものとなる。
【0087】
メイン制御部500は、5段階の帯電DCバイアスと、各帯電DCバイアスに対応する検知したDC帯電電流値とから、静電容量係数として傾きを求め、この求めた傾きを静電容量係数としてメモリなどの記憶手段に記憶する。
【0088】
[取得したDC帯電電流値に基づく感光体表面の予測帯電電位の算出]
メイン制御部500は、図6に示した感光体の表面電位を予測するためのDC帯電電流値の取得動作で取得したDC帯電電流値と、感光体特性の取得動作により取得した静電容量係数とから、帯電電位予測値を算出する。帯電電位予測値を算出するための予測式としては、次の式(2)を用いることができる。
帯電電位予測値=DC帯電電流検知値×静電容量係数+β (式2)
ここでβは光と放電で感光体を除電した後の残留電位で、光と放電で除電しても感光体の電位が完全に0にならない場合があり、それを補正するための項である。完全に0とならないのは高圧電源のAC波形の歪みによる影響と考えられ、高圧電源の性能で決まるものなので、これもあらかじめ実験で求めておけばよい。
【0089】
本実施形態では、光と放電で感光体を除電した除電後、すなわち帯電前の感光体電位をほぼ0[V]にしているので、検知したDC帯電電流から算出される感光体の帯電電位を予測する精度が良くなる。
【0090】
感光体表面の残留電位予測値は、(式2)における「DC帯電電流検知値」として、検知動作1周目のDC帯電電流値と検知動作2周目のDC帯電電流値との差分値を用いることで、算出できる。1周目のDC帯電電流値は、帯電前の感光体電位をほぼ0[V]にしているので、検知した感光体1周目のDC帯電電流値と感光体2周目のDC帯電電流値から精度よく残留電位を予測することができる。
【0091】
メイン制御部500は、算出した帯電電位予測値と、残留電位予測値を、メモリなどの記憶手段に記憶する。そして、作像時に記憶手段から算出した帯電電位予測値を読み出し、この読み出した帯電電位予測値に基づいて、作像時における帯電DCバイアスを求める。記憶手段に記憶した残留電位予測値は、現像ポテンシャルなどの画像調整に用いられる。
【0092】
[作像時の帯電DCバイアスの求め方]
上記帯電電位を予測する動作時に印加した帯電DCバイアスと、上記式2により算出した感光体の予測帯電電位と、上記した係数αとが記憶手段に記憶してある。作像時においては、メイン制御部500は、記憶手段に記憶された帯電DCバイアスと、上記式2により算出した感光体の予測帯電電位と、上記した係数αと、作像時の帯電電位の目標値とから、帯電ローラ70に印加する帯電DCバイアスを算出する。帯電電位を予測する動作時に印加した帯電DCバイアスをVd1、上記帯電電位の予測値をVy、作像時の帯電電位の目標値をVtとすると、作像時に印加する帯電ローラ70に印加する帯電DCバイアスVdは、以下のように求められる。すなわち、上記式(1)に示した、帯電DCバイアスと、感光体の帯電電位との関係から、
(Vd1-Vd)×α=(Vy-Vt) (式3)
となる。従って、
Vd=[(Vy-Vt)/α]-Vd1 (式4)
となる。
【0093】
例えば、帯電電位を予測する動作時に印加した帯電DCバイアスVd1が、-700[V]、-700V印加時の帯電電位の予測値Vyが-675[V]、作像時の帯電電位の目標値Vtが-600Vのときは、次のようにして、作像時に印加する帯電ローラ70に印加する帯電DCバイアスVdが求められる。すなわち、帯電DCバイアスVdは、(-700-Vd)×α=-(675―600)=-75の関係から、Vd=(75/α)-700[V]である。
なお、帯電電位の予測値Vy:-675[V]は、帯電DCバイアスVd1=-700[V]を印加したときに検知したDC帯電電流値と、上記感光体特性を取得するための動作により取得した静電容量係数と、上記(式2)とにより算出された値である。
【0094】
メイン制御部500は、作像時は、算出した帯電DCバイアスとなるように帯電用電源516を制御する。
【0095】
[残留電位予測値に基づく画質調整]
メイン制御部500は、記憶手段に記憶した残留電位予測値に基づいて、現像ローラに印加する現像バイアス、露光量を調整する。また、作像時の帯電電位の目標値Vtなどの作像条件を調整する。目標値Vtが調整されることで、作像時のDC帯電バイアスも調整される。従来は、感光体表面移動における除電ランプ72から帯電ローラ70までの間、または露光から現像の間に感光体の表面電位を検出する電位センサを設け、この電位センサで感光体の残留電位や帯電電位を検知し、現像バイアス、露光量、帯電電位の目標値Vtなどの作像条件を調整していた。しかし、本実施形態では、電位センサを設けずに、感光体の残留電位や帯電電位を把握でき、現像バイアス、露光量、帯電電位の目標値Vtなどの作像条件を調整できる。これにより、部品点数を削減でき、装置の小型化や装置のコストダウンを図ることができる。また、光と放電で感光体を除電した除電後、すなわち帯電前の感光体電位をほぼ0[V]にした状態から感光体表面を帯電したときのDC帯電電流と、光のみで除電した状態から感光体表面を帯電したときのDC帯電電流とから、残留電位が予測されるので、精度よく残留電位が予測される。従って、良好に作像条件を調整でき、良好な画像を得ることができる。
【0096】
また、実機内で静電容量係数を取得することで電流検知回路516aの検知誤差をキャンセルすることもできる。これは次の理由による。感光体40が一度本体にセットされると感光体40を交換しない限り感光体40と電流検知回路516aの組み合わせは同じなる。よって、電流検知回路516aの検知誤差を含んで算出された静電容量係数[V/μA]に対して、同じ電流検知回路516aの誤差を含んだ検知電流[μA]をかけて帯電電位[V]を求めることで、電流検知誤差は相殺されるのである。
【0097】
本実施形態では、帯電電位の予測及び残留電位の予測、帯電電位の予測結果を用いた作像時の帯電電圧の補正、残留電位の予測結果を用いた作像条件の補正は、感光体特性の取得動作よりも高頻度で実行する。いわゆるプロセスコントロールの一貫として、朝一番のカラー複写機の電源投入後や、稼働中の複写枚数1000枚毎とに実行する。
【0098】
帯電電位および残留電位の予測は1度の電流検知動作だけなので短時間ですむのに対して、静電容量係数を求めるのは電流検知動作を繰り返す必要があるため時間がかかる。そこで、通常の調整は帯電電位の検知のみを行い、静電容量係数の算出が必要と判断された場合のみ静電容量係数を算出するようにする。必要と判断される場合を通常の調整よりも頻度が低い真に実行が必要に場合に限定する。これにより、短い調整時間で感光体の帯電電位を精度よく予測ができるようにする。静電容量係数の算出が必要な場合とは次のような場合が挙げられる。
【0099】
[感光体が交換された場合]
前述したように感光体40ごとに膜厚の個体差があるので、感光体40を交換した時は静電容量係数の算出を実行する必要がある。カスタマーエンジニアが感光体40の交換を実施する画像形成装置ではカスタマーエンジニアが感光体40を交換した際に手動で静電容量係数の算出動作を実行すればよい。この手動による実行指示を、操作表示部515を用いて行わせるようにすることができる。感光体40を含むプロセスカートリッジをユーザーが交換するような画像形成装置ではプロセスカートリッジに搭載したメモリに新品情報を記憶させておき、本体に装着された時に静電容量係数の算出を自動実行させることもできる。
【0100】
[感光体が所定の量を超えて使用された場合]
繰り返し使用されるうち感光体40の感光層は徐々に摩耗するので静電容量が変化する。そのため感光体40の回転時間や出力枚数等を記憶しておき、感光層の摩耗が進んでいると予測される量に達したら、静電容量係数の算出を実行することが望ましい。感光層の摩耗の進み方は感光体40の処方やクリーニング条件などに大きく影響されるので、それぞれの装置に合わせて適宜設定すればよい。また、感光層が摩耗とは別に経時使用による感光体の疲労で、感光体内のトラップ解消のためにより多くの電流が必要になることがある。よって感光層の摩耗が少ないような感光体を用いる装置でも、所定の量を超えて使用された場合に静電容量係数の算出を実行することが望ましい。
【0101】
[使用されている環境が変化した場合]
実験結果から同じ感光体40であっても使用する環境が異なると算出される静電容量係数に差が発生することが判明した。この現象は感光体40の静電容量そのものが変化しているわけではなく、帯電用電源(高圧電源)で検知しているのは帯電ローラ70を流れている電流であり、感光体内部を流れる電流(CGLで発生したホールが表面電荷を打ち消す流れ)までは検知できていない。このため、環境によりホールの移動速度の違いにより帯電電流と帯電電位の関係に差が生じるのではないかと推定している。画像形成装置に設置された温湿度センサで使用環境をモニタし、前回静電容量係数を算出したときから所定量以上(例えば絶対湿度で5[g/m]以上など)変化した場合には静電容量係数の算出を再実行することが望ましい。
【0102】
[故障等により高圧電源が交換された場合]
ほとんど発生しないケースではあるが、感光体40と電流検知回路516aの組み合わせで静電容量係数を算出しているので、故障等の理由で帯電用電源(高圧電源)を交換した場合には静電容量係数を算出しなおすことが望ましい。この場合にはカスタマーエンジニアが高圧電源を交換することになるので、カスタマーエンジニアが手動で実行すればよい。
【0103】
また、本実施形態では、DC帯電電流検知動作において、1周目のDC帯電電流と、2周目のDC帯電電流とを検知し、帯電電位の予測と残留電位の予測とを行っているが、帯電電位の予測のみ行うようにしてもよい。
【0104】
図10は、帯電電位の予測のみを行うDC帯電電流値の取得動作のタイミングチャートである。図10に示すように、帯電電位の予測のみを行う場合は、帯電ACの印加から感光体40を1周以上回転させて感光体全面を光と放電とで除電したら、帯電用電源516から所定の帯電DCバイアス(例えば-700[V])を感光体40が1周するまで印加してこの時の帯電電流を検知する。このように、帯電電位の予測のみ行うようにすることで、DC帯電電流検知動作が感光体1周で済みより短時間でDC帯電電流値検知動作を行うことができる。
【0105】
また、本実施形態では、帯電ローラ70で放電による感光体の除電を行っているが、帯電ローラ70とは別に、除電用帯電部材を設けてもよい。
【0106】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
感光体40と、感光体40を帯電させる帯電ローラ70などの帯電部材と、感光体40を除電する除電手段(本実施形態では、除電ランプ72と帯電ローラ70が該当する)とを備え、静電容量係数などの感光体40の特性値と、除電手段により除電した後の帯電部材に流れる電流値とに基づいて、帯電部材による帯電後の感光体40の表面電位を予測し、予測した感光体40の表面電位に基づいて、前記帯電部材に印加する帯電バイアスを制御する画像形成装置において、除電手段は、光と放電とで前記感光体の表面を除電する。
これによれば、光と放電とで感光体を除電するので、光のみで感光体を除電する場合に比べて、感光体を良好に除電することができる。よって、光のみで感光体を除電する場合に比べて、帯電部材に流れる電流が、感光体の残留電位の影響を受けるのを抑制でき、帯電部材に流れる電流値から、感光体の表面電位を精度よく予測することが可能となる。
【0107】
(態様2)
態様1において、光と放電とで感光体40の表面を除電した後の感光体40を帯電するときに帯電ローラ70などの帯電部材に流れる電流値と、光のみで感光体表面を除電した後の感光体40を帯電部材により帯電するときに帯電部材に流れる電流値と、静電容量係数などの感光体40の特性値とに基づいて、光のみで感光体40の表面を除電した後の感光体40の残留電位を予測し、予測した感光体の残留電位に基づいて、作像条件を調整する。
これによれば、実施形態で説明したように、精度よく感光体の残留電位を予測することができる。よって、良好に作像条件を調整でき、良好な画像を得ることができる。
【0108】
(態様3)
態様1または2において、光と放電による感光体に対する除電動作は、感光体2周以上行う。
これによれば、実施形態で説明したように、感光体の使用条件によらず感光体をほぼ0Vに除電することができる。
【0109】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、除電手段による除電と帯電部材による帯電のサイクルを繰り返し実施して静電容量係数などの感光体の特性値を取得する動作と、除電手段による除電と帯電部材による帯電のサイクルを1度だけ実施して感光体の帯電電位を予測する動作とを実行可能である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、感光体の経時での特性変化による帯電電位の予測精度の悪化を抑制できる。
【0110】
(態様5)
態様4において、静電容量係数などの感光体の特性値を取得する動作は、光と放電で除電した後の感光体を帯電するときに前記帯電部材に流れる電流値を計測する動作を、帯電部材に印加する帯電バイアスを変更して複数回実施する動作である。
これによれば、実施形態で説明したように、感光体の経時での特性変化による帯電電位の予測精度の悪化を抑制できる。
【0111】
(態様6)
態様4または5において、感光体40の特性値を取得する動作は、特定の条件を満たす場合に実行する。
これによれば、実施形態について説明したように、ダウンタイムできるだけ抑えて、帯電電位の予測精度の低下を抑えることができる。
【0112】
(態様7)
態様6において、特定の条件は、感光体40の帯電電位を予測する動作よりも発生頻度が少ない条件である。
これによれば、実施形態について説明したように、ダウンタイムできるだけ抑えて、帯電電位の予測精度の低下を抑えることができる。
【0113】
(態様8)
態様6または7において、特定の条件を満たす場合とは、感光体が交換された場合である。
れによれば、上記実施形態について説明したように、感光体の製造ばらつきにより感光体特性には個体差があるため、感光体を交換した場合には感光体の特性値を取得することで帯電電位の予測精度を維持することができる。
【0114】
(態様9)
態様6または7において、特定の条件を満たす場合とは、使用する環境が所定量以上変化した場合である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、使用されている環境により帯電電流と帯電電位の関係が変化するため、使用環境が変化した場合には感光体の特性値を取得することで帯電電位の予測精度を維持することができる。
【0115】
(態様10)
態様6または7において、特定の条件を満たす場合とは、感光体が所定量以上使用された場合である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、長期間使用されて感光体が摩耗すると感光体の静電容量が変化する。また、感光体の疲労により、感光体内のトラップ解消のためにより多くの電流が必要になる。これらにより、帯電電流と帯電電位の関係が変化する。定期的に感光体の特性値を取得することで帯電電位の予測精度を維持することができる。
【0116】
(態様11)
態様6または7において、特定の条件を満たす場合とは、帯電ローラ70などの帯電部材に流れる電流値を検知する電流検知回路516aなどの電流検知手段を備え、帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源516を交換した場合である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、感光体と高帯電用電源に搭載された電流検知回路の組み合わせで感光体の特性値を取得しているので、高圧電源が交換された場合にも、帯電電位の予測精度を維持するために感光体の特性値を再取得することが望ましい。
【0117】
(態様12)
態様1乃至11いずれかにおいて、静電容量係数などの感光体40の特性値は、帯電電流の変化量に対する帯電電位の変化量である。
これによれば、感光体の帯電電位を精度よく予想することができる。
【0118】
(態様13)
態様1乃至12いずれかにおいて、帯電ローラ70などの帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源516を備え、帯電用電源516は直流と交流とを発生できるものであり、除電手段の放電による感光体40の表面の除電は、帯電用電源516の交流バイアスを帯電部材に印加することで行う。
これによれば、帯電ローラ70などの帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源516を用いて、感光体の表面を除電するので、帯電部材に帯電バイアスを印加する帯電用電源516とは別に、感光体の表面を放電により除電するための電源を設ける場合に比べて、装置のコストアップを抑えることができる。
【符号の説明】
【0119】
11 :現像バイアス電源
21 :露光装置
40 :感光体
70 :帯電ローラ
72 :除電ランプ
82 :転写ローラ
101 :芯金
102 :樹脂層
103 :ギャップ保持部材
201 :導電性支持体
202 :下引き層
203 :電荷発生層
204 :電荷輸送層
205 :保護層
500 :メイン制御部
510 :プロセスモータ
511 :現像バイアス電源
512 :転写バイアス電源
513 :レジストクラッチ
515 :操作表示部
516 :帯電用電源
516a :電流検知回路
517 :電源
518 :光書込制御部
519 :画像情報受信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【文献】特許第5791350号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10