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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】チャンネル付きウインドウガラス
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20240222BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E05F11/38 E
B60J1/17 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020138551
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034715
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 正行
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-11823(JP,U)
【文献】特開2019-64578(JP,A)
【文献】特開平8-80795(JP,A)
【文献】米国特許第5513468(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38
B60J 1/12-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、前記ウインドウガラスの下縁部に装着され、前記ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、
前記チャンネルは、弾性部材を介して前記ウインドウガラスに装着され、
前記弾性部材は、前記ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、前記ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、
前記底部の硬度が前記第1壁部および前記第2壁部の硬度よりも高い、チャンネル付きウインドウガラス。
【請求項2】
JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータで前記硬度を測定した場合、前記底部は、前記第1壁部、または前記第2壁部よりも1.5倍以上の硬度を有する、
請求項1に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項3】
JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータで前記硬度を測定した場合、前記第1壁部、または前記第2壁部のショアA硬度が、30~100である、請求項1または2に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項4】
前記チャンネルは断面U字形状であり、
前記弾性部材は、前記チャンネルの内側において、間隔をあけて複数装着されており、
複数の前記弾性部材と前記弾性部材との間において、前記ウインドウガラスと前記チャンネルとが接着剤で接着されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項5】
車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、前記ウインドウガラスの下縁部に装着され、前記ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、
前記チャンネルは、弾性部材を介して前記ウインドウガラスに装着され、
前記弾性部材は、前記ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、前記ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、
前記底部の厚さが前記第1壁部および前記第2壁部の厚さよりも薄い、チャンネル付きウインドウガラス。
【請求項6】
前記第1壁部、または前記第2壁部の厚みは1.5mm以上3.0mm以下である、請求項5に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項7】
前記底部の厚みは0.5mm以上2.5mm未満である、請求項5または6に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項8】
前記チャンネルは断面U字形状であり、
前記弾性部材は、前記チャンネルの内側において、間隔をあけて複数装着されており、
複数の前記弾性部材と前記弾性部材との間において、前記ウインドウガラスと前記チャンネルとが接着剤で接着されている請求項5から7のいずれか1項に記載のチャンネル付きウインドウガラス。
【請求項9】
車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、前記ウインドウガラスの下縁部に装着され、前記ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、
前記チャンネルは、弾性部材を介して前記ウインドウガラスに装着され、
前記弾性部材は、前記ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、前記ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、
前記底部が補強材により補強され
前記チャンネルは断面U字形状であり、
前記弾性部材は、前記チャンネルの内側において、間隔をあけて複数装着されており、
複数の前記弾性部材と前記弾性部材との間において、前記ウインドウガラスと前記チャンネルとが接着剤で接着されている、チャンネル付きウインドウガラス。
【請求項10】
前記補強材は、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、前記第1壁部、または前記第2壁
部よりも硬質な樹脂、ガラスフィラーのいずれか1以上である、請求項9に記載のチャン
ネル付きウインドウガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンネル付きウインドウガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに摺動可能に組み付けられたウインドウガラスは、ドアパネルの内部に配置された昇降装置(レギュレータとも言う。)の駆動力により昇降移動される。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたドアガラスは、その下縁部の一部に断面U字状のラバーを介して断面U字状の金属製のチャンネルが取り付けられており、このチャンネルがレギュレータに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-31120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなチャンネル付きのウインドウガラスは、レギュレータによってウインドウガラスが上端位置に上昇した場合に、ウインドウガラスの下縁部を除く周縁部、すなわち、ウインドウガラスの前縁部、後縁部、上縁部が、ドアパネルの窓枠に寸法通りに納まることが要求される。
【0006】
しかしながら、特許文献1のようなチャンネル付きウインドウガラスは、ウインドウガラスの下縁部にチャンネルを圧入して取り付けた場合に、ラバー(以下、弾性部材と言う。)がウインドウガラスの下縁部の端面に押圧されて弾性変形する場合がある。そうすると、チャンネル(特にレギュレータとの連結部分)とウインドウガラスとの相対的な位置関係がバラついてしまうので、ウインドウガラスに対するチャンネルの取り付け精度が悪くなり、ウインドウガラスの窓枠への納まりに影響を与える場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、弾性部材を備えたチャンネルをウインドウガラスに精度よく取り付けることができるチャンネル付きウインドウガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するため、本発明のチャンネル付きウインドウガラスは、車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、ウインドウガラスの下縁部に装着され、ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、チャンネルは、弾性部材を介してウインドウガラスに装着され、弾性部材は、ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、底部の硬度が第1壁部および第2壁部の硬度よりも高い。
【0009】
本発明の目的を達成するため、本発明のチャンネル付きウインドウガラスは、車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、ウインドウガラスの下縁部に装着され、ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、チャンネルは、弾性部材を介してウインドウガラスに装着され、弾性部材は、ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、底部の厚さが第1壁部および第2壁部の厚さよりも薄い。
【0010】
本発明の目的を達成するため、本発明のチャンネル付きウインドウガラスは、車両のドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスと、ウインドウガラスの下縁部に装着され、ウインドウガラスを昇降させる昇降装置と連結されるチャンネルと、を有するチャンネル付きウインドウガラスであって、チャンネルは、弾性部材を介してウインドウガラスに装着され、弾性部材は、ウインドウガラスの下縁部の車外側面に当接される第1壁部と、車内側面に当接される第2壁部と、ウインドウガラスの端面に当接される底部と、を有し、底部が補強材により補強され、前記チャンネルは断面U字形状であり、前記弾性部材は、前記チャンネルの内側において、間隔をあけて複数装着されており、複数の前記弾性部材と前記弾性部材との間において、前記ウインドウガラスと前記チャンネルとが接着剤で接着されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性部材を備えたチャンネルをウインドウガラスに精度よく取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のチャンネル付きウインドウガラスが搭載された車両の要部右側面図
図2図1に示したチャンネル付きウインドウガラスの構成を示した正面図
図3図2に示したチャンネル付きウインドウガラスの3―3線に沿う断面図
図4図2に示したチャンネル付きウインドウガラスの4―4線に沿う断面図
図5図3に示した第1態様の弾性部材の拡大断面図
図6】第2態様の弾性部材の拡大断面図
図7】第3態様の弾性部材の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係るチャンネル付きウインドウガラスの実施形態を説明する。
【0014】
なお、本明細書において、方向と位置を表わす「上」「下」「車内」「車外」「前方」「後方」は、チャンネル付きウインドウガラスが車両に搭載された場合の「上」「下」「車内」「車外」「前方」「後方」を意味する。
【0015】
図1には、実施形態に係るチャンネル付きウインドウガラス10が車両200に搭載された一例が示されている。図2は、図1のチャンネル付きウインドウガラス10の構成を示した正面図である。なお、図1および図2では、車両200の前方を矢印Aで示し、後方を矢印Bで示している。
【0016】
図1に示すチャンネル付きウインドウガラス10は、一例として、フロントサイドガラスに適用されたものであり、車両200のフロントサイドドア202に組み付けられる。また、チャンネル付きウインドウガラス10は、フロントサイドドア202のドアパネル204の内部に配置された昇降装置50(図2参照)に連結され、昇降装置50からの駆動力により昇降移動されてフロントサイドドア202の窓用開口部206を開閉する。
【0017】
図2に示す昇降装置50は、モータ52と、ガイドレール54と、スライダ56と、第1ワイヤ58と、第2ワイヤ60と、ドラム62とを有している。また、昇降装置50と協同して、チャンネル付きウインドウガラス10の昇降をガイドするフロントサッシュ64およびリヤサッシュ66がフロントサイドドア202(図1参照)に設けられている。
【0018】
ガイドレール54は、その長手方向がチャンネル付きウインドウガラス10の摺動方向に沿うように配置される。スライダ56は、チャンネル付きウインドウガラス10に連結される部材であり、ガイドレール54に対しガイドレール54の長手方向に沿って摺動自在に係合されている。第1ワイヤ58は、一端がドラム62に連結され、他端がスライダ56に連結されている。第2ワイヤ60は、一端がドラム62に連結され、他端がスライダ56に連結されている。フロントサッシュ64は、ウインドウガラス12の前縁部12Aを摺動自在に支持し、リヤサッシュ66は、ウインドウガラス12の後縁部12Bを摺動自在に支持している。
【0019】
上記の昇降装置50によれば、モータ52によってドラム62が一方向に回転されると、第1ワイヤ58がドラム62に巻き取られ、第2ワイヤ60がドラム62から送り出される。これにより、スライダ56がガイドレール54に沿って上昇することにより、チャンネル付きウインドウガラス10が、フロントサッシュ64およびリヤサッシュ66にガイドされながら上昇する。
【0020】
また、モータ52によってドラム62が他方向に回転されると、第1ワイヤ58がドラム62から送り出され、第2ワイヤ60がドラム62に巻き取られる。これにより、スライダ56がガイドレール54に沿って下降することにより、チャンネル付きウインドウガラス10が、フロントサッシュ64およびリヤサッシュ66にガイドされながら下降する。
【0021】
図3は、図2に示したチャンネル付きウインドウガラス10の3―3線に沿う断面図である。また、図4は、図2に示したチャンネル付きウインドウガラス10の4-4線に沿う断面図である。すなわち、図3および図4は、車両200の後方側から前方側を見たときのチャンネル付きウインドウガラス10の断面図であって、チャンネル付きウインドウガラス10の摺動方向における断面図である。
【0022】
実施形態では、チャンネル付きウインドウガラス10を構成するウインドウガラス12として、単板のガラス板を例示して説明する。
【0023】
ウインドウガラス12は、正面視(図2参照)で略台形状に構成されている。また、ウインドウガラス12は、車両200(図1参照)に取り付けられた状態で、摺動方向における断面形状が湾曲形状を有している(図3および図4参照)。また、ウインドウガラス12は、その周縁部を構成する前縁部12A、後縁部12B、上縁部12Cおよび下縁部12Dを有している。
【0024】
ウインドウガラス12としては、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでも、製造コスト、成形性の点からソーダライムガラスが特に好ましい。
【0025】
ウインドウガラス12が無機ガラスである場合、ウインドウガラス12は、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。強化ガラスとしては、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0026】
強化ガラスが物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)である場合は、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させるなど、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。強化ガラスが化学強化ガラスである場合は、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、紫外線または赤外線を吸収するガラスを用いてもよい。更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。また、ウインドウガラス12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ウインドウガラス12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0027】
ウインドウガラス12が有機ガラスである場合、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0028】
ウインドウガラス12は、例えば、2枚以上のガラス板を、中間膜を介して接着された合わせガラスであってもよい。合わせガラスの中間膜は、一例としてPVB(poly vinyl butyral:ポリビニルブチラール)製またはEVA(ethylene vinyl acetate:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)製などの公知の膜が用いられる。合わせガラスの中間膜は、透明であってもよいし、着色された中間膜であってもよい。また、中間膜は2層以上であってもよい。
【0029】
ウインドウガラス12の厚みは特に限定されないが、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。また、ウインドウガラス12が1枚のガラス板である場合、ウインドウガラス12は風冷強化ガラスであることが好ましい。ウインドウガラス12が1枚の風冷強化ガラスである場合、ウインドウガラス12の厚みは2.0mm以上5.0mmであることが好ましい。
【0030】
一方、ウインドウガラス12が合わせガラスである場合、ウインドウガラス12を車両に取り付けた場合に外側に位置するガラスの厚みは1mm以上3mm以下であることが好ましい。外側に位置するガラスの厚みが1mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。外側に位置するガラスの厚みは、1.3mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.4mm以上2.6mm以下が更に好ましい。また、ウインドウガラス12を車両に取り付けた場合に内側に位置するガラスの厚みは、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。内側に位置するガラスの厚みが0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることによりの質量が大きくなり過ぎない。
【0031】
また、ウインドウガラス12が合わせガラスである場合、ウインドウガラス12を車両に取り付けた場合に外側に位置するガラスの厚みと、内側に位置するガラスの厚みとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。ウインドウガラス12を車両に取り付けた場合に外側に位置するガラスの厚みと、内側に位置するガラスの厚みとが同じである場合、ガラスの厚みが、それぞれ1.0mm以上1.6mm以下であれば、ウインドウガラス12の軽量化と遮音性を両立させることができ、好ましい。なお、内側に位置するガラスの厚みが1.0mm以下の場合は、内側に位置するガラスが化学強化ガラスであってもよい。内側に位置するガラスの厚みが1.0mm以下であり、かつ化学強化ガラスであれば、ドアパネルを閉める際の衝撃や、ウインドウガラス12が摺動する際に窓枠とウインドウガラス12との間に異物(鍵や枝など)が挟まった場合や、ガラスと窓枠の間に砂等が入り込んだ場合であっても、内側に位置するガラスの表面に傷が入りにくくなり、好ましい。内側に位置するガラスが化学強化ガラスである場合、ガラス表面の圧縮応力値は300MPa以上、圧縮応力層の深さは2μm以上であることが好ましい。
【0032】
図2図3および図4に示すように、ウインドウガラス12の下縁部12Dの一部には、チャンネル14が下縁部12Dに沿った方向に備えられている。チャンネル14は、例えば、金属製であってもよく樹脂製であってもよい。樹脂製の場合、POM(polyacetal:ポリアセタール樹脂)、PBT(polybutyleneterephthalate:ポリブチレンテレフタレート樹脂)などのエンジニアリングプラスティック、またはこれらのエンジニアリングプラスティックにグラスファイバーを混在させた樹脂、若しくはPOMと比較して硬度の低いPP(polypropylene:ポリプロリレン樹脂)またはPVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性エラストマを例示できる。
【0033】
チャンネル14は、チャンネル本体16と連結部18、18とを有する。
【0034】
チャンネル本体16は、図3および図4に示すように、断面U字形状に形成されてウインドウガラス12の下縁部12Dに装着される。具体的に説明すると、チャンネル本体16は、互いに対向する車外側の側壁20と車内側の側壁22とを有し、かつ側壁20と側壁22のそれぞれの下部を連結する底壁24を有する。この底壁24は、ウインドウガラス12の下縁部12Dにチャンネル本体16が装着された場合に、下縁部12Dの端面13Cと対向される。このように構成されたチャンネル本体16は、後述する第1態様の弾性部材70(図3参照)を介してウインドウガラス12の下縁部12Dに装着される。
【0035】
連結部18、18は、チャンネル本体16の長手方向において離間して配置される。この連結部18、18は、板状に形成されるとともに、底壁24の下面28から側壁20、22側とは反対側に延設されている。これにより、連結部18、18は、チャンネル本体16がウインドウガラス12の下縁部12Dに装着された場合、下縁部12Dから下方に延設される。また、連結部18、18には、それぞれ連結孔30が備えられており、この連結孔30に挿入される図2のボルト32をスライダ56に締結することにより、チャンネル14がスライダ56に連結される。
【0036】
次に、第1態様の弾性部材70について、図3図5に示す弾性部材70の拡大断面図を参照して説明する。
【0037】
図3および図5に示すように、弾性部材70は、ウインドウガラス12の下縁部12Dの車外側面13Aに当接される第1壁部72と、車内側面13Bに当接される第2壁部74と、ウインドウガラス12の下縁部12Dの端面13Cに当接される底部76と、を有し、一例として断面U字形状に構成されている。このように構成された第1態様の弾性部材70は、以下に説明する2つの機能を併せ持っている。
【0038】
<第1の機能>
第1態様の弾性部材70は、チャンネル本体16がウインドウガラス12の下縁部12Dに装着された場合、チャンネル本体16とウインドウガラス12の下縁部12Dとの間で弾性変形することで、チャンネル本体16を下縁部12Dに確実に装着させる機能を有する。このため、第1壁部72と第2壁部74とが、一例として、オレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO:Thermoplastic Olefinic Elastomer)によって構成されている。これにより、弾性変形する第1壁部72と第2壁部74とによって、チャンネル本体16がウインドウガラス12の下縁部12Dに確実に装着される。なお、この第1の機能は、弾性部材70が持つ本来の機能である。
【0039】
<第2の機能>
第1態様の弾性部材70は、チャンネル本体16がウインドウガラス12の下縁部12Dに装着された場合に、つまり、底部76が端面13Cに押圧された場合に、底部76の弾性変形を抑えることで、チャンネル本体16を下縁部12Dに精度よく装着させる機能を有する。このため、底部76は、一例として、オレフィン系熱可塑性エラストマよりも硬度の高いエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM:Ethylene Propylene Dine Monomer)によって構成されている。また、底部76は、第1壁部72と第2壁部74と同じオレフィン系熱可塑性エラストマに、炭素繊維やガラス繊維などの繊維を含有させて、硬度を高くしたオレフィン系熱可塑性エラストマでもよい。これにより、弾性部材70を備えたチャンネル14をウインドウガラス12に精度よく取り付けることができる。この機能は、弾性部材70が持つ特有の機能である。
【0040】
なお、第1態様の弾性部材70は、硬度が異なるオレフィン系熱可塑性エラストマを用いた2色押出成形法により製造されてもよいし、オレフィン系熱可塑性エラストマとエチレンプロピレンジエンゴム等の異なる種類の樹脂を、それぞれ押出成形で成形した後に組み合わせてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマとエチレンプロピレンジエンゴム等の異なる種類の樹脂を2色押出成形法により製造されてもよい。なお、底部76は、ウインドウガラス12の下縁部12Dの端面13Cが当接する部位のみに設けられていてもよいし、部分的にウインドウガラス12の車外側面13Aや車内側面13Bに当接する部位を有していてもよい。
【0041】
次に、上記の如く構成されたチャンネル14をウインドウガラス12に装着する手順について説明する。
【0042】
まず、ウインドウガラス12の下縁部12Dの端面13Cと弾性部材70の底部76とを対向させる。次に、端面13Cと底部76とを互いに近づく方向に移動させて、チャンネル本体16に対するウインドウガラス12の下縁部12Dの圧入動作を開始する。そうすると、まず、第1壁部72と第2壁部74とが車外側面13Aと車内側面13Bとに押圧されて弾性変形していく。そして、端面13Cと底部76とが当接すると、硬度の高い底部76により圧入動作が規制され、このときに圧入動作を停止する。これにより、チャンネル14が硬度の高い底部76を基準としてウインドウガラス12に装着される。
【0043】
したがって、実施形態のチャンネル付きウインドウガラス10によれば、弾性部材70は、第1壁部72と第2壁部74と底部76とを有し、底部76の硬度が第1壁部72および第2壁部74の硬度よりも高いので、弾性部材70を備えたチャンネル14をウインドウガラス12に精度よく取り付けることができる。
【0044】
以下、第1壁部72、第2壁部74および底部76の好ましい硬度について説明する。
【0045】
一例として、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータで硬度を測定した場合、底部76は、第1壁部72または第2壁部74よりも1.5倍以上の硬度を有することが好ましい。この場合、第1壁部72または第2壁部74のショアA硬度として60を例示でき、底部76のショアA硬度として90以上を例示できる。このような硬度差を持たせることにより、既述した第1および第2の機能を併せ持つ弾性部材70が得られる。
【0046】
なお、上記の場合において、ショアA硬度60のオレフィン系熱可塑性エラストマと、ショアA硬度90のエチレンプロピレンジエンゴムとにそれぞれ1kNの圧力を付与した場合、弾性変形量の比はおおよそ2:1であった。
【0047】
また、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータで硬度を測定した場合、第1壁部72または第2壁部74のショアA硬度が、30~100であることが好ましい。このような硬度とすることにより、既述の第1の機能を効果的に備える弾性部材70が得られる。
【0048】
一方、弾性部材70は、図3および図4に示すように、チャンネル14の内側において、間隔をあけて複数(例えば2つ)装着されており、複数の弾性部材70と弾性部材70との間において、図4に示すように、ウインドウガラス12とチャンネル14とが接着剤80で接着されていることが好ましい。これにより、ウインドウガラス12とチャンネル14とを、底部76を基準とした相対位置で確実に固定できる。なお、図3では、チャンネル本体16の内側のうち、連結部18、18が設けられた位置に弾性部材70をそれぞれ配置した例を示しているが、弾性部材70の配置位置はこれに限定されるものではない。
【0049】
次に、他の態様の弾性部材について説明する。
【0050】
図6は、第2態様の弾性部材90の拡大断面図である。なお、弾性部材90を説明するに際し、弾性部材70と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0051】
図6に示すように、第2態様の弾性部材90は、底部92の厚さが第1壁部72および第2壁部74の厚さよりも薄く構成されている。また、底部92は、第1壁部72および第2壁部74と同一の樹脂材(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマ)によって構成されているが、これに限定されるものではなく、硬度の低い樹脂材でもよく、または硬度の高い樹脂材でもよい。
【0052】
第2態様の弾性部材90によれば、圧入動作時において、端面13C(図3参照)と底部92とが当接すると、底壁24(図3参照)に支持されて剛性が高くなっている薄い底部92により圧入動作が規制され、このときに圧入動作を停止する。これにより、チャンネル14が厚さの薄い底部92を基準としてウインドウガラス12に装着される。
【0053】
したがって、第2態様の弾性部材90を備えるチャンネル付きウインドウガラスによれば、ウインドウガラス12にチャンネル14を精度よく取り付けることができる。
【0054】
以下、第1壁部72または第2壁部74の好ましい厚みについて説明する。
【0055】
一例として、第1壁部72または第2壁部74の厚みは1.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。このような厚みとすることにより、既述の第1の機能を効果的に備える弾性部材90が得られる。
【0056】
また、底部92の厚みは0.5mm以上2.5mm未満であることが好ましい。このような厚みとすることにより、既述の第2の機能を効果的に備える弾性部材90が得られる。なお、底部92の厚みは0.5mm以上2.5mm未満である場合であっても、底部92の厚さが第1壁部72および第2壁部74の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0057】
また、この弾性部材90を備えたチャンネル14においても、チャンネル14の内側において、弾性部材90が間隔をあけて複数装着されており、複数の弾性部材90と弾性部材90との間において、ウインドウガラス12とチャンネル14とが接着剤80(図4参照)で接着されていることが好ましい。
【0058】
図7は、第3態様の弾性部材100の拡大断面図である。なお、弾性部材100を説明するに際し、弾性部材70と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0059】
図7に示すように、第3態様の弾性部材100は、底部102の厚さが第1壁部72および第2壁部74の厚さと略等しく構成されている。また、底部102は、第1壁部72および第2壁部74と同一の樹脂材(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマ)によって構成されているが、これに限定されるものではなく、硬度の低い樹脂材でもよく、または硬度の高い樹脂材でもよい。
【0060】
第3態様の弾性部材100では、底部102が補強材104により補強されている。図7では、底部102に補強材104が埋設された例が示されているが、これに限定されるものではなく、底部102を補強できる位置に設けられていればよい。
【0061】
第3態様の弾性部材100によれば、圧入動作時において、端面13C(図3参照)と底部102とが当接すると、補強材104によって補強されている底部102により圧入動作が規制され、このときに圧入動作を停止する。これにより、チャンネル14が底部102を基準としてウインドウガラス12に装着される。
【0062】
したがって、第3態様の弾性部材100を備えるチャンネル付きウインドウガラスによれば、ウインドウガラス12にチャンネル14を精度よく取り付けることができる。
【0063】
以下、好ましい補強材104について説明する。
【0064】
一例として、補強材104は、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、第1壁部72または第2壁部74よりも硬質な樹脂、ガラスフィラーのいずれか1以上であることが好ましい。これにより、底部102を効果的に補強できる。
【0065】
また、この弾性部材100を備えたチャンネル14においても、チャンネル14の内側において、弾性部材100が間隔をあけて複数装着されており、複数の弾性部材100と弾性部材100との間において、ウインドウガラス12とチャンネル14とが接着剤80(図4参照)で接着されていることが好ましい。
【0066】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良または変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…チャンネル付きウインドウガラス、12…ウインドウガラス、14…チャンネル、16…チャンネル本体、18…連結部、20…側壁、22…側壁、24…底壁、25…挿入部、26…底面、28…下面、30…連結孔、32…ボルト、50…昇降装置、52…モータ、54…ガイドレール、56…スライダ、58…第1ワイヤ、60…第2ワイヤ、62…ドラム、64…フロントサッシュ、66…リヤサッシュ、70…弾性部材、72…第1壁部、74…第2壁部、76…底部、80…接着剤、90…弾性部材、92…底部、100…弾性部材、102…底部、104…補強材、200…車両、202…フロントサイドドア、204…ドアパネル、206…窓用開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7