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特許7441733実機状態監視システムおよび実機状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】実機状態監視システムおよび実機状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240222BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020097595
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188469
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雄一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244574(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/182042(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/148946(WO,A1)
【文献】特開2014-122510(JP,A)
【文献】特開2018-003282(JP,A)
【文献】特開平10-291779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体から延在している作業機構と、実機撮像装置と、前記作業機構の先端部に取り付けられている作業部と、を有する作業機械の状態を前記作業機械のオペレータに対して情報出力装置に伝達させるための実機状態監視システムであって、
前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力を認識する実機状態認識要素と、
前記実機状態認識要素により認識された前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力に基づき、前記基体の不安定度を、前記基体が地面から浮き上がらないことを基準とした第1不安定度、および、前記基体が地面に対して滑らないことを基準とした第2不安定度とした連続変数として評価する不安定度評価要素と、
前記不安定度評価要素により評価された前記基体の第1不安定度および第2不安定度のうち最大の不安定度を表わす不安定度情報を選択的に、前記最大の不安定度の連続的な変化に応じて当該不安定度情報の出力形態が連続的に変化するように前記情報出力装置に前記実機撮像装置により撮像された前記作機構の少なくとも一部を含む撮像画像に基づいた環境画像に重畳して出力させる出力制御要素と、
を備えていることを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の実機状態監視システムにおいて、
前記第1不安定度は、
前記基体の前側が地面から浮き上がらないことを基準とした、一の第1不安定度および前記基体の後側が地面から浮き上がらないことを基準とした他の第1不安定度を含み、
前記出力制御要素は、
前記不安定度評価要素により評価された前記基体の一の第1不安定度、他の第1不安定度および第2不安定度のうち最大の不安定度を表わす不安定度情報を選択的に、前記最大の不安定度の連続的な変化に応じて当該不安定度情報の出力形態が連続的に変化するように前記情報出力装置に前記実機撮像装置により撮像された前記作動業機構の少なくとも一部を含む撮像画像に基づいた環境画像に重畳して出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項3】
請求項記載の実機状態監視システムにおいて、
前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する画像出力装置に、前記基体の不安定度を表わすダイヤグラムを、前記不安定度の閾値を基準として前記ダイヤグラムの形態が連続的に変化するように出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する画像出力装置に、前記ダイヤグラムを前記第1不安定度および前記第2不安定度のそれぞれが表わされるように出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する音響出力装置に、前記基体の不安定度を表わす音響を、当該音響の音量、周波数、または、音量および周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する振動出力装置に、前記基体の不安定度を表わす振動を、当該振動の振幅、振動周波数、または、振幅および振動周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記実機状態認識要素が、前記作業機械が前記作業部を作業物体に力を作用させながら指定作業を実行しているか否かを認識し、
前記出力制御要素が、前記状態認識要素により前記作業機械が前記指定作業を実行していると認識されたことを要件として、前記情報出力装置に前記不安定度情報を出力させる
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記作業機械および当該作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置のそれぞれとの通信に基づき、前記遠隔操作装置による前記作業機械の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援サーバにより構成されている
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項に記載の実機状態監視システムにおいて、
前記情報出力装置が、前記作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置により構成されている
ことを特徴とする実機状態監視システム。
【請求項10】
基体と、前記基体から延在している作業機構と、実機撮像装置と、前記作業機構の先端部に取り付けられている作業部と、を有する作業機械の状態を前記作業機械のオペレータに対して情報出力装置に伝達させるための実機状態監視方法であって、
前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力を認識する実機状態認識工程と、
前記実機状態認識工程において認識された前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力に基づき、前記基体の不安定度を、前記基体が地面から浮き上がらないことを基準とした第1不安定度、および、前記基体が地面に対して滑らないことを基準とした第2不安定度とした連続変数として評価する不安定度評価工程と、
前記不安定度評価要素により評価された前記基体の第1不安定度および第2不安定度のうち最大の不安定度を表わす不安定度情報を選択的に、前記最大の不安定度の連続的な変化に応じて当該不安定度情報の出力形態が連続的に変化するように前記情報出力装置に前記実機撮像装置により撮像された前記作機構の少なくとも一部を含む撮像画像に基づいた環境画像に重畳して出力させる出力制御工程と、を含んでいる
ことを特徴とする実機状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械(実機)の状態を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルの不安定度がオペレータに提示されることにより、オペレータの意図しない動作を精度良く判定できるショベルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-112783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、不安定度が例えば3つの区域で表わされる離散変数として提示されているため、オペレータが当該不安定度を参考にしても、ブーム、アームおよびバケットのそれぞれをどの程度動させた場合にショベルの下部走行体の浮き上がりが生じるかを高精度で把握することが困難である。このため、下部走行体の浮き上がりが生じる蓋然性、すなわちショベルが不安定になる蓋然性が低い状況であるにもかかわらず、オペレータがブーム等のさらなる動作を停止させてしまい、作業効率が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ショベル等の作業機械のオペレータに対して提供される、当該作業機械の不安定度に関する情報の確度の向上を図りうるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実機状態監視システムは、
基体と、前記基体から延在している作業機構と、実機撮像装置と、前記作業機構の先端部に取り付けられている作業部と、を有する作業機械の状態を前記作業機械のオペレータに対して情報出力装置に伝達させるための実機状態監視システムであって、
前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力を認識する実機状態認識要素と、
前記実機状態認識要素により認識された前記基体の姿勢および前記作業部に作用している外力に基づき、前記基体の不安定度を、前記基体が地面から浮き上がらないことを基準とした第1不安定度、および、前記基体が地面に対して滑らないことを基準とした第2不安定度とした連続変数として評価する不安定度評価要素と、
前記不安定度評価要素により評価された前記基体の第1不安定度および第2不安定度のうち最大の不安定度を表わす不安定度情報を選択的に、前記最大の不安定度の連続的な変化に応じて当該不安定度情報の出力形態が連続的に変化するように前記情報出力装置に前記実機撮像装置により撮像された前記作機構の少なくとも一部を含む撮像画像に基づいた環境画像に重畳して出力させる出力制御要素と、を備えている。
【0007】
当該構成の実機状態監視システムによれば、連続変数としてその値が評価された基体の不安定度を表わす不安定度情報が、不安定度の連続的な変化に応じてその出力形態が連続的に変化するように情報出力装置に出力される。
【0008】
このため、基体が不安定になるような閾値に対する現在の基体の不安定度の近接度、ひいては、基体の不安定を回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる。
【0009】
オペレータにその視覚を通じて不安定度を認識させるため、前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する画像出力装置に、前記基体の不安定度を表わすダイヤグラムを、前記不安定度の閾値を基準として前記ダイヤグラムの形態が連続的に変化するように出力させてもよい。オペレータにその聴覚を通じて不安定度を認識させるため、前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する音響出力装置に、前記基体の不安定度を表わす音響を、当該音響の音量、周波数、または、音量および周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力させてもよい。オペレータにその触覚を通じて不安定度を認識させるため、前記出力制御要素が、前記情報出力装置を構成する振動出力装置に、前記基体の不安定度を表わす振動を、当該振動の振幅、振動周波数、または、振幅および振動周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力させてもよい。
【0010】
本発明の実機状態監視システムが、前記作業機械および当該作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置のそれぞれとの通信に基づき、前記遠隔操作装置による前記作業機械の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援サーバにより構成されていてもよい。前記情報出力装置が、前記作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置により構成されていてもよい。
【0011】
本発明の実機状態監視システムにおいて、
前記不安定度評価要素が、前記基体が地面から浮き上がらないことを基準とした第1不安定度、および、前記基体が地面に対して滑らないことを基準とした第2不安定度のうち少なくとも一方を前記不安定度として評価する
ことが好ましい。
【0012】
当該構成の実機状態監視システムによれば、情報出力装置により出力される第1不安定度を表わす不安定度情報(第1不安定度情報)を通じて、閾値(第1閾値)に対する基体の第1不安定度の近接度、ひいては、基体が地面から浮き上がることで不安定になることを回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる。同様に、情報出力装置により出力される第2不安定度を表わす不安定度情報(第2不安定度情報)を通じて、閾値(第2閾値)に対する基体の不安定度の近接度、ひいては、基体が地面に対して滑ることで不安定になることを回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる。
【0013】
本発明の実機状態監視システムにおいて、
前記実機状態認識要素が、前記作業機械が前記作業部を作業物体に力を作用させながら指定作業を実行しているか否かを認識し、
前記出力制御要素が、前記状態認識要素により前記作業機械が前記指定作業を実行していると認識されたことを要件として、前記情報出力装置に前記不安定度情報を出力させる
ことが好ましい。
【0014】
当該構成の実機状態監視システムによれば、作業機械が作業部を作業物体に力を作用させながら指定作業を実行している状況、すなわち、基体が不安定になる可能性がある状況でのみ、不安定度情報が情報出力装置を通じてオペレータに伝達される。これにより、不安定度情報の有用性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての実機状態監視システムの構成に関する説明図。
図2】遠隔操作装置の構成に関する説明図。
図3】作業機械の構成に関する説明図。
図4】遠隔操作システムの機能に関する説明図。
図5】実機状態監視システムの機能に関する説明図。
図6作業環境画像に関する説明図。
図7】地面が平坦な場合の第1不安定度の評価方法に関する説明図。
図8】地面が傾斜している場合の第1不安定度の評価方法に関する説明図。
図9】地面が平坦な場合の第2不安定度の評価方法に関する説明図。
図10】地面が傾斜している場合の第2不安定度の評価方法に関する説明図。
図11】地面が平坦な場合の第3不安定度の評価方法に関する説明図。
図12】地面が傾斜している場合の第3不安定度の評価方法に関する説明図。
図13】不安定度情報の出力形態に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(遠隔操作システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての実機状態監視システム110は、遠隔操作装置20による作業機械40の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援サーバ10により構成されている。遠隔操作支援サーバ10と遠隔操作装置20とは相互に第1ネットワークを介して通信可能に構成されている。遠隔操作支援サーバ10と作業機械40とは相互に第2ネットワークを介して通信可能に構成されている。第1ネットワークおよび第2ネットワークは、通信規格等が共通のネットワークであってもよく、通信規格等が相互に異なるネットワークであってもよい。
【0017】
(遠隔操作支援サーバの構成)
遠隔操作支援サーバ10は、データベース102と、実機状態監視システム110と、第1支援処理要素121と、第2支援処理要素122と、を備えている。データベース102は、撮像画像データ等を記憶保持する。データベース102は、遠隔操作支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。各支援処理要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。
【0018】
(実機状態監視システムの構成)
実機状態監視システム110は、実機状態認識要素111と。不安定度評価要素112と、出力制御要素114と、を備えている。各要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。
【0019】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0020】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、遠隔画像出力装置221と、音響出力装置222と、振動出力装置223と、遠隔無線通信機器224と、を備えている。遠隔画像出力装置221、音響出力装置222および振動出力装置223のそれぞれは「情報出力装置」を構成する。遠隔画像出力装置221、音響出力装置222および振動出力装置223のうち一部が省略されていてもよい。
【0021】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0022】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0023】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0024】
遠隔画像出力装置221は、例えば図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212により構成されている。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。
【0025】
図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および左側遠隔画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側遠隔画像出力装置2211の右縁が、中央遠隔画像出力装置2210の左縁に隣接している。図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および右側遠隔画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側遠隔画像出力装置2212の左縁が、中央遠隔画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0026】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央遠隔画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0027】
音響出力装置222は、一または複数のスピーカーにより構成され、例えば図2に示されているように、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。
【0028】
振動出力装置223は圧電素子により構成され、シートStの一または複数の箇所に配設または埋設されている。振動出力装置223が振動することにより、シートStに着座しているオペレータが当該振動態様をその触覚を通じて認識することができる。振動出力装置223は、遠隔操作機構211を構成する遠隔操作レバー等、オペレータが触って認識できるあらゆる場所に設置されていてもよい。
【0029】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機出力インターフェース42と、作動機構440と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0030】
作業機械40は、例えば、油圧式、電動式または油圧式および電動式が組み合わされたハイブリッド駆動式のクローラショベル(建設機械)であり、図3に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には作業機構440が設けられている。
【0031】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、実機状態センサ群414と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右一対のサイドウィンドウ越しに作動機構440の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウ(またはウィンドウフレーム)およびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。実機状態センサ群414は、上部旋回体410に対するブーム441の回動角度(起伏角度)、ブーム441に対するアーム443の回動角度、および、アーム443に対するバケット445の回動角度のそれぞれを測定するための角度センサ、下部走行体410に対する上部旋回体420の旋回角度を測定するための旋回角度センサ、バケット445に対して作用する外力を測定するための外力センサ、上部旋回体420に作用する3軸加速度を測定するための3軸加速度センサ等により構成されている。
【0032】
実機出力インターフェース42は、実機画像出力装置421と、実機無線通信機器422と、を備えている。実機画像出力装置421は、例えば、キャブ424の内部であってフロントウィンドウの近傍に配置されている(図6および図13参照)。実機画像出力装置421は、省略されていてもよい。
【0033】
作動機構としての作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。作業部として、バケット445のほか、ニブラ、カッター、マグネットなど、さまざまなアタッチメントが用いられてもよい。
【0034】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0035】
(第1機能)
前記構成の遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20および作業機械40により構成されている遠隔操作支援システムの第1機能について図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0036】
遠隔操作装置20において、オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じた指定操作の有無が判定される(図4/STEP210)。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP210‥NO)一連の処理が終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP210‥YES)、遠隔無線通信機器224を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して環境確認要求が送信される(図4/STEP212)。
【0037】
遠隔操作支援サーバ10において、環境確認要求が受信された場合、第1支援処理要素121により当該環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(図4/C10)。
【0038】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(図4/C40)、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて撮像画像を取得する(図4/STEP410)。実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて、当該撮像画像を表わす撮像画像データが遠隔操作装置10に対して送信される(図4/STEP412)。
【0039】
遠隔操作支援サーバ10において、第1支援処理要素121により撮像画像データが受信された場合(図4/C11)、第2支援処理要素122により撮像画像に応じた環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(図4/STEP110)。環境画像データは、撮像画像データそのもののほか、撮像画像に基づいて生成された模擬的な環境画像を表わす画像データである。
【0040】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224を通じて環境画像データが受信された場合(図4/C21)、遠隔制御装置200により、環境画像データに応じた環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される(図4/STEP214)。
【0041】
これにより、例えば、図6に示されているように、作業機構440の一部であるブーム441、アーム443およびバケット445が映り込んでいる環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される。
【0042】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され(図4/STEP216)、かつ、遠隔無線通信機器224を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP218)。
【0043】
遠隔操作支援サーバ10において、第2支援処理要素122により当該遠隔操作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(図4/C12)。
【0044】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(図4/C41)、作業機構440等の動作が制御される(図4/STEP414)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体410を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0045】
前記構成の遠隔操作支援システムの第2機能(主に、遠隔操作支援サーバ10により構成されている実機状態監視システム110の機能)について図5に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0046】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機状態センサ群414の出力信号に基づき、当該作業機械40の動作状態を表わす実機状態データが取得される(図5/STEP420)。作業機械40の動作状態には、上部旋回体410に対するブーム441の回動角度(起伏角度)、ブーム441に対するアーム443の回動角度、および、アーム443に対するバケット445の回動角度、下部走行体410に対する上部旋回体420の旋回角度、ならびに、バケット445に対して作用する外力F等が含まれている。
【0047】
実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて実機状態データが遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(図5/STEP422)。
【0048】
遠隔操作支援サーバ10において、実機状態データが受信された場合(図5/C14)、実機状態認識要素111により、当該実機状態データに基づいて作業機械40の状態が認識される(図5/STEP120)。
【0049】
具体的には、バケット445に作用する外力Fの時系列が認識される。外力Fは、ブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446のうち少なくとも1つの油圧に工程に応じて認識されてもよい。
【0050】
さらに、作業機械40に対して位置および姿勢が固定されている実機座標系における、下部走行体410および上部旋回体420からなる基体の重心P0、浮き上がり支点P1および外力作用点P2(バケット445の先端点)のそれぞれの座標値が認識される。実機座標系における基体の重心P0の座標値は、作業機械40の種類および/または仕様ごとに区分されてデータベース102にあらかじめ登録されている。実機座標系における浮き上がり支点P1の座標値は、下部走行体410に対する上部旋回体420の旋回角度に基づいて認識される(特許文献1の浮き上がり支点T1f参照)。実機座標系における外力作用点P2は、上部旋回体410に対するブーム441の回動角度(起伏角度)、ブーム441に対するアーム443の回動角度、および、アーム443に対するバケット445の回動角度のそれぞれと、ブーム441、アーム443およびバケット445のそれぞれのリンク長と、に基づいて幾何学的に認識される。ブーム441のリンク長(上部旋回体420の側の関節機構からアーム443の側の関節機構までの間隔)、アーム443のリンク長(アーム441の側の関節機構からバケット445の側の関節機構までの間隔)、および、バケット445のリンク長(アーム443の側の関節機構からバケット445の先端部までの間隔)のそれぞれは、作業機械40の種類および/または仕様ごとに区分されてデータベース102にあらかじめ登録されている。
【0051】
実機状態認識要素111により、作業機械40がバケット445(作業部)を用いて指定作業を実行しているか否かが判定される(図5/STEP121)。例えば、指定作業が掘削作業である場合、バケット445に作用する外力Fが増減を繰り返しているか否かに応じて、作業機械40が指定作業を実行しているか否かが認識される。
【0052】
当該判定結果が否定的である場合(図5/STEP121‥NO)、今回制御周期における一連の処理が終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(図5/STEP121‥YES)、実機状態認識要素111により認識された実機状態に基づき、不安定度評価要素112により、作業機械40の上部旋回体420(基体)の第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3が評価される(図5/STEP122)。
【0053】
第1不安定度Is1は、作業機械40の下部走行体410(基体)が地面から浮き上がることにより当該基体が不安定になる観点から定義される不安定度である。図7に示されている、外力F、外力ベクトルが水平面となす角度θf、基体の重心P0および当該重心P0よりも後方にある浮き上がり支点P1の距離lg、浮き上がり支点P1および外力作用点P2の距離lt、線分P0-P1(またはこれを含む平面)が水平面となす角度θg、線分P1-P2(またはこれを含む平面)が水平面となす角度θt、基体の重量mおよび重力加速度gに基づき、関係式(11)にしたがって第1不安定度Is1が求められる。すなわち、連続変数lt、F、θf、θt、lgおよびθgを主変数とする、連続関数または連続従変数として第1不安定度Is1が定義されている。
【0054】
Is1=lt・Fsin(θt-θf)/lg・mgcosθg ‥(11)。
【0055】
図8に示されているように、地面が角度θmだけ傾斜している場合、第1不安定度Is1は関係式(21)により定義されている。地面の傾斜角度-θmは、実機状態センサ群414を構成する、上部旋回体420に作用する3軸加速度を測定するための3軸加速度センサの出力信号に基づいて測定されうる。
【0056】
Is1=lt・Fsin(θt-θf)/lg・mgcos(θg+θm) ‥(21)。
【0057】
第2不安定度Is2は、作業機械40の下部走行体410(基体)が地面から浮き上がることにより当該基体が不安定になる観点から定義される不安定度である。図9に示されている、外力F、外力ベクトルが水平面となす角度θf、基体の重心P0および当該重心P0よりも前方にある浮き上がり支点P1の距離lfg、浮き上がり支点P1および外力作用点P2の距離lft、線分P0-P1(またはこれを含む平面)が水平面となす角度θfg、線分P1-P2(またはこれを含む平面)が水平面となす角度θft、基体の重量mおよび重力加速度gに基づき、関係式(12)にしたがって第2不安定度Is2が求められる。すなわち、連続変数lft、F、θf、θft、lfgおよびθfgを主変数とする、連続関数または連続従変数として第2不安定度Is2が定義されている。
【0058】
Is2=lft・Fsin(θf-θft)/lfg・mgcosθfg ‥(12)。
【0059】
図10に示されているように、地面が角度θmだけ傾斜している場合、第2不安定度Is2は関係式(22)により定義されている。
【0060】
Is2=lft・Fsin(θf-θft)/lfg・mgcos(θfg+θm) ‥(22)。
【0061】
第3不安定度Is3は、作業機械40の下部走行体410(基体)が地面に対して滑ることにより当該基体が不安定になる観点から定義される不安定度である。図11に示されている、外力F、外力ベクトルが水平面となす角度θf、基体の重量m、重力加速度g、および、基体と地面との静摩擦係数μ(または動摩擦係数)に基づき、関係式(13)にしたがって第3不安定度Is3が求められる。すなわち、連続変数Fおよびθfを主変数とする、連続関数または連続従変数として第3不安定度Is3が定義されている。なお、摩擦係数μは、作業現場における標準的な値が用いられるが、気象条件(降水量、温度、湿度など)および/または土質条件・地盤条件(土砂、粘土、砂利、砂、瓦礫など)の相違に応じて異なる値が用いられてもよい。
【0062】
Is3=Fcosθf/μmg ‥(13)。
【0063】
図12に示されているように、地面が角度θmだけ傾斜している場合、第3不安定度Is3は関係式(23)により定義されている。
【0064】
Is3=Fcosθf/(μmgcosθm-mgsinθm) ‥(23)。
【0065】
出力制御要素114により、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のうちいずれが最大であるかが判定される(図5/STEP124)。
【0066】
第1不安定度Is1が最大不安Ismaxであると判定された場合(図5/STEP124‥1)、出力制御要素114により、第1不安定度Is1を表わす第1不安定度情報が生成される(図5/STEP125)。第2不安定度Is2が最大不安Ismaxであると判定された場合(図5/STEP124‥2)、出力制御要素114により、第2不安定度Is2を表わす第2不安定度情報が生成される(図5/STEP126)。第3不安定度Is3が最大不安Ismaxであると判定された場合(図5/STEP124‥3)、出力制御要素114により、第3不安定度Is3を表わす第3不安定度情報が生成される(図5/STEP127)。そして、出力制御要素114により、第1不安定度情報、第2不安定度情報または第3不安定度情報が遠隔操作装置20に対して送信される(図5/STEP128)。
【0067】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224により、第1不安定度情報、第2不安定度情報または第3不安定度情報が受信された場合(図5/C22)、遠隔制御装置200により、遠隔画像出力装置221に当該不安定度情報が出力される(図5/STEP224)。
【0068】
これにより、例えば図13に示されているように、ウィンドウfに不安定度の高低に応じてウィンドウfの下端縁からの長短が変化するダイヤグラムf(x)または棒グラフが、遠隔画像出力装置221において環境画像に重畳されて出力される。ダイヤグラムf(x)のサイズは、不安定度を変数とする線形関数、指数関数、対数関数などの増加関数により定義されている。ウィンドウfの上端縁または上端縁より低い位置の目盛りは、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2または第3不安定度Is3が閾値fthに至った場合、基体が地面から浮き上がるまたは基体が地面に対して滑ると予測される当該閾値fthを表わしている。
【0069】
ダイヤグラムf(x)の形状は矩形状のほか、円形、扇形、菱形など様々な形状であってもよい。ダイヤグラムf(x)のサイズ、形状、色(明度、彩度および色相)もしくは模様またはこれらの任意の組み合わせが、不安定度Is1、Is2の連続的な変化に応じて連続的に変化するように出力されてもよい。
【0070】
(効果)
当該構成の遠隔操作支援システムを構成する実機状態監視システム110によれば、連続変数としてその値が評価された基体(下部走行体410および上部旋回体420)の不安定度Is1、Is2を表わす不安定度情報が、不安定度Is1、Is2の連続的な変化に応じてその出力形態が連続的に変化するように遠隔画像出力装置221(情報出力装置)に出力される(図5/STEP122→‥→STEP224、図13参照)。
【0071】
このため、基体が不安定になるような閾値に対する現在の基体の不安定度の近接度、ひいては、基体の不安定を回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械40のオペレータに高精度で認識させることが可能になる。
【0072】
情報出力装置により出力される第1不安定度を表わす不安定度情報(第1不安定度情報)を通じて、閾値(第1閾値)に対する基体の第1不安定度の近接度、ひいては、基体が重心P0よりも後方の浮き上がり支点P1を始点として、地面から浮き上がることで不安定になることを回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる(図7図8図13参照)。同様に、情報出力装置により出力される第2不安定度を表わす不安定度情報(第2不安定度情報)を通じて、閾値(第2閾値)に対する基体の第2不安定度の近接度、ひいては、基体が重心P0よりも前方の浮き上がり支点P1を始点として、地面から浮き上がることで不安定になることを回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる(図9図10図13参照)。情報出力装置により出力される第3不安定度を表わす不安定度情報(第3不安定度情報)を通じて、閾値(第3閾値)に対する基体の不安定度の近接度、ひいては、基体が地面に対して滑ることで不安定になることを回避しながら作業機構等を動作させる許容範囲を、作業機械のオペレータに高精度で認識させることが可能になる(図11図12図13参照)。
【0073】
また、作業機械40がバケット445(作業部)を作業物体(土砂、瓦礫など)に力を作用させながら指定作業としての掘削作業を実行している状況、すなわち、基体が不安定になる可能性がある状況でのみ、不安定度情報が情報出力装置を通じてオペレータに伝達される(図5/STEP121‥YES→‥→STEP224参照)。これにより、不安定度情報の有用性の向上が図られる。
【0074】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、遠隔操作支援サーバ10により実機状態監視システム110が構成されていたが、他の実施形態として遠隔操作装置20および/または作業機械40により実機状態監視システム110が構成されていてもよい。すなわち、遠隔操作装置20および/または作業機械40が、実機状態認識要素111、不安定度評価要素112および出力制御要素114としての機能を有していてもよい。
【0075】
前記実施形態では、遠隔画像出力装置221を通じて不安定度情報が出力されたが、付加的または代替的に、音響出力装置222および/または振動出力装置223を通じて不安定度情報が出力されてもよい。音響出力装置222により、基体の不安定度を表わす音響を、当該音響の音量、周波数、または、音量および周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力されてもよい。振動出力装置223により、基体の不安定度を表わす振動を、当該振動の振幅、振動周波数、または、振幅および振動周波数の組み合わせが連続的に変化するように出力されてもよい。
【0076】
前記実施形態では、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3が評価されたが(図5/STEP122、図7図12参照)、他の実施形態として第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のうち1つのみが評価され、当該1つの不安定度を表わす不安定度情報が情報出力装置に出力されてもよい。第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のうち少なくとも2つの平均値または重み付き和が単一の不安定度として評価されてもよい。
【0077】
前記実施形態では、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のうち、一の不安定度を表わす不安定度情報のみが情報出力装置に出力されたが(図5/STEP124‥1→STEP125→STEP128→‥→STEP224、図5/STEP124‥2→STEP126→STEP128→‥→STEP224、図5/STEP124‥3→STEP126→STEP127→‥→STEP224参照)、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のうち全部または2つのそれぞれの不安定度を表わす3つまたは2つの不安定度情報が情報出力装置に出力されてもよい。この場合、第1不安定度Is1、第2不安定度Is2および第3不安定度Is3のそれぞれを表わすための2つのダイヤグラムf(x)が出力されてもよい。最大不安定度Ismaxの特定処理(図5/STEP124参照)が省略される。
【0078】
前記実施形態では、作業機械40がバケット445(作業部)を用いて指定作業(例えば、掘削作業)を実行している状況でのみ、不安定度情報が情報出力装置を通じてオペレータに伝達されたが(図5/STEP121‥YES→‥→STEP224参照)、他の実施形態として、作業機械40が指定作業を実行しているか否かとは無関係に、不安定度情報が情報出力装置を通じてオペレータに伝達されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10‥遠隔操作サーバ、20‥遠隔操作装置、24‥遠隔制御装置、40‥作業機械、210‥遠隔入力インターフェース、211‥遠隔操作機構、220‥遠隔出力インターフェース、221‥遠隔画像出力装置(情報出力装置)、222‥音響出力装置(情報出力装置)、223‥振動出力装置(情報出力装置)、224‥遠隔無線通信機器、240・遠隔制御要素、241‥第1出力制御要素、242‥第2出力制御要素、410‥実機入力インターフェース、412‥実機撮像装置、414‥状態センサ群、420‥実機出力インターフェース、421‥実機画像出力装置(情報出力装置)、422‥実機無線通信機器、440‥作業機構(作業アタッチメント)、445‥バケット(作業部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13