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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/06 20060101AFI20240222BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240222BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01J37/06 A
H01J37/28 B
H01J37/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020143072
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038518
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ウェン
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】水原 譲
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-028281(JP,U)
【文献】特開2007-244047(JP,A)
【文献】特開平04-012673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/06
H01J 37/20
H01J 37/28
H01J 37/08
H01J 37/248
H02M 7/00- 7/40
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子銃と、試料が設置されるステージと、前記荷電粒子ビームのエネルギーを定める第1の電圧および第2の電圧を生成し、前記第1の電圧を前記荷電粒子銃に供給する電源回路と、を有する荷電粒子ビーム装置であって、
前記電源回路は、
前記第1の電圧を生成する第1の昇圧回路と、
前記第2の電圧を生成する第2の昇圧回路と、
前記第1の昇圧回路と前記第2の昇圧回路を共通のスイッチ信号でスイッチング制御するスイッチング制御回路と、
を有する荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記荷電粒子銃は、第1の筐体に収容され、
前記第1の昇圧回路のグラウンド電源と、前記第2の昇圧回路のグラウンド電源は、前記第1の筐体に接続される前に共通に接続される、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項2記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第1の昇圧回路と前記第2の昇圧回路は、第2の筐体に収容され、
前記第1の昇圧回路のグラウンド電源と、前記第2の昇圧回路のグラウンド電源は、前記第2の筐体に接続され、前記第2の筐体を介して前記第1の筐体に接続される、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第1の電圧の大きさを設定するための第1の基準電圧を生成する第1の基準電圧源と、
前記第2の電圧の大きさを設定するための第2の基準電圧を生成する第2の基準電圧源と、
前記第1の基準電圧源と前記第2の基準電圧源とに共通の基準電圧を供給する共通基準電圧源と、
を有する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第1の電圧に重畳される第1のリプル電圧を検出する第1のリプル検出器と、
前記第2の電圧に重畳される第2のリプル電圧を検出する第2のリプル検出器と、
前記第1のリプル電圧と前記第2のリプル電圧との差電圧を前記第1の電圧または前記第2の電圧の一方にフィードバックするリプル制御回路と、
を有する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第1の昇圧回路および前記第2の昇圧回路のそれぞれは、
トランスと、
前記トランスの一次コイルに交流電圧を供給するスイッチング素子と、
前記トランスの二次コイルの電圧を昇圧するコッククロフトウォルトン回路と、
を有し、
前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子をスイッチング制御する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第2の電圧は、前記ステージに供給される、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧で加速された前記荷電粒子ビームを更に加速させるブースタ電極に供給される、
荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置および電源装置に関し、例えば、昇圧回路を含む電源装置、および当該電源装置を搭載した荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷電粒子線の照射領域に生じる帯電を高速に除電可能な荷電粒子線装置が示される。当該荷電粒子線装置は、リターディング電圧の値が加速電圧の値よりも小さい条件において試料を測定後、リターディング電圧の値と加速電圧の値の差を測定時よりも小さくすることによって除電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-155980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、電子ビーム光学系の収差を小さくする目的で、特許文献1等に示されるようなリターディング法が用いられている。この方式は、電子ビームのエネルギーを、加速電圧によって、一旦、数十kV等の高いエネルギーにしたのち、試料への照射時に、当該エネルギーを、試料に印加されたリターディング電圧によって1kV以下等に減速させる方式である。電子ビームは、エネルギーが高いほど波長が短くなり、ビームサイズを小さく絞る(すなわち、電子ビームの分解能を高める)ことができる。また、照射時の電子ビームのエネルギーを下げることで、試料に与えるダメージを低減できる。
【0005】
一方、半導体デバイスの微細化に伴い、電子ビームの分解能を更に高めることが求められている。こうした中、一般的な荷電粒子線装置では、加速電圧は、電子銃側に搭載した電源装置で生成され、リターディング電圧は、試料側に搭載した別の電源装置で生成される。しかし、このような構成では、加速電圧とリターディング電圧との間に生じるノイズが増加し、電子ビームの分解能を十分に高められない恐れがあった。
【0006】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、複数の電圧間に生じるノイズを低減することが可能な電源装置および荷電粒子ビーム装置を提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明の代表的な実施の形態による荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子銃と、試料が設置されるステージと、荷電粒子ビームのエネルギーを定める第1の電圧および第2の電圧を生成し、第1の電圧を荷電粒子銃に供給する電源回路と、を有する。電源回路は、第1の電圧を生成する第1の昇圧回路と、第2の電圧を生成する第2の昇圧回路と、第1の昇圧回路と第2の昇圧回路を共通のスイッチ信号でスイッチング制御するスイッチング制御回路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、複数の電圧間に生じるノイズを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1による荷電粒子ビーム装置の構成例を示す概略図である。
図2図1の荷電粒子ビーム装置において、リターンディング電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。
図3図1の荷電粒子ビーム装置において、加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。
図4図4は、図3における共通基準電圧源周りの構成例を示す回路図である。
図5A図3の電源回路の実装例を示す模式図である。
図5B図5Aとは異なる実装例を示す模式図である。
図6】本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびブースト電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。
図7】本発明の実施の形態3による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。
図8図7におけるリプル制御回路およびロウパスフィルタ周りの構成例を示す概略図である。
図9】本発明の実施の形態4による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
(実施の形態1)
《荷電粒子ビーム装置の概略》
図1は、本発明の実施の形態1による荷電粒子ビーム装置の構成例を示す概略図である。明細書では、荷電粒子ビーム装置が、電子ビームを用いる電子顕微鏡装置である場合を例とするが、これに限らず、例えば、イオンビームを用いるイオン顕微鏡装置等であってもよい。図1の荷電粒子ビーム装置10は、概略的には、電子銃(荷電粒子銃)21から放出された電子ビーム(過電粒子ビーム)B1を試料32に照射し、試料32からの放出された電子(具体的には二次電子、反射電子)B2の放出量を検出器29で検出するものである。
【0014】
図1に示す荷電粒子ビーム装置10は、本体部15と、制御部16と、複数の電源回路17a,17b,17c,17dと、画像処理部18とを備える。本体部15は、筐体19と、試料室20とを備える。筐体19には、電子銃(荷電粒子銃)21、コンデンサレンズ25、反射板26、偏向器27、対物レンズ28、検出器29、およびブースト電極30が収容される。電子銃21は、電子源(荷電粒子源)22と、引出電極23と、加速電極24とを備える。試料室20には、試料32が設置されるステージ31が収容される。
【0015】
筐体19は、金属部材で構成され、グラウンド電源GNDに接続される。電源回路17aは、負の加速電圧V0を生成し、電子源22に供給する。電源回路17bは、電子源22の電圧(V0)を基準に正の引出電圧を生成し、引出電極23に供給する。電子源22は、この引出電圧によって電子ビーム(荷電粒子ビーム)B1を放出する。加速電極24は、グラウンド電源GNDに接続される。これに伴い、電子源22を基準にすると、加速電極24には、正の加速電圧V0が印加される。電子源22から放出された電子ビームB1は、この加速電圧V0によって加速される。
【0016】
コンデンサレンズ25は、電子銃21から放出された電子ビームB1を集束する。対物レンズ28は、試料上32で電子ビームB1が微小スポットとなるように電子ビームB1を集束する。この際に、電源回路17dは、正のブースト電圧Vbを生成し、コンデンサレンズ25の近辺に設置されたブースト電極30に供給する。これに伴い、加速電圧V0で加速された電子ビームB1は、ブースト電圧Vbによって更に加速される。これにより、電子ビームB1の更なる高分解能化が可能になる。
【0017】
偏向器27は、磁界型偏向器または静電型偏向器であり、対物レンズ28で集束された電子ビームB1を偏向することで、試料32上に照射された電子ビームB1(すなわち微小スポット)を走査する。電源回路17cは、負のリターンディング電圧Vrを生成し、ステージ31に供給する。これに伴い、対物レンズ28を通過した電子ビームB1は、リターンディング電圧Vrによって減速される。これにより、試料32へのダメージを低減することが可能になる。
【0018】
電子ビームB1には、加速電圧V0およびブースト電圧Vbによって、例えば、数十kV等のエネルギーが付与される。リターンディング電圧Vrは、この電子ビームB1のエネルギーを例えば1kV以下等に下げる。このように、電子ビームB1のエネルギーは、電源回路17a,17c,17dによって適宜定められる。ただし、電源回路17dおよびブースト電極30は、設けられない場合もある。
【0019】
試料32は、電子ビームB1の照射に応じて、電子(具体的には二次電子、反射電子)B2を放出する。放出された電子B2は、リターンディング電圧Vrおよびブースト電圧Vbによって電子源22の方向に加速し、反射板26に衝突する。これに伴い、反射板26は、二次電子を放出する。検出器29は、この二次電子の放出量を検出する。
【0020】
制御部16は、例えば、マイクロコントローラ等を含む各種IC(Integrated Circuit)を実装した配線基板(制御基板)等で構成される。制御部16は、各電源回路17a,17b,17c,17dの電圧値を制御する。また、制御部16は、偏向器27や、対物レンズ28等を制御する。さらに、制御部16は、検出器29からの出力信号を、所定の信号処理回路を用いて処理する。この際に、制御部16は、偏向器27への制御信号と、検出器29からの出力信号とを同期させることで、走査領域の二次電子画像を作成するための元データを作成する。
【0021】
画像処理部18は、例えば、PC(personal computer)等の計算機で構成される。画像処理部18は、制御部16から二次電子画像の元データを取得し、当該元データに基づいて二次電子画像を作成する。また、画像処理部18は、作成した二次電子画像を、ディスプレイ等に表示する。二次電子画像は、走査領域内の各位置において、二次電子の放出量に応じて輝度が異なるような画像である。
【0022】
《電源回路(電源装置)の詳細》
図2は、図1の荷電粒子ビーム装置において、リターンディング電圧を生成する電源回路の概略的な構成例を示す回路図である。図2に示す電源回路17cは、定電圧源VGcと、トランジスタQcと、スイッチユニットSWUcと、トランスTRcと、コッククロフトウォルトン回路CWcと、ロウパスフィルタLPFcと、誤差増幅器EAcと、電圧制御回路35cと、スイッチング制御回路36cとを備える。スイッチユニットSWUc、トランスTRcおよびコッククロフトウォルトン回路CWcは、昇圧回路BCcを構成する。
【0023】
定電圧源VGcは、入力電圧Vi3を生成する。トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ)Qcは、入力電圧Vi3をベース電圧に応じて降圧する。そして、トランジスタQcは、この降圧した電圧を、トランスTRcの一次コイルにおける中点タップの電圧に定める。スイッチユニットSWUcは、2個のスイッチング素子SW1c,SW2cを備える。スイッチング素子SW1c,SW2cは、トランスTRcの一次コイルの両端と、グラウンド電源GNDとの間にそれぞれ接続される。
【0024】
スイッチング制御回路36は、この2個のスイッチング素子SW1c,SW2cを、予め定めたスイッチング周波数を持つスイッチ信号S1,S2で交互にスイッチング制御する。その結果、トランスTRcの一次コイルには、入力電圧Vi3を振幅とする交流電圧が供給される。また、トランスTRcの二次コイルからは、コイルの巻線比等に応じた交流電圧Vacが出力される。このように、スイッチング素子SW1c,SW2cは、トランスTRcの一次コイルに交流電圧を供給するための素子である。
【0025】
コッククロフトウォルトン回路CWcは、複数(この例では4個)のコンデンサC1c,C2c,C3c,C4cと、複数(4個)のダイオードD1c,D2c,D3c,D4cと、を備える。コッククロフトウォルトン回路CWcは、トランスTRcの二次コイルからの交流電圧Vacを昇圧しつつ、直流電圧に変換する。図2の例では、コッククロフトウォルトン回路CWcは、交流電圧Vacの振幅の略4倍の大きさを持つ直流電圧を、リターンディング電圧Vrとして生成する。なお、昇圧の倍数は、コンデンサおよびダイオードの段数によって適宜調整される。
【0026】
誤差増幅器EAcは、分圧抵抗素子R1c,R2cと、増幅器AMP1cと、基準電圧源VRGcとを備える。基準電圧源VRGcは、基準電圧Vrf3を生成する。この基準電圧Vrf3は、リターンディング電圧Vrの大きさを設定するための電圧である。分圧抵抗素子R1c,R2cは、コッククロフトウォルトン回路CWcによって生成されたリターンディング電圧Vrを分圧する。増幅器AMP1cは、この分圧された電圧値と、基準電圧Vrf3との誤差を増幅する。
【0027】
電圧制御回路35cは、誤差増幅器EAcからの誤差信号に応じてトランジスタQcのベース電圧をフィードバック制御する。その結果、トランスTRcからの交流電圧Vacの振幅が制御され、ひいては、リターンディング電圧Vrが、基準電圧Vrf3に応じた大きさとなるように制御される。ロウパスフィルタLPFcは、抵抗素子R3cおよびコンデンサC3cを備え、コッククロフトウォルトン回路CWcからのリターンディング電圧Vrをフィルタリングする。そして、電源回路17cは、このフィルタリングされたリターンディング電圧Vrを、電源ケーブル40cを介して試料32(詳細にはステージ31)に供給する。
【0028】
ここで、電源回路17cには、図2に示されるように、3つのノイズ源が含まれる。1つ目は、スイッチング制御回路36cからのスイッチ信号S1,S2の切り替わりに伴うスイッチングノイズ(δ1)である。このスイッチングノイズ(δ1)は、グラウンド電源GNDのノイズでもある。2つ目は、基準電圧源VRGcで生じるランダム性のノイズ(δ2)である。
【0029】
3つ目は、コッククロフトウォルトン回路CWcの昇圧動作に伴うリプルノイズ(δ3)である。すなわち、コッククロフトウォルトン回路CWcは、交流電圧Vacに同期してチャージポンプを行うことで昇圧動作を行う。このため、スイッチング制御回路36cのスイッチング周波数に応じたリプルノイズ(δ3)が生じ得る。このような各ノイズ(δ1,δ2,δ3)は、ロウパスフィルタLPFcによってある程度除去することが可能である。しかし、電子ビームB1をより高分解能化するためには、このようなノイズの影響を更に低減することが望まれる。
【0030】
具体的に説明すると、電子ビームB1のエネルギーは、例えば、電源回路17aからの加速電圧V0と、電源回路17cからのリターンディング電圧Vrとの差電圧によって定められる。ここで、リターンディング電圧Vrには、前述したようなノイズ源に伴い、ノイズ電圧δVr(=δ1+δ2+δ3)が重畳している。また、電源回路17aも、電源回路17cと同様の構成を備える。これに伴い、加速電圧V0にも、同様のノイズ電圧δV0が重畳している。
【0031】
その結果、電子ビームB1のエネルギーには、加速電圧V0に重畳されるノイズ電圧δV0と、リターンディング電圧Vrに重畳されるノイズ電圧δVrとの差分(=δV0-δVr)に相当する揺らぎ成分が生じる。この揺らぎ成分は、図2に示されるように、電子ビームB1の焦点変動を招き、電子ビームB1の分解能を低下させる。そこで、図3等の構成例を用いることが有益となる。
【0032】
図3は、図1の荷電粒子ビーム装置において、加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路(電源装置)の概略的な構成例を示す回路図である。図4は、図3における共通基準電圧源周りの構成例を示す回路図である。図5Aは、図3の電源回路(電源装置)の実装例を示す模式図であり、図5Bは、図5Aとは異なる実装例を示す模式図である。
【0033】
図3に示す電源回路(電源装置)17acは、2個の電源回路17a,17cを備える。電源回路17cは、リターンディング電圧Vrを生成する回路であり、図2とほぼ同様の構成を備える。電源回路17aは、加速電圧V0を生成する回路であり、図2とほぼ同様の構成を備える。簡単に説明すると、電源回路17aは、定電圧源VGaと、トランジスタQaと、スイッチユニットSWUaと、トランスTRaと、コッククロフトウォルトン回路CWaと、ロウパスフィルタLPFaと、誤差増幅器EAaと、電圧制御回路35aと、を備える。スイッチユニットSWUa、トランスTRaおよびコッククロフトウォルトン回路CWaは、昇圧回路BCaを構成する。
【0034】
定電圧源VGaは、入力電圧Vi1を生成する。トランジスタQaは、入力電圧Vi1をベース電圧に応じて降圧し、降圧した電圧を、トランスTRaの一次コイルにおける中点タップの電圧に定める。スイッチユニットSWUaは、2個のスイッチング素子SW1a,SW2aを備える。コッククロフトウォルトン回路CWaは、複数(この例では4個)のコンデンサC1a,C2a,C3a,C4aと、複数(4個)のダイオードD1a,D2a,D3a,D4aと、を備え、昇圧された直流電圧として、加速電圧V0を生成する。
【0035】
誤差増幅器EAaは、分圧抵抗素子R1a,R2aと、増幅器AMP1aと、基準電圧源VRGaとを備える。基準電圧源VRGaは、基準電圧Vrf1を生成する。この基準電圧Vrf1は、加速電圧V0の大きさを設定するための電圧である。分圧抵抗素子R1a,R2aは、加速電圧V0を分圧し、増幅器AMP1aは、この分圧された電圧値と、基準電圧Vrf1との誤差を増幅する。電圧制御回路35aは、誤差増幅器EAaからの誤差信号に応じてトランジスタQaのベース電圧をフィードバック制御する。ロウパスフィルタLPFaは、抵抗素子R3aおよびコンデンサC3aを備え、加速電圧V0をフィルタリングする。そして、電源回路17aは、このフィルタリングされた加速電圧V0を、電源ケーブル40aを介して電子銃21に供給する。
【0036】
ここで、図3の構成例は、図2の構成を単純に拡張したような構成と異なり、主に、次の3つの特徴を備える。特徴[1]として、電源回路17acは、スイッチング制御回路36を有する。スイッチング制御回路36は、昇圧回路BCaのスイッチユニットSWUaと昇圧回路BCcのスイッチユニットSWUcを共通のスイッチ信号S1,S2でスイッチング制御する。
【0037】
これにより、図2で述べたような加速電圧V0に重畳されるリプルノイズ(ノイズ電圧δV0内のδ3)と、リターンディング電圧Vrに重畳されるリプルノイズ(ノイズ電圧δVr内のδ3)は、同周波数および同位相となり、互いに相殺される。さらに、加速電圧V0に重畳されるスイッチングノイズ(ノイズ電圧δV0内のδ1)と、リターンディング電圧Vrに重畳されるスイッチングノイズ(ノイズ電圧δVr内のδ1)も、同周波数および同位相となり、互いに相殺される。その結果、電子ビームB1の焦点変動を抑制でき、電子ビームB1の高分解能が可能になる。
【0038】
特徴[2]として、電源回路17acは、共通基準電圧源45を備える。共通基準電圧源45は、電源回路17aの基準電圧源VRGaと電源回路17cの基準電圧源VRGcとに共通の基準電圧Vrfを供給する。具体例として、図4に示されるように、基準電圧源VRGaは、例えば、pMOSトランジスタMPaと、分圧抵抗素子R5a,RVaと、増幅器AMP2aとを備える。pMOSトランジスタMPaのソースは、制御用の内部電源VDDに接続される。
【0039】
分圧抵抗素子R5a,RVaは、pMOSトランジスタMPaのドレインから出力される基準電圧Vrf1を分圧する。増幅器AMP2aは、この分圧された電圧が共通基準電圧源45からの基準電圧Vrfと一致するように、pMOSトランジスタMPaのゲートをフィードバック制御する。抵抗素子RVaは、可変抵抗素子である。基準電圧Vrf1の電圧値は、この抵抗素子RVaの抵抗値によって可変制御される。
【0040】
同様に、基準電圧源VRGcは、例えば、pMOSトランジスタMPcと、分圧抵抗素子R5c,RVcと、増幅器AMP2cとを備える。増幅器AMP2cには、共通基準電圧源45からの基準電圧Vrfが入力される。なお、共通基準電圧源45は、代表的には、バンドギャップリファレンス回路等である。また、基準電圧源VRGa,VRGcは、図4のような回路に限らず、一般的に知られている様々な回路で構成されればよい。
【0041】
このように、共通基準電圧源45を設けることで、図2で述べたような加速電圧V0に重畳されるランダム性のノイズ(ノイズ電圧δV0内のδ2)と、リターンディング電圧Vrに重畳されるランダム性のノイズ(ノイズ電圧δVr内のδ2)は、ほぼ等しくなり、互いに相殺される。その結果、電子ビームB1の焦点変動を抑制でき、電子ビームB1の高分解能が可能になる。
【0042】
特徴[3]として、昇圧回路BCaのグラウンド電源GNDと、昇圧回路BCcのグラウンド電源GNDは、図1に示した筐体19に接続される前に、電源回路17ac内で共通に接続される。具体的には、図5Aまたは図5Bに示されるように、昇圧回路BCaを含む電源回路17aのグラウンド電源と、昇圧回路BCcを含む電源回路17cのグラウンド電源は、電源回路(電源装置)17acの筐体60に接続され、当該筐体60を介して、図1に示した本体部15の筐体19に接続される。
【0043】
図5Aの例では、一つの配線基板65上に、昇圧回路BCa,BCc、ロウパスフィルタLPFa,LPFc、誤差増幅器EAa,EAc、共通基準電圧源45、スイッチング制御回路36および電圧制御回路35a,35c(図示省略)が実装される。各回路のグラウンド電源は、配線基板65のグラウンド層に共通に接続される。また、配線基板65は、電源回路(電源装置)17acの筐体60に収容され、筐体60内で絶縁用樹脂部材61によって封止される。
【0044】
筐体60は、金属部材で構成され、グラウンド電源GND2に接続される。配線基板65のグラウンド層は、この筐体60(グラウンド電源GND2)に接続される。そして、電源回路17acの筐体60(グラウンド電源GND2)は、図1に示した本体部15の筐体19(グラウンド電源GND)に別途接続される。
【0045】
図5Bの例では、配線基板66上に、昇圧回路BCa、ロウパスフィルタLPFa、誤差増幅器EAa、共通基準電圧源45、スイッチング制御回路36および電圧制御回路35a(図示省略)が実装される。また、別の配線基板67上に、昇圧回路BCc、ロウパスフィルタLPFc、誤差増幅器EAcおよび電圧制御回路35c(図示省略)が実装される。共通基準電圧源45からの基準電圧Vrfと、スイッチング制御回路36からのスイッチ信号S1,S2は、それぞれ、所定の信号ケーブルを介して配線基板67へ伝送される。
【0046】
この2個の配線基板66,67は、電源回路17acの筐体60に収容され、筐体60内で絶縁用樹脂部材61によって封止される。配線基板66のグラウンド層と、配線基板67のグラウンド層は、共に、筐体60(グラウンド電源GND2)に接続され、筐体60を介して、本体部15の筐体19(グラウンド電源GND)に別途接続される。このように、2個の昇圧回路BCa,BCcのグラウンド電源を、本体部15の筐体19で共通化される前に共通化することで、2個の昇圧回路BCa,BCcのグラウンド電源電圧をより一致させることが可能になる。
【0047】
すなわち、前述した各ノイズ(δ1~δ3)の相殺効果は、2個の昇圧回路BCa,BCcのグラウンド電源電圧がより等しくなるほど、より高めることが可能になる。一方、一般的な形態では、2個の昇圧回路BCa,BCcは、例えば、それぞれ、別の筐体に実装され、2個の昇圧回路BCa,BCcのグラウンド電源は、本体部15の筐体19で始めて共通化される。この場合、2個の昇圧回路BCa,BCcのグラウンド電源電圧に差電圧が生じ易い。そこで、例えば、図5Aおよび図5Bのような実装方式を用いることで、この差電圧を低減することが可能になる。その結果、電子ビームB1の焦点変動を抑制でき、電子ビームB1の高分解能化が可能になる。
【0048】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の電源回路(電源装置)17acを用いることで、複数の電圧間に生じるノイズを低減することが可能になる。これに伴い、当該電源回路17acを荷電粒子ビーム装置10の加速電圧V0およびリターンディング電圧Vrに適用することで、電子ビームB1の分解能を高めることが可能になる。なお、この例では、電源回路(電源装置)17acの荷電粒子ビーム装置10への適用例を示したが、これに限らず、複数の電圧の差電圧に基づいて所定の制御を行う様々な装置に対して同様に適用可能である。また、この例では、2個の電源回路を一体化した例を示したが、同様にして、3個以上の電源回路を一体化することも可能である。
【0049】
(実施の形態2)
《電源回路(電源装置)の詳細》
図6は、本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびブースト電圧を生成する電源回路(電源装置)の概略的な構成例を示す回路図である。図6に示す電源回路(電源装置)17adは、2個の電源回路17a,17dを備える。図6に示す電源回路17adは、図3に示した電源回路17acと比較して、図3の電源回路17cが図6の電源回路17dに置き換わったものとなっている。すなわち、電源回路17aは、加速電圧V0を生成する回路であり、図3と同様の構成を備える。電源回路17dは、ブースト電圧Vbを生成する回路であり、当該電源回路17aとほぼ同様の構成を備える。
【0050】
簡単に説明すると、電源回路17dは、定電圧源VGdと、トランジスタQdと、スイッチユニットSWUdと、トランスTRdと、コッククロフトウォルトン回路CWdと、ロウパスフィルタLPFdと、誤差増幅器EAdと、電圧制御回路35dと、を備える。スイッチユニットSWUd、トランスTRdおよびコッククロフトウォルトン回路CWdは、昇圧回路BCdを構成する。
【0051】
定電圧源VGdは、入力電圧Vi4を生成する。トランジスタQdは、入力電圧Vi4をベース電圧に応じて降圧し、降圧した電圧を、トランスTRdの一次コイルにおける中点タップの電圧に定める。スイッチユニットSWUdは、2個のスイッチング素子SW1d,SW2dを備える。
【0052】
コッククロフトウォルトン回路CWdは、複数(この例では4個)のコンデンサC1d,C2d,C3d,C4dと、複数(4個)のダイオードD1d,D2d,D3d,D4dと、を備え、昇圧された直流電圧として、ブースト電圧Vbを生成する。ただし、ブースト電圧Vbは、加速電圧V0と異なり正の電圧であるため、コッククロフトウォルトン回路CWd内のダイオードと、コッククロフトウォルトン回路CWa内のダイオードとでは、アノード・カソードの向きが異なっている。
【0053】
誤差増幅器EAdは、分圧抵抗素子R1d,R2dと、増幅器AMP1dと、基準電圧源VRGdとを備える。基準電圧源VRGdは、基準電圧Vrf4を生成する。この基準電圧Vrf4は、ブースト電圧Vbの大きさを設定するための電圧である。分圧抵抗素子R1d,R2dは、ブースト電圧Vbを分圧し、増幅器AMP1dは、この分圧された電圧値と、基準電圧Vrf4との誤差を増幅する。電圧制御回路35dは、誤差増幅器EAdからの誤差信号に応じてトランジスタQdのベース電圧をフィードバック制御する。
【0054】
スイッチング制御回路36は、昇圧回路BCaのスイッチユニットSWUaと昇圧回路BCdのスイッチユニットSWUdを共通のスイッチ信号S1,S2でスイッチング制御する。共通基準電圧源45は、電源回路17aの基準電圧源VRGaと電源回路17dの基準電圧源VRGdとに共通の基準電圧Vrfを供給する。ロウパスフィルタLPFdは、抵抗素子R3dおよびコンデンサC3dを備え、ブースト電圧Vbをフィルタリングする。そして、電源回路17dは、このフィルタリングされたブースト電圧Vbを、電源ケーブル40dを介してブースト電極30に供給する。
【0055】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の電源回路(電源装置)17adを用いることでも、実施の形態1の場合と同様に、複数の電圧間に生じるノイズを低減することが可能になる。これに伴い、当該電源回路17adを荷電粒子ビーム装置10の加速電圧V0およびブースト電圧Vbに適用することで、電子ビームB1の分解能を高めることが可能になる。
【0056】
(実施の形態3)
《電源回路(電源装置)の詳細》
図7は、本発明の実施の形態3による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路(電源装置)の概略的な構成例を示す回路図である。図7に示す電源回路(電源装置)17acは、図3の場合と同様に、加速電圧V0を生成する電源回路17aと、リターンディング電圧Vrを生成する電源回路17cとを備える。
【0057】
ただし、図7の電源回路17acは、図3の構成例に対して、リプル検出器50a,50cと、差電圧検出器51と、リプル制御回路52とが追加されている。リプル検出器50aは、ロウパスフィルタLPFaから出力された加速電圧V0に重畳されるリプル電圧δ3aを検出する。同様に、リプル検出器50cは、ロウパスフィルタLPFcから出力されたリターンディング電圧Vrに重畳されるリプル電圧δ3cを検出する。リプル検出器50a,50cは、例えば、各電圧(V0,Vr)を対象にスイッチング制御回路36でのスイッチング周波数の成分を検出するバンドパスフィルタ等で構成される。
【0058】
差電圧検出器51は、リプル検出器50aからのリプル電圧δ3aと、リプル検出器50cからのリプル電圧δ3cとの差電圧を検出する。リプル制御回路52は、この差電圧検出器51からの差電圧(例えば“δ3a-δ3c”)を加速電圧V0またはリターンディング電圧Vrの一方にフィードバックする。この例では、リプル制御回路52は、差電圧検出器51からの差電圧を、リターンディング電圧Vrにフィードバックし、より詳細には、ロウパスフィルタLPFcにフィードバックする。
【0059】
図8は、図7におけるリプル制御回路およびロウパスフィルタ周りの構成例を示す概略図である。図8の例では、ロウパスフィルタLPFcのグラウンド電源GNDとコンデンサC3cとの間に可変電圧源70が設けられる。リプル制御回路52は、差電圧検出器51からの差電圧(“δ3a-δ3c”)を可変電圧源70に設定する。その結果、リプル電圧δ3cをリプル電圧δ3aに近づけることができ、差電圧(“δ3a-δ3c”)をより低減することが可能になる。
【0060】
ここで、実施の形態1の方式を用いると、リプル電圧δ3a,δ3cの周波数および位相を一致させることが可能になる。ただし、リプル電圧δ3a,δ3cの振幅は、互いに異なる場合がある。一般的には、生成される電圧(V0,Vr)が大きいほど、リプル電圧の振幅も大きくなる。このため、生成される電圧の大きさに応じて、リプル電圧の振幅も異なり得る。その結果、前述したノイズの相殺効果が弱まる恐れがある。そこで、図7および図8のような方式を用いることが有益となる。
【0061】
なお、差電圧検出器51からの差電圧をロウパスフィルタに反映させる方式は、図8のような方式に限らず様々な方式で実現可能である。例えば、ここでは、加速電圧V0に重畳されるリプル電圧δ3aがリターンディング電圧Vrに重畳されるリプル電圧δ3cよりも大きいことを前提として、その差電圧(“δ3a-δ3c”)をロウパスフィルタLPFcのノードに加算する方式を用いた。逆に、差電圧(“δ3a-δ3c”)をロウパスフィルタLPFaのノードから減算するような方式を用いてもよい。また、加算または減算を行うノードも図8のような箇所に限らず、適宜変更可能である。
【0062】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の電源回路(電源装置)17acを用いることで、実施の形態1で述べた効果に加えて、複数の電圧間に生じるノイズをより低減することが可能になる。具体的には、リプル成分に伴うノイズをより低減することができる。その結果、電子ビームB1の分解能をより高めることが可能になる。
【0063】
(実施の形態4)
《電源回路(電源装置)の詳細》
図9は、本発明の実施の形態4による荷電粒子ビーム装置において、図1での加速電圧およびリターンディング電圧を生成する電源回路(電源装置)の概略的な構成例を示す回路図である。図9に示す電源回路(電源装置)17acは、図7の構成例と比較して、リプル制御回路52の構成が異なっている。図9に示すリプル制御回路52は、差電圧検出器51からの差電圧(例えば“δ3a-δ3c”)を、誤差増幅器EAc内の基準電圧源VRGcにフィードバックする。
【0064】
具体的には、図9のリプル制御回路52は、減衰器55と、加算器56とを備える。減衰器55は、差電圧検出器51からの差電圧を減衰させる。この際の減衰比は、例えば、誤差増幅器EAc内の分圧抵抗素子R1c,R2cの分圧比に定められる。加算器56は、リターンディング電圧Vrの大きさを定める電圧目標値に、減衰器55からの電圧値を加算し、この加算された電圧値を基準電圧源VRGcに設定する。このような基準電圧源VRGcの設定値を用いることで、実施の形態3の場合と同様に、リターンディング電圧Vrに重畳されるリプル電圧δ3cを、加速電圧V0に含まれるリプル電圧δ3aに近づけることが可能になる。
【0065】
《実施の形態4の主要な効果》
以上、実施の形態4の電源回路(電源装置)17acを用いることで、実施の形態3の場合と同様の効果が得られる。また、このような効果が、既存の基準電圧源VRGcをそのまま利用する形で得られる。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…荷電粒子ビーム装置、17…電源回路(電源装置)、19…筐体、21…電子銃(荷電粒子銃)、24…加速電極、30…ブースト電極、31…ステージ、32…試料、36…スイッチング制御回路、45…共通基準電圧源、50…リプル検出器、52…リプル制御回路、60…筐体、B1…電子ビーム(荷電粒子ビーム)、BC…昇圧回路、CW…コッククロフトウォルトン回路、GND…グラウンド電源、LPF…ロウパスフィルタS…スイッチ信号、SW…スイッチング素子、TR…トランス、V0…加速電圧、VRG…基準電圧源、Vb…ブースト電圧、Vr…リターンディング電圧、Vrf…基準電圧
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9