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特許7441809荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法
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  • 特許-荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20240222BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/22 502Z
H01J37/22 502H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021014254
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117643
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】李 ウェン
(72)【発明者】
【氏名】生沼 寛
(72)【発明者】
【氏名】水谷 俊介
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-243516(JP,A)
【文献】特開2004-265879(JP,A)
【文献】特開2013-030277(JP,A)
【文献】特開2015-032392(JP,A)
【文献】特開2012-009289(JP,A)
【文献】米国特許第07091486(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャネルの検出系と、前記複数チャネルの検出系の特性を制御パラメータの設定値を用いて制御する制御部とを有する荷電粒子ビーム装置であって、
前記複数チャネルの検出系のそれぞれは、
荷電粒子ビームの照射に応じて試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器の前段に配置される光学部品と、
前記検出器からの検出信号を処理する信号処理回路と、
を有し、
前記制御部は、
前記荷電粒子ビームを照射させない状態で、前記複数チャネル毎の前記制御パラメータの設定値を用いて、前記検出器および前記信号処理回路における前記複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第1のキャリブレーションと、
前記荷電粒子ビームを照射させた状態で、前記複数チャネル毎の前記制御パラメータの設定値を用いて、前記光学部品における前記複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第2のキャリブレーションと、
を実行し、
前記第2のキャリブレーションの際には、前記第1のキャリブレーションで得られる前記制御パラメータの設定値を前記複数チャネルの前記検出系に反映させた状態で、前記荷電粒子ビームを照射させ、
前記第1のキャリブレーションの際に、前記制御パラメータの設定値として、前記検出器および前記信号処理回路に対する利得とオフセット値と、前記検出器からのダークパルスを除去するためのしきい値とを探索し、
前記第2のキャリブレーションの際に、前記制御パラメータの設定値として、前記検出器および前記信号処理回路に対する利得とオフセット値と、前記検出器からのダークパルスを除去するためのしきい値と、前記検出器からの前記検出信号の振幅低下を補正するためのロードレギュレーション補正における補正係数とを探索する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
さらに、前記複数チャネルの前記信号処理回路からの出力信号に基づいて画像を生成する画像処理部を有し、
前記制御部は、
前記第1のキャリブレーションの結果として、前記画像処理部を介して生成された前記複数チャネル毎の画像と、当該画像に伴う前記制御パラメータの設定値とを第1の装置データとしてメモリに保存し、
前記第2のキャリブレーションの結果として、前記画像処理部を介して生成された前記複数チャネル毎の画像と、当該画像に伴う前記制御パラメータの設定値とを第2の装置データとしてメモリに保存し、
前記第1の装置データおよび前記第2の装置データを装置外部へ出力する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
請求項2記載の荷電粒子ビーム装置において、
さらに、前記第1の装置データおよび前記第2の装置データを画面上に表示する画面表示部を有する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームの照射に応じて試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、前記検出器の前段に配置される光学部品と、前記検出器からの検出信号を処理する信号処理回路とを備える検出系を複数チャネル有する荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法であって、
前記荷電粒子ビームを照射させない状態で、前記複数チャネル毎の制御パラメータの設定値を用いて、前記検出器および前記信号処理回路における前記複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第1のキャリブレーションを行い、
前記荷電粒子ビームを照射させた状態で、前記複数チャネル毎の前記制御パラメータの設定値を用いて、前記光学部品における前記複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第2のキャリブレーションを行い、
前記第2のキャリブレーションの際には、前記第1のキャリブレーションで得られる前記制御パラメータの設定値を前記複数チャネルの前記検出系に反映させた状態で、前記荷電粒子ビームを照射させ、
前記第1のキャリブレーションの際に、前記制御パラメータの設定値として、前記検出器および前記信号処理回路に対する利得とオフセット値と、前記検出器からのダークパルスを除去するためのしきい値とを探索し、
前記第2のキャリブレーションの際に、前記制御パラメータの設定値として、前記検出器および前記信号処理回路に対する利得とオフセット値と、前記検出器からのダークパルスを除去するためのしきい値と、前記検出器からの前記検出信号の振幅低下を補正するためのロードレギュレーション補正における補正係数とを探索する、
荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法。
【請求項5】
請求項記載の荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、
前記第1のキャリブレーションの結果として、前記複数チャネル毎に前記信号処理回路の出力信号に基づく画像を生成し、当該画像と、当該画像に伴う前記制御パラメータの設定値とを第1の装置データとしてメモリに保存し、
前記第2のキャリブレーションの結果として、前記複数チャネル毎に前記信号処理回路の出力信号に基づく画像を生成し、当該画像と、当該画像に伴う前記制御パラメータの設定値とを第2の装置データとしてメモリに保存し、
前記第1の装置データおよび前記第2の装置データを装置外部へ出力する、
荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法。
【請求項6】
請求項記載の荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、
前記試料を変更する毎に、前記第1のキャリブレーションと前記第2のキャリブレーションとを行う、
荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法に関し、例えば、荷電粒子ビームを照射することで試料から放出される荷電粒子を検出し、当該荷電粒子に基づく画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置の一つして、半導体デバイスの評価・計測で用いられる走査電子顕微鏡(SEM)が知られている。SEMを用いた計測において、試料に一次電子ビームを照射すると、電子と試料の相互作用によって様々なエネルギーをもった信号電子が、様々な方向に出射する。信号電子は、主に、二次電子(SE:Secondary Electron)と、反射電子(BSE:Back Scattered Electron)とに区別される。例えば、二次電子は、50eV以下等のエネルギーで出射する信号電子であり、反射電子は、当該エネルギーよりも大きく、一次電子ビームに近いエネルギーで出射する信号電子である。
【0003】
このような荷電粒子ビーム装置に関する技術として、非特許文献1には、二次電子が、試料の表面形状や電位ポテンシャルに敏感であることが記載される。また、特許文献1には、反射電子を検出する複数のBSE検出器を用いた構成が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0088444号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】L.Reimer,Scanning Electron Microscopy(1998、Springer)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体デバイスの構造は微細化、3D化が進んでおり、半導体デバイスメーカ等の顧客が求める評価値が多様化している。特に、デバイス構造の3D化に伴い、歩留まり向上のために半導体基板上の穴や溝形状の底部寸法を高精度に計測したいというニーズが高まっている。
【0007】
こうした中、信号電子の一つである二次電子を検出する方式は、半導体デバイス構造のパターン幅などの表面構造の寸法計測には有益であるが、穴・溝などの3D構造に対しては不向きとなる。これは、二次電子は、例えば、側壁に吸収されることなどによって、穴・溝から脱出できないためである。
【0008】
一方、反射電子は、試料の組成や立体形状の情報を含んでおり、3D構造や、表面と底部の組成の違いなどの情報を含んでいる。また、反射電子は、高いエネルギーをもつため、穴・溝から側壁を貫通して脱出できる。このため、信号電子の他の一つである反射電子を検出する方式は、穴・溝構造の底部を含んだ3D構造の計測に有益である。また、試料から放出される信号電子は、出射エネルギーと出射角度に応じて試料に関する異なる情報を持っており、信号電子の弁別検出が、多様な計測に不可欠となっている。このため、例えば、特許文献1のように、複数のBSE検出器を用いることが有益となる。
【0009】
しかし、特に、複数のBSE検出器を用いる装置では、信号処理部における特性ばらつきや、光学部品における特性ばらつきが問題となり得る。信号処理部における特性ばらつきとして、BSE検出器のばらつき、各BSE検出器の検出信号を処理する信号処理回路のばらつき、BSE検出器の電源ばらつきなどが挙げられる。光学部品における特性ばらつきとして、電子・光変換器(シンチレータ)、ライトガイド等のばらつきが挙げられる。
【0010】
これらの特性ばらつきは、SEMの測長性能などに影響を与える。また、BSE検出器として用いられるPhotomul(フォトマル)や半導体光検出器は、入射フォトンがない場合でも、ノイズの一つである暗電流(ダークパルス)を発生し、SEMの検出画像のS/Nを低下させる。このため、SEMの検出画像を詳細かつ高精度に解析するためには、特性ばらつきやノイズの影響を高精度に補正する仕組みが求められる。
【0011】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、特性ばらつきやノイズの影響を高精度に補正することが可能な荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法を提供することにある。
【0012】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態による荷電粒子ビーム装置は、複数チャネルの検出系と、複数チャネルの検出系の特性を制御パラメータの設定値を用いて制御する制御部とを有する。複数チャネルの検出系のそれぞれは、荷電粒子ビームの照射に応じて試料から放出される荷電粒子を検出する検出器と、検出器の前段に配置される光学部品と、検出器からの検出信号を処理する信号処理回路と、を有する。制御部は、荷電粒子ビームを照射させない状態で、複数チャネル毎の制御パラメータの設定値を用いて、検出器および信号処理回路における複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第1のキャリブレーションを実行する。さらに、制御部は、荷電粒子ビームを照射させた状態で、複数チャネル毎の制御パラメータの設定値を用いて、光学部品における複数チャネル間の特性ばらつきを補正する第2のキャリブレーションを実行する。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、荷電粒子ビーム装置における特性ばらつきやノイズの影響を高精度に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1による荷電粒子ビーム装置において、主要部の構成例を示す概略図である。
図2図1の荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法の一例を示すフロー図である。
図3A】本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、図2のキャリブレーション[1]の詳細内容の一例を示すフロー図である。
図3B】本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、図2のキャリブレーション[2]の詳細内容の一例を示すフロー図である。
図4図3Aのキャリブレーションで用いられる信号振幅ヒストグラムの一例を示す図である。
図5A図3Bにおけるロードレギュレーション補正の内容を説明する図である。
図5B図3Bにおけるロードレギュレーション補正の内容を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態3による荷電粒子ビーム装置において、図1の画面表示部の表示内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の種々の実施の形態を図面に従い順次説明する。以下の実施の形態においては、荷電粒子ビーム装置が電子ビームを用いる走査電子顕微鏡(SEM)である場合を例とする。ただし、荷電粒子ビーム装置は、走査電子顕微鏡(SEM)に限らず、例えば、イオンビームを用いるイオン顕微鏡等であってよく、CT(Computed Tomography)装置等のX線を用いる検査装置であってもよい。
【0018】
(実施の形態1)
《荷電粒子ビーム装置の構成》
図1は、本発明の実施の形態1による荷電粒子ビーム装置において、主要部の構成例を示す概略図である。図1に示す荷電粒子ビーム装置10は、電子顕微鏡本体11と、信号処理部12と、画面表示部13とを備える。電子顕微鏡本体11は、真空環境を構築するためのカラム100を備える。カラム100の内部には、電子銃101が配置される。電子銃101から放出された一次電子ビーム102は、一次電子ビーム光軸に沿って飛行する。偏向器104は、電子銃101からの一次電子ビーム102の軌道を調整し、対物レンズ107は、軌道調整された一次電子ビーム102を、試料ステージ111に設置された試料109に収束させる。
【0019】
試料109には、試料ステージ111を介して負電圧が印加されている。このため、一次電子ビーム102は、電子銃101から放出された際のエネルギーよりも小さいエネルギーで試料109に衝突する。試料109は、当該一次電子ビーム102の照射に応じて信号電子を放出する。信号電子には、反射電子108と二次電子103とが含まれる。信号電子は、それぞれの出射エネルギー、出射角度に応じてカラム100内を飛行する。なお、一次電子ビーム102は、荷電粒子ビームの一つであり、信号電子は、荷電粒子の一つである。
【0020】
また、図1の荷電粒子ビーム装置10は、複数チャネル(この例では2チャンネル)の検出系を備える。チャネルAの検出系は、光学部品であるシンチレータ105aと、検出器106aと、信号処理回路121aとを備え、同様に、チャネルBの検出系は、光学部品であるシンチレータ105bと、検出器106bと、信号処理回路121bとを備える。シンチレータ105a,105bおよび検出器106a,106bは、カラム100の内部に配置され、信号処理回路121a,121bは、信号処理部12内に設けられる。
【0021】
シンチレータ105a,105bは、検出器106a,106bの前段に配置され、試料109からの反射電子108が入射された際に、反射電子108を光に変換する。検出器106a,106bは、例えば、例えば、SiPM(Silicon PhotoMultiplier)、MPPC(Multi Pixel Photon Counter)、APD(Avalanche Photo Diode)、またはPMT(PhotoMultiplier Tube)等である。検出器106a,106bは、シンチレータ105a,105bからの光を電気信号である検出信号DSa,DSbに変換し、検出信号DSa,DSbを、ハーチメック110を介して出力する。
【0022】
信号処理部12は、信号処理回路121a,121bに加えて、検出器用のバイアス電源120a,120bと、制御部122a,122bと、メモリ123と、画像処理部124とを備える。メモリ123は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、不揮発性メモリとの組み合わせによって構成される。信号処理回路121a,121bは、検出器106a,106bからの検出信号DSa,DSbを処理する。バイアス電源120a,120bは、検出器106a,106bにハーチメック110を介してバイアス電圧VBa,VBbを供給することで、検出器106a,106bの利得を調整する。
【0023】
信号処理回路121a,121bは、例えば、アナログディジタル変換器と、その後段に設けられる増幅器、可変利得増幅器、フィルタ、乗算器、加算器、減算器、クランプ回路等を備える。すなわち、信号処理回路121a,121bは、この例では、ディジタル処理によって増幅等の処理を行う。
【0024】
制御部122aは、チャネルAの検出系の特性、詳細には、検出器106aおよび信号処理回路121aの特性を制御パラメータの設定値を用いて制御する。制御パラメータの設定値には、検出器106aおよび信号処理回路121aに対する利得とオフセット値と、検出器106aからのダークパルスを除去するためのしきい値と、ロードレギュレーション補正値とが含まれる。これらの各制御パラメータの設定値の大きさは、パラメータ制御信号によって定められる。
【0025】
パラメータ制御信号には、利得調整信号GAaと、ノイズ除去信号NRaと、振幅補正信号AMCaと、オフセット調整信号OFaと、バイアス制御信号BCaとが含まれる。バイアス制御信号BCaは、バイアス電源120a,120bを介してバイアス電圧VBa,VBbの値、ひいては検出器106a,106bの利得を調整するための信号である。利得調整信号GAaは、信号処理回路121aの利得、ひいては画像の明るさ等を調整するための信号である。
【0026】
ノイズ除去信号NRaは、検出器106aからのダークパルスを含むノイズを除去するためのしきい値、すなわち、ノイズ成分と信号成分とを区別するしきい値を調整するための信号である。振幅補正信号AMCaは、ロードレギュレーションによって発生する振幅ばらつきを補正するための信号であり、例えば、ロードレギュレーション補正値である補正係数等を調整するための信号である。オフセット調整信号OFaは、信号処理回路121aのオフセット値、ひいては画像のコントラスト等を調整するための信号である。
【0027】
同様に、制御部122bは、チャネルBの検出系の特性、詳細には、検出器106bおよび信号処理回路121bの特性を制御パラメータの設定値を用いて制御する。当該制御パラメータの設定値を定めるためのパラメータ制御信号には、利得調整信号GAbと、ノイズ除去信号NRbと、振幅補正信号AMCbと、オフセット調整信号OFbと、バイアス制御信号BCbとが含まれる。
【0028】
画像処理部124には、信号処理回路121a,121bからの出力信号OTa,OTbが入力される。出力信号OTa,OTbは、連続信号であっても、信号振幅ヒストグラム(図4参照)で表される離散信号であってもよい。画像処理部124は、信号処理回路121a,121bからの出力信号OTa,OTbに基づいて、単位時間毎の、言い換えれば画素毎の階調値を求めることで、試料109の形状を表す画像を生成する。
【0029】
さらに、画像処理部124は、各画素の階調値の度数分布、すなわち画素階調ヒストグラムを作成し、画像の輝度値やコントラスト値等を求める。画像処理部124は、このような処理によって生成したデータを、画像データ129としてメモリ123に保存する。画像データ129には、詳細は後述するが、試料109を対象に取得した画像、画素階調ヒストグラム、輝度値、コントラスト値等のデータに加えて、無信号時の各種データも含まれる。また、メモリ123は、画像処理部124から入力された画像データ129に加えて、制御部122a,122bから入力された制御パラメータの設定値125a,125bを、画像データ129の付属データとして記憶する。
【0030】
画面表示部13は、例えば、GUI(Graphical User Interface)等であり、メモリ123に保存された装置データ128を、画像およびテキストとして画面上に表示する。装置データ128には、画像データ129と、画像データ129に付属する制御パラメータの設定値125a,125bとが含まれる。
【0031】
なお、図1における制御部122a,122bおよび画像処理部124は、代表的には、メモリ123に保存されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサが実行することで実現される。図1における信号処理回路121a,121bは、代表的には、アナログディジタル変換器と、プロセッサによるプログラム処理との組み合わせによって実現される。
【0032】
ただし、制御部122a,122bおよび画像処理部124は、このようなソフトウェアに限らず、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実現されてもよい。また、信号処理回路121a,121bの一部が、FPGAやASIC等のハードウェアで構成されてもよく、信号処理回路121a,121bの全てが、アナログ回路で構成されてもよい。
【0033】
ここで、図1の信号処理部12は、代表的には、マイクロコントローラ等が実装された配線基板等で構成される。この場合、信号処理回路121a,121b、制御部122a,122bおよび画像処理部124は、信号処理回路121a,121b内のアナログディジタル変換器を含めて当該マイクロコントローラ等に搭載され得る。また、メモリ123も、当該マイクロコントローラ等に搭載され得る。図1の画面表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ等を代表とする一般的なディスプレイによって構成される。
【0034】
《荷電粒子ビーム装置の概略動作》
図2は、図1の荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法の一例を示すフロー図である。図2のステップS1において、所定の搬送装置等は、試料109である半導体ウェハをカラム100内に設けられる試料ステージ111上に設置する。そして、荷電粒子ビーム装置10は、例えば、試料ステージ111を移動させること等で半導体ウェハをアライメントする。
【0035】
続いて、ステップS2において、偏向器104等は、電子銃101から放出される一次電子ビーム102の照射位置を、試料109上の計測点に移動させる。次いで、ステップS3において、荷電粒子ビーム装置10は、ブランキングにより一次電子ビーム102を遮断する。そして、ステップS4において、制御部122a,122bは、ステップS3に伴い一次電子ビーム102を照射させない状態で、言い換えれば、無信号状態で、キャリブレーション[1]を実行する。
【0036】
キャリブレーション[1]において、制御部122a,122bは、概略的には、複数チャネル毎の制御パラメータの設定値を用いて、検出器106a,106bおよび信号処理回路121a,121bにおける複数チャネル間の特性ばらつきを補正する。さらに、制御部122a,122bは、キャリブレーション[1]の結果として、画像処理部124を介して生成された複数チャネル毎の無信号画像と、当該無信号画像に伴う制御パラメータの設定値とを、キャリブレーション[1]に伴う装置データ128としてメモリ123に保存する。
【0037】
続いて、ステップS5において、荷電粒子ビーム装置10は、ブランキングを解除する。そして、ステップS6において、制御部122a,122bは、ステップS5に伴い一次電子ビーム102を照射させた状態で、キャリブレーション[2]を実行する。キャリブレーション[2]において、制御部122a,122bは、概略的には、複数チャネル毎の制御パラメータの設定値を用いて、特に、光学部品であるシンチレータ105a,105bにおける複数チャネル間の特性ばらつきを補正する。
【0038】
さらに、制御部122a,122bは、キャリブレーション[2]の結果として、画像処理部124を介して生成された複数チャネル毎の測長画像と、当該測長画像に伴う制御パラメータの設定値とを、キャリブレーション[2]に伴う装置データ128としてメモリ123に保存する。なお、キャリブレーション[1]およびキャリブレーション[2]に伴う各装置データ128は、画面表示部13で表示することができる。また、制御部122a,122bは、当該各装置データ128を装置外部へ出力してもよい。具体的には、例えば、装置メーカは、各装置データ128を荷電粒子ビーム装置10のユーザへ提供してもよい。
【0039】
次いで、ステップS7において、荷電粒子ビーム装置10は、他に計測点が有るか否かを判定し、他に計測点が有る場合には、ステップS2に戻って、同様の処理を繰り返す。キャリブレーション[1]およびキャリブレーション[2]は、例えば、計測点毎に、一次電子ビーム102を、照射有無に関わらず適宜走査しながら行われる。この際には、起点となる計測点を複数定めることができる。
【0040】
このようなキャリブレーション方法を用いることで、特性ばらつきやノイズの影響を高精度に補正することが可能になる。比較例として、実施の形態1のような2段階のキャリブレーションではなく、一次電子ビーム102を照射した状態で、各チャネルの検出系全体を対象に1段階のキャリブレーションを行う場合を想定する。この場合、検出系全体に含まれる様々なばらつき要因が複数の制御パラメータに対して複雑に影響を及ぼし得る。その結果、複数の制御パラメータの設定値を適切に定めることが困難となり、キャリブレーション精度が低下する恐れがある。
【0041】
一方、実施の形態1のような2段階のキャリブレーションを用いると、ステップS4によって、検出系全体の中から検出器106a,106bおよび信号処理回路121a,121bのばらつき要因を対象として、複数チャネル間の特性ばらつきを補正できる。そして、ステップS4によって得られた制御パラメータの設定値を反映させた上で、すなわち、検出器106a,106bおよび信号処理回路121a,121bの特性ばらつきを無くした上で、ステップS6が行われる。
【0042】
ステップS6では、検出系全体のばらつき要因、実質的には、検出系全体の中から検出器106a,106bにより前段に配置されるシンチレータ105a,105b等の光学部品のばらつき要因を対象として、複数チャネル間の特性ばらつきを再度補正できる。その結果、適切な制御パラメータの設定値を容易に得られ易くなり、キャリブレーションの精度を高めることが可能になる。
【0043】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の方式を用いることで、代表的には、特性ばらつきやノイズの影響を高精度に補正することが可能になる。その結果、良好なSEMの検出画像を得ることができ、計測精度の向上等が図れる。また、2段階のキャリブレーションで取得した装置データ128を、荷電粒子ビーム装置10のユーザに提供することで、ユーザは、オフラインで画像の詳細解析を行うことが可能になる。なお、この例では、複数チャネルの検出系を有する構成を例としたが、ノイズの影響を補正する観点では、1チャネルの検出系を有する構成であってもよい。
【0044】
(実施の形態2)
《荷電粒子ビーム装置の詳細動作》
図3Aは、本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、図2のキャリブレーション[1]の詳細内容の一例を示すフロー図である。図3Bは、本発明の実施の形態2による荷電粒子ビーム装置のキャリブレーション方法において、図2のキャリブレーション[2]の詳細内容の一例を示すフロー図である。
【0045】
図2のキャリブレーション[1](ステップS4)において、制御部122a,122bは、図3Aに示されるように、まず、チャネル毎に検出器106a,106bのダークパルスを検出する(ステップS41)。また、制御部122a,122bは、複数チャネル間の特性ばらつきを無くすように、各チャネルの検出器106a,106bおよび信号処理回路121a,121bに対する利得とオフセット値を補正する(ステップS42)。すなわち、制御部122a,122bは、複数チャネル間の特性ばらつきを無くすように、バイアス制御信号BCa,BCbおよび利得調整信号GAa,GAbの値と、オフセット調整信号OFa,OFbの値とを探索する。
【0046】
続いて、制御部122a,122bは、ステップS42で補正した制御パラメータ、すなわち利得およびオフセット値を反映させた状態で、複数チャネル毎の無信号画像A1を取得し、メモリ123に保存する(ステップS43)。無信号画像A1は、例えば、一次電子ビーム102のブランキングを維持した状態で、一次電子ビーム102を走査することで生成される。次いで、ステップS44において、制御部122a,122bは、チャネル毎に得られる信号振幅ヒストグラムから、ダークパルスを含むノイズを除去するためのしきい値をチャネル毎に決定する。そして、制御部122a,122bは、決定したしきい値を表すノイズ除去信号NRa,NRbを信号処理回路121a,121bに設定する。
【0047】
次いで、制御部122a,122bは、ステップS42での利得およびオフセット値と、ステップS44でのしきい値とが設定された状態で、複数チャネル毎の無信号画像A2を取得し、メモリ123に保存する(ステップS45)。また、制御部122a,122bは、無信号画像A1,A2に伴う各制御パラメータの設定値、すなわち、各チャネルの利得、オフセット値、しきい値等をメモリ123に保存する(ステップS46)。
【0048】
なお、例えば、ステップS46でのチャネルAの利得は、検出器106aの利得と信号処理回路121aの利得の合計値である。各チャネルの利得は、例えば、予めメモリ123に保存している、バイアス制御信号BCaに対する検出器106aの利得の関係と、利得調整信号GAaに対する信号処理回路121aの利得の関係とから算出され得る。チャネルBの利得に関しても同様である。さらに、同様にして、各チャネルのオフセット値も、オフセット調整信号OFa,OFbに対する信号処理回路121a,121bのオフセット値の関係から算出され得る。
【0049】
図4は、図3Aのキャリブレーションで用いられる信号振幅ヒストグラムの一例を示す図である。例えば、図3AのステップS41でダークパルスを検出する際に、一次電子ビーム102は、ブランキングされた状態で走査される。その結果、チャネル毎に、信号処理回路121a,121bの出力信号OTa,OTbに基づいて、図4に示されるような信号振幅ヒストグラムが得られる。図4において、横軸は信号振幅値であり、縦軸は振幅値毎の度数である。
【0050】
図4の信号振幅ヒストグラムには、信号処理回路121a,121bのノイズ、詳細には、アナログディジタル変換器等のノイズに起因する分布150と、検出器106a,106bからのダークパルスに起因する分布151とが含まれる。仮に、一次電子ビーム102が照射された状態では、信号振幅ヒストグラムには、このような各分布150,151に加え、それに混ざり合うように、信号成分に伴う様々な分布が含まれ得る。このため、図4の場合と異なり、信号振幅ヒストグラムの中からダークパルス等を明確に区別することは困難となり得る。
【0051】
図3AのステップS44では、図4に示したような信号振幅ヒストグラムに基づいて、ダークパルスを含むノイズを除去するためのしきい値THを決定することができる。また、図3AのステップS42では、例えば、図4に示したような信号振幅ヒストグラムにおいて、信号振幅値の分布箇所が各チャネルで同等となるように、各チャネルの利得、オフセット値を補正すればよい。
【0052】
図2のキャリブレーション[2](ステップS6)において、制御部122a,122bは、図3Bに示されるように、まず、チャネル毎に画像信号を検出する(ステップS61)。具体的には、制御部122a,122bは、一次電子ビーム102を照射および走査することで得られる信号処理回路121a,121bの出力信号OTa,OTbに基づいて画像信号を検出する。画像信号は、例えば、図4の場合と同様の信号振幅ヒストグラム等であってよい。
【0053】
続いて、制御部122a,122bは、複数チャネル間の特性ばらつきを無くすように、各チャネルのシンチレータ105a,105b等を含めた検出系全体の利得とオフセット値を補正する(ステップS62)。すなわち、制御部122a,122bは、複数チャネル間の特性ばらつきを無くすように、バイアス制御信号BCa,BCbおよび利得調整信号GAa,GAbの値と、オフセット調整信号OFa,OFbの値とを再度探索する。この際に、制御部122a,122bは、信号振幅ヒストグラム等に基づいて補正を行ってもよい。
【0054】
次いで、制御部122a,122bは、チャネル毎にダークパルス等のしきい値、すなわちノイズ除去信号NRa,NRbを再決定し、信号処理回路121a,121bに設定する(ステップS63)。この際に、制御部122a,122bは、例えば、図3AのステップS44で定めたしきい値と、ステップS42で定めた各チャネルの利得との関係に、図3BのステップS62で定めた各チャネルの利得を反映させることで、演算によってしきい値を算出してもよい。
【0055】
続いて、制御部122a,122bは、チャネル毎にロードレギュレーション補正を行う(ステップS64)。具体的には、制御部122a,122bは、例えば、各チャネルのバイアス電源120a,120bの特性に応じて定められる補正係数を、振幅補正信号AMCa,AMCbとして信号処理回路121a,121bに設定することで、検出信号DSa,DSbの振幅を補正する。
【0056】
図5Aおよび図5Bは、図3Bにおけるロードレギュレーション補正の内容を説明する図である。図5Aには、検出器106の等価回路が示される。図5Bには、検出器106からの検出信号DSに対するバイアス電圧VBの特性の一例が示される。図5Bに示されるように、検出信号DSの振幅、例えば、電流振幅が大きくなると、バイアス電圧VBが低下し、この影響で検出信号DSの振幅が正しい振幅から低下する場合がある。この振幅低下は、各チャネルの特性ばらつきを増大させる要因になり得る。
【0057】
そこで、この低下した振幅を正しい振幅に補正することが有益となる。この補正のことをロードレギュレーション補正と呼んでいる。ロードレギュレーション補正の補正係数は、例えば、この低下した振幅と正しい振幅との比率を表す係数であり、低下した振幅を正しい振幅に戻すための係数である。
【0058】
図3BのステップS64の後、制御部122a,122bは、ステップS62での利得およびオフセット値と、ステップS63でのしきい値と、ステップS64でのロードレギュレーション補正値、すなわち補正係数とが設定された状態で、複数チャネル毎の測長画像を取得し、メモリ123に保存する(ステップS65)。測長画像は、一次電子ビーム102を照射および走査することで生成される。また、制御部122a,122bは、測長画像に伴う各制御パラメータの設定値、すなわち、各チャネルの利得、オフセット値、しきい値、ロードレギュレーション補正値等をメモリ123に保存する(ステップS66)。
【0059】
なお、ステップS62における各チャンネルの利得は、例えば、予めメモリ123に保存している、基準利得時の出力信号OTa,OTbにおける信号振幅ヒストグラムと比較することで算出され得る。また、各チャンネルのオフセット値も、予めメモリ123に保存している、オフセット調整信号OFa,OFbに対する信号処理回路121a,121bのオフセット値の関係から算出され得る。
【0060】
また、特に、検出器106a,106bがSiPM等の場合、環境温度によって検出器106a,106bの特性、例えば、ダークパルスのレベル等が大きく変化する場合がある。また、ロードレギュレーション補正値も、試料109の種類毎に変わり得る。このため、図3Aのキャリブレーション[1]と図3Bのキャリブレーション[2]は、例えば、SEMを用いた計測工程において、試料109を変更する毎に、荷電粒子ビーム装置10のユーザによって行われてもよい。
【0061】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。特に、キャリブレーション[1]によってダークパルス等を含むノイズのしきい値を高精度に定め、キャリブレーション[2]によって当該しきい値を一定の規則に則って調整することが可能になる。また、キャリブレーション[2]でのロードレギュレーション補正によって、検出器106a,106bからの信号振幅が大きい場合であっても、チャネル間の振幅ばらつきを低減することが可能になる。さらに、環境温度の変化に伴う計測精度のばらつき等を補正することが可能になる。
【0062】
(実施の形態3)
《画面表示部の表示内容》
図6は、本発明の実施の形態3による荷電粒子ビーム装置において、図1の画面表示部の表示内容の一例を示す図である。図6の画面表示部13には、キャリブレーション[1]に伴う装置データ[1]として、図3AのステップS43およびステップS45で保存された無信号画像A1および無信号画像A2と、ステップS46で保存された各無信号画像(この例ではA2)に伴う制御パラメータの設定値とがチャネル毎に表示される。制御パラメータの設定値には、検出器の利得と、信号処理回路の利得と、信号処理回路のオフセット値と、ダークパルス等を含むノイズを除去するためのしきい値とが含まれる。
【0063】
さらに、図6の画面表示部13には、キャリブレーション[2]に伴う装置データ[2]として、図3BのステップS65で保存された測長画像と、ステップS66で保存された測長画像に伴う制御パラメータの設定値とがチャネル毎に表示される。制御パラメータの設定値には、検出器の利得と、信号処理回路の利得と、信号処理回路のオフセット値と、ダークパルス等を含むノイズを除去するためのしきい値とに加えて、ロードレギュレーション補正の補正係数とが含まれる。
【0064】
なお、画面表示部13は、無信号画像A1、無信号画像A2、測長画像の代わりに又は加えて、各画像に対応する画素階調ヒストグラムや、輝度値およびコントラスト値等を表示してもよい。また、画面表示部13は、検出器106a,106bのバイアス電圧VBa,VBb、バイアス制御信号BCa,BCbを表示してもよい。さらに、画面表示部13は、検出器106a,106bがSiPM等の場合は、そのブレークダウン電圧や、ブレークダウン電圧とバイアス電圧VBa,VBbとの差電圧や、ダークパルスの除去量および残留量等を表示してもよい。
【0065】
また、このような装置データ[1]および装置データ[2]は、装置メーカから荷電粒子ビーム装置10のユーザに提供され得る。この場合、ユーザは、提供された装置データ[1]および装置データ[2]を画面表示部13に表示させながら、オフラインでの画像解析を行うことが可能になる。例えば、ユーザは、装置データ[1]および装置データ[2]に基づいて、計測精度の向上や装置機差の低減を図ったり、計測を行う際にキャリブレーション要否の判断を行ったりすること等が可能になる。
【0066】
また、画面表示部13は、装置データの表示に限らず、同様の画面を用いて、制御パラメータの設定値に関するユーザからの入力を受け付け、入力された設定値を図1の設定値データ127として、制御部122a,122bに出力してもよい。この場合、制御部122a,122bは、設定値データ127に基づいて、信号処理回路121a,121b等に各パラメータ制御信号を出力する。
【0067】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。特に、荷電粒子ビーム装置10のユーザに対して、オフラインでの画像解析に有益な情報を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0068】
10…荷電粒子ビーム装置、11…電子顕微鏡本体、12…信号処理部、13…画面表示部、102…一次電子ビーム、105a,105b…シンチレータ、106,106a,106b…検出器、108…反射電子、121a,121b…信号処理回路、122a,122b…制御部、123…メモリ、124…画像処理部、128…装置データ、AMCa,AMCb…振幅補正信号、BCa,BCb…バイアス制御信号、DSa,DSb…検出信号、GAa,GAb…利得調整信号、NRa,NRb…ノイズ除去信号、OFa,OFb…オフセット調整信号、OTa,OTb…出力信号、TH…しきい値
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6