(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ガス回収装置、及びガス回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240226BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240226BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240226BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240226BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/18 130
B01D53/18 150
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2020083253
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤川 宗治
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】宍田 健一
(72)【発明者】
【氏名】金久保 光央
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴至
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄樹
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-096133(JP,A)
【文献】特開2005-246222(JP,A)
【文献】実開昭53-044651(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0132554(US,A1)
【文献】国際公開第2009/112518(WO,A1)
【文献】特開2018-089569(JP,A)
【文献】特開平01-231921(JP,A)
【文献】特表2005-523800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/78
B01D 53/18
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって、
前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔
と、
前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に導入する導入管と、
前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管と、
を備え、
前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われるガス回収装置。
【請求項2】
少なくとも2つの前記ガス処理塔が、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように並列配置されている請求項1に記載のガス回収装置。
【請求項3】
前記ガス処理塔内を減圧する減圧手段を備える
請求項1又は2に記載のガス回収装置。
【請求項4】
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備える
請求項1~3の何れか一項に記載のガス回収装置。
【請求項5】
前記液温調節手段は、
前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込まれる前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節する
請求項4に記載のガス回収装置。
【請求項6】
処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって、
同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させる
吸収工程と、
前記ガス処理塔の内部を減圧する減圧工程と、
前記処理液から二酸化炭素を放散させるためのストリッピングガスを前記ガス処理塔の下部に貯留されている前記処理液の内部に送り込むストリッピング工程と、
を包含するガス回収方法。
【請求項7】
少なくとも2つの前記ガス処理塔が並列配置され、
並列配置された前記ガス処理塔の前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように切り替える切替工程を包含する
請求項6に記載のガス回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置、及びガス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる有機系廃棄物、例えば、汚泥、生ごみ、し尿等を、タンク内において35℃程度で発酵させることなどによって生物学的に処理すると、メタン、二酸化炭素、硫化水素等を含むバイオガスが発生する。近年、かかるバイオガスをエネルギー源として有効利用するために、バイオガス中の二酸化炭素の一部又は全量を除去・回収しメタンガスを濃縮して使用することが検討されている。
【0003】
また、火力発電所や製鉄所、ボイラ等の設備では、石炭、重油、超重質油等の燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼に伴って排出される燃焼排ガス中の硫黄酸化物や、窒素酸化物、二酸化炭素等は、大気汚染防止や地球環境保全の見地から、放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。特に、二酸化炭素は地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化しており、燃焼排ガス中の二酸化炭素を大気中に放出せずに回収・固定化するための様々な研究が精力的に進められている。
【0004】
二酸化炭素の回収方法として、例えば、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法が知られている。化学吸収法において、ガスに含まれる二酸化炭素とアミン系の吸収液とを吸収塔で接触させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を吸収塔から再生塔へと送り、再生塔で吸収液から二酸化炭素を放散させて回収する二酸化炭素回収装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された二酸化炭素回収装置では、吸収塔の吸収液出口と再生塔の吸収液入口とが配管で接続され、当該配管の途中に設けられたポンプで圧送することにより、二酸化炭素を吸収した吸収液が吸収塔から再生塔へと輸送される。
【0007】
二酸化炭素を吸収した吸収液を吸収塔から再生塔へと輸送する際、吸収液に吸収された二酸化炭素の一部が気泡化することがある。この場合、気泡化した二酸化炭素を含む吸収液をポンプで圧送することになり、ポンプに供給した動力が吸収液の輸送に要する圧力エネルギーに変換される効率(ポンプ効率)が悪化し、動力損失が増大することになる。
【0008】
また、吸収液をポンプで圧送すると、吸収液に吸収された二酸化炭素の溶解状態が不安定となり、安定性に欠いた吸収液が再生塔に供給されることになる。このため、再生塔において、二酸化炭素を放散させて二酸化炭素を回収する工程を安定的に実施することができない虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、吸収液(処理液)を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する技術において、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、これによって、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができるガス回収装置、及びガス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るガス回収装置の特徴構成は、
処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収装置であって、
前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔を備え、
前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理塔内での前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われることにある。
【0011】
本構成のガス回収装置によれば、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔を備え、二酸化炭素の回収は、ガス処理塔内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われる。すなわち、同一のガス処理塔の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとが接触し、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散により、二酸化炭素を分離することができる。従って、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる。
【0012】
本発明に係るガス回収装置において、
少なくとも2つの前記ガス処理塔が、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように並列配置されていることが好ましい。
【0013】
本構成のガス回収装置によれば、少なくとも2つのガス処理塔が、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように並列配置されているので、並列配置されたそれらのガス処理塔によって二酸化炭素の吸収/放散が連続的に行わることになり、単位時間当たりの二酸化炭素の回収効率を向上することができる。
【0014】
本発明に係るガス回収装置において、
ストリッピングガスを前記ガス処理塔の内部に導入する導入管と、
前記処理液から放散した二酸化炭素を前記ガス処理塔の外部に排出する排出管と、
を備えることが好ましい。
【0015】
本構成のガス回収装置によれば、ガス処理塔は、ストリッピングガスを当該ガス処理塔の内部に導入する導入管と、処理液から放散した二酸化炭素を当該ガス処理塔の外部に排出する排出管とを備える構成とされる。このような構成により、ストリッピングガスが導入管を介してガス処理塔の内部に導入され、導入されたストリッピングガスによって処理液から二酸化炭素が放散され、放散された二酸化炭素が排出管を介してガス処理塔の外部に排出される。従って、簡易な構成で二酸化炭素を回収することができる。
【0016】
本発明に係るガス回収装置において、
前記ガス処理塔内を減圧する減圧手段を備えることが好ましい。
【0017】
本構成のガス回収装置によれば、減圧手段によってガス処理塔内を減圧することにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を高濃度で回収することができる。その後、例えば、ガス処理塔の内部にストリッピングガスを導入することにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を回収することができる。従って、ストリッピングガスによる二酸化炭素濃度の希釈を回避し、減圧操作により高濃度の二酸化炭素を回収でき、その後のストリッピングガスの導入により、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0018】
本発明に係るガス回収装置において、
前記処理液の温度を調節する液温調節手段を備えることが好ましい。
【0019】
本構成のガス回収装置によれば、処理液の温度を調節する液温調節手段を備えるので、処理液の温度を二酸化炭素の吸収/放散に適した温度に調節することができ、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0020】
本発明に係るガス回収装置において、
前記液温調節手段は、前記処理液を10~30℃に調節する低温処理と、前記処理液を40~80℃に調節する高温処理とを交互に行うことが好ましい。
【0021】
本構成のガス回収装置によれば、液温調節手段は、処理液を10~30℃に調節する低温処理と、処理液を40~80℃に調節する高温処理とを交互に行う。ここで、処理液に対する二酸化炭素の吸収を10~30℃で行い、処理液に対する二酸化炭素の放散を40~80℃で行うことにより、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散の温度差を比較的小さく抑えて、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーの消費量を抑えることができる。特に、ストリッピングガスの導入や減圧操作による処理を併用することで、放散温度を低くし、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーを削減することができる。また、処理液によっては、100℃以上の温度で二酸化炭素の放散を繰り返し行うと、劣化が進むが、100℃より低い、40~80℃の温度域で二酸化炭素の放散を行うことにより、処理液の劣化を抑えることができるとともに、処理液の揮発を抑制することもできる。なお、ガス処理塔内での二酸化炭素の放散の際に、必ずしも処理液を加熱する必要はなく、放散工程の際の処理液の温度は、吸収工程の際の処理液の温度と同程度であってもよい。
【0022】
本発明に係るガス回収装置において、
前記液温調節手段は、前記ストリッピングガスの温度制御によって前記処理液の温度を調節することが好ましい。
【0023】
本構成のガス回収装置によれば、液温調節手段は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を調節するので、二酸化炭素の放散が促進される温度となるように処理液の温度を容易に調節することができる。従って、ストリッピングガスによるストリッピング効果も相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0024】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るガス回収方法の特徴構成は、
処理液を介して二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するガス回収方法であって、
同一のガス処理塔の内部において、前記処理液と前記二酸化炭素含有ガスとを接触させるガス処理工程を包含し、
前記二酸化炭素の回収は、前記ガス処理工程において、前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用して行われることにある。
【0025】
本構成のガス回収方法によれば、同一のガス処理塔の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとが接触し、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散により、二酸化炭素を分離することができる。従って、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる。
【0026】
本発明に係るガス回収方法において、
少なくとも2つの前記ガス処理塔が並列配置され、
並列配置された前記ガス処理塔の前記処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように切り替える切替工程を包含することが好ましい。
【0027】
本構成のガス回収方法によれば、並列配置される少なくとも2つのガス処理塔の処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を交互に行うように切り替える切替工程を包含するので、並列配置されたそれらのガス処理塔によって二酸化炭素の吸収/放散が連続的に行わることになり、単位時間当たりの二酸化炭素の回収効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、減圧工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、ストリッピング工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収準備工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施形態に係るガス回収装置において、加熱工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、減圧工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、ストリッピング工程を実施している状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が減圧工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群がストリッピング工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が吸収準備工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が減圧工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図13】
図13は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群がストリッピング工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図14】
図14は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収準備工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図15】
図15は、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が加熱工程を、第二ガス処理塔群が吸収準備工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図16】
図16は、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収準備工程を、第二ガス処理塔群が加熱工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図17】
図17は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が減圧工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図18】
図18は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群がストリッピング工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図19】
図19は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が減圧工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【
図20】
図20は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群がストリッピング工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、
図1~
図20を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0030】
〔第一実施形態〕
<ガス回収装置の概略構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。
図1に示すガス回収装置1Aは、処理液(吸収液)を介して、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するものである。ガス回収装置1Aでは、処理液中のアルカリ性化合物と二酸化炭素を反応させることにより、処理液中に二酸化炭素を吸収させる化学吸収法を採用している。
【0031】
ここで、アルカリ性化合物としては、例えば、アミン化合物が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのような第1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのような第2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのような第3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類等が挙げられ、これらを、1種単独で、または2種以上を用いることができる。
【0032】
ガス回収装置1Aは、処理液と二酸化炭素含有ガスとの接触が行われるガス処理塔2を備え、ガス処理塔2内での処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を利用することにより、二酸化炭素を回収するように構成されている。
【0033】
<ガス処理塔>
ガス処理塔2は、塔本体3を備えている。塔本体3は、断面円環状で鉛直方向に延び、上端側及び下端側がそれぞれ閉鎖された縦長容器状に形成されている。
【0034】
塔本体3の下部には、被処理ガス導入口4が設けられている。塔本体3の底部近傍には、ストリッピングガス導入口5が設けられている。塔本体3の頂部には、被処理ガス排出口6及び回収ガス排出口7がそれぞれ設けられている。塔本体3の上部には、処理液導入口8が設けられている。塔本体3の底部には、処理液排出口9が設けられている。
【0035】
ガス処理塔2は、充填材10をさらに備えている。充填材10は、塔本体3の上下方向中間に位置するように塔本体3の内部に配設されている。充填材10は、気液接触の効率を高めるために設けられる。充填材10としては、金属製、樹脂製の何れであってもよく、気液接触面積を大きくするために、例えば、ラシヒリング、ベルルサドル、ポールリング等の不規則充填物が用いられ、その他、多孔構造やハニカム構造を有するものであってもよい。
【0036】
ガス処理塔2は、噴霧器11をさらに備えている。噴霧器11は、充填材10の上方に位置するように塔本体3の内部に配設されている。噴霧器11は、塔本体3の処理液導入口8を通して供給された処理液を充填材10に向けて噴霧することができるように構成されている。なお、ガス処理塔2としては、大量の処理液を循環しながら被処理ガス中の二酸化炭素を吸収するようにした洗浄塔(スクラバー)のような構造であってもよく、充填材10を備えていない、例えば、スプレー塔やプレート塔等であっても適用可能である。
【0037】
[ガス導入管/ガス排出管]
塔本体3に設けられた被処理ガス導入口4及びストリッピングガス導入口5には、それぞれ被処理ガス導入管15及びストリッピングガス導入管16が接続されている。また、塔本体3に設けられた被処理ガス排出口6及び回収ガス排出口7には、それぞれ被処理ガス排出管17及び回収ガス排出管18が接続されている。
【0038】
[連結管/処理液供給管]
ガス回収装置1Aは、サブタンク20をさらに備えている。サブタンク20は、二酸化炭素を放散した後の処理液をガス処理塔2の外部において一時的に貯留するために設けられる。塔本体3に設けられた処理液排出口9とサブタンク20の頂部に設けられた処理液導入口21とは、連結管23によって接続されている。また、塔本体3に設けられた処理液導入口8とサブタンク20の底部に設けられた処理液排出口22とは、処理液供給管24によって接続されている。
【0039】
[導入弁/排出弁/供給弁]
被処理ガス導入管15には、被処理ガス導入弁31が介設されている。ストリッピングガス導入管16には、ストリッピングガス導入弁32が介設されている。被処理ガス排出管17には、被処理ガス排出弁33が介設されている。回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34が介設されている。連結管23には、処理液導入弁35が介設されている。処理液供給管24には、処理液供給弁36が介設されている。
【0040】
[送風機、ポンプ]
被処理ガス導入管15には、被処理ガス導入弁31の上流側に位置するように送風機41が介設されている。ストリッピングガス導入管16には、ストリッピングガス導入弁32の上流側に位置するようにポンプ42が介設されている。被処理ガス排出管17には、被処理ガス排出弁33の下流側に位置するようにポンプ43が介設されている。回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34の下流側に位置するようにポンプ44が介設されている。処理液供給管24には、処理液供給弁36の上流側に位置するようにポンプ45が介設されている。
【0041】
<液温調節手段(低温処理)>
サブタンク20の下部には、伝熱ジャケット50が装着されている。伝熱ジャケット50には、図示されない熱媒導入口から導入された熱媒が、当該伝熱ジャケット50の内部を通って図示されない熱媒排出口から排出されるようになっている。ここで、熱媒としては、例えば、空気や冷却水が用いられる。熱媒は、伝熱ジャケット50の内部を通って出ていく間に、サブタンク20を冷却することによって、サブタンク20内の処理液を間接的に冷却する。伝熱ジャケット50は、熱媒の温度制御によって処理液の温度を10~30℃に調節する低温処理を行う液温調節手段として機能する。なお、伝熱ジャケット50をサブタンク20の内部に設置し、サブタンク20内の処理液を直接的に冷却することで冷却効率をより高めることができる。
【0042】
<液温調節手段(高温処理)>
ストリッピングガス導入管16の上流端は、例えば、空気や窒素ガス、水素等のストリッピングガスを供給するストリッピングガス供給源55に接続されている。ストリッピングガス導入管16には、ストリッピングガス導入弁32とポンプ42との間に位置するように加熱器57が介設されている。加熱器57は、ストリッピングガス導入管16を流れるストリッピングガスと熱媒との間での熱交換により、ストリッピングガスを間接加熱する形式のものである。ここで、熱媒としては、例えば、ごみ焼却施設等で発生する排ガスや、ボイラで生成した蒸気等が用いられる。加熱器57は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を40~80℃に調節する高温処理を行う液温調節手段として機能する。加熱器57は、ストリッピングガスの温度制御によって処理液の温度を調節するので、二酸化炭素の放散が促進される温度となるように処理液の温度を容易に調節することができる。なお、二酸化炭素の放散の際に、必ずしも処理液を加熱(高温処理)する必要はなく、放散工程(減圧工程、ストリッピング工程)の際の処理液の温度は吸収工程の際の処理液の温度と同程度であってもよく、この場合、加熱器57は省略される。
【0043】
以上に述べたように構成されるガス回収装置1Aの作動について、
図1~
図4を用いて説明する。なお、
図1~
図4において、太線で示した管路は、ガス又は液が通流中であることを意味し、管路に付した矢印は、ガス又は液の通流方向を示す(後述する
図5~
図20においても同様とする。)。
【0044】
ガス回収装置1Aにおいては、以下に述べる吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程がこの記載順に繰り返し行われる。また、これらの工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~36の開閉操作により実施され、各種弁31~36は、それらの工程の切替手段として機能する。
【0045】
<吸収工程>
図1は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。
図1に示すように、吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を開いた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の内部に送り込まれる。一方、サブタンク20に貯留されている処理液は、ポンプ45により処理液供給管24を介して噴霧器11に供給される。
【0046】
ガス処理塔2の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材10を通過するように上昇し、噴霧器11から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、ガス処理塔2の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。なお、「二酸化炭素が除去された被処理ガス」とは、「含まれている二酸化炭素の全部が取り除かれた被処理ガス」と、「含まれている二酸化炭素部の一部が取り除かれた被処理ガス」との両方を包含するものである。
【0047】
<減圧工程>
図2は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、減圧工程を実施している状態を示す模式図である。
図2に示すように、減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。本例では、減圧手段であるポンプ44の作動によってガス処理塔2内を減圧する減圧工程を実施するようにしている。こうすることにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を回収することができる。その後、後段のガス処理塔2の内部にストリッピングガスを導入するストリッピング工程を実施することにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を回収することができる。
【0048】
<ストリッピング工程>
図3は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、ストリッピング工程を実施している状態を示す模式図である。
図3に示すように、ストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。また、減圧工程とストリッピング工程とを順次実施することで、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収でき、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0049】
なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果も相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0050】
<吸収準備工程>
図4は、本発明の第一実施形態に係るガス回収装置において、吸収準備工程を実施している状態を示す模式図である。
図4に示すように、吸収準備工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液導入弁35を開き、処理液供給弁36を閉じた状態とする。この状態では、ガス処理塔2の下部に貯留されている二酸化炭素放散後の処理液が、重力作用により、連結管23を介してサブタンク20の内部に送り込まれ、サブタンク20に貯留される。サブタンク20に装着された伝熱ジャケット50には、例えば、空気や冷却水等の熱媒が給排される。これにより、サブタンク20に貯留されている処理液は、熱媒によって冷却される。このとき、伝熱ジャケット50に供給される熱媒の温度制御により、処理液の温度を10~30℃に調節する低温処理が行われる。
【0051】
上記の吸収準備工程の実施により、サブタンク20に二酸化炭素放散後の処理液を貯留し、処理液の温度を10~30℃に調節し、
図1に示すような吸収工程を再び実施できる状態として、上記と同じ要領にて、吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程を繰り返し実施することにより、二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)から二酸化炭素をバッチ処理にて回収することができる。
【0052】
第一実施形態のガス回収装置1Aによれば、同一のガス処理塔2の内部において、処理液と二酸化炭素含有ガスとが接触し、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散により、二酸化炭素が回収される。従って、二酸化炭素を吸収した吸収液を輸送することなく二酸化炭素を回収することができ、動力損失を抑えることができるとともに、二酸化炭素の回収工程の安定化を図ることができる。
【0053】
また、ガス回収装置1Aによれば、処理液の温度を調節する液温調節手段として、伝熱ジャケット50及び加熱器57を備え、伝熱ジャケット50は処理液を10~30℃に調節する低温処理を行い、加熱器57は処理液を40~80℃に調節する高温処理を行う。これにより、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散の温度差を比較的小さく抑えて、二酸化炭素の回収に必要なエネルギーの消費量を抑えることができる。また、処理液によっては、100℃以上で二酸化炭素の放散を繰り返し行うと、劣化が進むが、100℃より低い、40~80℃の温度域で二酸化炭素の放散を行うことにより、処理液の劣化を抑えることができるとともに、処理液の揮発を抑制することもできる。
【0054】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係るガス回収装置1Bについて、
図5を用いて説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0055】
図5は、本発明の第二実施形態に係るガス回収装置において、加熱工程を実施している状態を示す模式図である。
図5に示すガス回収装置1Bにおいて、回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34とポンプ44との間に位置するように開閉弁37が介設されている。また、ストリッピングガス導入管16と回収ガス排出管18とは、バイパス管25によって接続されている。より具体的に説明すると、バイパス管25の一端は、回収ガス排出管18における回収ガス排出弁34と開閉弁37との間の管部分に接続されている。バイパス管25の他端は、ストリッピングガス導入管16におけるポンプ42の上流側の管部分に接続されている。バイパス管25には、バイパス弁38が介設されている。
【0056】
以上に述べたように構成されるガス回収装置1Bにおいては、吸収工程、加熱工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程がこの記載順に繰り返し行われる。また、これらの工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~38の開閉操作により実施され、各種弁31~38は、それらの工程の切替手段として機能する。なお、吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程については、前記第一実施形態と同様であるため、ここでの説明を省略し、加熱工程についてのみ以下に説明することとする。
【0057】
<加熱工程>
図5に示すように、加熱工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液導入弁35を閉じ、処理液供給弁36を閉じ、開閉弁37を閉じ、バイパス弁38を開いた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスは、処理液を抜けるように上昇し、充填材10を通過して更に上昇し、回収ガス排出管18、バイパス管25を介してストリッピングガス導入管16に戻る。すなわち、各種弁31~38が上記のような開閉状態の場合には、ストリッピングガス導入管16、塔本体3、回収ガス排出管18、バイパス管25によって循環管路30が形成される。ストリッピングガスは、ポンプ42により循環管路30を循環する。循環管路30を循環しているストリッピングガスは、加熱器57によって加熱される。これにより、ガス処理塔2の下部に貯留されている処理液は、ストリッピングガスが循環管路30を循環している間、その循環ストリッピングガスによって加熱されることになる。処理液の温度は、加熱器57によるストリッピングガスの加熱温度制御によって40~80℃に調節される。こうして、減圧工程を実施する前段階において、処理液を加熱することにより、後に実施する減圧工程での放散効率を向上することができる。
【0058】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置1Cについて、
図6~
図8を用いて説明する。なお、第三実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第三実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0059】
図6は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、吸収工程を実施している状態を示す模式図である。
図6に示すように、第三実施形態のガス回収装置1Cでは、第一実施形態のガス回収装置1A(例えば、
図1参照)において設けられる充填材10、噴霧器11、サブタンク20、サブタンク20に付帯する配管等が省略され、処理液を循環させずに処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を同一のガス処理塔2の内部においてバッチ処理するように構成されている。
【0060】
第三実施形態のガス回収装置1Cにおいては、吸収工程、減圧工程及びストリッピング工程がこの記載順に繰り返し行われる。また、これらの工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~34の開閉操作により実施され、各種弁31~34は、それらの工程の切替手段として機能する。
【0061】
<吸収工程>
図6に示すように、吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に吸収される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO
2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0062】
<減圧工程>
図7は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、減圧工程を実施している状態を示す模式図である。
図7に示すように、減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。
【0063】
<ストリッピング工程>
図8は、本発明の第三実施形態に係るガス回収装置において、ストリッピング工程を実施している状態を示す模式図である。
図8に示すように、ストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、ストリッピングガスと共に回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで回収される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0064】
第三実施形態のガス回収装置1Cによれば、第一実施形態のガス回収装置1Aよりも簡易な構成で、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収することができる。
【0065】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置1Dについて、
図9~
図14を用いて説明する。なお、第四実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第四実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0066】
図9は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が減圧工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図9に示すように、第四実施形態のガス回収装置1Dにおいては、4基のガス処理塔2が並列配置されている。4基のガス処理塔2において、左側の2基のガス処理塔2によって第一ガス処理塔群100が構成され、右側の2基のガス処理塔2によって第二ガス処理塔群200が構成されている。
【0067】
4基のガス処理塔2は、送風機41に対し被処理ガス導入管15を介して並列接続されている。4基のガス処理塔2は、ポンプ42に対しストリッピングガス導入管16を介して並列接続されている。4基のガス処理塔2は、ポンプ43に対し被処理ガス排出管17を介して並列接続されている。4基のガス処理塔2は、ポンプ44に対し回収ガス排出管18を介して並列接続されている。4基のガス処理塔2は、ポンプ45に対し処理液供給管24を介して並列接続されている。
【0068】
一端が塔本体3の処理液導入口8に接続された処理液供給管24の他端は、処理液を貯留するための処理液貯留槽60の内部に、処理液を吸い込み可能に配されている。処理液供給管24の他端側には、冷却器63がポンプ45よりも下流側で処理液供給弁36の上流側に位置するように介設されている。冷却器63は、処理液供給管24を流れる処理液と熱媒との間での熱交換により、処理液を間接冷却する形式のものである。ここで、熱媒としては、例えば、空気や冷却水が用いられる。冷却器63は、熱媒の温度制御によって処理液の温度を10~30℃に調節する低温処理を行う液温調節手段として機能する。
【0069】
4基のガス処理塔2は、処理液貯留槽60に対し処理液排出管26を介して並列接続されている。処理液排出管26の一端は、塔本体3の処理液排出口9に接続されている。処理液排出管26の他端は、処理液貯留槽60の内部に処理液を排出可能に配されている。処理液排出管26には、処理液排出弁39が介設されている。
【0070】
以上に述べたように構成されるガス回収装置1Dの作動について、
図9~
図14を用いて説明する。以下に述べる吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~34,36,39の開閉操作により実施され、各種弁31~34,36,39は、それらの工程の切替手段として機能する。
【0071】
<第一ガス処理塔群:吸収工程>
図9に示すように、第一ガス処理塔群100での吸収工程においては、第一ガス処理塔群100に付帯する、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液供給弁36を開き、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により、第一ガス処理塔群100に付帯する被処理ガス導入管15を介して各ガス処理塔2の内部に送り込まれる。一方、処理液貯留槽60に貯留されている処理液は、ポンプ45により処理液供給管24を介して噴霧器11に供給される。ここで、処理液供給管24を流れる処理液は、冷却器63によって10~30℃に冷却される。
【0072】
ガス処理塔2の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材10を通過するように上昇し、噴霧器11から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、ガス処理塔2の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0073】
<第二ガス処理塔群:減圧工程>
一方、
図9において、第二ガス処理塔群200では、減圧工程が実施される。第二ガス処理塔群200での減圧工程においては、第二ガス処理塔群200に付帯する、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。本例では、減圧手段であるポンプ44の作動によってガス処理塔2内を減圧する減圧工程を実施することにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を回収することができる。その後、後段の第二ガス処理塔群200の各ガス処理塔2の内部にストリッピングガスを導入するストリッピング工程を実施することにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を回収することができる。
【0074】
<第一ガス処理塔群:吸収工程、第二ガス処理塔群:ストリッピング工程>
図10は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群がストリッピング工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図10において、第一ガス処理塔群100では、引き続き吸収工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、ストリッピング工程が実施される。第二ガス処理塔群200でのストリッピング工程においては、第二ガス処理塔群200に付帯する、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで回収される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。減圧工程とストリッピング工程とを順次実施することで、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収でき、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0075】
なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができるのは言うまでもない。
【0076】
<第一ガス処理塔群:吸収工程、第二ガス処理塔群:吸収準備工程>
図11は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が吸収準備工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図11において、第一ガス処理塔群100では、引き続き吸収工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、吸収準備工程が実施される。
【0077】
図11に示すように、第二ガス処理塔群200での吸収準備工程においては、第二ガス処理塔群200に付帯する、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を開いた状態とする。この状態では、塔本体3の下部に貯留されている二酸化炭素放散後の処理液が、重力作用により、処理液排出管26を介して処理液貯留槽60の内部に排出され、処理液貯留槽60に貯留される。
【0078】
<第一ガス処理塔群:減圧工程>
図12は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が減圧工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図18に示すように、第一ガス処理塔群100での減圧工程においては、第一ガス処理塔群100に付帯する、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じて有効利用される。
【0079】
<第二ガス処理塔群:吸収工程>
図12に示すように、第二ガス処理塔群200での吸収工程においては、第二ガス処理塔群200に付帯する、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液供給弁36を開き、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により、第二ガス処理塔群200に付帯する被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の内部に送り込まれる。一方、処理液貯留槽60に貯留されている処理液は、ポンプ45により処理液供給管24を介して噴霧器11に供給される。ここで、処理液供給管24を流れる処理液は、冷却器63によって10~30℃に冷却される。
【0080】
ガス処理塔2の内部に送り込まれた被処理ガスは、充填材10及びその隙間を通過しながら上昇し、噴霧器11から噴霧される処理液と気液接触する。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に効率良く吸収される。二酸化炭素を吸収した処理液は、ガス処理塔2の下部に貯留される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0081】
<第一ガス処理塔群:ストリッピング工程、第二ガス処理塔群:吸収工程>
図13は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群がストリッピング工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図13において、第一ガス処理塔群100では、ストリッピング工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、引き続き吸収工程が実施される。第一ガス処理塔群100でのストリッピング工程においては、第一ガス処理塔群100に付帯する、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができるのは言うまでもない。
【0082】
上記のストリッピング工程を実施する前に、減圧手段であるポンプ44の作動によってガス処理塔2内を減圧する減圧工程を実施することにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部を回収することができる。その後、第一ガス処理塔群100の各ガス処理塔2の内部にストリッピングガスを導入するストリッピング工程を実施することにより、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部を回収することができる。従って、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収でき、二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0083】
<第一ガス処理塔群:吸収準備工程、第二ガス処理塔群:吸収工程>
図14は、本発明の第四実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収準備工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図14において、第一ガス処理塔群100では、吸収準備工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、引き続き吸収工程が実施される。
図14に示すように、第一ガス処理塔群100での吸収準備工程においては、第一ガス処理塔群100に付帯する、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を閉じ、処理液供給弁36を閉じ、処理液排出弁39を開いた状態とする。この状態では、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)が、送風機41により、第一ガス処理塔群100に付帯する被処理ガス導入管15を介して各ガス処理塔2の内部に送り込まれる。また、塔本体3の下部に貯留されている二酸化炭素放散後の処理液が、重力作用により、処理液排出管26を介して処理液貯留槽60の内部に排出され、処理液貯留槽60に貯留される。
【0084】
以下、第一ガス処理塔群100と第二ガス処理塔群200とは、吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程を上記と同じ要領にて繰り返し実施する。
【0085】
第四実施形態のガス回収装置1Dは、複数のガス処理塔のうち、少なくとも一つのガス処理塔において、二酸化炭素含有ガスと処理液とを接触させ、残りのガス処理塔において、処理液から二酸化炭素を放散させる第一状態と、少なくとも一つのガス処理塔において、処理液から二酸化炭素を放散させ、残りの処理塔において、二酸化炭素含有ガスと処理液とを接触させる第二状態とを切り替える切替手段を備えている。すなわち、第四実施形態のガス回収装置1Dは、第一ガス処理塔群100の各ガス処理塔2において、二酸化炭素含有ガスと処理液とを接触(吸収工程)させ、第二ガス処理塔群200の各ガス処理塔2において、処理液から二酸化炭素を放散(減圧工程、ストリッピング工程)させる第一状態(
図9及び
図10参照)と、第一ガス処理塔群100の各ガス処理塔2において、処理液から二酸化炭素を放散(減圧工程、ストリッピング工程)させ、第二ガス処理塔群200の各ガス処理塔2において、二酸化炭素含有ガスと処理液とを接触(吸収工程)させる第二状態(
図12及び
図13参照)とを切り替える各種弁31~34,36,39(切替手段)を備えている。
【0086】
上記の切替手段(各種弁31~34,36,39)を備える第四実施形態のガス回収装置1Dによれば、第一ガス処理塔群100と第二ガス処理塔群200とによって、処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散が交互に行われる。これにより、二酸化炭素の吸収/放散が連続的に行わることとなり、単位時間当たりの二酸化炭素の回収効率を向上することができる。
【0087】
〔第五実施形態〕
次に、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置1Eについて、
図15及び
図16を用いて説明する。なお、第五実施形態において、第四実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第五実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0088】
図15は、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が加熱工程を、第二ガス処理塔群が吸収準備工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図15に示すガス回収装置1Eにおいて、回収ガス排出管18には、回収ガス排出弁34とポンプ44との間に位置するように開閉弁37が介設されている。また、ストリッピングガス導入管16と回収ガス排出管18とは、バイパス管25によって接続されている。より具体的に説明すると、バイパス管25の一端は、回収ガス排出管18における回収ガス排出弁34と開閉弁37との間の管部分に接続されている。バイパス管25の他端は、ストリッピングガス導入管16におけるポンプ42の上流側の管部分に接続されている。バイパス管25には、バイパス弁38が介設されている。
【0089】
以上に述べたように構成されるガス回収装置1Eにおいて、第一ガス処理塔群100は、前記吸収工程の実施後、前記減圧工程を実施する前に、後述する加熱工程を実施する。また、第二ガス処理塔群200も同様に、前記吸収工程の実施後、前記減圧工程を実施する前に、後述する加熱工程を実施する。ガス回収装置1Eにおいて、吸収工程、加熱工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~34,36~39の開閉操作により実施され、各種弁31~34,36~39は、それらの工程の切替手段として機能する。なお、第一ガス処理塔群100及び第二ガス処理塔群200において実施される吸収工程、減圧工程、ストリッピング工程、及び吸収準備工程については、前記第四実施形態と同様であるため、ここでの説明を省略し、第一ガス処理塔群100において実施される加熱工程、及び第二ガス処理塔群200において実施される加熱工程について以下に説明することとする。
【0090】
<第一ガス処理塔群/第二ガス処理塔群:加熱工程>
図15は、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が加熱工程を、第二ガス処理塔群が吸収準備工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。また、
図16は、本発明の第五実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収準備工程を、第二ガス処理塔群が加熱工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図15及び
図16に示すように、第一ガス処理塔群100及び第二ガス処理塔群200でのそれぞれの加熱工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開き、処理液供給弁36を閉じ、開閉弁37を閉じ、バイパス弁38を開き、処理液排出弁39を閉じた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスは、処理液を抜けるように上昇し、充填材10を通過して更に上昇し、回収ガス排出管18、バイパス管25を介してストリッピングガス導入管16に戻る。すなわち、各種弁31~34,36~39が上記のような開閉状態の場合には、ストリッピングガス導入管16、塔本体3、回収ガス排出管18、バイパス管25によって循環管路30が形成される。ストリッピングガスは、ポンプ42により循環管路30を循環する。循環管路30を循環しているストリッピングガスは、加熱器57によって加熱される。これにより、ガス処理塔2の下部に貯留されている処理液は、ストリッピングガスが循環管路30を循環している間、その循環ストリッピングガスによって加熱されることになる。処理液の温度は、加熱器57によるストリッピングガスの加熱温度制御によって40~80℃に調節される。こうして、減圧工程を実施する前段階において、処理液を加熱することにより、後に実施する減圧工程での放散効率を向上することができる。
【0091】
〔第六実施形態〕
次に、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置1Fについて、
図17~
図20を用いて説明する。なお、第六実施形態において、第四実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第六実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0092】
図17は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群が減圧工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図17に示すように、第六実施形態のガス回収装置1Fでは、第四実施形態のガス回収装置1D(例えば、
図9参照)において設けられる充填材10、噴霧器11、処理液貯留槽60、処理液貯留槽60に付帯する配管等が省略され、処理液を循環させずに処理液に対する二酸化炭素の吸収/放散を、第一ガス処理塔群100及び第二ガス処理塔群200における各ガス処理塔2の内部においてバッチ処理するように構成されている。
【0093】
第六実施形態のガス回収装置1Fにおいて、以下に述べる吸収工程、減圧工程、及びストリッピング工程の切り替え(切替工程)は、各種弁31~34の開閉操作により実施され、各種弁31~34は、それらの工程の切替手段として機能する。
【0094】
<第一ガス処理塔群:吸収工程>
図17に示すように、第一ガス処理塔群100での吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に吸収される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO
2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0095】
<第二ガス処理塔群:減圧工程>
図17に示すように、第二ガス処理塔群200での減圧工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じ有効利用される。
【0096】
<第一ガス処理塔群:吸収工程、第二ガス処理塔群:ストリッピング工程>
図18は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が吸収工程を、第二ガス処理塔群がストリッピング工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図18において、第一ガス処理塔群100では、引き続き吸収工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、ストリッピング工程が実施される。第二ガス処理塔群200でのストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、ストリッピングガスと共に回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで回収される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0097】
<第一ガス処理塔群:減圧工程>
図19は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群が減圧工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図19に示すように、第一ガス処理塔群100での減圧工程においては、第一ガス処理塔群100に付帯する、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ポンプ44を作動させると、ガス処理塔2の内部が減圧される。これにより、処理液に吸収されている二酸化炭素の一部が放散される。放散された二酸化炭素は、回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで排出される二酸化炭素は、高濃度であるため、例えば、図示されない二酸化炭素貯蔵設備で貯蔵され、必要に応じて有効利用される。
【0098】
<第二ガス処理塔群:吸収工程>
図19に示すように、第二ガス処理塔群200での吸収工程においては、被処理ガス導入弁31を開き、ストリッピングガス導入弁32を閉じ、被処理ガス排出弁33を開き、回収ガス排出弁34を閉じた状態とする。この状態において、例えば、バイオガスや燃焼排ガス等の二酸化炭素を含む被処理ガス(CO
2含有ガス)は、送風機41により被処理ガス導入管15を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。これにより、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が処理液に吸収される。一方、二酸化炭素が除去された被処理ガス(CO
2除去ガス)は、ポンプ43により被処理ガス排出管17を介してガス処理塔2の外部に排出され、適宜処理が施されて必要に応じ有効利用される。
【0099】
<第一ガス処理塔群:ストリッピング工程、第二ガス処理塔群:吸収工程>
図20は、本発明の第六実施形態に係るガス回収装置において、第一ガス処理塔群がストリッピング工程を、第二ガス処理塔群が吸収工程を、それぞれ実施している状態を示す模式図である。
図20において、第一ガス処理塔群100では、ストリッピング工程が実施される。一方、第二ガス処理塔群200では、引き続き吸収工程が実施される。第一ガス処理塔群100でのストリッピング工程においては、被処理ガス導入弁31を閉じ、ストリッピングガス導入弁32を開き、被処理ガス排出弁33を閉じ、回収ガス排出弁34を開いた状態とする。この状態において、ストリッピングガス供給源55からのストリッピングガスが、ポンプ42によりストリッピングガス導入管16を介してガス処理塔2の下部に貯留されている処理液の内部に送り込まれる。処理液の内部に送り込まれたストリッピングガスのストリッピング効果により、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素の一部又は全部が放散される。放散された二酸化炭素は、ストリッピングガスと共に回収ガス排出管18を介してガス処理塔2の外部に排出される。ここで回収される二酸化炭素は、低濃度であり、例えば、植物育成促進等のために有効利用される。こうして、処理液に吸収されている残りの二酸化炭素を簡易な構成で確実に回収することができる。なお、加熱器57によるストリッピングガスの温度制御により、処理液の温度を、二酸化炭素の放散が促進される温度(例えば、40~80℃)となるよう調節すれば、ストリッピングガスによるストリッピング効果とも相俟って二酸化炭素の回収効率をより向上することができる。
【0100】
第六施形態のガス回収装置1Fによれば、第四実施形態のガス回収装置1Dよりも簡易な構成で、高濃度の二酸化炭素とストリッピングガスで希釈された低濃度の二酸化炭素とをそれぞれ分取して回収することができる。
【0101】
以上、本発明のガス回収装置、及びガス回収方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0102】
例えば、上記実施形態において、ガス処理塔2における塔本体3の下部に、前記伝熱ジャケット50と同様の伝熱ジャケットを装着し、当該伝熱ジャケットにより、ガス処理塔2の内部の処理液を加熱したり、冷却したりするようにしてもよい。この場合、ストリッピングガスによる加熱や、伝熱ジャケット50による冷却、冷却器63による冷却を省略することができる。
【0103】
上記実施形態では、放散工程(減圧工程、ストリッピング工程)の前段階において、放散効率を向上するために、処理液を加熱する態様例を示したが、必ずしも処理液を加熱する必要はなく、放散工程の際の処理液の温度が、吸収工程の際の処理液の温度と同じであってもよい。
【0104】
上記実施形態では、ガス回収装置1D,1E,1Fが4基のガス処理塔2を備える態様例を示したが、これに限定されるものではなく、2基又は3基のガス処理塔2を備える態様例や、5基以上のガス処理塔2を備える態様例もある。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のガス回収装置、及びガス回収方法は、バイオガスや燃焼ガス等の二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1A~1F ガス回収装置
2 ガス処理塔
16 ストリッピングガス導入管
18 回収ガス排出管
44 ポンプ(減圧手段)
50 伝熱ジャケット(液温調節手段)
57 加熱器(液温調節手段)
63 冷却器(液温調節手段)