(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ポリカーボネートポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/065 20200101AFI20240226BHJP
C08G 64/30 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C07C68/065
C08G64/30
(21)【出願番号】P 2019142245
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】工藤 加菜
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】田中 高廣
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-104612(JP,A)
【文献】特開平03-181517(JP,A)
【文献】米国特許第05171830(US,A)
【文献】特開平03-220233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256908(US,A1)
【文献】特開平10-139753(JP,A)
【文献】特表2016-527376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/30
C07C 68/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素数2から10のアルカンジイル基を表す。nは、1以上の数を表す。)で示される
モノカーボネートグリコール又はポリカーボネートグリコールと、一般式(2)
【化2】
(式中、R
2は、炭素数3から20のm価の連結基を表す。mは3から8の整数を表す。)で示されるヒドロキシ化合物とを、第三級アミンである一般式(4)で示されるホスファゼン化合物、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン
【化3】
(式中、R
4は、炭素数1から10のアルキル基を表す。Xは、同一又は相異なって、一般式(4a)
【化4】
(式中、R
5及びR
6は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基を表す。また、R
5及びR
6は、結合する窒素原子と一体となって環を形成してもよい。)、又は一般式(4b)
【化5】
(式中、R
5及びR
6は、前記と同じ意味を表す。)で示される基を表す。)
の存在下に反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化6】
(式中、R
1及びR
2は前記と同じ意味を表す。qは1を表す。rは、各々独立に、1以上の数を表す。tは3
から8の整数を表す。)で示される
、ポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項2】
以下の(a)及び(b)の工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
(a)前記一般式(1)で示される
モノカーボネートグリコール又はポリカーボネートグリコール、前記一般式(2)で示されるヒドロキシ化合物、及び第三級アミンを混合し、常圧下、80℃から200℃の範囲で反応させる工程。
(b)工程(a)の反応混合物から、減圧下、100℃から200℃の範囲で低沸分を留去する工程。
【請求項3】
R
2が、炭素数3から9の3価の連結基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
R
2が、式(R2-1)から(R2-5)のいずれかで示される連結基である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【化7】
【請求項5】
R
4がtert-ブチル基であり、R
5及びR
6がメチル基である請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
モノカーボネートグリコール又はポリカーボネートグリコールの数平均分子量が、400~4000の範囲にある、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、500~5000の範囲にある、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
R
1が、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、3-メチルペンタン-1,5-ジイル基又はヘキサン-1,6-ジイル基である請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内の水酸基数が2より大きなポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールは、ポリイソシアネート化合物と反応させることでポリウレタン樹脂を生ずることから、ポリウレタン系接着剤や同塗料などの原料として有用である。しかしながら、ポリエステルポリオールはエステル結合を有するため、これらから得られるポリウレタン樹脂は耐加水分解性に劣り、また、ポリエーテルポリオールはエーテル結合を有するため、得られるポリウレタン樹脂は耐候性、耐熱性に劣る点が課題である。これらに対し、ポリカーボネートポリオールからは耐熱性、耐候性、耐加水分解性及び耐薬品性などの耐久性に優れるポリウレタン樹脂が得られることが期待されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の機械強度や耐久性を向上させるために、アリールカーボネートとトリメチロールプロパンなどの脂肪族トリオールと脂肪族又は脂環式のジオールとをエステル交換反応させることにより得られるポリカーボネートポリオールが提案されている(特許文献1)。また、ポリカーボネートポリオールの製造方法として、金属塩触媒によるポリカーボネートグリコールとトリオール化合物および/またはテトラオール化合物とのエステル交換反応によりポリカーボネートポリオールを得る方法が開示されているが(特許文献2,3)、第三級アミンを触媒とする本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭57-39650号公報
【文献】特開平3-220233号公報
【文献】特開2012-184380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エステル交換反応によるポリカーボネートポリオールの製造では、トリオールやテトラオールとのエステル交換反応は進行しづらいことに加え、副生成物としてモノオール、グリコール及び環状化合物が除去不能な混合物として生成することにより、満足する物性が得られないことがある。
【0006】
本発明は以上のような背景技術に鑑みてなされたものであり、トリオールなどを原料に用いたポリカーボネートポリオールを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、トリオールなど3つ以上の水酸基を有するヒドロキシ化合物とポリカーボネートグリコールを原料に用い、第三級アミンの存在下で反応させることでポリカーボネートポリオールが製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下に示す実施形態を含むものである。
【0009】
[1]一般式(1)
【0010】
【0011】
(式中、R1は、炭素数2から10のアルカンジイル基を表す。nは、1以上の数を表す。)で示されるポリカーボネートグリコールと、一般式(2)
【0012】
【0013】
(式中、R2は、炭素数3から20のm価の連結基を表す。mは3から8の整数を表す。)で示されるヒドロキシ化合物とを、第三級アミンの存在下に反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0014】
【0015】
(式中、R1及びR2は前記と同じ意味を表す。qは1以上の数を表す。rは、各々独立に、1以上の数を表す。tは3以上の数を表す。mは前記と同じ意味を表す。)で示されるポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0016】
[2]以下の(a)及び(b)の工程を含む、上記[1]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
(a)前記一般式(1)で示されるポリカーボネートグリコール、前記一般式(2)で示されるヒドロキシ化合物、及び第三級アミンを混合し、常圧下、80℃から200℃の範囲で反応させる工程。
(b)工程(a)の反応混合物から、減圧下、100℃から200℃の範囲で低沸分を留去する工程。
【0017】
[3]R2が、炭素数3から9の3価の連結基である、上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0018】
[4]R2が、式(R2-1)から(R2-5)のいずれかで示される連結基である、上記[1]から[3]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0019】
【0020】
[5]第三級アミンが、一般式(4)で示されるホスファゼン化合物、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンである、上記[1]から[4]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0021】
【0022】
(式中、R4は、炭素数1から10のアルキル基を表す。Xは、同一又は相異なって、一般式(4a)
【0023】
【0024】
(式中、R5及びR6は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基を表す。また、R5及びR6は、結合する窒素原子と一体となって環を形成してもよい。)、又は一般式(4b)
【0025】
【0026】
(式中、R5及びR6は、前記と同じ意味を表す。)で示される基を表す。)。
【0027】
[6]R4がtert-ブチル基であり、R5及びR6がメチル基である上記[5]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0028】
[7]ポリカーボネートグリコールの数平均分子量が、400~4000の範囲にある、上記[1]から[6]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0029】
[8]ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、500~5000の範囲にある、上記[1]から[7]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0030】
[9]R1が、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基又はヘキサメチレン基である上記[1]から[8]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製造方法により合成できる多官能のポリカーボネートポリオールは、ポリイソシアネート化合物と反応させることにより、耐熱性、耐候性、耐加水分解性及び耐薬品性などの耐久性に優れるポリウレタン樹脂が得られることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法は、ポリカーボネートグリコール(1)と、ヒドロキシ化合物(2)とを、第三級アミンの存在下に反応させることで、ポリカーボネートポリオール(3)を製造する方法であり、本発明の製造方法の好ましい形態として、次の工程(a)及び(b)に示される製造方法を例示することができる。
【0033】
【0034】
(式中、R1は、炭素数2から10のアルカンジイル基を表す。nは、1以上の数を表す。R2は、炭素数3から20のm価の連結基を表す。mは3から8の整数を表す。qは1以上の数を表す。rは、各々独立に、1以上の数を表す。tは3以上の数を表す。)。
【0035】
工程(a)は、ポリカーボネートグリコール(1)及びヒドロキシ化合物(2)を第三級アミンの存在下に反応させる工程である。
【0036】
工程(a)に用いるポリカーボネートグリコール(1)における、R1で表される炭素数2から10のアルカンジイル基は、直鎖状又は環状アルカンジイル基のいずれでもよく、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、3-メチルペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、シクロプロパン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,3-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基等を例示することができる。これらのうち、ポリカーボネートグリコール(1)の粘性が適当である点で、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、3-メチルペンタン-1,5-ジイル基又はヘキサン-1,6-ジイル基が好ましい。
【0037】
工程(a)に用いるポリカーボネートグリコール(1)は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類等のカーボネート類と、グリコールとを、当業者の良く知るエステル交換反応の条件に付すことによって得られる。
【0038】
該グリコールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール等のジオールを挙げることができる。これらは単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0039】
ポリカーボネートグリコール(1)の数平均分子量は、400~4000であることが好ましく、400~2000であることが更に好ましい。
【0040】
工程(a)に用いるヒドロキシ化合物(2)におけるR2は、炭素数3から20のm価の連結基を表し、mは3から8の整数を表す。得られるポリカーボネートポリオール(3)の粘性が適当である点で、R2は炭素数3から9の3価の連結基であることが好ましく、次の式(R2-1)から(R2-5)のいずれかで示される連結基であることがさらに好ましい。
【0041】
【0042】
工程(a)に用いるヒドロキシ化合物(2)の具体例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を併用することができる。中でも、トリメチロールプロパンが反応の進行し易さの点から好ましい。ヒドロキシ化合物(2)は、例えば、Tetrahedron Letters,2010年,51巻,2188頁に開示された方法に従がって合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0043】
工程(a)に用いるヒドロキシ化合物(2)の当量に特に制限は無いが、ポリカーボネートグリコール(1)に対して0.2から1.2モル当量加えることで、効率よくポリカーボネートポリオール(3)を得ることができる。
【0044】
工程(a)に用いる第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アルキルアミン、ピリジン、ピラジン、キノリン等の環状アジン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等の第三級環状アミン等を例示することができる。これらのうち、反応収率が良い点で第三級環状アミンが好ましく、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンがさらに好ましい。
【0045】
また、工程(a)に用いる第三級アミンとしては、一般式(4)で示されるホスファゼン化合物が、反応収率が良い点で好ましい。
【0046】
【0047】
(式中、R4は、炭素数1から10のアルキル基を表す。Xは、同一又は相異なって、一般式(4a)
【0048】
【0049】
(式中、R5及びR6は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基を表す。また、R5及びR6は、結合する窒素原子と一体となって環を形成してもよい。)、又は一般式(4b)
【0050】
【0051】
(式中、R5及びR6は、前記と同じ意味を表す。)で示される基を表す。)。
【0052】
工程(a)に用いるホスファゼン化合物(4)における、R4で表される炭素数1から10のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、1-メチルエチル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、3-エチルペンタン-3-イル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-ヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、5,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、3-ヘキシル基、2,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノニル基、5-ノニル基、デシル基、2-デシル基、5-デシル基等を例示することができる。ホスファゼン化合物(4)の入手が容易である点で、R4は炭素数3から6の分岐状アルキル基が好ましく、tert-ブチル基がさらに好ましい。
【0053】
工程(a)に用いるホスファゼン化合物(4)中のXで表されるアミノ基(4a)又はトリアミノイミノホスホラニル基(4b)における、R5又はR6で表される炭素数1から4のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、1-メチルエチル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基などを例示することができる。ホスファゼン化合物(4)の入手が容易である点で、R5及びR6は炭素数1から4の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。また、R5及びR6は、結合する窒素原子と一体となって環を形成してもよく、具体的には次の(R56-1)から(R56-10)で示される基を例示することができる。
【0054】
【0055】
工程(a)に用いるホスファゼン化合物(4)としては、具体的には次の4-1から4-7に示す構造を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
4-1から4-7のうち、ホスファゼン化合物(4)としては、反応性が良い点で、4-6で示される化合物(本発明では、ホスファゼンベース(P4-tBu)と言う。)が好ましい。ホスファゼン化合物(4)は、例えば特開平11-152294号公報に開示された方法に従って合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0060】
工程(a)に用いる第三級アミンは、ポリカーボネートポリオール(3)の反応収率が良く、着色が少ない点で、ポリカーボネートグリコール(1)に対して0.0001から5モル%、好ましくは0.001から1モル%を加えることができる。
【0061】
工程(a)は、加減圧を伴わない常圧下に行う。
【0062】
工程(a)は、80℃~200℃の範囲から適宜選ばれた温度で行う。反応が速やかに進行する点で、好ましくは100~195℃の範囲、さらに好ましくは110~190℃の範囲から適宜選ばれた温度で行う。
【0063】
工程(a)の終了後、その反応混合物は特段の処理を行わず、次の工程(b)に供してよい。
【0064】
工程(b)は、工程(a)の反応混合物を減圧下に加熱し、ポリカーボネートポリオール(3)を製造する工程であり、低沸分として主にポリカーボネートグリコール(1)の構成成分であるグリコールを減圧留去することで反応を促進する。
【0065】
工程(b)は、ダイアフラムポンプ、油回転ポンプ、油拡散ポンプ、ターボポンプ、スパッタポンプ、クライオポンプ等の当業者が通常用いる汎用的なポンプを用いて、減圧下に行う。該減圧度は、低沸分の留出速度に応じて、高真空(0.1~0.00001Pa)から低真空(0.1~10kPa)の範囲から適宜選択することができ、0.13kPa(1mmHg)から26kPa(200mmHg)の範囲に減圧することで、反応を加速することができる。
【0066】
工程(b)にて、減圧留去される低沸分には、ポリカーボネートグリコール(1)の構成成分であるグリコールの他、未反応のヒドロキシ化合物(2)、環状オリゴマー等が含まれることがある。
【0067】
工程(b)は、100℃から200℃の範囲から適宜選ばれた温度で行う。反応を十分に完結させるため、好ましくは130℃から195℃の範囲、さらに好ましくは140℃から190℃の範囲から適宜選ばれた温度で行う。
【0068】
工程(b)の終了後に得られる粗生成物は、特に単離精製操作を加えることなく、ポリカーボネートポリオール(3)として利用することができるが、該粗生成物中に残存したヒドロキシ化合物(2)、グリコール、第三級アミン等を脱解/除去するために、分液、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再沈殿等、当業者の良く知る方法で精製してもよい。
【0069】
本発明の製造法により得られるポリカーボネートポリオール(3)の数平均分子量は、ウレタン樹脂原料とした際、得られる樹脂の物性が適切であることから、500~5,000程度が好ましく、500~4,000程度のものがより好ましい。数平均分子量が5,000を超えるとポリカーボネートポリオールがゲル化を起こす恐れがある。
【実施例】
【0070】
次に本発明を実施例および参考例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における%表記は質量基準である。
【0071】
〔評価方法〕
〈水酸基価〉
JIS K1557-1(2007)に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にて水酸基価を測定した。
【0072】
〈GPC:数平均分子量の測定条件〉
(1)測定器:HLC-8220(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G3000H-XL
・G2000H-XL
・G2000H-XL
(3)移動相:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:標準ポリスチレン(東ソー社製)
・F-80(数平均分子量:7.06×105、分子量分布:1.05)
・F-20(数平均分子量:1.90×105、分子量分布:1.05)
・F-10(数平均分子量:9.64×104、分子量分布:1.01)
・F-2(数平均分子量:1.81×104、分子量分布:1.01)
・F-1(数平均分子量:1.02×104、分子量分布:1.02)
・A-5000(数平均分子量:5.97×103、分子量分布:1.02)
・A-2500(数平均分子量:2.63×103、分子量分布:1.05)
・A-500(数平均分子量:5.0×102、分子量分布:1.14)
(8)サンプル溶液濃度:0.5%THF溶液。
【0073】
参考例―1
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、グリコールとして1,6-ヘキサンジオール(以下1,6-HGと略す。)のジエチルカーボネート(以下DECと略す。)に対する配合割合がモル比で1.38になるように、1,6-HGを925g、DECを671g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、TBTと略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が222~226mgKOH/gになるまで反応を続行し、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールを得た。得られたポリオールの平均水酸基官能基数は2.0であり、水酸基価は223.8mgKOH/gであった。
【0074】
参考例-2
配合割合がモル比で1.08になるように、1,6-HGを830g、DECを771g仕込む以外は参考例-1と同様の方法で合成し、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールを得た。得られたポリオールの平均水酸基官能基数は2.0であり、水酸基価は56.4mgKOH/gであった。
【0075】
実施例-1
50mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,10.9g,21.9mmоl)及びトリメチロールプロパン(TMP,980mg,7.3mmоl)を取り、60℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(36μL,0.029mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で25.5時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で1時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(50mL×3)。合せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量9.36g,収率100%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=819、水酸基価は168mgKOH/gであった。
【0076】
実施例-2
50mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,10.7g,21.4mmоl)及びTMP(960mg,7.2mmоl)を取り、60℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(36μL,0.029mmоl)を加えた。この溶液を、170℃で1時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、170℃で30分間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させ、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量8.18g,収率89%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=1265、水酸基価は111mgKOH/gであった。
【0077】
実施例-3
50mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,10.0g,20.0mmоl)及びTMP(1.79g,13.4mmоl)を取り、55℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(67μL,0.053mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で2時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(30mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量8.08g,収率94%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=1207、水酸基価は146mgKOH/gであった。
【0078】
実施例-4
50mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,10.9g,21.8mmоl)及びTMP(2.93g,21.8mmоl)を取り、55℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(109μL,0.087mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃2時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(30mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量9.28g,収率100%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=1244、水酸基価は214mgKOH/gであった。
【0079】
実施例-5
100mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,15.3g,30.6mmоl)及びTMP(2.74g,20.4mmоl)を取り、55℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(102μL,0.082mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で2時間、更に170℃で1時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(50mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量9.46g,収率72%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=3144、水酸基価は104mgKOH/gであった。
【0080】
実施例-6
100mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:2000,15.2g,7.6mmоl)及びTMP(680mg,5.1mmоl)を取り、55℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(25μL,0.020mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で9時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(50mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量14.5g,収率99%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=2732、水酸基価は69mgKOH/gであった。
【0081】
実施例-7
50mL二口フラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:2000,5.09g,2.5mmоl)及びTMP(230mg,1.7mmоl)を取り、55℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(21μL,0.017mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間、150℃で2時間、更に170℃で2時間撹拌した。反応容器を減圧し、170℃で4時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、クロロホルムで抽出した(20mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量4.6g,収率93%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=4103、水酸基価は44mgKOH/gであった。
【0082】
実施例-8
50mLナスフラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,4.97g,9.9mmоl)及びTMP(890mg,6.6mmоl)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO,7mg,0.066mmоl)を取り、60℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。この溶液を、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で2時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水及び2N-塩酸に注ぎ、クロロホルムで抽出した(15mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量4.20g,収率99%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=1794、水酸基価は121mgKOH/gであった。
【0083】
実施例-9
50mLナスフラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,5.04g,10.1mmоl)及びTMP(900mg,6.7mmоl)を取り、60℃にて溶融させた。放冷後、蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。ここに1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU,10μL,0.067mmоl)を加えた。この溶液を、130℃で24時間、150℃で2時間、更に170℃で2時間撹拌した。その後反応容器を減圧し、170℃で4時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水及び2N-塩酸に注ぎ、クロロホルムで抽出した(20mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量4.45g,収率103%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=740、水酸基価は216mgKOH/gであった。
【0084】
実施例-10
50mLナスフラスコにポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:2000,5.04g,2.5mmоl)及びTMP(230mg,1.7mmоl)及びDABCO(2mg,0.017mmоl)を取り、60℃にて溶融させた。放冷後、反応容器に蒸留装置を取付け、アルゴン置換した。この溶液を、130℃で24時間、150℃で2時間、更に170℃で2時間撹拌した。その後反応容器を減圧し、170℃で7時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水及び2N-塩酸に注ぎ、クロロホルムで抽出した(20mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、70℃で減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量5.22g,収率107%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=1778、水酸基価は83mgKOH/gであった。
【0085】
実施例-11
50mLナスフラスコにペンタエリトリトール(700mg,5.1mmоl)及びポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(数平均分子量:500,5.13g,10.3mmоl)を取り、アルゴン置換を行った。ここに0.8M-ホスファゼンベース(P4-tBu)のヘキサン溶液(64μL,0.051mmоl)を加え、蒸留装置を取付け、130℃で24時間撹拌した。その後、反応容器を減圧し、150℃で2時間撹拌し、生じた1,6-ヘキサンジオールを留出させた。放冷後、反応混合物を飽和食塩水及び2N-塩酸に注ぎ、クロロホルムで抽出した(20mL×3)。併せた有機層に活性炭(2g)を加え、15分静置した後、乾燥剤を加えた。乾燥剤及び活性炭をろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、減圧乾固し、目的のポリカーボネートポリオールを得た(収量4.52g,収率79%)。得られたポリカーボネートポリオールの数平均分子量はMn=816、水酸基価は218mgKOH/gであった。
【0086】
以上に示した本発明の製造方法で得られるポリカーボネートポリオールは、ウレタン樹脂の原料として好適に用いることができる。