(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】セラミックス粉末
(51)【国際特許分類】
C01B 32/956 20170101AFI20240226BHJP
【FI】
C01B32/956
(21)【出願番号】P 2019179305
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】牛田 尚幹
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 宏和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未那
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103539123(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/956
C04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粉末であって、
基準粒子径よりも大きい粒子径を有する凝集粒子の体積割合が、35体積%以上であり、
発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの前記体積割合が、4体積%以下であり、
発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの体積基準の累積粒度分布の大径側から累積0.1体積%となる粒子径が1.28μm以上3.055μm以下であり、
前記基準粒子径は、前記セラミックス粉末が、発振周波数19.5kHz,出力150Wで3分間の超音波分散処理を施されたときの、大径側からの累計0.1体積%径に相当する粒子径であ
って、0.1μm以上10μm以下であり、
前記セラミックス粉末は、炭化珪素である
ことを特徴とするセラミックス粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、グリーンカーボナイト(GC)等の炭化珪素(SiC)粉末は、その高硬度性、高熱伝導性、高耐熱性等を活かして、成型砥石、高熱伝導複合体のフィラー等として利用されている。このような場合、炭化珪素粉末を、ポリビニルアルコール(ポバール)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のマトリックスや、メチルセルロース等のバインダーや、各種の成型助剤等と混合して、重合、加圧、加熱等の各種処理を施すことにより、粘調ワニス、フィルム、各種構造体等として利用している。また、シリコン、石英等の各種インゴットの切断用ワイヤソーや、ウエハラップ用の遊離砥石としても利用されている。
【0003】
このような炭化珪素粉末においては、粒子径が小さくなると(10μm以下)、粒子同士が凝集する可能性が大きくなる。このため、例えば、炭化珪素粉末に金属酸化物や炭化珪素の微粒子を加えることにより、凝集を防止するようにしている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている炭化珪素粉末においては、凝集を防止するようにしていることから、粉末の嵩高さが大きくなってしまい、粉末のハンドリング性の低下、具体的には、粉末の流動性の低下や、容器への粉末の充填量の低下等を招いてしまう可能性があった。
【0006】
このような問題は、GC等の炭化珪素粉末に限らず、充填剤等に使用される各種のセラミックス粉末であれば、上述と同様に生じ得ることであった。
【0007】
このようなことから、本発明は、嵩高さが小さく且つ分散性の良好なセラミックス粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、本発明は、セラミックス粉末であって、基準粒子径よりも大きい粒子径を有する凝集粒子の体積割合が、35体積%以上であり、発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの前記体積割合が、4体積%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るセラミックス粉末によれば、基準粒子径よりも大きい粒子径を有する凝集粒子を所定量含有することによって粉末の嵩高さが大きくなることを抑制できる。また、発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理という比較的弱い力で凝集粒子を分散させることができるので、例えば、混練前の粉体分散処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るセラミックス粉末の主な実施形態における真空攪拌乾燥の説明図である。
【
図2】本発明に係るセラミックス粉末の主な実施形態における噴霧乾燥の説明図である。
【
図3】本発明に係るセラミックス粉末の主な実施形態における噴霧気流乾燥の説明図である。
【
図4】本発明に係るセラミックス粉末の主な実施形態における真空凍結乾燥の説明図である。
【
図5】本発明に係るセラミックス粉末の比較例における輻射伝熱乾燥の説明図である。
【
図6】セラミックス粉末の乾燥機構の説明図である。
【
図7】セラミックス粉末の乾燥の際に生じる固体架橋の説明図である。
【
図8】セラミックス粉末の乾燥の際に生じる液架橋付着の説明図である。
【
図9】スラリーを一括して乾燥した場合の状態説明図である。
【
図10】スラリーを液滴にして乾燥した場合の状態説明図である。
【
図11】スラリーを昇華により乾燥した場合の状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るセラミックス粉末の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
[主な実施形態]
本発明に係るセラミックス粉末の主な実施形態を
図1~11に基づいて以下に説明する。
【0013】
本実施形態に係るセラミックス粉末は、例えば、グリーンカーボナイト(GC)等の炭化珪素(SiC)粉末であって、基準粒子径Dsよりも大きい粒子径Dmを有する凝集粒子の体積割合(凝集粒子率Rf)が、35体積%以上であり、発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの前記体積割合(凝集粒子率Rf)が、4体積%以下のものである。
【0014】
ここで、前記基準粒子径Dsは、前記炭化珪素粉末が、発振周波数19.5kHz,出力150Wで3分間の超音波分散処理(ホモジナイザ処理)を施されたときの、大径側からの累計0.1体積%径に相当する粒子径、すなわち、ホモジナイザ処理で完全分散された後の最も粗い(大きい)粒子の径サイズであり、通常、0.1μm以上10μm以下の大きさとなる。
【0015】
炭化珪素粉末は、基本的には、例えば、工業的に利用されている「アチソン法」によって合成された原料を平均粒子径5μm以下となるように粉砕し、粒度分布の平均粒子径を1μm以下とするように分級してから、FeやAl等の不純物除去のためにアルカリ洗浄及び酸洗浄を行って精製して水洗し、水分除去のために乾燥した後、固まりを解砕しながら目開き1mm以下のスクリーンを通過させることにより、得ることができる。
【0016】
このとき、本発明者らが鋭意研究した結果、水洗条件および乾燥条件を調整することにより、後述する固体架橋力や液架橋付着力による強固な凝集粒子の形成を抑制すると共に、比較的弱い力の静電付着力による凝集粒子を形成させて、所定の凝集粒子を敢えて含有させることによって、粉末の嵩高さが大きくなることを抑えつつ分散性を良好にできることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0017】
具体的には、上述したように、基準粒子径Dsよりも大きい粒子径Dmを有する凝集粒子の体積割合(凝集粒子率Rf)が、35体積%以上であり、発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの前記体積割合(凝集粒子率Rf)が、4体積%以下のものである。このような本実施形態に係る炭化珪素粉末においては、嵩高さが小さく且つ分散性が良好なものとなるので、例えば、混練前の粉体分散処理を比較的弱い力で容易に行うことができる。
【0018】
以上のことについて、さらに詳しく説明する。
図6は、セラミックス粉末の乾燥機構についての説明図である。
【0019】
図6Aに示すように、水31に含浸する粒子21に熱Hを加えると、まず、粒子21の表面付近で水31が気化し始め、
図6Bに示すように、粒子21の表面付近が水蒸気32となり、水31の表面が粒子21間に入り込むように後退して、粒子21の表面温度が上昇し、さらに、
図6Cに示すように、粒子21間も水蒸気32となることにより、粒子21同士が凝集するようになる。
【0020】
このとき、粒子21間には、水31の気化に伴って当該水31中の溶解イオン(Na,Mg,Caの金属イオン)41が粒子21の表面に析出イオン42となって結晶化し、粒子21間を架橋してしまう「固体架橋」(
図7参照)と、気化による水31の減少に伴って粒子21同士が引き寄せられ、当該粒子21間に極微量に介在する水31が粒子21間を架橋してしまう「液架橋付着」(
図8参照)とが主に作用することにより、粒子21同士が強固に凝集してしまう。
【0021】
そこで、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、まず、洗浄に使用する水31中の溶解イオン41をできる限り少なく、具体的には10ppm以下にして析出イオン42の発生を抑えることで「固体架橋力」を大きく抑制し、さらに、乾燥の際に粒子21間の距離及び雰囲気中の水分量(湿度)の少なくとも一方を調整することで「液架橋付着力」を調整することによって、強固な凝集粒子の形成を抑制すると共に、比較的弱い力による凝集粒子を形成させて、所定の凝集粒子を敢えて含有させることにより、嵩高さが小さく且つ再分散の容易なセラミックス粉末が得られることを見出したのである。
【0022】
このような液架橋付着力の調整が可能な乾燥方法としては、真空攪拌乾燥、噴霧乾燥、噴霧気流乾燥、真空凍結乾燥等が挙げられる。
【0023】
真空攪拌乾燥は、
図1に示すように、水31に含浸する粒子21(スラリー10)を乾燥装置112内に入れ、装置112内を排気管113から真空ポンプ等で減圧排気しながら装置112内のスラリー10をアジテータやチョッパや攪拌翼等の撹拌機115で直接攪拌して流動させつつジャケット114内にスチームを供給して加熱することにより、雰囲気湿度及び粒子間距離の調整が可能な乾燥方法である。なお、このときの直接的な攪拌は、乾燥中に凝集してしまった粒子の解砕に対して、真空流動乾燥よりもさらに有効に作用する。
【0024】
噴霧乾燥(スプレードライ)は、
図2に示すように、ノズル121からスラリー10を噴霧して、噴霧された微小(シングルミクロン)な液滴11(マイクロミスト)を熱風1で加熱乾燥することにより、粒子間距離の調整が可能な乾燥方法である。
【0025】
この噴霧乾燥は、例えば、輻射伝熱乾燥のように、スラリー10を一括して乾燥した場合には粒子21の間の距離が比較的近く凝集サイズが大きくなり易いのに対し(
図9参照)、スラリー10を液滴11にして乾燥していることから、粒子21の間の距離を比較的遠くして凝集サイズを小さくすることができるので(
図10参照)、非常に好ましい。
【0026】
噴霧気流乾燥(ジェットターボドライヤー)は、
図3に示すように、ノズル131からスラリー10を熱風1中に噴霧供給して、周回する乾燥室132内で気流搬送しながら加熱乾燥することにより、粒子間距離の調整が可能な乾燥方法である。
【0027】
この噴霧気流乾燥も、前記噴霧乾燥と同様、スラリー10を分散させて液滴11にして乾燥していることから、粒子21の間の距離を比較的遠くして凝集サイズを小さくすることができると共に、気流搬送が、乾燥中に凝集してしまった粒子の解砕に対して、真空流動乾燥よりもさらに有効に作用するので、非常に好ましい。
【0028】
真空凍結乾燥(フリーズドライ)は、
図4に示すように、スラリー10を容器141内に入れ、冷凍装置等で凍結し、氷33に固化させた凝固体12を乾燥器142内に設置し、乾燥器142内を排気管143から真空ポンプ等で略真空状態(100Pa以下)にまで減圧排気しながらヒーター144で加熱して氷33を水蒸気32に昇華させて排出することにより、粒子間距離の調整が可能な乾燥方法である。なお、排出した水蒸気32はコールドトラップで冷却されて再び氷33として回収される。
【0029】
この真空凍結乾燥は、水分除去を固体の氷33から気体の水蒸気32へ昇華させて行う(
図11参照)、すなわち、液体の水31を経由しないことから、液体の水31の減少に伴う粒子21同士の接近を防ぐことができ、粒子21の間の距離を比較的遠くして凝集サイズを小さくすることができるので、非常に好ましい。
【0030】
このようにして得られた本実施形態に係る炭化珪素粉末は、上述したように、凝集粒子率Rfが35体積%以上であり、発振周波数19.5kHz,出力10Wで10分間の超音波分散処理を施されたときの凝集粒子率Rfが4体積%以下となり、嵩が小さく且つ分散性の良好なものとなる。
【0031】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態では、GC等の炭化珪素粉末の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、充填剤等に使用される各種のセラミックス粉末(例えば、Al2O3(アルミナ),SiO2(シリカ),AlN,BN,BeO等)であれば、前述した実施形態の場合と同様に適用することができる。
【実施例】
【0032】
本発明に係るセラミックス粉末の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
[試験体及び比較体の作製]
<実施例1:真空攪拌乾燥>
≪原料≫
「アチソン法」によって合成された炭化珪素粉末(平均粒子径:10~20μm程度)の原料を用意した。
【0034】
≪粉砕工程≫
炭化珪素粉末の前記原料を平均粒子径5μm以下とするようにボールミルにより湿式で微粉砕する。
【0035】
≪分級工程≫
微粉砕した前記炭化珪素粉末を平均粒子径1μm以下の粒度分布とするように水簸分級する。
【0036】
≪精製工程≫
分級した前記炭化珪素粉末をpH10以上の水溶液に1時間以上浸漬してアルカリ洗浄すると共にpH2以下の水溶液に1時間以上浸漬して酸洗浄することにより、炭化珪素粉末を精製した。
【0037】
≪水洗工程≫
精製した前記炭化珪素粉末に対して、溶解イオン(Na,Mg,Caの金属イオン)の少ない水A(溶解イオン含有量:6.4ppm)を使用してクロスフローによる濾過を行い、流出した水量と同量の水を置換することにより、炭化珪素粉末を水洗した。
【0038】
≪乾燥工程≫
前述した真空攪拌乾燥(乾燥温度:70℃以上、真空度:10kPa以下、アジテータ回転数:100rpm以上、チョッパ回転数600rpm以上)により、水洗した前記炭化珪素粉末を4時間以上加熱して乾燥した。
【0039】
≪解砕工程≫
乾燥した前記炭化珪素粉末をピンミルで解砕しながら目開き1mm以下のスクリーンに通すことにより、炭化珪素粉末の試験体1を得た。
【0040】
<実施例2:噴霧乾燥>
実施例1の乾燥工程において、真空攪拌乾燥に代えて、前述した噴霧乾燥(乾燥温度:200℃以上、エア圧力:0.6MPa以上、送液量:5mL/分以上)を適用すると共に、解砕工程を省略した。それ以外は実施例1と同様な条件で処理することにより、炭化珪素粉末の試験体2を得た。
【0041】
<実施例3:噴霧気流乾燥>
実施例1の乾燥工程において、真空攪拌乾燥に代えて、前述した噴霧気流乾燥(乾燥温度:180℃以上、エア圧力:0.4MPa以上、送液量:50mL/分以上)を適用すると共に、解砕工程を省略した。それ以外は実施例1と同様な条件で処理することにより、炭化珪素粉末の試験体3を得た。
【0042】
<実施例4:真空凍結乾燥>
実施例1の乾燥工程において、真空攪拌乾燥に代えて、前述した真空凍結乾燥(乾燥温度:60℃以下、真空度:100Pa以下、水蒸気回収(コールドトラップ)温度:-40℃以下)を適用した。それ以外は実施例1と同様な条件で処理することにより、炭化珪素粉末の試験体4を得た。
【0043】
<比較例1:輻射伝熱乾燥(1)>
実施例1の乾燥工程において、真空攪拌乾燥に代えて、輻射伝熱乾燥(乾燥温度:200℃以上)を適用した。この輻射伝熱乾燥(棚式乾燥機)は、
図5に示すように、スラリー10を容器151に入れて乾燥炉152内に配置し、乾燥炉152内を電気ヒーター等の輻射で熱Hを加えて、発生した水蒸気32を乾燥炉152の排気ダクト153から外部へ排出することにより、乾燥を行う方法である。それ以外は実施例1と同様な条件で処理することにより、炭化珪素粉末の比較体1を得た。
【0044】
<比較例2:輻射伝熱乾燥(2)>
比較例1において、水洗工程で使用した水Aに代えて、溶解イオン(Na,Mg,Caの金属イオン)の多い水B(溶解イオン含有量:61.1ppm)を使用した。それ以外は比較例1と同様な条件で処理することにより、炭化珪素粉末の比較体2を得た。
【0045】
<水中の溶解イオン濃度>
ここで、実施例1~4及び比較例1で使用した水A及び比較例2で使用した水Bの溶解イオン濃度の計測結果を下記の表1に示す。なお、溶解イオン濃度の測定は、上記水A,Bからサンプル3gを各々分取し、これに硝酸(グレード:原子吸光分析用、濃度:60.0%)0.5mL、超純水約30mLをそれぞれ加えて、蒸気が発生するまで加熱した後、50gとなるように超純水を各々加えることにより、測定試料を調製し、株式会社島津製作所製「ICPS-8100(商品名)」を使用してICP発光分光分析法により行った。
【0046】
【0047】
表1からわかるように、水Aは、水Bに比べて、Na,Mg,Caの金属イオンの含有量が非常に少なく、溶解イオン濃度が非常に小さいものであることを確認した。
【0048】
[試験内容]
<基準粒子径Ds>
試験体1~4及び比較体1,2をホモジナイザ処理して粒子径分布を計測して、基準粒子径Dsをそれぞれ求めた。その結果を表2,3に示す。なお、ホモジナイザ処理は、株式会社日本精機製作所製「US-150T(商品名)」を使用して、発振周波数19.5kHz、出力150Wで3分間処理することにより、完全な分散を行った。また、粒子径分布は、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折式測定器「MT-3300EX II(商品名)」を使用して、粒子径(μm)と体積頻度(体積%)との関係を求めた。
【0049】
<凝集粒子率Rf>
試験体1~4及び比較体1,2を超音波分散処理する前と後の粒子径分布をそれぞれ計測して、基準粒子径Dsよりも大きい粒子径Dm(>Ds)を有する凝集粒子の体積割合(凝集粒子率Rf)をそれぞれ求めた。その結果を表2,3に示す。なお、超音波分散処理は、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折式測定器「MT-3300EX II(商品名)」を使用して、発振周波数19.5kHz、出力10Wで10分間処理することにより、簡易な分散を行った。また、粒子径分布は、上述と同様にして求めた。
【0050】
<嵩高さ>
試験体1~4及び比較体1,2をそれぞれビーカーに入れて、その嵩高さを目視評価すると共に、超音波分散処理前のそれぞれの凝集粒子率Rfから判定した。その結果を下記表2に示す。なお、判定基準は、凝集粒子率Rfが75体積%以上となって、嵩が小さくハンドリング性に優れると思われるものを「〇」とし、凝集粒子率Rfが35体積%以上75体積%未満となって、嵩がそれほど大きくなくハンドリング性に特に問題を生じないと思われるものを「△」とし、凝集粒子率Rfが35体積%未満となって、嵩が大きくハンドリング性に難点があると思われるものを「×」とした。
【0051】
<分散性>
試験体1~4及び比較体1,2の超音波分散処理後のそれぞれの凝集粒子率Rfから判定した。その結果を表3に示す。なお、判定基準は、凝集粒子率Rfが1体積%以下のものを「◎」とし、凝集粒子率Rfが1体積%を超えて4体積%以下のものを「〇」とし、凝集粒子率Rfが4体積%を超えたものを「×」とした。
【0052】
[試験結果]
上述した試験の結果を下記の表2,3に示す。なお、表2,3において、「D0.1」は、体積基準の累積粒度分布の大径側から累積0.1体積%となる粒子径であり、「D50」は、メディアン径であり、「D94」は、体積基準の累積粒度分布の大径側から累積94体積%となる粒子径である。
【表2】
【0053】
表2からわかるように、試験体1~4は、すべてにおいて基準粒子径Dsが1.2μmとなった。そして、試験体1,2,4においては、超音波分散処理前の凝集粒子率Rfが35体積%を大きく超える75体積%以上となり、嵩高さを小さくすることができ、ハンドリング性に優れることが確認できた。また、試験体3(噴霧気流乾燥)においては、気流搬送に伴う解砕効果が大きく、凝集粒子率Rfが35体積%に近い38.87体積%となったため、嵩高さが比較的大きくなってしまったものの、ハンドリング性に問題を生じない程度であることが確認できた。
【0054】
また、比較体1,2においても、基準粒子径Dsが1.2μmとなり、超音波分散処理前の凝集粒子率Rfが92~93体積%であり、試験体1~4と同様、嵩高さが小さくハンドリング性に優れるものであった。よって、試験体1~4及び比較体1,2のいずれにおいても、嵩が大きくハンドリング性に難点を生じるものはなかった。
【0055】
【0056】
そして、表3からわかるように、試験体1~4は、超音波分散処理後の凝集粒子率Rfがすべてにおいて4体積%以下となり、良好な分散性を有していることが確認できた。特に、試験体4(凍結乾燥)においては、凝集粒子率Rfが0体積%となり、非常に優れた分散性を示した。これに対し、比較体1,2は、凝集粒子率Rfが4体積%を超えてしまい、特に、比較体2においては10体積%を超えてしまい、分散性が悪いものとなってしまった。
【0057】
以上のことから、試験体1~4は、嵩高さが小さく且つ分散性の良好なものであると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るセラミックス粉末は、嵩高さが小さく且つ分散性が良好であるので、例えば、混練前の粉体分散処理を比較的弱い力で容易に行うことができ、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 熱風
10 スラリー
11 液滴
12 凝固体
21 粒子
31 水
32 水蒸気
33 氷
41 溶解イオン
42 析出イオン
112 乾燥装置
113 排気管
114 ジャケット
115 撹拌機
121 ノズル
131 ノズル
132 乾燥室
141 容器
142 乾燥器
143 排気管
144 ヒーター
151 容器
152 乾燥炉
153 排気ダクト